トップ :: C 化学 冶金 :: C09 染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用




【発明の名称】 水系塗料組成物
【発明者】 【氏名】小野 博文

【氏名】松江 雄二

【要約】 【課題】分散安定性が良好であり、適度な流動性と粘度を有した水系塗料組成物を提供する。

【解決手段】水または水を主成分とした水性媒体に溶解もしくは分散した合成樹脂塗料と、平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が 0.1以下で、セルロースII型結晶成分の分率が 0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であるセルロースとからなる水系塗料組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水または水を主成分とした水性媒体に溶解もしくは分散した合成樹脂塗料と、平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であるセルロースとを含有することを特徴とする水系塗料組成物。
【請求項2】 顔料を含有することを特徴とする請求項1記載の水系塗料組成物。
【請求項3】 自動車上塗り塗装用塗料である請求項1または2記載の水系塗料組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水系塗料組成物に関し、更に詳しくは、微細セルロース系素材を含有する水系塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ラッカー型塗料は、乾燥性、耐溶剤性、 光沢などが優れていることにより、広範に使用されている。しかしながら、従来のラッカー型塗料は、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶媒を溶剤として用いるため、塗装作業中に大気中に拡散して、人体への安全性が損なわれるとともに、火災、爆発の危険性もはらむという問題があった。
【0003】これらの危険性のため、ラッカー型塗料に代わる水性塗料の研究がなされてきた。一般に水性塗料には、塗膜の光沢、機械的強度に加え、配合、貯蔵時に凝集分離しない分散安定性と、刷毛などで塗装する場合、塗る時は延び、塗り終わると刷毛の後を残さず、かつ垂れを起こさない流動性および適度な粘度とが必要とされる。しかしながら、水性塗料には、塗料の粘度の低下、貯蔵時の分散安定性の低下、塗装時の塗料の垂れという問題が発生した。そのため流動性制御剤として、従来一般にはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが用いられてきたが、顔料の分散性などに問題があった。
【0004】これらの問題を解決するため、特開昭56−72059号公報にはエーテル化度0.2以上のスルホエチルセルロースナトリウム塩を流動性制御剤として用いた例が開示されている。また、特開昭62−143979号公報には、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースを含有する水性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、チキソトロピ−性が不足し、塗装時の塗料の垂れの問題が残っていた。
【0005】また、特開昭55−80474号公報には、叩解度がC.S.F.500cc以下の叩解セルロース繊維を添加してなる水性塗装剤開示されている。しかし、上記公報に記載の塗装剤は、塗装面に立体模様を与えることが目的であり、塗料とは異る。また、用いられるセルロースは叩解セルロースであり、繊維がフィブリル化したもので、1粒子の粒径も大きいものである。さらに、叩解セルロースの特性上、繊維がフィブリル化しているため異る粒子のフィブリル間で交絡が起こり、吹き付け塗装を行う場合ノズルの詰りを発生したり、塗装面の表面平滑性が失われるという問題も起りやすい。
【0006】出願人らは、さきに積算体積50%の粒径が0.3〜6μmであり、かつ、3μm以下の粒子の積算体積割合が25%以上の微粒化セルロース系素材とフィルム形成能を有する樹脂よりなることを特徴とする水性樹脂塗料組成物を提案した(特開平5−163445号公報)。しかしながら、垂直面等の塗装作業時に、場合によって必要なチキソトロピー性が不足する場合があること、透明コーティング用途には使用できないこと、コーティング面がざらつき、光沢が不足するなど、なお改善が望まれている。また、自動車用上塗り塗装分野においては、メタリック塗装での鱗片状粒子の配向コントロールが可能な水性塗料が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、分散安定性が良好であり、適度な流動性と粘度とを有する水性塗料である水系塗料組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、WO99/28350において、微粒化された低結晶性のセルロースを分散媒体中に高度に分散させ、透明性の高い分散体を得る技術を確立した。このセルロースを水性塗料に適用することにより、従来問題となっていた分散安定性が良好であり、スプレー、刷毛等での塗布作業時、チキソトロピー性により粘度が低下して塗布面を適度に展開することが可能であり、塗布後粘度が上昇して塗布後の垂れ・流れ落ちがなく、アルミニウム、マイカ、酸化鉄、ガラスフレーク等の鱗片状無機質顔料の配向性を向上させることができ、且つ塗料の色調に悪影響をおよぼさないという特徴を有した水性塗料となることを見出し、本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、1. 水または水を主成分とした水性媒体に溶解もしくは分散した合成樹脂塗料と、平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であるセルロースとを含有することを特徴とする水系塗料組成物、2. 顔料を含有することを特徴とする1記載の水系塗料組成物、3.自動車上塗り塗装用塗料である1または2記載の水系塗料組成物、である。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の水系塗料組成物は、平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であるセルロースを含有することが必要である。本発明で用いるセルロースは、後述する製造方法で得られる分散媒体に分散したセルロース分散体、特に水分散体として供給することが好ましい。該セルロース分散体は、好適な場合には、水溶性高分子水溶液に匹敵するほどの透明性を持ち、セルロースが高度に分散媒体に分散した状態となし得るものである。
【0011】本発明の組成物において必須成分として使用するセルロースの平均重合度(DP)、セルロースI及びセルロースII型結晶成分の分率(χIおよびχII)、平均粒子径は、下記手順で算出した。セルロースI型結晶成分の分率(χI)は、セルロース分散体を乾燥して得られた乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0゜における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1から、下記(1)式によって求められる値を用いた。同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χII)は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6゜における絶対ピーク強度h0*とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*から、下記(2)式によって求められる値を用いた。
χI=h1/h0 (1)
χII=h1*/h0* (2)
図1に、χIおよびχIIを求める模式図を示す。なお、セルロース試料は、減圧乾燥法等の手段で乾燥して、乾燥セルロース試料とした。
【0012】本発明で規定する平均重合度(DP)は、上述の乾燥セルロース試料をカドキセンに溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から下記粘度式(3)および換算式(4)により算出した値を採用した。
[η]=3.85×10-2×MW0.76 (3)
DP=MW/162 (4)
本発明において構成するセルロースの平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920;下限検出値は0.02μm)で測定して求められる平均粒子径である。分散媒体中の粒子間の会合を可能な限り切断した状態で粒子径を測定するために、次の工程で試料を調製した。セルロース濃度が約0.5重量%になるように水分散体を水で希釈した後、回転速度15000rpm以上の能力を持つブレンダーで10分間混合処理を行い均一な分散液を作る。次いでこの分散液に超音波処理を30分間施して得られた水分散試料を粒度分布測定装置のセルに供給し、再び超音波処理(3分間)を行った後、粒径分布を測定した。
【0013】上述したように、本発明では、平均重合度(DP)が100以下であり、セルロースI型結晶成分の分率が 0.1以下で、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であって、かつ構成するセルロースの平均粒径が5μm以下である低重合度、低結晶性のセルロースを用いることに特徴がある。本発明においてセルロース分散体中のセルロースは、平均重合度(DP)が100以下であり、好ましくは50以下である。DPが100を超えると、分散媒体に高度に分散したセルロース分散体を得ることが難しい。本発明のセルロースは、水に不溶なセルロースの分散体であり、DPは20以上である。また、本発明のセルロースは、セルロースI型結晶成分量(χI)が0.1以下、好ましくは0.06以下であり、セルロースII型結晶成分量(χII)が0.4以下、好ましくは0.3以下の低結晶性であることが必要である。
【0014】本発明のセルロースの結晶成分の分率は(χc、即ちχIとχIIとの和)は殆ど零に近い値にまですることができる。χIが0.1を超える又はχIIが0.4を超えるセルロースは、結晶性の向上に伴い表面における水素結合フリーの水酸基密度が減少するため、これを用いて調製した水系塗料組成物中ではセルロース間相互作用力が低下し、水系塗料組成物中の顔料等の固形成分の分散状態をコントロールする能力が極端に下がり、良好な分散状態の水性塗料を得ることができない。さらに、本発明は、セルロース分散体において構成するセルロースの平均粒子径が、上記測定法で5μm以下、好ましくは2.5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。平均粒子径の下限は、本発明が規定する測定法の検出下限値に近い0.02μm程度にすることができる。5μmを超えると、セルロースの表面積が小さくなり、得られた水系塗料組成物の分散安定性および流動性が充分でない。
【0015】本発明で言うセルロースの平均粒子径とは、実質的に本発明で原料として用いるセルロースと分散媒体のみからなる分散体において、分散媒体中で等方的に会合して分散しているセルロースの微小ゲル体を、本発明の平均粒子径の測定法に準じて、超音波等の手段で可能な限り微細に分散化させた時のセルロースが持つ「広がり(直径)」の大きさを意味する。こうした取り扱いが必要なことは、本発明のセルロースが分散媒体中で存在する形態と、既存の微結晶セルロース(MCC)や微小フィブリル化セルロース(MFC)等のセルロース微粒子が懸濁液中で存在する形態とは明らかに異なることを示している。
【0016】本発明のセルロースは分散媒体中で、既存の微細化セルロース、例えばMCCやMFC等とは異なり、光学顕微鏡による観察では粒子が明確には確認できないほどに、高度に分散した構造を有する。更に、本発明のセルロースは分散媒体中で、直径約0.01μm(10nm)の球状粒子が数珠状に連結した繊維状の構造を有している。本発明の水系塗料組成物中に含まれるセルロースは、このような微細な構造体が無数に交絡して網目状構造体を構成していて、ある有限の大きさで会合してミクロゲルとして存在していると推定される。
【0017】このような本発明のセルロースは、分散媒体中で極めて会合性が高く、会合状態の切断度合いによって「広がり」の大きさが変化する。例えば、本発明のセルロースの分散体中の平均粒子径は、長時間静置したままの試料を、超音波処理を施さずに測定した場合には数百μm程度に測定されることもあるのに対し、同じ分散体を本発明で規定する平均粒子径測定法で測定すれば、平均粒子径は5μm以下に測定される。このことは、粒径の小さなセルロースが、分散体中で極めて高度に会合している証左である。MCCやMFCの分散液では、通常、例示したような極端な平均粒子径の変化は観察されない。
【0018】本発明の水系塗料組成物は、塗料に配合する顔料等の固形物が適度な分散状態を保ち、かつこの状態が安定であり、温度環境の変化に対しても粘度や顔料等の固形物の分散状態を安定に保持するという特徴を有する。これは、本発明で用いるセルロースが顔料等の固形物の沈降防止剤として優れていることによるもので、塗料の貯蔵時において、セルロースが本来持っている凝集性によって、顔料等の固形物を高濃度で含有した適度な凝集構造(ただし柔らかな凝集)が形成され、これが安定であることによるものと推定される。
【0019】また、本発明で用いるセルロースは、流動性制御剤としても極めて優れている。このことから、本発明の水系塗料組成物は、塗布作業時、チキソトロピー性により粘度が低下して塗布面を適度に展開することが可能であり、塗布後粘度が上昇して塗布後の垂れ・流れ落ちがない。さらに、メタリック塗装においては、光沢感を出す目的で配合するアルミニウム、マイカ、酸化鉄、ガラスフレーク等の鱗片状無機質顔料の塗装後の配向性が向上し、きらきらした光沢感を著しく向上させることができる。また、セルロースの粒子が小さいために塗布面のざらつきがない。該セルロースは透明であるため、塗料の色調に悪影響をおよぼさない。
【0020】これは、本発明で用いているセルロースが分散体中で、極めて微小な粒子サイズと柔軟な粒子形態(繊維状)を有するため極めて高い表面積を有すること、さらに低結晶性であるため粒子表面の水素結合フリーの水酸基密度が高く、多種な表面あるいは分散物(顔料など)に対し極めて高い親和性を有することが、上述した水系塗料組成物の安定性等の優れた特性に大きく寄与していると推定される。
【0021】本発明でいう水または水を主成分とした水性媒体に溶解もしくは分散した合成樹脂塗料とは、エマルジョン系塗料、水溶性樹脂系塗料等をいう。本発明で使用する合成樹脂塗料としては、水性アクリル系樹脂塗料、水性アクリル系エマルション塗料、水性反応硬化型アクリル系樹脂塗料、水性アクリルウレタン系塗料、水性アクリルウレタン系エマルション塗料、水性ウレタン系塗料、水性ウレタン系エマルション塗料、水性反応硬化型アクリルウレタン系塗料、水性塩化ビニル系樹脂塗料、水性塩化ビニル系エマルション塗料、水性酢酸ビニル系樹脂塗料、水性酢酸ビニル系エマルション塗料、水性エポキシ系樹脂塗料、水性アルキッド系樹脂塗料、水性ポリアミド系樹脂塗料、水性セルロース系樹脂塗料、水性焼付アクリル塗料、水性焼付アルキド塗料等の一般に用いられているものがあげられる。
【0022】本発明でいう水を主成分とした水性媒体とは水を30重量%以上、好ましくは50重量%以上含有した溶媒である。水を主成分とした水性媒体に用いられる水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類や、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類や、テトラヒドロフラン等のエーテル類や、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類等が挙げられ、上記水溶性の有機溶媒の一種または二種以上を用いることができる。
【0023】また、上記水溶性の有機溶剤と相溶性の良い有機溶媒であれば、水溶性でなくとも併用できる。例えば、ペンタノール、ヘキサノール、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等が用いられる。本発明における水系塗料組成物中のセルロースの量は、水系塗料組成物全体に対してのセルロース固形分として、0.01重量%以上、5重量%以下である。0.01重量%未満では、本発明の効果が得られない。また5重量%を超えると、水系塗料組成物の粘度が上がりすぎ、取り扱いが難しくなる。好ましくは、0.5重量%以上、2重量%以下である。
【0024】本発明の水系塗料組成物には、相溶化剤、密着性付与剤、増粘剤等として、他の水溶性樹脂を併用することができる。他の水溶性の樹脂としては、水性塗料、水性バインダー等に通常使用されるものであり、マレイン酸−スチレンコポリマー、マレイン酸−アクリル酸エステル系コポリマー、マレイン酸−メタクリル酸エステルコポリマー、フマル酸スチレンコポリマー、フマル酸−アクリル酸エステル系コポリマー、フマル酸−メタクリル酸エステル系コポリマー、(メタ)アクリル酸−スチレン系コポリマー、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系コポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シェラック、カゼイン、ポリビニルアルコール、およびヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類の1種または2種以上の組み合わせが例としてあげられる。
【0025】また、本発明の水系塗料組成物には顔料を添加することができる。顔料の具体例として、二酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、べんがら、カドミウムレッド、モリブデンレッド、黄鉛、カドミウムイエロー、クロムエロ−、チタンイエロー、酸化クロム、コバルトグリーン、群青、紺青、コバルトブル ー、プルシアンブル−、コバルトブル−、コバルトバイオレット、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料、チオインジゴ顔料、りん片状のアルミニウム、雲母、金属酸化物で表面被覆した雲母、雲母状酸化鉄、銀メッキガラスフレーク、チタンコートグラファイト、金属チタンフレーク、フタロシアニンフレークなどが挙げられる。これらから選ばれた単独で、もしくは2種以上併用することができる。
【0026】本発明で用いるセルロースは、顔料を有する水系塗料組成物において、前述したように顔料の沈降防止剤としての優れた効果を発現することができる。特にアルミニウム、マイカ、酸化鉄、ガラスフレーク等の鱗片状無機質顔料の場合には、塗装後の配向性が向上し、きらきらした金属光沢感を著しく向上させることができることから好ましく用いられる。本発明の水系塗料組成物には、更に必要に応じて、フィラー、流動性調整剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤、防腐剤およびその他の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加してもかまわない。上記の添加剤は一般的に塗料用として使用するものを挙げることができる。
【0027】本発明の水系塗料組成物における必須成分であるセルロ−スは、まずセルロース分散体として調製する。好ましい製造例を述べれば、セルロースを50重量%以上溶解させる能力のある鉱酸(例えば硫酸水溶液)にセルロースを溶解させて、かかる溶液を水中に再沈させて得られるセルロース凝集体の酸分散液を加温し、50〜100℃の温度範囲で加水分解処理を施す。反応時間は温度によって異なるが、約5分〜180分の範囲であることが好ましい。この工程により得られた分散液を濾過、水洗を繰り返すことにより精製する。この間に希薄なアンモニア水のようなアルカリ水溶液などにより中和を行ってもかまわない。但し、その際にも中和後さらに水洗し、中和によって生じる中和塩を洗い流すのが好ましい。こうして得られたpHの値が2以上、好ましくは4以上のゲル状物をそのまま、あるいはエタノールなどの有機溶媒と混合あるいは置換した後、微細化処理を施すことによりセルロースの水分散体あるいは水性媒体への分散体を調製する。
【0028】この際の微細化処理としては超高圧ホモジナイザーやビーズミルあるいは超音波処理などの適用が有効である。最後の微細化処理は必要に応じて数回行ってもかまわない。この際の原料セルロースとしては木材パルプや綿等の天然セルロースが好適に使用できるが再生セルロースであってもかまわない。本発明の水系塗料組成物は、上記製法で得たセルロースの分散体と合成樹脂塗料および各種添加剤を水または水性媒体中に投入し分散処理を行って製造する。分散処理は通常の攪拌機による分散処理のほかにホモジナイザー、超音波分散機、ビーズミル、遊星ボールミル、超高圧ホモジナイザー、振動ミル等を用いることができる。
【0029】本発明の水性塗料である水系塗料組成物の塗工方法は刷毛、バーコーター、ロールコーター、あるいはスプレー等により基材上に塗工できる。基材としては、使用する合成樹脂塗料の用途に応じた基材が用いられる。例えば金属、木、樹脂、ガラス、セメント、アスファルト、土等が挙げられる。以上のごとく、本発明により、建築、建材、構造物、船舶、新車、自動車補修、電気、金属、プラスチック、機械、鉄道、航空機、木工、家庭用、路面表示、皮革用途等に有用である水性塗料において、分散安定性が良好であり、流動性と適度な粘度を有した水性塗料である水系塗料組成物を提供することが可能となる。特に電着塗料、水性中塗り塗料、水性メタリックベースコート、水性トップコート等の自動車上塗り塗装用塗料として好ましく用いられる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、実施例によりさらに本発明を説明する。
<セルロース分散体の調製>木材パルプを65重量%硫酸へパルプ含率4重量%となるように−5℃で溶解させ、このセルロース/硫酸溶液1に対し重量比で2.7相当の水中へ、セルロース/硫酸溶液を強撹拌下で注ぎ、セルロースを析出させた。得られたフレーク状のセルロース分散液を80℃で40分間加水分解した後、濾過、水洗してペースト状のセルロースの水分散体を得た。得られたゲル状物中のセルロース濃度は6.0重量%であった。次いでこのゲル状物をイオン交換水で希釈してセルロース濃度4.0重量%とした後、ブレンダーで15,000rpmの回転速度で5分間混合した。次いでこの希釈液を超高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M−110EH型,みづほ工業(株)製)にて操作圧力175MPaで4回処理して透明性の高いゲル状のセルロース分散体を得た。前述の方法で評価したセルロースの平均粒子径は0.24μm、セルロース粒子のセルロースI型結晶成分およびセルロースII型成分の分率は、それぞれ、0.03および0.16であった。このセルロース微粒子の透明な水分散体をJ1とする。
【0031】<水性塗料としての評価試験>・粘度、チキソトロピー指数(T.I.)
被試験サンプルを200mlビーカーに180g秤り取り、20℃の恒温室に1時間以上放置した後、B型粘度計を用い、2rpmおよび20rpmで粘度を測定した。チキソトロピー指数(T.I.)は下記式により求めた。
チキソトロピー指数(T.I.)= 2rpmの粘度/20rpmの粘度・安定性35mmφのガラス製サンプル瓶に、被試験サンプルを50g秤り取る。このサンプルを20℃の恒温室に5日間放置しその離水量を評価した。離水量は、懸濁層と離水層の境と離水層の上部液面との距離(mm)で表わした。
・垂れ性水平のガラス板にプラスチック製のスポイドで、調製した被試験サンプルをガラス板上2cmよりゆっくり垂らし、5秒後にその板を60°傾けて1分間放置し、スポイトで垂らした被試験サンプルの中心から、垂れたその最下部までの距離(mm)を測定した。測定を25回繰り返し、その平均値を垂れ性(mm)とした。ガラス板は、薄層クロマト用の板を用い、台所用合成洗剤で洗浄後水洗いし、十分乾燥させて使用した。
・塗装面の表面状態表面の平滑な厚さが2mm、大きさが15cm×15cmの鉄板を垂直に立てて固定した。巾5cm刷毛に被試験サンプルをつけ塗装を1回行い、5秒後水平に戻し8時間放置して完全に乾燥させた。その表面を手で触り、塗料が垂れてまたは刷毛の跡が残りそのまま乾燥した事によりできた凹凸と、添加物の粒径のためまたは顔料等との相溶性が悪い為発生するざらつきを調べた。凸凹があり、ざらつきがあった場合×、凸凹や、ざらつきがわずかに認められる場合△、凸凹やざらつきがなく良好な場合○とした。
【0032】
【実施例1】水性アクリルエマルション塗料(関西ペイント(株)製、ビニデラックス300、固形分40重量%)200gに、セルロース水分散体J1(添加後の水系塗料組成物全体に対してセルロース固形分として1重量%)を67g加え、ワーリングブレンダー10000回転で5分間撹拌を行い、水系塗料組成物を調製した。該水系塗料組成物を調製後、上記方法に従い評価試験を実施した。評価結果を表1に示した。
【0033】
【実施例2】合成樹脂塗料として、水性アルキッド系樹脂(大日本インキ化学工業(株)製WATERSOL CD−520)(固形分40重量%の水溶液)500gと顔料(酸化チタン、タイペークR820)50gと水231gとからなる水性アルキッド塗料781gを調製した(調製後固形分32重量%)。調製した水性アルキッド塗料200gに、セルロース水分散体J1(添加後の水系塗料組成物全体に対してセルロース固形分として1重量%)を67g加え、ワーリングブレンダー10000回転で5分間撹拌を行い、水系塗料組成物を調製した。該水系塗料組成物を調製後、前記方法に従い評価試験を実施した。評価結果を表1に示した。
【0034】
【実施例3】水性ウレタン塗料(関西ペイント(株)製、アクアレタン)200gに、セルロース水分散体J1(添加後の水系塗料組成物全体に対してセルロース固形分として1重量%)を67g加え、ワーリングブレンダー10000回転で5分間撹拌を行い、水系塗料組成物を調製した。該水系塗料組成物を調製後、前記方法に従い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0035】
【比較例1】水性アクリルエマルション塗料(関西ペイント(株)製、ビニデラックス300、固形分40重量%)200gに、水64gを加え、撹拌を行い、塗料組成物を調製した。該塗料組成物を調製後、前記方法に従い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0036】
【比較例2】水性アクリルエマルション塗料(関西ペイント(株)製、ビニデラックス300、固形分40重量%)200gに、旭化成工業(株)製セオラスクリームFP−03(平均粒子径3μmの結晶セルロース10重量%水ペースト)27g(添加後の塗料組成物全体に対してセルロース固形分として1重量%)を加え、ワーリングブレンダー10000回転で5分間撹拌を行い、塗料組成物を調製した。該塗料組成物を調製後、前記方法に従い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0037】
【比較例3】合成樹脂塗料として、水性アルキッド系樹脂(大日本インキ化学工業(株)製WATERSOL CD−520)(固形分40重量%の水溶液)と顔料(酸化チタン、タイペークR820)50gと水231gとからなる水性アルキッド塗料781gを調製した(調製後固形分32重量%)。塗料組成物を調製後、前記方法に従い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0038】
【比較例4】水性ウレタン塗料(関西ペイント(株)製、アクアレタン)を前記方法に従い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【発明の効果】顔料等の固形分の分散安定性に優れ、適度な流動性と粘度を有する水系塗料組成物を提供することが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【出願日】 平成12年3月2日(2000.3.2)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−247812(P2001−247812A)
【公開日】 平成13年9月14日(2001.9.14)
【出願番号】 特願2000−56887(P2000−56887)