トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 組成物
【発明者】 【氏名】幸光 新太郎

【要約】 【課題】イソブチレン系重合体の有する優れた特性を保持しつつ、作業性が改善された樹脂組成物を得る。

【解決手段】イソブチレンを主たる単量体構成成分とし、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であることを特徴とする重合体(A)を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 イソブチレンを主たる単量体構成成分とし、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であることを特徴とする重合体(A)を含有する樹脂組成物。
【請求項2】 請求項1記載のイソブチレン系重合体(A)の数平均分子量が500〜1000000であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】 さらに、イソブチレンを主たる単量体構成成分とし、かつ分子量分布(Mw/Mn)が2.0より大きい重合体(B)を添加して得られる請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】 イソブチレン系重合体(A)の少なくとも1つの末端が、3級炭素に結合したハロゲン基、および/または、3級炭素に結合したハロゲン基からの脱ハロゲン化水素により生成するアルケニル基であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項5】 熱可塑性樹脂組成物またはホットメルト型樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項6】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とするシーリング材。
【請求項7】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする粘接着剤。
【請求項8】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする改質剤。
【請求項9】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする電気絶縁用含浸剤。
【請求項10】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とするガム用基材。
【請求項11】 請求項1〜5いずれか記載の硬化性組成物を含有することを特徴とする複層ガラス用シーリング材、および/または、スペーサー材料。
【請求項12】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする塗膜保護用粘着シート。
【請求項13】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする食品容器用接着剤。
【請求項14】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする医療用粘着剤。
【請求項15】 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする医薬品経皮吸収用粘着材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イソブチレン系重合体の有する優れた特性を保持しつつ、作業性が改善された樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】イソブチレン系重合体は、耐候性、耐老化性、耐オゾン性、耐水性、低気体透過性、耐薬品性、粘着性発現能力等の優れた特性を有し、また、低毒性であることから、従来から、ブチルゴム(イソブチレン−イソプレン共重合体)、ポリブテン(イソブチレン−ブテン共重合体)、ポリイソブチレン(イソブチレン重合体)、塩素化ブチルゴム、変性ブチルゴム等が商品化され、各種用途に使用され(長野著 合成ゴム加工技術全書第8巻 「ブチルゴム」大成社)、特に、シーリング剤、粘接着剤、電気絶縁用含浸剤、ガム用基材、改質剤等として活用されている。
【0003】イソブチレン系重合体を含有する組成物を成形、施工する場合、一般に、その組成物を加熱するか、溶剤に溶解して、シート化するか、または、基材に塗布しており、その作業性には組成物の粘度が重要な因子となる。特に、近年、基材との組合せや省エネルギーの観点からより低温での施工が求められ、また、作業環境や残存成分の観点から揮発成分や低分子量成分量の低減が求められており、組成物、とくにイソブチレン系重合体の粘度をどのようにして低下させるかが課題となっている。イソブチレン系重合体の場合、主鎖骨格の極性が低く非晶性であるため、粘度等の基本特性は、分子量に依存するところが大きく、粘度調整には重合方法等分子量コントロールが重要な要素となる。
【0004】イソブチレン系重合体の製造方法として、従来使用されてきた塩化アルミニウムや三フッ化ホウ素などを重合触媒とする重合方法の場合、イソブチレン系重合体の分子量は、主として重合温度の設定によって調整されており、重合温度が低くなるに従い高重合体(分子量の大きい重合体)が得られる[西村著 接着 p200(1974)]。しかし、この製造方法による場合は重合反応のコントロールが厳密にできないため、重合体の粘度がその数平均分子量から予想されるよりも高くなってしまう傾向があった。ゲルパーミュレーションクロマトグラフィーを用いて、この重合方法により得られた重合体の分子量の分布を測定した結果、分子量分布の指標であるMw/Mn値〔Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量〕が2より大きいことが明らかになっており、このことが、数平均分子量から予想されるよりも高粘度となる原因と推定された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の重合方法を用いた場合、得られたイソブチレン系重合体は、数平均分子量よりも低分子量の成分を大量に含有する。その上さらに、粘度を低下させるために数平均分子量を低下させると、揮発成分や低分子成分量を増加させることになり使用上問題があった。
【0006】本発明は、揮発成分や低分子量成分量を増加させることなく、イソブチレン系重合体を含有する組成物の作業性を改善することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ケネディーらによって提案されたイソブチレン系重合体のリビング重合(特開昭64−62308)で得られた組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、この重合方法(イニファー法)を用いれば、開始剤量/モノマー量を選択することにより、自由に分子量を調整することができるとともに、分子量分布(Mw/Mn)は2.0以下になるため、揮発成分や低分子量成分量を増加させることなく、従来の課題であったイソブチレン系重合体を含有する組成物の作業性を改善することができた(すなわち組成物の粘度を下げることができた)。
【0008】本発明は、イソブチレンを主たる単量体構成成分とし、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であることを特徴とする重合体(A)を含有する樹脂組成物に関する。本発明のイソブチレン系重合体(A)の数平均分子量は、500〜1000000であることが好ましい。さらに本発明は、イソブチレンを主たる単量体構成成分とし、かつ分子量分布(Mw/Mn)が2.0より大きい重合体(B)を、上記イソブチレン系重合体(A)に添加して得られる樹脂組成物に関する。また本発明においては、イソブチレン系重合体(A)の少なくとも1つの末端が、3級炭素に結合したハロゲン基、および/または、3級炭素に結合したハロゲン基からの脱ハロゲン化水素により生成するアルケニル基であることが好ましい。さらに本発明のイソブチレン系重合体(A)は、熱可塑性樹脂組成物またはホットメルト型樹脂組成物であることが好ましい。
【0009】また、本発明の樹脂組成物の好ましい用途として、シーリング材、粘接着剤、改質剤、電気絶縁用含浸剤、ガム用基材、複層ガラス用シーリング材および/またはスペーサー材料、塗膜保護用粘着シート、食品容器用接着剤、医療用粘着剤、医薬品経皮吸収用粘着材料を挙げることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明のイソブチレン系重合体(A)は、イソブチレンを主たる単量体構成成分とし、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下、より好ましくは、1.8以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.3以下であることを特徴とする。分子量分布の測定方法は、ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、移動相:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算の条件にて測定することが可能である。本発明のイソブチレン系重合体(A)の分子量は、使用目的に合わせて特に制限がないが、揮発成分と作業性の観点から、数平均分子量として、500〜1000000、好ましくは、500〜200000、さらに好ましくは、1000〜100000である。本発明のイソブチレン系重合体〔(A)又は(B)、すなわちイソブチレンを主たる単量体構成成分とする重合体〕はイソブチレン単位を50重量%以上、好ましくは75重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有する。イソブチレン以外で共重合可能な単量体としては、本発明の目的に合わせて特に制限なく使用可能であるが、イソプレン、1−ブテン、スチレン、ジビニルベンゼン等が例示される。
【0011】本発明のイソブチレン系重合体(A)の製造方法は、本発明の目的である分子量分布を調整可能な重合方法であれば特に制限はないが、いわゆるイニファー法が有効であり、特開昭64−62308、特開平1−261404、特開平7−224113等に例示されている。本発明のイソブチレン系重合体(A)の重合末端基は、特に制約されるものではないが、製造の容易さから、末端結合基のうち少なくとも1つが、3級炭素に結合したハロゲン基、および/または、3級炭素に結合したハロゲン基からの脱ハロゲン化水素により生成するアルケニル基であることが好ましく、その製造方法は特に制限するものではないが、上記文献に記載されている方法が有効である。次に、イソブチレン系重合体(A)を含有することを特徴とする樹脂組成物について説明する。
【0012】本発明では、樹脂組成物の中に、さらにイソブチレンを主たる単量体構成成分とし、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0より大きい重合体(B)を添加することが可能である。
【0013】本発明の、分子量分布(Mw/Mn)が2.0より大きい重合体(B)の構造については特に制限なく、例えば、ブチルゴム、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ブチルゴム、変性ブチルゴムとして商品化されているものの使用が可能である。イソブチレン系重合体(A)とイソブチレン系重合体(B)との組合せの例としては、例えば、比較的分子量の低いイソブチレン系重合体(A)と、比較的分子量が高いイソブチレン、または、ブチルゴムの組合せにより、粘度と硬度のバランスを取ること、または、比較的分子量の低いイソブチレン系重合体(A)と比較的分子量が高いポリブテン(B)の組合せにより、粘度と揮発成分量のバランスを取ること等が可能である。イソブチレン系重合体(A)とイソブチレン系重合体(B)との組合せ量の比率は、特に制限がなく、(A)/(B)が5/95〜95/5、好ましくは、10/90〜90/10である。
【0014】本発明の樹脂組成物の施工方法としては、通常の方法が使用でき、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形等各種成形方法や、ホットメルトアプリケーターを用いた施工方法、溶剤希釈したものを室温、または、加熱下で塗布後、室温、または、加熱下で溶剤を揮散される方法等が例示される。本発明の組成物は、熱可塑性樹脂組成物またはホットメルト型樹脂組成物として施工する場合に特に有効である。本発明を用いることにより、加熱塗工する場合は、より低温での施工が可能となるか、溶剤、または、低分子量希釈剤を添加する場合は、添加量を減量することが可能となる。本発明の樹脂組成物を各用途に使用するにあたっては、各用途の必要に合わせて、イソブチレン系重合体以外の配合成分を添加することが有効であり、例えば、可塑剤、充填剤、老化防止剤、粘着性付与剤、接着性付与剤、溶剤、軟化剤、発泡剤、紫外線吸収剤、制泡剤、消泡剤、粘度調整剤等の添加が可能である。
【0015】本発明の樹脂組成物は、ゴム系素材、例えば、タイヤ、シーリング材、ガスケットや接着剤、粘着剤、電気絶縁用含浸剤、ガム用基材として特に好適に用いられるばかりではなく、食品用途、日用雑貨用途、玩具・運動用具用途、文具用途、自動車内外装用途、土木シート・防水シート等の土木・建築用途、AV・家電機器用途、OA・事務機器用途、衣料・履き物用途、テキスタイル用途、各種カテーテル・容器・キャップ等の医療用途、紙オムツ・生理用品等の衛生用品、包装輸送資材、電線被覆・ケーブル・コネクター・プラグ等の電線用途等、防振、免振、制振といった振動制御材料、アスファルト改質剤、樹脂改質剤などに利用可能である。本発明の樹脂組成物を用いたシーリング材としては、低気体透過性、耐光性、粘着性等の特徴を活かして、建築用シーラント、ガラス用グレージングシーラント、自動車用防水シーラント、自己融着テープ、パイプラッピングテープ、屋根用シーラントテープ等の使用方法が可能である。これらのシーラント材は、ホットメルトシールしたり、テープ状に加工、または、パテ状にして使用することが可能である。本発明の樹脂組成物は、作業性の良さから、複層ガラス用シーリング材、および/または、スペーサー材料として有効であり、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂や、ゼオライト等の吸湿化合物などと併用することにより使用することも可能である。この樹脂組成物は、いわゆるホットメルトブチルシーラントとして、一次シールとして使用される他、米国特許5270091に例示されているような金属やプラスチック製ストリップ材とともに施工しスペーサー材として用いるシステムや、いわゆる熱可塑性シーリング材システム(TPSシステム)として用いることが可能である。シーリング材や上記スペーサー用途においては、イソブチレン系重合体として、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下のイソブチレン系重合体(A)単独で使用する以外に、粘度と強度、高温時のクリープ特性等ののバランスの面から、分子量分布(Mw/Mn)が2.0より大きなイソブチレン系重合体(B)と併用する方法がきわめて有効である。
【0016】本発明の樹脂組成物を用いた粘着剤、接着剤としては、耐候性、耐薬品性等を特徴を活かして、保護用粘着シート、食品容器用接着剤、医療用粘着剤等への使用が可能である。本発明の樹脂組成物を用いた場合、従来使用されてきた分子量分布(Mw/Mn)が2.0より大きなイソブチレン系重合体(B)単独の場合と比較して、同じ数平均分子量で低粘度であり、より低温で塗布できるため、ポリオレフィンやポリスチレン等プラスチックスシートや発泡体への塗工が可能である。また、イソブチレン系重合体(B)に比較して、低分子量成分や揮発成分の含有量が少ないため、保護用粘着シートで問題となる剥離後の基材への粘着成分の付着(糊残り)のより少ない配合を設定しやすいため、特に自動車用塗膜保護用粘着シートや窓ガラス用保護シート、プラスチックフィルム保護シート、液晶表示板用保護シート等への使用が可能である。また、溶剤使用量を減量できるため、安全性が重視される食品容器用接着剤、医療用粘着剤、さらには、医薬品経皮吸収用粘着材料等への使用も可能である。これら粘着剤、接着剤用途においても、イソブチレン系重合体として、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下のイソブチレン系重合体(A)単独で使用する以外に、粘度と粘着性、硬度等のバランスの面から、分子量分布(Mw/Mn)が2.0より大きなイソブチレン系重合体(B)と併用する方法がきわめて有効である。
【0017】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更実施可能である。
(製造例1)特開平7−224113記載の方法にしたがって、イソブチレンを重合し、透明粘稠液体を得た。GPC測定(移動相:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)を行った結果、数平均分子量16200、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であり、プロトンNMRの測定から、分子末端にはイソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、クロル基が存在していると推定された。
(製造例2)文献(長野著 合成ゴム加工技術全書第8巻 「ブチルゴム」大成社等)の製造方法によって得られたイソブチレン単独重合体は、GPC測定(移動相:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)を行った結果、数平均分子量14300、分子量分布(Mw/Mn)は2.7であり、透明半固体であった。
(実施例1)製造例1で製造されたイソブチレン重合体の23℃の粘度をフローテスター法により測定した結果、4000Pa・sであり、ホットメルト塗工機による塗工性確認では100℃以下で良好な塗工が可能となった。150℃での揮発成分量を測定した結果、1%未満であった。
(比較例1)製造例2で製造されたイソブチレン重合体の23℃の粘度を実施例1と同様の測定を実施したが、測定限界(10000Pa・s)以上であった。ホットメルト塗工機による塗工性確認では140℃以上で加熱が必要となった。ポリブテン(出光石油化学製 ポリブテン5R)を逐次添加することにより、100℃以下での塗工が可能となったが、この組成物は150℃での揮発成分が4%であった。
【0018】
【発明の効果】本発明を用いることによりイソブチレン系重合体を含有する組成物の作業性を、揮発成分や低分子量成分量を増加させることなく、改善することが可能であり、シーリング材、粘接着剤、改質剤、電気絶縁用含浸剤、ガム用基材等として有効である。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成12年6月5日(2000.6.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−342314(P2001−342314A)
【公開日】 平成13年12月14日(2001.12.14)
【出願番号】 特願2000−167072(P2000−167072)