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【発明の名称】 4級アンモニウム塩を含有するカチオン電着塗料組成物
【発明者】 【氏名】迎 孝洋

【氏名】安藤 亮

【氏名】児島 与志夫

【氏名】仲野 伸司

【氏名】山田 光夫

【要約】 【課題】揮発性有機化合物である可塑剤を用いることなく、十分な膜厚を得ることができるカチオン電着塗料組成物を提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】炭素数8〜24の長鎖アルキルアミド基を有する4級アンモニウム塩を、塗料樹脂固形分の0.01〜10重量%含有するカチオン電着塗料組成物。
【請求項2】前記4級アンモニウム塩が、さらにヒドロキシアルキル基を有している請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカチオン電着塗料組成物、特に揮発性有機化合物の量を低減したカチオン電着塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】カチオン電着塗料は、防食性が優れていることから自動車ボディや部品などの下塗りに広く用いられている。しかし、十分な防食性を発揮させるには、ある程度の膜厚を確保しておく必要性がある。
【0003】このため、一般的なカチオン電着塗料では、可塑剤としてブチルセロソルブやヘキシルセロソルブなどの有機溶剤を添加して、析出した塗膜の粘度を低下させることにより水素ガスの発生を助け、膜厚を確保していた。
【0004】一方、最近、環境に対する意識が高まるにつれ、大気中に排出される有機溶剤の量を減少させようとする動きがこれまで以上に大きくなってきた。カチオン電着塗料は、水を媒体とした水性塗料ではあるが、上記の可塑剤は揮発性有機化合物(VOC)であるため、その使用は環境にとって好ましいものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、揮発性有機化合物である可塑剤を用いることなく、十分な膜厚を得ることができるカチオン電着塗料組成物を提供することにある。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のカチオン電着塗料組成物は、炭素数8〜24の長鎖アルキルアミド基を有する4級アンモニウム塩を、塗料樹脂固形分の0.01〜10重量%含有している。この4級アンモニウム塩は、さらにヒドロキシアルキル基を有していてもよい。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のカチオン電着塗料組成物に含有される4級アンモニウム塩は、炭素数8〜24の長鎖アルキルアミド基を有している。この長鎖アルキルアミド基は、R−CONH−で示すことができるものであり、ここでRは炭素数8〜24のアルキル基を示す。炭素数が8未満だと、カチオン電着塗料の水性媒体に4級アンモニウム塩が溶出してしまい、目的とする効果が得られない。一方、炭素数24を上回るものは、製造が困難である。
【0008】上記Rとしては、オクチル基、ノニル基、デシル基、モノデシル基、ドデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノニルフェニル基などを挙げることができる。なお、本明細書におけるアルキル基は、ベンゼン環などの芳香族環を有するものも含むものとする。
【0009】なお、上記長鎖アルキルアミド基は、実質的にアルキレン基を介して4級化された窒素原子に結合している。アルキレン基としては炭素数6以下のものが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などを挙げることができる。
【0010】また、上記4級アンモニウム塩は、さらにヒドロキシアルキル基を有していることが好ましい。水酸基を分子中に有することで、電着後の加熱時に硬化反応に関与し、塗膜内に固定化することができると考えられるためである。上記ヒドロキシアルキル基のアルキル部分の炭素数は1〜6であることが好ましい。7以上のものは製造が困難である。上記ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基、ジヒドロキシエチル基、ジヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基を挙げることができる。
【0011】上記4級アンモニウム塩において、長鎖アルキルアミド基およびヒドロキシアルキル基以外に窒素と結合している基は特に限定されないが、例えば、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましい。
【0012】上記4級アンモニウム塩のアニオン部分は特に限定されないが、カチオン電着塗料に用いられる中和酸がアニオン化したものであることが好ましい。この中和酸としては、ぎ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、ほう酸、酪酸、ジメチロールプロピオン酸、サリチル酸、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などを挙げることができる。
【0013】上記4級アンモニウム塩の具体例としては、C919CONH(CH23+(C492CH2CH2OH・Cl-、C1735CONH(CH23+(CH32CH2CH(OH)CH2OH・C64(OH)COO-、C1735CONH(CH23+(C252CH2CH(OH)CH2OC49・NO3-などが挙げられる。
【0014】上記4級アンモニウム塩は、以下のようにして合成することができる。まず、炭素数8〜24の長鎖アルキルカルボン酸またはそのハロゲン化物と1級アミノ基と2級または3級アミノ基とを有するジアミンとを反応させる。この反応は、溶媒を用いずに行うことができる。ジアミンが2級アミノ基を有する場合には、この2級アミノ基をアルキルハライドなどにより3級化する。この3級化手順が入るため、ジアミンは1級アミノ基と3級アミノ基とを有するものを用いることが好ましい。また、ここでジアミンがヒドロキシアルキル基を有するものを用いることで、4級アンモニウム塩にヒドロキシアルキル基を導入することができる。
【0015】上記炭素数8〜24の長鎖アルキルカルボン酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などを挙げることができる。また、1級アミノ基と2級または3級アミノ基とを有するジアミンとしては、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミンなどを挙げることができる。
【0016】こうして得られた長鎖アルキルアミド基と3級アミノ基とを有する化合物に、酸化合物の水溶液を加えて3級アミン塩を形成する。長鎖アルキルアミド基と3級アミノ基とを有する化合物は一般的に水不溶性であるが、塩の形成により水溶化するため、反応の進行を目視で確認することができる。
【0017】次いでここにエポキシ化合物を反応させて4級化を行うことにより、ヒドロキシアルキル基の導入を行う。エポキシ化合物としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、グリシドール、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェノールグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテルなどを用いることができる。
【0018】このようにして4級アンモニウム塩を含む水溶液を得ることができる。なお、その濃度は任意に設定できるが、例えば、20〜70重量%とすることができる。
【0019】本発明のカチオン電着塗料組成物における上記4級アンモニウム塩の量は、塗料樹脂固形分の0.01〜10重量%である。0.01重量%未満だと本発明の効果を得ることができず、10重量%を上回ると得られる塗膜物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0020】次に、本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれるカチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂について説明する。このカチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂は、出発原料であるエポキシ樹脂が有するエポキシ環を1級アミン、2級アミン、3級アミン酸塩等のアミン類およびスルフィドと酸との混合物との反応によって開環して製造される。なお、本明細書における「カチオン性基」とは、そのもの自身がカチオンであるものおよび酸を加えることによってカチオンとなるものを意味するものである。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5−306327号公報に記載されたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。このエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のNCO基をメタノール、エタノール等の低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって得られるものである。
【0021】上記出発原料であるエポキシ樹脂は、アミン類やスルフィドによるエポキシ環の開環反応の前に、2官能のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸等により鎖延長して用いることができる。また同じくエポキシ環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良等を目的として、一部のエポキシ環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルのようなモノヒドロキシ化合物、および、ステアリン酸やオクチル酸のようなモノカルボン酸を付加して用いることもできる。
【0022】エポキシ環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酸塩などの1級、2級または3級アミン酸塩でを挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンの様なケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミンも使用することができる。これらのアミン類は、エポキシ環に対して80%以上反応させる必要がある。
【0023】これに対して、スルフィドの例として、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、ジフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ペンタメチレンスルフィド、チオジエタノール、チオジプロパノール、チオジブタノール、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−ブタノール、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−3−ブトキシ−1−プロパノールなどを挙げることができ、酸の例として、ぎ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、ほう酸、酪酸、ジメチロールプロピオン酸、塩酸、硫酸、りん酸、N−アセチルグリシン、N−アセチル−β−アラニン、スルファミン酸などを挙げることができる。
【0024】上記カチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂の数平均分子量は600〜4000の範囲が好ましい。数平均分子量が600未満の場合は、得られる塗膜の耐溶剤性および耐食性等の物性が劣ることがある。反対に4000を超える場合は、樹脂溶液の粘度制御が難しく合成が困難なばかりか、得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難となることがある。さらに高粘度であるがゆえに加熱・硬化時のフロー性が悪く塗膜外観を著しく損ねる場合がある。また、上記カチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂のアミノ価またはスルホニウム価は30〜150、より好ましくは、45〜120であることが好ましい。なお、アミノ価またはスルホニウム価が30未満の場合は、安定なエマルションを得にくく、150を越えると、クーロン効率や再溶解性等の電着塗装作業性に問題が生じるおそれがある。
【0025】次に、本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれるブロックイソシアネート硬化剤について説明する。上記ブロックイソシアネート硬化剤は、2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、イソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るブロック剤を反応させて得られるものであり、カチオン電着塗料に用いられているものを使用することができる。
【0026】上記ポリイソシアネート化合物としては、トリメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のアルキレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のシクロアルキレン系ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジイソシアネートジエチルベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリイソシアネートベンゼン、トリイソシアネートトルエン等のトリイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンテトライソシアネート等のテトライソシアネート、トリレンジイソシアネートの2量体または3量体等の重合ポリイソシアネート、上記各種ポリイソシアネート化合物にエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヒマシ油、トリエタノールアミン等の低分子活性水素含有有機化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物等が挙げられる。
【0027】一方、上記ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノールおよびエチルフェノールなどのフェノール系ブロック剤;ε―カプロラクタム、δ―バレロラクタム、γ―ブチロラクタムおよびβ―プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチルなどのアルコール系ブロック剤;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミドおよびマレイン酸イミドなどのイミド系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系ブロック剤;などを挙げることができる。なお、低温硬化性が必要であるときには、フェノール系、ラクタム系、オキシム系ブロック剤より選ばれた少なくとも1種のブロック剤を用いることが好ましい。
【0028】上記カチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分重量比率は、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは60/40〜80/20である。前記割合から外れると、硬化性に問題を生じるおそれがある。
【0029】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記成分を水分散するための中和酸をさらに含んでいる。この中和酸としては、先にスルフィドと組み合わせて用いられる酸と同じものを挙げることができる。この酸の量は、上記カチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂中のアミノ基またはスルフォニウム基の量によって異なるものであり、水分散できる量であればよい。
【0030】本発明のカチオン電着塗料組成物は、さらに顔料および顔料分散樹脂を含んでいてもよい。上記顔料は、通常用いられる顔料であれば特に制限はなく、例えば、二酸化チタン、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレーおよびシリカのような体質顔料、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウムおよびリンモリブデン酸アルミニウムのような防錆顔料等が挙げられる。上記顔料分散樹脂としては、一般にカチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基および/または3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等などが用いられる。
【0031】上記顔料分散用樹脂および顔料は、所定量を混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミルなどの通常の分散装置を用いて分散させることにより、顔料分散ペーストを得る。この顔料分散ペーストは、カチオン電着塗料組成物中の顔料が固形分として0〜50重量%になる量を用いることができる。
【0032】さらに、本発明のカチオン電着塗料組成物はこの他に、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤などの慣用の塗料用添加剤を含んでいてもよい。
【0033】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上述のカチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤および上記4級アンモニウム塩、ならびに必要に応じて顔料分散ペーストおよび塗料用添加剤を混合して得ることができる。上記4級アンモニウム塩は水溶性であるので、以下のような手順で行うことが好ましい。まず、エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤とを混合し、中和酸を加える。ここに4級アンモニウム塩を加えた後、これを水単独かまたは水と親水性有機溶剤との混合物である水性媒体に分散させ、必要に応じて、顔料分散ペーストを混合することにより、本発明のカチオン電着塗料組成物を得ることができる。なお、添加剤は任意の段階で系に加えることができる。
【0034】本発明のカチオン電着塗料組成物は、基材に対しカチオン電着塗装される。カチオン電着塗装はそれ自体既知の方法に従うものであって、一般には、脱イオン水で希釈することにより、固形分濃度を5〜40重量%、好ましくは、15〜25重量%となるように設定し、さらに、pHを5.5〜8.5の範囲内に調整した上記カチオン電着塗料組成物からなる電着浴を通常、浴温20℃〜35℃に調整し、負荷電圧100〜450Vの条件で行うことができる。
【0035】電着塗装の膜厚は、乾燥膜厚で、5〜40μm、好ましくは、10〜30μmの範囲内が適当であり、この膜厚になるように上記電着塗装条件を設定することが好ましい。また、塗膜の焼き付けは、一般に100〜220℃、好ましくは、140〜200℃で10〜30分間の時間の範囲で行うことが適している。
【0036】このように形成された本発明のカチオン電着塗膜は、その上に、必要に応じて中塗り塗膜を形成した後、上塗り塗膜を形成することができる。なお、上記中塗り塗膜および上塗り塗膜の形成は、自動車等の外板塗装に用いられる塗料および塗装条件を適用することができる。
【0037】
【実施例】以下の製造例および実施例において、「部」および「%」は特記しない限り重量基準による。
【0038】製造例1 カチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂の製造撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を撹拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル57部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体42部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0039】次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、エポキシ当量410部になるまで130℃で反応させた。
【0040】続いて、ビスフェノールA87部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1190となった。その後、反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79重量%MIBK溶液25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、ガラス転移温度が22℃のカチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0041】
製造例2 ブロックイソシアネート硬化剤の製造ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0042】製造例3 顔料分散樹脂の製造まず、撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここへジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を撹拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
【0043】次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間撹拌して、4級化剤を調製した。
【0044】次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
【0045】反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル1390.2部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水37.0部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
【0046】製造例4 顔料分散ペーストの製造サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
【0047】実施例1 カチオン電着塗料組成物の製造製造例1で得られたカチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。これに中和率が45%になるよう氷酢酸を添加した後、固形分に対して1.5重量%相当量の4級アンモニウム塩C919CONH(CH23+(C492CH2CH2OH・Cl-(1)を加え、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
【0048】このエマルション1697部および製造例4で得られた顔料分散ペースト393.9部と、イオン交換水1899.3部およびジブチル錫オキサイド9.8部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物における顔料と樹脂固形分との比率は1/4.5であった。
【0049】実施例2および3 カチオン電着塗料組成物の製造実施例1において、4級アンモニウム塩(1)を下記の式で表されるC1735CONH(CH23+(CH32CH2CH(OH)CH2OH・C64(OH)COO-(2)およびC1735CONH(CH23+(C252CH2CH(OH)CH2OC49・NO3-(3)にそれぞれ変更した以外は同様にしてカチオン電着塗料組成物を得た。
【0050】比較例1実施例1において、4級アンモニウム塩(1)を用いなかったこと以外は同様にして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0051】比較例2実施例1において、4級アンモニウム塩(1)をテトラアンモニウムブロマイドにそれぞれ変更した以外は同様にしてカチオン電着塗料組成物を得た。
【0052】上記実施例1〜4ならびに比較例1および2で得られたカチオン電着塗料組成物について、下記の項目の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0053】<塗層電圧と膜厚との関係>リン酸亜鉛処理板に、150V、200Vおよび250Vで3分間電着を行った。得られた析出塗膜を170℃で20分間焼き付けて硬化膜を得、その膜厚を測定した。
【0054】<一定膜厚に必要な塗装電圧>170℃で20分間焼き付けたときの硬化膜厚が20μmになるように塗装電圧を設定した。
【0055】<耐食性>先に設定した塗装電圧で電着および焼き付けを行って得られた20μmの膜厚を有する硬化塗膜にカッターナイフでカットを入れ、55℃の5%の塩水に10日間浸積した後の錆幅を測定した。
【0056】
【表1】

【0057】本発明の4級アンモニウム塩を含むカチオン電着塗料組成物は、4級アンモニウム塩を含まないカチオン電着塗料組成物に比べて、十分な膜厚を得ることができる。また、長鎖アルキルアミド基を持たない4級アンモニウム塩を含んだものでは、膜厚の増加させることができなかったばかりでなく、かえって耐食性の低下が確認された。これに比べて、本発明のカチオン電着塗料組成物では、耐食性の低下はほとんど認められなかった。
【0058】
【発明の効果】本発明のカチオン電着塗料組成物は、炭素数8〜24の長鎖アルキルアミド基を有する4級アンモニウム塩を含有している。この4級アンモニウム塩は長鎖アルキルアミド基を有していることから、カチオン電着塗料組成物において水性媒体に溶出せず、電着された膜中に存在し、導電性を高めているものと考えられる。また、上記4級アンモニウム塩はヒドロキシアルキル基を有することで、電着後の加熱時に硬化反応に関与して、塗膜内に固定化することができ、塗膜物性の低下を防ぐことができる。
【0059】カチオン電着塗料組成物にこのような性質を有する4級アンモニウム塩を含有させることで、造膜時の導電性が高まり、可塑剤として有機溶剤を用いなくても防食性を発現する膜厚を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【出願日】 平成12年5月19日(2000.5.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−323221(P2001−323221A)
【公開日】 平成13年11月22日(2001.11.22)
【出願番号】 特願2000−147208(P2000−147208)