トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 燃料電池自動車の冷却装置
【発明者】 【氏名】小川 隆行

【氏名】今関 光晴

【氏名】牛尾 健

【氏名】吉川 守

【要約】 【課題】冷却装置の構成を大型化または冗長化することなく、燃料電池を冷却して適温範囲に維持でき、走行用モータを含む熱発生源を効率よく冷却して適温範囲に維持することが可能な燃料電池自動車の冷却装置を提供する。

【解決手段】燃料電池(1)を冷却する1次冷却液の1次循環流路(12)と、走行用モータ(2)を含む熱発生源を冷却する2次冷却液の2次循環流路(14)と、1次冷却液と2次冷却液との間で熱交換させる第1熱交換器(15)と、2次冷却液と外気との間で熱交換させる第2熱交換器(16)および第3熱交換器(21)を備え、2次循環流路(14)は、第1熱交換器(15)、第2熱交換器(16)を経由するメイン循環流路(14A)と、第3熱交換器(21)、走行用モータ(2)等を経由するサブ循環流路(14B)とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料電池が走行用モータの電源として搭載された燃料電池自動車の冷却装置であって、1次循環ポンプにより循環される1次冷却液によって前記燃料電池を冷却可能に構成された1次循環流路と、2次循環ポンプにより循環される2次冷却液によって前記走行用モータを含む熱発生源を冷却可能に構成された2次循環流路と、前記1次循環流路内の1次冷却液と2次循環流路内の2次冷却液との間で熱交換させる第1熱交換器と、前記2次循環流路内の2次冷却液と外気との間で熱交換させる第2熱交換器および第3熱交換器とを備え、前記2次循環流路は、2次循環ポンプから第1熱交換器および第2熱交換器を経由して2次循環ポンプに戻るメイン循環流路と、2次循環ポンプから第3熱交換器、前記走行用モータを含む熱発生源および第2熱交換器を経由して2次循環ポンプに戻るサブ循環流路とを有することを特徴とする燃料電池自動車の冷却装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池が走行用モータの電源として搭載された燃料電池自動車に関し、詳しくは、前記燃料電池や走行用モータを含む熱発生源を冷却する燃料電池自動車の冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エンジンに替えて走行用モータを搭載する各種の電気自動車が開発されている。そして、この種の電気自動車の一つとして、例えばPEMFC(ProtonExchange Membrane Fuel Cell)と略称される水素イオン交換膜型燃料電池(以下、PEM型燃料電池という。)を走行用モータの電源として搭載する燃料電池自動車の開発が急速に進められている。
【0003】前記PEM型燃料電池は、発電単位であるセルを多数積層した構造のスタックとして構成されている。前記各セルは、水素供給路を有するアノード側セパレータと酸素供給路を有するカソード側セパレータとの間にMEA( Membrane Electrode Assembly)と略称される膜・電極接合体を挟み込んだ構造を有している。そして、前記MEAは、水素イオン交換膜の片面にアノード側電極触媒層およびガス拡散層が順次積層され、水素イオン交換膜の他の片面にカソード側電極触媒層およびガス拡散層が順次積層されて構成されている。
【0004】このようなPEM型燃料電池は、前記MEAの湿潤状態で水素イオンがアノード側からカソード側へ水素イオン交換膜を通過することにより、各セル単位で1V程度の起電力を発生する。そして、このPEM型燃料電池は、例えば75〜85℃程度の温度環境において最も安定した出力状態が得られるのであり、出力電流制御装置から駆動ユニットを介して走行用モータを駆動するように回路構成されている。
【0005】ここで、この種の燃料電池を搭載する燃料電池自動車には、燃料電池や走行用モータを含む熱発生源を冷却する冷却装置が設けられている。例えば、特開平11−178116号公報には、電動冷却ファン付きのラジエータを循環する冷却水によって燃料電池や車両駆動用モータ(走行用モータ)を冷却する冷却装置が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記公報に開示された冷却装置においては、単一のラジエータを循環する冷却水によって燃料電池、圧縮機、改質器を含む燃料電池システムの他、電力変換機や車両駆動用モータ(走行用モータ)をも冷却している。このため、前記ラジエータには大きな冷却能力が要求され、ラジエータが大型化するという問題がある。また、燃料電池や走行用モータをそれぞれ最適温度に冷却するのが困難であるという問題がある。もっとも、燃料電池の冷却系と走行用モータ等の冷却系とを完全に独立させれば、このような問題は解消できるが、その場合には、冷却装置の構成が冗長化する。
【0007】そこで、本発明は、冷却装置の構成を大型化または冗長化することなく、燃料電池を冷却して適温範囲に維持でき、走行用モータを含む熱発生源を効率よく冷却して適温範囲に維持することが可能な燃料電池自動車の冷却装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決する手段として、本発明に係る燃料電池自動車の冷却装置は、燃料電池が走行用モータの電源として搭載された燃料電池自動車の冷却装置であって、1次循環ポンプにより循環される1次冷却液によって前記燃料電池を冷却可能に構成された1次循環流路と、2次循環ポンプにより循環される2次冷却液によって前記走行用モータを含む熱発生源を冷却可能に構成された2次循環流路と、前記1次循環流路内の1次冷却液と2次循環流路内の2次冷却液との間で熱交換させる第1熱交換器と、前記2次循環流路内の2次冷却液と外気との間で熱交換させる第2熱交換器および第3熱交換器とを備え、前記2次循環流路は、2次循環ポンプから第1熱交換器および第2熱交換器を経由して2次循環ポンプに戻るメイン循環流路と、2次循環ポンプから第3熱交換器、前記走行用モータを含む熱発生源および第2熱交換器を経由して2次循環ポンプに戻るサブ循環流路とを有することを特徴とする。
【0009】本発明に係る燃料電池自動車の冷却装置では、1次循環ポンプおよび2次循環ポンプの作動により、1次冷却液が1次循環流路を循環し、2次冷却液が2次循環流路のメイン循環流路およびサブ循環流路を循環する。そして、1次循環流路を循環する1次冷却液は、燃料電池を冷却して吸熱し、第1熱交換器により2次冷却液と熱交換して放熱する。一方、2次循環流路のメイン循環流路を循環する2次冷却液は、第1熱交換器で1次冷却液と熱交換して吸熱し、第2熱交換器で外気と熱交換して放熱する。また、2次循環流路のサブ循環流路を循環する2次冷却液は、第3熱交換器で外気と熱交換して放熱し、走行用モータを含む熱発生源を冷却して吸熱し、第2熱交換器で外気と熱交換して放熱する。
【0010】ここで、前記燃料電池は、通常、固体高分子型燃料電池に属するPEM型燃料電池であるが、走行用モータの電源として車両に搭載される限り、他の型式の燃料電池であってもよい。また、走行用モータは、2次冷却液により冷却できる限り、如何なる型式のものであってもよい。
【0011】なお、本発明の燃料電池自動車の冷却装置において、燃料電池の液絡現象を防止するためには、前記1次循環流路を絶縁性材料またはイオンの溶出し難い材料により構成し、前記1次冷却液の導電率を低く維持するのが好ましい。この場合、1次冷却液としては、純水または凝固点の低いLLC(Long Life Coolant)と略称されるエチレングリコール系の不凍液をイオン交換器と併用して使用することが好ましいが、絶縁油を使用することもできる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係る燃料電池自動車の冷却装置の一実施形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態に係る燃料電池自動車の冷却装置の回路構成図、図2は図1に示された燃料電池のセル構造を示す部分断面図である。
【0013】一実施形態に係る燃料電池自動車の冷却装置は、図1に示すように、燃料電池(FC)1が走行用モータ(EVM)2の電源として搭載された燃料電池自動車を対象としている。この燃料電池自動車は、前記燃料電池(FC)1のカソード側に空気(酸素)を供給する空気供給系3と、その排気系4とを備えている。また、前記燃料電池(FC)1のアノード側に水素ガスを供給する水素ガス供給系5を備えている。
【0014】前記燃料電池1の空気供給系3には、上流側から下流側へ向かって消音器3A、エアフィルタ3B、過給機(S/C)3C、インタークーラ(INTCLR)3Dが配設されている。また、燃料電池1の水素ガス供給系5には、上流側から下流側へ向かって水素タンク5A、制御弁5B、エゼクタ5Cが配設されており、燃料電池1から回収された水素ガスが前記エゼクタ5Cに還流されるように構成されている。
【0015】前記燃料電池1は、出力電流制御装置(DC/DC)6を介してバッテリ7および駆動ユニット(PDU)8に給電するように回路構成されている。そして、この駆動ユニット8が少なくとも前記走行用モータ2および前記過給機3Cの駆動モータ3Eを駆動制御するように回路構成されている。また、前記走行用モータ2は、燃料電池自動車の駆動輪9,9に伝動構成されている。そして、前記燃料電池1は、燃料電池自動車の客室の床下に配設された燃料電池ボックス10内に収容されている。
【0016】前記燃料電池1は、発電単位であるセルが多数積層された構造のPEM型燃料電池であり、例えば75〜85℃程度の温度環境において、最も安定した出力状態が得られる。ここで、図2に示すように、燃料電池1を構成する各セルCは、酸素供給路C1を内面側に有するカソード側セパレータC2と、水素供給路C3を内面側に有するアノード側セパレータC4との間に、シールC5を有する膜・電極接合体(MEA)C6を挟み込んだ構造を備えている。この膜・電極接合体C6は、水素イオン交換膜C7の片面にカソード側電極触媒層C8およびガス拡散層C9が順次積層され、水素イオン交換膜C7の他の片面にアノード側電極触媒層C10およびガス拡散層C11が順次積層されて構成されている。そして、前記アノード側セパレータC4の外面側には、冷却液流路C12が形成されている。
【0017】一実施形態に係る燃料電池自動車の冷却装置は、図1に示すように、1次循環ポンプ11により循環される1次冷却液によって前記燃料電池1を冷却可能に構成された1次循環流路12と、2次循環ポンプ13により循環される2次冷却液によって熱発生源である前記走行用モータ2、駆動ユニット8、過給機3Cの駆動モータ3Eおよび出力電流制御装置6を冷却可能に構成された2次循環流路14とを備えている。また、1次循環流路12内の1次冷却液と2次循環流路14内の2次冷却液との間で熱交換させる第1熱交換器15と、2次循環流路14内の2次冷却液と外気との間で熱交換させる第2熱交換器16および第3熱交換器21とを備えている。なお、前記出力電流制御装置6に対する2次循環流路14は図1において省略されている。
【0018】前記1次循環流路12は、1次循環ポンプ11から燃料電池1の冷却液流路C12、第1熱交換器15を介して1次循環ポンプ11に戻る1次冷却液の循環流路を主体として構成されている。第1熱交換器15と1次循環ポンプ11との間の流路にはサーモスタットバルブ17が介設され、このサーモスタットバルブ17から分岐するバイパス流路12Aが第1熱交換器15と並列に設けられている。前記サーモスタットバルブ17は、開弁温度が例えば85℃に設定されており、1次冷却液の温度が少なくとも75℃未満では1次循環ポンプ11と第1熱交換器15との間の流路を閉じ、1次冷却液の温度が85℃に達するとその流路を開くように構成されている。
【0019】また、前記1次循環流路12には、1次循環ポンプ11と燃料電池1との間の流路から分岐する連通路12Bが前記バイパス流路12Aと並列に設けられている。そして、この連通路12Bには、1次循環流路12中に溶出する金属イオンを吸着するためのイオン交換器18が介設されている。
【0020】前記バイパス流路12Aおよび連通路12Bを含む1次循環流路12は、前記第1熱交換器15と共に燃料電池ボックス10内に収容されている。第1熱交換器15は燃料電池1の近傍に配置されており、これに伴ない、前記1次循環流路12は管路長が短縮化されている。そして、この短縮化された1次循環流路12は、燃料電池1の液絡現象を防止するため、イオンの溶出し難い適宜の材料、例えばステンレス鋼管、合成樹脂管などの絶縁材料により構成されている。なお、前記液絡現象を防止する上で、1次冷却液としては、導電率が低く維持された純水またはLLC(Long Life Coolant)と略称されるエチレングリコール系の不凍液を使用することが好ましいが、絶縁油を使用することもできる。
【0021】前記2次循環流路14は、2次循環ポンプ13から第1熱交換器15、インタークーラ3D、第2熱交換器16を経由して2次循環ポンプ13に戻るメイン循環流路14Aを備えている。また、この2次循環流路14は、2次循環ポンプ13から第3熱交換器21、熱発生源である前記走行用モータ2、駆動ユニット8、過給機3Cの駆動モータ3Eおよび出力電流制御装置6、第2熱交換器16を経由して2次循環ポンプ13に戻るサブ循環流路14Bを備えている。
【0022】前記走行用モータ2、駆動ユニット8、過給機3Cの駆動モータ3Eおよび出力電流制御装置6は、前記サブ循環流路14Bに対して相互に並列に接続されている。すなわち、前記走行用モータ2のステータの周囲に形成されたウォータジャケット(図示省略)、駆動ユニット8のヒートシンクに形成されたウォータジャケット(図示省略)、駆動モータ3Eのステータの周囲に形成されたウォータジャケット(図示省略)および出力電流制御装置6のヒートシンクに形成されたウォータジャケット(図示省略)がサブ循環流路14Bに対し相互に並列に接続されている。
【0023】前記第1熱交換器15は、2次循環流路14のメイン循環流路14Aを循環する2次冷却液によって1次循環流路12を循環する1次冷却液を冷却する液冷式の熱交換器である。また、第2熱交換器16は、電動冷却ファン19が付設された空冷式の熱交換器であり、2次循環流路14を循環する2次冷却液を走行風または電動冷却ファン19の送風によって冷却する。さらに、第3熱交換器21は、電動冷却ファン22が付設された空冷式の熱交換器であり、2次循環流路14のサブ循環流路14Bを循環する2次冷却液を電動冷却ファン22の送風によって冷却する。
【0024】図4に示すように、前記1次循環ポンプ11および2次循環ポンプ13は、回転軸20A,20Aが両側に突設された単一のポンプ駆動モータ20の両側に回転駆動可能に接続されている。すなわち、1次循環ポンプ11のハウジング11Aがポンプ駆動モータ20の片側に固定され、1次循環ポンプ11のインペラ11Bが一方の回転軸20Aに接続されている。同様に、2次循環ポンプ13のハウジング13Aがポンプ駆動モータ20の他の片側に固定され、2次循環ポンプ13のインペラ13Bが他方の回転軸20Aに接続されている。
【0025】なお、前記1次循環ポンプ11が介設される1次循環流路12は、燃料電池1の冷却液流路C12による圧力損失が大きいため、1次循環ポンプ11の流入口11Cの内径は、2次循環ポンプ13の流入口13Cの内径より若干大きく設定されている。ちなみに、1次循環ポンプ11の流入口11Cの内径は、例えば29mmに設定され、2次循環ポンプ13の流入口13Cの内径は、例えば27mmに設定されている。
【0026】前記1次循環ポンプ11のインペラ11Bは、図4の(a)に示すように6枚羽根で構成され、前記2次循環ポンプ13のインペラ13Bは、図4の(b)に示すように7枚羽根で構成されている。1次循環ポンプ11の6枚羽根のインペラ11Bの直径は、2次循環ポンプ13の7枚羽根のインペラ13Bの直径より小さく設定されている。ちなみに、1次循環ポンプ11のインペラ11Bの直径は、例えば45mmに設定され、2次循環ポンプ13のインペラ11Bの直径は、例えば53mmに設定されている。
【0027】前記ポンプ駆動モータ20は、駆動ユニット8により駆動が制御される高圧電源モータである。このポンプ駆動モータ20によって同一回転数で駆動される前記1次循環ポンプ11および2次循環ポンプ13の相互の流量比は、1次冷却液の熱容量を示す比熱および密度、燃料電池1の発熱量、第1熱交換器15の熱交換率などの1次循環流路12の特性と、2次冷却液の熱容量を示す比熱および密度、第2熱交換器16および第3熱交換器21の熱交換率などの2次循環流路14の特性とに応じて設定される。
【0028】すなわち、ポンプ駆動モータ20の回転数が規定値であり、第2熱交換器16および第3熱交換器21が規定の風量で規定温度に放熱し、燃料電池1の出力が最大である条件の下に、第1熱交換器15の入口側の1次冷却液の温度と出口側の1次冷却液の温度との温度差が規定値(例えば10℃)となるように1次循環ポンプ11の流量が設定され、第1熱交換器15の出口側の1次冷却液の温度が規定値(例えば75℃)となるように2次循環ポンプ13の流量が設定される。具体的には、第1熱交換器15の入口側の1次冷却液の温度が85℃、第1熱交換器15の出口側の1次冷却液の温度が75℃、第2熱交換器16の入口側の2次冷却液の温度が70℃、第2熱交換器16の出口側の2次冷却液の温度が60℃となるように、前記1次循環ポンプ11と2次循環ポンプ13との流量比が設定される。
【0029】以上のように構成された一実施形態の燃料電池自動車の冷却装置においては、駆動ユニット8により単一のポンプ駆動モータ20が駆動されることにより、1次循環ポンプ11および2次循環ポンプ13が所定の同一回転数で所定の流量比により駆動され、所定の流量比で1次冷却液が1次循環流路12を循環し、2次冷却液が2次循環流路14のメイン循環流路14Aおよびサブ循環流路14Bを循環する。
【0030】ここで、1次循環流路12のサーモスタットバルブ17を通過する1次冷却液の温度が85℃未満である燃料電池1の冷態時においては、サーモスタットバルブ17が第1熱交換器15の出口側の流路を閉じるため、1次冷却液は、1次循環ポンプ11から燃料電池1の冷却液流路C12、バイパス流路12A、サーモスタットバルブ17を介して1次循環ポンプ11へと循環する。そして、第1熱交換器15を迂回して循環する1次冷却液は、燃料電池1の冷却液流路C12を通過する過程で吸熱して漸次温度上昇することにより、燃料電池1を暖機する。この場合、1次循環流路12は、管路長が短縮化されており、循環する1次冷却液の液量が少ないため、1次冷却液は短時間で85℃付近まで温度上昇する。従って、燃料電池1の暖機は迅速に完了する。
【0031】1次循環流路12のサーモスタットバルブ17を通過する1次冷却液の温度が85℃に達して燃料電池1の暖機が完了すると、サーモスタットバルブ17が第1熱交換器15の出口側の流路を開くため、1次冷却液は、1次循環ポンプ11から燃料電池1の冷却液流路C12、第1熱交換器15、サーモスタットバルブ17を介して1次循環ポンプ11へと1次循環流路12を循環する。そして、第1熱交換器15を通過して循環する1次冷却液は、燃料電池1の冷却液流路C12を通過する過程で吸熱して燃料電池1を冷却し、第1熱交換器15により2次循環流路14の2次冷却液と熱交換して放熱する。こうして1次冷却液の温度は、第1熱交換器15の入口側で85℃程度に維持され、第1熱交換器15の出口側で75℃程度に維持される。
【0032】2次冷却液は、一方で2次循環ポンプ13から第1熱交換器15側へ分流し、インタークーラ3D、第2熱交換器16を経由して2次循環ポンプ13へとメイン循環流路14Aを循環する。そして、このメイン循環流路14Aを循環する2次冷却液は、第1熱交換器15を通過する過程で1次循環流路12の1次冷却液と熱交換して吸熱し、インタークーラ3Dを通過する過程で空気供給系3の過給機3Cにより圧縮加熱された空気と熱交換して吸熱し、第2熱交換器16を通過する過程で走行風または電動冷却ファン19の送風により外気と熱交換して放熱する。
【0033】また、2次冷却液は、他方で2次循環ポンプ13から第3熱交換器21側へ分流し、走行用モータ2、過給機3Cの駆動モータ3E、駆動ユニット8、出力電流制御装置6、第2熱交換器16を経由して2次循環ポンプ13へとサブ循環流路14Bを循環する。そして、このサブ循環流路14Bを循環する2次冷却液は、第3熱交換器21を通過する過程で電動冷却ファン22の送風により外気と熱交換して放熱し、走行用モータ2のウォータジャケット(図示省略)、駆動モータ3Eのウォータジャケット(図示省略)、駆動ユニット8のウォータジャケット(図示省略)および出力電流制御装置6のヒートシンクに形成されたウォータジャケット(図示省略)を分流する過程でこれらを冷却して吸熱し、第2熱交換器16に合流してこれを通過する過程で走行風または電動冷却ファン19の送風により外気と熱交換して放熱する。
【0034】こうして、2次冷却液の温度は、第1熱交換器15の入口側で65℃程度に、その出口側で75℃程度に維持され、第2熱交換器16の入口側で75℃程度に、その出口側で65℃程度に維持される。また、この2次冷却液の温度は、第3熱交換器21の入口側で65℃程度に、その出口側で60℃程度に維持される。
【0035】従って、一実施形態の燃料電池自動車の冷却装置によれば、燃料電池1を第1熱交換器15で放熱された1次冷却液により冷却して75〜85℃の適温範囲に維持することができる。また、走行用モータ2、過給機3Cの駆動モータ3E、駆動ユニット8および出力電流制御装置6を含む熱発生源を第2熱交換器16および第3熱交換器21で放熱された2次冷却液により効率的に冷却して適温範囲に維持することができる。
【0036】一方、一実施形態の燃料電池自動車の冷却装置は、燃料電池1を冷却する1次冷却液の放熱装置として第1熱交換器15を備え、走行用モータ2、過給機3Cの駆動モータ3E、駆動ユニット8および出力電流制御装置6を含む熱発生源を冷却する2次冷却液の放熱装置として第2熱交換器16および第3熱交換器21を備えているため、放熱装置の大型化による冷却装置の大型化を回避することができる。また、前記第1熱交換器15は、1次循環流路12内の1次冷却液と2次循環流路14内の2次冷却液との間で熱交換させるように構成されているため、冷却装置の冗長化を回避することができる。
【0037】また、1次冷却液を循環させる1次循環ポンプ11および2次冷却液を循環させる2次循環ポンプ13は、回転軸20A,20Aが両側に突設された単一のポンプ駆動モータ20を兼用してその両側に回転駆動可能に接続されているため、冷却装置の構成がより簡素化される。そして、この場合、単一のポンプ駆動モータ20の作動を制御するという簡単な制御により、2次冷却液で冷却された1次冷却液によって燃料電池1を適温範囲に冷却することが可能となる。また、2次冷却液によって、走行用モータ2、駆動モータ3E、駆動ユニット8および出力電流制御装置6を含む熱発生源を燃料電池1とは独立して冷却することができる。
【0038】なお、一実施形態の燃料電池自動車の冷却装置においては、燃料電池1の近傍に第1熱交換器15が配置されることにより、1次循環流路12の管路長が短縮化されている。このため、燃料電池1を冷却または暖機する1次冷却液の液量が少なくなり、燃料電池1の暖機時には、1次冷却液が短時間に温度上昇してその暖気時間を短縮化することができる。
【0039】また、バイパス流路12Aおよび連通路12Bを含む1次循環流路12がイオンの溶出し難い適宜の材料、例えばステンレス鋼管、合成樹脂管などの絶縁材料により構成されているため、1次冷却液として、導電率が低く維持された純水またはLLCあるいは絶縁油を使用することにより、燃料電池1の液絡現象を防止することができる。この場合、LLCまたは絶縁油は凝固点が低いため、寒冷地においても冷却装置の機能を損なうことがない。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る燃料電池自動車の冷却装置においては、1次循環ポンプおよび2次循環ポンプの作動により、1次冷却液が1次循環流路を循環し、2次冷却液が2次循環流路のメイン循環流路およびサブ循環流路を循環する。そして、1次循環流路を循環する1次冷却液は、燃料電池を冷却して吸熱し、第1熱交換器により2次冷却液と熱交換して放熱する。一方、2次循環流路のメイン循環流路を循環する2次冷却液は、第1熱交換器で1次冷却液と熱交換して吸熱し、第2熱交換器で外気と熱交換して放熱する。また、2次循環流路のサブ循環流路を循環する2次冷却液は、第3熱交換器で外気と熱交換して放熱し、走行用モータを含む熱発生源を冷却して吸熱し、第2熱交換器で外気と熱交換して放熱する。
【0041】すなわち、本発明に係る燃料電池自動車の冷却装置によれば、燃料電池を第1熱交換器で放熱された1次冷却液により冷却して適温範囲に維持でき、走行用モータを含む熱発生源を第2熱交換器および第3熱交換器で放熱された2次冷却液により効率よく冷却して適温範囲に維持することができる。
【0042】一方、本発明の燃料電池自動車の冷却装置は、燃料電池を冷却する1次冷却液の放熱装置として第1熱交換器を備え、走行用モータを含む熱発生源を冷却する2次冷却液の放熱装置として第2熱交換器および第3熱交換器を備えているため、放熱装置の大型化による冷却装置の大型化を回避することができる。また、前記第1熱交換器は、1次循環流路内の1次冷却液と2次循環流路内の2次冷却液との間で熱交換させるように構成されているため、冷却装置の冗長化を回避することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【代理人】 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
【公開番号】 特開2001−339808(P2001−339808A)
【公開日】 平成13年12月7日(2001.12.7)
【出願番号】 特願2000−155620(P2000−155620)