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【発明の名称】 自動車のダッシュインシュレータ
【発明者】 【氏名】藤井 睦雄

【氏名】山田 浩明

【要約】 【課題】ダッシュインシュレータに開設されたワイヤハーネス等の挿通部材挿通孔からエンジンルームの騒音が車室に伝達されるのを防止する。

【解決手段】ダッシュインシュレータ1は、表皮を構成する遮音層13と、この遮音層13の裏面に一体成形された多孔質で弾性材の吸音層15とからなる積層構造であって、挿通部材を挿通する挿通孔9の内壁は、吸音層15が裏面に一体成形された遮音層延設部131と、この遮音層延設部131の端部に近接してダッシュパネル側に突出し吸音層15と一体成形の吸音層突出部151とから構成され、この吸音層突出部151がダッシュインシュレータ1をダッシュパネルに取り付けた状態で取り付け力(締結力)により圧縮されることにより、吸音層15からの騒音が挿通孔9を経て車室へ伝達されるのを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動車のダッシュパネルの車室側に取り付けられ、ダッシュパネルを貫通しエンジンルームと車室とに跨ってワイヤハーネス等の挿通部材を挿通する挿通孔を有するとともに、表皮を構成する遮音層と、該遮音層の裏面に一体成形された多孔質で弾性材の吸音層とからなる積層構造のダッシュインシュレータにおいて、上記挿通孔の内壁は、上記吸音層が裏面に一体成形され上記遮音層を延設した遮音層延設部と、該遮音層延設部の端部に近接してダッシュパネル側に突出し上記吸音層と一体成形の吸音層突出部とからなることを特徴とする自動車のダッシュインシュレータ。
【請求項2】 自動車のダッシュパネルの車室側に取り付けられ、ダッシュパネルを貫通しエンジンルームと車室とに跨ってワイヤハーネス等の挿通部材を挿通する挿通孔を有するとともに、表皮を構成する遮音層と、該遮音層の裏面に一体成形された多孔質で弾性材の吸音層とからなる積層構造のダッシュインシュレータにおいて、上記吸音層が裏面に一体成形され上記遮音層を延設した遮音層延設部により上記挿通孔の内壁が成形され、上記挿通孔に上記挿通部材が挿通された状態で撓んで挿通部材に当接する吸音層リップ部が、上記挿通孔を横断するように遮音層延設部の端部に近接して吸音層と一体成形されていることを特徴とする自動車のダッシュインシュレータ。
【請求項3】 自動車のダッシュパネルの車室側に取り付けられ、ダッシュパネルを貫通しエンジンルームと車室とに跨ってワイヤハーネス等の挿通部材を挿通する挿通孔を有するとともに、表皮を構成する遮音層と、該遮音層の裏面に一体成形された多孔質で弾性材の吸音層とからなる積層構造のダッシュインシュレータにおいて、上記吸音層が裏面に一体成形され上記遮音層を延設した遮音層延設部により上記挿通孔の内壁が成形されるとともに、上記挿通孔に上記挿通部材が挿通された状態で撓んで該挿通部材に当接する遮音層リップ部が、上記遮音層延設部の端部から延長して上記挿通孔を横断するように上記遮音層延設部に一体成形されていることを特徴とする自動車のダッシュインシュレータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車のエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルの車室側に取り付けられるダッシュインシュレータの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車のエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルの車室側には、エンジンルームから車室への騒音伝達を防止するためにダッシュインシュレータが取り付けられている。
【0003】このダッシュインシュレータは、塩化ビニールシート、ゴムシート等からなる表皮としての遮音層と、フェルト、ポリウレタンフォーム、不織布等の吸音層とからなる積層構造が一般的である(特開平10−226006号公報、特開平10−95060号公報、特開平6−344486号公報参照)。
【0004】一方、車室側に取り付けられたインストルメントパネル内に配設される各種電装部品用ワイヤハーネスをエンジンルーム内のバッテリー、エンジン等に接続するために、ダッシュパネル及びダッシュインシュレータにはワイヤハーネス挿通用の挿通孔が開設されている。
【0005】そして、ダッシュインシュレータに開設された挿通孔は、図11に示すように、遮音層Aと吸音層Bとからなる積層構造のダッシュインシュレータCにプレス機等により挿通孔Dが開設されている。なお図11において、EはダッシュインシュレータCが取り付けられたダッシュパネル、Fは上記挿通孔Dに挿通されたワイヤハーネスである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】図11に示すようにダッシュインシュレータCに開設された挿通孔Dの内壁は、遮音層Aが被覆されていない状態で吸音層Bが露出している。このため、エンジンルームの振動を受けるダッシュパネルEからの振動音(騒音)が吸音層Bを介して挿通孔Dへ伝達された後、該挿通孔Dから車室へ伝達されることになり、騒音防止効果が劣るという第1の問題点がある。
【0007】また、挿通孔D近傍のダッシュインシュレータCの厚みが製作誤差により他の部分に比べて小さい場合には、ダッシュインシュレータCの吸音層BがダッシュパネルEの取り付け面から浮き上がり、吸音効果がさらに低下するという第2の問題点がある。
【0008】さらに、挿通孔Dの内壁とワイヤハーネスFとの間には、ワイヤハーネスFを挿通させるために隙間があり、この隙間からエンジンルーム内の騒音が直接車室へ伝達されるという第3の問題点がある。
【0009】この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、ダッシュインシュレータに開設されたワイヤハーネス等の挿通部材挿通孔からエンジンルームの騒音が車室へ伝達されるのを防止することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明は、上記挿通部材挿通孔の内壁を、ダッシュインシュレータの表皮としての遮音層を延設した遮音層延設部で形成し、該延設部によりダッシュインシュレータの吸音層を被覆して構成したことを特徴とするものである。
【0011】具体的には、この発明は、自動車のダッシュパネルの車室側に取り付けられ、ダッシュパネルを貫通しエンジンルームと車室とに跨ってワイヤハーネス等の挿通部材を挿通する挿通孔を有するとともに、表皮を構成する遮音層と、該遮音層の裏面に一体成形された多孔質で弾性材の吸音層とからなる積層構造のダッシュインシュレータを前提とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】すなわち、請求項1に記載の発明は、上記挿通孔の内壁を、吸音層が裏面に一体成形され上記遮音層を延設した遮音層延設部と、該遮音層延設部の端部に近接してダッシュパネル側に突出し上記吸音層と一体成形の吸音層突出部とで構成したことを特徴とする。
【0013】請求項2に記載の発明は、上記吸音層が裏面に一体成形され上記遮音層を延設した遮音層延設部により上記挿通孔の内壁が形成され、上記挿通孔に上記挿通部材が挿通された状態で撓んで該挿通部材に当接する吸音層リップ部が、上記挿通孔を横断するように遮音層延設部の端部に近接して吸音層と一体成形されていることを特徴とする。
【0014】請求項3に記載の発明は、上記吸音層が裏面に一体成形され上記遮音層を延設した遮音層延設部により上記挿通孔の内壁が形成されるとともに、上記挿通孔に上記挿通部材が挿通された状態で撓んで該挿通部材に当接する遮音層リップ部が、上記遮音層延設部の端部から延長して上記挿通孔を横断するように上記遮音層延設部に一体成形されていることを特徴とする。
【0015】
【発明の効果】上記構成により、請求項1に記載の発明では、挿通孔の内壁が遮音層延設部によって被覆されているため、吸音層の吸音機能を維持させつつ遮音層延設部によって遮音機能が付加され、挿通孔から車室への騒音伝達を低減させることができる。
【0016】また、遮音層延設部の端部に近接してダッシュパネル側に突出した吸音層突出部を吸音層と一体成形したため、ダッシュインシュレータの製作誤差により挿通孔近傍のダッシュパネルの肉厚が多少薄くなっても、上記挿通孔近傍のダッシュインシュレータの吸音層とダッシュパネルとの間に隙間を生じることがなく、騒音伝達を一層低減させることができる。
【0017】請求項2に記載の発明では、挿通孔の内壁を遮音層延設部で構成した点の効果は、請求項1の記載の発明の上記効果と同じであるが、請求項2に記載の発明においては、挿通部材に当接する吸音層と一体の吸音層リップ部を設けたため、該吸音層リップ部の吸音作用によりエンジンルームの騒音が挿通孔を経て車室へ伝達されるのをさらに低減でき、しかも上記吸音層リップ部は吸音層と一体成形したため、部品点数を増加させることなくダッシュインシュレータを容易かつ安価に製作することができる。
【0018】請求項3に記載の発明では、挿通孔の内壁を遮音層延設部で構成した点の効果は、請求項1記載の発明の上記効果と同じであるが、請求項3に記載の発明においては、挿通部材に当接する遮音層延設部と一体の遮音層リップ部を設けたため、該遮音層リップ部の遮音作用によりエンジンルームの騒音が挿通孔を経て車室へ伝達されるのをさらに低減でき、しかも上記遮音層リップ部は遮音層延設部と一体成形したため、部品点数を増加させることなくダッシュインシュレータを容易かつ安価に製作することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0020】(実施の形態1)図1は、この発明の実施の形態1に係るダッシュインシュレータを自動車のダッシュパネルに取り付けた状態を示す断面図、図2は実施の形態1に係るダッシュインシュレータの拡大断面図、図3は図2のダッシュインシュレータをダッシュパネルに取り付け挿通孔に挿通部材を挿通した状態を示す拡大断面図である。
【0021】図1に示すようにダッシュインシュレータ1は、エンジンルームAと車室Bとを区画するダッシュパネル3の車室B側に取り付けられている。ダッシュパネル3には、エンジンルームAと車室Bとに跨って挿通部材5を挿通する開口部7が開設されているとともにダッシュインシュレータ1には、上記開口部7に対向して挿通部材5を挿通する挿通孔9が開孔されている。上記挿通部材5としては、例えばエンジンルームAのバッテリー(図示せず)と車室Bのインストルメントパネル11に取り付けられた各種電装部品(図示せず)とを結線するワイヤハーネ、あるいはエンジンルームAのエバポレータ(図示せず)と車室Bのクーラーユニット(図示せず)とを連結する冷媒用配管など種々のものがある。
【0022】ダッシュインシュレータ1は、図2に拡大して示すように塩化ビニール、ゴム等の軟質シートからなる遮音機能を有する遮音層13と、該遮音層13の裏面に一体成形されたポリウレタン、フェルト、不織布等の多孔質で弾性材からなる吸音機能を有する吸音層15とで構成された積層構造である。ダッシユインシユレータ1に開孔した上記挿通孔9の内壁は、遮音層13を一体的に延設し裏面に吸音層15が一体成形された遮音層延設部131と、該遮音層延設部131の端部よりダッシュパネル3側に突出し上記吸音層15と一体成形の吸音層突出部151とで構成されている。
【0023】上記のように構成したダッシュインシュレータ1は、ダッシュパネル3の上記開口部7に上記挿通部材5を挿通する前に予めダッシュパネル3の車室B側にボルト及びナット等の締結手段(図示せず)により複数個所で締結される。この締結により、ダッシュインシュレータ1の上記吸音層突出部151は、弾性材で構成されているため図3に示すように圧縮されて潰され、上記遮音層延設部131の端部がダッシュパネル3の開口部7周囲に当接もしくは近接している。このようにしてダッシュインシュレータ1をダッシュパネル3に取り付けた後、挿通部材5をエンジンルームA側もしくは車室B側から開口部7及び挿通孔9に挿通する。
【0024】上記のように実施の形態1におけるダッシュインシュレータ1は、挿通孔9の内壁が遮音層延設部131によって被覆されて吸音層15の露出がほとんどないため、吸音層15から挿通孔9への騒音の伝達がなく車室Bにおける騒音が低減される。また、ダッシュインシユレータ1の挿通孔9近傍の肉厚が製作誤差により薄くなった場合にも、挿通孔9の周囲に上記吸音層突出部151が成形されているため、該吸音層突出部151がダッシュパネル3に当接し吸音層15から挿通孔9への騒音伝達が低減される。
【0025】なお、ダッシュインシュレータ1の上記挿通孔9近傍のダッシュパネル3への圧接力は、ダッシュインシュレータ1を介在して車室B側からダッシュパネル3に取り付けられる空調ユニット等の内装部品の締結力を利用することも可能である。
【0026】(実施の形態2)図4及び図5に示した実施の形態2に係る発明は、上記実施の形態1における発明よりもさらに騒音伝達を低減させたもので、実施の形態1と同一構成のものは同一符号を付してその説明を省略する。
【0027】153は、挿通孔9を横断するように、遮音層延設部131の端部に近接して吸音層突出部151と一体成形された吸音層リップ部で、該吸音層リップ部153の挿通孔9中央部分には開口155が形成されている。上記吸音層リップ部153は、挿通孔9に挿通部材5が挿通された状態で、容易に撓んで挿通部材5に当接するように吸音層15よりも薄肉に成形されている。
【0028】このように構成したダッシュインシュレータ101をダッシュパネル3に取り付けた後、挿通部材5をエンジンルームA側から上記開口155及び挿通孔9に挿通すると、図5に示すように上記吸音層リップ部153が撓んで挿通部材5に当接する。
【0029】上記のように構成した実施の形態2におけるダッシュインシュレータ101は、該ダッシュインシュレータ101のダッシュパネル3への取り付け時に吸音層突出部151が圧縮されて上記遮音層延設部131の端部がダッシュパネル3の開口7周囲に近接するため、挿通孔9における吸音層15の露出が微少となり、上記実施の形態1と同様に吸音層15から挿通孔9への騒音の伝達が低減される。さらに、実施の形態2においては、挿通部材5を開口155及び挿通孔9に挿通したときに吸音層リップ部153が撓んで挿通部材5に当接するため、上記吸音層リップ部153により挿通孔9と挿通部材5との間の隙間が吸音層リップ部153により閉塞され、吸音層リップ部153の吸音作用によりエンジンルームAから上記隙間を経て車室Bへ伝達される騒音がさらに低減される。
【0030】また、上記吸音層リップ部153は吸音層突出部151と一体成形したため、部品点数を増大させることなく、安価で容易にダッシュインシュレータ101を製作できる。
【0031】−実施の形態2の変形例−図6及び図7は実施の形態2の変形例を示すもので、該変形例では、図4のように挿通孔9の周囲に吸音層突出部151を形成していなく、挿通孔9周囲における吸音層15の裏面は挿通孔9周囲以外の吸音層15の裏面と面一にしている。
【0032】そして、遮音層延設部131の端部に近接し、挿通孔9を横断するように吸音層リップ部157が吸音層15と一体成形されるとともに上記吸音層リップ部157には、図7に示すように放射状のスリット159が形成されている。上記吸音層リップ部157は、上記吸音層15よりも薄肉に形成されている。
【0033】このように構成した実施の形態2の変形例におけるダッシュインシュレータ103は、挿通孔9に挿通部材5を挿通した際、吸音層リップ部157がスリット159により複数に分割された状態で撓んで挿通部材5に当接し、挿通孔9と挿通部材5との間の隙間が吸音層リップ部157により閉塞されるため、実施の形態2と同様に、吸音層リツプ部157の吸音作用によりエンジンルームAから上記隙間を経て車室Bへ伝達される騒音を低減することができる。
【0034】この変形例においては、吸音層リップ部157にスリット159を形成したため、挿通部材5の挿通孔9への挿入が容易になる。
【0035】(実施の形態3)図8及び図9は、実施の形態3に係る発明を示すもので、実施の形態1と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0036】挿通孔9の内壁を構成する遮音層延設部131の端部には、該端部から延長して挿通孔9を横断するように車室B側へ突出した山形状の遮音層リップ部133が一体成形されるとともに、該遮音層リップ部133には図9に示すように放射状のスリット135が形成されている。
【0037】このように構成したダッシュインシュレータ105をダッシュパネル3に取り付けた後、挿通部材5をエンジンルームA側から挿通孔9に挿入すると、遮音層リップ部133はスリット135により複数に分割された状態で撓んで挿通部材5に当接する。このため、挿通孔9と挿通部材5との間の隙間が遮音層リップ部133により閉塞され、該遮音層リップ部133の遮音作用により、エンジンルームAから上記隙間を経て車室Bへ伝達される騒音を低減することができる。また、上記遮音層リップ部133は遮音層延設部131と一体成形したため、部品点数を増大させることなく、安価で容易にダッシュインシュレータ105を製作することができる。
【0038】なお、遮音層リップ部133の裏面に吸音層15と一体に薄肉吸音層を成形することも可能である。この場合、図8のダッシュインシュレータ105に比べて吸音効果がさらに向上する。
【0039】(実施の形態4)図10は、実施の形態4に係る発明を示すもので、実施の形態1と同一構成部分については同一符号を付しその説明を省略する。
【0040】ダッシュインシュレータ107の挿通孔9の内壁を構成する遮音層延設部131には、挿通孔9の開孔端に比べて開孔中程の開孔径が小さくなるように小径部137が成形され、挿通部材5を挿通孔9に挿通したとき、挿通部材5と小径部137とが当接するように構成されている。このため、挿通孔9と挿通部材5との間の隙間が閉塞され、エンジンルームAから上記隙間を経て車室Bへ伝達される騒音を低減することができる。
【出願人】 【識別番号】390026538
【氏名又は名称】西川化成株式会社
【出願日】 平成11年7月1日(1999.7.1)
【代理人】 【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘 (外1名)
【公開番号】 特開2001−10419(P2001−10419A)
【公開日】 平成13年1月16日(2001.1.16)
【出願番号】 特願平11−187348