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【発明の名称】 センサ情報の伝送システム
【発明者】 【氏名】恒原 弘

【要約】 【課題】センサ情報の受信周期のずれに起因してセンサ情報を受信する側の装置の制御性能が低下することを回避する。

【解決手段】センサ装置10では、所定周期で絶対舵角値θを算出すると共にカウント値Cを更新する(ステップS1、S2)。そして、前回絶対舵角値を送信したときの絶対舵角値θOLD と今回の絶対舵角値θNOW との差である変化量Δθがしきい値Δθα以上となったとき(ステップS3)又はカウント値がCがCMAX を越えたとき(ステップS4)に、この時点の絶対舵角値θNOW を車両挙動制御装置10に送信する(ステップS5)。絶対舵角値θが単位時間当たりに変化する割合が増加するほど絶対舵角値θの送信周期が短くなり、車両挙動制御装置10に絶対舵角値が送信される回数が増加するから、通信回線Lの負荷の増加を抑制し且つ車両挙動制御装置10において絶対舵角値を受信できないことに起因して制御性能が低下することが回避される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両挙動を検出する車両用センサを有し当該車両用センサで検出したセンサ情報を通信回線を介して送信するセンサ装置と、前記通信回線を介して前記センサ情報を受信しこのセンサ情報をもとに所定の処理周期で所定の演算処理を実行するデータ処理装置と、を備えたセンサ情報の伝送システムにおいて、前記センサ装置は、前記センサ情報をこのセンサ情報の単位時間当たりの変化量に応じた周期で送信するようになっていることを特徴とするセンサ情報の伝送システム。
【請求項2】 前記センサ情報の送信周期は予め設定した最大周期以下となるようになっていることを特徴とする請求項1記載のセンサ情報の伝送システム。
【請求項3】 前記センサ情報の送信周期は予め設定した最小周期以上となるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ情報の伝送システム。
【請求項4】 前記センサ装置は前記センサ情報の単位時間当たりの変化量が大きくなるほど前記センサ情報の送信周期を短くするようになっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のセンサ情報の伝送システム。
【請求項5】 前記車両用センサは操舵角センサであって、前記データ処理装置は、前記操舵角センサの操舵角検出値の単位時間当たりの変化量を算出し、当該変化量をもとに車両の横滑り抑制制御を行うようになっていることを特徴とする請求項4に記載のセンサ情報の伝送システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両用センサのセンサ情報を通信回線を介してデータ処理装置に伝送するようにしたセンサ情報の伝送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、車両においては、CAN(Controller Area Network)等の通信回線を介して、制御装置等の装置間のデータ伝送を行うようにしている。このCANを用いてデータ伝送を行う場合には、送信側では回線が空き状態となるまで待機状態となり、また、他の装置との間でデータ伝送が競合した場合には、優先順位の高いデータを送信する装置が優先的にデータ伝送を行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば操舵角センサで検出した舵角値を送信するセンサ装置と、操舵角センサで検出した舵角値をもとに所定の制御処理を行う制御装置とをCANで接続し、CANを介してセンサ装置から制御装置に操舵角センサの検出信号を送信するようにした場合には、センサ装置が所定周期ΔTで舵角値を制御装置宛に送信しようとしても、回線の使用状況によっては検出信号を送信することができないため、受信側の制御装置では定周期ΔTで舵角値を受信することができない場合がある。
【0004】また、送受信相互の送受信周期のずれ等によって、受信側装置における舵角値の受信周期が一定とならない場合がある。また、センサ装置が舵角値を出力している間に、サージノイズ等により信号値が変化した場合等、受信側で舵角値を受信することができなかったことを送信側で検出した場合には、センサ装置では再度同じデータを送信することになる。つまり、センサ装置で舵角値を算出しこれをセンサ情報として送信準備するタイミングと、受信側がこの舵角値を受信する受信タイミングとは必ずしも一致しないという問題がある。
【0005】そのため、例えば受信側の制御装置において、受信した舵角値をもとに、所定周期ΔTでその差分値を算出し、これをもとに制御処理を行うようになっている場合には、舵角値を定周期ΔTで受信することができないと、前回受信した舵角値を今回受信した舵角値として誤認識し、同一の舵角値の差分値をとってしまう場合がある。
【0006】また、前回の舵角値の受信タイミングが遅れたため、制御装置での差分値の算出周期ΔTの間に、受信タイミングの遅れた舵角値と真のタイミングの舵角値とを続けて受信してしまった場合には、受信タイミングの遅れた舵角値を認識せずに、前々回受信した舵角値を前回値、最新の舵角値を今回値として誤認識しこれらの差分値をとるため、実際には舵角値は一定の傾きで変化しており差分値が一定であるような場合でも、差分値を実際よりも大きな値に算出してしまうという問題がある。
【0007】つまり、図6に示すように、送信側のセンサ装置での舵角値の算出タイミングと、受信側である制御装置での舵角値の受信タイミングとが一致しない場合がある。そのため、実際の舵角値が150度の場合をみると、送信側では舵角値を150度として認識しているが、制御装置側での受信タイミングが遅れると、制御装置では今回値を140度として誤認識する。このとき、制御装置では、前回値を140度と認識しているから、差分値は零と誤認識してしまう。
【0008】そして、受信タイミングが遅れた150度の舵角値を遅れて受信すると、これに続けて真のタイミングで160度の舵角値を受信するため、制御装置での読み込み周期間に150度及び160度の舵角値を読み込むことになる。よって後に読み込んだ160度の舵角値を今回値として認識するから、前回の舵角値として誤認識している140度と今回の舵角値160度との差分値をとってしまう。そのため、実際には差分値は一定(この場合10度)であるにも関わらず差分値は20度として誤認識しこれに基づいて制御処理を行うことになる。
【0009】また、例えば、車両の横滑り抑制制御を行う車両挙動制御装置においては、操舵角をもとに目標ヨーレートを生成しているため、センサ装置からの受信タイミングが遅れると横滑り抑制制御において操舵角が変化していないと誤認識し、目標ヨーレートが固定されてしまう等といった問題がある。そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、センサ情報の受信周期のずれに起因してセンサ情報を受信する側の装置での処理精度が低下することを回避することの可能な、センサ情報の伝送システムを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るセンサ情報の伝送システムは、車両挙動を検出する車両用センサを有し当該車両用センサで検出したセンサ情報を通信回線を介して送信するセンサ装置と、前記通信回線を介して前記センサ情報を受信しこのセンサ情報をもとに所定の処理周期で所定の演算処理を実行するデータ処理装置と、を備えたセンサ情報の伝送システムにおいて、前記センサ装置は、前記センサ情報をこのセンサ情報の単位時間当たりの変化量に応じた周期で送信するようになっていることを特徴としている。
【0011】この請求項1に係る発明では、センサ装置からデータ処理装置にセンサ情報を送信する際に、センサ情報の単位時間当たりの変化量に応じた周期でセンサ情報が送信される。ここで、例えば、センサ情報から通信回線を介してセンサ情報を送信する際に、通信回線が混んでいること等によってセンサ情報の送信タイミングが遅れると、データ処理装置ではセンサ情報が変化していないと誤認識してしまう場合がある。
【0012】しかしながら、センサ情報の単位時間当たりの変化量に応じた周期で送信し、例えば、データ処理装置のセンサ情報に対する処理において、センサ情報の単位時間当たりの変化量が、センサ情報の受信タイミングが遅れた場合に影響を及ぼす変化量であるときには比較的短い周期で送信し、比較的影響を及ぼさない変化量であるときには比較的長い周期で送信することによって、データ処理装置でのセンサ情報の受信をより確実に行うことが可能となり、且つこれに伴う通信回線の定常的な情報量の増加を抑制することが可能となる。
【0013】また、本発明の請求項2に係るセンサ情報の伝送システムは、前記センサ情報の送信周期は予め設定した最大周期以下となるようになっていることを特徴としている。この請求項2に係る発明は、センサ情報の送信周期は最大周期以下となるようにしたから、センサ情報は少なくとも最大周期で送信されることになる。よって、例えば、センサ情報が送信されたかどうかに基づいて異常監視を行うようになっているシステムに適用した場合でも支障なく異常監視を行うことが可能となる。
【0014】また、本発明の請求項3に係るセンサ情報の伝送システムは、前記センサ情報の送信周期は予め設定した最小周期以上となるようになっていることを特徴としている。この請求項3に係る発明は、センサ情報の送信周期は最小周期以上となるようにしたから、センサ情報は最小周期以上で送信されることになる。よって、センサ情報が極短周期で送信されることによって通信回線の定常的な情報量の増加を制限することが可能となる。
【0015】また、請求項4に係るセンサ情報の伝送システムは、前記センサ装置は前記センサ情報の単位時間当たりの変化量が大きくなるほど前記センサ情報の送信周期を短くするようになっていることを特徴としている。この請求項4に係る発明は、センサ情報の単位時間当たりの変化量が大きくなるほどセンサ情報の送信周期は短くなる。ここで、データ処理装置においてセンサ情報を受信するタイミングがずれてデータ処理装置において認識しているセンサ情報とセンサ装置で送信したセンサ情報との間にずれが生じると、車両用センサで検出している実際の値とデータ処理装置で認識している値との間にずれが生じることになる。このずれは、センサ情報の単位時間当たりの変化量が大きくなるほど大きくなるが、前記変化量が大きくなるほど短い周期でセンサ情報が送信され、データ処理装置でより確実にセンサ情報を受信することが可能となるから、データ処理装置で認識しているセンサ情報と実際の値との差を抑制しデータ処理装置の処理性能の低下を抑制することが可能となる。
【0016】さらに、本発明の請求項5に係るセンサ情報の伝送システムは、前記車両用センサは操舵角センサであって、前記データ処理装置は、前記操舵角センサの操舵角検出値の単位時間当たりの変化量を算出し、当該変化量をもとに車両の横滑り抑制制御を行うようになっていることを特徴としている。この請求項5に係る発明は、車両用センサは操舵角センサであって、データ処理装置では、この操舵角センサで検出した操舵角検出値の単位時間当たりの変化量に基づいて車両の横滑り抑制制御を行っている。センサ装置では、操舵角センサの操舵角検出値の単位時間当たりの変化量が増加するほど送信周期を短くするから、データ処理装置ではより確実にセンサ情報を受信することが可能となり、また、操舵角検出値の単位時間当たりの変化量が小さいときには送信周期が長いから通信回線の定常的な情報量の増加を抑制することが可能となる。
【0017】このとき、操舵角検出値の単位時間当たりの変化量が小さいときには送信周期が長く、データ処理装置ではセンサ情報の読み込み周期間に新たにセンサ情報を受信しない場合があるが、センサ情報を受信しないということは操舵角検出値が変化していないということであるから、前回受信したセンサ情報に基づいて処理を行っても何ら問題はない。
【0018】
【発明の効果】本発明の請求項1乃至5に係るセンサ情報の伝送システムによれば、センサ装置ではセンサ情報の単位時間当たりの変化量に応じた周期でセンサ情報をデータ処理装置へ送信するようにしたから、単位時間当たりの変化量に適した周期でセンサ情報を送信することによって、通信回線の定常的な負荷の増加を抑制し且つ通信遅れに起因してデータ処理装置での処理性能が低下することを抑制することができる。
【0019】特に、請求項2に係るセンサ情報の伝送システムによれば、センサ情報の送信周期は最大周期以下となるようにしたから、センサ情報が変化しない場合等でもセンサ情報は最大周期で送信されるため、データ処理装置側でセンサ情報を用いて異常監視を行う場合等でも支障なく行うことができる。また、請求項3に係るセンサ情報の伝送システムによれば、センサ情報の送信周期は最小周期以上となるようにしたから、極短い周期でセンサ情報が送信されることにより通信回線の負荷が増大することを回避することができる。
【0020】また、請求項4に係るセンサ情報の伝送システムによれば、センサ情報の単位時間当たりの変化量が大きくなるほどその送信周期を短くするようにしたから、データ処理装置の処理性能の低下を抑制することができる。さらに、請求項5に係るセンサ情報の伝送システムによれば、操舵角センサの検出値をその単位時間当たりの変化量に応じて送信するから、データ処理装置では、操舵角センサの検出値を的確に受信することができ車両の横滑り抑制制御を良好に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明による伝送システムの一例を示す構成図であって、この伝送システムは車両に搭載されている。そして、図示しないステアリングシャフトの操舵角を検出するセンサ装置10と、当該センサ装置10からの舵角値をもとに車両の横滑り抑制制御を行う車両挙動制御装置20とがCAN等の通信回線Lによって接続されて構成されている。またこの通信回線Lには、前記センサ装置10、車両挙動制御装置20或いは図示しない他の制御装置と通信回線Lを介してデータ伝送を行う制御装置30が接続されている。
【0022】前記センサ装置10は、図示しないステアリングシャフトの回転に応じて例えば位相の異なる二種類のパルス信号を出力する操舵角センサ11と、操舵角センサ11の検出信号を定期的に読み込んでこれをもとに絶対舵角値θを算出する演算処理部12と、演算処理部12で算出した絶対舵角値θを通信回線Lを介して送信する通信制御部13とを備えている。
【0023】前記演算処理部12は、前記操舵角センサ11の検出信号を定期的に読み込み、これをもとに絶対舵角値θを算出してこの絶対舵角値θをセンサ情報とし、前回車両挙動制御装置20に送信した絶対舵角値θと今回算出した絶対舵角値θとの差の絶対値である絶対舵角値θの変化量Δθに応じた周期でセンサ情報を送信するように、センサ情報を所定の記憶領域に書き込んで通信制御部13に送信指示を行う。
【0024】この通信制御部13は、前記演算処理部12から送信指示を受けると、前記記憶領域に書き込まれたセンサ情報を通信回線Lを介して送信する。このとき通信制御部13では、通信回線Lに接続された他の制御装置が通信回線Lを使っている場合には、通信回線Lが空き状態となるまで待機し、また、他の装置或いは他の送信データと競合した場合には、優先順位の高い送信データを送信する装置が優先的にデータ伝送を行うようになっている。
【0025】一方、前記車両挙動制御装置20は、前記センサ装置10からセンサ情報を受信しこれを所定の記憶領域に書き込む通信制御部21と、この通信制御部21で受信したセンサ情報である絶対舵角値θを所定周期(例えば10ms程度)で読み込み、この絶対舵角値θをもとに、後述の横滑り抑制制御処理を行う演算処理部22とから構成される。
【0026】また、前記制御装置30は、通信回線Lを介してのデータの伝送制御を行う通信制御部31と、この通信制御部31で受信した受信データをもとに所定の処理を行うと共に、所定の処理を行って通信回線Lを介して送信する送信データを生成する演算処理部32とから構成されている。そして、車両挙動制御装置20の通信制御部21及び制御装置30の通信制御部31は、前記通信制御部13と同様に、前記演算処理部22、32で設定した送信データを通信回線Lを介して送信すると共に通信回線Lを介して伝送データを受信する。そして、データを送信するときには、通信回線Lに接続された他の制御装置が通信回線Lを使っている場合には、通信回線Lが空き状態となるまで待機し、他の制御装置と競合した場合には、優先順位にしたがって、優先順位の高いものが優先して伝送を行うようになっている。
【0027】図2は、センサ装置10の演算処理部12で実行されるセンサ情報生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。演算処理部12では、このセンサ情報生成処理を予め設定した所定周期の割込タイミングで実行するようになっていて、この周期が前記センサ情報を制御装置20に送信する最小周期TMIN (例えば1ms程度)となる。
【0028】まず、ステップS1で、操舵角センサ11の検出信号を取り込み、この検出信号をもとに絶対舵角値θを算出する。つまり、二種類のパルス信号からなる検出信号をもとに、図示しないステアリングホイールの回転方向及びその回転角度を求め、検出した回転方向に応じて前回算出した絶対舵角値θn-1 に積算し、現在の絶対舵角値θNOW を算出する。
【0029】次いで、ステップS2に移行し、カウント値CをC=C+1に更新した後、ステップS3に移行する。このステップS3では、予め記憶している前回車両挙動制御装置20に絶対舵角値を送信したときの値である絶対舵角値θOLD とステップS1で算出した絶対舵角値θNOW との差の絶対値、つまり、絶対舵角値の変化量Δθ(=|θNOW −θOLD |)を求め、これが予め設定したしきい値Δθα以上であるかどうか(|θNOW −θOLD |≧Δθα)を判定する。
【0030】ここで、前記しきい値Δθαは、前回絶対舵角値を車両挙動制御装置20に送信した時点における絶対舵角値θOLD からの変化量Δθが大きいかどうかを判定するためのしきい値である。例えば、この絶対舵角値θをもとに横滑り抑制制御処理を行う車両挙動制御装置20での絶対舵角値θの読み込み周期等に基づいて設定され、例えば2度程度に設定される。
【0031】そして、ステップS3の処理で|θNOW −θOLD |≧ΔθαでないときにはステップS4に移行し、カウント値CがCMAX 以上であるか(C≧CMAX )を判定し、C≧CMAX でないときにはそのまま処理を終了する。ここで、前記CMAX はセンサ情報の送信周期の最大周期TMAX を規定する値であって、例えば10ms程度に設定される。
【0032】一方、前記ステップS3で|θNOW −θOLD |≧Δθαであるとき、或いはステップS4でC≧CMAX であるときにはステップS5に移行し、センサ情報の送信処理を行う。つまり、ステップS1で算出した絶対舵角値θNOW を通信制御部13の所定の記憶領域に書き込み、通信制御部13にセンサ情報の送信指示を行う。
【0033】次いで、ステップS6に移行し、カウンタ値CをC=0にリセットし、ステップS1で算出した絶対舵角値θNOW をθOLD として更新記憶した後、処理を終了する。図3は、車両挙動制御装置20の演算処理部22で実行される横滑り抑制制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0034】演算処理部22では、この横滑り抑制制御処理を予め設定した所定周期の割込タイミングで実行する。そして、まずステップ11で、通信制御部22が通信回線Lを介して受信し所定の記憶領域に書き込んだ絶対舵角値θを読み込む。次いで、ステップS12に移行し、予め保持している前回読み込み時の絶対舵角値θと今回読み込んだ絶対舵角値θとを比較し、絶対舵角値が変化しているか否かを判定する。そして、絶対舵角値が変化している場合には、ステップS13に移行し、公知の横滑り抑制制御処理と同様にして、前回読み込み時の絶対舵角値θと今回読み込んだ絶対舵角値θとの差、つまり、操舵角の差分値に基づいて目標ヨーレートを算出し、これを所定の記憶領域に記憶した後、ステップS14に移行する。一方、前記ステップS12の処理で絶対舵角値が変化していない場合には、そのままステップS14に移行する。
【0035】このステップS14では、所定の記憶領域に記憶されている目標ヨーレートに基づいて、これを実現するための左右の制動力差を算出し、これを各車輪に割り振って各輪の制動力を算出し、この制動力をさせるように図示しない油圧回路を制御し、各車輪のホイールシリンダで発生する制動力を制御する。次に、上記実施の形態の動作を説明する。
【0036】図4は、センサ装置10で送信データとして設定されている絶対舵角値(図4(a))と、車両挙動装置20の通信制御部21で受信している絶対舵角値(図4(b))と、演算処理部22で読み込む絶対舵角値(図4(c))との対応を表したものである。なお、絶対舵角値θの添字は、絶対舵角値の数値を表し、例えばθ6 は、絶対舵角値θは“6”であることを表す。また、しきい値Δθα=2である。
【0037】センサ装置10では、図2に示すセンサ情報生成処理を実行し、所定の周期TMIN で操舵角センサ11の検出信号を読み込み、これをもとに絶対舵角値θNOWを算出し(ステップS1)、カウンタ値Cを“1”だけ更新する(ステップS2)。次いで、今回の絶対舵角値θNOW と前回絶対舵角値を送信したときの絶対舵角値θOLD との差を求め、これがしきい値Δθα以上であるかどうかを判定する(ステップS3)。図4において、時点t1 からt2 の間は、絶対舵角値θが“6”を維持し変化していないから、ステップS3からステップS4に移行し、カウント値CがCMAX を越えていない間は、カウント値Cの更新のみを行う。
【0038】そして、時点t2 でカウント値CがCMAX 以上となると、ステップS4からステップS5に移行し、絶対舵角値θの送信を行う。つまり、絶対舵角値θNOW を所定の記憶領域に書き込み通信制御部13に対して送信指示を行う。これによって、時点t2 で、絶対舵角値θ6 がセンサ情報として通信回線Lを介して車両挙動制御装置20宛てに送信され、絶対舵角値θNOW は変化していないが送信を行うことによって、最大周期TMAX が確保される。
【0039】そして、時点t2 以後、絶対舵角値θが増加すると、絶対舵角値の変化量Δθが増加するが、変化量Δθが小さい間は、ステップS3からS4に移行して絶対舵角値の送信は行わない。そして、変化量Δθが増加し、時点t3 で|θNOW −θOLD |≧Δθαとなると、ステップS3からS5に移行してこの時点での絶対舵角値θ8 を送信する。
【0040】以後、前回絶対舵角値を送信したときの絶対舵角値θOLD に対する変化量Δθがしきい値を越え、|θNOW −θOLD |≧Δθαを満足したときに、その時点における絶対舵角値θを車両挙動制御装置20あてに送信する。そして、絶対舵角値θの増加する割合が大きくなるにつれて、より早い時点で|θNOW −θOLD |≧Δθαを満足するから、絶対舵角値を送信する周期が短くなる。しかしながら、センサ情報生成処理を最小周期TMIN の割込タイミングで実行するようにしているから、時点t9 及びt10に示すように、絶対舵角値の変化量Δθがしきい値を越えてもその送信周期は最小周期TMIN に制限される。
【0041】一方、車両挙動制御装置20では、通信回線Lを介してセンサ装置10の通信制御部11が送信したセンサ情報を、通信制御部21が受信しこれを所定の記憶領域に書き込み、この受信したセンサ情報、つまり絶対舵角値θを演算処理部22が所定周期で読み込み(ステップS11)、これをもとに所定の横滑り抑制制御処理を行っている(ステップS12〜S14)
つまり、時点t11の読み込みタイミングでθ6 を読み込み、時点t12の読み込みタイミングでは、センサ装置10から新たなセンサ情報を受信していないから、一周期前の時点t11で読み込んだ絶対舵角値θ6 を読み込むことになる。
【0042】このとき、センサ装置10では、絶対舵角値θの変化量Δθがしきい値Δθα以上となったときに送信するようにしているから、センサ情報を新たに受信しないということは、絶対舵角値θが前回受信した絶対舵角値と同等であるとみなすことができる。よって、車両挙動制御装置20で、一周期前の時点t11での絶対舵角値θ6 に基づいて目標ヨーレートを算出しこれに基づいて制動力を制御しても何ら問題はない。
【0043】また、センサ装置10では、絶対舵角値の変化量Δθがしきい値Δθαより小さい場合には、絶対舵角値θは変化していないとみなして絶対舵角値を送信しないから、車両挙動制御装置20で読み込む絶対舵角値は前回値と同じとなる。よって、ステップS12の処理からそのままステップS14に移行することになって、前回算出時の目標ヨーレートに基づいて制動力制御処理を行うことになる。したがって、微小な絶対舵角値θの変化に対して目標ヨーレートを算出する必要がないから、その分車両挙動制御装置20での処理負荷が軽減されることになる。
【0044】そして、通信回線Lが混んでいる等によってセンサ装置10が所定の送信タイミングである時点t4 でセンサ情報を送信することができず、センサ情報θ22の送信タイミングが遅れると、車両挙動制御装置20でもこのセンサ情報θ22を受信するタイミングが遅れることになる。しかしながら、車両挙動制御装置20では、読み込み周期にしたがって時点t13でセンサ情報を読み込むから、時点t4でのセンサ情報の送信タイミングが遅れた場合でも、時点t13でのセンサ情報の読み込みタイミングよりも以前、つまり、時点t5 でのセンサ情報の送信が正常に行われていれば、車両挙動制御装置20は時点t5 で送信されるセンサ情報θ24を読み込むことになるから、センサ情報の通信遅れが発生した場合でも車両挙動制御装置20に何ら影響を与えることはない。
【0045】一方、正常に通信が行われている状態から時点t5 でセンサ情報θ24の送信タイミングが車両挙動制御装置20の時点t13の読み込みタイミングよりも遅れると、車両挙動制御装置20では、時点t13の読み込みタイミングでセンサ情報θ24を読み込むことができない。しかしながら、時点t4 の送信タイミングで送信されたセンサ情報θ22を受信しているから、このセンサ情報θ22をもとに処理を行うことになる。
【0046】このとき、センサ装置10では絶対舵角値の変化量Δθがしきい値Δθαを超えたタイミングでセンサ情報を送信するようにしているから、時点t13で読み込むセンサ情報(つまり、時点t4 で送信されたセンサ情報θ22)と真のセンサ情報(つまり、θ24)との誤差はしきい値Δθαとなる。よって、車両挙動制御装置20では、最大でもしきい値Δθαの誤差の範囲内で絶対舵角値θを得ることができる。
【0047】また、このとき絶対舵角値の変化量Δθがしきい値Δθαを越えたときに絶対舵角値を送信し、絶対舵角値θが単位時間当たりに変化する割合が増加するにつれてその送信周期を短くするようにしたから、車両挙動制御装置20では、絶対舵角値θが単位時間当たりに変化する割合が増加するにつれて、センサ情報を受信する回数が増える。つまり、例えば時点t13から時点t14の車両挙動制御装置20での一周期間に、センサ装置10から時点t6 ,t7 ,t8 でセンサ情報が送信される。よって、車両挙動制御装置20での一周期間におけるセンサ情報を受信する機会が増えるから、センサ情報の受信タイミングが遅れた場合でも真のセンサ情報と車両挙動制御装置20で認識しているセンサ情報との誤差を抑制することができる。
【0048】また、通信遅れが生じた場合の車両挙動制御装置20で認識しているセンサ情報の誤差が大きくなるとき、つまり、絶対舵角値の変化量Δθが大きいときには送信周期を短くし、通信遅れが生じた場合の誤差が小さい絶対舵角値の変化量Δθが小さいときには送信周期を大きくするようにしたから、通信回線L上の定常的な情報量の増加を抑制し、且つ通信遅れに伴う車両挙動制御装置20に与える影響を抑制することができる。
【0049】また、絶対舵角値θが単位時間当たりの変化する割合が増大すると、これに伴ってセンサ装置10でのセンサ情報の送信周期が短くなり、したがって、通信回線Lで伝送される情報量が増加することになる。しかしながら、センサ情報の送信周期を、最小周期TMIN 以上となるように制限しているから、通信回線Lの負荷が増大することを回避することができる。
【0050】また、センサ装置10でのセンサ情報の送信周期に最大周期TMAX を設けたから、絶対舵角値θが変化しない場合でも最大周期TMAX で送信することになる。したがって、例えばセンサ装置10からセンサ情報を受信しているかどうかに基づいて、センサ装置10の異常監視を行うようになっている場合でも、十分適用することができる。
【0051】なお、上記実施の形態においては、センサ装置10でのセンサ情報生成処理の実行周期を最小周期TMIN に応じて設定し、また、カウンタ値CがCMAX を超えたときにセンサ情報を送信することにより最大周期TMAX を規定するようにした場合について説明したが、これに限るものではなく、要は、図5に示すような特性でセンサ情報の送信が行われるようにすればよい。
【0052】つまり、横軸を、前回絶対舵角値を送信してからの絶対舵角値の変化量Δθ、縦軸を周期とした場合に、変化量Δθが最小変化量ΔθMIN 以下のときには、周期は最大周期TMAX となり、変化量Δθが最大変化量ΔθMAX 以上のときには、周期は最小周期TMIN となり、変化量Δθが最小変化量ΔθMIN より大きく最大変化量ΔθMAX よりも小さいときには周期は最大周期TMAX から最小周期TMINの間の値となり、変化量Δθが増加するにつれて、周期が減少するようにすればよい。
【0053】また、上記実施の形態において、データ処理装置10でセンサ情報を新たに受信していないということは、センサ情報つまり絶対舵角値θが変化していないとみなすことができるから、例えば車両挙動制御装置20の通信制御装置21において、通信回線Lを介してセンサ情報を受信したときに、例えばフラグをセットするようにし、前記横滑り抑制制御処理において、まず、フラグがセットされているかどうかを判定し、フラグがセットされているときには、これをリセットして前記ステップS12及びS13の処理を実行して目標ヨーレートを算出するようにし、逆に、フラグがセットされていないときには、前記図3におけるステップS12及びS13の舵角値の比較処理及び目標ヨーレート算出処理を省略するようにしてもよい。
【0054】また、上記実施の形態においては操舵角センサ11の検出信号をもとに絶対操舵角θを算出しこれを送信するようにした場合について説明したが、前記検出信号をもとに算出した回転角度を送信するようにした場合でも適用することができる。また、操舵角センサ11に限らず、前後加速度センサ、横加速度センサ、車速センサ等、その他のセンサであっても適用することができ、特に連続的に変化するセンサ値の差分値をもとに制御を行うような伝送システムに適用すれば効果的である。
【0055】また、センサ装置10では、操舵角センサ11のみのセンサ情報を送信するようにした場合について説明したが、複数のセンサのセンサ情報をセンサ装置10から送信するようにした場合でも適用することができる。また、データ処理装置として車両の横滑り抑制制御処理を行う車両挙動制御装置を適用した場合について説明したが、これに限らず、操舵角θを利用して処理を行う装置であれば適用することができる。
【0056】さらに、上記実施の形態においては通信回線としてCANを適用する場合について説明したがこれに限るものではない。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年6月21日(1999.6.21)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外2名)
【公開番号】 特開2001−1846(P2001−1846A)
【公開日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願番号】 特願平11−173761