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【発明の名称】 自動車の扉構造
【発明者】 【氏名】金 宗 燦

【要約】 【課題】車両の側面衝突事故の際、二重に形成されている扉パネルが、衝撃力により一重に変形するに先立って、搭乗者に弱い衝撃力を伝達し、これによって搭乗者が押されるようにすることにより、以後のより激しい衝撃力が搭乗者の身体部位に直接に到達されないようにして、搭乗者の傷害値を低減せしめることができる自動車の扉構造を提供する。

【解決手段】扉の外側パネルの内側面に、前面に開放された主胴体部と、その主胴体部の縁部から延長されて内部に所定の空間を形成するように折曲された側壁部と、その側壁部から延長されて外側に折曲されたフランジ部とを一体に扉えた加圧部材を、搭乗者の上体の側部に対向するように設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内側パネルと外側パネルとが接合されてなる自動車の扉において、前記扉の内部には、搭乗者の上体の側部を向かうように、一側は外側パネルの内面上に固定されつつ、他側は内側パネルに向けて突出した形状の加圧部材が設けられたことを特徴とする自動車の扉構造。
【請求項2】 前記加圧部材は、中央部位の主胴体部と、その主胴体部の縁部から延長されて内部に所定の空間を形成するように折曲された側壁部と、その側壁部から延長されて外側に折曲されたフランジ部とを一体に備えるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の扉構造。
【請求項3】 前記加圧部材の側壁部には、扉の内部に設けられる補強部材との干渉を避けることができるように補強部材の断面績に当たる部位だけ切開された開き部が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車の扉構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は自動車の扉に係り、より詳しくは、扉の内部に加圧部材を設けることにより、側面衝突の際に搭乗者の側部に加わる損傷を減少させ、その安全性に配慮した自動車の扉の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車には乗客の乗車及び下車のために、車体にヒンジ結合されて開閉可能に設けられた扉を備えている。この扉(10)は、図1,2にそれぞれ示すように、外側パネル(11)と内側パネル(12)とが組立てられて製造されるものであって、該内側パネル(12)には、内装材であるトリム材(13)が付着される。このトリム材(13)には、外部へ突出した形状のアームレスト(14)と、そのアームレスト(14)の下部に、携帯品を収納するための、容積の小さな扉ポケット(15)が備えられている。
【0003】一方で、前記扉(10)は、側面衝突事故の際、搭乗客の安全を図るために、その構造的な剛性を補強するようになっている。つまり、図3に示すように、外側パネル(11)と内側パネル(12)とによって形成される内部空間に、扉(10)の横方向に沿って上下に離隔されるよう補強部材(16)が配置されている。
【0004】これによって、前記扉(10)の横方向へ上下に配置された補強部材(16)は、側面衝突事故の際、扉(10)に加わる外部の衝撃力を吸収して、扉(10)の変形量を減少させて搭乗者の安全を図るようになっている。
【0005】ところで、上記のように扉(10)に補強部材(16)を備えているにもかかわらず、車両の側面衝突の際、搭乗者の上体側部に対する安全を規定している一部の法規(ヨーロッパでの側面衝突に関する法規であって、衝突の際、人体の肋骨に当たるダミー(dummy)の側部に対する変形量が42mm内に制限する規定をいう)を全く充足できないが、これは、従来の扉(10)が側面衝突事故の際、空間を置いて相互に離隔して二重に形成されている外側パネル(11)と内側パネル(12)とが、衝突に伴う外力により短時間(30ms)で、一重に変形し、搭乗者の上体の側部に直接に衝撃力を伝達するからである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記扉(10)に対する構造的な剛性の補強だけでは、人体の傷害値を低減させて上記のような関連法規を満足させるには限界がある。そこで、構造的な剛性補強のほかに、他の対応案を通して、側面衝突事故の際、人体の傷害値を低減させ、関連法規の要求を満たすとともに、搭乗者の安全を図りうる自動車の扉の構造が求められている。
【0007】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の側面衝突事故の際、衝撃力により、二重に形成された扉のパネルが一重に変形するに先立って、搭乗者に弱い衝撃力を伝達し、これによって搭乗者の位置が押されるようにすることにより、以後に、より激しい衝撃力が搭乗者の身体部位に直接に到達しないようにし、搭乗者が受ける傷害値を低減することができる自動車の扉構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記のような目的を達成するためになされたこの発明は、扉の外側パネルの内側面に、前面に開放された主胴体部と、その主胴体部の縁部から延長されて内部に所定の空間を形成するように折曲された側壁部と、その側壁部から延長されて外側に折曲されたフランジ部とを一体に扉えた加圧部材が搭乗者の上体の側部を向うように設けられたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る一実施例を添付図に沿つて詳細に説明する。この発明は、図に示すように、扉(10)の外側パネル(11)の内周面に、閉断面を形成する加圧部材(17)を装着させてなるが、この加圧部材(17)は、扉(10)の外側パネル(11)と内側パネル(12)とによって形成される空間内に横方向へ長めに延長された二つの補強部材(16)中、上側に配置される補強部材(16)に配置される。とりわけ、車体の中央に位置してセンターピラー(10a;図1に示す)に向けて隣接するように、上部の補強部材(16)の後方側に偏らせて装着される。
【0010】言い換えれば、前記加圧部材(17)の装着位置は、車室内の前方座席に搭乗者が搭乗した場合、側面衝突に伴う衝撃力で扉(10)が変形されることから、搭乗者の上体の側部に向かう位置に当たるのである。
【0011】これによって、前記加圧部材(17)は、扉(10)の内部に配置された補強部材(16)中、上側に位置した補強部材(16)と重なりあって、扉(10)の外側パネル(11)の内側面に接合されて固定されるが、このため、前記加圧部材(17)は、図5に示すように、前面に開放された主胴体部(18)と、その主胴体部(18)の縁部で内部に所定の空間を形成するように折曲された側壁部(19)と、その側壁部(19)から延長されて外側に折曲されて前記外側パネル(11)の内側面に直接に当接して面着されるフランジ部(20)とを備えて形成される。
【0012】さらに、前記加圧部材(17)は、扉(10)の内部に横方向に配置される補強部材(16)との干渉なしに外側パネル(11)の内側面に接合されるよう、前記側壁部(19)には、補強部材(16)の断面績に当たる部位だけ切開された開き部(21)がそれぞれ形成されている。
【0013】したがって、上記のように扉(10)の外側パネル(11)と内側パネル(12)とによって形成される空間に搭乗客の上体に向けて加圧部材(17)が外側パネル(11)の内側面に接合されて固定されると、車両の側面衝突事故の際、前記扉(10)の外側パネル(11)に伝達された衝撃力により外側パネル(11)が車室内に向けて押し入れこまれるように変形され、これによって、前記外側パネル(11)の内側面に接合された加圧部材(17)は車室内に向けて変形される外側パネル(11)より先に内側パネル(12)に接して、内側パネル(12)をも同一の方向である車室内方へ変形させるようになり、その結果、前記内側パネル(12)に付着されたトリム材(13)のアームレスト(14)が搭乗者の側部に到達するようになる。
【0014】この際、前記アームレスト(14)の内部に充填された緩衝材(14a)により、搭乗者の身体は衝撃力から緩和された状態で車室内に向けて押し入れこまれるようになり、以後、前記外側パネル(11)は内側パネル(12)にほとんど空き空間がないほどに密着されて車室内に変形されて押し入れこまれるようになる。
【0015】つまり、側面衝突事故の際、搭乗者は、外側パネル(11)と内側パネル(12)とが完全に密着して変形した状態で、激しい衝撃力に直接的に晒されるのではなく、前記外側パネル(11)に接合されて先に変形する加圧部材(17)により押されるトリム材(13)のアームレスト(14)による、より弱い衝撃を先に受けて車室内に押されるようになる。これにより、前記外側パネル(11)の変形を通して伝達される激しい衝撃力を避けることができ、側面衝突事故によって受ける衝撃力の度合を従来より弱めることができるようになる。
【0016】かような優れた効果は、前記外側パネル(11)の内側面に加圧部材(17)を設ける前後に、前方座席にダミーを搭乗させてそれぞれの状態に対する衝突試験を行った結果、前記ダミー側部の上中下のそれぞれの部位に加わる衝撃力による変形時間:変形量の比を測定した図7に示すグラフによって検証されている。
【0017】つまり、前記ダミー側部の上中下の部位に対する変形時間:変形量の比は、前記加圧部材(17)を、外側パネル(11)上に設けた場合(実線で示す)の方が、設けられていない場合(点線で示す)より、同一の変形量に至るまでに要する変形時間が長くなることが分かり、さらに、最終変形量の度合も、前記加圧部材(17)を設けた場合(実線で示す)の方が、しからざる場合(点線で示す)よりもより小さいことが分かる。
【0018】さらに、上記のように、加圧部材(17)を設けてからのダミー側部の上中下のそれぞれの部位に対する変形量の度合は、すべてが関連法規(ヨーロッパにおける側面衝突に関するダミーの変形量を制限する法規をいう)内におさまっていることから、当該関連法規の規定の要求を満たすものとなっている。
【0019】かかる試験の結果を通して、側面衝突事故の際、前記加圧部材(17)は、外側パネル(11)より、略5ms程、先立ってダミーの上中下のそれぞれの部位に到達し、衝突初期の弱い衝撃力を伝達するようになり、ダミーをやや車室の内方へ移動させるようになり、以後、前記外側パネル(11)の完全変形とともにダミー側へ伝達される激しい衝撃力は、ダミーに及ぼす直接的な影響が弱まることを検証できる。
【0020】つまるところ、自動車の側面衝突事故の際、初期の衝突による衝撃量の度合が衝突後の所定時間の経過後の最終衝突による衝撃量の度合より弱いことを推量する場合、上記のように扉(10)の内部に加圧部材(17)を設ける構成は、その他の様々な安全装置や、また、補強部材(16)の構造的な剛性補完等、搭乗者のための安全を考慮した構成よりも、さらなる安全確保の効果が期待できると結論付けることができる。
【0021】
【発明の効果】上述のように、この発明による自動車の扉構造にれば、扉の内部に搭乗者の上体側部に対向する位置に外側パネルに接合される加圧部材を設けることにより、側面衝突事故の際、初期の弱い衝撃力により搭乗者が先に車室内に押されるようにしたことから、最終の激しい衝撃力が直接に搭乗者に伝達されず、従って、搭乗者の傷害値を低減せしめることができる優れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【出願日】 平成11年11月16日(1999.11.16)
【代理人】 【識別番号】100093399
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬谷 徹 (外1名)
【公開番号】 特開2001−1853(P2001−1853A)
【公開日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願番号】 特願平11−325561