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【発明の名称】 ウエビング巻取装置
【発明者】 【氏名】永田 智紀

【氏名】森 信二

【要約】 【課題】構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更することができるウエビング巻取装置を得る。

【解決手段】ウエビング巻取装置10では、スライドシャフト18、メイントーションバー22、及びサブトーションバー24を備えており、中間ギヤ30は常にメインギヤ26に噛み合うと共に、サブギヤ28との噛み合い状態を変更できる。中間ギヤ30の噛み合い位置に応じて、メイントーションバー22及びサブトーションバー24の捩り荷重によるフォースリミッタ荷重が得られ、また、メイントーションバー22のみの捩り荷重によるフォースリミッタ荷重が得られ、さらに、エネルギ吸収量を途中で変更することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ウエビングが巻取り引出しされる筒状のスプールと、前記スプールの一端側に前記スプールと同軸的でかつ相対回転可能に設けられたロックベースと、前記ロックベースに接続して設けられ、所定の加速度が検知された際にフレームに係合して前記ロックベースのウエビング引出方向回転を阻止するロック手段と、前記スプール内に設けられ、一端が前記スプールに連結固定されたメイントーションバーと、前記メイントーションバーに一体に設けられたメインギヤと、前記スプール内に設けられ、一端が前記スプールに連結固定されたサブトーションバーと、前記サブトーションバーに一体に設けられたサブギヤと、前記スプール内に前記スプールと同軸的に設けられ、一端が前記ロックベースに対し前記スプール軸線方向に沿ってスライド可能でかつ一体回転するように連結されたスライドシャフトと、前記スライドシャフトに一体に設けられ、全周に亘って前記サブギヤに噛み合い可能な第1噛合部と周方向一部に欠歯部分が形成され前記サブギヤに間欠的に噛み合う第2噛合部が形成され、前記スライドシャフトのスライド位置に拘わらず前記メインギヤに常に噛み合うと共に通常は前記第1噛合部が前記サブギヤに噛み合い、前記ロック手段による前記ロックベースのウエビング引出方向回転阻止状態では、前記スプールの前記ロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力を常に前記メイントーションバーに付与すると共に前記サブトーションバーへ選択的に付与可能な中間ギヤと、前記スライドシャフトに係合可能に配置され、前記中間ギヤを前記何れかの回転力付与状態に選択的に切替え作動する結合手段と、を備えたウエビング巻取装置。
【請求項2】 前記結合手段を、前記スライドシャフトに係合して押圧することにより前記スライドシャフトをスライドさせて前記中間ギヤの第2噛合部がサブギヤに噛み合う状態とする第1のカム板と、前記前記スライドシャフトに係合して押圧することにより前記スライドシャフトをスライドさせて前記中間ギヤがサブギヤに噛み合わない状態とする第2のカム板と、前記第1のカム板を移動させる第1のガスジェネレータと、前記第2のカム板を移動させる第2のガスジェネレータと、によって構成したことを特徴とする請求項1記載のウエビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウエビング巻取装置に係り、特にウエビングの引出しを阻止するときに、ウエビングの引出しを許容してエネルギを吸収することができるウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ウエビング巻取装置では、スプール(巻取軸)のウエビング引出方向の回転が車両急減速時にロックされて、ウエビングの引き出しが阻止される。このロック機構としては、スプールの一端側の装置フレーム近傍にロック手段が配置されており、車両急減速時にはこのロック手段が作動されることで、スプールのウエビング引出方向の回転が阻止される構成である。
【0003】また、このようなウエビング巻取装置において、ウエビングの引き出しを阻止する際に、ウエビングの引き出しを所定量許容して、エネルギの吸収を図ることが行われている。このエネルギ吸収機構としては、例えば、スプールとこれと同軸的にトーションバーを配置した構成のものがある。一般的にトーションバーは、一端部をスプールに、他端部をロック手段に接続されたロックベースに、それぞれ相対回転しないように連結されている。通常は、スプールとロックベースとはトーションバーを介して一体に回転するが、車両急減速時にロックベースのウエビング引出方向の回転が阻止された状態では、スプールが、ウエビング引張力により、ロックベースに対してウエビング引出方向へ回転する。このとき、トーションバーが捩じられてエネルギが吸収され、スプールの所定量の回転が許容される構成である。このような吸収エネルギは、ウエビングに付加される荷重(フォースリミッタ荷重)とウエビング引出量(スプール回転量)の積で決まるものであり、ウエビング巻取装置では、フォースリミッタ荷重及びスプールの許容回転量(トーションバーの捩り限界)が与えられている。
【0004】しかしながら、このような従来のウエビング巻取装置では、エネルギ吸収時のフォースリミッタ荷重はトーションバーの材料物性値及び寸法形状に支配され、例えば、乗員の体重、体格及び衝突時の車両速度等をパラメータとする衝突エネルギ等の乗員の慣性エネルギに拘わらず一定の値しか採ることができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事実を考慮し、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更することができるウエビング巻取装置を得ることが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明のウエビング巻取装置は、ウエビングが巻取り引出しされる筒状のスプールと、前記スプールの一端側に前記スプールと同軸的でかつ相対回転可能に設けられたロックベースと、前記ロックベースに接続して設けられ、所定の加速度が検知された際にフレームに係合して前記ロックベースのウエビング引出方向回転を阻止するロック手段と、前記スプール内に設けられ、一端が前記スプールに連結固定されたメイントーションバーと、前記メイントーションバーに一体に設けられたメインギヤと、前記スプール内に設けられ、一端が前記スプールに連結固定されたサブトーションバーと、前記サブトーションバーに一体に設けられたサブギヤと、前記スプール内に前記スプールと同軸的に設けられ、一端が前記ロックベースに対し前記スプール軸線方向に沿ってスライド可能でかつ一体回転するように連結されたスライドシャフトと、前記スライドシャフトに一体に設けられ、全周に亘って前記サブギヤに噛み合い可能な第1噛合部と周方向一部に欠歯部分が形成され前記サブギヤに間欠的に噛み合う第2噛合部が形成され、前記スライドシャフトのスライド位置に拘わらず前記メインギヤに常に噛み合うと共に通常は前記第1噛合部が前記サブギヤに噛み合い、前記ロック手段による前記ロックベースのウエビング引出方向回転阻止状態では、前記スプールの前記ロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力を常に前記メイントーションバーに付与すると共に前記サブトーションバーへ選択的に付与可能な中間ギヤと、前記スライドシャフトに係合可能に配置され、前記中間ギヤを前記何れかの回転力付与状態に選択的に切替え作動する結合手段と、を備えている。
【0007】請求項1記載のウエビング巻取装置では、スライドシャフトの中間ギヤはメイントーションバーのメインギヤに常に噛み合っており、スプールとロックベースとは少なくともメイントーションバー及びスライドシャフトを介して連結されており、通常は、これらが一体に回転してウエビングの巻取り引出しが自由とされる。
【0008】ここで、例えば、車両衝突時等の車両急減速時に、乗員の体重、急減速直前の車両速度、加速度(減速度)等を検知して乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更する構成とした場合に、乗員の慣性エネルギが大きい場合は、結合手段を不作動状態とすることにより、中間ギヤがメインギヤに噛み合うのみならず、その第1噛合部がサブギヤにも噛み合い、スプールのロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバー及びサブトーションバーへ共に伝達する状態とする。
【0009】この状態において所定の加速度(減速度)が検知されると、ロック手段が作動してロックベースのウエビング引出方向の回転が阻止される。このため、スプールに作用するウエビング引張力は、メイントーションバー及びサブトーションバーへ共に伝達されてウエビング引出し方向の回転力として作用する。このため、メイントーションバー及びサブトーションバーが共に捩れて大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウエビング(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプールがロックベースに対してウエビング引出方向へ回転されてウエビングが引出され、適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0010】一方、乗員の慣性エネルギが小さい場合は、結合手段を作動させることにより、中間ギヤがメインギヤにのみ噛み合い、サブギヤには噛み合わず、スプールのロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバーへ伝達しサブトーションバーへは伝達しない状態とする。
【0011】この状態において所定の加速度(減速度)が検知されると、ロック手段が作動してロックベースのウエビング引出方向の回転が阻止される。このため、スプールに作用するウエビング引張力は、メイントーションバーのみに伝達されてウエビング引出し方向の回転力として作用する。このため、メイントーションバーのみが捩れて前述よりも小さなフォースリミッタ荷重が得られ、ウエビング(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプールがロックベースに対してウエビング引出方向へ回転されてウエビングが引出され、エネルギ吸収が果たされる。
【0012】またさらに、車両急減速の初期には大きな荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくしてウエビングの引出量(乗員の移動量)を抑え、所定のエネルギ吸収後はより小さい荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を小さくすることによって乗員への負荷を軽減しようとする場合には、結合手段を作動状態とすることにより、中間ギヤがメインギヤに噛み合うのみならず、中間ギヤの第2噛合部がサブギヤにも噛み合う状態とする。これにより、スプールのロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバーへ伝達し、サブトーションバーへは当初は伝達する状態とする。
【0013】この状態において所定の加速度(減速度)が検知されると、ロック手段が作動してロックベースのウエビング引出方向の回転が阻止される。このため、スプールに作用するウエビング引張力は、当初は、メイントーションバー及びサブトーションバーへ共に伝達されてウエビング引出し方向の回転力として作用する。このため、メイントーションバー及びサブトーションバーが共に捩れて大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウエビング(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプールがロックベースに対してウエビング引出方向へ回転されてウエビングが引出され、適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0014】さらに、スプールがロックベースに対してウエビング引出方向へ所定量回転された時点で、中間ギヤの第2噛合部においてその欠歯部分がサブギヤに対応する状態となり、このため、スプールに作用するウエビング引張力がサブトーションバーに作用しなくなる。すなわち、この時点で、スプールに作用するウエビング引張力は、メイントーションバーのみに伝達されることになる。このため、メイントーションバーのみが捩れて前述よりもフォースリミッタ荷重が低減され、ウエビング(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプールがロックベースに対してウエビング引出方向へ回転されてウエビングが引出され、エネルギ吸収が果たされる。
【0015】このように、車両急減速の初期には大きな荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくしてウエビングの引出量(乗員の移動量)を抑え、所定のエネルギ吸収後はより小さい荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を小さくすることができる。
【0016】以上の如く、請求項1に係る発明のウエビング巻取装置では、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更することができる。
【0017】請求項2に係る発明のウエビング巻取装置は、請求項1記載のウエビング巻取装置において、前記結合手段を、前記スライドシャフトに係合して押圧することにより前記スライドシャフトをスライドさせて前記中間ギヤの第2噛合部がサブギヤに噛み合う状態とする第1のカム板と、前記前記スライドシャフトに係合して押圧することにより前記スライドシャフトをスライドさせて前記中間ギヤがサブギヤに噛み合わない状態とする第2のカム板と、前記第1のカム板を移動させる第1のガスジェネレータと、前記第2のカム板を移動させる第2のガスジェネレータと、によって構成したことを特徴としている。
【0018】請求項2記載のウエビング巻取装置では、乗員の慣性エネルギが大きい場合には、第1及び第2のガスジェネレータを共に不作動状態として第1及び第2のカム板がスライドシャフトに係合しない状態とすることにより、中間ギヤがメインギヤに噛み合うのみならず、その第1噛合部がサブギヤにも噛み合い、スプールのロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバー及びサブトーションバーへ共に伝達する状態とすることができる。
【0019】一方、乗員の慣性エネルギが小さい場合には、第2のガスジェネレータのみを作動させ第2のカム板をスライドシャフトに係合させてスライドさせることにより、中間ギヤがメインギヤにのみ噛み合い、サブギヤには噛み合わず、スプールのロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバーへ伝達しサブトーションバーへは伝達しない状態とすることができる。
【0020】またさらに、車両急減速の初期には大きな荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくしてウエビングの引出量(乗員の移動量)を抑え、所定のエネルギ吸収後はより小さい荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を小さくすることによって乗員への負荷を軽減しようとする場合には、第1のガスジェネレータのみを作動させ第1のカム板をスライドシャフトに係合させてスライドさせることにより、中間ギヤがメインギヤに噛み合うのみならず、中間ギヤの第2噛合部がサブギヤにも噛み合う状態とする。これにより、スプールのロックベースに対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバーへ伝達する状態と共に、サブトーションバーへは当初は伝達する状態とすることができる。
【0021】このように、請求項2に係る発明のウエビング巻取装置では、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を一層確実に変更することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】図1には、本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の構成が示されている。
【0023】ウエビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は略コ字型であり、対向する一対の脚片及び各脚片を連結する背片から成り、背片部において車体に固定されている。
【0024】フレーム12の対向する一対の脚片の間には、軸方向が脚片の対向方向とされた筒状のスプール14が設けられている。このスプール14にはウエビング50の一端が係止され、スプール14の回転により、ウエビング50がスプール14に対して巻取り引出し自在となる。
【0025】なお、スプール14には図示しないぜんまいばねが連結されており、常にウエビング50を巻取る方向に回転付勢されている。
【0026】スプール14の筒内には、一端(図1の左側端)部にロックベース16が配置されている。ロックベース16は、フレーム12の脚片開口部にスプール14と同軸的でかつ回転自在に支持されている。ロックベース16にはロック手段を構成するロックプレート17が接続され、図示しない加速度センサが所定の加速度(減速度)を検知した場合にロックプレート17がフレーム12に噛込むことによりロックベース16の回転を阻止する構成となっている。
【0027】また、ロックベース16には、スプール14の筒内軸心部分にスプール14と同軸的に配置されたスライドシャフト18の一端部が連結されている。このスライドシャフト18は、スプライン部20によってロックベース16に連結されており、常にロックベース16と一体回転すると共にロックベース16に対し軸線方向に沿ってスライド移動可能となっている。スライドシャフト18の他端部は、フレーム12の一方の脚片から外方へ突出されている。
【0028】また、スプール14の筒内には、メイントーションバー22及びサブトーションバー24が配置されている。メイントーションバー22及びサブトーションバー24は、それぞれ一端部がスプール14の筒内壁に連結固定されており、他端部は自由端となっている。このメイントーションバー22にはメインギヤ26が一体に設けられており、また、サブトーションバー24にはサブギヤ28が一体に設けられている。
【0029】さらに、前記メイントーションバー22のメインギヤ26及びサブトーションバー24のサブギヤ28は、それぞれスライドシャフト18に一体に設けられた中間ギヤ30に噛み合っている。ここで、図2乃至図4にも示す如く、中間ギヤ30は、全周に亘ってサブギヤ28に噛み合い可能な第1噛合部32と、周方向一部に欠歯部分36が形成されサブギヤ28に間欠的に噛み合う第2噛合部34が形成されており、スライドシャフト18のスライド位置に拘わらずメインギヤ26に常に噛み合うと共に、通常は第1噛合部32がサブギヤ28に噛み合っている。これにより、通常は、スプール14、メイントーションバー22及びサブトーションバー24、スライドシャフト18、及びロックベース16は一体に回転するよう構成されており、また、ロックプレート17によってロックベース16のウエビング引出方向回転が阻止状態では、スプール14のロックベース16に対するウエビング引出方向への相対回転力を常にメイントーションバー22に付与すると共に、サブトーションバー24へ選択的に付与可能な構成となっている。
【0030】スライドシャフト18の他端部が突出するフレーム12の一方の脚片の外方には、ガス室40が設けられており、さらに、このガス室40には、結合手段を構成する第1のカム板42及び第2のカム板44がスライドシャフト18の他端部に接近移動可能に配置されている。第1のカム板42は、移動することにより、スライドシャフト18に係合して押圧しこのスライドシャフト18をスライドさせて、第1噛合部32がサブギヤ28に噛み合っている中間ギヤ30を第2噛合部34がサブギヤ28に噛み合う状態とすることができるようになっている。一方、第2のカム板44は、移動することにより、スライドシャフト18に係合して押圧しこのスライドシャフト18をスライドさせて、第1噛合部32または第2噛合部34がサブギヤ28に噛み合っている中間ギヤ30をサブギヤ28から離間させて噛み合わない状態とすることができるようになっている。
【0031】またさらに、前述したガス室22には、結合手段を構成する第1のガスジェネレータ46及び第2のガスジェネレータ48が配置されている。第1のガスジェネレータ46は第1のカム板42に対応しており、作動することで第1のカム板42を移動させることができる。また、第2のガスジェネレータ48は第2のカム板44に対応しており、作動することで第2のカム板44を移動させることができる構成である。さらに、これらの第1のガスジェネレータ46及び第2のガスジェネレータ48は、所定の場合(例えば、乗員の体重、体格、急減速直前の車両速度、急減速の加速度等の検出結果に基づいて図示しない制御手段が車両急減速時の乗員の慣性エネルギが大きいことを検知した場合)に作動する。
【0032】次に本実施の形態の作用を説明する。
【0033】上記構成のウエビング巻取装置10では、スライドシャフト18の中間ギヤ30はメイントーションバー22のメインギヤ26に常に噛み合っており、また通常は、中間ギヤ30はその第1噛合部32がサブギヤ28に噛み合っている。これにより、スプール14とロックベース16とは、メイントーションバー22(メインギヤ26)及びサブトーションバー24(サブギヤ28)、スライドシャフト18(中間ギヤ30)によって連結されており、通常はこれらが一体に回転してウエビング50の引出し巻取りが自由とされる。
【0034】車両急減速時には、急減速直前の乗員の慣性エネルギ(乗員の体重、体格、急減速直前の車両速度、急減速の加速度等をパラメータとする)に応じて作用が異なるので、乗員の慣性エネルギの大小等の別に作用を説明する。
(乗員の慣性エネルギが大きい場合)乗員の体重が大きい場合または急減速直前の車両速度が高い場合は、乗員の慣性エネルギが大きい。この場合には、第1のガスジェネレータ46及び第2のガスジェネレータ48を共に不作動状態として第1のカム板42及び第2のカム板44がスライドシャフト18に係合しない状態とする。これにより、図2(A)に示す如く、中間ギヤ30がメインギヤ26に噛み合うのみならず、その第1噛合部32がサブギヤ28にも噛み合い、スプール14のロックベース16に対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバー22及びサブトーションバー24へ共に伝達する状態とする。
【0035】所定の加速度(減速度)が検知されるとロックプレート17がフレーム12に噛込み、ロックベース16のウエビング引出方向の回転が阻止される。このため、スプール14に作用するウエビング引張力は、メインギヤ26を介してメイントーションバー22へ伝達されると共にサブギヤ28を介してサブトーションバー24へ伝達されてウエビング引出し方向の回転力として作用する。このため、メイントーションバー22及びサブトーションバー24が共に捩れて大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウエビング50(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプール14がロックベース16に対してウエビング引出方向へ回転されてウエビング50が引出され、適切なエネルギ吸収が果たされる。このときのウエビング引張力とスプール14の回転量は、図2(B)で示される関係となり、所定のフォースリミッタ荷重(図2(B)のF2)がウエビング50に作用する。
(乗員の慣性エネルギが小さい場合)一方、乗員の慣性エネルギが小さい場合は、第2のガスジェネレータ48のみを作動させ第2のカム板44をスライドさせてスライドシャフト18に係合させる。これにより、図3(A)に示す如く、中間ギヤ30がメインギヤ26のみに噛み合い、サブギヤ28には噛み合わず、スプール14のロックベース16に対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバー22へのみ伝達しサブトーションバー24へは伝達しない状態とする。
【0036】この状態において所定の加速度(減速度)が検知されると、ロックベース16のウエビング引出方向の回転が阻止される。このため、スプール14に作用するウエビング引張力は、メインギヤ26を介してメイントーションバー22のみに伝達されてウエビング引出し方向の回転力として作用する。このため、メイントーションバー22のみが捩れて前述よりも小さなフォースリミッタ荷重が得られ、ウエビング50(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプール14がロックベース16に対してウエビング引出方向へ回転されてウエビング50が引出され、適切なエネルギ吸収が果たされる。このときのウエビング引張力とスプール14の回転量は、図3(B)で示される関係となり、所定のフォースリミッタ荷重(図3(B)のF1)がウエビング50に作用する。
(エネルギ吸収量を途中で変更する場合)またさらに、車両急減速の初期には大きな荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくしてウエビング50の引出量(乗員の移動量)を抑え、所定のエネルギ吸収後はより小さい荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を小さくすることによって乗員への負荷を軽減しようとする場合には、第1のガスジェネレータ46のみを作動させ第1のカム板42をスライドさせてスライドシャフト18に係合させる。これにより、図4(A)に示す如く、中間ギヤ30がメインギヤ26に噛み合うのみならず、中間ギヤ30の第2噛合部34がサブギヤ28にも噛み合う状態とする。これにより、スプール14のロックベース16に対するウエビング引出方向への相対回転力をメイントーションバー22へ伝達し、サブトーションバー24へは当初は伝達する状態とする。
【0037】この状態において所定の加速度(減速度)が検知されると、ロックベース16のウエビング引出方向の回転が阻止される。このため、スプール14に作用するウエビング引張力は、当初は、前述した如くメイントーションバー22及びサブトーションバー24へ共に伝達されてウエビング引出し方向の回転力として作用する。このため、メイントーションバー22及びサブトーションバー24が共に捩れて大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウエビング50(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプール14がロックベース16に対してウエビング引出方向へ回転されてウエビング50が引出され、適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0038】さらに、スプール14がロックベース16に対してウエビング引出方向へ所定量回転された時点で、中間ギヤ30の第2噛合部34においてその欠歯部分36がサブギヤ28に対応する状態となり、このため、スプール14に作用するウエビング引張力がサブトーションバー24に作用しなくなる。すなわち、この時点で、スプール14に作用するウエビング引張力は、メイントーションバー22のみに伝達されることになる。このため、メイントーションバー22のみが捩れて前述よりもフォースリミッタ荷重が低減され、ウエビング50(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプール14がロックベース16に対してウエビング引出方向へ回転されてウエビング50が引出され、エネルギ吸収が果たされる。このときのウエビング引張力とスプール14の回転量は、図4(B)で示される関係となり、フォースリミッタ荷重が当初よりも低減して(図4(B)のF2からF1)ウエビング50に作用する。これは、車両急減速の初期には荷重F2を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくしてウエビング50の引出量(乗員の移動量)を抑え、所定のエネルギ吸収後はより小さい荷重F1を付加して時間当りのエネルギ吸収量を小さくすることによって乗員への負荷を軽減することができるため、望ましい特性である。特に、エアバッグ装置を備えた車両においては、エアバッグと乗員との接触直前にフォースリミッタ荷重を減少することによって乗員に作用する荷重を減じることが可能で乗員の傷害をさらに軽減することができる。また、エアバッグ装置を備えない車両においても、ステアリングホイールやインストルメントパネル(ダッシュボード)等の車内物と乗員との接触直前にフォースリミッタ荷重を減少することによって乗員に作用する荷重を減じることが可能で乗員の傷害を軽減することができる。
【0039】なお、荷重F2を保持するスプール14の回転量(図4(B)のA部)は、中間ギヤ30の第2噛合部34(欠歯部分36)の範囲(長さ)によって設定可能である。すなわち、図5において破線にて示す如く、フォースリミッタ荷重がF2からF1に低減するタイミングを自由に設定することができる。例えば、中間ギヤ30の第2噛合部34の欠歯部分36を長く設定しておけば、フォースリミッタ荷重がF2からF1に低減するタイミングを早く設定できる。
【0040】以上説明した如く、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10では、車両急減速直前の乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重特性を選択して適切なエネルギ吸収を果たすことができる。
【0041】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係るウエビング巻取装置は、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更することができるという優れた効果を有している。
【出願人】 【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
【出願日】 平成12年6月13日(2000.6.13)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2001−354111(P2001−354111A)
【公開日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【出願番号】 特願2000−177299(P2000−177299)