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【発明の名称】 水性顔料分散液の濃度調整方法
【発明者】 【氏名】寺元 伸市

【氏名】水谷 篤

【要約】 【課題】希釈によって水性顔料分散液の濃度を調整でき、希釈後の水性顔料分散液が顔料の沈降や凝集を発生せず、貯蔵安定性、経時色相安定性等に優れたものとすることができる水性顔料分散液の濃度調整方法を得る。

【解決手段】水性顔料分散液を、(A)無機粉粒体、(B)分散剤、(C)水性媒体、及び(D)水溶性増粘剤を含有し、その構成比率が(A)成分2〜70重量%、(B)成分1〜10重量%、(C)成分20〜97重量%、(D)成分0〜3重量%である希釈剤を用いて希釈することにより濃度調整を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】水性顔料分散液を、(A)無機粉粒体、(B)分散剤、(C)水性媒体、及び(D)水溶性増粘剤を含有し、その構成比率が(A)成分2〜70重量%、(B)成分1〜10重量%、(C)成分20〜97重量%、(D)成分0〜3重量%である希釈剤を用いて希釈することにより濃度調整を行うことを特徴とする水性顔料分散液の濃度調整方法。
【請求項2】希釈剤における(B)成分の分子量が1000〜200000である請求項1に記載の水性顔料分散液の濃度調整方法。
【請求項3】希釈剤における(B)成分が、アルキレンオキサイド含有アニオン性分散剤である請求項1または2に記載の水性顔料分散液の濃度調整方法。
【請求項4】希釈剤における(A)成分の平均粒径が0.03〜5μmである請求項1〜3のいずれかに記載の水性顔料分散液の濃度調整方法。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかの方法により濃度調整された水性顔料分散液。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水性顔料分散液の濃度調整方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、塗料においては、環境や人体への配慮から、溶剤形塗料から水性塗料への転換が進んでいる。また、塗料の調色は、色彩の多様化、戸建住宅改装の増加、クイックデリバリーの要望の高まり等を背景に、小口化が進んでいる。従来、水性塗料の調色は、赤、青、黄、白、黒系等の水性顔料分散液を水性塗料に混合することによって行われている。しかし、小口調色においてはそのスケールが小さいために、水性顔料分散液の着色力が強すぎると、わずかな添加量で色相が変化しやすくなり、調色精度が低下してしまう。このため、小口調色を行う際には、予め水性顔料分散液を水、増粘剤含有水溶液等を用いて希釈し、着色力を抑えた形態で使用する方法が用いられている。一方、水性顔料分散液を製造する際には、アトライター、ボールミル等の分散機を用いた工程が必要となるが、このような分散工程は、通常数時間以上の時間を要する。このため、成分の一部が揮発するなどして、顔料濃度が生産ロット毎に変動しやすい。そこで、分散工程後に水等でて適度に希釈することで、顔料濃度を補正することが行われている。
【0003】しかしながら、上述のように水等を使用して顔料分散液を希釈すると、経時的に顔料の沈降や凝集が発生し、着色力が変化してしまう等の問題が生じやすく、十分な安定性の確保は困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】よって、本発明の課題は、希釈によって水性顔料分散液の濃度を調整でき、希釈後の水性顔料分散液が顔料の沈降や凝集を発生せず、貯蔵安定性、経時色相安定性等に優れたものとすることができる水性顔料分散液の濃度調整方法を得ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】これらの課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を行い、その結果、無機粉粒体、分散剤、水性媒体、及び必要に応じ水溶性増粘剤を含有する希釈剤が有効であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】即ち、本発明は、1.水性顔料分散液を、(A)無機粉粒体、(B)分散剤、(C)水性媒体、及び(D)水溶性増粘剤を含有し、その構成比率が(A)成分2〜70重量%、(B)成分1〜10重量%、(C)成分20〜97重量%、(D)成分0〜3重量%である希釈剤を用いて希釈することにより濃度調整を行うことを特徴とする水性顔料分散液の濃度調整方法。
2.希釈剤における(B)成分の分子量が1000〜200000である1.に記載の水性顔料分散液の濃度調整方法。
3.希釈剤における(B)成分が、アルキレンオキサイド含有アニオン性分散剤である1.または2.に記載の水性顔料分散液の濃度調整方法。
4.希釈剤における(A)成分の平均粒径が0.03〜5μmである1.〜3.のいずれかに記載の水性顔料分散液の濃度調整方法。を提供するものである。
5.1.〜4.のいずれかの方法により濃度調整された水性顔料分散液。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態とともに詳細に説明する。
【0008】[希釈剤]まず、本発明に使用する希釈剤は(A)無機粉粒体を必須成分として含有する。(A)成分の種類は、特に限定されないが、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。
【0009】(A)成分の希釈剤中の比率は2〜70重量%である。(A)成分の比率が2重量%より小さい場合は、水性顔料分散液を希釈した際の貯蔵安定性や経時色相安定性が低下し、70重量%より大きい場合は、希釈剤自体の流動性が確保できないおそれがある。
【0010】(A)成分の平均粒径は、0.03〜5μm、さらには0.05〜1μmであることが望ましい。このような平均粒径のものを用いることにより、希釈後の水性顔料分散液の貯蔵安定性、経時色相安定性等をより高めることができ、また、塗料の光沢への影響を抑制することもできる。
【0011】(B)分散剤としては、(A)成分を分散できるものが使用でき、例えば、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等スルホン酸塩、アルキルリン酸塩等のリン酸エステル塩などがあげられる。
【0012】(B)成分の数平均分子量は1000〜200000であることが好ましい。このような分子量であることにより、希釈後の水性顔料分散液の貯蔵安定性、経時色相安定性等を高めることができる。分子量が200000より大きな場合は、希釈剤自体の粘度が高くなるため、取扱いが不便になるおそれがある。
【0013】本発明では、(B)成分として特に、アルキレンオキサイド含有アニオン性分散剤を使用することが好ましい。これにより、希釈後の水性顔料分散液の物性を一層高めることができる。アニオン性を付与する基としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などがあげられる。また、アルキレンオキサイドとしては、メチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等があげられ、このうちエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドが好ましく使用される。アルキレンオキサイド鎖の数平均分子量は、40〜15000であることが望ましい。15000より大きい場合は、最終的な塗膜の耐水性、耐候性等が低下するおそれがあるため好ましくない。また、アルキレンオキサイド含有アニオン性分散剤の酸価は、(A)成分の分散性、塗膜の耐水性や耐候性等を考慮すると、2〜100KOHmg/gであることが望ましい。
【0014】(B)成分の希釈剤中の比率は1〜10重量%である。1重量%より小さい場合は、希釈剤の貯蔵安定性が確保できず、さらに水性顔料分散液に混合しても経時色相安定性向上等の効果を得ることができない。10重量%より大きい場合は、最終塗膜の耐水性、耐候性等に悪影響を及ぼすこととなる。
【0015】水性媒体としては、主に水が使用されるが、水以外の媒体として水溶性有機溶剤を使用することも可能である。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−3ブタンジオール、Nメチルピロリドン等があげられる。
【0016】(C)成分である水性媒体は、希釈剤中20〜97重量%の比率で含有される。20重量%より小さい場合は、希釈剤の流動性が確保できない。97重量%より大きい場合は、希釈剤の貯蔵安定性が低下することとなり、さらに水性顔料分散液に混合しても経時色相安定性向上等の効果を得ることができない。
【0017】(D)水溶性増粘剤としては、、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等を使用することができる。
【0018】(D)成分は、希釈剤中0〜3重量%の比率で含有される。3重量%より大きい場合は、希釈剤自体の流動性が低下し、また最終塗膜の耐水性、耐候性に悪影響を及ぼすこととなる。
【0019】本発明の希釈剤においては、上記成分の他、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加することもできる。
【0020】希釈剤の製造方法は、特に限定されないが、(B)及び(C)成分の混合液に(A)成分を投入し、アトライター、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の分散機によって分散する方法を好適に用いることができる。この場合(D)成分は、(A)成分の投入前または投入後に適宜添加すればよい。
【0021】[濃度調整方法]本発明では、上述の希釈剤を用いて、既存の水性顔料分散液の濃度を調整する。本発明を適用できる水性顔料分散液は、特に限定されないが、通常、着色顔料を15〜75重量%の濃度で分散したものが対象となる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黒鉛、べんがら、黄色酸化鉄、オーカー、クロムグリーン、群青等の無機顔料、ナフトール系(パーマネントレッド、パーマネントカーミン、ブリリアントカーミン、)、ピラゾロン系(ピラゾロンオレンジ、ピラゾロンレッド、ベンツイミダゾロン)、モノアゾ系(ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、ジスアゾ系(ジアリリドイエロー)等の不溶性アゾ顔料、ウオッチングレッド、パーマネントレッド、レーキレッド等の溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニングリーン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー等のフタロシアニン顔料、アントラキノン系(アントラキノンレッド、ジアントラキノンレッド、アンタントロンレッド、アンタントロンオレンジ)、ペリレン系(ペリレンレッド、ペリレンスカーレット、ペリレンマルーン)、ペリノン系、キナクリドン系(キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、キナクリドンマゼンダ、キナクリドンマルーン、キナクリドンスカーレット)、ジケトピロロピロール系(ジケトピロロピロール)、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系(キノフタロンイエロー)等の縮合多環顔料等の有機顔料があげられる。
【0022】水性顔料分散液の濃度を調整する際の混合方法としては、本発明の希釈剤を水性顔料分散剤に加え、攪拌機を用いて均一となるように攪拌すれば十分である。その混合量は、水性顔料分散液が所望の顔料濃度となるように適宜設定すればよいが、通常、水性顔料分散液100重量部に対し、1000重量部程度まで混合可能である。
【0023】本発明では、無機粉粒体、分散剤、水性媒体、及び必要に応じ水溶性増粘剤を含有する希釈剤を用いることで、水性顔料分散液の濃度を調整し、調整後の水性顔料分散液の貯蔵安定性、経時色相安定性等を十分に確保することができる。その作用機構については明らかではないが、分散剤が表面に吸着した無機粉粒体が、着色顔料粒子間で浮遊することにより、着色顔料の凝集、沈降を防止し、安定化に大きく寄与しているものと推測される。特に、分散剤として高分子量のもの、さらにはアルキレンオキサイド鎖を含有するものを使用した場合は、その立体障害効果により、安定性を一層高めることができるものと考えられる。
【0024】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】(水性顔料分散液Aの製造)分散容器に、緑色顔料であるフタロシアニングリーンを30重量%、エチレンオキサイド付加物を30重量%、水溶性増粘剤及び脱イオン水を40重量%仕込んで混合した後、ガラスビーズ(粒径約1mm)を加え、ペイントシェーカーで120分間分散し、水性顔料分散液Aを得た。
【0028】[実施例1]
(希釈剤作製)表1に示す原料を用い、表2に示す比率にて、希釈剤「P−1」を作製した。希釈剤の作製においては、分散機としてペイントシェーカーを用い、60分間分散を行った。
(濃度調整)水性顔料分散液A100重量部に対し、作製した希釈剤「P−1」を50重量部加えた後、攪拌機にて3分間攪拌して均一化した。これにより、顔料濃度を20重量%に調整した水性顔料分散液「Q−1」を得た。
(試験)分散液「Q−1」を、白色の水性塗料「プリーズコート」(エスケー化研株式会社製)99重量部に対し、1重量部加えて塗料を作製した。この塗料を、標準白紙上にウェット膜厚0.25mmで塗付、乾燥して、塗紙1を作成した。次に、分散液「Q−1」を20℃、及び50℃で4週間放置した後、分散液の外観を確認し、さらに、塗紙1と同様の方法にてそれぞれ塗紙2(20℃放置品を使用)、塗紙3(50℃放置品を使用)を作成した。作成した各塗紙の色相を測色計TC−1800(東京電色株式会社製)で測定し、塗紙2及び3の塗紙1に対する色差を求めた。
【0029】[実施例2]グリーン色の水性顔料分散液B(LIOFASTカラー;東洋インキ製造株式会社製、顔料濃度33.5重量%)100重量部に対し、希釈剤「P−1」を67.5重量部加えて、顔料濃度20重量%の水性顔料分散液「Q−2」を得た。それ以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0030】[実施例3]希釈剤として、表2に示す配合比率にて作製した「P−2」を用いて、水性顔料分散液Aの顔料濃度を20重量%に調整した水性顔料分散液「Q−3」を得た。それ以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0031】[実施例4]希釈剤として、表2に示す配合比率にて作製した「P−3」を用いて、水性顔料分散液Aの顔料濃度を20重量%に調整した水性顔料分散液「Q−4」を得た。それ以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0032】[実施例5]希釈剤として、表2に示す配合比率にて作製した「P−4」を用いて、水性顔料分散液Aの顔料濃度を20重量%に調整した水性顔料分散液「Q−5」を得た。それ以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0033】[実施例6]希釈剤として、表2に示す配合比率にて作製した「P−5」を用いて、水性顔料分散液Aの顔料濃度を20重量%に調整した水性顔料分散液「Q−6」を得た。それ以外は実施例1と同様にして試験を行った。
【0034】[比較例1]水性顔料分散液A100重量部に対し、水を50重量部加えた後、3分間攪拌して均一化した。これにより、顔料濃度を20重量%に調整した水性顔料分散液「Q−7」を得た。得られた分散液について実施例1と同様に試験を行った。
【0035】[比較例2]水性顔料分散液A100重量部に対し、ヒドロキシエチルセルロースの3重量%水溶液を50重量部加えた後、3分間攪拌して均一化した。これにより、顔料濃度を20重量%に調整した水性顔料分散液「Q−8」を得た。得られた分散液について実施例1と同様に試験を行った。
【0036】(結果)試験結果を表3に示す。なお、外観の評価は、○:異常なし、△:分離・沈降発生、×:著しい分離・沈降発生、とした。色差の評価は、◎:△E=0〜0.5、○:△E=0.5〜1.0、△:△E=1.0〜2.0、×:△E=2.0以上、とした。
【0037】
【表3】

【0038】本発明に規定する希釈剤を用いた実施例1〜6は、いずれも貯蔵後の外観や色差に異常がなく、良好な結果となった。特に、本発明の好ましい態様である実施例1〜4では優れた貯蔵安定性、経時色相安定性を示した。一方、比較例1では、20℃、50℃いずれにおいても顔料が沈降し、色差も大きく、安定性に劣る結果となった。比較例2では、顔料の沈降が認められ、特に50℃での安定性に劣る結果となった。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、希釈によって水性顔料分散液の濃度を調整でき、希釈後の水性顔料分散液が分離、沈降、凝集を発生せず、貯蔵安定性、経時色相安定性等に優れたものとすることができる。
【出願人】 【識別番号】000180287
【氏名又は名称】エスケー化研株式会社
【出願日】 平成12年5月12日(2000.5.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−323203(P2001−323203A)
【公開日】 平成13年11月22日(2001.11.22)
【出願番号】 特願2000−139503(P2000−139503)