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【発明の名称】 プリント石鹸用インク組成物
【発明者】 【氏名】斉藤 吉信

【氏名】喜多 奈津江

【氏名】仁科 哲夫

【要約】 【課題】環境にとって安全で、密着性等の印刷等の付加適正や塗布膜の経時安定性に優れ、しかも黒色を含めて各色について色ムラが生じないプリント石鹸用インク組成物を提供することである。

【解決手段】皮膜形成剤、着色剤、可塑剤、溶剤及び活性剤を主成分とするインク組成物において、エチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースから選択される一種又は二種が配合されてなることを特徴とするプリント石鹸用インク組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】皮膜形成剤、着色剤、可塑剤、溶剤及び活性剤を主成分とするインク組成物において、エチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースから選択される一種又は二種が配合されてなることを特徴とするプリント石鹸用インク組成物。
【請求項2】エチルセルロースの配合量が、インク組成物全体の1.5重量%以上14重量%以下である請求項1に記載されているプリント石鹸用インク組成物。
【請求項3】着色剤が、主成分として黒酸化鉄を含むものである請求項1又は2に記載されたプリント石鹸用インク組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、環境問題に適合する石鹸の表面にプリント模様を形成するインク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、石鹸製品についての表示や意匠的趣向等の目的で、着色記号や着色模様等が石鹸表面に付加されている。この着色記号や着色模様等の付加は、その付加を効率よく行なうために、パット印刷等の既知の印刷方法によって印刷インクを塗布することによって行なわれている。この印刷用インクは、付加対象が石鹸であるため、紙表面等への印刷用インクと異なる特殊な組成成分からなるインク組成物が使用されている。
【0003】従来のプリント石鹸用インク組成物は、ニトロセルロース等の皮膜形成剤、顔料等の着色剤、可塑剤、溶剤及び活性剤を主成分とし、これにスチレンメチルスチレンイニデン共重合体等のスチレン系接着剤及びアクリル系樹脂がそれぞれ必須的に配合されたものであった。スチレン系接着剤は、主として、石鹸表面との間に必要な密着性を保つための密着性向上剤である。アクリル系樹脂は、スチレン系接着剤がインキの印刷皮膜を硬化させる作用があり、これが印刷皮膜にヒビ割れ等を生じさせる原因となるから、この硬化作用を緩和させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、スチレン系接着剤とアクリル系樹脂とが配合されたインク組成物では、特に、着色剤が、3,3−ジクロルジフェニル−4,4−ビスアゾ−(アセトオルトメチルアニリド)等を成分とする黄色顔料である場合、インク組成物中で、黄色顔料が沈降分離してしまうという欠点があった。このような欠点は、黄色顔料、赤色顔料及び青色顔料の3色混合によって黒色の着色剤を調合するときにも悪影響を及ぼすことになる。黄色顔料が分離してしまうために、各顔料が不均一となって、色ムラが発生するからである。このため、3色顔料の混合による黒色着色剤が量産される場合には、混合時に各色顔料の分量変化を絶えず監視しなければならないが、この監視負担には多く労力と時間を要するものとなっていた。
【0005】スチレン系の物質は、いわゆる環境ホルモンに該当するとして、特に、生態系に直接関わる製品への使用が世界的にも制限されている。このため、上記したプリント石鹸用インク組成物の成分として、スチレン系接着剤に代わる代替品の開発が求められている。
【0006】そこで、本発明は、上記した問題点を解消し、環境にとって安全で、密着性等の印刷等の付加適正や塗布膜の経時安定性に優れ、しかも黒色を含めて各色について色ムラが生じないプリント石鹸用インク組成物を提供することを目的とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明のプリント石鹸用インク組成物は、皮膜形成剤、着色剤、可塑剤、溶剤及び活性剤を主成分とするインク組成物において、エチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースから選択される一種又は二種が配合されてなることを特徴とする。
【0008】上記した本発明のインク組成物によれば、石鹸表面に印刷等された場合に、エチルセルロースが前記した密着性向上剤として作用すると共に、良好な印刷等の付加適正と経時安定性などの作用が得られる。
【0009】本発明のインク組成物において、エチルセルロース又はヒドロキエチルセルロースを単独に、あるいはこれらの混合剤として配合することができる。このエチルセルロース等については、特に制限されるものではないが、好ましくはエーテル化度が2.15〜2.60のものである。エチルセルロース及びヒドロキエチルセルロースは、薬事法上において使用が認れていると共に、化粧品類原料登録もなされているものであり、化粧品類用の成分としての使用実績も確認されている。従って、石鹸に付加されたインク組成物中のエチルセルロース又はヒドロキエチルセルロース、あるいはこれらの混合物が、生体系に関わる環境ホルモン等の原因となることはない。
【0010】エチルセルロース又はヒドロキエチルセルロース、あるいはこれらの混合物の配合量は、インク組成物全体の0.5重量%以上15重量%以下であることが好ましい。この配合量が0.5重量%未満であると、付加した石鹸表面との間で密着性が不十分となる等、印刷適正や付加皮膜の経時安定性が低下することがあり、15重量%を超えると、石鹸表面への転写性が低下することがある。従って、石鹸表面への印刷適正や経時安定性が良好な状態で安定して得られることから、より好ましいエチルセルロース等の配合量は、1.5〜12重量%の範囲である。
【0011】皮膜形成剤としては、人体には無害で、かつ顔料等によって容易に着色できるものを使用できる。例えば、ニトロセルロース等を挙げることができる。ニトロセルロースは、有機もしくは無機の顔料又はこれらの混合顔料、例えば、レーキレッドC、フタロシアニンブルー、クレー、酸化チタン等によって容易かつ安定的に着色される。
【0012】皮膜形成剤の配合量は、種類によって異なり一定ではないが、例えば、皮膜形成剤がニトロセルロースである場合の配合量は、インク組成物全体の3重量%以上30重量%以下であることが好ましい。この配合量が、3重量%未満であると、塗膜が石鹸表面から剥がれ易くなることがあり、また、30重量%を超えると、塗膜にヒビ割れが生じ易くなる。
【0013】着色剤としては、皮膜形成剤に着色できる各色顔料等を使用することができる。例えば、酸化チタン、亜鉛華、沈降性炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、アルミナ白、白土、カオリン等の白色顔料、レーキレッドC、ベンガラ等の赤色顔料、チタンイエロー、ジンクロメート、黄土等の黄色顔料、紺青、群青等の青色顔料などを挙げることができる。また、黒色の着色剤としては、上記した赤色、黄色及び青色顔料の3色剤を混合することによってもよいが、安定した黒色をえるために、黒酸化鉄等の黒色顔料を使用することもできる。着色剤の配合量は、意図する着色状態によって異なるが、皮膜形成剤がニトロセルロースである場合、通常、インキ組成物全体の4〜15重量%の範囲で好ましく使用できる。より好ましくは、インク組成物の安定した皮膜を得ることができる点で、6〜10重量%である。
【0014】可塑剤としては、クエン酸アセチルトリブチル等の人体に対して無害なものを使用できる。可塑剤は、皮膜形成剤等の樹脂成分量に応じて配合され、通常、インキ組成物全体の1〜10重量%の範囲である。可塑剤の配合は、インク組成物に含まれる樹脂成分を可塑化すると共に、皮膜に柔軟性を与える作用を発揮する。
【0015】上記した皮膜形成剤、着色剤及び可塑剤は、それらを予め適量の溶剤と共に混合しチップ化した顔料チップと称される市販品をそのまま使用することができる。
【0016】溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、セルソルブメチルイソブチルケトン、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、セルソルブアセテート、ブチルセルソルブ、カルビトール、エチルアルコール、トルエン、キシレン等の1種又は2種以上を混合して用いることができる。このうち、単一の溶剤としては、インク組成物の均一性と印刷適正の点から、ブチルセルソルブが好ましく、また、混合溶剤としては、インクの溶解性と印刷適正の点から、酢酸ブチルとブチルセルソルブとを混合したものであることが好ましい。
【0017】溶剤の配合量は、インク組成物100重量部に対し、100〜500重量部の範囲であることが好ましい。溶剤の配合量が、100重量部未満であると、インク組成物の樹脂成分を溶解が不十分となり、粘度が高くなり印刷適正が悪くなることがある。溶剤の配合量が、500重量%を超えると、逆に粘度が低くなり過ぎて印刷適正が悪くなり、インク組成物の樹脂成分の溶解状態が不均一となって色ムラが生じる原因となることがある。
【0018】活性剤としては、ジメチルポリシロキサンメチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体等のポリエーテル変性シリコーンを挙げることができる。このような活性剤によれば、皮膜形成剤と石鹸との間の相着性を良好にすると共に、皮膜厚さを均一化させるように作用する。この活性剤の配合量は、上記した活性作用を有効に発揮させることができる点から、好ましくは0.5重量%以上5重量%以下の範囲である。
【0019】その他本発明のインク組成物には、上記した各成分による作用に悪影響を与えない範囲で、必要に応じて、植物エキス、金箔、パール剤、ラメ剤、香料等を配合することができる。
【0020】本発明のインク組成物は、パッド印刷、スクリーン印刷等の印刷方法に好ましく使用することができる。
【0021】
【実施例】石鹸ベースを枠練り法により製造し、約50日間室温下で熟成させ、脂肪酸石鹸分50重量%、砂糖15重量%、グリセリン13重量%、その他香料、金属イオン封鎖剤、水を残部とした固形石鹸を得た。この固形石鹸を、径70mmφの丸棒状になるように整形し、これを丸棒状の軸線に沿って2分割した石鹸片とした。
【0022】(実施例1〜5)表1に示す配合成分からなるカラーチップ(商品番号:Y−205、大東化成(株)製)を使用して、表3に示す配合量の配合各成分をローラーによって分散させた。これにより各配合成分が均一に混合された実施例1〜5のインク組成物をそれぞれ得た。実施例1〜5のインク組成物は、主として、エチルセルロースの配合量に違いによって区別されるものである。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】表中の数値単位は、重量%である。
【0026】(実施例6〜11)表1に示す配合成分からなるカラーチップ(商品番号:Y−205、大東化成(株)製)を使用して、表3に示す配合量の配合各成分をローラーによって分散させた。これにより各配合成分が均一に混合された実施例1〜5のインク組成物をそれぞれ得た。実施例6〜9のインク組成物は、主として、ヒドロキエチルセルロースの配合量に違いによって区別されるものである。また、実施例10及び11は、エチルセルロースとヒドロキエチルセルロースとを同時に配合した場合のものである。
【0027】
【表3】

【0028】表中の数値単位は、重量%である。
【0029】(比較例1〜4)表3に示す配合量の配合各成分を上記同様に分散させて、各配合成分が均一に混合された比較例1〜2のインク組成物をそれぞれ得た。比較例1のインク組成物は、従来品の組成のものである。表3中、日石ネオポリマーは、メチレンメチルスチレンイニデン共重合体(日本石油(株)製)であり、ダーマクリル79は、アクリル系樹脂(カネボウNSC(株)製)である。比較例2は、比較例1のインク組成物について、日石ネオポリマーとダーマクリル9とを配合成分から除いたものである。
【0030】
【表4】

【0031】表中の数値単位は、重量%である。
【0032】得られた実施例1〜11、引例1〜6の各インク組成物を試料として、前記した石鹸片の面上にパッド印刷法により印刷を施こした。これを検体として、印刷適正について、印刷時の皮膜のカケやハガレに関する密着性、印刷皮膜のヒビ割れ、印刷時のインクの付着状態に関する転写性及び目視観察による色ムラの印刷適正と共に、恒温状態での皮膜安定性について各20回ずつテストを行なって、その結果を表2〜表4に示した。
【0033】印刷適正についての各テスト項目の評価は、検体における発生頻度の割合から次の基準により判定した。各テスト項目について、発生頻度が、0/20のとき非常に良好で◎、1/20〜2/20のとき良好で○、3/20〜6/20のときやや不良で△、7/20〜20/20のとき不良で×、とした。
【0034】経時安定性のテストは、検体を蓋付きガラス瓶内に収容して、恒温条件下で放置することにより行なった。この経時安定性の判定は、密着性の低下、インサツ皮膜のカケ、ヒビ割れ又はハガレのいずれかの項目について、上記同様の発生頻度の基準に基づいて行なった。
【0035】表2及び表3の結果から、本発明に係る実施例1〜11のインク組成物による印刷皮膜では、印刷適正及び経時安定性について、いずれも極めて良好であったことが分かる。特に、実施例10及び11の結果から、エチルセルロースとヒドロキエチルセルロースとを同時に配合した場合にも同様な結果が得られることが分かる。このように各種の点について良好な性能は、特に、0℃/月や37℃/月の厳しい条件下でも、同様に得られることから、寒冷地や酷暑地において長期間に亘る保存された後に使用される場合であっても、その当初の性能は、ほとんどそのまま保持される。
【0036】このような本発明に係る実施例1〜11のインク組成物による印刷皮膜の性能は、表4の結果から色ムラ不良が生じる比較例1の従来のインク組成物の性能や、印刷適正が不十分な引例2のインク組成物の性能との対比において、優位性を有していることが分かる。また、比較例3〜6の結果から、エチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースの配合量が、印刷特性に及ぼす影響について確認することができる。
【0037】(実施例10)表5に示す配合量の配合各成分をローラーによって分散させ、各配合成分が均一に混合された実施例10のインク組成物を得た。黒酸化鉄チップは、DCカラーチップBL−35(黒酸化鉄35重量%、ニトロセルロース50重量%及びクエン酸アセチルトリブチル15重量%、大東化成(株)製)を使用し、また、エチルセルロースとしては、エチルセルロースN−7(ハーキュレス(株)製)を使用した。
【0038】
【表5】

【0039】表中の数値単位は、重量%である。
【0040】得られたインク組成物を試料として、前記した石鹸片の面上にパッド印刷法により印刷を施こした。これを検体として、印刷適正及び経時安定性についての判定して、その結果を表5に示した。この判定の評価基準は、実施例1〜11の場合と同様である。
【0041】表5の結果から、本発明のインク組成物によれば、黒色系のものについても、優れた印刷適正と経時安定の印刷皮膜が石鹸面に得られることが分かる。
【0042】
【発明の効果】上述したように本発明は構成されることから、次のような効果が発揮される。本発明のプリント石鹸用のインク組成物は、皮膜形成剤、着色剤、可塑剤等を主成分とするインク組成物に、エチルセルロース及びヒドロキエチルセルロースから選択される一種又は二種が配合されてなるから、石鹸表面への印刷適正と経時安定性に優れたものを印刷皮膜を石鹸表面に形成できる。
【0043】本発明のプリント石鹸用のインク組成物では、エチルセルロース及びヒドロキエチルセルロースを含めて、生体系に影響を及ぼすおそれのない配合成分によってなるから、人体に使用する場合でも極めて安全に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】593170702
【氏名又は名称】株式会社ピーアンドピーエフ
【出願日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【代理人】 【識別番号】100075502
【弁理士】
【氏名又は名称】倉内 義朗
【公開番号】 特開2001−311031(P2001−311031A)
【公開日】 平成13年11月9日(2001.11.9)
【出願番号】 特願2000−130961(P2000−130961)