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【発明の名称】 シートベルト装置
【発明者】 【氏名】吉川 幸雄

【氏名】大内 公宏

【要約】 【課題】所望のウェビング伸び特性に近似した特性を得ることの可能なシートベルト装置を提供する。

【解決手段】衝突時、ウェビングが引っ張られて伸びていくと、複数の変形部材に順次ウェビングの荷重が掛かって変形し、ウェビングの荷重−伸び特性は、段階的(ステップ状)に変化する。所望の伸び特性に近づく様に変形部材の材質等を適宜変える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の荷重を掛けることで変形可能な複数の変形部材をウェビングの伸長方向に沿って並列に配置するとともに、前記複数の変形部材には前記ウェビングの伸長量に応じて順次に前記ウェビングの引っ張り荷重を掛けることで前記ウェビングの荷重−伸び特性を段階的に変化させるようにしたことを特徴とするシートベルト装置。
【請求項2】 前記複数の変形部材の少なくとも一部のものには、当該変形部材に対する引っ張り荷重の作用開始時期を遅らせるための遊び領域が設けられており、この遊び領域の遊び量には段階的に変化が付けられていることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】 前記変形部材は、前記ウェビングを構成する縦糸からなっており、前記遊び領域は前記縦糸の弛みによって構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト装置。
【請求項4】 前記変形部材は、前記ウェビングの伸長方向に弾性変形可能なバネ部材から構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト装置。
【請求項5】 前記変形部材は、前記ウェビングの伸長方向に塑性変形可能な金属部材から構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シートベルト装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図10は、一般的なシートベルト装置におけるウェビングの荷重−伸び特性の一例を示している。衝突時に乗員の受ける荷重や、加速度はこのウェビングの伸び特性に依存しているため、ウェビングの特性をうまく制御することができれば、衝突時に乗員が受ける影響を低減できるような高性能のシートベルト装置を開発することが可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ウェビングの荷重−伸び特性を変化させるには、例えばウェビングを構成する繊維の材質を変えることで伸び弾性率を変えたり、あるいは、所定の伸び特性を有する別部材をウェビングに取り付けたりといった手段がある。図11には、ウェビングの伸び弾性率をE1<E2<E3となるように変化させた例を示したが、例えばウェビングに同図の曲線Aのような特性を持たせたい場合、前記のような手段だけでは実現は極めて困難である。本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、所望のウェビング伸び特性に近似した特性を得ることの可能なシートベルト装置を提供するところにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するための請求項1の発明に係るシートベルト装置は、所定の荷重を掛けることで変形可能な複数の変形部材をウェビングの伸長方向に沿って並列に配置するとともに、前記複数の変形部材には前記ウェビングの伸長量に応じて順次に前記ウェビングの引っ張り荷重を掛けることで前記ウェビングの荷重−伸び特性を段階的に変化させるようにしたところに特徴を有する。
【0005】請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記複数の変形部材の少なくとも一部のものには、当該変形部材に対する引っ張り荷重の作用開始時期を遅らせるための遊び領域が設けられており、この遊び領域の遊び量には段階的に変化が付けられているところに特徴を有する。
【0006】請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記変形部材は、前記ウェビングを構成する縦糸からなっており、前記遊び領域は前記縦糸の弛みによって構成されているところに特徴を有する。
【0007】請求項4の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記変形部材は、前記ウェビングの伸長方向に弾性変形可能なバネ部材から構成されているところに特徴を有する。
【0008】請求項5の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記変形部材は、前記ウェビングの伸長方向に塑性変形可能な金属部材から構成されているところに特徴を有する。
【0009】
【発明の作用および効果】請求項1の発明によれば、衝突時等においてウェビングが引っ張られて伸びていくと、変形部材に順次にウェビングの荷重が掛かって順次に変形していく。これにより、ウェビングの荷重−伸び特性は、段階的(ステップ的)に変化する。変形部材の材質等を適宜変えることで、所望の伸び特性に近い特性を有するウェビングを得ることができる。
【0010】請求項2の発明によれば、変形部材に遊び領域が設けられることで引っ張り荷重の作用開始時期が遅れる。遊び領域の遊び量に段階的に変化をつけることで、変形部材に順次に荷重を掛けることができる。
【0011】請求項3の発明によれば、弛み量の分だけ縦糸に引っ張り荷重が作用する時期が遅れるため、伸び特性が段階的に変化する。請求項4の発明によれば、バネ部材がウェビングの伸びに応じて順次に弾性変形する。請求項5の発明によれば、金属部材がウェビングの伸びに応じて順次に弾性変形する。
【0012】
【発明の実施の形態】〈第1実施形態〉次に、本発明の第1実施形態について、図1から図6を参照しつつ説明する。図1は、シートベルト装置のウェビング10の一部分を拡大して示している。このウェビング10は、例えばポリエステル繊維等からなり、同図符号11は、ウェビング10の幅方向に織り込まれた横糸である。また、ウェビング10の縦糸(本発明の「変形部材」に相当)には、張り具合に3種類の差が設けられており、図2に示すように弛みなく張った縦糸12Aと、やや弛み(本発明の「遊び領域」に相当)が付けられた12Bと、これよりもさらに弛み量が大きくされた12Cとから構成され、12A,12B,12Cの順でウェビング10の幅方向に繰り返し並んで配置されている。なお、各縦糸12A,12B,12Cの材質や弛み量は後述するように、ウェビング10に求める特性に合わせて任意に設定することができる。
【0013】さて、衝突時においてウェビング10に強い引っ張り荷重が掛かると、図3に示すように、はじめに弛みなく張っていた縦糸12Aが引っ張られて伸びるとともに、少し弛みがあった縦糸12Bの弛みがなくなり、大きな弛みのあった縦糸12Cの弛み量が減少する。ウェビング10がさらに引っ張られると、縦糸12A,12Bが一層伸びるとともに、縦糸12Cの弛みがなくなり、縦糸12Cにも引っ張り荷重が掛かり始める。
【0014】次に、ウェビング10の荷重−伸び特性を説明する。ポリエステル繊維は、図4に示すような荷重−伸び特性を持っており、はじめの段階ではおおよそ一定の傾き(=伸び弾性率)で上昇し、ある点で急に傾きが減少し、再び一定の傾きで上昇する特性を示す。このポリエステル繊維からなる縦糸の張り具合を3段階に変化させたウェビング10の荷重−伸び特性を描くと、例えば図5に示すように、階段状に変化する特性が得られる。初期の段階(A)では、弛みのない縦糸12Aのみに荷重が掛かるため、特性曲線は縦糸12Aの特性による傾向を示し、次の段階(B)では、縦糸12Aに加えて縦糸12Bの特性を重ね合わせた特性を示す。さらに、その次の段階(C)では、縦糸12A,12B,12Cの特性を重ね合わせた特性が現れる。
【0015】以上のように、本実施形態によれば、ウェビング10の荷重−伸び特性を段階的(ステップ状)に変化させることができる。例えば、図6に示した曲線Bを求めるウェビングの特性と仮定すると、この曲線Bを伸び量に応じて(A)(B)(C)の三段階に分け、縦糸12A,12B,12Cの材質や弛み量等を適宜設定することで、例えば曲線Cに示すように求める特性Bに近似した特性を持つウェビングを得ることができる。つまり、単一種の縦糸ではウェビングの荷重−伸び特性も単一の縦糸による特性に限定されるが、本実施形態では、ウェビングの伸び量に応じて3種の異なる荷重−伸び特性を組み合わせることができる。なお、この実施形態では、縦糸の張り具合を3段階に設定したが、これは2段階でも良く、4段階以上にしても良い。
【0016】〈第2実施形態〉次に、本発明の第2実施形態について図7を参照しつつ説明する。図7は、シートベルト装置の取付構造を示している。符号21はウェビングであり、その一端には連結金具22が取り付けられている。また、符号23は、取付金具であり、留め具24によって車体下部(図示しない)に固定されている。連結金具22及び取付金具23は、それぞれ円柱状の連結部22A,23Aを備えており、それらが一対の連結帯26によって接続されている。この連結帯26は、例えばポリエステル繊維からなり、ある程度の引っ張り荷重を掛けることで切断するようになっている。また、連結金具22と取付金具23との間には、5つのコイルバネ27A,27A,27B,27B,27C(本発明の「バネ部材」に相当)が掛け渡されており、それぞれカバー28によって覆われている。コイルバネ27A,27Aは、連結金具22の両端部と取付金具23の連結部23Aとに接続されており、ウェビング21に通常の力で引っ張られたときには連結帯26によってコイルバネ27A,27Aには荷重が掛からないようになっている。コイルバネ27B,27Bは、一端が取付金具23の連結部23Aに接続されており、他端がともに小筒部29に接続されている。この小筒部29には、連結金具22の連結部22Aが挿通されるとともに、小筒部29と連結部22Aとの間には隙間31(本発明の「遊び領域」に相当)が設けられている。さらに、コイルバネ27Cは、一端が取付金具23の連結部23Aに接続されており、他端が大筒部32に接続されている。大筒部32には、小筒部29が挿通されるとともに、両者の間には隙間33が設けられている。
【0017】衝突時、ウェビング21が強く引っ張られると、連結帯23が切断し、コイルバネ27Aに荷重が掛かって弾性変形を開始する。コイルバネ27Aが所定伸びると、連結部22Aが小筒部29を押圧して、コイルバネ27Bにも荷重が掛かる。さらに、ウェビング21が引っ張られると、小筒部29が大筒部32を押圧してコイルバネ27Cに荷重が掛かる。このようにして、ウェビング21が伸びるにつれ、コイルバネ27A,27B,27Cに順次に荷重が掛かり、ウェビング21の荷重−伸び特性は段階的に変化することになる。コイルバネの数、伸び弾性率等を任意に設定することで、第1実施形態と同様にウェビングの荷重−伸び特性を所望のものに近づけることが可能となる。
【0018】〈第3実施形態〉次に、本発明の第3実施形態について図8を参照しつつ説明する。本実施形態では、ウェビング21端部に取り付けられた平板状の連結金具41と車体下部に固定された取付金具42とが、重なり合った3枚の金属板43A,43B,43C(例えば鋼板、本発明の「変形部材」及び「金属部材」に相当)を介して連結されている。3枚の金属板43A,43B,43Cは、中央にそれぞれくびれ部44A,44B,44Cを備えており、44A,44B,44Cの順に幅寸法が大きくなっている。また、3枚の金属板43A,43B,43Cは、下端部が一対のピン46によって取付金具42に固定されている。3枚の金属板43A,43B,43Cのうち金属板43Aの上端部は、一対のピン47によって連結金具41に固定されている。金属板43Bの上端部には、上下に細長い一対の挿通孔48(本発明の「遊び領域」に相当)が設けられており、各挿通孔48の下端位置にそれぞれピン46が挿通されている。さらに、金属板43Cの上端部には、挿通孔48よりもさらに長い挿通孔49が設けられており、各挿通孔49の下端位置にそれぞれピン46が挿通されている。
【0019】さて、衝突時、ウェビング21が強く引っ張られると、まず金属板43Aにその荷重が掛かり、特に応力の集中するくびれ部44A付近を中心に金属板43Aが伸び変形(塑性変形)する。所定量伸び変形したところで、ピン46が金属板43Bの挿通孔48の上端に達して、金属板43Bに荷重が掛かり伸び変形を開始する。同様にして、金属板43Bが所定量伸び変形したところで、ピン46が金属板43Cの挿通孔49の上端に達して、金属板43Cに荷重が掛かり伸び変形を開始する。本実施形態によっても上記各実施形態と同様に、ウェビングの荷重−伸び特性を段階的に変化させることができる。各金属板の形状、枚数、挿通孔の長さ(遊び量)等を適宜変えることで所望のウェビングの荷重−伸び特性に近似した特性を得ることができる。
【0020】〈第4実施形態〉次に、本発明の第4実施形態について図9を参照しつつ説明する。本実施形態では、ウェビング21の端部に4角形の枠部51が取り付けられている。一方、取付金具52にはコの字形のフレーム53が取り付けられており、このフレーム53の中央部53Aは枠部51の内側を上下方向にスライド可能になっている。フレーム53の中央部53Aから枠部51の下端面51Aへ、円柱状の一対の柱部55Aが立設されている。また、フレーム53の中央部53Aからは、一対の柱部55Aの内側に柱部55Aよりも長さの短い一対の柱部55Bが立設されており、その下端には平板部56が宙に浮いた状態で設けられている。さらに、フレーム53の中央部53Aからは、一対の柱部55Bの内側に柱部55Bよりも長さの短い一対の柱部55Cが立設され、その下端には平板部57が宙に浮いた状態で設けられている。
【0021】上記の各柱部55A,55B,55C(本発明の「変形部材」及び「金属部材」に相当)は、所定の荷重を加えることで座屈変形可能となっている。ウェビング21が強く引っ張られると、フレーム53の中央部53Aと枠部51の下端面51Aとが近接する方向に荷重が掛かり、柱部55Aが座屈変形する。次に、平板部56が枠部51の下端面51Aに当接して、柱部55Bにも荷重が掛かり、これらが座屈変形する。さらに、平板部57が枠部51の下端面51Aに当接して、柱部55Cに荷重が掛かりこれらが座屈変形する。本実施形態によっても上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000101639
【氏名又は名称】アラコ株式会社
【出願日】 平成12年6月9日(2000.6.9)
【代理人】 【識別番号】100096840
【弁理士】
【氏名又は名称】後呂 和男 (外1名)
【公開番号】 特開2001−354112(P2001−354112A)
【公開日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【出願番号】 特願2000−174014(P2000−174014)