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【発明の名称】 カーテン安定性に優れる塗料及び塗装製品とその製造方法
【発明者】 【氏名】金井 洋

【氏名】古川 博康

【要約】 【課題】カーテン安定性に優れる塗料及び塗装製品とその製造方法の提供。

【解決手段】(0.14×σ×ρp 0 .34 ×μ-0.45 )×N×106 ×1.2/(V×ρf )≦Hを満足するカーテン安定性に優れる塗料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の式を満足するカーテン安定性に優れる塗料。
(0.14×σ×ρp 0.34×μ-0.45 )×N×106 ×1.2 /(V×ρf )≦Hただし、σ:塗料の表面張力 N/mρp :塗料の密度 kg/m3μ:塗料の粘度 Pa・sN:塗料の不揮発分 %V:板の速度(ライン速度) m/秒ρf :乾燥後塗膜の密度 kg/m3H:製品の目標乾燥膜厚 μm【請求項2】 塗料の主樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のカーテン安定性に優れる塗料。
【請求項3】 請求項1または2に記載のカーテン安定性に優れる塗料をカーテンコーターで塗装することを特徴とする塗装製品の製造方法。
【請求項4】 請求項1または2に記載のカーテン安定性に優れる塗料による塗膜を金属板上に有することを特徴とする塗装製品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家電、建材、自動車用に用いられる塗装製品をカーテンコーターで製造する方法とその製品、及びその製造に用いる塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】カーテンコーターは、平滑な塗膜が得られる特徴があることから、工業的な塗装手段として金属板、木材、合板、プラスチック製品の塗装に用いられている。カーテン塗装方法としては、塗料溜めの下部に設けたオリフィスから塗料を重力または圧力をかけて落下させて塗料カーテンを形成する方法、塗料溜めの上部から塗料を流出させて塗料カーテンを形成する方法、ダイから圧力をかけて塗料を押し出して塗料カーテンを形成する方法、塗料を計量するロール間を通過した塗料をロールからブレードでかきとることによって塗料カーテンを形成する方法など、いくつかの方法がある。工業的には、塗装する膜厚は要求される性能を満足する範囲で、できるだけ薄いことが、コストの点から重要である。しかし、いずれの方法においても、塗料カーテンが形成できる最低の塗料流量が存在し、この流量とライン速度とによって塗装可能な下限膜厚が決定される。ライン速度は、塗料の乾燥やラインの機械的な能力等で制約を受けるため、より膜厚の薄い塗膜を形成するためには塗料流量が少ないときにも、塗料カーテンが安定に形成されることが必要である。この塗料カーテンの安定性は、塗装機の工夫によっても向上できるが、塗料そのものによって決定される部分が多い。従って、塗料カーテンがより安定に形成できる塗料を選択することが重要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、カーテンコーターで塗布する際に、塗料カーテンが安定に形成され、かつカーテン塗布の妨げになる欠点が少ない塗料を提供し、カーテンコーターによる製品とその製造を効率よくおこなう方法をも提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】発明者らは、ポリエステル樹脂系を中心とする塗料において、塗料カーテンの安定性と塗料組成や塗料物性との関係を調べた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、塗料カーテンが安定に形成できる塗料は、次の式を満足する。
(0.14×σ×ρp 0.34×μ-0.45 )×N×106 ×1.2 /(V×ρf )≦Hσ:塗料の表面張力 N/mρp :塗料の密度 kg/m3μ:塗料の粘度 Pa・sN:塗料の不揮発分 %V:板の速度(ライン速度) m/秒ρf :乾燥後塗膜の密度 kg/m3H:製品の目標乾燥膜厚 μmまた、上記の条件に合う塗料をカーテンコーターで塗装することによって、目的とする膜厚の塗装製品を安定して製造することができる。
【0005】以下の説明においてS=1.4×σ×ρ0.34×μ-0.45 とし、Sを安定指数と呼ぶ。本発明において、塗料用樹脂としては、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の2種類以上が併用されていても良いし、これらの共重合樹脂等も含まれる。これらの樹脂を架橋するのに必要な他の薬剤を含有していても良い。塗装製品が後から成形加工される場合には、加工性の良いポリエステル系の樹脂を主成分とする塗料が良い。
【0006】塗料の表面張力は、Byk社製の「ダイノメーター」を用いて20℃で測定した値である。5回以上測定し、それらの算術平均値を求める。塗料の表面張力は、使用する溶剤の種類、樹脂の種類、添加剤の種類等で決まるが、樹脂の種類は塗膜に要求される性能によって決められることが多く、添加剤の種類や量、溶剤の種類を変えることで調整することが望ましい。この表面張力の値の範囲は特に限定されないが、一般的には0.017〜0.072N/mの範囲にある。
【0007】塗料粘度は、E型粘度計で測定しmPa・sの単位で求める。本発明においては、トキメック(株)のE型粘度計、「TV−20型H」のローターNo「1度34分×R24」型を用いて20℃で測定した値を用いた。上記条件で、5rpmの回転数で粘度を測定した値を用いる。塗料粘度は、樹脂の種類、溶剤の種類、塗料中の固形分量などで決まる。通常は、塗料中の固形分量(あるいは溶剤量)で調整されることが多い。粘度の範囲は特に限定されるものではないが、一般的には0.01〜3Pa・s程度の範囲である。
【0008】塗料密度は、測定方法によらずほぼ一定の値が得られるので、特に測定方法は指定されない。たとえば、JIS K5400の4.6の方法によれば良い。塗料密度は、樹脂や顔料の種類や量、固形分の量、溶剤の種類や量、添加剤の種類や量によって決まる。カーテンコーターで塗布される塗料の密度は、一般的には950〜1800kg/m3程度の範囲である。
【0009】塗料の不揮発分とは、塗料中の成分の内、所定の条件で乾燥硬化した後にも塗膜として残る成分の重量%を言う。JIS K5400の加熱残分の試験法によるのが一般的であるが、加熱硬化条件によって若干値が変わるので、実際に硬化乾燥する条件で測定した値を用いることが望ましい。発明者らは、塗料の密度、塗料の粘度、塗料の表面張力がある特定の関係を満足する場合に、塗料カーテンが安定で、薄い膜厚の塗装製品でもカーテン切れなどの不具合を生じることなく効率的に製品が製造できることを見いだした。すなわち、塗料の表面張力(N/m)をσ、塗料密度(kg/m3)をρ、塗料粘度(Ps・s)をμとしたときに、安定なカーテンを形成できるカーテンの最低流量Qは概ね、 Q=0.14×σ×ρp 0.34×μ-0.45 (単位はkg/(m・秒)) (1)式の式で表せることを見出した。被塗物の搬送速度をV(m/秒)、乾燥硬化後の塗膜の密度をρf (kg/m3)、塗料の不揮発分をN(%)、塗料カーテンの流量をQ(kg/(m・秒))とすると、塗装後の乾燥膜厚H(μm)は、 Q×N×106 /(V×ρf )=H (2)式で表せる。また、(1)式で求められるのは、カーテンの最低流量であり、この最低流量に1.2の安全係数を乗ずると、実際の工業的な生産時にも問題ない安定性が得られることがわかった。これらから、操業条件や塗料の条件として、 (0.14×σ×ρp 0.34×μ-0.45 )×N×106 ×1.2 /(V×ρf )≦H (3)式の式が満足できるとき、カーテンコーターによる塗布は安定して行えることを知見した。
【0010】この塗料には、塗膜を構成する主成分となる樹脂、架橋剤などのほかに、これらの反応することのできるシランカップリング剤、チタンカップリング剤などが含まれてもよい。また、樹脂の顔料への分散性を向上するために加える合成樹脂成分も含まれてよい。その他、顔料成分としては、チタン白、酸化鉄、カーボンブラック、亜鉛華などの無機着色顔料、シアニンブルーなどシアニン系やアゾ系などの有機着色顔料、硫酸バリウム、シリカ、カオリンなどの体質顔料の他、樹脂ビーズ、樹脂粒子や金属箔、金属粒子、骨材など公知のものが使用できる。溶剤は、樹脂を溶解し、あるいは塗料の粘度を調整するために加えられるもので、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、酢酸ブチルなど公知のものが使用できる。
【0011】その他、たとえばポリエチレン系、ポリプロピレン系、マイクロクリスタリン系、パラフィン系、フッ素系、合成樹脂系などのワックス成分、シリコン系、フッ素系、合成樹脂系のレベリング剤、アクリル系、シリコン系などの消泡剤、その他色別れ防止剤、分散安定剤などを含むことができる。上述の条件に当てはまるように塗料と操業条件を選定してカーテンコーターによって塗布すると、塗料カーテンの安定性が良いために、カーテンの切れによる未塗装部の発生や、塗装ラインの停止などのトラブルがなく、安定した操業が可能となる。
【0012】カーテン塗装方法としては、塗料溜めの下部に設けたオリフィスから塗料を重力または圧力をかけて落下させて塗料カーテンを形成する方法、塗料溜めの上部から塗料を流出させて塗料カーテンを形成する方法、ダイから圧力をかけて塗料を押し出して塗料カーテンを形成する方法、塗料を計量するロール間を通過した塗料をロールからブレードでかきとることによって塗料カーテンを形成する方法など、公知の方法を用いることができる。特に、カーテンコーターとして、塗料を計量するロール間を通過した塗料をロールからブレードでかきとることによって塗料カーテンを形成する方法(以下ローラーカーテンコーターと称する)を用いると、膜厚の制御がしやすく、特に本発明による塗料のカーテン安定性を有効に活用して薄い膜厚の塗装をするのに好適である。
【0013】塗装速度(ライン速度、つまり被塗物の搬送速度)は、任意に選択できる。塗料カーテンの流量が同じでも、被塗物の移動速度(塗装速度)を早くすると膜厚が薄くなる。一方、早すぎると塗装時に塗料カーテンと被塗物の間に空気が同伴され、泡等による欠陥、未塗装部の発生がおこりやすくなる。これらを考慮して、塗装速度は決定されれば良い。
【0014】被塗物としては、コイル状に巻いたものをほどいた連続した平板、切断された平板かもしくは平板に近い形状のもの、たとえばやや湾曲しているもの、穴が開いている物などが用いられる。種類は、たとえば金属板、金属箔、木材の板、合板、プラスチック板、プラスチックフィルム、布、紙などである。上記の被塗物に、前述の方法でカーテン塗装した後に、塗膜を乾燥する。乾燥の方法は公知の方法が適用でき、たとえば自然乾燥や、熱風加熱、誘導加熱、赤外線による加熱など塗膜に熱を与えて乾燥硬化する方法や、紫外線や電子線などの放射線を塗膜に照射して乾燥硬化する方法や、触媒を充満させたブースを通過させることによって塗膜を乾燥硬化する方法、あるいはこれらを組み合わせる方法などがあり、塗装された塗料の種類に応じて選択することができる。
【0015】被塗物にはあらかじめ塗装前処理をほどこすことも出来る。たとえば、水や溶剤等による洗浄、脱脂など被塗物表面を清浄にする処理、コロナ放電処理、火炎処理など表面に極性基を生成させて密着性を向上する処理、リン酸亜鉛処理、クロメート処理、複合酸化皮膜処理など主に金属に適用される処理、ブラシかけ、研削など凹凸を付与したり表面の密着性を阻害する成分を除去する処理、酸洗、アルカリ洗浄などの薬品処理、あるいはこれらを組み合わせた処理を施すことができる。
【0016】また、カーテンコーターによる塗布の前後に同じ手段、あるいは別の手段によって皮膜を形成することもできる。たとえば、下塗りのための塗膜を塗布、形成する、保護のための上塗り層を塗布、形成する、などである。これらは、カーテンコーターによっても良いし、その他の公知の方法、たとえばロールコーター、刷毛塗り、静電塗装、浸漬などである。
【0017】
【実施例】実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。塗料として表に示すポリエステル樹脂系塗料を用いた。塗料は白系、黒系、クリアー系で、塗料物性値も表中に示した。表面張力は、Byk社製の「ダイノメーター」を用いて20℃で測定した値である。5回測定し、それらの算術平均値を塗料の表面張力とした。
【0018】塗料粘度は、E型粘度計で測定しmPa・sの単位で求めた。本実施例においては、トキメック(株)のE型粘度計、「TV−20型H」のローターNo「1度34分×R24」型を用いて20℃で測定した値を用いた。上記条件で、5rpm の回転数で粘度を5回測定し、その算術平均値を求めた。カーテンコーターとして、塗布量制御用の2本のロールを持つローラーカーテンコーター(図1)と、スリット型のカーテンコーター(図2)とを用いた。塗料カーテンの高さ(塗料カーテンの落下点から被塗物までの垂直高さ)はいずれの場合にも15cmとした。塗料の流量は前者ではアプリケーターロール周速を変更することで制御し、後者では塗料溜めにかける塗料圧と塗料溜め下部のスリット幅で制御した。
【0019】塗料カーテンの安定性は、所定の乾燥膜厚を得るために必要な流量で塗料カーテンを形成し、所定のライン速度で鋼板コイルに連続的に塗装したときに、カーテンが切れる回数をカウントし、下記の基準で評点付けした。5:連続20分塗装時に、カーテン切れの回数が0〜1回、4:連続20分塗装時にカーテン切れの回数が2回、3:連続20分塗装時にカーテン切れの回数が3〜4回、2:連続20分塗装時にカーテン切れの回数が5回以上10回未満、1:連続20分塗装時にカーテン切れの回数が10回以上。
【0020】被塗物として、クロメート処理を施し、乾燥膜厚5μmの下塗り塗膜を形成した0.6mmの厚みの溶融亜鉛めっき鋼板のコイルを用いた。この板を表に示す速度で走らせながらカーテン塗装した。プレコート金属板製品では一般的な、乾燥膜厚で10〜20μmの製品を製造するための試験を行った。また、塗装した板を、誘導加熱炉で最高到達温度230℃で焼付けた後、塗膜の外観を目視観察し、泡等の欠陥の有無を評価した。外観が製品として問題ないものを5点、若干の不具合のあるものを4点(出荷は可能なレベル)、不具合のあるものを3点、不具合の著しいものを2点、全く問題外に不具合のあるものを1点とした。4点のもののみ製品として販売可能である。
【0021】表1に示したように、実施例では、いずれも安定性指数Sが、目標膜厚Hよりも小さくなっており、カーテンが安定で、色や塗料物性、あるいはライン速度に関わらず、目標とする膜厚の外観の良い製品が安定して製造でき、効率的であった。カーテン高さは変えていないが、カーテンの高さが変更されても、同じ考え方が適用できる。
【0022】一方、比較例では、安定性指数Sが目標膜厚Hよりも大きくなっており、カーテンの安定性に問題が生じた。カーテンが操業中に切れるため、切れた部分の鋼板が無塗装となった。無塗装部分が多くなると、製品として販売することができず、製品の歩留が大きく低下するか、もしくは販売が不可能となった。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】注1)表中のロール型塗装機は図1に示す膜厚制御用のロールを持つカーテンコーターであり、スリット型塗装機は図2に示す塗料溜めの下部にスリットを持ちここから塗料を落下させるカーテンコーターであった。
【0026】
【発明の効果】以上のように、本発明の条件にあう様に塗料と操業条件を選定すると、カーテンを安定な状態に保ったまま生産が可能であり、非常に効率的である。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年5月18日(2000.5.18)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【公開番号】 特開2001−323220(P2001−323220A)
【公開日】 平成13年11月22日(2001.11.22)
【出願番号】 特願2000−146612(P2000−146612)