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【発明の名称】 電気車の制御装置
【発明者】 【氏名】佐野 孝

【要約】 【課題】電気車の制御において、機械ブレーキの応答速度は電気ブレーキのそれに比して遅いため、空転・滑走等により電気ブレーキと機械ブレーキのアンバランスのため、再び空転・滑走を誘発したり、減速度が変動し乗り心地が悪化していた。

【解決手段】電気ブレーキ力の減少または増加方向に対する追従速度を切替える手段を有するフィルタ装置を、ブレーキ制御装置の入力側に具備し、空転・滑走検知信号の有無に応じてフィルタ装置の追従速度を切替える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気車制御装置と、電動機と、ブレーキ制御装置とから成り、前記電気車制御装置内には、インバータ制御部、推進・制動力制御部、粘着制御部、制動力演算部、速度演算部、空転・滑走検知部、電流検出器、電流演算部とを具備し、それぞれの指令値に基づいて推進力および制動力を制御し、制動時には電気ブレーキ力を演算して前記ブレーキ制御装置に出力し、ブレーキ制御装置は前記電気ブレーキ力と所望のブレーキ力指令との差を演算し、電気ブレーキ力の不足分を別系統のブレーキ装置で補足するよう動作し、さらに前記電気車制御装置内の空転・滑走検知信号によってブレーキ力指令を低減して滑走状態を抑制する再粘着制御を行う電気車の制御装置において、前記電気ブレーキ力の減少または増加方向に対する追従速度を切替える手段を有するフィルタ装置を前記ブレーキ制御装置の入力側に具備し、前記空転・滑走検知信号の有無に応じて、前記フィルタ装置の追従速度を切替えることを特徴とした電気車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鉄道車両における電気車の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、鉄道車両における電気車の制御装置の制御性能も改善され、推進力や制動力の高速応答制御も可能になってきた。電気ブレーキによる制動についても一般化しつつあるが、システムの要求する全ブレーキ力を電気的に得られない場合もあるため、空気圧や油圧などを用いて摺動子をブレーキディスクや車輪、あるいはレール等に押付け、電気ブレーキの不足分を機械的に補足する別系統のブレーキ装置(以下、機械ブレーキと呼ぶ)を併用することがある。
【0003】電気ブレーキ力は、電気車制御装置によって電動機のトルクから車輪踏面の制動力を演算してブレーキ制御装置へ出力され、ブレーキ制御装置はシステムに必要な全ブレーキ力から電気ブレーキ力を減算して不足分を求め、機械ブレーキ力指令とする。ところで、電気ブレーキ力の作用領域で車輪の滑走が起きると、電気車制御装置の演算する電気ブレーキ力は減少するため、ブレーキ制御装置は電気ブレーキ力の減少を受けシステムの要求するブレーキ力から減算し、不足分を補足ブレーキ力に上乗せして指令するように応答する。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】図3に、従来の誘導電動機制御における電気車の制御装置のブロックを示す。同図は、制動時の制御を説明するように描いており、電気車に対するブレーキ指令100はブレーキ制御装置4に与えられ、ブレーキ制御装置は予め計画された分担量に応じて電気ブレーキ力指令101と機械ブレーキ力指令(図示せず)とを生成し、電気ブレーキ力指令101を電気車制御装置に出力する。前記ブレーキ制御装置4は、電気車制御装置内の電気ブレーキ力信号141がフィードバックされており、指令値通りの制動力が電気ブレーキで得られていない場合には、不足分を機械ブレーキで補うように作動する。
【0005】電気車制御装置1は、基本的には推進・制動力制御部12が電流演算部18から得られるフィードバック量を指令値に追従させるべくインバータ制御部11を制御する。推進・制動力制御部12の前段には、滑走時に指令されたブレーキ力を低減する操作を行う粘着制御部13を設け、また電流演算部18の入力信号は電流検出器17の検出量である。ただし、演算処理に必要となるインバータ出力電圧位相情報等の関連については図示を省略している。
【0006】インバータ制御部11出力電圧の周波数は誘導電動機の回転速度を基準にするが、電動機速度検出部3から得られる信号を速度演算部15で周波数信号151に演算する。空転・滑走検知部16は周波数信号151の変化率が所定の値を越えると、例えば加速時の周波数変化率を正(+)、減速時の周波数変化率を負(−)で表すと、加速中に周波数変化率が極端に正側に大きくなったときを空転、減速中に周波数変化率が極端に負側に大きくなったときを滑走と判断するオンオフの空転・滑走検知信号161を生成する。この空転・滑走検知信号161を受け取る粘着制御部の概略動作は前述の通りである。
【0007】電気車制御装置の制御特性は年々向上し、滑走時でも高速に電動機の制動力を制御して速やかに粘着状態を回復させることが可能になってきたが、機械ブレーキの応答速度は電気ブレーキの応答速度に比較して遅い。このため、電気ブレーキ力が滑走により一瞬低下すると、ブレーキ制御装置は補足ブレーキ力を増加させるように応答し、電気車制御装置の粘着制御により速やかに粘着が回復すれば、電気ブレーキ力指令も実際の電気ブレーキ力も高速で滑走前の状態に戻すことが可能であるが、機械ブレーキを引き下げる応答は遅いために実際のブレーキ力が所定のブレーキ力より大きくなって、再び滑走を誘発したり減速度が変動して乗り心地を悪化させる要因となっていた。
【0008】
【問題点を解決するための手段】本発明は、この問題点を解決すべく創案されたもので、電気車制御装置と、電動機と、ブレーキ制御装置とから成り、前記電気車制御装置内には、インバータ制御部、推進・制動力制御部、粘着制御部、制動力演算部、速度演算部、空転・滑走検知部、電流検出器、電流演算部とを具備し、それぞれの指令値に基づいて推進力および制動力を制御し、制動時には電気ブレーキ力を演算して前記ブレーキ制御装置に出力し、ブレーキ制御装置は前記電気ブレーキ力と所望のブレーキ力指令との差を演算し、電気ブレーキ力の不足分を別系統のブレーキ装置で補足するよう動作し、さらに前記電気車制御装置内の空転・滑走検知信号によってブレーキ力指令を低減して滑走状態を抑制する再粘着制御を行う電気車の制御装置において、前記電気ブレーキ力の減少または増加方向に対する追従速度を切替える手段を有するフィルタ装置を前記ブレーキ制御装置の入力側に具備し、前記空転・滑走検知信号の有無に応じて、前記フィルタ装置の追従速度を切替える。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明による電気車の制御装置のブロック図を図1に示す。同図において、図3と同一符号のものは同一物を示す。図1において、ブレーキ力信号141と滑走検知信号161とを入力し、ブレーキ制御装置4へフィルタ効果を有するブレーキ力信号102を出力するフィルタ装置30が付加されており、その他のブロックの動作については従来例と同一である。
【0010】また、本発明における電気ブレーキ力信号を出力するフィルタ装置のブロックを図2に示す。同図において、+、−記号を付された矢印の突き合わせ点は偏差演算部、記号GU、GDはゲイン、記号∫は積分器を表し、このブロック全体が一次遅れの伝達関数特性を持つフィルタ機能を有する。
【0011】偏差が正(+)と負(−)の場合において、ゲインをGUとGDとに分離し、かつ滑走検知信号161によって負側のゲインGDを、「Norm」と「Slow」に切替える方法を加えている。GUとGDを記したゲインブロックの出力(右)側のダイオード記号は単なる機能シンボルで、偏差が正の場合はゲインをGUとして積分し、偏差が負の場合はゲインをGDにして積分することを表している。本実施例では、滑走検知信号161がオフのときにGD=Norm、滑走検知信号161がオンのときにGD=Slowとし、上記の時定数の切替え効果の関係から(1/Norm)<(1/Slow)の設定とする。
【0012】
【発明の効果】上述したように、滑走時に、滑走検知信号161のオンを受けてフィルタ時定数を1/Slowに切替えることで、電気ブレーキ力の減少がブレーキ制御装置へフィードバックされることを通常より遅くできるため、機械ブレーキの補足分が不必要に作用することを抑えられる。なお、電気ブレーキの制御応答性を機械ブレーキより十分早く、かつ粘着制御を短時間で完結させること、即ち滑走前のブレーキ力を速やかに回復できる制御を前提とすることで、機械ブレーキによる補足作用を若干抑制しても、車両の減速度、ひいては安全上の信頼性も確保することができる。
【0013】また、車両の運動エネルギーを電車線に回生する電気ブレーキ領域も存在しており、回生条件に制限されてブレーキ力が得られない場合もあり、このときは通常の応答速度で機械ブレーキの補足分を作用させる必要があるため、本実施例のような空転・滑走検知に連動するフィルタの時定数切替え手段が是非とも必要である。以上述べたように、本発明によれば、電気ブレーキと機械ブレーキとを効果的に併用でき、実用上大いに有用である。
【出願人】 【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
【出願日】 平成12年5月18日(2000.5.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−327003(P2001−327003A)
【公開日】 平成13年11月22日(2001.11.22)
【出願番号】 特願2000−145810(P2000−145810)