トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 車両用減速度制御装置
【発明者】 【氏名】佐藤 国仁

【要約】 【課題】路面勾配に応じて適切な減速度補正を行うことが可能な車両用減速度制御装置を提供する。

【解決手段】路面勾配θr(t)に応じた補正係数F(θr(t))を平坦路における基準減速度EBAori(t)に乗じて補正した減速度EBA(t)を付加する制御を行うものであり、補正係数F(θr(t))は勾配の緩やかなa0<θr(t)<a1の領域では平坦路と同じ1に、それ以外の領域では勾配が大きくなるよう設定されており、降坂路の補正量が登坂路の補正量より大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 運転者のアクセル操作状態を検出するアクセル操作状態検出手段と、車両に減速度を付加する減速度付加手段と、前記アクセル操作状態検出手段の検出結果に応じて前記減速度付加手段を制御して付加する減速度を調整する制御部とを備える車両用減速度制御装置において、路面勾配を検出する勾配検出手段と、検出された路面勾配に基づいて前記減速度付加手段で付加すべき減速度が登坂時には平坦路より小さく、降坂時には平坦路より大きくなるよう平坦路に対する減速度の補正量を設定する補正手段とをさらに備えており、前記補正量は路面勾配が緩やかな所定の領域では平坦路と略同一の値に設定されている車両用減速度制御装置。
【請求項2】 前記補正量の路面勾配変化量に対する変化量は、路面勾配が大きくなるほど大きく設定されている請求項1記載の車両用減速度制御装置。
【請求項3】 前記補正量は、同一の路面勾配であっても降坂時には登坂時より平坦路との付加減速度の偏差が大きくなるよう設定されている請求項1または2のいずれかに記載の車両用減速度制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に減速度を付加する車両用減速度制御装置に関し、特に、アクセル操作状態を検出してその操作状態に応じて車両に減速度を付加する車両用減速度制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から運転者がアクセルペダルの踏み込みを解除した際に制動力を作動させて車両に減速度を付加する減速度制御装置が提案されている。特開平9−95222号公報で開示されている技術はそのうちの一つであり、アクセルペダルが減速域にある場合には、減速度制御装置を介して主ブレーキ系に制動力を付加するものである。
【0003】このような減速度制御装置を付加することにより、車両を緩やかに加減速する際に、ブレーキペダルを頻繁に操作する必要がなく、減速応答性を高め、イージードライブを実現できると記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】同公報には、路面勾配に応じて目標減速度を補正する技術が開示されている。しかしながら、勾配に応じてどのような補正を行うかについては開示がない。
【0005】そこで本発明は、路面勾配に応じて適切な減速度補正を行うことが可能な車両用減速度制御装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明に係る車両用減速度制御装置は、(1)運転者のアクセル操作状態を検出するアクセル操作状態検出手段と、(2)車両に減速度を付加する減速度付加手段と、(3)アクセル操作状態検出手段の検出結果に応じて前記減速度付加手段を制御して付加する減速度を調整する制御部とを備える車両用減速度制御装置において、(4)路面勾配を検出する勾配検出手段と、(5)検出された路面勾配に応じて制御部が減速度付加手段を制御して付加すべき減速度の平坦路に対する補正量を設定する補正手段とをさらに備えており、この補正量は路面勾配が緩やかな所定の領域では平坦路と略同一に設定されていることを特徴とする。
【0007】本発明によれば、路面勾配が0近傍の領域においては、路面勾配に応じた減速度補正の補正量が略同一となるので、減速度補正を行わないか軽度の補正を行うことになる。つまり、平坦路に近い緩い勾配においては略同一の減速度を発生させることで、運転者にとって自然な運転感覚が得られ、実際に発生した減速度(付加した減速度と重力による減速度との和)の差から微妙な勾配の差を認識することも可能となる。
【0008】この補正量の路面勾配変化量に対する変化量は、路面勾配が大きくなるほど大きく設定されていることが好ましい。路面勾配が大きくなるほど変化量を大きく設定することで路面勾配が大きい場合には重力によって発生する加減速度を低減する効果を大きくして、運転者の操作をブレーキ操作の手間を軽減する。
【0009】この補正量は、同一の路面勾配であっても降坂時には登坂時より平坦路との付加減速度の偏差が大きくなるよう設定されていることが好ましい。降坂時には重力によって加速度が付与される分だけ登坂時よりも積極的な減速度付加が求められるからである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0011】図1は、本発明に係る減速度制御装置(以下、実施形態と呼ぶ)を含む減速度制御系統の構成を示す図であり、図2は、この実施形態を搭載した車両の制動系の構成を示す図である。
【0012】まず、図2を参照して車両の制動系の構成から説明する。この車両は、前輪FRおよびFLと後輪RRおよびRLのそれぞれに車輪制動用のホイルシリンダ25〜28が設けられており、各ホイルシリンダ25〜28でブレーキを駆動することにより車両の制動を行う構成となっている。各車輪FR、FL、RR、RLにはそれぞれの車輪速度Vwを検出する車輪速センサ51〜54が配置されている。
【0013】そして、この制動系を操作するためのブレーキペダル10は、マスタシリンダ11のピストン軸に接続されている。ブレーキペダル10には、ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキストロークセンサ40が接続されている。マスタシリンダ11には、さらにブレーキペダル10と反対側にストロークシミュレータ15が接続され、ブレーキペダル10の操作に対して適度な反発力を発生させる。
【0014】このマスタシリンダ11から延びる2つの作動液ラインは、それぞれソレノイド弁12、13を介して右前輪FRと左前輪FLのそれぞれのホイルシリンダ25、26に接続されている。このマスタシリンダ11からソレノイド弁12(13)に至る経路には、マスタ圧センサ38(39)が配置されている。
【0015】一方、リザーバタンク16から延びる作動液ラインは、モータ18により駆動されるポンプ17に接続され、ポンプ17から延びる作動液ラインは、各リニア弁21a〜24aを介して各車輪のホイルシリンダ25〜28へと接続されている。ポンプ17と各リニア弁21a〜24aへの分岐部との間には圧力センサ31とアキュムレータ19とが配置されている。また、各ホイルシリンダ25〜28からリザーバタンク16へと戻る作動液ラインには、減圧弁21b〜24bがそれぞれ接続されている。各ホイルシリンダ25〜28には、ホイルシリンダ圧センサ32〜35がそれぞれ取り付けられている。
【0016】本発明に係る車両減速度制御装置の制御部を構成する減速度制御ユニット100には、前述したブレーキペダル10の開度を検出するブレーキストロークセンサ40、後述するアクセルペダル4の開度θaを検出するアクセル開度センサ42、前述した車輪速センサ51〜54、車体の前後方向の加速度Gyを検出する前後Gセンサ44のほか、エンジン回転数センサ46、シフトセンサ48、ホイルシリンダ圧センサ32〜35、圧力センサ31、マスタ圧センサ38、39の各出力信号も供給されている。ここで、前後Gセンサ44は、例えば振り子型センサやスプリングマスGセンサであり、車体の前後方向の実加速度Glを直接検知するものではなく、この実加速度Glと車体前後方向に働く重力成分との和を加速度Gyとして出力するものである。
【0017】さらに、減速度制御ユニット100は、減速度制御の際に用いるテーブルや定数などを格納しておくメモリユニット120を有し、各ホイルシリンダ25〜28に接続されるリニア弁21a〜24aと減圧弁21b〜24b並びにソレノイド弁12、13をそれぞれ制御する。
【0018】ここで、この制動系の制動時の基本動作について説明する。ここで、リザーブタンク16から送られる作動液は、ポンプ17の下流側配管内では、所定の圧力に昇圧保持されており、アキュムレータ19はこの圧力を維持する役目を果たす。そして、圧力センサ31で検出した作動液の液圧がこの所定圧力を下回っているときはポンプ17をモータ18で駆動することによりこの下流側配管内の作動液をこの所定圧力まで昇圧する。ブレーキペダル10が踏み込まれると、マスタシリンダ11のピストン軸が押されて、操作量に応じた液圧(マスタ圧)が発生する。正常時には、ソレノイド弁12、13は遮断状態にあり、マスタ圧が直接右前輪FRのホイルシリンダ25と左前輪FLのホイルシリンダ26に伝達されることはない。マスタシリンダ11の操作量はマスタ圧センサ38、39によって検出され、その操作量に応じて減速度制御ユニット100が各ホイールシリンダ25〜28へと付加すべき液圧(ホイルシリンダ圧)を演算する。そして、各リニア弁21a〜24a、減圧弁21b〜24bの動作を制御することにより、各ホイルシリンダ25〜28へと伝達されるホイルシリンダ圧(ホイルシリンダ圧センサ32〜35で計測)を求めたホイルシリンダ圧となるよう調整する。このように、各ホイルシリンダ25〜28に伝達されるホイルシリンダ圧を独立に制御することで、各車輪に印加される制動力を独立して制御することが可能である。
【0019】制動系統の異常時には、各ソレノイド弁12、13を導通状態として、マスタシリンダ11のマスタ圧をソレノイド弁12、13を介して右前輪FRのホイルシリンダ25、左前輪FLのホイルシリンダ26へとそれぞれ伝達して両前輪FR及びFLの制動を行う。
【0020】本実施形態においては、さらに、踏み込んだアクセルペダルが戻される際に、制動力を付加して減速度を発生させて特に自動変速機搭載車両等では不足しがちなエンジンブレーキ効果を補助する減速度制御を行う。以下、これをエンジンブレーキアシスト(EBA)制御と呼ぶ。
【0021】本実施形態のEBA制御は、路面勾配に応じて付加する減速度を調整するものである。図3は、車両と路面勾配の関係を説明する図であり、図4はアクセルペダル4の状態を説明する図である。
【0022】図3は、車体1が角度θrの路面勾配を有する登坂路を走行している状態を示している。ここで角度θrは平坦路で0、登坂路では正、降坂路では負の値をとるものとする。以下、車体1に作用する力として前後方向の加速度をGl(t)、重力をgで表すものとし、gの車体前後方向と車体に垂直な方向の成分をそれぞれgl、gvで表すものとする。ここで、Gl(t)は車体1に前向きに作用するときを正とし、glは車体1に後向きに作用するときを正で表すものとする。このとき、gl=gsinθr (1)
v=gcosθr (2)
が成立する。
【0023】図4は、アクセルペダル4の状態を説明する図である。アクセル開度θaは、アクセルペダルの全閉位置側からの開度を示しており、全閉位置側で0となる。そして、開度θa0のときがアクセルペダル4の燃料遮断位置(フューエルカット位置)である。
【0024】図5はEBA制御を示すフローチャートであり、図6はこの制御フローにおいて用いられる補正係数F(θr(t))の一例を示すグラフである。この制御は減速度制御ユニット100によって行われるものであり、車両のエンジンを駆動させた時点から所定のタイミングで繰り返し実行される。ただし、ブレーキペダル10が操作されている場合には、ブレーキペダル10の操作状態に応じて制動トルクが付加されるので、本フローチャートの処理は行われず、スキップされる。
【0025】ステップS1においては、アクセルペダル4に取り付けられたアクセル開度センサ42の出力信号として送られてきたアクセル開度θaと、車輪速センサ51〜54の出力信号として送られてきた各車輪FR、FL、RR、RLの車輪速Vwfr、Vwfl、Vwrr、Vwrlが読み込まれる。そして、各車輪速Vwfr、Vwfl、Vwrr、Vwrlの最大値を推定車速Vrとして設定する。
【0026】ステップS2では、推定車速Vrとアクセル開度θaを基にして付加すべき基準減速度EBAori(t)を演算する。具体的には、アクセルペダル4がフューエルカット位置より全閉位置側に位置している、つまり0≦θa<θa0の場合には、EBAori(t)を次式により設定する。
【0027】
EBAori(t)=f(Vr)×(θ0−θ) (3)
続く、ステップS3では、前後Gセンサ44の出力から車体1の前後方向加速度Gyを読み込む。そしてステップS4では、このGyと推定車速Vrの微分値dVr/dtを基にして車体に働く重力成分glを求め、ここから現在の路面勾配θr(t)を求める。具体的には、gl=Gy−dVr/dt (4)
が成立するから、(1)(4)式よりθr(t)=sin-1(Gy−dVr/dt) (5)
により路面勾配θr(t)が求まる。
【0028】この路面勾配θr(t)を基にして補正係数F(θr(t))を設定して、ステップS2で求めた減速度EBAori(t)に乗ずることにより目標減速度EBA(t)を得る。ここで、補正係数F(θr(t))は図6に示されるように設定されている。すなわち、路面勾配θr(t)がa0〜a1の場合、つまり、勾配a0より緩やかな降坂路から勾配a1より緩やかな登坂路までは平坦路(勾配0)と同じ補正係数1が設定され、目標減速度がEBAori(t)に設定される。そして、それより勾配が正負とも大きくなった場合(θr(t)≧a1またはθr(t)≦a0の場合)は、勾配の絶対値が大きくなるほど補正係数の平坦路からの偏差が大きくなるよう補正係数F(θr(t))は設定されている。そして、路面勾配がa2以下のときの補正係数F(θr(t))は1より大きいb1、路面勾配がa3以上の場合の補正係数は1より小さい正の値b2にそれぞれ設定され、(b1−1)>(1−b2)を満たしている。
【0029】続く、ステップS6ではこうして演算した目標減速度EBAori(t)による付加減速度が得られるよう各車輪に付加すべき制動トルクを求めたうえで、この制動トルクが得られるホイルシリンダ圧を演算して、各リニア弁21a〜24a及び減圧弁21b〜24bを制御して各車輪のホイルシリンダ25〜28に作用する液圧を求めたホイルシリンダ圧に調整する。アクセルペダル4が戻されたときは、図示していないエンジン制御ユニットが燃料、空気の供給を削減して、エンジン回転数Neを減少せしめ、この抵抗により制動力が生ずるエンジンブレーキ効果が発生するが、付加する制動トルクがこれを補助する役目を果たす。この結果、車両には減速度が付加され、減速が行われる。中高速領域では、アクセルペダル4が燃料遮断位置より全閉位置側へと戻された時点で、エンジン制御ユニットがエンジンへの燃料供給を遮断することによりさらに大きな減速度が得られる。
【0030】ここで制動トルクにより付加する減速度を路面勾配θr(t)に応じて補正係数F(θr(t))により補正しているので、登坂路では付加減速度を小さくし、降坂路では付加減速度を大きく調整することができる。このため、車両の前後方向に働く重力成分の影響を抑制することが可能である。路面勾配が緩やかな領域では平坦路とほぼ同一の減速度付加を行っているため、重力成分の影響を抑制する効果はなくなるが、運転者は減速度発生の変化によって緩やかな路面勾配を認識することができ、適切に対処することができるので、ドライバビリティーは向上する。そして、降坂時には減速度の補正量を大きくし、登坂時には減速度の補正量を小さくすることで、路面勾配が比較的大きい降坂時にはエンジンブレーキ効果を確実に発生させることができ、一方、路面勾配が比較的大きい登坂時は、等速走行でも駆動トルクを増大させる必要があることが多く、その場合は駆動トルク増大操作であるアクセルペダルの踏み込み操作が行われる。そして、補正量を抑制することでこの駆動トルク増大への移行をスムースに行うことができる。したがって、登坂路、降坂路での減速加速をスムースに行うことができ、ドライバビリティーが向上する。
【0031】以上の説明では、制動系を直接制御して減速度を与える実施形態について説明してきたが、駆動系に作用して減速度を与える構成としてもよい。また、路面勾配の検出は上記の前後Gセンサを用いる方法、装置に限られるものではなく、実加速度とエンジン駆動力等から推定される推定加速度の偏差から演算する装置など各種の手法を用いた装置によることが可能である。
【0032】また、補正係数F(θr(t))は、路面勾配が緩やかな領域(図5に示される路面勾配a0〜a1間)で正確に1にする必要はなく、少なくともF(0)=1かつdF(0)/dθr(t)を満たしていればよい。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、路面勾配に応じて登坂路では平坦路より付加減速度を小さく、降坂路では平坦路より付加減速度を大きく設定する車両減速度制御装置において、路面勾配が緩やかな領域では付加減速度を平坦路と略同一に設定することが
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成12年4月19日(2000.4.19)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外1名)
【公開番号】 特開2001−301589(P2001−301589A)
【公開日】 平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願番号】 特願2000−118292(P2000−118292)