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【発明の名称】 油性ボールペンインキ
【発明者】 【氏名】大山 節

【要約】 【課題】潤滑性能が高く、滑らかな書き味で、かつ長時間筆記しても筆記性能が低下しない油性ボールペンインキを提供すること。

【解決手段】少なくとも、有機溶剤と着色剤と下記一般式(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも、有機溶剤と着色剤と下記一般式(I)
【化1】

(式中、R1は炭素数4〜8のアルキル基を示し、R2は水素原子又は炭素数4〜8のアルキル基を示す)で表される燐酸モノもしくはジアルキルエステルとを含有する油性ボールペンインキ。
【請求項2】 25℃における粘度が、3000〜8000mPa・sである請求項1記載の油性ボールペンインキ。
【請求項3】 有機溶剤として、20℃における蒸気圧が1mmHg以下の有機溶剤を使用するものである請求項1記載の油性ボールペンインキ。
【請求項4】 燐酸モノもしくはジアルキルエステルの含有量が、インキ全量に対して0.01〜5重量%である請求項1ないし3のいずれかの項に記載の油性ボールペンインキ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油性ボールペンインキに関し、詳しくは、極めて優れた潤滑性を有し、滑らかな書き味を与える油性ボールペンインキに関する。
【0002】
【従来の技術】通常、ボールペン用油性インキの粘度はおおよそ10000〜30000mPa・sであり、水性インキに比べると粘度が高いため、書き出しにおけるインキの出をスムーズにし、滑らかな筆記感を得るために、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸等の高級脂肪酸が添加されている。
【0003】しかしながら、高級脂肪酸を添加しただけでは充分な潤滑性は得られず、筆記途中で描線状態が悪くなったり、連続筆記や高筆記圧での筆記において、いわゆる線飛びが起こったり、筆記感が重くなることがあり、また、長時間の使用によりインキの出が極端に減少したり、最後まで滑らかな筆感が得られなくなるなどの欠点を有していた。さらに、従来の潤滑剤では、特にインキ粘度を低めに設定した場合にボールとボールペンチップの受け座との間で局部的な摩耗が起こり、充分な筆記性や潤滑性能を得ることが出来なかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、より潤滑性能が高く、滑らかな書き味を与え、かつ長時間筆記しても最後まで滑らかな筆記性能が維持される油性ボールペンインキを提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、インキ中に特定の燐酸アルキルエステルを配合することにより、良好な潤滑性と優れた筆記性能のボールペンインキが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)に存する。
(1) 少なくとも、有機溶剤と着色剤と下記一般式(I)
【化2】

(式中、R1は炭素数4〜8のアルキル基を示し、R2は水素原子又は炭素数4〜8のアルキル基を示す)で表される燐酸モノもしくはジアルキルエステルとを含有する油性ボールペンインキ。
(2) 25℃における粘度が、3000〜8000mPa・sである請求項1記載の油性ボールペンインキ。
(3) 有機溶剤として、20℃における蒸気圧が1mmHg以下の有機溶剤を使用するものである請求項1記載の油性ボールペンインキ。
(4) 燐酸モノもしくはジアルキルエステルの含有量が、インキ全量に対して0.01〜5重量%である請求項1ないし3のいずれかの項に記載の油性ボールペンインキ。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明油性ボールペンインキに使用される上記一般式(I)の燐酸モノもしくはジアルキルエステル(以下、「燐酸アルキルエステル」と記す)は、燐酸と、1または2のアルキル基がエステル結合した構造を有する化合物である。
【0008】上記一般式(I)中、基R1および基R2で表される炭素数4〜8のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよく、また、基R1と基R2とが同一であっても異なっていてもよい。本発明では、モノエステルもしくはジエステルをそれぞれ単独で使用することもできるが、モノエステルおよびジエステルの混合物を使用することも可能である。
【0009】本発明で好ましく利用可能な燐酸アルキルエステルとしては、以下の式(II)ないし(V)で表される化合物から選択される1種以上が例示される。
【0010】
【化3】

【0011】燐酸アルキルエステルとしては、例えば、Hordaphos MDB、Hordaphos MDAH(以上、Clariant社製)等の市販品を好適に使用できる。
【0012】本発明における上記燐酸アルキルエステルの配合量は、インキ全量に対して0.01〜5重量%(以下、単に「%」と記す)程度とすることができ、0.01〜3%程度であればより好ましく、0.05〜1.5%程度が望ましい。配合量が0.01%未満では充分な潤滑効果が得られない場合があり、逆に5%を超えると油性ボールペンインキとしての系が壊れるなどインキとしての性能を損なう場合がある。
【0013】本発明インキに使用される着色剤としては、ボールペンインキに用いられる公知の染料及び/または顔料を制限なく使用可能であり、単独で使用することも、適宜組み合わせて使用することもできる。着色剤の使用量は特に限定されないが、インキ全量に対して5〜50%とすることが好ましく、15〜40%であればより好ましい。
【0014】有機溶剤としては、通常の油性ボールペンインキに用いられている溶剤、すなわち、前記の着色剤を溶解または分散できるものであれば制限無く利用できるが、特に20℃における蒸気圧が1mmHg以下(好ましくは0.9mmHg以下)の比較的高沸点の溶剤を使用することが有利である。かかる性質を有する有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(0.03mmHg)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(0.3mmHg)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(0.2mmHg)等のグリコールエーテル類、ベンジルアルコール(0.8mmHg)等の芳香族アルコール、カルビトール類(0.01〜0.2mmHg)、セロソルブ類であって20℃の蒸気圧が1mmHg以下のものなどを挙げることができる(以上のかっこ内の数値は20℃における蒸気圧を示す)。また、上記以外にも、例えば、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、フェノキシエタノール等の溶剤が適用可能である。有機溶剤は、単独でも、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】有機溶剤の使用量は特に限定されないが、例えば、インキ全量に対して、30〜80%程度とすることが好ましく、40〜70%程度であれば更に好ましい。有機溶剤の配合量が30%を下回る場合には、インキの粘度が上昇しすぎ、描線のなめらかさが損なわれたり、インキの流出不良を生じることがあり、逆に、配合量が80%を超えるとインキの粘度が下がりすぎ、ボテや紙面での描線の滲みが生じる場合がある。
【0016】本発明における樹脂は、インキ組成物を所定の粘度に調整するための粘度調整剤として、あるいは着色剤の固着剤として、さらにはインキの耐水性や分散安定性を向上させる目的等で用いられるものである。本発明では、ボールペンインキに通常使用されている樹脂を制限なく使用でき、例えばケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、マレイン樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、テルペン系樹脂、エステルガム、ポリビニルピロリドンなどを好適に配合できる。樹脂は単独でも、二種以上を組合せて用いることもできる。樹脂の使用量は特に限定されないが、インキ全量に対して、0.1〜50%程度が好ましく、0.3〜40%程度であればより好ましい。
【0017】本発明の油性ボールペンインキの粘度は、25℃で3000〜8000mPa・s程度の範囲とすることが好ましい。粘度の調整は、着色剤として顔料を用いるか染料を用いるかに応じて、樹脂や有機溶剤の配合量を適宜増減させることにより行うことが可能である。
【0018】本発明の油性ボールペンインキには、必要に応じて油性ボールペンインキに通常使用されている各種添加剤、例えば、界面活性剤、高級不飽和脂肪酸、潤滑油防錆剤、酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤等を任意成分として配合することが可能である。
【0019】本発明油性ボールペンインキは、常法に従い上記必須成分および任意成分を攪拌混合等することにより製造できる。
【0020】本発明の油性ボールペンインキは、潤滑性能が高いため、横銅材や洋白材製のボールペンチップに限らず、例えばステンレススチール製等のボールペンチップを備えたボールペンにも好ましく使用できる。また、一般に市場に出回っている油性ボールペンは、ボール径が0.25mm以上であるが、ボール径が0.7mmを超えるとボールペンチップ受け座との接触面積が大きくなることに起因して潤滑剤によらなくとも潤滑性が向上する傾向がある。従って、本発明の油性ボールペンインキは、0.7mm以下、特に0.25〜0.7mm程度のボール径を有するボールペンチップに適用した場合に、きわめて顕著にその効果を表すものである。
【0021】
【作用】本発明に使用する燐酸アルキルエステルのインキ中における作用は未だ明確には判明していないが、従来の潤滑剤(高級脂肪酸等)に比べ燐酸アルキルエステルの金属表面への吸着力が強固であるため、ボールとボールペンチップ受け座の間に十分に作用することにより、インキ粘度が低い場合(3000〜8000mPa・s/25℃程度)でも、筆記性能の劣化を引き起こすことなく滑らかな筆感が得られるものと推測される。
【0022】なお、インキ中にリン酸エステルを配合した公知技術として、特開平11−293174号公報では、広い粘度範囲で良好な潤滑性と滑らかな筆感を有する油性インキ組成物が提案されており、このインキは優れた性能を有するものであるが、ノニルフェノール系燐酸エステルを使用する点で本発明とは異なる。また、特開昭60−158280号公報では、分散剤としてアルキル燐酸エステルを配合したボールペン用インキが開示されているが、エステルのアルキル鎖が長い点および高粘性のインキである点で本発明とは異なる。
【0023】
【実施例】次に、実施例、試験例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。なお、実施例で使用したEH型粘度計は、トキメック社製(製品名;DVU−E)であり、レギュラーコーン2.5rpmで測定した。また、試験に用いたボールペンは、三菱鉛筆製SA−5(0.5mmボール)である。
【0024】
実施例1 <成 分> 配合量(%)
スピロンブラックGMH(保土谷化学工業社製) 15.0 スピロンバイオレットC−RH(保土谷化学工業社製) 15.0 スピロンイエローC−GNH(保土谷化学工業社製) 5.0 フェノキシエタノール 43.4 ベンジルアルコール 7.0 ハイラック#110H 12.0 (日立化成社製;バインダー、かつ増粘剤としてのケトン樹脂)
PVPK−90 0.5 (ISP製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
オレイン酸(潤滑剤) 2.0 燐酸モノおよびジ・n−ブチルエステル 0.1 (Clariant社製;Hordaphos MDB)
<製 法>上記材料を60℃で加温撹拌して十分に溶解させ、本発明の黒インキを得た。このインキの25℃における粘度をEH型粘度計で測定したところ、3000mPa・sであった。
【0025】
実施例2 <成 分> 配合量(%)
スピロンブラックGMH(保土谷化学工業社製) 18.0 スピロンバイオレットC−RH(保土谷化学工業社製) 18.0 スピロンイエローC−GNH(保土谷化学工業社製) 10.0 フェノキシエタノール 32.8 ベンジルアルコール 8.5 レジンSK 11.4 (Huls社製;バインダー、かつ増粘剤としてのケトン樹脂)
PVPK−90 0.3 (ISP製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
燐酸モノおよびジ・(2−エチルヘキシル)エステル 1.0 (Clariant社製;Hordaphos MDAH)
<製 法>上記材料を60℃で加温撹拌して十分に溶解させ、本発明の黒インキを得た。このインキの25℃における粘度をEH型粘度計で測定したところ、3800mPa・sであった。
【0026】
実施例3 <成 分> 配合量(%)
バリーファーストブルー1603 15.0 (オリエント化学工業社製)
サビニールブルーGLS(SANDOZ社製) 15.0 フェノキシエタノール 32.95 ベンジルアルコール 21.1 PVPK−30 12.4 (ISP製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
PVPK−90 0.5 (ISP製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
オレイン酸(潤滑剤) 3.0 燐酸モノおよびジ・(2−エチルヘキシル)エステル 0.05 (Clariant社製;Hordaphos MDAH)
<製 法>上記材料を60℃で加温撹拌して十分に溶解させ、本発明の青インキを得た。このインキの25℃における粘度をEH型粘度計で測定したところ、8000mPa・sであった。
【0027】
実施例4 <成 分> 配合量(%)
スピロンレッドC−BH(保土谷化学工業社製) 4.0 スピロンレッドC−GH(保土谷化学工業社製) 4.0 SPTオレンジ6(保土谷化学工業社製) 15.0 フェノキシエタノール 42.8 ベンジルアルコール 21.5 ルビスコールK−30 10.4 (BASF製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
ルビスコールK−90 0.3 (BASF製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
オレイン酸(潤滑剤) 1.5 燐酸モノおよびジ・n−ブチルエステル 0.5 (Clariant社製;Hordaphos MDB)
<製 法>上記材料を60℃で加温撹拌して十分に溶解させ、本発明の赤インキを得た。このインキの25℃における粘度をEH型粘度計で測定したところ、6500mPa・sであった。
【0028】
実施例5 <成 分> 配合量(%)
スピロンブルーBPNH(保土谷化学工業社製) 26.0 スピロンイエロー530(保土谷化学工業社製) 6.0 フェノキシエタノール 42.0 ベンジルアルコール 15.0 PVPK−30 4.7 (ISP製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
ハイラック#110H 5.0 (日立化成社製;バインダー、かつ増粘剤としてのケトン樹脂)
PVPK−90 0.3 (ISP製;バインダー、かつ増粘剤としてのポリビニルピロリドン)
燐酸モノおよびジ・(2−エチルヘキシル)エステル 1.0 (Clariant社製;Hordaphos MDAH)
<製 法>上記材料を60℃で加温撹拌して十分に溶解させ、本発明の緑インキを得た。このインキの25℃における粘度をEH型粘度計で測定したところ、4800mPa・sであった。
【0029】比較例1〜5燐酸アルキルエステルに替え、フェニルグリコールを用いる以外は、上記実施例1〜5と同様にして各色のインキを調整した。各比較例の25℃における粘度を実施例と同様の方法で測定したところ、比較例1は3000mPa・s、比較例2は3700mPa・s、比較例3は8000mPa・s、比較例4は6300mPa・s、比較例5は4500mPa・sであった。
【0030】試験例上記実施例1〜5および比較例1〜5で得られたインキをステンレススチールチップを用いたボールペンに充填し、以下の方法により筆記性能を試験した。その結果を表1に示す。
【0031】(1)書き味評価ランダムに選出した30名のパネラーにより筆記感のアンケートを行い、5段階評価を行った。
<評価基準>○;非常に滑らかで軽い書き味●;滑らかで軽い書き味△;やや滑らかさや軽さに欠ける書き味▲;やや重い書き味×;非常に重い書き味【0032】(2)筆記性試験JIS S 6039に規定されている筆記性能試験条件に基づいて1000m迄筆記し、その筆記描線の状態を初期と1000m筆記時点とで比較し、5段階評価した。表1のデータは試料数10本中の最頻値である。
<評価基準>○;初期の描線状態と1000m筆記時の描線状態に全く変化がない。
●;初期の描線状態と比べ1000m筆記時はかすかに劣化が見られる。
△;初期の描線状態と比べ1000m筆記時は若干の劣化が認められる。
▲;初期の描線状態と比べ1000m筆記時ははっきりと劣化が認められる。
×;初期の描線状態と比べ1000m筆記時は著しい劣化が認められる。
【0033】
【表1】

【0034】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の油性ボールペンインキは、一般式(I)の燐酸アルキルエステルを含有するため、高い潤滑性を有し、最後まで良好な書き味と筆記性能を維持できる。特に、インキ粘度が低い場合でも、筆記性能の劣化を引き起こすことなく滑らかな筆感が得られる。また、本発明の油性ボールペンインキは、横銅材や洋白材は勿論のこと、耐食性は良いが書き味が悪いとされるステンレススチール等で構成されたボールペンチップを使用しても極めて滑らかな書き味を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
【出願日】 平成12年3月3日(2000.3.3)
【代理人】 【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介 (外2名)
【公開番号】 特開2001−247806(P2001−247806A)
【公開日】 平成13年9月14日(2001.9.14)
【出願番号】 特願2000−59292(P2000−59292)