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【発明の名称】 シートベルトの配置構造
【発明者】 【氏名】ロバート コペツキー

【要約】 【課題】車両の障害物との1次衝突後、車内における乗員の2次衝突が生じる際にも、1次衝突時と同様に十分な保護効果が得られるようにする。

【解決手段】シートベルト15によって保持された乗員13の肩の上方に配置された偏向ローラ20から偏向ガイド21に案内され、偏向ガイド21によって乗員13に近づくように偏向されるようなシートベルトの配置構造において、偏向ローラ20は、バネ19の力によって乗員13から離れる方向に、特にはほぼ垂直に移動可能に車体11に固定され、通常状態では引き込まれた通常位置に保持機構16によってバネ19の力に抗して固定されている。保持機構16は、シートベルト15に事故による張力が生じた際に偏向ローラ20を解放し、バネ19の力が急激に偏向ローラ20を動かす。この結果ベルト15に引込み力を生じさせ、この引込み力によって乗員13を通常の着座位置に戻す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】車両、特に自動車用のシートベルトの配置構造であって、シートベルト(15)と、シートベルト(15)を所定量だけ巻き取り可能なベルトローラ(12)とを有し、該ベルトローラ(12)は、車体(11)好ましくは回転可能に床に固定され、トルク発生機構、特には渦巻きバネによってベルト巻取り方向に付勢され、さらに引出阻止装置を有し、該引出阻止装置が、シートベルト(15)の急激な引出しの際、好ましくは事故によって引き起こされた加速度作用時に、前記トルク発生機構の力に抗してシートベルト(15)の引出しを阻止し、また、シートベルト(15)によって保持された乗員(13)の肩の上方に配置されたベルト偏向装置(17)を有し、該ベルト偏向装置(17)が偏向部材、特には偏向ローラ(20)を有し、ベルトがベルトローラ(12)から偏向部材へ案内され、該偏向部材によって乗員(13)に近づくように偏向され、さらに、ベルトロック(18)を有し、該ベルトロックにはベルトがベルト偏向装置(17)から乗員を介して延在し、該ベルトロックは、車体(11)に取り付けられた引張部材(14)に固定され、シートベルト(15)がベルトロック(18)からさらに車体(11)における固定位置に案内されるようなシートベルトの配置構造において、第1の偏向部材(20)は、バネ(19)の力によって乗員(13)から離れる方向に、特にはほぼ垂直に移動可能に車体(11)に固定され、通常状態では引き込まれた通常位置に保持機構(16)によってバネ(19)の力に抗して固定され、保持機構(16)は、シートベルト(15)に事故による張力が生じた際に第1の偏向部材(20)を解放し、これによりバネ(19)の力が急激に第1の偏向部材(20)を動かし、ベルト(15)に引込み力を生じさせ、この引込み力が乗員(13)を通常の着座位置に戻すことを特徴とするシートベルトの配置構造。
【請求項2】第1の偏向部材(20)の解放後、バネ(19)の力は、少なくとも事故による加速度に対して有効となるような力を、ベルト(15)を介して乗員(13)に加えるもので、好ましくは引込み力はベルトローラ(12)によって加えられる力よりも少なくとも10倍程度大きくなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のシートベルトの配置構造。
【請求項3】前記引込み力は、100〜300Nに達することを特徴とする請求項2に記載のシートベルトの配置構造。
【請求項4】前記引込み力は、第1の偏向部材(20)の解放後、0.2〜0.8秒内に有効となることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシートベルトの配置構造。
【請求項5】第1の偏向部材(20)は、シリンダ(22)内を移動可能なピストン(25)に固定され、該ピストン(25)はバネ(19)によってシリンダを抜け出す方向に作動されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシートベルトの配置構造。
【請求項6】保持機構(16)はラッチパウル(27)によって形成され、ラッチパウル(27)は引張力が加えられた状態にあり、ピストン(25)の補完的ラッチ凹部(28)に係合し、バネ(19)の力を打ち負かす張力がベルト(15)に加わったときに自由になり、前記引張力によってピストン(25)から離れる方向に移動し、よってピストン(25)はバネ(19)によって移動可能となることを特徴とする請求項5に記載のシートベルトの配置構造。
【請求項7】ラッチパウル(27)は、少なくともピストンの移動方向にほぼ直角に移動可能であることを特徴とする請求項6に記載のシートベルトの配置構造。
【請求項8】ピストン(25)の抜け出す方向への移動を許容し、戻り方向への移動を阻止する戻り防止機構(29)がピストン(25)とシリンダ(22)との間で有効となるようにしたことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項にに記載のシートベルトの配置構造。
【請求項9】ベルト偏向装置(17)は、第2のベルト偏向部材(21)を有し、該第2のベルト偏向部材は、好ましくはその高さが調整可能に車体(11)に取り付けられ、該第2のベルト偏向部材(21)によって、ベルト(15)が第1の偏向部材(20)による少なくともほぼ180°の偏向後に乗員(13)に向けて案内されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のシートベルトの配置構造。
【請求項10】第2のベルト偏向部材(21)の案内ため溝(23’)に適するだけでなく、ピストン(25)とシリンダ(22)とが、車体に固定されたレール(23)内に収容されたことを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか1項に記載のシートベルトの配置構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シートベルトの配置構造に関し、特にシートベルトによって保持される乗員の肩の上方に配置されたベルト偏向装置において、十分なシートベルトの引込みが行えるようにした自動車用のシートベルトの配置構造に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】この種のシートベルトの配置構造は、DE19957749A1から公知である。同公報においてベルト偏向装置がベルト引込み装置として形成され、そのベルト偏向装置は、緊急の際に作動可能な移動発生装置に設けられており、その移動発生装置は車体に固定され、その作動によって、ベルト偏向ローラから成るベルト偏向装置またはその一部を急激にベルト引込み方向へ移動させるようになっている。
【0003】この従来技術としてのシートベルトの配置構造では、シートベルトの引込みは、通常のベルト巻取装置のみの巻取り機構によって、衝突後に行われており、1秒程度のかなり長い時間が必要とされた。加えて、ベルト巻取装置による保持力は2〜10N程度の大きさであり、その大きさは、衝突後に乗員を通常の着座位置まで戻して2次衝突の時点までその位置に乗員を保持するには小さすぎる。
【0004】本発明の目的は、事故による加速(減速)後に、乗員を通常の着座位置まで急速に戻すだけでなく、車内での障害物との2次衝突の際に、その位置にしっかりと保持することのできる、頭書の種類のシートベルトの配置構造を提供することである。言いかえれば、車両の障害物との1次衝突後、乗員を通常の着座位置までできる限り急速に戻し、車内での障害物との2次衝突の際に、少なくとも本来の保護効果と同様の保護効果が確実に得られるようにする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の目的を達成するため、本発明は、シートベルトの偏向部材が、バネ力によって乗員から離れる方向に、特にはほぼ垂直に移動可能に車体に堅固に固定され、通常状態では引き込まれた通常位置に保持機構によってバネ力に抗して固定され、前記保持機構が、シートベルトに事故による張力が生じた際に前記偏向部材を解放し、これによって、前記バネ力が急激に前記偏向部材を動かし、前記シートベルトに引込み力を生じさせ、この引込み力が乗員を通常の着座位置に戻すことができるようにしたことを特徴とする。
【0006】このように、本発明の思想は、偏向部材の移動可能な配置と、またバネによる作用によって、約100〜300Nという大きさの引込み力が、1次衝突後、たとえば0.2〜0.8秒という非常に短い時間内に有効となり、これにより1次衝突後、できるだけ早く乗員を通常の着座位置に戻すばかりでなく、2次衝突の場合にも1次衝突と同様の保護効果を確保できるという点からなる。
【0007】必要なシートベルトの引込み力の好ましい大きさとして、前記第1の偏向部材の解放後、バネ力は、少なくとも事故による加速度に対して有効となるような力を、シートベルトを介して乗員に加えるもので、好ましくはベルトローラによって加えられる力よりも少なくとも10倍程度大きくなるようにし、そのときの引込み力は、100〜300Nに達するようにすることが好ましい。さらに、その作用までの時間は、前記第1の偏向部材の解放後、0.2〜0.8秒内に有効となるようにすることが好ましい。
【0008】本発明の有利な例は、前記第1の偏向部材が、シリンダ内を移動可能なピストンに固定され、該ピストンはバネによって離れる方向に作動されるようにすることが好ましい。保持機構は、ラッチパウルによって形成され、前記ラッチパウルは引張力が加えられた状態にあり、前記ピストンの補完的ラッチ凹部に係合し、前記バネ力を打ち負かす張力が前記シートベルトに加わったときに自由になり、前記引張力によって前記ピストンから離れる方向に移動し、よって前記ピストンはバネ力によって移動可能となるようにすることが好ましい。このとき、前記ラッチパウルは、少なくともピストンの移動方向にほぼ直角に移動できるようにすることが好ましい。また、前記ピストンの抜け出す方向への移動は許容し、戻り方向への移動は阻止する戻り防止機構が前記ピストンと前記シリンダとの間で有効となるようにすることが好ましい。さらに、ベルト偏向装置は、第2のベルト偏向部材を有し、該第2のベルト偏向部材は好ましくはその高さが調整可能に車体に取り付けられ、該第2のベルト偏向部材によってシートベルトが、前記第1の偏向部材による少なくともほぼ180°の偏向後、乗員に向けて案内されるようにすることが好ましい。加えて、第2のベルト偏向部材を案内するための溝を設けるのにふさわしいのみでなく、前記ピストンとシリンダとが、前記車体に固定されたレールに収容されることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明を、添付の図面を参照して例示的に以下に説明する。図4にあるように、車両の座席33に着座した乗員13は、いわゆる3点式シートベルトによって保持されている。このシートベルトは、車体11に固定された引張部材14と、それに結合したベルトロック18と、座席33に隣接して位置する車体11における固定位置からベルトロック18の挿通スリット34(図1)を介して第2の偏向部材としての偏向ガイド21へ延びるシートベルト15とから構成されている。シートベルト15は、偏向ガイド21から第1の偏向部材としての偏向ローラ20に導かれ、これにより約180°偏向され、車体に同様にして固定されたベルトローラ12に到達する。偏向ローラ20と偏向ガイド21とでベルト偏向装置17が構成される。ベルトローラ12は、図示しない渦巻きバネ形状のトルク発生機構を有し、また、ベルト15の急激な引出しの際または事故による加速の際に効果を発揮する引出阻止装置を有する。
【0010】本発明によれば、図1,図2における偏向ローラ20はピストン25位置のフレーム26上に配置され、ピストン25はレール23内の上方が開放し、下方が閉じられたシリンダ22内へ上から延在している。レール23は車体11、特に側方のコラムにネジ35(図1)によって固定されている。ピストン25は中空状に作られ、圧縮バネ19を有し、この圧縮バネ19の下端はシリンダベース37に支持され、上方の偏向ローラ20のフレーム26に作用するようになっている。
【0011】偏向ガイド21は、レール23の側方溝23’に係合して、高さ調整可能にレール23に堅固に支持されている。偏向ガイド21は異なる高さ位置に移動可能であり、その位置で固定できる。
【0012】偏向ローラ20によって形成されたベルト15の2つの部分は、レール23の前面を偏向ガイド21の対応する開口36を通って延在する。
【0013】ピストン25は、上部側面にラッチ凹部28を有し、ラッチ凹部28は図2(b)に示したように形成され、その側方からラッチパウル27が係合している。これにより、バネがピストン25に作用することによるピストン25の上方への移動が阻止されている。この目的のためラッチパウル27はフック形状に形成され、ラッチ凹部28の形状はパウル27とピストン25との形状の適合が果たされるように補完的に形成されている。
【0014】ラッチパウル27は、引張バネ32によって阻止を解く方向にあらかじめ付勢されている。
【0015】このようにして、図1,図2(a)及び図2(b)に示したように、パウル27の前進位置では、ピストン25はバネ19の力によって惹起されるその移動が阻止されている。ラッチパウル27およびラッチ凹部28は、図1,図2(a)及び図2(b)に示したように、引き込まれた通常位置におけるピストン25の保持機構16を構成している。
【0016】ピストンの下部には、外周溝30が設けられており、この外周溝30には係止ボール38が収容されている。ピストン25の最上端位置(図3)において、傾斜面39を上方に有する係止凹部31がシリンダ22において係止ボール38と対面させることにより、ピストン25が図3に示した位置からシリンダ22内に戻れなくすることができる。
【0017】本発明によるシートベルトの配置構造の作動方法は次の通りである。通常の場合、乗員13は図4に示したように3点式シートベルト15を装着している。
【0018】車両の正面衝突の際、乗員は100〜300N程度のきわめて大きなベルト力を伴なって約25(msec)以内に前方に投げ出される。障害物に衝突した車両は約50(msec)後に停止し、ベルトと、取り付けられているであろうベルト力リミッタとは、その最大延伸状態まで延びるか、変形する。
【0019】バネ19の力は、次のことが達成できるように設定されている。つまり、ラッチパウル27が対向受け座24から解かれ、引張バネ32によってラッチ凹部28から脱出できる分だけ、衝突の際に生じたベルト力によって、ピストン25が下方に移動する。この目的のために十分な自由空間40(図2(b))がパウル27上に存在しなければならない。
【0020】ここで車両の停止後、減速度が減少し、最終的になくなるとすると、バネ19は0.2〜0.8秒という比較的短時間内にピストン25を移動させ、シートベルト15に100〜300Nという引込み力を生じさせる。これによって乗員13は座席33に急激に戻され、ここで乗員13は2次衝突が起きるまでバネ19によって生じる引込み力によって保持される。もし2次衝突時にシートベルト15の張力がバネ19の復原力を超えた場合でも、係止ボール38が係止凹部による傾斜面39に対して押し付けられることで戻り防止機構29が効くようになっている。
【0021】1次衝突の際、ピストン25は、保持機構16がピストン25を解放できる分だけ、バネ19の力に抗して下方に移動し、一方、ピストン25はバネ19の作用で上方に急激に移動できるということが必須である。このため、バネ19の力はベルトローラ12によって加えられる引込み力よりも少なくとも10倍程度大きくされている。
【出願人】 【識別番号】000108591
【氏名又は名称】タカタ株式会社
【出願日】 平成13年4月26日(2001.4.26)
【代理人】 【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
【公開番号】 特開2001−354113(P2001−354113A)
【公開日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【出願番号】 特願2001−128772(P2001−128772)