トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 熱可塑性エラストマー、その原料及びその用途
【発明者】 【氏名】中田 一之

【氏名】安達 幸男

【要約】 【課題】耐熱性、加工性、柔軟性、フィラーローディング性、接着性、透明性、制振性等に優れた熱可塑性エラストマーを提供する。

【解決手段】不飽和エステル含量20〜50重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)10〜90重量部、(メタ)アクリル酸エステル含量20〜70重量%、マレイン酸モノエステル含量0.1〜10重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸モノエステル共重合体(B)及びアミン系架橋剤(C)0.1〜10重量部からなる原料を混練処理してなる熱可塑性エラストマー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 酢酸ビニル含量が20〜50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル含量が20〜50重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体から選ばれるエチレン・不飽和エステル共重合体(A)10〜90重量部、(メタ)アクリル酸エステル含量が20〜70重量%、マレイン酸モノエステル含量が0.1〜10重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸モノエステル共重合体(B)90〜10重量部及びアミン系架橋剤(C)0.1〜10重量部からなる熱可塑性エラストマー原料。
【請求項2】 請求項1記載の熱可塑性エラストマー原料を架橋処理してなる熱可塑性エラストマー。
【請求項3】 190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜500g/10分、−50℃〜150℃の損失正接(tanδ)が0.1〜1.5の範囲にある請求項2記載の熱可塑性エラストマー。
【請求項4】 伸びが400%以上、ショアA硬度が90以下である請求項2又は3記載の熱可塑性エラストマー。
【請求項5】 請求項2〜4記載の熱可塑性エラストマーからなる高分子化合物改質剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工性、作業性、柔軟性、フィラーローディング性、低温特性、耐ストレスクラック性、接着性、耐熱性、透明性、制振性等に優れた熱可塑性エラストマーに関する。
【0002】
【従来の技術】エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのエチレン・不飽和エステル共重合体は、加工性、透明性、柔軟性、低温特性、耐衝撃性、耐ストレスクラック性、接着性等に優れているところから多方面で使用されている。しかしながら柔軟性が良好なものほど耐熱性に乏しく、例えば不飽和エステルを20重量%以上含有する共重合体にあっては、ほとんどが70℃以下で溶融するため、使用分野が限定されていた。LLDPEのような高融点重合体を配合することによって耐熱性を改良することは可能であるが、その改良の程度はそれほど顕著なものではなく、また透明性や柔軟性が損なわれるという問題点があった。
【0003】一方、エチレン・アクリルゴムとして知られている(メタ)アクリル酸エステル含量の高いエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸モノエステル共重合体の架橋物は、柔軟で耐熱性が優れるという特長を有しているが、溶融成形ができないため汎用のエチレン・不飽和エステル共重合体の用途にそのまま適用しうるものではなかった。またこの3元共重合体はペレットで取り扱うことができず、作業性が悪いという問題点もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、エチレン・不飽和エステル共重合体の有する優れた特性、とりわけ加工性、透明性、柔軟性等を損なうことなく耐熱性を顕著に改善する処方について検討を行った。その結果、特定組成のエチレン・不飽和エステル共重合体とエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸モノエステル共重合体を所定割合で配合し、後者の共重合体を選択的に架橋したものが所望の特性を有したエラストマー様組成物となり、かつペレットで取り扱うことができるとともに溶融成形が可能であることを見出すに至った。したがって本発明の目的は、柔軟性、耐熱性、その他諸特性に優れた熱可塑性エラストマーを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明によれば、酢酸ビニル含量が20〜50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル含量が20〜50重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体から選ばれるエチレン・不飽和エステル共重合体(A)10〜90重量部、(メタ)アクリル酸エステル含量が20〜70重量%、マレイン酸モノエステル含量が0.1〜10重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸モノエステル共重合体(B)90〜10重量部及びアミン系架橋剤(C)0.1〜10重量部からなる熱可塑性エラストマー原料、及びこの原料を架橋処理してなる熱可塑性エラストマーが提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明で使用されるエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、酢酸ビニル含量が20〜50重量%、好ましくは30〜45重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル含量が20〜50重量%、好ましくは24〜45重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体から選ばれるものである。共重合体(A)として酢酸ビニル含量や(メタ)アクリル酸エステル含量が上記範囲より少ないものを使用した場合には、共重合体(B)との相溶性が不足気味となり、透明性良好な熱可塑性エラストマーを得ることが難しくなり、またこれらの含量が上記範囲より多いものを使用すると、得られる熱可塑性エラストマーの機械的強度が充分でなく、またべたつきが生じると共にペレット化も難しくなる。
【0007】上記エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどを例示することができるが、これらの中ではアクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルのいずれかを選択することが好ましい。
【0008】エチレン・不飽和エステル共重合体(A)としてはまた、共重合体(B)との混和性、目的物である熱可塑性エラストマーの加工性、機械的特性等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜500g/10分、好ましくは10〜100g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0009】本発明で使用されるエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸モノエステル共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステル含量が20〜70重量%、好ましくは25〜65重量%、マレイン酸モノエステル含量が0.1〜10重量%、好ましくは1〜7重量%のものである。共重合体(B)における(メタ)アクリル酸エステル成分は、生成する熱可塑性エラストマーに柔軟性及びゴム的弾性を付与する重要な成分であるが、上記範囲を越えるようなものを使用すると、共重合体(A)との相溶性が悪化すると共に低温特性が損なわれるので好ましくない。またマレイン酸モノエステル成分は架橋点となるものであって熱可塑性エラストマーに耐熱性を付与する重要な成分であり、上記のように適量含有させたものを使用する必要がある。
【0010】共重合体(B)における(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどを例示することができるが、これらの中ではアクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルのいずれかを選択することが好ましい。
【0011】共重合体(B)におけるマレイン酸モノエステルとしては、アルキル部分が炭素数1〜6程度であるアルキルエステルを使用することができるが、とくにモノメチルエステル又はモノエチルエステルの使用が好ましい。また共重合体(B)としては、共重合体(A)との混和性、機械的強度などを考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに1〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0012】本発明で使用されるアミン系架橋剤(C)は、共重合体(B)を架橋しうる架橋剤であり、具体的にはヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミンカルバメート、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、o−トリルグアニド、ジ−o−トリルグアニジンのジカテコール硼酸塩などを例示することができる。これらは単独で、あるいは2種以上組合せて使用することができる。このようなアミン系架橋剤の代わりに有機過酸化物系架橋剤を使用しても、本発明のような優れた特性を有する熱可塑性エラストマーを得ることはできない。
【0013】本発明においては、共重合体(A)と共重合体(B)は、両者の合計を100重量部とするときに、共重合体(A)を10〜90重量部、好ましくは15〜85重量部に対し、共重合体(B)を90〜10重量部、好ましくは85〜15重量部の割合で配合する。すなわち共重合体(A)の配合割合が上記範囲より多くなると耐熱性に優れた熱可塑性エラストマーを得ることが難しくなり、また共重合体(B)の配合割合が上記範囲より多くなると、溶融成形可能な熱可塑性エラストマーを得ることが難しくなる。
【0014】またアミン系架橋剤(C)の使用量は、その種類や共重合体(B)の使用量によっても異なるが、共重合体(A)と共重合体(B)の合計量100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部の範囲である。
【0015】本発明の熱可塑性エラストマーは、共重合体(A)、共重合体(B)及びアミン系架橋剤(C)を、(A)及び(B)の融点以上の温度で混練することによって製造することができる。混練の温度及び時間は、共重合体(B)とアミン系架橋剤(C)が反応して架橋構造を形成する条件であり、(C)の種類によっても異なるが、例えば150〜250℃の範囲である。また混練の装置としては、バンバリーミキサー、プラストミル、ニーダー、単軸又は2軸の押出機などを使用することができる。
【0016】かくして得られる熱可塑性エラストマーは柔軟性、透明性、耐熱性に優れた弾性体であり、溶融成形が可能である。例えば190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜500g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分、23℃における損失正接(tanδ)が0.1以上で、−50℃〜150℃のtanδも0.1〜1.5の範囲にある熱可塑性エラストマーを容易に得ることができる。また伸びが400%以上、とくに500〜1100%、ショアA硬度が90以下、とくに30〜70のものを容易に得ることができる。
【0017】上記熱可塑性エラストマーには、各種添加剤を配合することができる。このような添加剤は熱可塑性エラストマー形成後に配合してもよく、あるいは熱可塑性エラストマーの原料である(A)、(B)及び(C)からなる組成物に予め配合しておいてもよい。上記添加剤の例としては、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、ゲル化促進剤、可塑剤、粘着剤、無機充填剤、ガラス繊維、カーボン繊維などの強化繊維、顔料、染料、難燃剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤などを挙げることができる。
【0018】本発明の熱可塑性エラストマーにはまた、各種高分子化合物を配合して改質することができるし、また各種高分子化合物に配合する改質剤として使用することができる。このような高分子化合物の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体及びそのアイオノマーのようなオレフィン系重合体、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、MXナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステルのようなポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、スチレン系、オレフィン系、動的架橋TPO、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系、ブタジエン系、イソプレン系などの各エラストマー、及び天然ゴムなどのゴムを挙げることができる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例において使用した原料及び生成熱可塑性エラストマーの物性測定方法は次の通りである。
【0020】(1)原料共重合体A1:アクリル酸エチル含量34重量%、メルトフローレート(MFR)25g/10分のエチレン・アクリル酸エチル共重合体共重合体A2:アクリル酸エチル含量13重量%、MFR9.5g/10分のエチレン・アクリル酸エチル共重合体共重合体A3:酢酸ビニル含量33重量%、MFR31g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体共重合体A4:酢酸ビニル含量19重量%、MFR15g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体共重合体B:アクリル酸メチル含量55重量%、マレイン酸モノメチル含量4重量%、MFR12g/10分のエチレン・アクリル酸メチル・マレイン酸モノメチル共重合体架橋剤1:ヘキサメチレンジアミンカーバメート(商品名:ダイアックNo1、デュポン社製)
架橋剤2:ジ−o−トリルグアニジン(商品名:ノクセラーDT、大内新興社製)
【0021】(2)物性評価方法MFR:JIS K7210(190℃、2160g)
伸び:引張試験(JIS K6760準拠)
硬度(ショアA):JIS K7215準拠耐熱性:2mm(厚)×2mm(巾)×20mm(長さ)のシートを150℃のオーブン中に60分間放置した後、溶融状態を目視で観察○:形状を保持、 △:変形、 ×:形状を失い溶融外観:3mm厚プレスシートの外観を目視で観察ハンドリング性:○:ペレタイズ可能 ×:ペレタイズ不可tanδ測定:DMA測定からtanδを見積もった。
測定条件使用機器:(株)レオロジ社製 DVE−V4レオスペクトラー温度範囲:−150〜+150℃周波数:10Hzサンプル形状:巾6mm×長さ30mm×厚2mmのシート片測定項目:貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接判定○:−50〜150℃の範囲でtanδの値が0.1〜1.5の間に安定している。
×:−50〜150℃の範囲でtanδの値が0.1〜1.5の間から外れる。
【0022】[実施例1〜4、比較例1〜4]表1に示す割合の各原料を2軸押出機を使用して200℃で押し出すことにより熱可塑性エラストマーを調製した。得られた熱可塑性エラストマーからそれぞれの評価サンプルを作成し、物性評価を行った。結果を表1に併記する。
【0023】[比較例5]比較のため、同様にして共重合体A1の物性評価を行った結果を表1に併記する。
【0024】
【表1】

【0025】
【発明の効果】本発明によれば、加工性、耐熱性、柔軟性、フィラーローディング性、低温特性、耐ストレスクラック性、接着性、透明性、制振性等に優れた熱可塑性エラストマーを提供することができる。この熱可塑性エラストマーは、通常の熱可塑性樹脂同様の成形が可能であり、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、インフレーション成形、トランスファー成形など各種成形方法により、チューブ、ホース、自動車用材料、制振材料、スポーツ用品、工具、靴、建材、雑貨、電線・ケーブルの被覆材、シート材料、緩衝材、積層材料等の成形品として使用することができる。本発明の熱可塑性エラストマーはまた、上記諸性質の付与を目的として、他の高分子化合物の改質剤として使用することもできる。
【出願人】 【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・デュポンポリケミカル株式会社
【出願日】 平成12年6月2日(2000.6.2)
【代理人】 【識別番号】100070493
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和 (外1名)
【公開番号】 特開2001−342308(P2001−342308A)
【公開日】 平成13年12月14日(2001.12.14)
【出願番号】 特願2000−165377(P2000−165377)