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【発明の名称】 ポリリン酸メラミンおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】後藤 茂

【氏名】小宮 京子

【氏名】金内 忠男

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】オルトリン酸一メラミンを加熱処理することで得られるポリリン酸メラミンであって、10℃/分の昇温速度で示差熱分析するとき380±10℃の主吸熱分解ピークより低温域での吸熱分解がほとんど認められないことを特徴とするポリリン酸メラミン。
【請求項2】オルトリン酸とメラミンのモル比が1:1で反応させて得られるオルトリン酸メラミンを260〜320℃で1〜10時間加熱処理することを特徴とするポリリン酸メラミンの製造方法。
【請求項3】オルトリン酸メラミンを320℃以下で加熱処理してポリリン酸メラミンとすることで、樹脂用難燃剤として優れた耐水性と分散性を持つポリリン酸メラミンの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、樹脂用難燃剤として好適な耐熱性をそなえたポリリン酸メラミンを製造する方法。
【0002】
【従来の技術】オルトリン酸メラミンはリン酸1モルに対して1〜3モルのメラミンを反応させたものが塗料、樹脂、セルロース用の難燃剤として使用されている。リン酸含有量の多い1メラミン塩が通常使用され、本特許ではオルトリン酸1メラミン塩を以下リン酸メラミンと記す。リン酸メラミンは加熱時にリン酸分がポリリン酸化する際に放出する水分に由来する示差熱分析法の吸熱分解ピークが270±10℃付近と310±10℃付近にあり、各々約4%づつ減量する。このリン酸メラミンから放出される水分は、樹脂組成物とリン酸メラミンを高温で混練する際にベントアップを生じたり樹脂中に気泡を発生するため、高い混練温度の必要な樹脂には使用が制限された。リン酸メラミン2分子から1分子脱水したピロリン酸メラミンも310±10℃付近に脱水反応による水分の放出があるため、樹脂との混練温度は低く設定する必要があった。
【0003】特公昭40−28594号公報および米国特許第3,920,796号明細書にはオルトリン酸メラミンを170〜320℃で焼成して、一部または全量をピロリン酸メラミンとする方法が記載されている。本生成物の詳細な熱分析挙動は示されていないが、ポリリン酸メラミンを目的とするものではない。
【0004】特開昭61−126091号公報には縮合リン酸とメラミンを固相反応せしめて縮合リン酸メラミンを得る方法が記載されている。この方法では縮合リン酸自体が高価であるため安価な縮合リン酸メラミンが得られないほか、反応が不均一になるため未反応原料が混入しやすく、樹脂との混練中にメラミンの昇華が生じやすい欠点があった。
【0005】特開平10−306081号公報にはオルトリン酸1モルに対して2〜4倍モルのメラミンを反応せしめた後340〜450℃で0.1〜30時間焼成してポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩を得る方法が記載されている。この方法はリン酸と同時にメラミンを縮合させるため、焼成時に多量のメラミンとアンモニアの発生し、対策が必要となる。また、焼成装置が局部的に強熱される場合はリン酸の分解により強酸性ガスを発生しさらに作業環境を悪化する。分解生成物が多い場合、原料のオルトリン酸メラミンに対する最終生成物の量も少ない結果となる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】従って、本発明の目的は、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂及びポリアミド系樹脂に添加して混練する際に有害となる水分を発生することがないポリリン酸メラミンを製造することにある。本発明のもう一つの目的は反応工程での腐食性ガスや有害性ガスの発生を少なくすることにより製造を容易とすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意研究を行った結果、リン酸メラミンを260〜320℃で加熱することにより上記目的を達成することを見出した。リン酸メラミンの示差熱分析チャートを図1に示したが、270±10℃(第一吸熱域)付近と310±10℃(第二吸熱域)付近の吸熱ピークで各々1/2分子量づつの脱水反応をした後、380±10℃(第三吸熱域)付近で分解が始まることを表している。図2に本発明の目的物であるポリリン酸メラミンの示差熱分析チャートを掲載した。図1の第三吸熱域より低温域の吸熱分解ピークが消滅していることが示される。第一吸熱域、第二吸熱域に相当するピークは痕跡程度であり、熱天秤分析した場合の減量率は合わせて2%未満である。第三吸熱域以上にリン酸メラミンを加熱した場合、メタリン酸化反応とメラミンの分解によるアンモニアの発生を生じ、生成物の酸性化や水溶性物質の増加などの物性低下と収量の低下をもたらし望ましくない。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の原料となるリン酸メラミンはオルトリン酸の一メラミン塩であって、水溶液中でメラミンとリン酸を反応せしめた後、濾過、乾燥したもの、あるいは水性媒体の実質不存在下でメラミンとリン酸を固相反応せしめたものでも特に限定されることはない。
【0009】本発明においてリン酸メラミンを加熱する場合、260〜320℃、望ましくは270〜310℃で、1〜10時間の加熱処理でポリリン酸メラミンを得ることができる。加熱温度が260℃より低い場合はポリリン酸化が進行しない。320℃より高い場合は分解反応が生じるため、メラミン分解のアンモニアガス対策やメタリン酸化による装置の腐食対策等が必要となる。
【0010】本発明の加熱処理は、熱風乾燥機、ロータリーキルン、ニーダーなどを単独または組み合わせて用いることができる。本発明により得たポリリン酸メラミンは必要に応じてボールミル、ジェットミル等で樹脂用難燃剤として望ましい粒径に粉砕することも可能である。例えば、シングルトラックジェットミル(STJ−2 株式会社セイシン企業製)で粉砕した場合、平均粒径2μm以下の物を容易に得ることが可能である。
【0011】なお、本発明における評価方法は下記の通りである。
【0012】(1)示差熱分析装置難燃剤5mgを示差熱熱重量同時測定装置(DTG−50 島津製作所株式会社製)を用いて室温から700℃まで10℃/分の昇温速度で測定した。加熱前の重量に対して300℃で減量した割合を減量率で示した。
【0013】(2)水(25℃)に対する溶解度試料2gを200mlのビーカーにはかり取り、純水100mlを添加した。25℃の恒温下1時間撹拌した。30分静置後上澄み液を分取し、炉液中に含まれる溶解物の量から水(25℃)に対する溶解度を計算した。
【0014】(3)リン含有量試料に過塩素酸を加えて分解後、リンバナドモリブデン法で発色させて比色分析により定量した。
【0015】(4)粒度分布レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100 島津製作所株式会社製)でイソプロピルアルコール溶媒を用いて測定した。1年後の再測定で、状態と粒度分布にほとんど変化がなかったものを○、凝集して変化した物を×で評価した。
【0016】(5)難燃性市販のナイロン66を100重量部と難燃剤20重量部をタンブラーブレンダーで混合し、270℃に加熱したベント式押出機で溶融混合してペレットを作成した。このペレットから厚み1/8インチの試験片を作成し、UL94規格に準拠した垂直燃焼試験により難燃性を評価した。
【0017】以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例によりなんらの制限を受けるものではない。実施例および比較例で得た難燃剤の評価結果を表1に示す。
【0018】製造例1ジャケットに熱媒を通して加熱するタイプの実容量170リットルのニーダーにメラミン40kgを入れた。これを撹拌しながら75重量%オルトリン酸水溶液40kgを噴霧後加熱乾燥して白色のリン酸メラミン67kgを得た。図1に本品5mgの示差熱分析チャートを示した。本品はナイロン66と溶融混合する際に多量の水分を発生しベントアップしたため、試験片の作成はできなかった。
【0019】実施例1270℃に加熱した熱風乾燥機中に、製造例1のリン酸メラミン67Kgの入ったステンレス製バットを入れ、時々撹拌しながら6時間加熱したのち冷却して取り出しポリリン酸メラミン60kgを得た本品20重量部と市販のナイロン66を100重量部、タンブラーブレンダーで混合し、270℃に加熱したベント式押出機で溶融混合してペレットを作成した。評価した結果を表1に示した。
【0020】実施例2製造例1の条件で製造したリン酸メラミン100kgを300℃に加熱した連続投入式の外熱式ロータリーキルン内に入れて処理した。キルン回転数1.5RPM、キルンう内の滞留時間4時間で白色のポリリン酸メラミン87kgを得た。キルン内壁への付着はほとんどなかった。本品を実施例1と同様の条件でペレットを作成し、評価した結果を表1に示した。
【0021】比較例1製造例1の条件で製造したリン酸メラミン100kgを250℃に加熱した熱風乾燥機中にステンレス製バットに入れて投入し、時々撹拌しながら2時間加熱したのち冷却して取り出し生成物95kgを得た。本品はナイロン66と溶融混合する際に多量の水分を発生しベントアップしたため、試験片の作成はできなかった。
【0022】比較例2製造例1の条件で製造したリン酸メラミン100kgを350℃に加熱した熱風乾燥機中にステンレス製バットに入れて投入し、時々撹拌しながら2時間加熱したのち冷却して取り出し生成物75kgを得た。加熱中のアンモニアガス発生が著しかったほか、ステンレス製バットに溶融した状態で付着が観察された。本品を実施例1と同様の条件でペレットを作成し評価した結果結果を表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
【発明の効果】本発明のポリリン酸メラミンは380±10℃付近の最大吸熱分解ピークより低温域で分解発生する水分やガスがほとんどないため、高温で樹脂と混練する難燃剤として極めて有用である。また、従来からリン酸メラミンをピロリン酸化、ポリリン酸化することで水への溶解度が減少することは知られていたが、本発明により得たポリリン酸メラミンは凝集性が減少し樹脂に対する分散性が大幅に改善されたことを発見した。凝集性が減少したことにより従来のリン酸メラミンより微粉砕が可能となった。
【0025】
【出願人】 【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
【識別番号】000144566
【氏名又は名称】株式会社三和ケミカル
【出願日】 平成11年7月13日(1999.7.13)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−26597(P2001−26597A)
【公開日】 平成13年1月30日(2001.1.30)
【出願番号】 特願平11−198432