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【発明の名称】 塩化ビニル系ペースト樹脂組成物およびディスポーザブル手袋
【発明者】 【氏名】斉藤 広

【氏名】中島 成

【氏名】内田 陽一

【要約】 【課題】非フタル酸エステル系可塑剤を使用して、フタル酸エステル系可塑剤を使用した塩化ビニルペースト樹脂組成物と同等の抗張力や100%モデュラスを保持し、且つ従来の加工条件で成型できる塩化ビニルペースト樹脂組成物およびその成形体を提供する。

【解決手段】塩化ビニルペースト樹脂100重量部及びクエン酸エステル系可塑剤および/またはグリセリンエステル系可塑剤50〜95重量%と23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤5〜50重量%からなる可塑剤50〜120重量部からなる塩化ビニルペースト樹脂組成物を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に、クエン酸エステル系可塑剤および/またはグリセリンエステル系可塑剤50〜95重量%と23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤5〜50重量%からなる可塑剤50〜120重量部を配合した塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。
【請求項2】 ポリエステル系可塑剤の23℃に於ける粘度が100〜500mPasである請求項1記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。
【請求項3】 塩化ビニルペースト樹脂がK値65〜75の塩化ビニルペースト樹脂である請求項1〜2に記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。
【請求項4】 成形シートの抗張力が10〜16MPaで、且つ100%モデュラスが4〜5MPaである非フタル酸エステル系可塑剤配合の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物からなるディスポーザブル手袋。
【請求項5】 塩化ビニル系ペースト樹脂組成物が、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に、クエン酸エステル系可塑剤および/またはグリセリンエステル系可塑剤50〜95重量%と23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤5〜50重量%からなる可塑剤50〜120重量部を配合した組成物からなる請求項4記載のディスポーザブル手袋。
【請求項6】 ポリエステル系可塑剤の23℃に於ける粘度が100〜500mPasである請求項4または5に記載のディスポーザブル手袋。
【請求項7】 塩化ビニルペースト樹脂がK値65〜75の塩化ビニルペースト樹脂である請求項4〜6に記載のディスポーザブル手袋。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塩化ビニルペースト樹脂組成物およびその成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、ディスポーザブル手袋(以下、ディスポ手袋という)用等に好適な塩化ビニルペースト樹脂組成物およびディスポ手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】ディスポ手袋とは食品、医療分野等に於いて使用される使い捨てタイプの手袋であり、手の平部中央が80〜150μm程度の厚みのものを言う。
【0003】このディスポ手袋の製造は、塩化ビニルペースト樹脂組成物から成り50℃に於ける粘度が70〜300mPa・s程度のプラスチゾル(以下、ゾルという)中にセラミックスなどの手型をディッピングし引上げ後、余分なゾルを落とした後、ゲル化する事によって製造する加工方法が一般的である。
【0004】従来、ディスポ手袋用塩化ビニルペースト樹脂組成物の可塑剤として、フタル酸エステル系可塑剤、例えばフタル酸−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)などが一般的に使用されている。
【0005】ところが、フタル酸−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、フタル酸ジ−n−ペンチル(DPP)フタル酸ジプロピル(DPRP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、フタル酸ジエチル(DEP)のフタル酸エステルは、内分泌作用をかく乱する物質(いわゆる環境ホルモン)であることが疑われており、ディスポ手袋の用途である食品、医療分野に於いては、これらフタル酸エステル系可塑剤に変わる衛生性に優れた可塑剤への代替が望まれている。
【0006】このため、例えばクエン酸エステル系可塑剤であるATBCの検討がなされたが、プラスチゾルの粘度低下が生じると共に、初期ゲル化性が速くなるため、加工温度など従来の加工条件でディッピング成型を行うと、製品目付および製品厚みの変動などが生じ、従来と同等の製品を得る為には加工条件の検討、調整を要する事となる。また、手袋の硬さ(100%モデュラス)が増加するため、製品としての特性や風合が変化する傾向にある。
【0007】一方、グリセリンエステル系可塑剤のグリセリンジアセトモノラウレートに代替した場合にも同様にゾルの粘度低下が生じ、更に粘度の経時変化が著しく増大するため、ゾルの保管、貯蔵条件の調整が必須となると同時に、加工上の問題も発生しやすくなる。また、同様に手袋の硬さが増大するため、製品としての特性や風合が変化する問題も発生する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、非フタル酸エステル系可塑剤を使用して、フタル酸エステル系可塑剤を使用したディスポ手袋と同等以上の物性を保持し、且つ従来の加工方法や加工条件で成型できる塩化ビニルペースト樹脂組成物およびディスポ手袋を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意検討を重ねた結果、クエン酸エステル系可塑剤、またはグリセリンエステル系可塑剤と100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤を含んでなる塩化ビニルペースト樹脂組成物が、上記目的を達成しうるものであることを見出し、本発明に到達した。
【0010】即ち、本発明は、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に、クエン酸エステル系可塑剤および/またはグリセリンエステル系可塑剤50〜95重量%と23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤5〜50重量%からなる可塑剤50〜120重量部を配合した塩化ビニル系ペースト樹脂組成物(請求項1)、ポリエステル系可塑剤の23℃に於ける粘度が100〜500mPasである請求項1記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物(請求項2)、塩化ビニルペースト樹脂がK値65〜75の塩化ビニルペースト樹脂である請求項1または2に記載の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物(請求項3)、成形シートの抗張力が10〜16MPaで、且つ100%モデュラスが4〜5MPaである非フタル酸エステル系可塑剤配合の塩化ビニル系ペースト樹脂組成物からなるディスポーザブル手袋(請求項4)、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物が、塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に、クエン酸エステル系可塑剤および/またはグリセリンエステル系可塑剤50〜95重量%と23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤5〜50重量%からなる可塑剤50〜120重量部を配合した組成物からなる請求項4記載のディスポーザブル手袋(請求項5)、ポリエステル系可塑剤の23℃に於ける粘度が100〜500mPasである請求項4または5に記載のディスポーザブル手袋(請求項6)、塩化ビニルペースト樹脂がK値65〜75の塩化ビニルペースト樹脂である請求項4〜6に記載のディスポーザブル手袋(請求項7)に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明では塩化ビニルペースト樹脂として、塩化ビニルペースト樹脂単独、または、これに必要に応じ、塩化ビニルブレンディング樹脂を添加して用いる。
【0012】塩化ビニルペースト樹脂は、塩化ビニル単量体、または塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体の混合物を乳化剤など含む水性媒体中で水溶性重合開始剤の存在下に乳化重合またはシード乳化重合し、あるいは油溶性重合開始剤の存在下に微細懸濁重合し、重合後のラテックスを噴霧乾燥するなどの方法により得られる、基本粒子径が0.1〜5μmの粒子を持ったものである。
【0013】塩化ビニルブレンディング樹脂は、塩化ビニル単量体、または塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体の混合物を高分子系懸濁安定剤など含む水性媒体中で、油溶性重合開始剤の存在下に懸濁重合し、重合後のスラリーを遠心脱水機などで脱水し、さらに気流乾燥、流動乾燥する方法などにより得られる。塩化ビニルブレンディング樹脂は、ペーストゾルの流動性改良などを目的として、必要に応じて塩化ビニル系ペースト樹脂と併用して用いられる。
【0014】塩化ビニルペースト樹脂、及び塩化ビニルブレンディング樹脂は、従来から広く使用されており、種々のグレードのものが市場から入手でき、何れも本発明に於いて使用することができるものであるが、K値の低い樹脂は抗張力が低く、K値の高い樹脂は重合生産性が悪くコストが上がるので、K値が70〜80のものが通常使用されている。
【0015】しかし、従来のフタル酸エステルをATBCやグリセリンジアセトモノラウレートの可塑剤に変更した場合は、100%モデュラスが大きくなり、製品が硬くなる傾向にある。これにポリエステル系可塑剤を併用しても尚まだ不充分であるが、K値の高い樹脂は結晶化度が高く、製品が硬くなる。
【0016】ここで、K値が65〜75と低い樹脂を選定すれば抗張力が大きく、100%モデュラスも小さいので従来のフタル酸エステル系可塑剤のDOPを使用した製品と同じ風合いの物性を持つ製品が得られる。しかも生産性の良いコストの安い樹脂を選定でき、一挙両得である。
【0017】尚、樹脂のK値の測定はISO1628−2に基づき実施した。
【0018】本発明に用いる可塑剤としては、塩化ビニルペースト樹脂100重量部に対して、50〜120重量部、好ましくは70〜100重量部の量で使用する。可塑剤量として50重量部以下であると、希釈剤を多く必要とし、更に成型品が硬くなる問題が生じる傾向にある。製品厚みを薄くして柔らかくしても、ピンホールの発生による不良率が高くなり、品質が劣る傾向にある為、好ましくない。逆に120重量部以上であると、製品強度の低下や可塑剤のブリードにより製品価値が劣る傾向にある為、これも好ましくない。
【0019】本発明では、主可塑剤としてクエン酸エステル系可塑剤、またはグリセリンエステル系可塑剤の何れかを全可塑剤量に対して50〜95重量%になるようにし、または、クエン酸エステル系可塑剤とグリセリンエステル系可塑剤を併用する場合には、その合計量が全可塑剤量に対して50〜95重量%になるようにし、これと23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤を5〜50重量%の比率で使用する。
【0020】クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシル、クエン酸ジステアリル、クエン酸トリステアリル等があげられ、特に限定はされないが中でもアセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が好適に使用される。
【0021】グリセリンエステル系可塑剤としてはグリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノリシノレート、グリセリンアセトブチルモノラウレート、グリセリンジブチルモノラウレート、グリセリンアセトジラウレート等があげられ、これも特に限定はされないが、グリセリンジアセトモノラウレートがポリ塩化ビニルの可塑剤として好適に使用されている。
【0022】クエン酸エステル系可塑剤とグリセリンエステル系可塑剤を併用する場合には、全可塑剤量に対して50〜95重量%、これと23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のポリエステル系可塑剤を5〜50重量%の比率で使用する。
【0023】一般的なポリエステル系可塑剤としてはアジピン酸とグリコールの縮合物であり、耐油性や非移行性を向上させる為に2次的な可塑剤として、23℃における粘度が1000〜6000mPa・sのものが使用されている。
【0024】本発明で使用するポリエステル系可塑剤としては縮合度が小さく、好ましくは23℃に於ける粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s未満のものであり、特に好ましくは100〜500mPa・sであるものを使用する。このようなポリエステル系可塑剤の具体例としては、PN−160(旭電化工業製)、PN−150(旭電化工業製)、PN−170(旭電化工業製)、PX−811(旭電化工業製)、W−1000(大日本インキ化学工業製)、W−1200(大日本インキ化学工業製)等がある。
【0025】このポリエステル系可塑剤の粘度が、100mPa・sよりも低いものを使用した場合には、ブリードが多くなる傾向があり実用性に欠ける。逆に1000mPa・s以上の高い粘度であると、ゾルを加工粘度に設定する為の希釈剤量が多くなり、コストが高くなってしまう。
【0026】尚、可塑剤の粘度測定は、ISO3219に基づき、円すい−平板システム(φ=6.0cm、α=2°)を用い、23℃で実施したものである。
【0027】また、本発明に於けるディスポ手袋用塩化ビニルペースト樹脂組成物とは、塩化ビニルペースト樹脂、可塑剤の他に、当業界で一般的に使用される安定剤、希釈剤、その他必要とされる各種添加剤を配合してディスポ手袋を得るためのものであり、このような通常の配合である限り特に制限はないものである。
【0028】特に、希釈剤としては一般的に2,2,4−トリメチル 1,3−ペンタジオールジイソブチレート(TXIB)や、n−パラフィンなどが一般的に使用されている。
【0029】このような樹脂組成物の配合により成型されたディスポ手袋としては、成形シートで測定した抗張力が10.0〜16.0MPa、好ましくは13.0〜15.0MPaであり、100%モデュラスが3.0〜5.0MPa、好ましくは4.0〜5.0MPaであるのがよい。
【0030】
【実施例】次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0031】
【表1】

「プラスチゾル作成方法」表−1に示される配合にて混練を行い、希釈剤で粘度調整をしたものを静置脱泡1時間行い、ゾルを得た。
【0032】「粘度測定方法」プラスチゾルの粘度測定はISO2555のブルックフィールド形回転粘度計による見かけ粘度の測定方法に基づいているが、測定温度は平均的な実加工ゾル温度である50℃にて行った。
【0033】「抗張力測定方法」ガラス板上に約200μmでコーティング後、200℃で4分間ゲル化しシートを作成した。該シートより規定のJIS K 7113に従ってダンベル状JIS3号試験片を作成し、オートグラフを用い200mm/minのテストスピードで100%モデュラス(MPa)、抗張力(MPa)および伸長率(%)の測定を行った。
【0034】「初期ゲル化性測定方法」Rheometer AR500(TA Instruments社製)を使用し、3Paのシェアストレスを与えながら、25℃から95℃まで10℃/分で昇温を行い、粘度の立ち上がり温度を初期ゲル化温度として測定した。
【0035】使用した可塑剤を表−2に示した。また、これら可塑剤の粘度は表−3に示した。粘度測定は、ISO3219に基づき、円すい−平板システム(φ=6.0cm、α=2°)を用い、23℃で実施したものである。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

表−4から明らかなように、比較例1のDOP配合と比較すると、比較例2のATBC配合は粘度を合わせるために希釈剤量が少ない配合になるが、100%モデュラス物性が高くなっている。また初期ゲル化温度も低温側にシフトしている。比較例3のPL−012配合も同様に粘度を合わせるために希釈剤量が少ない配合になるが、100%モデュラス物性が高い、初期ゲル化温度が低温であり、粘度経時変化が大きい傾向にある。
【0038】また、比較例4で一般のポリエステル系可塑剤を併用した配合では粘度レベルを合わせるために希釈剤量が2倍以上必要となっている。
【0039】これに対し、実施例1、2、4で示した低粘度のポリエステル系可塑剤を併用した配合では、比較例1のDOP配合と同等な希釈剤量で設定粘度となり、粘度経時変化は優れ、100%モデュラス物性の変化が少なく、初期ゲル化温度も同等となる。従って加工条件等を大幅に変更する必要が無く、しかも同等の品質を持つ製品を得ることが可能である。
【0040】実施例3は実施例1のK値が72のPSM−71に対してK値が76のPSH−31で置き換えたものであるが100%モデュラス物性が高くなる傾向がみられる。従って、モデュラスの低いものが必要な場合にはK値が小さなものを使用すればよい。
【0041】
【表4】

【0042】
【発明の効果】本発明の塩化ビニルペースト樹脂組成物は、衛生性に優れた非フタル酸エステル系可塑剤を使用して、フタル酸エステル系可塑剤を使用したディスポーザブル手袋と同等の抗張力、100%モデュラスを保持し、且つ従来の加工条件下で成型でき優れた成形体が提供できる。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成12年6月2日(2000.6.2)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−342316(P2001−342316A)
【公開日】 平成13年12月14日(2001.12.14)
【出願番号】 特願2000−165256(P2000−165256)