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【発明の名称】 導電性樹脂組成物及びそれを用いたエンコーダスイッチ
【発明者】 【氏名】松茂良 悟

【要約】 【課題】優れた導電性と耐摩耗性を兼ね備えた導電性樹脂組成物を接点部分の材料とすることにより、多品種少量生産に対応でき、且つ長寿命のエンコーダスイッチを提供する。

【解決手段】エンコーダスイッチの接点部分を、導電性樹脂組成物をスクリーン印刷法によりパターニングすることにより形成し、導電性樹脂組成物の導電性粒子を、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉及び銀粉とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バインダ樹脂中に、導電性粒子として、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉と、銀粉とを含有し、前記導電性粒子の全体に占める割合が、74乃至88重量%であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】 前記導体粉の全体に占める割合が、1乃至9重量%であることを特徴とする請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】 前記銀粉は、球塊状粒子と樹枝状粒子が混在したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】 前記球塊状粒子の前記樹枝状粒子に対する重量比が、0.8乃至1.6であることを特徴とする請求項3記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】 前記バインダ樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】 前記熱硬化性樹脂は、フェノール系樹脂であることを特徴とする請求項5記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】 金属からなる摺動ブラシと、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の導電性樹脂組成物からなり、前記摺動ブラシと間欠的に接触する接点部分とを有することを特徴とするエンコーダスイッチ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた耐摩耗性と導電性を両立する導電性樹脂組成物、及びこの導電性樹脂組成物を接点部分としたエンコーダスイッチに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のエンコーダスイッチは、摺動ブラシがりん青銅からなり、接点部分が、りん青銅の条を放射状に打ち抜いて、りん青銅の条の表面をニッケルめっき膜、銀めっき膜により順次覆ったものであり、エンコーダスイッチの駆動時には、摺動ブラシが接点部に間欠的に接触するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、接点部分を打ち抜いて作製する方法では、接点部分の形状ごとに打ち抜き用の金型の作製が必要であり、多品種少量生産への対応が困難であった。本発明は、接点部分を、優れた導電性と耐摩耗性を兼ね備えた導電性樹脂組成物により形成して、多品種少量生産に対応でき、且つ長寿命のエンコーダスイッチを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の導電性樹脂組成物は、バインダ樹脂中に、導電性粒子として、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉と、銀粉とを含有し、前記導電性粒子の全体に占める割合が、74乃至88重量%である。このような導電性樹脂では、導体粉が、主に銀被膜により、導電性樹脂組成物に導電性を付与するとともに、母材とするカーボンビーズの高い硬度によって導電性樹脂組成物に加わる荷重を支え、導電性樹脂組成物の耐摩耗性を向上させる役割を果たしている。また、導体粉は、カーボンビーズを母材とした略球状であり、鋭いエッジをもたないので、導電性樹脂組成物に摺接する摺動ブラシ等が導体粉に接触しても、摺動ブラシ等が削られることがない。
【0005】銀粉は、導体粉間に介在することにより導電性粒子間の接触点を増して、導電性樹脂組成物の導電性を向上させる役割を果たし、また、導電性樹脂組成物の表面において、導体粉間の隙間を埋めて、導電性樹脂組成物の表面を平坦なものとしている。
【0006】バインダ樹脂は、導電性粒子からなる導体粉と、銀粉とを均一に分散させ、且つ硬化収縮することにより導電性粒子間の接触圧を増加させ、導電性粒子間の接触抵抗を下げて、導電性樹脂組成物全体の導電性を向上させる役割を果たす。
【0007】導電性粒子の全体に占める割合が、74重量%以下であると、導電性粒子不足であり、導電性樹脂組成物の導電性、耐摩耗性が低い。一方、88重量%を越えると、導電性樹脂組成物のスクリーン印刷法によるパターニングが困難になる。
【0008】また、本発明の導電性樹脂組成物は、導体粉の全体に占める割合が、1乃至9重量%である。導体粉の全体に占める割合が1重量%未満であれば、導体粉により摺動ブラシの荷重を十分に支えることができず、柔らかい銀粉で摺動ブラシの荷重を支える部分が発生し、全体として導電性樹脂組成物の耐摩耗性が低下する。一方、導体粉の全体に占める割合が9重量%を越えると、導電性樹脂組成物の硬度が高いので、導電性樹脂組成物に摺接する摺動ブラシ等が削られ易くなる。
【0009】また、本発明の導電性樹脂組成物は、前記銀粉を、球塊状粒子と樹枝状粒子が混在するものとした。このような導電性樹脂組成物では、銀粉中に球塊状粒子を含有することによって、より多くの銀粉を導電性樹脂組成物中に添加することができる。導電性樹脂組成物の導電性は、導体粉に比較して多量に存在する銀粉により形成される導電経路の数と、個々の導電経路の導電性によって決まる。銀粉の添加量が多いと、球塊状粒子同士が接触してできる導電経路は複雑なものになり、通常は導電性樹脂組成物全体の導電性に寄与しないループ状の導電経路や、隣接する導電経路に連絡するバイパス的な導電経路、更にはまったく導電性に寄与しない行き止まりの導電経路も複数形成される。導電性樹脂組成物が硫化雰囲気に曝された場合、実際に樹脂組成物の導電性に寄与している導電経路中の1つの接触点が絶縁性になることが樹脂組成物の導電性の低下につながる。球塊状粒子が形成する導電経路においては、導電に寄与する一部分が硫化しても、ループ状の導電経路で補償されたり、バイパス的な導電経路が働くことにより、例え導電経路中の1つの接触点が絶縁性になっても導電性樹脂組成物全体の導電性の低下は小さくなる。また、硫化の速度も、まったく導電性に寄与しない行き止まりの導電経路の存在等により遅いものになる。従って、導電性樹脂組成物中に多量の銀粉が存在することは、耐硫化特性を向上させる。
【0010】さらに、銀粉中に球塊状粒子を含むと、より多くの銀粉を導電性樹脂組成物中に添加することができるので、導電性樹脂組成物の導電性を保持したまま導電性粒子中の導体粉の割合を減らして、導電性樹脂組成物の硬度が高くなりすぎることを防ぐことができる。
【0011】また、銀粉中に含まれる樹枝状粒子は、球塊状粒子の作る隙間に介在し、銀粉間の接触点を増やし、銀粉間の集中接触抵抗を低下させ、導電性樹脂組成物の導電性を優れたものとする。
【0012】さらに、本発明の導電性樹脂組成物は、前記球塊状粒子の前記樹枝状粒子に対する重量比が0.8乃至1.6である。このような導電性樹脂組成物では、より多くの銀粉を添加することができるので、導電性樹脂組成物の適切な硬度が保持されると共に銀粉の耐硫化性が向上して、且つ、樹枝状粒子が球塊状粒子間に介在することにより、導電性樹脂組成物全体の導電性が向上する。
【0013】また、本発明の導電性樹脂組成物は、前記バインダ樹脂が、熱硬化性樹脂である。このような導電性樹脂組成物では、熱硬化性樹脂の樹脂構造には適当量の水素結合性官能基(水酸基、アミノ基等)が存在するので、導電性樹脂組成物が基板に接着する。また、バインダ樹脂に熱硬化性樹脂を用いると、雰囲気温度や摩擦熱による導電性樹脂組成物の軟化を防ぐことができる。
【0014】また、本発明の導電性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂がフェノール系樹脂である。このような導電性樹脂組成物では、フェノール系樹脂が、脱水縮合して、十分な硬化収縮が起こるので、バインダ樹脂をエポキシ樹脂等とした場合と比べて、導電性粒子間の接触圧が高くなり、導電性粒子間の接触抵抗が小さくなり、導電性樹脂組成物の導電性が向上する。フェノール系樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、キシレン変性フェノール樹脂、クレゾール変性フェノール樹脂、フラン変性フェノール樹脂、エポキシ−フェノール樹脂、フェノール−メラミン樹脂、フェノール−カルボジイミド樹脂、レゾルシノール変性フェノール樹脂等を用いることができる。
【0015】本発明のエンコーダスイッチは、金属からなる摺動ブラシと、上述の導電性樹脂組成物からなり、前記摺動ブラシと間欠的に接触する接点部分とを有する。このようなエンコーダスイッチは、導電性樹脂組成物がスクリーン印刷法によりパターニングできるので、異なる形状の接点部分を作製するとき、スクリーン印刷用のマスクを取り替えるだけで良く、多品種少量生産への対応が容易である。また、接点部分をスクリーン印刷法により形成すると、金属板を金型で打ち抜くよりも、複雑な形状とすることができる。
【0016】また、接点部分が摺動ブラシとは異なる材料からなるので、凝着摩耗が起こることがなく、長寿命のエンコーダスイッチとすることができる。さらに、上述のように耐摩耗性に優れた導電性樹脂組成物により接点部分を形成したので、接点部分が摺動ブラシにより削られることがなく、長寿命のエンコーダスイッチとすることができる。
【0017】また、上述のように導電性に優れた導電性樹脂組成物により接点部分を形成したので、接点部分が微細な形状であっても、接点部分の抵抗が著しく高くなることがない。さらに、摺動ブラシの摺接面とする導導電性樹脂組成物表面が平坦であるから、摺動ブラシが摺接面の凸部に乗り上げて生じるノイズを削減することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係わる導電性樹脂組成物の実施の形態を述べる。本発明の導電性樹脂組成物の実施の形態は、導電性粒子として、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉と、銀粉とを含有している。導電性樹脂組成物中に導電性粒子が占める割合は、74.6〜87.5重量%であり、導電性樹脂組成物中の導体粉が占める割合は、1.1〜8.8重量%である。
【0019】導体粉は、略球状であり、粒径1〜30μm(平均粒径10μm)であるものを用いたが、導体粉のより好ましい粒径は3〜10μmである。このとき、導電粉の粒径が小さすぎると、スクリーン印刷により形成した導電性樹脂組成物の厚みより著しく小さく、組成物中に埋設してしまうので摺動ブラシの荷重を支えることができず、導電性樹脂組成物の耐摩耗性が低下する。一方、粒径が大きすぎると、スクリーン印刷法により導電性樹脂組成物のパターニングを行う際、バインダ樹脂を溶解させた樹脂溶液中に導電粒子を分散させた導電インクでは、導体粉が沈降するために安定性が低下し、かつ、スクリーン印刷により形成した導電性樹脂組成物の厚みより著しく大きく、導体粉のみで摺動ブラシを支えることになり、導電性樹脂組成物と摺動ブラシ間の集中接触抵抗が増加する。また、スクリーン印刷用マスクの紗が粗いものとなるので、パターン精度が低下する。
【0020】導体粉のカーボンビーズは、フェノール樹脂やベンゾグアナミン樹脂等の熱硬化性樹脂球を、希ガス雰囲気もしくは窒素雰囲気中において加熱し、炭素化したものである。熱硬化性樹脂球の炭素化のための加熱処理温度は500〜1200℃であり、加熱処理温度が500℃に満たないと、炭素化が不十分で、カーボンビーズの硬度が不足する。一方、1200℃を越えると、熱硬化性樹脂球を炭素化した炭素化粒子は、炭素化に伴う分子構造の再配列による歪みで裂けたざくろ状になりビーズにならず、このような炭素化粒子の表面に銀被膜をコーティングすることは困難であり、また、炭素化粒子のエッジが導電性樹脂組成物の表面に突出して、摺動ブラシが削られる原因となる。
【0021】カーボンビーズの表面にコーティングされた銀被膜は、厚さ0.5μmである。1μm以下の薄い銀被膜では、銀としての延展性が現れることがなく、母材とする硬質のカーボンビーズの影響を受けて、硬い被膜として振る舞う。厚さが1μmを越えると、銀としての延展性が現れる。また、銀被膜は、めっきにより作製されたものであり、銀被膜を作製する前には、カーボンビーズの表面に賦活性処理等により活性官能基を導入し、めっきし易い状態とする。
【0022】銀粉は、球塊状粒子と、樹枝状粒子が混在したものであり、球塊状粒子は、粒径3〜6μmの不定形であり、樹枝状粒子の粒径は1μm以下であり、測定可能な二次凝集粒径は、8〜15μmである。銀粉中において、球塊状粒子の樹枝状粒子に対する重量比は、0.8〜1.6である。
【0023】バインダ樹脂には、レゾール型フェノール樹脂を用いた。導電性樹脂組成物の製造方法は、レゾール型フェノール樹脂をカルビトールに溶解させた樹脂溶液中に、三本ロールミルを用いて導電性粒子を分散させた導電インクを作製して、この導電インクをスクリーン印刷法により基板上にパターニングして、200℃20分の加熱を加え、乾燥、硬化させたものである。導電インクを乾燥させることにより、カルビトールは揮発するので、硬化後の導電性樹脂組成物中に、カルビトールは存在しない。
【0024】図1は、このような導電性樹脂組成物を用いた本発明のエンコーダスイッチを示し、コード板Cは、樹脂等の絶縁材からなり直径約10mm程度の円形の基板1上に、導電性樹脂組成物からなる接点部分2がスクリーン印刷法により形成されたものである。接点部分2は、基板1の中央部分にリング状に形成されたコモン部2aと、コモン部2aから放射状に延出された第1の接点部2bと、それぞれの第1の接点部2bからクランク状に延出された第2の接点部2cとを有している。このような形状の接点部分2は、従来のように金属板を打ち抜いて製造する方法では、金属板を打ち抜くための金型が複雑であり、高価なものになってしまう。これに対して接点部分2をスクリーン印刷法により形成すると、接点部分2の形状が多少複雑になっても、スクリーン印刷用マスクの価格は変わらないので、製造コストを抑えることができる。
【0025】りん青銅からなる摺動ブラシ3は、コモンブラシ3aと、第1、第2の摺動ブラシ3b、3cを有し、コモンブラシ3aの先端、第1、第2の摺動ブラシ3b、3cの先端は、一直線上に配設されて、それぞれ、接点部分2のコモン部2a、第1、第2の接点部2b、2cと接触するようになっている。また、摺動ブラシ3は、図2に示すように、根元部分に、コモンブラシ3a、第1、第2の摺動ブラシ3b、3cがそれぞれ折り曲げられた折り曲げ部3dが形成されている。このような折り曲げ部3dは、コモンブラシ3a、第1、第2の摺動ブラシ3b、3cの先端が一直線上に配設されているとき、一直線上に形成することができるので、折り曲げ加工を容易に行うことができる。
【0026】エンコーダスイッチの駆動時には、コード板Cが回転して、摺動ブラシ3は、コモンブラシ3aが接点部分2のコモン部2aと常に接触し、第1、第2の摺動ブラシ3b、3cが、それぞれ、第1、第2の接点部2b、2cと間欠的に接触する。このとき、第1、第2の接点部2b、2cはクランク状であるから、第1の摺動ブラシ3bと第1の接点部2bが接触してから、第2の摺動ブラシ3cと第2の接点部2cが接触するまでには、時間差を生じる。
【0027】図3は、エンコーダスイッチの駆動を模式的に示したものである。破線で囲まれた部分が、コード板Cと摺動ブラシ3から構成されるエンコーダ部eであり、エンコーダ部eは、プルアップ抵抗4と直列に接続されて、エンコーダ部eとプルアップ抵抗4には、電圧V0が与えられている。
【0028】エンコーダ部eの第1のスイッチ部e2は、第1の摺動ブラシ3bが接点部分2の第1の接点部2bに接触したときにON状態となり、第2のスイッチ部e4は、第2の摺動ブラシ3cが接点部分2の第2の接点部2cに接触したとき、ON状態となる。このとき、接点部分2が導電性に優れた導電性樹脂組成物からなるので、内部抵抗e1、e3は小さく、エンコーダ部eの出力V1、V2は、ほぼ0Vとなる。
【0029】そして、第1のスイッチ部e2は、第1の摺動ブラシ3bが接点部分2の第1の接点部2bから離れたときにOFF状態となり、第2のスイッチ部e4は、第2の摺動ブラシ3cが接点部分2の第2の接点部2cから離れたとき、OFF状態となる。第1、第2のスイッチ部e2、e1が開いた状態であるとき、エンコーダ部eの出力V1、V2は、エンコーダ部eとプルアップ抵抗4に与えられた電圧V0となる。
【0030】図4は、エンコーダスイッチの駆動時において、エンコーダ部eの出力V1、V2のそれぞれの時間変化を示す。このような出力V1、V2の信号波形では、出力されたON状態(OFF状態)の数からコード板Cの回転角度、出力V1、V2の位相差Δからコード板Cの回転方向を検出することができる。
【0031】(実施例)表1に、本発明の実施例1〜9である導電性樹脂組成物について、バインダ樹脂、導体粉、球塊状の銀粉、樹枝状の銀粉、及び、導体粉と銀粉からなる導電性粒子が全体に占める割合(重量%)、さらに、導体粉の銀粉に対する重量比、銀粉中の球塊状粒子の樹枝状粒子に対する重量比、それぞれの導電性樹脂組成物の比抵抗を示す。
【0032】
【表1】

【0033】寿命は、それぞれの導電性樹脂組成物を用いて、図1に示したようなコード板Cの接点部分2を形成し、りん青銅からなる摺動ブラシ3により、コード板Cに10〜15gの荷重を与えて、摺動ブラシ3と接点部分2を摺接させ、図3に示すような出力V1、V2の正しい信号波形が得られなくなるまでに、コード板Cが回転する回数である。
【0034】なお、実施例1〜9では、導体粉の全体に占める割合が増えるほど、球塊状である銀粉の全体に占める割合が減っている。これは、導電性樹脂組成物中、導体粉と球塊状である銀粉によって占められる体積を一定としたからである。
【0035】実施例1、5〜8は、導体粉の銀粉に対する重量比、及び銀粉中の球塊状粒子の樹枝状粒子に対する重量比が等しく、導電性粒子の全体に占める割合が異なる。導電性粒子の全体に占める割合が高いほど、導電性樹脂組成物の比抵抗は低くなる。
【0036】導電性粒子の割合が、77.3〜84.1重量%である実施例1、6、7は、比抵抗が1.9×10-4Ω・cm程度と低く、且つ、寿命は20万回以上と非常に長寿命である。
【0037】このように実施例1、6、7が非常に長寿命であるのは、導電性粒子に対してバインダ樹脂の量が十分であり、導電性樹脂組成物が摺動ブラシの摺接により削られることがないので、摺動ブラシが導電性樹脂組成物の削れ粉に乗り上げることなく滑らかに摺接して、ノイズの少ない信号波形を得られるためと考えられる。
【0038】実施例1〜9の中で、導電性粒子の全体に占める割合が高い実施例8、9では、比抵抗が1.8×10-4Ω・cm未満と非常に低く、寿命も15万回と長い。
【0039】(比較例)表2に、比較例1〜6とする導電性樹脂組成物について、バインダ樹脂、導体粉、球塊状の銀粉、樹枝状の銀粉、及び、導体粉と銀粉からなる導電性粒子が全体に占める割合(重量%)、さらに、導体粉の銀粉に対する重量比、銀粉中の球塊状粒子の樹枝状粒子に対する重量比、それぞれの導電性樹脂組成物の比抵抗を示す。寿命は、実施例と同様な定義である。
【0040】
【表2】

【0041】(比較例1)比較例1は、導電性粒子として、導体粉のみを64.2重量%含有して、銀粉を含有しないものである。導体粉の重量のうち、コーティングされた銀被膜の重量が全体の50%を占めるとき、導体粉の比重は銀単体の約1/4であるから、体積的には、通常の銀ペースト並の添加量である。しかし、比較例1の比抵抗は464×10-4Ω・cmであり、通常の銀ペーストの比抵抗よりも2桁以上高い。これは、導体粉の導電性が銀粉に比べて低いことに加えて、導体粉が略球状であるために、導体粉間の接触点が少ないことに起因していると考えられる。従って、導電性樹脂組成物の導電性粒子としては、導体粉に加えて銀粉を添加することが必須である。
【0042】(比較例2)比較例2は、導電性粒子としてカーボンビーズと銀粉とを含有して、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉を含有しないものである。このような導電性樹脂組成物の比抵抗は比較的低いので、出力電圧Vsは、駆動初期において、図3のように正しい信号波形となる。しかし、接点部分2と摺動ブラシの摺接が繰り返され、導電性樹脂組成物の銀粉が削り取られると、摺動ブラシとカーボンビーズが接触するようになり、摺動ブラシと接点部分2の接触抵抗は、摺動ブラシとカーボンビーズが接触したときに高くなり、信号波形にノイズが発生するようになる。よって、寿命は5万回以下と短いものとなっている。
【0043】(比較例3)比較例3は、導電性粒子として、銀粉のみを含有して、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉を含有しないものである。このような導電性樹脂組成物では、導電性樹脂組成物の硬度が低く、耐摩耗性が劣るので、摺動ブラシの摺接により導電性樹脂組成物が削られて、寿命は5万回以下と短いものとなる。
【0044】(比較例4)比較例4は、導電性粒子として、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉と銀粉の両方を含有し、導電性粒子が全体に占める割合も適切であるが、導体粉の全体に占める割合が高いものである。導体粉の割合が高いと、導電性樹脂組成物は硬くなりすぎて、摺動ブラシが削られ、寿命は5万回以下と短いものとなる。しかし、硬い材料を用いた摺動ブラシでは、長寿命が望めるものと考えられる。
【0045】(比較例5)比較例5は、導電性粒子として、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉と銀粉の両方を含有しているが、導電性粒子が全体に占める割合が73.2重量%と少ないものである。このような導電性樹脂組成物は、比抵抗が高く、また、摺動ブラシとの摺接により削られ、削れ粉がコード板に付着して、摺動ブラシが削れ粉に乗り上げると信号波形にノイズを生じる。よって、寿命は5万回以下と短いものとなる。
【0046】(比較例6)比較例6は、導電性粒子として、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉と銀粉の両方を含有しているが、導電性粒子が全体に占める割合が88.8重量%と多いものである。このような導電性樹脂組成物は、高濃度の導電性粒子を樹脂溶液中に含有する導電インクが、スクリーン印刷に適した流動性を示さず、スクリーン印刷法により作製することができない。
【0047】
【発明の効果】本発明の導電性樹脂組成物は、バインダ樹脂中に、導電性粒子として、カーボンビーズの表面に銀被膜がコーティングされた導体粉と、銀粉とを含有している。このような導電性樹脂では、導体粉が、導電性樹脂組成物に加わる荷重を支え、銀粉は、導体粉間に介在することにより導電性粒子間の接触点を増して、導電性樹脂組成物の導電性を向上させているので、優れた耐摩耗性と導電性を両立させることができる。
【0048】本発明のエンコーダスイッチは、金属からなる摺動ブラシと、コード板上に前記摺動ブラシと摺接する接点部分とを有し、該接点部分は、上述の導電性樹脂組成物からなる。このようなエンコーダスイッチは、導電性に優れた導電性樹脂組成物を接点部分として用いたので、接点部分が微細なパターンがあっても、接点部分の抵抗(内部抵抗)が著しく高くなることがない。また、導電性樹脂組成物の耐摩耗性が優れているので、摺動ブラシにより接点部分が削られることがなく、長寿命のエンコーダスイッチとすることができる。
【出願人】 【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
【出願日】 平成13年2月15日(2001.2.15)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−311010(P2001−311010A)
【公開日】 平成13年11月9日(2001.11.9)
【出願番号】 特願2001−38569(P2001−38569)