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【発明の名称】 列車制御装置
【発明者】 【氏名】宮地 正和

【氏名】鈴木 静男

【要約】 【課題】走行中に車軸の滑走や空転が発生しても列車の速度を補正し、車軸の滑走や空転が終了したときに適正な走行許容速度パターンで列車を走行させる。

【解決手段】列車21が走行しているときに速度発電機3を有する車軸に滑走/空転が発生したときに仮の減速度βiを推測し、仮の走行速度で列車を走行させるとともに、車軸の滑走/空転が終了すると、滑走/空転が開始したときの速度V0と滑走/空転が終了したときの速度V1とその間を走行した時間から列車21の正確な減速度βtを算出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車上子と受信部と速度発電機及び速度照査部を有し、車上子は地上の軌道の特定地点に一定距離隔てて設けられた2個の地上子と電磁結合して地上情報を検出して受信部に送り、受信部は車上子で検出された地上情報を受信し、受信した地上情報を所定の信号形態に変換して速度照査部に送り、速度発電機は車両の車軸の回転に応じて周波数と電圧が変化する交流信号を発生し、速度照査部は許容速度検出部と速度パターン発生部と走行速度検出部と滑走/空転検出部と走行状態推測部と滑走/空転終了検出部と走行状態補正部と速度制御部を有し、許容速度検出部は受信部からの信号を入力して地上から与えられる許容速度を検出し、速度パターン発生部は列車自体の構造で定まる固有の車両性能と許容速度検出部で検出した許容速度から許容速度検出地点より停止位置までの速度制御パターンを発生し、走行速度検出部は速度発電機から出力する交流信号を入力して列車の走行速度を検出し、滑走/空転検出部は検出している列車の走行速度と列車固有の車両性能から車軸の滑走/空転を検出し、走行状態推測部は車軸の滑走/空転を検出したときに仮の走行速度を採用し、滑走/空転終了検出部は検出している列車の走行速度から車軸の滑走/空転が終了したことを検出し、走行状態補正部は車軸の滑走/空転が終了したことを検出したとき、滑走が開始したときの速度と滑走が終了したときの速度とその間を走行した時間から列車の正確な減速度を算出し、算出した減速度と2個の地上子を通過した時間から走行状態推測部で推測した地上子間の推定距離を補正し、速度パターン発生部は車軸の滑走/空転が発生したときに走行状態推測部で採用した仮の走行速度から速度制御パターンを補正し、滑走/空転が終了したとき走行状態補正部で列車の正確な減速度と補正された2個の地上子間の距離により補正した速度制御パターンを再補正し、速度制御部は速度パターン発生部から出力する速度制御パターンと走行速度検出部から出力する列車の走行速度から速度制御信号を出力することを特徴とする列車制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両の車軸回転に伴なう速度発電機からの信号により車両の走行速度と走行距離を計測しているときに車軸の滑走/空転が発生して車両の実速度と検出している速度が一致しなくなった場合に、列車を許容速度以下に抑えて走行させる列車制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】列車を走行させているときに、レールに流れている信号又は地上子から与えられる許容速度信号と車両の車軸回転に伴なう速度発電機からの信号から得られる列車の走行速度とを比較し、走行速度が許容速度信号を超過した場合には、車上装置でブレーキ指令を出力して列車の走行速度を許容速度以下に抑える制御を行なっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら列車の走行速度と走行距離は、車両の車軸回転に伴なう速度発電機からの信号により計測するため、車軸の滑走や空転が発生したとき、車両の実速度と速度発電機の信号で検出している走行速度が一致しなくなり、許容速度以下で走行しているにも拘わらずブレーキ指令を出力してしまう。また、停止位置までの許容速度パターンにより制御する場合では、速度発電機からの信号により算出した列車の走行距離が実際の走行距離と合わなくなり、適切な許容速度パターンとの比較ができず不要なブレーキ指令を出力してしまう。さらに、例えば地上子間の距離により許容速度パターンを算出するときなどは、実走行距離が判明できないと誤った許容速度パターンを選択して出力し、運転効率が低下してしまう等の問題が発生していた。
【0004】この発明は、このような問題を解消し、走行中に車軸の滑走や空転が発生しても列車の速度を補正し、車軸の滑走や空転が終了したときに適正な走行許容速度パターンで列車を走行させることができる列車制御装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明に係る列車制御装置は、車上子と受信部と速度発電機及び速度照査部を有し、車上子は地上の軌道の特定地点に一定距離隔てて設けられた2個の地上子と電磁結合して地上情報を検出して受信部に送り、受信部は車上子で検出された地上情報を受信し、受信した地上情報を所定の信号形態に変換して速度照査部に送り、速度発電機は車両の車軸の回転に応じて周波数と電圧が変化する交流信号を発生し、速度照査部は許容速度検出部と速度パターン発生部と走行速度検出部と滑走/空転検出部と走行状態推測部と滑走/空転終了検出部と走行状態補正部と速度制御部を有し、許容速度検出部は受信部からの信号を入力して地上から与えられる許容速度を検出し、速度パターン発生部は列車自体の構造で定まる固有の車両性能と許容速度検出部で検出した許容速度から許容速度検出地点より停止位置までの速度制御パターンを発生し、走行速度検出部は速度発電機から出力する交流信号を入力して列車の走行速度を検出し、滑走/空転検出部は検出している列車の走行速度と列車固有の車両性能から車軸の滑走/空転を検出し、走行状態推測部は車軸の滑走/空転を検出したときに仮の走行速度を採用し、滑走/空転終了検出部は検出している列車の走行速度から車軸の滑走/空転が終了したことを検出し、走行状態補正部は車軸の滑走/空転が終了したことを検出したとき、滑走が開始したときの速度と滑走が終了したときの速度とその間を走行した時間から列車の正確な減速度を算出し、算出した減速度と2個の地上子を通過した時間から走行状態推測部で推測した地上子間の推定距離を補正し、速度パターン発生部は車軸の滑走/空転が発生したときに走行状態推測部で採用した仮の走行速度から速度制御パターンを補正し、滑走/空転が終了したとき走行状態補正部で列車の正確な減速度と補正された2個の地上子間の距離により補正した速度制御パターンを再補正し、速度制御部は速度パターン発生部から出力する速度制御パターンと走行速度検出部から出力する列車の走行速度から速度制御信号を出力することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】この発明のATS車上装置は車上子と受信部と速度発電機及び速度照査部を有する。速度照査部は許容速度検出部と速度パターン発生部と走行速度検出部と滑走/空転検出部と走行状態推測部と滑走/空転終了検出部と走行状態補正部及び速度制御部を有する。
【0007】車上子は地上の軌道の特定地点に一定距離隔てて設けられた2個の地上子と電磁結合して地上情報を検出して受信部に送り、受信部は車上子で検出された地上情報を受信し、受信した地上情報を所定の信号形態に変換して速度照査部に送る。速度照査部の許容速度検出部は受信部からの信号を入力して地上から与えられる許容速度を検出し速度パターン発生部に送る。速度パターン発生部は送られた許容速度と列車自体の構造で定まる固有の車両性能から許容速度検出地点より停止位置までの速度制御パターンを発生する。一方、走行速度検出部は速度発電機から出力する交流信号を入力して列車の走行速度を検出する。速度制御部は走行速度検出部から出力する列車の走行速度と2個の地上子を通過する時間Tから2個の地上子間の距離を求め、速度パターン発生部から出力する減速パターンと列車の走行速度と2個の地上子間の距離から速度制御信号を出力する。
【0008】このようにして列車を走行させているときに、速度発電機の車軸に滑走が発生すると、滑走/空転検出部は検出している列車の走行速度と列車固有の車両性能から車軸の滑走/空転を検出する。走行状態推測部は車軸の滑走を検出したときに仮の走行速度を採用する。速度パターン発生部は走行状態推測部で採用した仮の走行速度で補正減速パターンを作成する。速度制御部は速度パターン発生部から出力する補正減速パターンにより速度制御信号を出力する。列車が走行して滑走終了までに2個の地上子から地上情報を受信すると、走行状態推測部は2個の地上子間の距離を推測する。検出している列車の走行速度から滑走/空転終了検出部で車軸の滑走が終了したことを検出すると、走行状態補正部は滑走が開始したときの速度と滑走が終了したときの速度とその間を走行した時間から列車の正確な減速度を算出し、算出した減速度と2個の地上子を通過した時間から走行状態推測部で推測した地上子間の推定距離を補正する。速度パターン発生部は補正された走行距離と減速度により減速パターンを再補正する。速度制御部は速度パターン発生部から出力する速度制御パターンと走行速度検出部から出力する列車の走行速度から速度制御信号を出力する。
【0009】
【実施例】図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。図に示すように、列車に設けられたATS車上装置は車上子1と受信部2と速度発電機3及び速度照査部4を有する。車上子1は地上の軌道の特定地点に一定距離隔てて設けられた2個の地上子と電磁結合して地上情報を検出して受信部2に送る。受信部2は車上子1で検出された地上情報を受信し、受信した地上情報を所定の信号形態に変換して速度照査部4に出力する。速度発電機3は車両の車軸の回転に応じて周波数と電圧が変化する交流信号を発生する。速度照査部4は受信部2から入力される許容速度と列車の走行速度とを比較し、列車の走行速度が許容速度を超過している場合にブレーキ指令信号を出力して列車を停止させるものであり、許容速度検出部5と速度パターン発生部6と走行速度検出部7と滑走/空転検出部8と走行状態推測部9と滑走/空転終了検出部10と走行状態補正部11及び速度制御部12を有する。許容速度検出部5は受信部2からの信号を入力して地上から与えられる許容速度を検出する。速度パターン発生部6は列車自体の構造で定まる減速度や空走時間等の固有の車両性能と許容速度検出部5で検出した許容速度から許容速度検出地点より停止位置までの速度制御パターンである減速パターンを発生する。走行速度検出部7は速度発電機3から出力する交流信号を入力して列車の走行速度を検出する。滑走/空転検出部8は走行速度検出部7で検出している列車の走行速度と列車固有の車両性能から車軸の滑走/空転を検出する。走行状態推測部9は滑走/空転検出部8で車軸の滑走/空転を検出したときに、そのときの減速パターンから仮の走行速度を採用し、2個の地上子を通過したときに2個の地上子間の距離を推測する。滑走/空転終了検出部10は走行速度検出部7で検出している列車の走行速度から車軸の滑走/空転が終了したことを検出する。走行状態補正部11は滑走/空転終了検出部10で車軸の滑走/空転が終了したことを検出したときに、走行状態推測部9で推測した2個の地上子間の距離を補正して速度パターン発生部6に出力する。速度パターン発生部6は車軸の滑走/空転が発生したときに走行状態推測部9で推測した仮の走行速度から減速パターンを補正し、滑走/空転が終了したとき補正された減速パターンを走行状態補正部11で補正された2個の地上子間の距離と列車の走行速度から再補正する。速度制御部12は速度パターン発生部6から出力する減速パターンと走行速度検出部7から出力する列車の走行速度から速度制御信号を算出して出力し列車のブレーキ出力を制御する。
【0010】このATS車上装置で地上子の設置位置に対応した減速パターンを使用して速度照査部4により速度を制御する場合について図2の速度制御パターンを参照して説明する。
【0011】図2に示すように、速度制限区間Aに対して一定距離L、例えば500m手前の位置に、一定間隔L1をおいて地上子20a,20bが設けられている。地上子20a,20bは設置された地点に対応した地上情報を発生させる。この地上情報は分岐器や曲線,下り勾配,臨時速度制限などの各種情報を特定の地上子周波数の組み合わせによって行い、2個の地上子20a,20bの距離相互L1に応じて制限速度を変化させる。列車21が走行して2個の地上子20a,20bと車上子1が電磁結合して地上からの許容速度信号を検出すると受信部2に送る。受信部2は車上子1で検出された許容速度信号を受信し、受信した許容速度信号を所定の信号形態に変換して速度照査部4に送る。速度照査部4の許容速度検出部5は受信部2からの信号を入力して地上から与えられる許容速度を検出して速度パターン発生部6に送る。速度パターン発生部6は列車自体の構造で定まる減速度や空走時間等の固有の車両性能と許容速度検出部5で検出した許容速度から許容速度検出地点より停止位置までの減速パターンPを発生する。一方、走行速度検出部7は速度発電機3からの信号により列車21の走行速度Vを検出する。速度制御部12は走行速度検出部7から出力する列車の走行速度Vと2個の地上子20a,20bを通過する時間Tから2個の地上子20a,20b間の距離L1を求め、速度パターン発生部6から出力する減速パターンPと列車の走行速度Vと2個の地上子20a,20b間の距離L1から速度制御信号を出力する。
【0012】この2個の地上子20aと地上子20bの間を列車21が走行している間に速度発電機3が設けられている車軸に滑走/空転が発生すると、速度発電機3からの信号により検出している列車21の走行速度Vが実際の列車21の走行速度Vtと異なってしまう。このため速度制御部12に入力する列車21の走行速度Vと列車21の走行速度Vから算出している地上子20a,20b間の距離が実際の値とは異なり、所定の速度制限信号が発生できなくなる。このようなときに減速パターンを補正するときの処理を図3の速度変化特性図を参照して説明する。
【0013】例えば正常な減速度βtで列車21が走行しているときに、速度発電機3が設けられている車軸に滑走が発生し、走行速度検出部7で検出している列車の走行速度Vが、図3に示すように列車固有の車両性能で定まる速度変化以上に変化すると、滑走/空転検出部8は速度発電機3が設けられている車軸に滑走が発生したと判断する。走行状態推測部9は滑走/空転検出部8で車軸の滑走を検出すると、滑走開始から一定時間例えば300ms前の速度V0を採用し、速度V0により時間によって速度が減速していく仮想減速度βiを仮の減速度として採用する。速度パターン発生部6は走行状態推測部9で採用した速度V0と仮想減速度βiで補正減速パターンを作成する。速度制御部12は速度パターン発生部6から出力する補正減速パターンにより速度制御信号を出力する。列車21が走行して滑走終了までに2個の地上子20a,20bから地上情報を受信すると、走行状態推測部9は地上子20a,20bを通過する時間Tと仮想減速度βiとで地上子20a,20b間の推定距離Li=βiTを算出する。このように車軸に滑走が生じると、走行速度検出部7で速度発電機3からの信号により検出している列車の走行速度Vは、図3に示すようにまず減速状態(a)になってから加速状態(b)になる。この走行速度検出部7で検出している列車の走行速度Vが加速状態(b)になり、一定時間例えば2秒経過した後に滑走終了と判断する。このように走行速度検出部7で検出している列車の走行速度Vが加速状態(b)になってから一定時間経過後に滑走終了と判断するのは、図3(c)に示すように、加速状態から減速状態を経過して再度加速状態になったときでも滑走終了を検出できるようにするためである。滑走/空転終了検出部10で車軸の滑走が終了したことを検出すると走行状態補正部11は滑走が開始したときの速度V0と滑走が終了したときの速度V1とその間を走行した時間T0から列車21の正確な減速度βtを算出し、算出した減速度βtと地上子20a,20bを通過した時間Tから走行状態推測部9で推測した地上子20a,20b間の推定距離Lsを補正する。速度パターン発生部6は補正された走行距離Liと減速度βt及び地上子20a,20bからの許容速度により減速パターンを再補正する。このようにして速度発電機3が設けられている車軸に滑走が発生した場合も正確な減速パターンに補正して列車21を走行させることができる。
【0014】上記実施例は車軸に滑走が生じた場合について説明したが、車軸の空転が発生した場合も同様にして正確な減速パターンに補正して列車21を走行させることができる。
【0015】また、上記実施例はATS車上装置について説明したがATC装置等の自動列車制御装置においても車軸に滑走や空転が発生したときに同様に適用して列車21の走行速度を許容速度以下に抑えることができる。
【0016】
【発明の効果】この発明は以上説明したように、列車が走行しているときに速度発電機を有する車軸に滑走/空転が発生したときに仮の走行速度を推測し、仮の走行速度で列車を走行させるとともに、車軸の滑走/空転が終了すると、滑走/空転が開始したときの速度と滑走/空転が終了したときの速度とその間を走行した時間から列車の正確な減速度を算出するようにしたから、滑走/空転が発生していたときの列車の実際の走行速度を精度良く検出することができる。また、算出した減速度と2個の地上子を通過した時間から2個の地上子間の距離を算出するから2個の地上子間の距離を正確に得ることができ、正常な速度制御パターンで列車を走行させることができる。
【出願人】 【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
【出願日】 平成12年4月6日(2000.4.6)
【代理人】 【識別番号】100093920
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 俊郎
【公開番号】 特開2001−292509(P2001−292509A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−104249(P2000−104249)