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【発明の名称】 光反射ガラスビーズ及びその製造方法
【発明者】 【氏名】竹島 鋭機

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 屈折率1.6以下のガラスビーズの表面が屈折率2.6以上の透明又は半透明皮膜で覆われている光反射ガラスビーズ。
【請求項2】 屈折率1.6以下のガラスビーズが粒径20〜1400μmのソーダ石灰ガラスである請求項1記載の光反射ガラスビーズ。
【請求項3】 屈折率2.6以上の透明又は半透明皮膜が膜厚50〜5000Åのルチル型酸化チタンである請求項1記載の光反射ガラスビーズ。
【請求項4】 屈折率1.6以下のソーダ石灰ガラスの表面に金属チタンをコーティングした後、大気雰囲気中で550〜650℃に加熱して金属チタンをルチル型酸化チタンに酸化処理する光反射ガラスビーズの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、路面,空港滑走路等の標示塗膜や、交通標識用反射テープ,反射シート,反射クロス等の各種交通安全用道路関連部材に配合される光反射ガラスビーズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】路面標示塗料用の光反射ガラスビーズとしては、Na2 O−CaO−SiO2からなる屈折率が約1.5で真球状のソーダ石灰ガラスビーズが汎用されている。ソーダ石灰ガラスビーズは、透明微小球レンズの特性である光の再帰反射効果を利用して視認性を向上させている。ソーダ石灰ガラスビーズ1を分散させた路面標示塗膜2が晴天時夜間に車輌のライトで照射されると、入射光Linは、図1(a)に示すようにソーダ石灰ガラスビーズ1内で屈折及び反射を繰り返し、再帰反射光Lout として出射される。運転手及び同乗者は、路面との角度が大きな再帰反射光Lout によって路面標示を視認できる。ソーダ石灰ガラスビーズ1を用いた路面表示では、雨天時夜間での視認性が悪くなる。すなわち、雨天時夜間では、図1(b)に示すように路面標示塗膜2の上に水膜3が溜まる。水膜3の屈折率は、空気の屈折率(約1.0)に比較して約1.3と大きく、ソーダ石灰ガラスビーズ1の屈折率(約1.5)との差が小さくなる。そのため、入射光Linがソーダ石灰ガラスビーズ1内で屈折・反射して生じる再帰反射光Lout は、路面との間の角度が小さくなり、運転手や同乗者の視界に入りづらくなる。
【0003】雨天時夜間の視認性は、ソーダ石灰ガラスビーズ1に比較して屈折率の大きな高屈折率ガラスビーズを使用することにより改善される。高屈折率ガラスビーズ4を分散させた路面標示塗膜2が車輌のライトで照射されると、図2(a)に示すように路面との間の角度が大きく、視認し易い再帰反射光Lout が生じる。路面標示塗膜2上に水膜3が形成されても、高屈折率ガラスビーズ4と水膜3との間で屈折率差が大きいため、図2(b)に示すように路面と再帰反射光Lout との間の角度が大きく保たれる。運転手又は同乗者は、角度の大きな再帰反射光Lout によって路面標示を視認できる。高屈折率ガラスビーズ4としては、BaO−TiO2 −SiO2 系(屈折率約1.9),BaO−TiO2 −ZnO系(屈折率約2.2)等が知られている。
【0004】交通標識用反射テープ等に使用される光反射ガラスビーズとしては、粒径が小さく、より強い再帰反射特性が要求される。小さい粒径の光反射ガラスビーズを使用して更に高い再帰反射特性を得るためには、基布5に接着剤層6を介して設けたアルミニウム蒸着膜7上に光反射ガラスビーズ8を分散させた透明樹脂層9を積層する方法(図3a)や、アルミニウム蒸着膜7を半面に形成した光反射ガラスビーズ8を透明樹脂層9に整列配置する方法(図3b)等が採用されている。光反射ガラスビーズ8が車輌のライトで照射されると、入射光Linは、光反射ガラスビーズ8に屈折入射した後、アルミニウム蒸着膜7で全反射され、再帰反射光Lout として出射される。光反射ガラスビーズ8は、アルミニウム蒸着膜7の併用によって再帰反射特性が一層向上するが、アルミニウムフレーク顔料にみられるような散乱反射特性を備えていない。しかも、入射光Linが完全に再帰反射光Lout になるものでもない。たとえば、光反射ガラスビーズ8の周辺に入射した光のほとんどは反射角が若干大きくなる傾向にある。反射角の変化量は水膜が形成される雨天時夜間ほど大きくなり、雨天時夜間の視認性が悪化する。しかも、光反射ガラスビーズ8は、アルミニウム蒸着膜7を設けたテープ,シート,クロス等の上に整列配置されるものではなく、塗料に分散させた後、種々の形状をもつ部材の表面に塗布・乾燥されるだけである。そのため、半面にアルミニウム蒸着膜7を設けた光反射ガラスビーズ8のように異方性のあるガラスビーズでは、観察角度によって視認性が著しく劣ることもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、ガラスビーズの表面を屈折率の高い透明又は半透明干渉皮膜で覆うことにより、従来のガラスビーズに比較して再帰反射特性及び散乱反射特性に優れ、更に光学干渉作用も呈し、晴天時,雨天時に拘わらず視認性が著しく高い光反射ガラスビーズを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の光反射ガラスビーズは、その目的を達成するため、屈折率1.6以下のガラスビーズの表面が屈折率2.6以上の透明又は半透明皮膜で覆われていることを特徴とする。屈折率1.6以下のガラスビーズとしては、たとえば粒径20〜1400μmのソーダ石灰ガラスが使用される。屈折率2.6以上の透明又は半透明皮膜としては、膜厚50〜5000Åのルチル型酸化チタンが好ましい。この光反射ガラスビーズは、屈折率1.6以下のソーダ石灰ガラスの表面に金属チタンをコーティングした後、大気雰囲気中で550〜650℃に加熱して金属チタンをルチル型酸化チタンに酸化処理することにより製造される。
【0007】
【作用】従来の光反射ガラスビーズでは、より高い再帰反射特性を得る上で可能な限り屈折率の大きな透明で真球状の粒子が必要とされている。しかし、屈折率についてみると、光学用重フリントガラスでも1.7、最も屈折率の大きな50%Pb−50%B22 系ガラスでも1.9に過ぎず、屈折率が2.2を超えるガラスビーズは見当たらない。透明な高屈折率材料としては、硫化カドミウム(屈折率2.5),セレン化亜鉛((屈折率2.6),酸化鉛(屈折率2.6),テルル化カドミウム(屈折率2.7),三硫化砒素(屈折率2.7),硫化鉛(屈折率3.9)等の結晶があるが、何れも有毒な金属を含んでいるため使用できない。ルチル型酸化チタン(屈折率2.6),炭化ケイ素(屈折率2.7),珪素(屈折率3.5)等は、融点や結晶構造の関係から真球状に加工できない。
【0008】そこで、本発明者は、ガラスビーズのもつ真球形状を利用し、透明で屈折率が極めて大きなルチル型酸化チタンでガラスビーズの表面を被覆することを検討した。ルチル型酸化チタンは、有害な金属を含まず、環境に悪影響を及ぼさない。ガラスビーズ11の表面に形成されたルチル型酸化チタン皮膜12は、図4に示すようにカメラの組合せレンズのような光学効果を発揮し、従来の超高屈折率材料よりも優れた再帰反射特性をガラスビーズ11に付与する。ルチル型酸化チタン皮膜12自体も水の屈折率の2倍と大きな屈折率をもつため、雨天時夜間においても優れた視認性を呈する。しかも、核となるガラスビーズ11の屈折率が1.6以下の小さな値であるほど、ガラスビーズ11とルチル型酸化チタン皮膜12との界面で散乱反射光Lref が発生し、散乱反射特性及び光学干渉作用も発現される。
【0009】ガラスビーズ11の表面にルチル型酸化チタン皮膜12を形成した光反射ガラスビーズ10は、再帰反射特性,散乱反射特性,光学干渉作用に優れていることを活用し、塗料に分散した後、各種部材の表面に塗布・乾燥するだけで優れた視認性を呈する標示面が得られる。すなわち、アルミニウム蒸着膜7を基布5(図3a)や光反射ガラスビーズ8(図3b)に設ける必要なく、図5に示すように光反射ガラスビーズ10を分散させた透明樹脂層9を基布5上に設けるだけで視認性に優れた標示面が得られるため、施工作業も容易になる。勿論、アルミニウム蒸着膜7を基布5に設け、或いは光反射ガラスビーズ10の半面をアルミニウム蒸着膜7で覆っても良い。アルミニウム蒸着膜7を併用すると、再帰反射特性及び散乱反射特性が更に改善された交通標識用反射テープが作製される。
【0010】ガラスビーズ11の表面に設けたルチル型酸化チタン皮膜12は、光学干渉作用を呈する。干渉色は、ルチル型酸化チタン皮膜12の膜厚,結晶構造,最表面の平滑性やルチル型酸化チタン皮膜12に添加した成分等によって種々の色調に調整される。この点、従来の交通標識用反射テープで白色以外の黄色,赤色,青色,緑色等の着色部分を形成するとき、着色顔料及び光反射ガラスビーズを混合した塗料が一部で使用されているが、光反射ガラスビーズが着色顔料で隠蔽されると再帰反射光の強度が低下する。着色ガラスから作られたビーズや着色塗料を塗装したガラスビーズ等も検討されているが、入射光が着色ガラスで吸収されて再帰反射光の強度低下を引き起こし、或いは着色塗料の耐候性不足等の問題があった。これに対し、本発明に従った光反射ガラスビーズ10は、光学干渉作用で干渉色を発現するため、所定の色調に必要な着色顔料の使用量を低減できる。したがって、光反射ガラスビーズ10が隠蔽され難く、再帰反射光や散乱反射光の強度低下も抑制される。
【0011】ルチル型酸化チタン皮膜12は、50〜5000Åの膜厚でほぼ均一にガラスビーズ11の表面に設けられている。マイカの表面にルチル型酸化チタン薄膜を形成する方法は従来から知られており、実際にパールマイカ顔料として市販されている。従来の代表的な薄膜形成方法では、チタンの無機物塩(たとえば硫酸チタニル)の水溶液をマイカの存在下で加水分解し、マイカの表面に含水二酸化チタンを析出させた後、大気雰囲気中で800〜900℃に加熱してルチル型の酸化チタンに相転移させている。この方法では、膜厚50〜数千オングストロームのルチル型酸化チタン皮膜がマイカの表面に形成される。しかし、融点が800℃に達しないガラスビーズを核に使用する場合、相転移に必要な800〜900℃の加熱ができないため、従来の薄膜形成方法を適用できない。
【0012】そこで、本発明者は、ガラスビーズ11の表面に金属チタンの皮膜を薄く均一に形成し、この金属チタンをルチル型酸化チタン皮膜12に酸化処理する方法を検討した。極めて薄い金属チタンをガラスビーズ11の表面に形成するとき、ガラスビーズ11の融点に達しない低温で且つ短時間の加熱でも金属チタンの酸化が十分に進行する。具体的には、ガラスビーズ11の表面に形成された膜厚47〜4700Åの金属チタン薄膜は、大気雰囲気中で550〜650℃に約1時間加熱されただけでも、膜厚50〜5000Åの干渉色を呈するルチル型酸化チタン皮膜12となる。薄い金属チタン薄膜が容易にルチル型酸化チタン皮膜12となる理由は、次のように推察される。金属チタン薄膜の膜厚47〜4700Åは、Tiの原子直径(約2Å)から25〜2500個の原子が積み重なった層であり、低温・短時間の加熱でも酸化反応が十分に進行する。反応生成物である酸化チタンは、ガラスビーズ11に含まれているSi,Mg,Na等の元素によってルチル型化される。また、加熱中にガラスビーズ11中のNaが金属チタンと反応してNax Tiyz が界面に生成し、ガラスビーズ11に対するルチル型酸化チタンの密着性が向上する。
【0013】膜厚47〜4700Åの金属チタン薄膜は、真空蒸着,CVD,スパッタリング,イオンプレーティング等の各種ドライプロセスでガラスビーズ11の表面に形成できる。なかでも、ガラスビーズ11が実質的に昇温しないスパッタリングが好適である。他方,CVDのように被覆時の温度が600℃を超える方法は、ガラスビーズ11の軟化が生じるためあまり好ましくない。金属チタン薄膜の膜厚は、必要とする再帰反射特性及び散乱反射特性をもつルチル型酸化チタン皮膜12を得る上で47〜4700Åの範囲が好ましい。厚すぎる膜厚では、大気雰囲気中ガラスビーズ11の融点未満で1時間程度加熱してもルチル型酸化チタン皮膜12が生成し難くなる。また、厚すぎる金属チタン薄膜では、薄膜表面の凹凸が大きくなり、再帰反射特性及び散乱反射特性が低下する。逆に、金属チタン薄膜の膜厚が470Åに達しないと、金属チタン薄膜の酸化で生成するルチル型酸化チタン皮膜12が十分な光屈折効果を発揮せず、再帰反射特性や散乱反射特性が発現しない。したがって、各種ドライプロセスで均一な金属チタン薄膜を形成するとき、被覆時にガラスビーズ11を攪拌すると共に膜厚制御が重要である。
【0014】この点、本発明者等が開発した粉末スパッタリング法によるとき、比較的低温で金属チタン薄膜を形成でき、膜厚制御も容易で、被覆時にガラスビーズ11が十分に攪拌されるため、ガラスビーズ11の表面を金属チタン薄膜で均一に被覆できる。しかも、プラズマ状態まで励起された金属原子がガラスビーズ11の表面に高速で衝突する現象を繰り返すため、ガラスビーズ11を構成しているSiO2 やAl23 等の酸化物と金属チタンとの反応が衝突エネルギーで促進され、他の方法に比較して密着性に優れ緻密な金属チタン薄膜がガラスビーズ11の表面に形成される。粉末スパッタリング法では、たとえば粉末を入れた回転容器を回転させることにより形成した粉末流動層に金属をスパッタリングする装置(特開平2−153068号公報等)が使用される。
【0015】金属チタン薄膜が膜厚47〜4700Åと極めて薄く且つ均一であるため、金属チタン薄膜の酸化によって生成するルチル型酸化チタン皮膜12も膜厚50〜5000Åと極めて薄く均一になる。本発明に従った光反射ガラスビーズ10は、ガラスビーズ11の表面にこのような極めて薄いルチル型酸化チタン皮膜12が形成されているため、干渉色を呈するものであるにも拘わらず、透明度及び屈折率が高い。干渉色は、ルチル型酸化チタン皮膜12が50Åから5000Åと厚くなるに応じ白色から緑色までの範囲で種々の色調に変化する。濃い干渉色が要求される用途では、ルチル型酸化チタン皮膜12を2500〜5000Åと厚膜化することにより着色力を向上させることが好ましい。ルチル型酸化チタン皮膜12で覆われた光反射ガラスビーズ10は、光学干渉で所定の色調を呈するため、添加する塗料や樹脂の色に制約が加わることなく、汎用性が非常に高くなる。ただし、Cr,Mn,Fe,Ni,Co,Cu等の遷移金属やNe,Er等の希土類元素を不純物として含むガラスビーズ11では、光反射ガラスビーズ10が黄褐色等に着色される場合があるので、不純物の混入には注意を要する。
【0016】ガラスビーズ11の表面に形成したルチル型酸化チタン皮膜12は、更に、従来の光反射ガラスビーズから窺い知れない次のような長所をもっている。
耐摩耗性:ルチル型酸化チタン皮膜12は、ソーダ石灰ガラスのモース硬度5.5〜6.0に比較して6.0〜6.5とモース硬度が高い。そのため、ルチル型酸化チタン皮膜12で被覆した光反射ガラスビーズ10を分散させた塗料から作られた路面標示塗膜は、車輌のタイヤ等との接触,摺擦による摩耗が少なく、良好な耐久性を示す。
固体潤滑性:ルチル型酸化チタン皮膜12は固体潤滑性が優れており、塗料や樹脂中でガラスビーズ11の凝集防止に働き、光反射ガラスビーズ10の分散性を向上させる。
耐汚染性:ルチル型酸化チタン皮膜12は光触媒作用をもっているため、光反射ガラスビーズ10を用いた路面標示塗膜等では、表面に付着した汚れや油が光触媒反応で分解され、路面標示塗膜等が汚れにくくなる。したがって、路面の清掃が難しい交通量の多い交差点やトンネル内の路面標示塗膜に使用した場合でも、優れた再帰反射特性及び散乱反射特性が持続する。
雨水時夜間の視認性:ルチル型酸化チタン皮膜12の表面は、Ti原子相互が酸素で架橋された安定状態にあるため、通常は疎水性を呈し、雨水を弾く。しかし、紫外線が照射される条件下では、一部の架橋酸素が離脱して酸素欠陥を生じる。生成した酸素欠陥に水分が結合すると、化学吸着水(表面水酸基)が生成し、その部分が親水性になる。ここで、蓄水性のガラスビーズ11を使用すると、雨天時夜間でも光反射ガラスビーズ10の親水性が維持されるため、路面標示塗膜の表面に水が濡れ広がり易く、視認性が向上する。
【0017】
【実施の形態】ガラスビーズ11には、元素ガラス,水素結合ガラス,酸化物ガラス,フッ化物ガラス,塩化物ガラス,硫化物ガラス,炭酸塩ガラス,硝酸塩ガラス,硫酸塩ガラス等の各種ガラスが使用される。なかでも、低価格で屈折率が約1.5のソーダ石灰ガラス,バイコールガラス,石英ガラス,パイレックスガラス,ホウケイ酸ガラス等の酸化物ガラスが好ましい。ガラスビーズ11は、高温のガラス融液を高圧雰囲気で吹き飛ばす方法や、原料ガラスを粉砕して調整し、燃焼ガス中に浮遊させて加熱・溶融し、融液の表面張力で球状化したガラス粒子を空気中で冷却・固化する方法等によって製造される。ガラスビーズ11は、路面標示塗膜用,交通標識用反射テープ等に従来から使用されている粒径20〜1400μmの粒子が好ましい。粒径が20μm未満になると、ガラスビーズ11を真球形状にすることが難しくなる。逆に1400μmを超える粒径では、車輌のスリップを助長するため路面標示用塗膜に使用できない。また、粒度にバラツキがないほど各光反射ガラスビーズ10からの反射光強度が均一化されるため、より高品質の路面標示用塗膜や交通標識用反射テープには粒度分布幅の狭いガラスビーズ11が好ましい。
【0018】ガラスビーズ11の表面に形成されるルチル型酸化チタン皮膜12の供給源としては、金属チタンに替えてα相,β相,α+β2相等のチタン合金も使用できる。具体的には、95重量%Ti−5重量%Al,95重量%Ti−5重量%Cr,95重量%Ti−5重量%Fe,95重量%Ti−5重量%V,95重量%Ti−5重量%Mn,92重量%Ti−4重量%Al−4重量%Mn,92重量%Ti−5重量%Cr−3重量%Al,95.75重量%Ti−2.7重量%Cr−1.3重量%Fe−0.25重量%O等のチタン合金があり、合金元素の種類によって干渉色の色調が白色から緑色の間で変化する。本発明では、これらチタン合金を包含する意味で「金属チタン」を使用する。しかし、金属チタンに替えてAl,Zn,Cr,Ni,Ag等でガラスビーズ11を被覆すると、加熱・酸化によって皮膜が灰白色又は灰黒色になるので実用に供し得ない。金属チタンとAl,Si,Zr等の合金を被覆した後で加熱・酸化によりTiO2 −Al23 系,TiO2 −SiO2 系,TiO2 −ZrO2 等の複合酸化物皮膜も形成できるが、何れもルチル型酸化チタン皮膜12に比較すると屈折率が小さくなる。
【0019】金属チタン皮膜で被覆されたガラスビーズ11は、大気雰囲気中でガラスビーズ11の融点以下の温度に加熱される。加熱温度は、使用するガラスビーズ11の融点に応じて適宜決定されるが、550〜650℃の範囲に設定することが好ましい。550℃に達しない加熱温度ではルチル型酸化チタン皮膜12が生成し難く、逆に650℃を超える加熱温度では種類にもよるがガラスビーズ11の軟化が始まる。加熱時間は、おおむね1時間程度で良い。実際には、金属チタン薄膜の膜厚及び加熱温度に応じ10分〜2時間の範囲で設定される。なかでも、550〜650℃で加熱・酸化した後で急冷すると、ガラスビーズ11が強化ガラスになる。その結果、路面標示塗膜等に使用した場合、車輌のタイヤ等による摩耗が極めて少なくなる。
【0020】極めて薄い金属チタン薄膜の酸化でルチル型酸化チタン皮膜12を生成させる方法は、ガラスビーズ11以外の粉末粒子の表面にも適用できる。応用可能な粉末材料としては、大気雰囲気中550〜650℃×1時間程度の加熱で溶融せず、平滑な表面をもつ限り、材質に制約を受けることがない。たとえば、溶融シリカビーズ,溶融アルミナビーズ等に対してもルチル型酸化チタン皮膜12を同様に形成できる。
【0021】ガラスビーズ11の表面にルチル型酸化チタン皮膜12を形成した後、塗料中での分散性向上や樹脂に対する密着性を改善するため、脂肪酸等の有機物で光反射ガラスビーズ10を被覆し、或いは各種カップリング剤で光反射ガラスビーズ10を表面処理しても良い。使用可能なカップリング剤には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン,チタン系カップリング剤,ジルコニア系カップリング剤,アルミニウム系カップリング剤等がある。
【0022】光反射ガラスビーズ10は、塗料,印刷インキ,ゴム等に配合できる。塗料組成物や印刷インキは、溶剤,ワニスと共に光反射ガラスビーズ10を適当量配合することにより調製される。このとき、必要に応じて着色顔料,紫外線吸収剤,増粘剤,静電気除去剤,分散剤,酸化防止剤,艶出し剤,界面活性剤,合成保存剤,潤滑剤,可塑剤,導電性フィラー,強化剤等を添加しても良い。また、蓄光顔料,蛍光顔料,発光顔料等を配合すると、雨天時夜間でも視認性の高い路面標示塗膜や交通標識用反射テープが得られる。塗料や樹脂に対する光反射ガラスビーズ10の配合量は、十分な反射光強度を得る上で5〜40体積%の範囲が好適である。光反射ガラスビーズ10の配合量が5体積%に満たないと反射光強度が極めて弱い。しかし、逆に40体積%を超える配合量で光反射ガラスビーズ10を配合しても、増量に見合った反射光強度の上昇がみられない。路面標示塗膜や交通標識用反射テープの全面に一様できめ細かな再帰反射特性及び散乱反射特性を付与するためには、10〜30体積%の配合量で光反射ガラスビーズ10を塗料や樹脂に配合することが好ましい。
【0023】光反射ガラスビーズ10を配合した塗料は、刷毛塗り法,スプレー法,ドクターブレード法,ロールコータ法,バーコータ法等で所定表面に塗布され、塗膜となる。また、建築用,車輌用等のコーキング剤やパテ,粘着テープ等に使用されているアクリル系,ゴム系等の粘着剤に対しても、塗料に配合した場合と同様の効果を発揮する。光反射ガラスビーズ10は、樹脂フィルムや、押出し成形法,射出成形法,インフレーション成形法,ブロー成形法等で製造される樹脂成形体に分散させることもできる。樹脂フィルムや樹脂成形体に使用される樹脂としては、アクリル樹脂,アルキッド樹脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリブタジエン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ABS樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリ酢酸ビニル樹脂等の1種又は2種以上が使用される。この場合にも、着色顔料,紫外線吸収剤,増粘剤,静電気除去剤,分散剤,酸化防止剤,艶出し剤,界面活性剤,合成保存剤,潤滑剤,可塑剤,導電性フィラー,強化剤,蓄光顔料,蛍光顔料,発光顔料等を必要に応じて添加できる。
【0024】
【実施例】実施例1:[金属チタン薄膜の形成]特開平2−153068号公報で紹介した粉末スパッタリング装置を用い、市販の交通標識用反射テープに使用されている透明ガラスビーズ(ユニオン株式会社製:ユニビーズUB−02L,粒径20〜45μm,屈折率1.5)の表面に次の条件下で金属チタン薄膜を形成した。内径200mm,軸方向長さ200mmの回転ドラム内にガラスビーズ100gを充填し、回転ドラムを3×10-3Paに減圧した後、流量15ml/分でアルゴンガスを供給しながら回転ドラム内の雰囲気を一定に保った。次いで、投入電力0.1kW,周波数13.56MHzの条件下で金属チタンターゲットをスパッタリング源とし、マグネトロン型スパッタリングでガラスビーズの表面を金属チタン薄膜で被覆した。スパッタリングを3分間継続した後、回転ドラム内の金属チタン被覆ガラスビーズを回収した。回収されたガラスビーズの表面には、膜厚47Åの金属チタン薄膜が形成されていた。
【0025】[加熱・酸化処理工程]得られた金属チタン被覆ガラスビーズ100gをステンレス鋼製トレイに移し、大気雰囲気に保持されたマッフル型電気炉に装入し、650℃で1時間加熱酸化処理した。加熱酸化処理された金属チタン被覆ガラスビーズをマッフル型電気炉から取り出し、冷却後にX線回折法でガラスビーズ表面に生成している酸化チタン薄膜の構造を調査した。その結果、金属チタン薄膜が加熱酸化処理で白色のルチル型酸化チタンになっていることが判った。なお、金属チタンとルチル型酸化チタンの密度の関係から、膜厚47Åの金属酸化チタン薄膜は膜厚50Åのルチル型酸化チタン皮膜に相当するものと推定される。
【0026】[塗装板の作製]ルチル型酸化チタン被覆ガラスビーズを塗料用樹脂に配合し、次の組成の塗料を調製した。
アクリディック A−165 100重量部(大日本インキ化学工業株式会社製,固形分55重量%のアクリル系塗料用樹脂)
ルチル型酸化チタン被覆ガラスビーズ 68重量%(30体積%に相当)
トルエンを主成分とするシンナー 150重量部調製された塗料をABS樹脂基板上にエアスプレーで塗布し、80℃で20分間乾燥することにより、膜厚100μmの塗膜が形成された塗装板を作製した。
【0027】[光反射特性の評価]ABS樹脂基板上に形成された塗膜に入射角45度で懐中電灯を照射し、再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。再帰反射特性は、懐中電灯の入射角45度近傍で反射光強度を測定した。散乱反射特性は、懐中電灯の入射角45度の正反射光の強度を測定した。調査結果を従来のガラスビーズ(比較例)と比較し、次の基準で目視判定した。
再帰反射特性の評価基準 ◎:極めて強い再帰反射光が観察された。
○:かなり強い再帰反射光が観察された。
△:弱い再帰反射光が観察された。
×:再帰反射光が観察されなかった。
散乱反射特性の評価基準 ◎:極めて強い散乱反射光が観察された。
○:かなり強い散乱反射光が観察された。
△:弱い散乱反射光が観察された。
×:散乱反射光が観察されなかった。
【0028】比較例1:実施例1と同じ透明ガラスビーズを30体積%含む塗料を用い、同様な条件下でABS樹脂基板上に膜厚100μmの塗膜を形成した塗装板を作製した。得られた塗装板について、同様な評価方法で再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
比較例2:透明な高屈折率ガラスビーズ(ユニオン株式会社製:ユニビーズUB−02UF,粒径20〜45μm,屈折率1.9)を30体積%配合した塗料を用い、実施例1と同様に塗装板を作製した。得られた塗装板について、同様な評価方法で再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
【0029】実施例2:実施例1と同じ手順で、市販の路面表示塗料に使用されている透明ガラスビーズ(ユニオン株式会社製 ユニビーズUB−108L,粒径106〜850μm,屈折率1.5)の表面に膜厚1900Åの金属チタン薄膜を形成した後、大気雰囲気中650℃×1時間の加熱により金属チタン薄膜を酸化し、膜厚2000Åの黄色ルチル型酸化チタン皮膜を形成した。他方、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部,ポリエステル系可塑剤20重量部,熱安定化剤4重量部及び紫外線吸収剤1重量部を70重量部テトラヒドロフラン−250重量部シクロヘキサノンの混合溶剤に溶解し、ホバートミキサで混練することにより、透明な液状合成樹脂組成物を調製した。液状合成樹脂組成物に黄色のルチル型酸化チタン被覆ガラスビーズ55重量部を混合し、合成樹脂塗料を用意した。合成樹脂塗料をポリエステルフィルム基材上に乾燥膜厚が2800μmとなるように塗布し、60〜100℃の予備乾燥により固形化した後、更に150℃で本乾燥した。乾燥後の合成樹脂塗膜をフィルム状にして基材から剥離した。得られた合成樹脂フィルムは、1000μmの膜厚をもっていた。本発明に従った光反射ガラスビーズは、合成樹脂フィルムに30体積%含まれており、個々のビーズがフィルム面とほぼ平行に配向していた。この合成樹脂フィルムについて、同様な評価方法で再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
【0030】比較例3:実施例2と同じ透明ガラスビーズを30体積%含む膜厚1000μmの合成樹脂フィルムを実施例2と同様な条件下で作製した。得られた合成樹脂フィルムについて、同様な評価方法で再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
比較例4:比較例2と同じ高屈折率透明ガラスビーズ30体積%を含む膜厚1000μmの合成樹脂フィルムを実施例2と同様な条件下で作製した。得られた合成樹脂フィルムについて、同様な評価方法で再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
比較例5:膜厚2000Åのルチル型酸化チタン皮膜を形成した高屈折率透明ガラスビーズを使用する以外は、比較例4と同様に合成樹脂フィルムを作製し、得られた合成樹脂フィルムの再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
【0031】実施例3:実施例1と同じ手順で、市販の路面表示塗料に使用されている透明ガラスビーズ(ユニオン株式会社製 ユニビーズUB−114L,粒径425〜1400μm,屈折率1.5)の表面に膜厚4700Åの金属チタン薄膜を形成した後、大気雰囲気中650℃×1時間の加熱により金属チタン薄膜を酸化し、膜厚5000Åの緑色ルチル型酸化チタン皮膜を形成した。ルチル型酸化チタン被覆ガラスビーズ45重量部を透明のポリスチレン樹脂100重量部に添加した。ベント付き40mm押出機を用い、混合樹脂を250℃で溶融混合した後、ペレットに押し出した。得られたペレットを射出成形し、長さ60mm,幅35mm,板厚3mmの試験片を作製した。成形された試験片には、本発明に従った光反射ガラスビーズが30体積%含まれていた。得られた試験片について、実施例1と同様に再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
【0032】比較例6:実施例3と同じ透明ガラスビーズ30体積%を含む長さ60mm,幅35mm,板厚3mmの射出成形試験片を作製した。得られた試験片について、同様に再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
比較例7:透明な高屈折率ガラスビーズ(ユニオン株式会社製 ユニビーズUB−114UF,粒径425〜1400μm,屈折率1.9)を使用する以外は実施例3と同じ条件下で長さ60mm,幅35mm,板厚3mmの射出成形試験片を作製した。得られた試験片について、同様に再帰反射特性及び散乱反射特性を調査した。
【0033】実施例1〜3及び比較例1〜7の調査結果を表1に対比して示す。表1から明らかなように、ルチル型酸化チタン皮膜が形成されていないガラスビーズを使用した比較例では、何れも散乱反射光が全く観察されなかった。また、比較例のガラスビーズのうち、屈折率が低い汎用ガラスビーズを用いたものでは再帰反射光が弱かった。屈折率が高いガラスビーズを使用した場合でも、再帰反射光の強度上昇はみられるものの、十分な強度の再帰反射光が得られなかった。他方、本発明に従った光反射ガラスビーズを使用したものでは、極めて強い再帰反射光及び散乱反射光が観察された。したがって、この光反射ガラスビーズを用いて路面標示塗膜や交通標識用反射テープを作製すると、晴天時夜間は勿論、雨天時夜間においても遥かに遠距離から視認できる標示又は標識となることが判る。
【0034】

【0035】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の光反射ガラスビーズは、屈折率が低いガラスビーズの表面にルチル型酸化チタン皮膜を設けているので、組合せレンズのような高屈折率が得られ、優れた再帰反射特性及び散乱反射特性を呈する。この光反射ガラスビーズを配合した塗料や樹脂を用いて路面標示塗膜や交通標識用反射テープを作製すると、晴天時夜間や雨天時夜間に遠距離から容易に視認できる標示や標識が得られる。また、優れた再帰反射特性及び散乱反射特性を活用し、ガードレール,中央分離帯,照明灯,車輌通行止め,トンネル内壁,高速料金所の外壁,高速道路の防音壁等の各種道路部材、ヘルメット、自動車,オートバイ,自転車等の車体,ナンバープレート,バンパー等の各種車輌部材としても使用でき、視認性が著しく向上した標示や標識になるため交通安全に大きな効果を及ぼす。更には、屋根,外壁,内壁,間仕切り,門扉,車庫,フェンス,階段の手摺,階段のステップ,廊下の曲り角,看板,ネオンサインの取付板等の各種建材や、家電製品,化粧品,文具,日曜雑貨品等の幅広い分野でも使用可能である。
【出願人】 【識別番号】000004581
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
【出願日】 平成11年8月3日(1999.8.3)
【代理人】 【識別番号】100092392
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 亘
【公開番号】 特開2001−48586(P2001−48586A)
【公開日】 平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願番号】 特願平11−219679