トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般

【発明の名称】 エアバッグ
【発明者】 【氏名】雨森 一朗

【要約】 【課題】エアバッグ膨張後、乗員を受け止めた直後から速やかに且つ十分に乗員の運動エネルギーを吸収することができるエアバッグを提供する。

【解決手段】エアバッグ1は、一対のサイドパネル2,2とフロントパネル3とを縫い合わせてなり、先端側に乗員対向面4を備えている。各サイドパネル2にはベントホール6が設けられている。これらのサイドパネル2,2はエアバッグ膨張時において乗員対向面4と略平行となるように配置された内部パネル7によって互いにつながっており、エアバッグ1は乗員対向面4と略平行な方向に拡張することが阻止されている。これにより、エアバッグ1は、膨張時のエアバッグ内圧が不十分な場合であっても、エアバッグ1に乗員が突っ込んできた直後から速やかに且つ十分にエアバッグ内部のガスが圧縮されてエアバッグ内圧が上昇し、乗員を受け止めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 乗員の胸に対向する乗員対向面を有するエアバッグにおいて、該乗員対向面と略平行方向のエアバッグの拡張を防止するための、膨張したエアバッグの左右の側面をつなぐ内部パネルが設けられていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】 乗員の胸に対向する乗員対向面を有するエアバッグにおいて、該乗員対向面と略平行方向のエアバッグの拡張を防止するための、膨張したエアバッグの上下の側面をつなぐ内部パネルが設けられていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項3】 請求項1又は2において、エアバッグが膨張した状態において前記内部パネルは前記乗員対向面と略平行となるように配置されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項において、内部パネルの一部が折り返されて相互に重なり合い、且つ結合手段によって結合されており、この結合手段は該内部パネルに所定以上の張力が加えられたときに結合を解除するものであることを特徴とするエアバッグ。
【請求項5】 請求項4において、該結合手段は縫合であることを特徴とするエアバッグ。
【請求項6】 請求項1ないし3のいずれか1項において、該内部パネルは、所定以上の張力が加えられたときに延伸するものであることを特徴とするエアバッグ。
【請求項7】 請求項1ないし3のいずれか1項において、該内部パネルは、所定以上の張力が加えられたときに引き裂かれることを特徴とするエアバッグ。
【請求項8】 請求項1ないし3のいずれか1項において、該内部パネルは、所定以上の張力が加えられたときに断裂することを特徴とするエアバッグ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、緊急時に膨張して人体を保護するエアバッグに係り、特に、膨張時の形状が拘束されたエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】周知の通り、エアバッグは、例えば自動車の乗員保護装置等に適用される。一般に、このようなエアバッグは、布材等により袋体状に形成され、柔軟に形状を変化させることができるように構成されている。そして、このようなエアバッグを備えた乗員保護装置は、このエアバッグを膨張させるためのガスを発生させるインフレータを有しており、車両衝突時等の緊急時にはこのインフレータをガス噴出作動させてエアバッグにガスを供給し、エアバッグを膨張させ、このエアバッグを車両室内に展開することによって乗員を保護するものとなっている。
【0003】このようなエアバッグは、通常、膨張した状態において乗員の胸部等の部位に対向する乗員対向面を有している(以下、このようなエアバッグの乗員対向面が配置された側を「前端側」或いは「前方」と称し、この乗員対向面と対向する側を「後端側」或いは「後方」と称する場合がある。)。
【0004】車両衝突時において、乗員は、この衝突による衝撃により大きな運動エネルギーを伴って乗員対向面に突っ込んでくる。このとき、エアバッグは、その内部に充填されたガスによる内圧によって反力を生ぜしめて乗員を受け止める。また、通常、このようなエアバッグには内部のガスを流出させるためのベントホールが設けられており、エアバッグに乗員が突っ込んできた後にこのベントホールからエアバッグ内部のガスを流出させることにより、エアバッグ内圧が過度に上昇することが防止されると共に乗員対向面が乗員に適度な反力を与えつつ乗員からの押圧力によりゆるやかに後退し、乗員の運動エネルギーをスムーズに吸収することができるようになる。
【0005】第15図は膨張したエアバッグが乗員の運動エネルギーを吸収する際の態様の変化を模式的に示す説明図である。第15図中、(a)図は乗員が膨張したエアバッグに突っ込んだ直後におけるエアバッグの態様を示す図であり、(b)図は乗員の運動エネルギーを吸収する途中のエアバッグの態様を示す図である。
【0006】車両衝突時等の緊急時にインフレータがガス噴出作動した際には、エアバッグは、まず第15図(a)において二点鎖線によって示したほぼ全開の形状に膨張し、乗員を受け止める態勢となる。このように膨張したエアバッグに乗員が突っ込んできた直後においては、エアバッグは、その乗員対向面が乗員の各部位に合わせて柔軟に変形すると共にその内圧によって反力を生ぜしめ、乗員を受け止める。その後、エアバッグは、ベントホールからこのエアバッグ内部のガスを流出させることにより、乗員に対して過剰な反力を与えることなく乗員対向面をゆるやかに後退させて乗員の運動エネルギーを吸収し、乗員を保護する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなエアバッグにおいては、インフレータがガス噴出作動してこのエアバッグが膨張した後、高い運動エネルギーを伴って乗員がこのエアバッグに突っ込んできた時点におけるエアバッグ内圧がやや低いことがある。
【0008】このような場合、乗員は、エアバッグに突っ込んでからこのエアバッグによって受け止められるようになるまでの間、エアバッグから十分な反力を得られないままにこのエアバッグを押しつぶすように移動して自らエアバッグ内圧を上昇させる必要があり、これにより、エアバッグによる乗員の運動エネルギーの吸収の開始が遅れることとなる。
【0009】このような問題を解消する方法の1つとして、このガスの発生源であるインフレータの出力を大きくすることが挙げられるが、大出力のインフレータは高価であると共に、エアバッグや取付具にかかる応力が大きくなるため、それら他部品も強度の高い設計とする必要があり、コストや重量等の点から好ましくない。
【0010】本発明の発明者らは、乗員がエアバッグに突っ込んできた時点でエアバッグ内圧が十分な値に達していない場合にエアバッグによる乗員の運動エネルギーの吸収の開始が大幅に遅れ、且つエアバッグが大きく偏平して乗員対向面とエアバッグ後端部との間隔が著しく小さくなってしまうことの原因として、このようなエアバッグは、その側部が外方、とりわけ乗員対向面と略平行な方向に拡張するように変形することが可能となっており、エアバッグ内部のガスが容易にエアバッグ側部側に流動することから乗員対向面の後退によるガスの圧縮効果が小さいことに一因があることを見出した。
【0011】本発明は、エアバッグの乗員対向面と略平行な方向への拡張を拘束してエアバッグの側方への変形量を小さくし、乗員が突っ込んできた時点でエアバッグ内圧が不十分な場合であっても、乗員が突っ込んだ直後から速やかに且つ十分にエアバッグ内部のガスを圧縮し、エアバッグ内圧を上昇させて乗員の運動エネルギーを吸収すると共に、乗員対向面が十分な大きさに確保され、この乗員対向面に突っ込んできた乗員をしっかりとサポートすることが可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のエアバッグは、乗員の胸に対向する乗員対向面を有するエアバッグにおいて、該乗員対向面と略平行方向のエアバッグの拡張を防止するための、膨張したエアバッグの左右或いは上下の側面をつなぐ内部パネルが設けられていることを特徴とするものである。そして、エアバッグが膨張した状態において前記内部パネルは前記乗員対向面と略平行となるように配置されていることが好ましい。
【0013】かかる本発明のエアバッグは、乗員対向面と略平行に配置された内部パネルにより左右或いは上下の対向する側面同士がつながっていることから、エアバッグ膨張時において、これらの対向する側面がエアバッグ内圧により所定以上に膨出したり、このエアバッグに乗員が突っ込んで乗員対向面を後退させた際に、エアバッグ内部のガスがこの乗員対向面を避けるように側部へ移動してエアバッグが乗員対向面と略平行な方向へ拡張することがないため、乗員がこのエアバッグに突っ込んできた時点でエアバッグ内圧が十分に高まっていない場合であっても、乗員が乗員対向面を大幅に後退させる前に急速にエアバッグ内部のガスが圧縮されてエアバッグ内圧が上昇し、実質的に乗員がエアバッグに突っ込んできた直後から速やかに且つ十分に反力を生ぜしめて乗員を受け止め、その運動エネルギーを吸収することが可能なものとなっている。
【0014】本発明のエアバッグにおいて、内部パネルは、その一部が折り返されて相互に重なり合い、且つ結合手段によって結合されており、この結合手段は該内部パネルに所定以上の張力が加えられたときに結合を解除するものであることが好ましく、この場合、結合手段として、所定以上の張力が加えられたときに断裂する縫合糸等を用いた縫合によって内部パネルの一部を結合してもよい。
【0015】かかる構成とすることにより、エアバッグ膨張時においてエアバッグ内圧が所定圧力以下のときには、内部パネルの一部が結合され、その長さが減じた状態でこのエアバッグの対向する側面同士をつなぐものとすることができる。このとき、エアバッグの内部パネルによってつながれた対向する側面同士の間隔は、内部パネルの結合された該一部が非結合となっている状態でつながれているときの間隔と比べて小さく、エアバッグの拡張が防止され、インフレータのガス噴出作動によって急速にエアバッグ内圧が上昇するようになる。そして、エアバッグに乗員が突っ込んでエアバッグ内圧が高まり、このエアバッグの該対向する側部同士をつなぐ内部パネルの両端側が所定値以上の張力で相離反する方向へ引張られるようになった際には、例えば内部パネルの該一部が所定値以上の張力が加えられたときに断裂する縫合糸を用いた縫合によって結合している場合には、この縫合糸が断裂してこの内部パネルの該一部の結合が解除され、この内部パネルによってつながれたエアバッグの側面はエアバッグ拡張方向へ膨出することが許容されるようになり、このエアバッグの容積の増大によってエアバッグ内圧が過度に上昇することが防止されると共に、エアバッグが乗員の側方まで拡張して十分に乗員をサポートし、エアバッグ中央付近にてより安定的に乗員を受け止めるものとなる。
【0016】この内部パネルは、所定以上の張力が加えられたときに断裂するものであってもよい。
【0017】また、本発明のエアバッグにおいては、内部パネルは、上記のような構成に代わって所定以上の張力が加えられたときに延伸するものであってもよく、所定以上の張力が加えられたときに引き裂かれるように構成されてもよい。
【0018】このように構成された場合にも、内部パネルは前述の構成と同様の効果を奏するものとなる。また、この内部パネルを十分な長さに亘って延伸又は引裂き可能なものとし、この内部パネルによってつながったエアバッグの側面が、そのエアバッグ拡張方向への膨出が許容された後にも継続してこの内部パネルの延伸或いは引裂きを行うようにした場合、この内部パネルの延伸或いは引裂きに要する張力(荷重)は、転じてこのエアバッグの側部の膨出に抗う抗力となることから、該側面の膨出が許容された直後にエアバッグが突発的に拡張してその内圧が急激に変化することが防止され、なおかつエアバッグに突っ込んできた乗員の運動エネルギーの一部がこの内部パネルの延伸又は引裂きに要する荷重として費やされるため、このように構成された内部パネルを備えたエアバッグは、きわめてスムーズに乗員を受け止め且つ十分に乗員の運動エネルギーを吸収できるものとなる。なお、内部パネルを延伸可能に構成した場合、エアバッグが最大まで膨張したときにこの内部パネルの長さが50〜300%伸びることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】第1図は本発明の実施の形態に係るエアバッグとしての自動車の助手席用エアバッグの膨張完了時の斜視図、第2図はこのエアバッグの部分断面斜視図、第3図は第1図のIII−III線に沿う断面図である。
【0021】第1〜3図に示す助手席用エアバッグ1は、1対のサイドパネル2と、フロントパネル3とを縫合してなり、後端部が先細となった略錐体形状を有している。このエアバッグ1の前端側は、車両衝突時等の緊急時においてこのエアバッグ1が膨張した際に乗員と対向し、乗員を受け止めるための乗員対向面4となっており、後端側には、このエアバッグ1を膨張させるためのガス発生源としてのインフレータ(図示略)からのガスをこのエアバッグ1内に導入するための開口5が設けられている。また、各サイドパネル2には、エアバッグ内のガスを流出させ、このエアバッグ1に乗員が突っ込んできた際にエアバッグ内圧が過度に上昇することを防止し、且つこのエアバッグ1がスムーズに乗員の運動エネルギーを吸収することができるようにするためのベントホール6が設けられている。
【0022】このエアバッグ1の左右のサイドパネル2,2は、その前後方向(乗員対向面4と開口5とを結ぶ方向。以下、同様。)の途中部分において、対向する所定部分同士が内部パネル7によって互いに連結されている。この内部パネル7は、所定の長さ及び幅を有した面状のものであり、エアバッグ1が膨張した状態において乗員対向面4と略平行となるように配置され、エアバッグ膨張途中並びにこのエアバッグ1に乗員が突っ込んできた直後において各サイドパネル2,2が互いに所定間隔以上離反することを阻止するように構成されている。本実施の形態においては、この内部パネル7は、所定寸法を有する略方形の布或いは樹脂シート等から構成されており、エアバッグ1の前後方向の中間付近において、乗員対向面4と略平行な断面内のほぼ中央に配置されている。
【0023】このエアバッグ1は、その後端部の開口5の周縁部がエアバッグ収納用コンテナの開口(図示略)の周縁部と連結される。このコンテナ(図示略)内にはインフレータが設置されており、インフレータから発生したガスは、これらの開口を通じてエアバッグ1内に導入される。このエアバッグ1は、折り畳まれてコンテナ内に収容される。そして、このコンテナの開口部を覆うようにモジュールカバー(図示略)が装着され、図示しない自動車のインストルメントパネル等に設置される。そして、車両衝突時等の緊急時には、このエアバッグ1は、ガス噴出作動したインフレータからのガスによって膨張し、車両室内に展開する。
【0024】この際、エアバッグ1は、その前後方向の途中部分において、左右のサイドパネル2,2が乗員対向面4と略平行に配置された内部パネル7によって互いに所定間隔以上は離反しないように連結されており、エアバッグ1の該途中部分は乗員対向面4と略平行な方向には拡張し難いものとなっている(本実施の形態においては、第3図に示すように、膨張を完了した状態におけるエアバッグ1はむしろエアバッグ1の該途中部分が乗員対向面4と略平行な断面に沿ってエアバッグ内部側へくびれた形状となるように構成されており、内部パネル7によってサイドパネル2,2同士を連結せずに膨張させた場合に比べてその容積が小さいものとなっている。)。
【0025】これにより、エアバッグ膨張途中においてインフレータからのガスがエアバッグ1の乗員対向面4と略平行な方向への膨出に浪費されることはなく、エアバッグ1の内圧は急速に上昇すると共に、このようなエアバッグ1の乗員対向面4に乗員が突っ込んできた時点でエアバッグ内圧が不十分であった場合でも、エアバッグ1が乗員対向面4と略平行な方向へ拡張することがなく、乗員が乗員対向面4を大幅に後退させる前に急速にエアバッグ内部のガスが圧縮されてエアバッグ内圧が上昇し、早期のうちに乗員を受け止めることが可能となっている。
【0026】もちろん、エアバッグ1が乗員を受け止めた後はベントホール6からエアバッグ内部のガスが流出し、乗員対向面4は、乗員に対して十分な反力を与えながらゆるやかに後退して乗員の運動エネルギーを吸収する。
【0027】以下に、第4図を参照してこのエアバッグ1と、両側のサイドパネル同士をつなぐ内部パネルが設けられていないこと以外はこのエアバッグ1と同様に構成された従来型のエアバッグとを比較して本発明のエアバッグの効果を説明する。
【0028】第4図(a)は、エアバッグが膨張してこのエアバッグに乗員が突っ込んだ際にエアバッグが乗員に対して与える反力の経時変化を示すグラフであり、第4図(b)は、乗員対向面の後退量に対するこのエアバッグの反力の変化を示すグラフである。第4図(a),(b)の各図において太実線は本発明のエアバッグ1の反力の変化を示し、細実線は従来形のエアバッグの反力の変化を示す。なお、これらのグラフを得るにあたって、本発明のエアバッグ1と従来型のエアバッグの各エアバッグをそれぞれ同一の構成を有するエアバッグ装置に設置した後、同一の条件の下に膨張させ、膨張した各エアバッグに同じ乗員を突っ込ませることにより各エアバッグの乗員に対する反力の経時変化並びに乗員対向面の後退量を測定した。
【0029】第4図(a)のグラフ中、時点tはエアバッグに乗員が突っ込んだ瞬間の時点を示し、本発明のエアバッグ1並びに従来型のエアバッグのそれぞれに対し、乗員は共に同時点で突っ込んでいる。このグラフからも明らかな通り、本発明のエアバッグ1は実質的に乗員がこのエアバッグ1に突っ込んだ直後から乗員に反力を及ぼしており、しかも、このエアバッグ1の反力のピーク時点tは従来型のエアバッグの反力のピーク時点tよりも早い。このことから、本発明のエアバッグ1が従来型のエアバッグに比べて早期のうちに且つ十分に乗員を受け止め、その運動エネルギーを吸収していることがわかる。
【0030】また、第4図(b)のグラフから、本発明のエアバッグ1は、乗員対向面4の後退量が比較的小さい段階で乗員に反力を及ぼし始めていることがわかる。そして、このエアバッグ1の反力のピーク値Gは、従来型のエアバッグの反力のピーク値Gよりも15%程低く、エアバッグ1が乗員に与える負荷が軽減されることも明らかとなった。
【0031】第13図は、このような本発明のエアバッグ1が乗員の運動エネルギーを吸収する際の態様の変化を模式的に示す説明図である。第13図中、(a)図は乗員が膨張したエアバッグ1に突っ込んだ瞬間の態様を示しており(第4図(a)のグラフにおける時点tに相当)、(b)図は(a)図の時点の直後のエアバッグ1の態様を示し(同じく時点tに相当)、(c)図は乗員の運動エネルギーを吸収する途中の時点のエアバッグ1の態様を示している。なお、これら(a)〜(c)図の各図において、二点鎖線は、各図の時点に対応する従来型のエアバッグの態様を示すものである。
【0032】車両衝突時等にインフレータが作動した後、本発明のエアバッグ1及び従来型のエアバッグはそれぞれ第13図(a)に示す形状に膨張して乗員を受け止める態勢となる。このとき、エアバッグ内圧が不十分である場合には、前述したように、各エアバッグは乗員が突っ込んできた時点からこの乗員に十分な反力を与えることができず、乗員が乗員対向面を後退させてこのエアバッグを押しつぶし、エアバッグ内部のガスを圧縮することによってさらにエアバッグ内圧を高める必要がある。
【0033】この点、本発明のエアバッグ1は、乗員が突っ込んできた直後から速やかにエアバッグ内部のガスが圧縮されてその内圧が高まり、早期のうちに乗員に対して十分な反力を与え、乗員を受け止めるようになる(第13図(b))。これに対し、従来型のエアバッグにおいては、乗員によって押しつぶされた場合でもその側部が拡張することによってエアバッグ内圧が高まり難く、乗員が大きな移動速度を伴って大幅に乗員対向面を後退させた後にようやく十分な反力を与えることが可能となるため、本発明のエアバッグに比べて乗員を受け止めるようになる時点が遅くなり、しかも、その時点ですでに大幅に押しつぶされていることから、乗員対向面とエアバッグ後端部との間隔が小さくなり、乗員の運動エネルギーの吸収量も本発明のエアバッグ1より劣るものとなる。
【0034】本発明のエアバッグ1は、乗員が突っ込んできた時点においてエアバッグ内圧が十分に高まっていない場合であっても、乗員が突っ込んだ直後から速やかにエアバッグ内圧が上昇し、乗員対向面が大幅に後退する前に乗員を受け止めることから、この乗員対向面とエアバッグ後端部との間隔が大きく保たれて十分に乗員の運動エネルギーを吸収する(第13図(c))ことができるようになる。
【0035】なお、この実施の形態において、内部パネル7は、エアバッグ1の左右のサイドパネル2,2をつなぎ、このエアバッグ1の乗員対向面4と略平行な左右横方向への拡張を防止するように構成されているが、内部パネル7の構成はこれに限られるものではなく、この内部パネル7は、フロントパネル3のこのエアバッグ1の上側及び下側に配置された途中部分同士をつなぎ、該乗員対向面4と略並行な上下方向への拡張を防止するように構成してもよい。
【0036】上記実施の形態において、エアバッグ1は自動車の助手席用エアバッグとして構成されているが、本発明のエアバッグは、その他種々の用途における人体保護用エアバッグとして適用することができる。例えば、第5,6図に示すエアバッグ10は自動車の運転席用エアバッグへの適用例であり、第5図はこのエアバッグ10の斜視図、第6図はこのエアバッグの部分断面斜視図である。
【0037】この自動車の運転席用エアバッグ10は、それぞれ円形のフロントパネル11及びリアパネル12を重ね合わせ、その周縁部を互いに結合してなるものであり、フロントパネル11は、その中央付近が乗員の胸部等に対向する乗員対向面13となっており、リアパネル12には、その中央付近にインフレータ(図示略)用の開口14が設けられると共に、このエアバッグ内部のガスを流出させるためのベントホール15が設けられている。
【0038】このエアバッグ10は、対向する一対の辺縁部同士がエアバッグ内部において内部パネル16によってつながっている。この内部パネル16は、前述のエアバッグ1の内部パネル7と同様の構成を有し、所定の幅及び長さを有した面状のものであり、エアバッグ10が膨張した状態において乗員対向面13と略平行となるように配置され、この内部パネル16によってつながったエアバッグ10の辺縁部同士は、乗員対向面13と略平行な方向には互いに所定間隔以上は離反しないものとなっている。この内部パネル16は、その両端側が、リアパネル12の周縁部の対向する部分から延出した1対の耳部17にそれぞれ縫合や接着、溶着等の結合手段によって結合されることにより、エアバッグ10の該対向する1対の辺縁部同士をつないでいる。
【0039】このエアバッグ10は、開口14の周縁部がボルト等により図示しないエアバッグ装置のリテーナに連結される。このリテーナにはインフレータが設けられている。エアバッグ10をリテーナに連結するにあたっては、このインフレータの先端部が開口14からエアバッグ10の内部に導入される。そして、このエアバッグ10が折り畳まれ、モジュールカバー(図示略)によって覆われた後、自動車のステアリングホイール(図示略)等に設置される。そして、車両衝突時等の緊急時には、このエアバッグ10は、ガス噴出作動したインフレータからのガスによって膨張し、モジュールカバーを押し開いて車両室内に展開する。
【0040】このように構成されたエアバッグ10は、前述のエアバッグ1と同様に、エアバッグ膨張時並びに乗員がこのエアバッグ10に突っ込んできた際に乗員対向面13と略平行な方向に拡張することがなく、このエアバッグ10に乗員が突っ込んできた時点でエアバッグ内圧が不十分であっても、このエアバッグ10に乗員が突っ込んだ直後から速やかに且つ十分にエアバッグ内部のガスを圧縮してエアバッグ内圧を上昇させ、乗員を受け止めることができる。
【0041】このエアバッグ10においても、内部パネル16は、乗員対向面13と略平行な左右横方向の対向する側部同士をつないでもよく、同じく乗員対向面13と略平行な上下方向の対向する側部同士をつないでもよい。
【0042】上記実施の形態において、内部パネルはエアバッグの前後方向の途中部分において乗員対向面と略平行な断面の中央付近に配置されているが、内部パネルの配置はこれに限られるものではなく、エアバッグの用途或いは使用条件等に応じて変更することができる。例えば、第7図に示すエアバッグ1Aのように、エアバッグ1Aの前後方向の途中部分において乗員対向面4と略平行な断面の上半側に内部パネル7Aが配置されてもよい。なお、第7図はこの実施の形態に係るエアバッグ1Aの部分断面斜視図である。
【0043】このエアバッグ1Aは、各サイドパネル2,2の前後方向の途中部分が、乗員対向面4と略平行となるように配置された内部パネル4Aによって該乗員対向面4と略平行な断面の上半部分において互いに連結されたこと以外は前述のエアバッグ1と同様の構成を有し、同一符号は同一部分を示している。
【0044】このように構成されたエアバッグ1Aによると、このエアバッグ1Aが膨張して乗員が突っ込んできた際に、このエアバッグ1Aの下半部分が上半部分に比べて大きく変形することが可能であるため、このエアバッグ1Aの下半側においてより柔軟に乗員を受け止めることができるものとなっている。
【0045】このエアバッグ1Aにおいては、内部パネルはエアバッグの上半側に配置されているが、もちろん、エアバッグの下半側に配置されてもよく、このように内部パネルを配置することにより、エアバッグの上半側においてより柔軟に乗員を受け止めるものとすることができる。
【0046】また、内部パネルの寸法もエアバッグの用途、使用条件等に応じて適宜設定することができる。例えば、各サイドパネル同士をつなぐ間隔を小さくした場合には、より低出力のインフレータを用いても十分にエアバッグ内圧を高めることが可能となり、乗員対向面の延在方向に沿って各サイドパネルとの結合部分の上下方向の幅を大きくした場合には、エアバッグはより一様に乗員を受け止めることが可能となる。
【0047】上記実施の形態において、内部パネルはエアバッグを構成する各パネルと一体に設けられてもよく、別体の構成部材として設けられてもよい。例えば、前述のエアバッグ10においては、内部パネル16はフロントパネル11やリアパネル12とは別体の略長方形状のものとして構成されており、その両端側が、第8図に示すようにリアパネル12の周縁部の対向する部分から延出した1対の耳部17と結合することによってエアバッグ10に設置されている。なお、第17図はエアバッグ10の構成を示す分解斜視図である。
【0048】このエアバッグ10を製作する際には、まずフロントパネル11とリアパネル12とを各パネルのエアバッグ10の外側に配置される一方の面同士が互いに対面するように重ね合わせ、それらの周縁部同士を縫合等の結合手段によって結合する。次いで、フロントパネル11の他方の面に沿って内部パネル16を重ね、リアパネル12の各耳部17をフロントパネル11の該他方の面側に回り込ませて内部パネル16の両端部と結合させる。その後、インフレータ用開口14を介してこれらのフロントパネル11及びリアパネル12を反転させることによりエアバッグ10が得られる。
【0049】第9図に示すエアバッグ10Aは、前述のリアパネルの耳部を省略した構成を有するものである。第9図は、このエアバッグ10Aの構成を示す分解斜視図である。
【0050】このエアバッグ10Aは、前述のエアバッグ10と同様にフロントパネル11A,リアパネル12A,内部パネル16Aを重ね合わせると共に内部パネル16Aの両端側をリアパネル12A側に回り込ませ、これらのフロントパネル11Aとリアパネル12Aの周縁部同士並びに内部パネル16Aの両端側に設けられた湾曲部18をリアパネル12Aの周縁部に沿って結合させた後、インフレータ用開口14Aを介してフロントパネル11A及びリアパネル12Aを反転させて得られるものである。
【0051】なお、この内部パネル16Aの両端側に設けられた湾曲部18は、それぞれ内部パネル16Aの端部をリアパネル12Aの周縁部に沿うように内部パネル中央側へ凹ませた形状のものとなっている。
【0052】第10図に示すエアバッグ10Bは、このエアバッグ10Bを構成するリアパネル12Bと内部パネルとを一体に構成したものである。なお、第10図はこのエアバッグ10Bの構成を示す分解斜視図である。
【0053】このエアバッグ10Bは、前述のエアバッグ10,10Aと同様にフロントパネル11Bとリアパネル12Bとを重ね合わせ、それらの周縁部を互いに結合してなるものである。このリアパネル12Bの周縁部の対向する辺縁部からは、共に所定の幅及び長さを有した1対の帯状の連結片19が延出している。
【0054】このエアバッグ10Bは、前述のようにフロントパネル11Bとリアパネル12Bとを重ね合わせてそれらの周縁部同士を結合し、各連結片19をフロントパネル11Bのリアパネル12Bと重なった側とは反対側に引き回してこれらの連結片19の先端部同士を連結した後、インフレータ用の開口14Bを介してフロントパネル11Bとリアパネル12Bとを反転させることにより得られるものである。
【0055】このようにフロントパネル11Bとリアパネル12Bとを反転させた後には、互いに連結された1対の連結片19は、エアバッグ内部において乗員対向面と略平行に配置され且つエアバッグ10Bの左右の側部をつなぐ内部パネルとして作用するものとなる。
【0056】上述の略円形のエアバッグ10,10A,10Bはいずれもエアバッグの左右の側部を内部パネルによってつないでいるが、これに限られるものではなく、例えば、上下方向の側部同士をつないでもよい。
【0057】上記実施の形態において、各エアバッグは、いずれも内部パネルによってその膨張時の乗員対向面と略平行な方向への拡張が拘束されるように構成されているが、この他に、エアバッグの他の部位同士、例えば乗員対向面とエアバッグ後端部とを互いに連結してエアバッグの前後方向への膨張を拘束するようなストラップ等の拘束手段を組み合わせてもよい。
【0058】また、第11図に示すエアバッグ1Bのように、内部パネル7Bに、その途中部分を折り重ねて結合したプリーツ部20を形成し、この内部パネル7Bの両端部が所定張力で引張られることによりこの結合が解除されて内部パネル7Bの長さが増大するように構成してもよい。このように構成されたエアバッグ1Bにあっては、このエアバッグ1Bに乗員が突っ込んだ後にエアバッグ内圧が過度に高まった場合にプリーツ部20の結合を解除して内部パネル7Bの長さを増大させ、左右のサイドパネル2,2間の間隔を大きくすることによってエアバッグ1の容積が増大し、エアバッグ内圧を低下させることが可能となると共に、エアバッグ1Bが乗員の側方にまで拡張して乗員をサポートするため、乗員をエアバッグ中央付近にてより安定的に受け止めることができるようになる。
【0059】なお、図示はしないが、内部パネルにこのプリーツ部20に代わってミシン目状のスリット等よりなる脆弱部を設け、エアバッグ内圧が所定圧力以上となったときに内部パネルがこの脆弱部から破断してエアバッグを側方に拡張させ、エアバッグ内圧を低下させるように構成してもよい。
【0060】第12図に示すエアバッグ1Cは、左右のサイドパネル2,2をつなぎ且つ十分な長さを有する帯状の内部パネル7Cにおいて、その途中部分を折り重ね、重ね合わせた面同士を所定張力にて断裂するテアシーム21によって結合することによりプリーツ部20Aを形成し、その長さを減じたものである。このプリーツ部20Aは、内部パネル7Cの長手方向の両端側を所定値以上の張力で引張ることにより、その張力に応じて適当な領域にわたってテアシーム21が断裂し、この領域の分だけ内部パネル7Cの結合し合った該途中部分の結合が解除され、互いに離反して内部パネル7Cの長さを増大させるものとなっている。もちろん、内部パネル7Cの両端側を引張る張力が所定値以下のときには、このプリーツ部20Aのテアシーム21が断裂して内部パネル7の長さが不正に増大することはなく、内部パネル7Cは、左右のサイドパネル2,2をつないでエアバッグ1Cの乗員対向面4と略平行な方向への拡張を防止するように構成されている。なお、上記のようにテアシーム21によって結合され且つ内部パネル7Cが所定張力にて引張られることによりこのテアシーム21が破断して互いに離反することが可能な領域即ちプリーツ部20Aの全体は十分な大きさを有している。
【0061】第14図は、このようなプリーツ部20Aが形成された内部パネル7Cを有するエアバッグ1Cについて、乗員の運動エネルギーを吸収する際の態様の変化を模式的に示す説明図である。第14図において、(a)図は乗員が膨張したエアバッグ1Cに突っ込んだ直後におけるこのエアバッグ1Cの態様、(b)図は乗員の運動エネルギーを吸収する途中のエアバッグ1Cの態様を示し、(c)図は乗員の運動エネルギーの吸収を完了する直前のエアバッグ1Cの態様を示している。
【0062】車両衝突時の緊急時において、インフレータがガス噴出作動した際には、エアバッグ1Cは、まず第14図(a)において二点鎖線によって示した形状に展開し、乗員を受け止める態勢となる。
【0063】このように膨張したエアバッグに乗員が突っ込んできた直後においては、エアバッグ1Cは、内部パネル7Cにより乗員対向面4と略平行な方向への拡張が阻止されているため、急速にエアバッグ内圧が上昇する。
【0064】その後、エアバッグ内圧が所定圧力以上となったときには、内部パネル7Cによってつながったエアバッグ1Cの左右の側部がこの内部パネル7Cの両端側を所定値以上の張力で相離反する方向へ引っ張るようになり、前述のように、この張力に応じてプリーツ部20の適当な領域分のテアシーム21が断裂し、プリーツ部20において互いに結合し合っていた内部パネル7Cの途中部分同士が離反して内部パネル7Cの長さが増大する。なお、プリーツ部20は十分な大きさを有していることから、このテアシーム21の断裂及びこれに伴う内部パネル7Cの長さの増大は、乗員がエアバッグ1Cの乗員対向面4を後退させ且つこれに伴ってエアバッグ内圧が所定圧力以上に高まっている間は絶えず継続することができる。そして、この内部パネル7Cの長さの増大により、エアバッグ1Cは乗員の側方へ大きく拡張してエアバッグ内圧が過度に上昇することを防止すると共に乗員を十分につつみ込むようにサポートし、確実にエアバッグ中央付近にて乗員を受け止めて乗員を保護することができるようになる。また、内部パネル7Cの長さを増大させることに伴うエアバッグ1Cによるテアシーム21の断裂の継続によって、常にこのテアシーム21を断裂させるための荷重として乗員の運動エネルギーの一部が消費されることになり、エアバッグ1Cは、よりスムーズに、しかもより大きな運動エネルギーを吸収することができるようになる。
【0065】なお、図示はしないが、このようなテアシーム21によって結合されたプリーツ部20Aに代わって、内部パネルに所定以上の張力が加えられたときにこの内部パネルの長さが増大するように引き裂かれる十分な長さを有した引裂可能部が形成されてもよい。このような引裂可能部が形成された内部パネルを備えたエアバッグにおいても前述のテアシーム21によって途中部分が結合された内部パネル20Cを備えたエアバッグ1Cと同様の効果を奏するものとなる。また、この内部パネル自体を、両端側が所定張力にて引張られたときに延伸するように構成してもよく、このように所定張力により延伸可能な内部パネルを備えたエアバッグにおいても前述のエアバッグ1Cと同様の効果を奏することができる。なお、このような延伸可能な内部パネルは、エアバッグ膨張前の状態からこのエアバッグが最大に膨張したときに、この内部パネルの長さが50〜300%程度伸びるものであることが好ましい。
【0066】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のエアバッグによると、内部パネルによって、エアバッグ膨張時或いはこのエアバッグに乗員が突っ込んできた際にエアバッグが乗員対向面と略平行な方向に拡張することが阻止されるため、例えばエアバッグ膨張途中においてこのエアバッグを膨張させるためのインフレータからのガスがエアバッグの側部の膨出に浪費されることはなく、エアバッグ内圧が急速に上昇すると共に、このエアバッグに乗員が突っ込んできた時点でエアバッグ内圧が不十分であった場合でも、エアバッグに乗員が突っ込んだ直後からエアバッグ内部のガスが速やかに且つ十分に圧縮されてエアバッグ内圧が上昇し、確実に乗員を受け止めてその運動エネルギーを吸収することが可能となる。
【0067】また、この内部パネルを所定の張力が加えられたときにその長さが増大するように構成し、エアバッグ内圧が所定圧力以上となったときにこの内部パネルの長さを増大させ、エアバッグを拡張させるようにすることにより、このエアバッグに突っ込んできた乗員をより安定的にサポートしてより確実に乗員を保護することができるようになる。
【出願人】 【識別番号】000108591
【氏名又は名称】タカタ株式会社
【出願日】 平成12年6月14日(2000.6.14)
【代理人】 【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
【公開番号】 特開2001−354094(P2001−354094A)
【公開日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【出願番号】 特願2000−178658(P2000−178658)