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【発明の名称】 |
滑水性膜およびその製造方法 |
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【氏名】中島 章 【氏名】渡部 俊也 【氏名】橋本 和仁 【氏名】藤嶋 昭 |
【課題】透明性と超撥水性・超滑水性を兼ね備え、更には超撥水性が長期間にわたって持続する膜およびその作製方法と塗布剤とを提供する。
【解決手段】表面の平均粗さ100nm以下、最大粗さ1.0μm以下で平均細孔径200nm以下の微小な凸凹を有する透明な下地層にフッ素樹脂による撥水処理を行い、超撥水性透明膜を得る。この超撥水性透明膜に適量の光触媒を添加することにより、その超撥水性を長期間にわたって持続させることができるが、その量は、光触媒が酸化チタンの場合には、2重量%程度が適当である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える撥水膜において、「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」と「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」の比を調整することにより、前記撥水膜の滑水性を調整する方法。 【請求項2】 前記「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」に対する前記「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」の比を大きくすることにより、前記撥水膜の滑水性を高める請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記微小な凸凹層の凸部の形状を上方に向かって先細り形状とすることにより、前記「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」に対する前記「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」の比を大きくする請求項2記載の方法。 【請求項4】 表面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える撥水膜において、「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」と「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」の比が調整されることにより、超滑水性が付与された超滑水性撥水膜。 【請求項5】 7mgの水滴の転落角度が7度以下である超滑水性膜。 【請求項6】 超撥水性膜である請求項4または5記載の超滑水性膜。 【請求項7】 光触媒が分散されている請求項4から6いずれか記載の超滑水性膜。 【請求項8】 光触媒は酸化チタンである請求項7記載の超滑水性膜。 【請求項9】 透明であることを特徴とする請求項4から8いずれか記載の超滑水性膜。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は滑水性を備えた膜、特に超撥水性・超滑水性を備えた透明膜およびその作製方法に関する。 【0002】 【従来技術】従来多くの撥水性表面はシリコンやフッ素等の撥水剤で表面を処理することにより得られており、水との接触角が100〜110°程度の撥水処理が衣料品や車のガラス、塗装面等に対して実用化されている。ところが最近になって、低エネルギー表面に適当な構造を持たせることにより、接触角が150°以上もの極めて高い撥水性(超撥水性)を備える表面が得られることが知られるようになった。 【0003】このような超撥水性表面の作製方法については、これまでいくつかの方法が開示されている。NTTの山内らはPTFEとフッ素系バインダとフッ素オイルとを溶剤で混合し、これに酸化チタンを0.5%分添加したサスペンションをスプレー塗布する方法で高度な撥水性を有する膜を作製し(特願平8-260172)、アンテナ等への着雪防止に効果があることを報告している。 【0004】ここで、この膜は150°以上の接触角が得られるものの、PTFEでは微細な粒子が得られないために、表面での光の散乱が多く、透明ではない。 【0005】この他にも様々な撥水膜の作製方法が開示・報告されているが(フッ化グラファイトをニッケルとともにメッキする方法(工業材料vol.44, No.8, 30-37 (1996))、撥水性突起物をPTFEで形成する方法(塗装と塗料、No.571, 37-41(1998))等)、これらはいずれも散乱が生じない程度に表面粗さを下げることが困難であるため、超撥水性ではあるものの、透明膜ではない。 【0006】超撥水性表面に透明性を付与することができれば、超撥水性表面の一般的な用途に加え、看板、標識、方向指示板、銅像、彫刻等、各種の意匠材や透明なプラスチックフィルム、建築物や乗り物若しくは各種計器類の窓材、メガネ、サングラス、車両用バックミラー、浴室用または洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡、光学レンズ、内視鏡レンズ、ゴーグル、シールド、等に対してもコーティングが可能となり、応用範囲が一段と広がることになる。 【0007】しかしながら、超撥水性と透明性を兼ね備えた膜については現在までわずかな報告例しかなく、例えば南らは、ゾルゲル法を応用しアルミニウムアルコキシドの加水分解によりできたガンマアルミナ膜を熱水中で処理することにより、スポンジ状のベーマイトを表面に析出させてこれに撥水処理を行うことで150°以上の接触角をもつ透明な膜を得ている(Journal of American Ceramic Society,80[12]3213-16(1997))。また高井らは、フッ素系の原料を用いたCVDにより透明性の高い撥水性膜を作製している(Journal of Materials Science, 32,4253-59(1997) )。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、南らの方法は、高価な金属アルコキシドを原料に用いるうえ、撥水膜の構造を得るには焼成後に更に熱水処理を必要とするため、コストや生産性に問題がある。また実施可能な膜の材質がベーマイトに限定される高井らの方法では、高価なCVD設備を用いるため、コストや生産性に問題があることに加え、処理するものの大きさや形状にも制限がある。 【0009】更に言えば、南らの方法や高井らの方法によって作成された超撥水性膜には、コスト面での問題に加え、耐久的に超撥水性を長期間維持するというところにも問題があった。即ち、超撥水性・撥油性の膜は一般に汚れにくい素材であることが知られているが、それでも長期間の使用によって徐々に汚れが堆積していく。更に詳しく言えば、上記従来技術に係る透明超撥水性膜では、長期の露出によって親水性やさほど撥水性でない汚れが膜上に堆積することにより、高度の撥水性が失われてしまうのである。 【0010】本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構造制御が容易で、撥水性と透明性を兼ね備え、更には適切な汚れ防止機能を有する膜構造体およびその製造方法、並びに、これに用いられるコーティング剤を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】以上のような目的を達成するために、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、撥水処理が施される表面の構造・形態(具体的には表面粗さ)を適切に調整することによって、撥水性の向上と光透過性の獲得とを同時に実現することに成功し、本発明を完成するに至った。 【0012】また、これによって得られた新規な超撥水性透明膜に適度な量の光触媒を添加することにより、超撥水性透明膜の撥水剤の機能を維持したまま当該光触媒の自己清浄機能を存分に発揮させることが可能になるということを見出し、今まで存在しなかった「自己清浄機能を有する超撥水性透明膜」を得ることに成功した。 【0013】本発明に係る撥水性透明膜は、表面の平均粗さRaが100nm以下で平均細孔径200nm以下の微小な凸凹(なお、最大粗さRmaxが1.0μm以下であるのが好ましい)を有する下地層に、撥水処理を行うことによって膜形成することを特徴とする。撥水処理は、フッ素やシリコーン系の撥水剤またはこれらの組み合わせを用いることが可能である。 【0014】また本発明では、撥水性透明膜に自己清浄性を付与するために、前記微小な凸凹を有する下地層に、光触媒を含有させている。このようにすると、下地に含まれる光触媒の作用によって撥水処理層が分解されてしまう可能性があるが、光触媒の濃度や分布を適切に制御し、膜の下地に含まれる光触媒を下地面積の一部分に抑えるようにすれば、この上部のわずかな撥水層のみが分解されたとしても、構造体表面全体のマクロな撥水性には影響を与えないようにすることができる。 【0015】本発明に係る撥水性透明膜を作製するためには、一次粒子径100nm以下の微粒子と、室温から700℃までの温度で分解、燃焼、昇華等して除去される特性を有する200nm以下の微粒子が溶剤に分散したエマルションを作製し、これを用いて常温で膜を作製した後、室温から700℃までの温度で一定時間保持するようにすればよい。 【0016】更に光触媒との組み合わせで撥水性透明膜を製造する場合には、前記エマルションに光触媒、若しくはその前駆体を含む光触媒を適当な割合で加え、上記と同様の工程に供することによって達成される。 【0017】より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。 (A1) 表面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える超撥水性透明膜であって、前記微小な凸凹層の平均粗さRaが100nm以下であり、平均孔径が200nm以下である超撥水性透明膜。 【0018】(A2) 最大粗さRmaxが1.0μm以下である(A1)記載の超撥水性透明膜。 【0019】なお、「平均粗さRa」及び「最大粗さRmax」ともに、通常の表面粗さ計に標準装備されているパラメータであり、通常の表面粗さ計によって容易に測定することができるが、「平均粗さRa」というのは、一般的に、微小凸凹の低部から頂部までの距離の標準偏差をとった場合の中線の高さのことであり、「最大粗さRmax」というのは、一般的に、微小凸凹の低部から頂部までの距離の最大値を意味する。また、「平均孔径」というのは、微小凸凹の凸と凸の間の距離の平均値のことを意味する。 【0020】(A3) 前記表層には光触媒が分散されている(A1)又は(A2)記載の超撥水性透明膜。 【0021】(A4) 表面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える超撥水性透明膜であって、前記表層には光触媒が分散されている超撥水性透明膜。 【0022】(A5) 前記光触媒は酸化チタンである(A3)または(A4)記載の超撥水性透明膜。 【0023】(A6) 前記酸化チタンの含有量は2重量%程度であることを特徴とする(A5)記載の超撥水性透明膜。 【0024】(A7) 表面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える超撥水性膜であって、前記表層には酸化チタン光触媒が分散されている超撥水性膜において、前記表層に対して0.5重量%〜20重量%の間で前記酸化チタン光触媒の含有量を調整することにより、前記酸化チタン光触媒のセルフクリーニング効果を維持しつつ、前記超撥水性膜の超撥水機能の持続力の調整を行う方法。 【0025】(A8) 透明膜を形成するための塗布剤であって、一次粒子径100nm以下の微粒子と、室温から700℃までの間の温度で除去される特性を有する200nm以下の微粒子と、が溶剤に分散したエマルションからなる塗布剤。 【0026】(A9) 前記光触媒は酸化チタンであることを特徴とする(A8)記載の塗布剤。 【0027】(A10) 前記除去される特性は、分解、燃焼、及び昇華からなる群より選ばれる1以上のものに起因するものである(A8)又は(A9)記載の塗布剤。 【0028】(A11) (A8)から(A10)いずれか記載の塗布剤を基材に塗布し、最大で700℃までの昇温を行って熱処理を施すことにより、微小な凸凹層からなる透明な下地層を形成し、この下地層の少なくとも一部分に撥水剤を塗布することによって透明撥水表面を形成することを特徴とする撥水性透明膜の製造方法。 【0029】(A12) 前記下地層に塗布される撥水剤は、フッ素系の撥水剤であることを特徴とする(A11)記載の製造方法。 【0030】(A13) 自己清浄機能を有する超撥水性透明膜。 【0031】[超滑水性]超撥水性表面は表面と水との接触面積を著しく小さくすることができる。静的な撥水性は接触角で評価されるが実用上は動的な撥水性、すなわち滑水性の方がより重要である。これは平坦な面を傾けた際に液滴が転落を開始する角度(転落角)や、その際の液滴と面がつくる前進接触角-後退接触角の差(ヒステリシス)で評価され、近年は接触角よりもこれらの指標を重要視する傾向が強い。 【0032】接触角が高い固体表面の液滴の転落角が常に低いとは必ずしも限らず接触角が高いにも関わらず高い転落角を示す場合もある。たとえば平滑なガラスにFAS-17(CF3(CF2)7CH2CH2Si(OMe)3)をコーティングすると、水接触角は105°程度、20mgの液滴での転落角は50°程度であるが、メチルトリメトキシシランをコートしたガラスでは水接触角は64°程度と低いものの、20mgの液滴の転落角は約35°でFAS-17よりも低くなる。 【0033】本発明に係る方法により製造された本発明に係る超撥水性透明膜については、わずか数度の傾きで水滴が転落するほどの滑水性(超滑水性)を示すものが存在したことから、超滑水性を発現する原因について探求したところ、超滑水性を示すか否かは、膜表面の凸凹の形状の微妙な差に起因していることがわかった。 【0034】即ち、図4は本発明に係る方法により製造された幾つかの超撥水性透明膜についての拡大断面図である。この図から明らかなように、図4(a)〜(c)にかけて膜表面の凸凹の形状が急峻になるにつれて撥水性も増大していき、図4(c)に至っては、わずか数度の傾きで水滴が転落するほどまで滑水性(超滑水性)が高められている(図5参照)。 【0035】[超滑水性の原理] <不均一固体表面のぬれ性と超撥水>固体表面のぬれ特性は一般に、接触角で表記され、比較される(図6(A))。即ち、ぬらした液体に対して接触角が低いものはぬれ性が良く、高いものはぬれ性が悪いということになる。これに関し、水接触角について言えば、親水性のものは接触角が低く、疎水性若しくは撥水性のものは接触角が高いということになる。 【0036】ここで、固体平滑表面のマクロなぬれ性は、Youngの式により以下のように記述される(井本稔“表面張力の理解のために”高分子刊行会1-82, (1993))。 【0037】 【数1】
【0038】式(1)中、γsv 、γsl 、γlvは固体-気体、固体-液体、液体-気体間の表面(界面)自由エネルギーで、θは接触角である。 【0039】固体平滑表面での付着濡れによる仕事(Wa)は以下のように表記される。 【0040】 【数2】
【0041】式(2)中、φは補正係数で、この値が大きいほどぬれやすく、φは多くの固体-液体間で1前後の値を持つ。因みに、今日までに得られている最も低い固体の表面エネルギーはCF3末端を並べた表面で、その値は約6mN/mである(E. G. Shafrin, and W.A. Zisman, J. Phys. Chem., 64, 519, (1960) ; T. Nishio, M.Meguro, K. Nakamae, M. Matsushita, and Y. Ueda, Langmuir, 15, 4321-4323(1999))。 【0042】ここにおいて、φを1とし、水の γlvである72.8mN/mを上式に代入すると、115.2°という接触角の値が得られるが、これが平滑な固体表面において表面エネルギーを低下させることによって到達可能な接触角の計算上の上限であるということになる。即ち、これ以上の接触角(即ち、115.2°以上の接触角)を得ようとしたとしても、対象となる固体表面が平らである限り、固体表面の材質をいくら変えても無駄であるということになる。(従って、これ以上の接触角(即ち、115.2°以上の接触角)を得ようとすれば、何らかの形で固体表面の形状に手を加える必要があるということになる。) 【0043】ここで、超撥水という言葉には学術的な定義はないが、一般的には、水との接触角が概ね150°以上の状態、表面、材料等を指す。しかしながら、上述したように、115.2°を越える接触角は表面エネルギーを低下させるだけでは得ることができない。このため、本発明者らは、微小な凸凹を有する固体表面のぬれ現象について、更に考察を進めていった。 【0044】<微小な凸凹を有する固体表面のぬれ現象>まず、微小な凸凹(即ち、粗さ)を付与した表面におけるぬれ現象では、固体の表面エネルギーの寄与が大きくなる。このため、微小な凸凹を有する固体表面では、親水性のものはより親水的に、撥水性のものはより撥水的になる。 【0045】このような現象についてWenzelは、以下のような式を提示し、不均一固体表面でのぬれを表記した(R. N. Wenzel, J. Phys. Colloid Chem., 53, 1466-7 (1949))。 【0046】 【数3】
【0047】式(3)中、θとθ’はそれぞれ平滑面での接触角と粗面での接触角であり、rは表面の粗さにより大きくなった実際の表面積を見かけの表面積で割ったもので(r=[実際の表面積/見かけの表面積])、Wenzelのラフネスファクターと呼ばれている。 【0048】この式は、rが大きくなるとcosθ’が1以上になるため、適用範囲に限界があるものの、平滑表面に粗さが付与された際のぬれ性の変化をうまく説明することができる(図6(B))。 【0049】ところが、撥水性固体の表面粗さを徐々に大きくしていくと、やがて固液界面に空気が噛み込むようになる。そして、固体表面のぬれ現象は、上記式(3)の式(Wenzelの(3))から外れるようになってくる。 【0050】これについてCassieは、液体との界面を固体と気体の複合相とし、それぞれの相からの寄与率が面積分率に依存すると仮定し、気体と水との接触角が180°と近似できることを考慮して、固液界面に空気が噛み込むことによる撥水性を以下のような式で記述した(A. B. D. Cassie, Discuss. Farady Soc., 3, 11-16 (1948))。 【0051】 【数4】
【0052】式(4)中、f1 、θ1はそれぞれ液体との界面での固体の面積分率と、平滑固体表面での接触角である(図6(C))。 【0053】<撥水性と滑水性>静的な撥水性は接触角で評価されるが実用上は動的な撥水性、すなわち滑水性の方がより重要である。これは平坦な面を傾けた際に液滴が転落を開始する角度(転落角)や、その際の液滴と面がつくる前進接触角-後退接触角の差(ヒステリシス)で評価され、近年は接触角よりもこれらの指標を重要視する傾向が強い(W. Chen. A. Y. Fadeev, M. C. Hsieh, D. Oner, J. Youngblood, and T. J.McCarthy Langmuir, 15, 3395-3399, (1999))(図7)。 【0054】既に述べたように、接触角が高い固体表面の液滴の転落角が常に低いとは限らず、逆に、接触角が高いにも拘らず高い転落角を示す場合もある(村瀬、日本学術会議、第5回界面シンポジウム予稿集p9-18(1998))。Wolframは、水-パラフィン系での水の転落角が液滴の固体との接触面での半径Rに比例することを実験的に見出し、平滑傾斜面での液滴の力学的平衡について以下の関係式を提示している(E. Wolfram, and R. Faust, Wetting, Spreading, and Adhesion; Padday, J.F., (ed.); Academic Press: London, pp213-222 (1978))。 【0055】 【数5】
【0056】式(5)中、αは転落角、kは固体と液体の相互作用エネルギーである。村瀬はこの式を更に発展させ、相互作用エネルギーを転落角、接触角、液滴重量の3つの測定可能なパラメータと関連づけて以下のように記述している(村瀬、日本学術会議、第5回界面シンポジウム予稿集p9-18(1998))。 【0057】 【数6】
【0058】式(6)中、m,ρ,gはそれぞれ液滴重量、液滴密度、重力加速度である。ここで、先に述べたFAS-17(CF3(CF2)7CH2CH2Si(OMe)3)とメチルトリメトキシシランについて相互作用エネルギーを計算すると前者が12〜13mJ/m2、後者が6〜7mJ/m2となり、FAS-17の方が水との相互作用エネルギーが高いということがわかる。 【0059】一方、平滑な面に粗さが付与された際の液滴の転落については、Dettreらが表面粗さをサインカーブで近似し、これに対する水転落角、前進後退接触角をシミュレーションしている(R. E. Johnson Jr, and R. H. Dettre. Adv.Chem.Ser.,43, 112-135, (1963))。彼らの解析結果を図8に示す。 【0060】この図8から明らかなように、平滑面での接触角が120°の場合には、ラフネスファクターが1から1.8程度まではWenzel モードが支配的になり、それに応じてヒステリシスが大きくなるが、1.8程度以上になるとCassieモードが支配的になり、それに伴ってヒステリシスが著しく小さくなる。彼らはワックスを用いて作製した超撥水表面に対して実際にヒステリシスを検討し、この解析とほぼ同じ結果が得られることを確認している(R. H. Dettre, and R. E. Johnson Jr., Adv. Chem. Ser., 43, 136-144, (1963))。 【0061】即ち、Wenzelモードでは表面粗さが液滴の転落に対して抵抗として作用してしまうこととなるが、Cassieモードでは空気の寄与が大きく、このため表面粗さが大きくなるほど空気の噛み込み量が多くなり、液滴が転落しやすくなると考えられる。 【0062】従って、液滴が転落しやすい理想的な表面構造というのは、いくつかの点で液滴を支持して、しかも界面に空気を多く含むことのできる剣山のような構造であると結論づけられた。 【0063】図9には、本発明者らが作製した光触媒添加-超撥水性透明膜(後述の実施例2のデータ)のうち、超滑水性を示したもののAFM像が示されている。超撥水性透明膜を作成する際の原料組成を最適化することにより、剣山状の構造が実現され、接触角が161°で、7mgの水滴に対する転落角がわずか0.7°という極めて高い撥水性、滑水性のデータが得られている。 【0064】上述の方法で作製した膜について我々は針状の表面構造を仮定して、液滴の接触角と転落角の関係について独自に解析を行い、接触角が高くなるにつれて、Cassieモードで記述される状態になっていくことを見出している。超撥水表面での滑水性は超撥水を発現する機構に依存し、優れた滑水性を示す表面はCassieモードで支配されていると言うことができる。 【0065】なお、滑水性については、これまで述べた表面エネルギーや表面微構造に起因するものでなく、撥水剤の化学組成の関与の可能性が指摘されている。 【0066】例えば、村瀬らは、水と各種ポリマーとの相互作用による水分子の構造変化のシュミレーションを行った結果、フッ素系分子では水が氷様の構造をとることを見出し、これがフッ素系ポリマー表面での水の転落角の高さに影響していると主張している(H. Murase and T. Fujibayashi, Progress in Organic Coatings31, 97-104, (1997))。 【0067】水の構造性の影響については、今後更に検討が必要であるが、現在のところ本発明者らは、Cassieモードで支配される超撥水膜表面においては、滑水性には、噛み込んだ空気による寄与が支配的で、水の構造性は殆ど寄与しないと考えている。即ち、この点において、本発明者らにより見出された超滑水性現象は、従来技術(村瀬らの研究)とは異なるものである。 【0068】<超滑水性表面の作製>これまでのことを簡単に纏めると、表面に微小な凸凹を有する場合には、基本的にはWenzelモードに従い、表面の凸凹によって実際に増加した表面積の倍数分、(正の方向にも、負の方向にも)接触角が拡大され、はじく表面は更にはじくようになり、ぬれる表面はよりぬれやすくなる。 【0069】ここで、表面粗さが粗くなった場合には、Wenzelモードによる支配の下では、表面粗さが液滴の転落に対して抵抗として作用してしまうこととなるので、接触角を大きく取ることはできても、転落角が大きくなり、撥水性はよくなっても滑水性は向上しないということになる。 【0070】ところが、Cassieモードの支配下では、凹部に閉じ込められる空気の寄与が大きく、表面粗さが大きくなるほど空気の噛み込み量が多くなり、液滴が転落しやすくなる(転落角が小さくなる)。 【0071】従って、滑水性を上げるためには、Cassieモードの支配下で、表面粗さを大きくする必要がある。更には、超撥水性透明膜のところで述べたように、表面粗さと光の波長との関係を考慮すれば、透明な超滑水性膜を作製することができる。 【0072】表面粗さを粗くしたままCassieモード支配下に移行させるためには、表面で固体部分が占める割合(前記ファクターf)を小さくして、表面における空気の寄与を大きくする必要がある(逆に、f=1に近づくにつれてYoungの式に近づいてしまうことになる(f=1のときにYoungの式に一致))。 【0073】そこで、図10(A)の様な相似な針の連続構造を仮定し、固体・液体の接触部=a とするとroughness factorはa/b と仮定できる。これを基に村瀬が提唱した、平滑面乙の水滴の転落理論と、Wenzelの式、Cassieの式を組み合わせると、一定の粗さを持つ疎水的な表面乙の接触角と転落角の関係が得られる。その関係を図10(B)に示す。図中の点は本発明記載の実施例2の方法により得られる膜について得られた値である。 【0074】図10(B)に示されるように、Wenzelのラフネスファクターrが小さくなるにつれ、空気の噛み込み量が多くなり、Cassieモードに移行していくということがわかる。そして、Cassieモードに移行すれば、空気の寄与によって超滑水性が出ることになる。 【0075】以上のような原理等に基づいて、本発明者らにより提供される超滑水性現象に関する方法・膜は以下のようなものである。 【0076】(B1) 表面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える撥水膜において、「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」と「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」の比を調整することにより、前記撥水膜の滑水性を調整する方法。 【0077】(B2) 前記「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」に対する前記「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」の比を大きくすることにより、前記撥水膜の滑水性を高める(B1)記載の方法。 【0078】(B3) 前記微小な凸凹層の凸部の形状を上方に向かって先細り形状とすることにより、前記「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」に対する前記「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」の比を大きくする(B2)記載の方法。 【0079】(B4) 面に撥水処理がなされた微小な凸凹層を表層に備える撥水膜において、「「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴の底面」と「水滴が滴下されたときに前記微小な凸凹層の凹部に噛み込まれる空気」との接触面積」と「水滴が滴下されたときに想定される当該水滴と固体相との接触面積」の比が調整されることにより、超滑水性が付与された超滑水性撥水膜。 【0080】(B5) 7mgの水滴の転落角度が7度以下である超滑水性膜。因みに、この角度は好ましくは5度以下、より好ましくは3度以下、更に好ましくは1度以下である。 【0081】(B6) 超撥水性膜である(B4)または(B5)記載の超滑水性膜。 【0082】(B7) 光触媒が分散されている(B4)から(B6)いずれか記載の超滑水性膜。 【0083】(B8) 光触媒は酸化チタンである(B7)記載の超滑水性膜。 【0084】(B9) 透明であることを特徴とする(B4)から(B8)いずれか記載の超滑水性膜。 【0085】 【発明の実施の形態】以下、本発明の理解を容易にするために、本発明の実施の形態について具体的かつ詳細に説明する。 【0086】高い撥水性を持たせるためには、膜に一定の粗さを持たせ、その面を撥水化することが必要である。但し、透明性を確保するためには、その粗さは可視光が散乱しない程度に抑えなければならない。即ち、高い撥水性を持たせつつも透明性を確保するためには、適当な範囲の粗さを持つ表面を構築することが技術的な課題となる。 【0087】ここで、物質による光の散乱は通常、表面の平均粗さ(Ra)が波長の1/10〜1/5程度の大きさから顕著になり、可視光の波長が主には400〜800nm程度であることから、この波長域で透明性を確保するためには一般に表面の平均粗さ(Ra)を100nm程度以下に抑えなければならない。 【0088】このようなことから、本発明に係る撥水性透明膜は、表面の平均粗さ(Ra)が100nm以下で平均細孔径200nm以下の微小な凸凹を有する下地層(最大粗さRmaxが1.0μm以下であるのが好ましい)に、撥水処理を行うものとなっているが、本発明で得られる膜は、かかる微小な凸凹を有する膜であるため、可視光の表面散乱を低く抑えることができるのである。加えて、例えば酸化チタンのような屈折率が高い材料の表面反射を抑えることができ、可視光の透過率を向上させることができる。 【0089】本発明のエマルションに使用される微粒子の大きさは、膜が必要とする表面粗さとエマルションの時間的安定性から一次粒子径が100nm以上では実施が困難である。微小な凸凹を有する膜の細孔(谷間)は、原料の種類や大きさによって制御することが可能であるが、透明性と撥水性を好適に両立するには平均細孔径200nm程度以下であることが望ましい。細孔の大きさ(凸と凸の間の距離)が200nmを越えてくると、可視光域での光の散乱が顕著になってくるため好ましくない。この一方で、極端に小さい(例えば10nm程度の細孔(谷間))細孔(谷間)が分布した表面は、細孔(谷間)の表面や内部に均一な撥水処理を行うことが困難になると考えられる。また、本発明に係る膜は、最大粗さRmaxが1μmを越えると、透過率が65%以下となってしまい、透明性が悪くなる。 【0090】本発明に係る撥水性透明膜を製造するために、本発明者らが膜の構成成分またはその原料の一部もしくは全てが溶剤中によく分散する微粒子からなるエマルションを用いて鋭意検討した結果、このようなエマルションに、室温から700℃までの温度で分解、燃焼、昇華し、この溶剤に溶解または分散する物質を添加して常温で膜を作製した後、室温から700℃までの温度で一定時間保持することにより、微小な凸凹を有する本発明に係る膜の下地構造が作製できることを見出し、さらにその表面を適当なフッ素系撥水剤等で処理すると表面が超撥水化し、本発明に係る撥水性透明膜が得られるということも見出した。 【0091】ここで、本発明で使用可能な膜の材質は、可視光域(主に波長が400〜800nmの領域)に吸収がないものであれば無機化合物でも有機化合物でもよい。また、膜の作製方法としては、低コストという観点からすれば、スピンコート、ディップコート、スプレー法等の湿式法が好ましく、またこのような簡易で実用的な湿式コーティングを施すだけで透明撥水膜が得られるというのが、本発明の利点の一つである。 【0092】なお、室温から700℃までの温度で除去される特性を有する物質を添加しない系では、膜の透明性は満足するものの、微小な凸凹を有する本発明に係る膜の下地構造とはならず、このため撥水処理を行っても超撥水性を付与することができないということが知見されている。 【0093】[室温から700℃までの温度で除去される特性を有する無機化合物の例]室温から700℃までの温度で除去される特性を有する物質(室温から700℃までの温度で分解、燃焼、昇華する物質)については、無機化合物にも有機化合物にも限定されない。 【0094】このような化合物としては、例えば無機化合物では、以下のようなものを例として挙げることができる。 【0095】<非金属化合物>臭化ヨウ素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、リン酸化物、リン塩化物、四ヨウ化炭素など。 【0096】<無機金属塩>ヨウ化ガリウム、フッ化ゲルマニウム、硫化ゲルマニウム、二酸化セレン、ヨウ化ビスマス、ヨウ化スズ、フッ化ジルコニウム、ヨウ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、三塩化酸化ニオブ、臭化トリウム、フッ化チタン、臭化水銀、ヨウ化水銀、硫化水銀、塩化コバルト、塩化ハフニウム、臭化ハフニウム、ヨウ化ハフニウム、塩化インジウム、臭化インジウム、酸化インジウム、三塩化一酸化モリブデン、酸化モリブデン、塩化オスミウム、ハロゲン化プロトアクチニウム、塩化ポロニウム、臭化ポロニウム、塩化レニウム、臭化レニウム、テトラクロロ亜鉛酸アンモニウムなど。 【0097】<有機金属塩>アセチルアセトンアルミニウムに代表されるアセチルアセトン錯塩、ジメチルベリリウム、シクロペンタジエニルコバルト、シクロペンタジエニル鉄、シクロペンタジエニルモリブデン、シクロペンタジエニルニオブ、シクロペンタジエニルチタン、シクロペンタジエニルタンタル、ヘキサカルボニルクロム、ヘキサカルボニルモリブデンなど。 【0098】[室温から700℃までの温度で除去される特性を有する有機化合物の例]また、有機化合物としては、以下のようなものを例として挙げることができる。 【0099】<カルボン酸及びその誘導体>シュウ酸、クエン酸、アミノ吉草酸、フマル酸、クロロフマル酸、シクロヘキセンジカルボン酸、グリコール酸、チオ二酢酸グリセリン酸、サリチル酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、アミノ安息香酸、ジブロモ安息香酸、ジメチル安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、アセチル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ジアミノ安息香酸、ベンジル安息香酸、ベンゾイル安息香酸、スルファモイル安息香酸、アロファン酸エチル、アントラキノンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、イソニコチン酸、イソバニリン酸、イソフタル酸、エチルヒドロキシ酪酸、ジエチルハルビツル酸、ショウノウ酸、チオシアン酸エチレン、、チオフェンカルボン酸、デソキサル酸、テトラクロロフタル酸、フェニルプロピオン酸、フェニルケイ皮酸、フタル酸、フタル酸イミド、フランジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、マンデル酸、メチルアントラニル酸、テレビン酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタルアルデヒド酸、トルキシン酸、ニコチン酸、馬尿酸、バニリン酸、ヒダントイン酸、ヒドロアクリル酸、ビフェニルカルボン酸、ピペリン酸、ピペロニル酸、イソフタロニトリル、アミノサリチル酸、アミノフェニルプロピオン酸など。 【0100】<アミン類及びアミド化合物>メチル尿素、エチル尿素、アセチル尿素、アセチルメチル尿素、ベンゾイル尿素、フェニルチオ尿素、トルエンジアミン、アミノクレゾール、アミノフェノール、アミノベンズアルデヒド、アントリルアミン、キノリルアミン、サリチルアミド、ジフェニルアセトアミド、ジベンズアミド、ジアミノジフェニルアミン、スクシンアミド、スチルベンジアミン、ブロモアニリン、アミノナフトール、アミノアントラキノン、ナフチルヒドラジン、ナフタレンジアミン、バレルアミド、ピルビンアミド、フェナントリルアミン、ブロモアセトアミド、ボルニルアミン、ヒドロキシイミノアセトン、ピペラジンジオンなど。 【0101】<芳香族化合物>ジクロロベンゼン、トリヨードベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンゼン、ジジニトロトルエン、ジニトロフェノール、ジヒドロアセトフェノン、ジメチルヒドラゾベンゼン、ジヒドロキシベンズアルデヒド、ベンズフェノン、フェニルヒドラゾン、ベンズアルデヒドアジン、ニトロクレゾール、ニトロベンゾニトリル、ヒドロキシイミノアセトフェノン、ヒドロキシベンズアルデヒド、フェノールフタレイン、フタルイミド、フェニルフタルイミド、サリチルアルコール、ニトロキノリン、ベンゾイソキノリン、キシレンジオール、トルエンジオールビフェニルジオール、トリフェニルイミダゾール、トリフェニルグアニジン、トリフェニレン、トリベンゾイルメタン、トリベンゾイン、テトラフェニルメタン、ヘキサフェニルエタン; ナフタレン、クロロナフタレン、ナフチルケトン、ナフトール、ジニトロナフタレン、ナフタレンジオール、メチルアントラセン、フェナントレンジオールなど。 【0102】<キノン類>ジクロロヒドロキノン、ジクロロベンゾキノン、テトラクロロヒドロキノン、ジヒドロキシベンゾキノン、ジメチルベンゾキノン、トリクロロヒドロキノン、トリクロロベンゾキノン、ベンゾアントラキノン、トルキノン、ナフトキノン、ジヒドロキシナフトキノン、アセナフテンキノン、アミノアントラキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、トリヒドロキシアントラキノン、トリヒドロキシメチルアントラキノン、ブロモアントラキノン、ジヒドロキシアントラキノン、クリセンキノンなど。 【0103】<アゾ化合物群、複素環式化合物、ハロアルカン、その他>アゾキシ二安息香酸、アゾキシベンゼン、アゾナフタレン、アゾ二安息香酸、インジゴ、オキシインジゴ、アリザリンブルー、テトラゾール、テトラメチルピロール、キノリンジオール、キンヒドリン、アトロピン、アロキサン、イサチン、インジルビン、インダントロン、ガランギン、クロモン、クロラニル、コデイン、コリン、サリシン、サルコシン、シアノグアニジン、シアメリド、シクロヘキサンジオン、ジチオオキサミド、ジヒドロアクリジン、ジヒドロキシクマリン、ジメチルグリオキシム、シンコニン、ソラニジン、チミン、ジメチルキサンチン、テトラジン、テバイン、ナルコチン、ニトロレソルシノール、パパベリン、ハルミン、ブロマニル、ペリレン、ルテオリン、グリオキシム、ショウノウ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジヨードエタン、ヘキサニトロエタン、ヘキサブロモエタン、ペンタブロモアセトン、各種ポリマー類など。 【0104】[撥水剤]撥水剤としては、フッ素やシリコーン系の撥水剤またはこれらの組み合わせを用いることが可能であるが、フッ素を含有したものが表面エネルギーを低下させる効果が大きいため好ましく、特にフルオロアルキルシランが好ましい。この他、パーフルオロアルキルカルボン酸系、パーフルオロアルキルスルホン酸系、パーフルオロアルキルリン酸系等の表面処理剤、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、PTFE に代表される各種フッ素系樹脂、フッ化グラファイト、フッ化ピッチ等も適用が可能である。撥水処理は微小な凸凹を有する下地層同様、湿式法が効率やコストの点で最も優れるが、原料によっては蒸着法やスパッタ法も可能である。 【0105】[光触媒]添加することが可能な光触媒材料としては酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅のうち一種類若しくは複数を組み合わせて使用できる。これらの前駆体としては、これらの光触媒を加熱により生じる各種の無機、有機化合物が挙げられ、例えば酸化チタンの場合は水酸化チタン、チタンテトラプロポキシド等のチタンアルコキシド類、塩化チタン、硫酸チタン、臭化チタン、ヨウ化チタン、ビスシクロペンタジエニルチタン、ジカルボニルビスシクロペンタジエニルチタン、クロロビスシクロペンタジエニルチタン、ジクロロビスシクロペンタジエニルチタン、ジメチルビスシクロペンタジエニルチタン、トリクロロシクロペンタジエニルチタン、テトラベンジルチタンなどが挙げられる。 【0106】ここで、膜の構成体は大きさや溶解性の条件を満たしていれば、複数の物質を組み合わせたものであってもよいが、例えば酸化チタン光触媒については有機撥水剤を分解する性質を備えているため、酸化チタン光触媒を膜に入れる場合にはその濃度を2wt%程度に調整するか(これについては、後の実施例において検証される)、または、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム等の酸化物または水酸化物もしくはそれらの混合物で基材を構成し、これらの基材の0.5〜60wt%の範囲の量で酸化チタン光触媒を添加することが望ましい。光触媒の添加量がこれより多くなると光触媒活性は増加するが、撥水材の耐久性は低下してしまうために接触角が短時間で低下することとなる。 【0107】[用途]所定の材料に超撥水性を付与した場合には、着雪雨滴防止、汚れ防止、防錆、電気絶縁性、離型性など様々な目的に対して、従来の接触角100〜110°程度の撥水性表面に較べ、極めて高い効果が期待できる。また、水を介した化学反応の進行や局部電池の形成、電気回線のショート、あるいは水素結合の形成を抑えることができる。 【0108】そしてその適用範囲は、自動車や新幹線等の乗り物の外装、船底塗料、外灯、台所及び台所用品、浴室や洗面所とその用品、漁業用網、ブイ、歯科用品、電気機器、住宅の床や外装、玄関ドア及びノブ、屋根、プール及びプールサイド、橋脚、門扉、ポスト、ベンチ、鉄塔、アンテナ、電線、ガレージ、テント、傘、レインコート、スポーツ用品およびスポーツ衣料、ヘルメット、靴や鞄などの皮革製品、カメラ、ビデオ、紙、スピーカー等の屋外拡声器や音響機器、カーテン、絨毯、ガソリンスタンド等の注油ノズル、精油所等の化学プラント、金属製工具類、釘やネジ、バケツ類等、広範囲に及ぶ。 【0109】因みに、従来技術に係る透明超撥水性膜では、長期の露出によって親水性やさほど撥水性でない汚れが膜上に堆積することにより、高度の撥水性が失われてしまうが、これに対する対策として、撥水性と光触媒の分解活性の組み合せにより一段と優れた防汚効果を得た例についての報告はない。 【0110】 【実施例】以下、本発明の実施例を示す。なお、本実施例において使用した表面粗さ測定器と測定精度は下表の通りである。 【0111】 【表1】
【0112】 【実施例1】アセチルアセトンアルミニウムのエタノール溶液 (2.37wt%) に硝酸含有ベーマイト0.24wt% を分散したゾルを、パイレックスガラスにスピンコートで塗布後、490°Cのホットプレート上で10秒間で焼成するサイクルを10回繰り返した。 【0113】スピンコート後は白濁していた膜は、加熱により白煙を発して透明化した。この膜の水の接触角は0°であった。得られた膜付きパイレックスガラスを当量の水で加水分解したフルオロアルキルシランの2%メタノール溶液に40分間浸した後、140℃で20分乾燥して撥水処理を行った。 【0114】得られた膜表面の平均粗さは99nm、最大粗さ1μm、透過率80〜95%、撥水処理後の接触角は150°であり、平均細孔径200nmの微小な凸凹を有する透明膜であった。 【0115】 【実施例2】実施例1の方法でアセテルアセトンアルミニウム0.366g、エタノール10gに対してベーマイト量を振った場合の撥水膜の接触角と転落角の様子を図11に示す。この図11により、ベーマイト量を変化させた場合には、接触角については極小が存在し、転落角については極大が存在するということがわかり、これにより、組成を最適化しないと接触角と転落角が大きく変わってしまうということがわかる。 【0116】 【実施例3】アセチルアセトンアルミニウムのエタノール溶液 (2.37wt%) に硝酸含有ベーマイト0.24wt% とアセチルアセトンチタン0.2wt%をそれぞれ分散したゾルを、パイレックスガラスにスピンコートで塗布後、490℃のホットプレート上で10秒間で焼成するサイクルを5回繰り返し、透明膜を作製した。 【0117】この膜の光触媒活性は1mmolのメチレンブルー溶液に1時間膜を浸して乾燥後、1.7mW/cm2のブラックライト下で光触媒による分解挙動を580nmでのABSで評価した(高見和之、中曽根隆義、橋本和仁、藤嶋昭、工業材料vol46, No.5, 102-105(1998))。 【0118】その結果、初期5分のABS変化は-0.0006ABS/min,であった。一方この膜を暗所に保管した場合、ABSの変化は認められなかった。この膜の水の接触角は8.7°であった。また、当量の水で加水分解したフルオロアルキルシランの2%メタノール溶液に40分間膜を浸した後、140℃で20分乾燥して撥水処理を行ったところ、得られた膜表面の平均粗さは37nm、最大粗さ0.33μm、透過率90%以上、撥水処理後の接触角は153°であり、平均細孔径200nmの微小な凸凹を有する透明膜であった。 【0119】この膜に対し、室温で1.7mW/cm2の強度のブラックライトにて光を照射し続けたところ、水との接触角が徐々に低下したが500時間を経過してもなお146°を示していた。 【0120】 【実施例4】アセチルアセトンアルミニウムのエタノール溶液 (2.37wt%) に硝酸含有ベーマイト0.24wt% とアセチルアセトンチタン1.0wt%をそれぞれ分散したゾルを、パイレックスガラスにスピンコートで塗布後、490℃のホットプレート上で10秒間で焼成するサイクルを5回繰り返し、透明膜を作製した。 【0121】この膜の光触媒活性は1mmolのメチレンブルー溶液に1時間膜を浸して乾燥後、1.7mW/cm2のブラックライト下で光触媒による分解挙動を580nmでのABSで評価した。 【0122】その結果、初期5分のABS変化は-0.001ABS/min,であった。この膜の水の接触角は5.2°であった。また、当量の水で加水分解したフルオロアルキルシランの2%メタノール溶液に40分間膜を浸した後、140℃で20分乾燥して撥水処理を行ったところ、得られた膜表面の平均粗さは48nm、最大粗さ0.67μm、透過率80〜90%、撥水処理後の接触角は151.7°であり、平均細孔径200nmの微小な凸凹を有する透明膜であった。 【0123】この膜に対し、室温で1.7mW/cm2の強度のブラックライトにて光を照射し続けたところ、水との接触角が徐々に低下した、100時間を経過したところで144°を示していた。 【0124】 【実施例5】アセチルアセトンアルミニウムのエタノール溶液 (2.37wt%) に硝酸含有ベーマイト0.24wt% とアセチルアセトンチタン2.0wt%をそれぞれ分散したゾルを、パイレックスガラスにスピンコートで塗布後、490℃のホットプレート上で10秒間で焼成するサイクルを5回繰り返し、透明膜を作製した。 【0125】この膜の光触媒活性は1mmolのメチレンブルー溶液に1時間膜を浸して乾燥後、1.7mW/cm2のブラックライト下で光触媒による分解挙動を580nmでのABSで評価した。 【0126】その結果、初期5分のABS変化は-0.0012ABS/min,であった。この膜の水の接触角は4.8°であった。また、等量の水で加水分解したフルオロアルキルシランの2%メタノール溶液に40分間膜を浸した後、140℃で20分乾燥して撥水処理を行ったところ、得られた膜表面の平均粗さは53nm、最大粗さ0.83μm、透過率65〜85%、撥水処理後の接触角は155°であり、平均細孔径200nmの微小な凸凹を有する透明膜であった。 【0127】この膜に対し、室温で1.7mW/cm2の強度のブラックライトにて光を照射し続けたところ、水との接触角が徐々に低下した、36時間を経過したところで76°となった。 【0128】 【比較例1】ベーマイト単独で実施例1の濃度で成膜した。その結果透明な緻密構造の膜となり、表面の平均粗さ20nm、最大粗さ55nm、光透過率90%の透明膜が作製できたが、緻密であるため撥水効果が不充分で、撥水処理前の接触角は14.5°、撥水処理後の接触角は116°であった。 【0129】 【比較例2】アセチルアセトンアルミニウムのエタノール溶液 (2.37wt%) に硝酸含有ベーマイト0.24wt% とアセチルアセトンチタン1.0wt%とシリカアルコキシド0.1wt%を添加分散したゾルを、パイレックスガラスにスピンコートで塗布後、490℃のホットプレート上で10秒間で焼成するサイクルを3回繰り返し、透明膜を作製した。この膜の水の接触角は4.3°であった。膜表面の平均粗さは183nm、最大粗さ1.88μm、透過率は60〜85%であった。 【0130】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、撥水性・滑水性が高い状態を長時間にわたって維持することができる撥水性・滑水性透明膜を容易に作製することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】899000024 【氏名又は名称】株式会社 先端科学技術インキュベーションセンター
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| 【出願日】 |
平成11年10月18日(1999.10.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091384 【弁理士】 【氏名又は名称】伴 俊光
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| 【公開番号】 |
特開2001−152138(P2001−152138A) |
| 【公開日】 |
平成13年6月5日(2001.6.5) |
| 【出願番号】 |
特願平11−294636 |
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