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【発明の名称】 ガス発生器およびその使用方法
【発明者】 【氏名】和 田 直 樹

【氏名】中 根 章

【氏名】岡 田 順

【氏名】浦 本 清 弘

【要約】 【課題】可燃性ガスを用いたガス発生器において、発生圧力の多様化を実現する場合、従来では構造が複雑化するなどの問題点があった。

【解決手段】開裂可能な圧力隔壁31,32により閉塞した第1・第2の圧力室11,12と、第1・第2の圧力室11,12の両圧力隔壁31,32間に形成した第3圧力室13を備え、第1・第2の圧力室11,12には、燃焼速度が異なる可燃性ガスを加圧充填し、且つ着火手段41,42を設け、第3圧力室13には、ガス放出口3と、ガス放出口3を閉塞する開裂可能な圧力隔壁33を設けたガス発生器1とした。着火手段41,42の作動時期や時間差を選択することで、発生圧力を変化させると共に第3圧力室13で混合燃焼するガスの組成変更も可能にし、ガス放出速度の制御の自由度を高めた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定圧力で開裂する圧力隔壁により閉塞した第1圧力室と、同様の圧力隔壁により閉塞した第2圧力室と、第1および第2の圧力室の両圧力隔壁間に形成した第3圧力室を備え、第1および第2の圧力室には、燃焼速度が異なる可燃性ガスを加圧充填するとともに可燃性ガスへの着火手段を各々設け、第3圧力室には、室内外を連通させるガス放出口と、ガス放出口を閉塞し且つ所定圧力で開裂する圧力隔壁を設けたことを特徴とするガス発生器。
【請求項2】 可燃性ガスが、水素および炭化水素から選択されるガスと酸素を含むガスであって、第1および第2の圧力室に加圧充填する可燃性ガスの組成が異なることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】 第1圧力室に、水素および酸素を含む可燃性ガスを加圧充填すると共に、第2圧力室に、炭化水素および酸素を含む可燃性ガスを加圧充填したことを特徴とする請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】 第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力に対して、第3圧力室のガス放出口を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力を大きく設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項5】 第1および第2の圧力室を圧力隔壁同士が相対向する状態で同軸上に配置すると共に、第1および第2の圧力室の両圧力隔壁間に第3圧力室を形成し、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁が、圧力により膨脹変形した際に互いに接触する間隔で配置してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のガス発生器を用い、第1および第2の圧力室における両着火手段の作動時期を同時および非同時から選択してガス発生器を作動させることを特徴とするガス発生器の使用方法。
【請求項7】 第1および第2の圧力室における両着火手段の作動時期が非同時であって、その時間差を選択してガス発生器を作動させることを特徴とする請求項6に記載のガス発生器の使用方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の衝突時に乗員を保護するためのエアバッグシステムにおいて、エアバッグを膨脹展開させるガスの発生源として用いられるガス発生器およびその使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車のエアバッグシステムには固体のガス発生剤を用いたガス発生器が採用されていたが、近年では、可燃性ガスを用いたガス発生器が提案されている。可燃性ガスを用いたガス発生器としては、例えば、所定圧力で開裂可能な圧力隔壁により圧力容器を閉塞し、この圧力容器に、可燃性ガスと不活性ガスを含む混合ガスを加圧充填すると共に、混合ガスに対する電気式の着火手段を備えたものがある。
【0003】上記のガス発生器は、自動車の衝突を検出したセンサからの信号が入力されると、着火手段により混合ガスへの着火が行われ、混合ガス中の可燃性ガスを燃焼させてその圧力で圧力隔壁を開裂させ、エアバッグに対して瞬時にガスを放出する。このような可燃性ガスを用いたガス発生器は、固体のガス発生剤を用いたガス発生器に比べて、レイアウトの自由度向上、製造工程の簡素化および低コスト化などを実現するという利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、自動車のエアバッグシステムは、乗員に対する衝撃吸収能力等をより一層高めるためにさらなる研究開発が進められており、例えば乗員の体格や衝突の衝撃の大小に応じて、ガスの放出速度すなわちエアバッグの膨脹の度合いを変化させることが考えられている。この場合、ガス発生器としては、複数の子発生器の集合体としたものや、1つのガス発生器に対して複数の着火器を設けたものとし、各子発生器あるいは着火器の作動タイミングを変えることでガス放出速度を制御することが考えられる。
【0005】しかしながら、複数の子発生器や着火器を備えたガス発生器では、構造が複雑になることが明らかであり、また、ガス放出速度の選択幅を広げようとすれば、より多くの子発生器や着火器が必要となるので、可燃性ガスを用いたガス発生器の利点、すなわちレイアウトの自由度向上、製造工程の簡素化および低コスト化などが損なわれることとなる。このため、従来の可燃性ガスを用いたガス発生器にあっては、その利点を損なうことなくガス放出速度の自由な制御を達成することが困難であるという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0006】
【発明の目的】本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、可燃性ガスを用いたガス発生器において、レイアウトの自由度向上、製造工程の簡素化および低コスト化などを実現することができるうえに、ガス放出速度の制御の自由度を高めることができるガス発生器およびその使用方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるガス発生器は、請求項1として、所定圧力で開裂する圧力隔壁により閉塞した第1圧力室と、同様の圧力隔壁により閉塞した第2圧力室と、第1および第2の圧力室の両圧力隔壁間に形成した第3圧力室を備え、第1および第2の圧力室には、燃焼速度が異なる可燃性ガスを加圧充填するとともに可燃性ガスへの着火手段を各々設け、第3圧力室には、室内外を連通させるガス放出口と、ガス放出口を閉塞し且つ所定圧力で開裂する圧力隔壁を設けた構成とし、請求項2として、可燃性ガスが、水素および炭化水素から選択されるガスと酸素を含むガスであって、第1および第2の圧力室に加圧充填する可燃性ガスの組成が異なる構成とし、請求項3として、第1圧力室に、水素および酸素を含む可燃性ガスを加圧充填すると共に、第2圧力室に、炭化水素および酸素を含む可燃性ガスを加圧充填した構成とし、請求項4として、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力に対して、第3圧力室のガス放出口を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力を大きく設定した構成とし、請求項5として、第1および第2の圧力室を圧力隔壁同士が相対向する状態で同軸上に配置すると共に、第1および第2の圧力室の両圧力隔壁間に第3圧力室を形成し、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁が、圧力により膨脹変形した際に互いに接触する間隔で配置してある構成としており、上記の構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】また、本発明に係わるガス発生器の使用方法は、請求項6として、請求項1〜5のいずれかに記載のガス発生器を用い、第1および第2の圧力室における両着火手段の作動時期を同時および非同時から選択してガス発生器を作動させる構成とし、請求項7として、第1および第2の圧力室における両着火手段の作動時期が非同時であって、その時間差を選択してガス発生器を作動させる構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
【発明の作用】本発明の請求項1に係わるガス発生器では、第1および第2の圧力室において着火手段により可燃性ガスへの着火が行われると、燃焼による発生圧力で各々の圧力隔壁を開裂させて第3圧力室にガスを放出し、さらにその圧力でガス放出口の圧力隔壁を開裂させて外部にガスを放出する。ここで、ガス発生器では、第1および第2の圧力室に燃焼速度が異なる可燃性ガスを加圧充填しているので、両方の着火手段を同時に作動させた場合と、非同時に作動させた場合とで発生圧力(ガス放出速度)が変化する。
【0010】すなわち、第1および第2の圧力室の圧力隔壁は各圧力室での最大発生圧力よりも低い圧力で開裂するので、圧力隔壁が開裂した際、第1および第2の圧力室から第3圧力室に放出されたガスには各々の未燃成分が含まれており、第3圧力室で双方のガスが混合される。したがって、両着火手段を同時に作動させた場合には、第1および第2の圧力室の圧力隔壁の開裂により、第3圧力室の圧力が急激に上昇しつつ双方のガスが混合して燃焼し、その圧力でガス放出口の圧力隔壁が開裂する。これにより、ガス発生器の発生圧力は、短時間で最大発生圧力付近まで上昇する。
【0011】また、燃焼速度が速い可燃性ガスを加圧充填した第1(または第2)圧力室の着火手段を先に作動させた場合には、第1圧力室の圧力隔壁の開裂に続いて第2圧力室の圧力隔壁が開裂し、第3圧力室で双方のガスが混合して燃焼することにより、第3圧力室の圧力が上昇してガス放出口の圧力隔壁が開裂する。この場合には、燃焼速度が速い可燃性ガスの燃焼が先に行われ、その未燃成分が少なくなるので、第3圧力室でのガスの混合比は燃焼速度が遅い可燃性ガスの方が多いものとなる。したがって、ガス発生器の発生圧力は段階的に上昇する。なお、両着火手段の作動の時間差がきわめて短い場合には、第1圧力室の圧力隔壁が開裂した際に、第2圧力室内の圧力が上昇しているので、第2圧力室の圧力隔壁よりも先にガス放出口の圧力隔壁が開裂し、その後、第2圧力室の圧力隔壁が開裂することがある。この場合にも、ガス発生器の発生圧力は段階的に上昇する。
【0012】他方、燃焼速度が遅い可燃性ガスを加圧充填した第2(または第1)圧力室の着火手段を先に作動させた場合には、第2圧力室の圧力隔壁の開裂に続いて第1圧力室の圧力隔壁が開裂し、第3圧力室で双方のガスが混合して燃焼することにより、第3圧力室の圧力が上昇してガス放出口の圧力隔壁が開裂する。この場合には、燃焼速度が遅い可燃性ガスの燃焼が先に行われ、その未燃成分が少なくなるので、第3圧力室でのガスの混合比は燃焼速度が速い可燃性ガスの方が多いものとなる。したがって、ガス発生器の発生圧力は、初期において緩やかに上昇し、その後急に上昇する。なお、両着火手段の作動の時間差がきわめて短い場合には、第2圧力室の圧力隔壁が開裂した際に、第1圧力室内の圧力が上昇しているので、第1圧力室の圧力隔壁よりも先にガス放出口の圧力隔壁が開裂し、その後、第1圧力室の圧力隔壁が開裂することがある。この場合にも、ガス発生器の発生圧力は、初期において緩やかに上昇し、その後急に上昇する。
【0013】さらに、当該ガス発生器では、第1および第2の圧力室における圧力隔壁の開裂圧力を設定すること、第1および第2の圧力室に充填する可燃性ガスの燃焼速度を選択すること、両着火手段の作動の時間差を選択することで、第3圧力室でのガスの混合比が変化するので、発生圧力をより細かく制御し得ることとなり、また、ガス放出口に圧力隔壁を設けているので、可燃性ガスの未燃成分の外部放出が一時的に抑制され、第3圧力室での混合ガスの燃焼が効率良く行われる。
【0014】本発明の請求項2に係わるガス発生器では、可燃性ガスが、水素および炭化水素から選択されるガスと酸素を含むガスであり、第1および第2の圧力室に加圧充填する可燃性ガスの組成を異ならせているので、双方の可燃性ガスの燃焼速度が異なるものとなり、第1および第2の圧力室の着火手段の作動時期を選択することで発生圧力が変化する。
【0015】本発明の請求項3に係わるガス発生器では、第1圧力室に、水素および酸素を含む可燃性ガスを加圧充填すると共に、第2圧力室に、炭化水素(例えばメタン系炭化水素)および酸素を含む可燃性ガスを加圧充填したので、第1圧力室の可燃性ガスの燃焼速度が速く、第2圧力室の可燃性ガスの燃焼速度が遅いものになると共に、双方の燃焼速度の差がより充分なものとなり、第1および第2の圧力室の着火手段の作動時期を選択することで発生圧力が変化すると共に、発生圧力の変化幅が大きくなる。
【0016】本発明の請求項4に係わるガス発生器では、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力に対して、第3圧力室のガス放出口を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力を大きく設定したので、第1および第2の圧力室から第3圧力室にガスが放出された際に、可燃性ガスの未燃成分の無駄な外部放出をより充分に抑制し、第3圧力室における混合ガスの燃焼がより効率良く行われる。
【0017】本発明にの請求項5に係わるガス発生器では、第1および第2の圧力室を圧力隔壁同士が相対向する状態で同軸上に配置し、第1および第2の圧力室の両圧力隔壁間に第3圧力室を形成しているので、全体構造が非常にコンパクトなものとなる。そして、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁が、圧力により膨脹変形した際に互いに接触する間隔で配置してあるので、両着火手段の作動時期を非同時としたときに、その時間差を選択することで第1および第2の圧力室の圧力隔壁の開裂圧力が変化し、結果として発生圧力が変化する。
【0018】つまり、圧力隔壁は、室内外の圧力差により開裂するので、相対向する圧力隔壁が膨脹変形して接触する構造の場合、自己の圧力室の圧力が相手側の圧力室の圧力よりも高くなければ開裂は起こらない。したがって、両着火手段の作動の時間差を選択して圧力差を制御することにより、実質的に圧力隔壁の開裂圧力を変化させることが可能となる。
【0019】より具体的には、例えば、第1および第2の圧力室における圧力隔壁の開裂圧力が、各々の可燃性ガスが半分消費された時点の圧力で開裂するように設定した構造において、第1圧力室の着火手段を作動させた場合、そのままでは第1圧力室の圧力隔壁は可燃性ガスが半分消費された時点で開裂することになるが、その開裂前に第2圧力室の着火手段を作動させると、互いに膨脹変形した圧力隔壁が接触するので、第1圧力室の圧力隔壁は第2圧力室の圧力隔壁により設定圧力での開裂が一時的に妨げられ、設定圧力よりも高い圧力すなわち可燃性ガスを半分以上消費した時点の圧力で開裂する。このとき、第1圧力室の可燃性ガスは、圧力隔壁が開裂するまでの時間経過に伴って、燃焼の進行とともに未燃成分が減少する。したがって、第1(または第2)圧力室の着火手段を作動させてから第2(または第1)圧力室の着火手段を作動させるまでの時間差を選択すれば、実質的に圧力隔壁の開裂圧力が変化し、これにより可燃性ガスの未燃成分の量が変化し、圧力隔壁の開裂後における第3圧力室でのガスの混合比が変化して発生圧力も変化することとなる。
【0020】本発明の請求項6に係わるガス発生器の使用方法では、両着火手段の作動時期を同時にした場合と、第1圧力室の着火手段を先に作動させた場合と、第2圧力室の着火手段を先に作動させた場合とで、請求項1〜5の作用として説明したように各々の発生圧力が変化する。
【0021】本発明の請求項7に係わるガス発生器の使用方法では、両着火手段の作動時期が非同時とした際に、その時間差を選択することにより、とくに請求項5の作用として説明したように第1および第2の圧力室の圧力隔壁の開裂圧力が変化し、結果として発生圧力が変化する。
【0022】
【発明の効果】本発明の請求項1に係わるガス発生器によれば、圧力隔壁により閉塞した第1および第2の圧力室と、両圧力室間に形成した第3圧力室と、第3圧力室のガス放出口を閉塞する圧力隔壁を備えると共に、第1および第2の圧力室に燃焼速度が異なる可燃性ガスを加圧充填した構成としたことにより、構造が比較的簡単なものとなり、レイアウトの自由度向上、製造工程の簡素化および低コスト化などを実現することができるうえに、第1および第2の圧力室における着火手段の作動時期を選択するだけで発生圧力を少なくとも3つの形態に変化させることができ、さらに、各圧力隔壁の開裂圧力や両着火手段の作動の時間差を調整することで発生圧力をより細かく制御することが可能になり、簡単な構造でありながらガス放出速度の制御の自由度を大幅に高めることができる。
【0023】本発明の請求項2に係わるガス発生器によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、可燃性ガスとして水素および炭化水素から選択されるガスと酸素を含むガスを用いることから、例えば自動車のエアバッグシステムのガス発生源として好適な発生圧力および発生圧力の変化形態を得ることができる。
【0024】本発明の請求項3に係わるガス発生器によれば、請求項2と同様の効果を得ることができるうえに、第1圧力室に水素および酸素を含む可燃性ガスを、第2圧力室に炭化水素および酸素を含む可燃性ガスを加圧充填したことにより、双方の燃焼速度の差をより充分に確保して発生圧力の変化幅を大きくすることができ、これにより発生圧力の制御の自由度をより一層拡大することができる。
【0025】本発明の請求項4に係わるガス発生器によれば、請求項1〜3と同様の効果を得ることができるうえに、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力に対して、第3圧力室のガス放出口を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力を大きく設定したことにより、可燃性ガスの未燃成分の無駄な外部放出をより充分に抑制して第3圧力室における混合ガスの燃焼効率を高めることができ、ガス発生器のさらなる機能向上に貢献することができる。
【0026】本発明の請求項5に係わるガス発生器によれば、請求項1〜4と同様の効果を得ることができるうえに、第1〜第3の圧力室を同軸上に配置することにより、構造をきわめてコンパクトなものにすることができ、レイアウトの自由度向上、製造工程の簡素化および低コスト化などの実現に大きく貢献し得ると共に、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁が、圧力により膨脹変形した際に互いに接触する配置としたことにより、両着火手段の作動の時間差を選択するだけで発生圧力をより細かく変化させることができ、ガス放出速度の制御の自由度をより一層高めることができる。
【0027】本発明の請求項6に係わるガス発生器の使用方法によれば、請求項1〜5に記載のガス発生器を用い、両着火手段の作動時期を同時および非同時から選択するだけのきわめて簡単な操作によって、発生圧力を少なくとも3つの形態に変化させることができ、例えば、自動車のエアバッグシステムのガス発生源として用いた場合には、乗員の体格や衝突の衝撃の大小などに応じて、発生圧力すなわちガス放出速度を自在に変化させることができる。
【0028】本発明の請求項7に係わるガス発生器の使用方法によれば、請求項6と同様の効果を得ることができるうえに、両着火手段の作動時期が非同時とした際に、その時間差を選択することにより、発生圧力をより細かく変化させることができ、ガス放出速度の制御の自由度をより拡大することができる。
【0029】
【実施例】以下、図面に基づいて、本発明に係わるガス発生器の実施例ならびにガス発生器の使用方法を説明する。なお、この実施例のガス発生器は、自動車のエアバッグシステムのガス発生源として用いるものである。
【0030】図1に示すガス発生器1は、第1圧力室11を形成する有底円筒形の第1圧力容器21と、第2圧力室12を形成する同じく有底円筒形の第2圧力室22と、両圧力容器21,22を開口部同士が対向する状態で同軸上に保持する環状の保持部材2を備えている。第1および第2の圧力容器21,22ならびに保持部材2は、例えば高張力鋼製である。
【0031】第1および第2の圧力室11,12は、各々の圧力容器21,22の開口部に溶接で固定した圧力隔壁31,32により閉塞してある。保持部材2内には、相対向する圧力隔壁31,32の間で第3圧力室13が形成してある。また、保持部材2には、第3圧力室13から外部に連通するガス放出口3が形成(数がとくに限定されない)してあり、ガス放出口3にはこれを閉塞する圧力隔壁33が設けてある。
【0032】圧力隔壁31〜33は、ステンレス、鉄およびアルミニウム等から選択された金属を素材とする薄肉のディスクであって、所定圧力で開裂するように材質や厚さが設定されている。これらの圧力隔壁31〜33は、例えば中心から放射状に溝を形成し、溝により肉厚が小さくなった部分を開裂促進用の脆弱部とし、圧力を受けた際に、脆弱部で破断を生じさせて花弁状に開裂変形させるようにすることができる。
【0033】ここで、各圧力隔壁31〜33は、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁31,32の開裂圧力に対して、ガス放出口3を閉塞する圧力隔壁33の開裂圧力を大きく設定してあり、設定圧力の差を10MPa以上としている。また、第1および第2の圧力室を閉塞する圧力隔壁31,32は、圧力により膨脹変形した際に互いに接触する間隔で配置してある。双方の距離は、圧力隔壁の大きさや材質等によって異なるが、例えば両圧力隔壁31,32の半径の和よりも小さいものとするのが良い。
【0034】さらに、ガス発生器1は、第1および第2の圧力室11,12に、着火手段41,42を備えると共に、燃焼速度の異なる可燃性ガスが加圧充填してある。着火手段41,42は、一対の電極4a,4bの間にニクロム線4cを設けたもので、外部から通電により発熱して可燃性ガスへの着火を行う。
【0035】可燃性ガスには、水素および炭化水素から選択されるガスと酸素を含むガスが用いられる。この実施例では、第1および第2の圧力室11,12に加圧充填する可燃性ガスの組成が異なるようにしており、第1圧力室11に水素および酸素を含む可燃性ガスを、第2圧力室12にメタンおよび酸素を含む可燃性ガスを加圧充填してある。これにより、第1圧力室11の可燃性ガスの燃焼速度が速く、第2圧力室12の可燃性ガスの燃焼速度が遅いものとなり、しかも、双方の燃焼速度の差が充分なものとなるので、後の発生圧力の変化幅が大きくなり、ガス放出速度の制御の自由度がより拡大される。
【0036】ここで、第1および第2の圧力容器11,12に可燃性ガスを各々加圧充填すると、図2に示すように、双方の圧力隔壁31,32が膨脹変形して互いに接近した状態となる。なお、両圧力隔壁31,32に設定した開裂圧力は、当然のことながら可燃性ガスの充填圧力に耐え得るものであり、可燃性ガスへの着火により圧力が上昇する過程において、例えば可燃性ガスが半分消費された時点の圧力で開裂するように設定してある。
【0037】次に、上記構成を備えたガス発生器1の動作と共に、本発明に係わるガス発生器の使用方法を説明する。
【0038】ガス発生器1は、第1〜第3の圧力室11〜13を同軸上に配置したことにより、図1からも明らかなように構造がきわめてコンパクトである。そして、外部からの信号により着火手段41,42を作動させ、可燃性ガスの燃焼により生じたガスを瞬時に放出することになるが、このとき、両着火手段41,42を同時に作動させた場合と、非同時に作動させた場合とで発生圧力(ガス放出速度)が変化する。
【0039】両着火手段41,42を同時に作動させた場合には、第1および第2の圧力室21,22の可燃性ガスが燃焼し、圧力が上昇する過程で双方の圧力隔壁31,32が膨脹変形して開裂し、図3に示すように、双方からのガスが第3圧力室13に放出される。このとき、先に述べたように双方の圧力隔壁31,32は、可燃性ガスが半分消費された時点の圧力で開裂するように設定してあるから、第3圧力室13に放出されたガスには半分の未燃成分が含まれていることになる。したがって、第3圧力室13では、双方からのガス放出により圧力が急激に上昇しつつ双方のガスが混合して燃焼し、この際、ガス放出孔3を閉塞する圧力隔壁33により未燃成分の放出が一時的に抑制されてガスの混合燃焼が効率良く行われ、その後、図4に示すように、ガス放出口3の圧力隔壁33が開裂してガスが放出される。このときのガス発生器1の発生圧力は、短時間で最大発生圧力付近まで上昇する。
【0040】ここで、圧力隔壁は、室内外の圧力差により開裂するので、相対向する圧力隔壁が膨脹変形して接触する構造の場合、自己の圧力室の圧力が相手側の圧力室の圧力よりも高くなければ開裂は起こらない。しかし、上記のように両着火手段41,42を同時に作動させた場合であっても、双方の可燃性ガスの燃焼速度が異なると共に、第1および第2の圧力室11,12の圧力上昇や圧力隔壁31,32の膨脹変形が全く一致することは有り得ないので、圧力隔壁31,32は確実に開裂する。
【0041】第1圧力室11の着火手段41を先に作動させた場合には、第1圧力室11の圧力隔壁31が開裂するのに続いて第2圧力室12の圧力隔壁32が開裂し、第3圧力室13で双方のガスが混合して燃焼することにより、第3圧力室13の圧力が上昇してガス放出口3の圧力隔壁33が開裂する。このとき、第1圧力室11の可燃性ガスは水素および酸素を含む燃焼速度の速いガスであり、第2圧力室12の可燃性ガスはメタンおよび酸素を含む燃焼速度の遅いガスであるから、第3圧力室13における混合ガスは、燃焼速度の遅いガスが多いものとなる。つまり、燃焼速度の速い可燃性ガスが先に燃焼し、その後、燃焼速度の遅い可燃性ガスを主とする混合ガスが燃焼するので、ガス発生器1の発生圧力は段階的に上昇する。
【0042】なお、両着火手段41,42の作動の時間差がきわめて短い場合には、第1圧力室11の圧力隔壁31が開裂した際に、第2圧力室12内の圧力が上昇しているので、第2圧力室12の圧力隔壁32よりも先にガス放出口3の圧力隔壁33が開裂し、その後、第2圧力室12の圧力隔壁32が開裂することがある。この場合にも、第3圧力室13における混合ガスは燃焼速度の遅いガスが多いものであるから、ガス発生器1の発生圧力は段階的に上昇する。
【0043】これに対して、第2圧力室12の着火手段42を先に作動させた場合には、第2圧力室12の圧力隔壁32が開裂するのに続いて第1圧力室11の圧力隔壁31が開裂し、第3圧力室13で双方のガスが混合して燃焼することにより、第3圧力室13の圧力が上昇してガス放出口3の圧力隔壁33が開裂する。このときには、第3圧力室13における混合ガスは、燃焼速度の速いガスが多いものとなる。つまり、燃焼速度の遅い可燃性ガスが先に燃焼し、その後、燃焼速度の速い可燃性ガスを主とする混合ガスが燃焼するので、ガス発生器1の発生圧力は初期において緩やかに上昇し、その後急に上昇する。
【0044】なお、両着火手段41,42の作動の時間差がきわめて短い場合には、第2圧力室12の圧力隔壁32が開裂した際に、第1圧力室11内の圧力が上昇しているので、第1圧力室11の圧力隔壁31よりも先にガス放出口3の圧力隔壁33が開裂し、その後、第1圧力室11の圧力隔壁31が開裂することがある。この場合にも、第3圧力室13における混合ガスは燃焼速度の速いガスが多いものであるから、ガス発生器1の発生圧力は初期において緩やかに上昇し、その後急に上昇する。
【0045】さらに、ガス発生器1では、先に述べたように圧力隔壁が室内外の圧力差により開裂することから、両着火手段41,42を作動させる時間差を選択することで発生圧力をより細かく制御することが可能になる。
【0046】つまり、第1および第2の圧力室11,12における圧力隔壁31,32の開裂圧力が、各々の可燃性ガスが半分消費された時点の圧力で開裂するように設定してあるので、第1圧力室11の着火手段41を作動させ、その圧力隔壁31が開裂する前に第2圧力室12の着火手段42を作動させると、互いに膨脹変形した圧力隔壁31,32が接触して第1圧力室11の圧力隔壁31の開裂が一時的に妨げられる。これにより、第1圧力室11の圧力隔壁31は、設定圧力よりも高い圧力すなわち可燃性ガスを半分以上消費した時点の圧力で開裂する。このとき、第1圧力室11の可燃性ガスは、圧力隔壁31が開裂するまでの時間が長くなるので、燃焼が進行して未燃成分が減少する。したがって、第1圧力室11の着火手段41を作動させてから第2圧力室12の着火手段42を作動させるまでの時間差を選択すれば、実質的に圧力隔壁31の開裂圧力が変化し、また、各圧力隔壁31〜33の開裂順序が変化し、これにより可燃性ガスの未燃成分の量が変化し、圧力隔壁31,32の開裂後における第3圧力室13でのガスの混合比が変化して発生圧力も変化する。
【0047】このように、上記実施例のガス発生器1およびその使用方法によれば、きわめて簡単な構造であるうえに、着火手段41,42の作動時期を選択するだけで、発生圧力が少なくとも3つの形態に変化することとなり、また、各圧力隔壁31,32,33の開裂圧力、第1および第2の圧力室11,12に充填する各可燃性ガスの燃焼速度、および作動の時間差を選択することで発生圧力の細かい制御が可能となり、ガス放出速度の制御の自由度が著しく高いものとなる。
【0048】(実施例1)両端部を封止した高張力鋼管から成る円筒状の圧力容器内に、10Mpaで開裂する薄板状の金属製圧力隔壁2枚を所定間隔に配置して、溶接により両圧力隔壁の全周を固定し、圧力容器の両端側に第1および第2の圧力室を形成すると共に、両圧力隔壁間に第3圧力室を形成した。このとき、第1および第2の圧力室の容積を150cmとし、両圧力隔壁の間隔を20mmとした。また、第1および第2の圧力室には、着火手段として、外部と気密状態で一対の電極を設け、電極間に線径30μmのニクロム線を設けた。さらに、第3圧力室に、外部と連通するガス放出口を設け、ガス放出口には、30MPaで開裂する薄板状で金属製圧力隔壁を溶接により密閉固定した。
【0049】そして、第1圧力室には、別途設けたガス導入口から、水素30vol%、酸素15vol%、アルゴン55vol%の可燃性ガスを5MPaの圧力で加圧充填してガス導入口を封止し、第2圧力室には、燃焼速度(組成)が異なる可燃性ガスとして、年即速度メタン10vol%、酸素20vol%、アルゴン70vol%の可燃性ガスを5MPaの圧力で加圧充填してガス導入口を封止し、実施例1のガス発生器を得た。
【0050】(実施例2)実施例1のガス発生器に対して、ガス放出口を閉塞する圧力隔壁の開裂圧力を20MPaとした以外は同一構成にして、実施例2のガス発生器を得た。
【0051】(実施例3)実施例1のガス発生器に対して、第2圧力室に加圧充填した可燃性ガスの組成を水素15vol%、酸素17vol%、アルゴン68vol%とした以外は同一構成にして、実施例3のガス発生器を得た。
【0052】(比較例1)比較例1として、従来形式の45リッター運転席エアバッグ用のガス発生器を用いた。このガス発生器は、アジ化ナトリウム(NaN3)を主成分としたガス発生剤を備え、通電により作動する着火手段によりガス発生剤を熱分解してガスを発生させる機構である。
【0053】(試験例)上記実施例1〜3および比較例1のガス発生器を容積60リッターの耐圧容器内に収納し、耐圧容器内で作動させてガスの放出を行い、その時の耐圧容器内の圧力変化を測定した。このとき、実施例1〜3については、第1および第2の圧力室の着火手段を同時に作動させる試験と、第1圧力室の着火手段を5msec先に作動させる試験と、第2圧力室の着火手段を5msec先に作動させる試験を行った。試験の結果を図5〜図7に示す。
【0054】図5〜図7のグラフから明らかなように、実施例1〜3のガス発生器は、両着火手段を同時に作動させた場合には、いずれも比較例1よりも短時間で発生圧力が上昇することを確認した。また、第1圧力室の着火手段を先に作動させた場合には、発生圧力が段階的に変化し、第2圧力室の着火手段を先に作動させた場合には、発生圧力が初期において緩やかに上昇し、その後急勾配で上昇することを確認した。つまり、着火タイミングをコントロールすることにより、容器内の見かけのガス組成を変更することができ、従来の比較例1に比べて、より速いガス吹き出しや二段階となる吹き出し、また、かなり緩やかな吹き出しが実現可能となり、それに応じたエアバッグの内圧や形状を達成し得ることを確認した。
【出願人】 【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成12年6月12日(2000.6.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−354106(P2001−354106A)
【公開日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【出願番号】 特願2000−175393(P2000−175393)