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【発明の名称】 車両用制御装置
【発明者】 【氏名】吉野 太容

【氏名】中島 祐樹

【要約】 【課題】回転速度上昇中等の過渡状態であっても発電電力と駆動出力を一致させる。

【解決手段】車両の走行状態に応じて駆動軸に接続された電動機4のトルク制御及びそれに電力を供給するための発電機2の回転速度制御が行われるが、このとき発電機2の実際の発電出力が推定され、この推定された発電出力に応じて電動機4の出力軸トルクが制限される。これにより、加速中等、エンジン1及び発電機2の回転部の運動エネルギー上昇のために消費されるエネルギーが大きく、発電機2の発電出力が少なくなる場合は、それに応じて電動機4の出力軸トルク(駆動出力)が制限されるので、発電出力と駆動出力の差を小さくすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンと、エンジンに接続された発電機と、車両の駆動軸に接続され前記発電機の発電電力によって駆動される電動機とを備えた車両に用いられ、走行状態に基づき目標発電出力基本値を演算する手段と、前記目標発電出力基本値に基づき前記電動機の目標出力軸トルクを演算する手段と、前記目標発電出力基本値に基づき前記発電機の目標入力軸回転速度を演算する手段と、前記目標出力軸トルクに基づき前記電動機をトルク制御する手段と、前記目標入力軸回転速度に基づき前記発電機を回転速度制御する手段と、を備えた車両用制御装置において、前記エンジン及び発電機の運転状態に基づき前記発電機の実際の発電出力を推定する手段をさらに備え、前記目標出力軸トルク演算手段は、前記電動機の駆動出力と前記発電機の発電出力の差が縮小されるよう、推定された前記発電機の発電出力に応じて前記電動機の目標出力軸トルクを制限することを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】前記目標出力軸トルク演算手段は、前記発電出力推定値に基づき前記目標発電出力基本値を制限して目標発電出力を演算し、この目標発電出力に基づき前記電動機の目標出力軸トルクを演算することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】前記目標出力軸トルク演算手段は、前記目標発電出力基本値に基づき目標出力軸トルク基本値を演算し、この目標出力軸トルク基本値を前記発電出力推定値に基づき制限して目標出力軸トルクを演算することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項4】前記発電出力推定手段は、前記エンジンの運転状態に基づきエンジン出力を推定し、入力軸回転速度に基づき前記エンジン及び発電機の回転部の仕事率を演算し、前記エンジン出力推定値と回転部仕事率との差に基づき発電出力を推定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用制御装置。
【請求項5】発電出力と駆動出力の差に起因する不足電力分をバッテリから供給する場合、前記目標出力軸トルク演算手段における制限処理は、発電出力と駆動出力の差が所定の許容幅に収まるように前記目標出力軸トルクを制限することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の車両用制御装置。
【請求項6】前記許容幅は車速が大きくなるほど小さく設定されることを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項7】前記許容幅はバッテリ温度が低くなるほど小さく設定されることを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項8】前記目標出力軸演算手段がフィルタ処理を含む場合、そのフィルタ処理は前記制限処理よりも前段に設けられていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジン、電動機及び発電機を備えた車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、低公害性と航続距離、及びエネルギー供給のインフラ等の要求から、エンジンと発電/電動機を組み合わせて搭載したハイブリッド車両の実用化が進められている。既に実用化の面で進んでいるいわゆるパラレル・ハイブリッド車は、エンジンによる走行を基本としながら、減速時等に回生した電力を用いて電動機によってトルクアシストを行って燃費の向上を図るものである。
【0003】これに対し、より一層の効率向上を狙ったシリーズ・ハイブリッド車(以下、SHEV)がある。SHEVでは、車両は電動機のトルクによってのみ駆動され、エンジンは電力供給のために運転される。従来提案されているSHEVでは、効率向上を第一目標としているため、エンジンは略一定の燃費最良となる運転条件で運転される。
【0004】しかし、このようなSHEVにあっては、エンジンの運転状態を略一定に維持しつつ車両の走行状態の急変に対応するために、十分な容量のバッテリが必要とされ、重量及びコストの増加が避けられなかった。
【0005】そこで、エンジンや発電/電動機といった機械的な構成はSHEVと同様であるが、車両走行のために電動機で消費される電力を時々刻々求めて、それに見合った分だけ発電するようにエンジン及び発電/電動機を制御するハイブリッド車が本出願人により提案されている(特願平11-172426号)。電動機で消費される電力と発電機で発電される電力が一致すれば、バッテリは最小限の容量だけあればよいため、重量及びコストの面で大きな割合を占めているバッテリの小型化、低コスト化を図ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとしている問題点】しかし、上記従来技術にあっては、定常的には発電機の発電電力と電動機の駆動出力(≒消費電力)と一致させることができるものの、エンジン及び発電機の回転部が慣性重量を有しているので、エンジンの回転速度上昇中等の過渡状態ではエンジンの出力の一部がエンジン及び発電機の回転部の運動エネルギーの上昇のために使われるため、発電電力が駆動出力よりも小さくなってしまうという問題があった。発電電力が不足するとその不足分はバッテリから補う必要があり、それだけ大きなバッテリ容量が必要とされるので、上記バッテリの小型化の目的を十分に達成できないことになる。
【0007】本発明は、かかる従来技術の技術的課題を鑑みてなされたものであり、回転速度上昇中等の過渡状態であっても発電電力と駆動出力を一致させ、必要とされるバッテリ容量の更なる低減を目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】第1の発明は、エンジンと、エンジンに接続された発電機と、車両の駆動軸に接続され前記発電機の発電電力によって駆動される電動機とを備えた車両に用いられ、走行状態に基づき目標発電出力基本値を演算する手段と、前記目標発電出力基本値に基づき前記電動機の目標出力軸トルクを演算する手段と、前記目標発電出力基本値に基づき前記発電機の目標入力軸回転速度を演算する手段と、前記目標出力軸トルクに基づき前記電動機をトルク制御する手段と、前記目標入力軸回転速度に基づき前記発電機を回転速度制御する手段とを備えた車両用制御装置において、前記エンジン及び発電機の運転状態に基づき前記発電機の実際の発電出力を推定する手段をさらに備え、前記目標出力軸トルク演算手段が、前記電動機の駆動出力と前記発電機の発電出力の差が縮小されるよう、推定された前記発電機の発電出力に応じて前記電動機の目標出力軸トルクを制限することを特徴とするものである。
【0009】第2の発明は、第1の発明において、前記目標出力軸トルク演算手段が、前記発電出力推定値に基づき前記目標発電出力基本値を制限して目標発電出力を演算し、この目標発電出力に基づき前記電動機の目標出力軸トルクを演算することを特徴とするものである。
【0010】第3の発明は、第1の発明において、前記目標出力軸トルク演算手段が、前記目標発電出力基本値に基づき目標出力軸トルク基本値を演算し、この目標出力軸トルク基本値を前記発電出力推定値に基づき制限して目標出力軸トルクを演算することを特徴とするものである。
【0011】第4の発明は、第1から第3の発明において、前記発電出力推定手段が、前記エンジンの運転状態に基づきエンジン出力を推定し、入力軸回転速度に基づき前記エンジン及び発電機の回転部の仕事率を演算し、前記エンジン出力推定値と回転部仕事率との差に基づき発電出力を推定することを特徴とするものである。
【0012】第5の発明は、第1から第4の発明において、発電出力と駆動出力の差に起因する不足電力分をバッテリから供給する場合、前記目標出力軸トルク演算手段における制限処理が、発電出力と駆動出力の差が所定の許容幅に収まるように前記目標出力軸トルクを制限することを特徴とするものである。
【0013】第6の発明は、第5の発明において、車速が大きくなるほど前記許容幅が小さく設定されることを特徴とするものである。
【0014】第7の発明は、第5の発明において、バッテリ温度が低くなるほど前記許容幅が小さく設定されることを特徴とするものである。
【0015】第8の発明は、第1から第7の発明において、前記目標出力軸演算手段がフィルタ処理を含む場合、そのフィルタ処理は前記制限処理よりも前段に設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
【作用及び効果】したがって、本発明に係る車両用制御装置を備えた車両にあっては、車両の走行状態(アクセル操作量、車速等)に応じて目標発電出力基本値が演算され、この目標発電出力基本値に基づき駆動軸に接続された電動機のトルク制御及びそれに電力を供給するための発電機の回転速度制御が行われるが、第1から第3の発明によれば、発電機の実際の発電出力が推定され、駆動出力と発電出力の差が縮小されるように推定された発電出力に応じて電動機の出力軸トルクが制限される。
【0017】加速中等、エンジン及び発電機の回転速度が上昇している最中は、エンジンの出力の一部がエンジン及び発電機の回転部の運動エネルギーの上昇のために使われるため、実際の発電出力はエンジン出力よりも小さくなってしまうが、本発明によると、その発電出力に見合った駆動出力となるように実際の発電出力の推定値に応じて電動機の出力軸トルクが制限されることになる。
【0018】この結果、エンジン及び発電機の回転部の運動エネルギー上昇のために消費されるエネルギーが大きく、発電機の発電出力が少なくなる場合は、それに応じて電動機の出力軸トルク(駆動出力)が制限されるので、発電出力と駆動出力の差を縮小でき、不足電力分をバッテリより供給する場合にはバッテリにかかる負担を軽減することができる。
【0019】この際、発電出力を、エンジン出力を推定するとともにエンジン及び発電機の回転部の仕事率(回転部の運動エネルギーの時間微分値)を求め、これらの差に基づき推定するようにすれば、発電出力を精度よく推定することができる(第4の発明)。
【0020】さらに、第5の発明によれば、バッテリの性能に合わせて許容幅を変化させることによって駆動力応答特性を調整できるので、バッテリ性能に余裕がないときは許容幅を小さく設定し、バッテリにかかる負担を小さくすることができる。逆に、バッテリ性能に余裕がある場合は許容幅を大きく設定し、優れた駆動力応答特性を実現することができる。
【0021】また、第6の発明によれば、発進時にバッテリから電動機に供給される電力を大きくできるので、アイドルストップ状態からの発進であっても滑らかな発進が可能になる。また、定常走行状態にあっては許容幅が小さく設定されるので、バッテリにかかる負担を最小限に抑えることができる。
【0022】また、第7の発明によれば、バッテリ温度が低くバッテリ性能が低下しているときにバッテリに過負荷がかかるのを防止することができる。
【0023】また、第8の発明によると、フィルタ処理(例えば、電動機と発電機の位相を合わせるための遅れ処理)を行う場合であっても、制限処理の結果を直ちに反映させることができ、フィルタ処理と前記制限処理とを両立させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0025】図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両のシステム構成図である。
【0026】この車両では、従来の機械式変速機に代えて、無段変速機として機能する電気パワートレイン5がエンジン1に接続されている。電気パワートレイン5は発電機2と電動機4とで構成され、入力側の発電機2がエンジン1のクランク軸に接続される一方、出力側の電動機4が車両の駆動軸6に接続されている。発電機2、電動機4は永久磁石式交流同期モータ等の交流機であり、それぞれインバータ8に接続されている。インバータ8にはさらにバッテリ9(リチウムバッテリあるいはニッケル水素バッテリ等)が接続されている。
【0027】発電機2と電動機4の間にはクラッチ3が介装されており、クラッチ3が締結されるとエンジン1と駆動軸6が直結状態となってエンジン1で直接駆動軸6を駆動することができる。クラッチ3は例えば電気パワートレイン5の入力軸回転速度と出力軸回転速度が一致したときに締結され、発電機2と電動機4における損失を抑制して車両の燃費性能を向上させることができる。
【0028】また、電気パワートレイン5には、エンジン1に接続された発電機2の回転子側の回転速度(入力軸回転速度)Niを検出する入力軸回転速度センサ24と、駆動軸6に接続された電動機4の回転子側の回転速度(出力軸回転速度)Noを検出する出力軸回転速度センサ21とが取り付けられており、検出された入力軸回転速度と出力軸回転速度の比が電気パワートレイン5の変速比となる。
【0029】一方、エンジン1の吸気管には電子制御式スロットル弁14が設けられており、スロットル弁14は必要とされる発電電力に応じて設定される目標エンジントルクが実現されるよう運転者のアクセル操作とは独立して開閉制御される。エンジン1にはこの他、吸入空気量を検出するエアフローメータ13、クランク角を検出するクランク角センサ23が設けられている。
【0030】統合コントロールユニット10は、基本的には検出されたアクセル操作量等に基づき運転者が要求する駆動力を求め、要求駆動力が実現されるようにトランスミッションコントロールユニット12を介して電動機4のトルク制御を行う。また、電動機4の駆動出力(消費電力)に見合った発電電力が得られるようにトランスミッションコントロールユニット12を介しての発電機2の回転速度制御及びエンジンコントロールユニット11を介してのエンジン1のトルク制御も併せて行う。
【0031】また、このとき統合コントロールユニット10は、バッテリ9に必要とされる容量を最小限に抑えるべく、駆動出力の応答と発電電力の応答とが一致するように電動機4への指令値(最終目標出力軸トルク)と発電機2への指令値(最終目標入力軸回転速度)とを演算するが、発電機2への指令値の演算に関しては、回転速度上昇時等の過渡状態においても駆動出力と発電出力が一致するようエンジン1及び発電機2の回転運動エネルギーの上昇に消費される分も考慮して演算が行われる(詳しくは後述する。)。
【0032】図2は、統合コントロールユニット10の制御内容を示したブロック図であり、図中破線で囲んだ部分が統合コントロールユニット10に対応する。
【0033】これによると、統合コントロールユニット10は、まず、アクセル操作量センサ22から入力されたアクセル操作量APO[deg]と、電気パワートレイン5の出力軸回転速No等から演算によって求まる車速VSP[km/h]とに基づき、所定のマップ(目標駆動力設定マップ)を参照して目標駆動力tFd0[N]を演算し(B1)、この目標駆動力tFd0に、定数G1=1000/3600を車速VSP[km/h]に乗じて得られるVSP[m/s]を乗じて目標発電出力の基本値tPo00[N]を演算する(B2)。
【0034】そして、この目標発電出力の基本値tPo00に対してフィルタ処理を施してtPo0[N]を求める(B3)。このフィルタ処理は例えば2次フィルタを用いた遅れ処理であり、後述するように発電機2への指令値に対しても同一のフィルタを用いたフィルタ処理を施すことにより、発電機2と電動機4の応答性を一致させることができる。
【0035】そして、このフィルタ処理後の目標発電出力基本値tPo0に対して目標発電出力制限部B4において目標発電出力制限処理を行う。ここで目標発電出力を制限するのは、制限後の値から演算される電動機4の目標出力軸トルクtToを制限し、電動機4の駆動出力を制限するためであって、発電機2の発電出力を制限するためではない。
【0036】この目標発電出力制限部B4における処理については後で詳しく説明するが、ここでは実際の発電機2の出力が推定され、この推定値と目標発電出力の差が所定範囲に収まるように、すなわち発電出力と駆動出力の差が所定範囲に収まるように前記フィルタ処理後の目標発電出力基本値tPo0に制限処理が施され、目標発電出力tPo[W]が演算される。
【0037】目標発電出力制限処理をフィルタ処理後に行うようにしているのは、この目標発電出力制限処理においては時々刻々と変化するエンジン1及び発電機2の運転状態に基づきその時刻における実際の発電出力を推定しているので、ここでの処理結果を直ちに目標出力軸トルクtToの算出に反映する必要があるからである。
【0038】そして、統合コントロールユニット10は、目標発電出力制限部B4で求められた目標発電出力tPo[W]を車速VSP[m/s]で除し(B5)、さらにこれに定数G4=(駆動輪有効半径)/(終減速比比)を乗じて目標出力軸トルクtTo[Nm]とし(B6)、目標出力軸トルクtToをトランスミッションコントロールユニット12へ送信する。
【0039】また、統合コントロールユニット10は、目標発電出力基本値tPo00[N]を電動機4の効率EFFm及び発電機2の効率EFFgで除し(B7、B8)、さらに外部からの発電要求値tTg(点火装置、灯火装置等の電装品で必要とされる発電量)を加算して目標発電出力tPo2を演算する(B9)。ここで電動機4の効率EFFmは電動機4の運転状態(目標出力軸トルクtTo及び出力軸回転速度No)に基づき所定のマップを参照して演算され(B10)、発電機2の効率EFFgは発電機2の運転状態(目標エンジントルクtTe及び入力軸回転速度Ni)に基づき所定のマップを参照して演算される(B11)。
【0040】そして、統合コントロールユニット10は、この目標発電出力tPo2[W]を車速[m/s]で除して第2目標駆動力tFd[N]に変換し(B12)、この第2目標駆動力tFd[N]と車速VSP[km/h]とに基づき所定の出力配分マップを参照して目標入力回転軸回転速度tNi0を演算する(B13)。そして、この目標入力軸回転速度tNi0に対して前記tPo0に施したのと同じ構成のフィルタでフィルタ処理を施して最終目標入力軸回転速度Niを演算し(B14)、トランスミッションコントロールユニット12に送信する。なお、目標入力軸回転速度tNi0は目標発電出力tPo2に基づき所定のテーブルを参照して求めるようにしても良い。
【0041】また、統合コントロールユニット10は、目標発電出力tPo2を入力軸回転速度Ni(=エンジン回転速度)で除して目標エンジントルクtTeを演算し(B15)、これをエンジンコントロールユニット11に送信する。エンジン1が発生したトルクは発電機2の回生トルクとなり、発電機2で発電された電力により電動機4が駆動トルクを発生する。発電出力が不足するときにはバッテリ9から電力が補われる。
【0042】図3は目標発電出力制限部B4における処理内容を示したブロック図である。ここでは、エンジン1及び発電機2の運動方程式、並びに電力の関係式に基づいて目標出力軸トルクtTo算出に用いる目標発電出力tPoを適切に制限する。ここで、Te:エンジントルクTg:発電機トルクIe:エンジン回転部の慣性モーメントIg:発電機回転部の慣性モーメントPg:発電機出力Po:電動機出力(駆動出力)
Pb:バッテリ出力η:発電機効率とすると、エンジン1及び発電機2の回転部の運動方程式は、次式(1)、【0043】
【数1】

で表される。ω'はエンジン1及び発電機2の角速度ωの微分値(角加速度)である。また、発電機出力Pgは、次式(2)、【0044】
【数2】

で表される。さらに発電機2、電動機4及びバッテリ9の出力の関係は、次式(3)、【0045】
【数3】

で表される。ここでバッテリ9の出力許容範囲を、【0046】
【数4】

とすると、上式(1)から(4)より、【0047】
【数5】

の関係式が導かれる。電動機出力(駆動出力)Poはこの関係式(5)を満たす必要がある。したがって、目標発電出力tPoは、【0048】
【数6】

を満たすように制限する必要がある。
【0049】以下、図3を参照しながら具体的な処理内容を説明する。
【0050】ここでは、まず、検出された入力軸回転速度Ni[rpm]から、エンジン1及び発電機2の回転部の運動エネルギーを変化させるための仕事率を求める(式(6)の第2項に相当)。そのためには、先ず、入力軸回転速度Niの単位{rpm]を定数Kを乗じて[rad/s]に変換し(B21)、変換後の値とその前回値との差を求め(B22)、さらに、前回値との差を演算周期TJOBで除してω'=(ω−ωold)/Δtを求める(B23)。
【0051】一方、エンジントルク推定部B24では、目標エンジントルクtTeと入力軸回転速度Ni(=エンジン回転速度)とに基づいて、エンジントルクの応答を考慮して、その時点におけるエンジントルクTe_cを推定し、その結果と入力回転速度Ni及び効率ηを乗じて式(6)の第1項Teωηを求める(B26)。エンジントルク推定部24における処理内容については後述する。
【0052】エンジン1及び発電機2の回転部の運動エネルギーを変化させるための仕事率及びエンジントルクの推定値Te_cが演算されると、それらの差が演算される(B27)。これはエンジン出力のうち回転部の運動エネルギー変化に使われる分を差し引いたもの、すなわち発電機2から取り出せる出力(発電出力推定値)に相当する。
【0053】以上のようにして発電出力推定値を求められると、これに車速VSP及びバッテリ温度TMPBATに従って出力許容変動幅算出部B28求められる許容変動幅±BPLIM(式(6)の第3項に相当)が与えられ(B29、30)、この許容範囲内となるようにtPoが制限される(B31、B32)。
【0054】このような許容変動幅±BPLIMを設けているのは次の理由による。
【0055】すなわち、理論的には目標発電出力tPoを発電出力推定値と一致させれば、電動機4の駆動出力と発電機2の発電出力は一致するはずである。しかし、実際の制御では、上記から求めた発電出力推定値はその時刻における値であり、それにしたがって算出された指令値が実行され実際の発電出力及び駆動出力に反映されるまでには少なくとも演算周期1回分のむだ時間を伴う。
【0056】そのため、前記許容変動幅を設けず、発電出力推定値とtPoを完全に一致させようとすると、前回の発電出力推定値と今回の目標発電出力tPoを一致させることになり、結果としてtPoが前回値から変化することができず走行できないことになる。
【0057】そこで、ここでは、許容変動幅を設定し、tPoが発電出力推定値に対して変化することが可能なようにしている。つまり、前記許容変動幅はバッテリ9と入出力を行う際の許容電力を表していることになる。
【0058】一般の機械式の自動変速機(無段変速機あるいは有段変速機)では、加速しようとしてキックダウンを行った際にエンジンやフライホイールの運動エネルギー増加分だけ車両加速度が減少するが、許容変動幅を小さく設定した場合はこれと同様の現象とが生じることになる。ただし、それは従来の変速機を搭載した車両と同様の現象であることから運転者に違和感を与えるものではない。
【0059】これに対し、許容変動幅を大きく設定しておくと、目標発電出力が制限されず、結果として加速応答が速くなる。このとき、回転部の運動エネルギーの増加分の電力は、バッテリ9から供給されることになる。したがって、バッテリ9が比較的高出力が可能な場合はこのように許容変動幅を大きく設定しておくことで、加速応答性に優れた運転特性を得ることができる。
【0060】また、許容変動幅は車速及びバッテリ温度によって可変とされる。図4は出力許容変動幅算出部B28における処理内容を示したブロック図である。これによると、車速VSPに応じた第1の許容変動幅BPLIM1が演算され(B41)、バッテリ温度TMPBATに応じた第2の許容変動幅BPLIM2が演算される(B42)。第1の許容変動幅BPLIM1は車速VSPが低いほど大きな値に設定され、また、第2の許容変動幅BPLIM2はバッテリ温度TMPBATが高いほど大きな値に設定される。そして、これら2つの値のうち小さい方が許容変動幅BPLIMとして設定される(B43)。
【0061】許容変動幅を車速VSPに従って可変としているのは、例えば、車両停止時にいわゆるアイドルストップ状態となっている場合、そこから発進するときには、電動機4の駆動出力だけでなく、発電機2もエンジン1を始動するために電力を消費することになり、電動機4、発電機2双方から電力が消費されて通常走行時よりも多大なバッテリ出力が必要となるからである。一方、通常走行時は、バッテリ9からの消費電力をできるだけ低減する必要があるため、低車速域では許容変動幅を大きくし、高車速域になるほど許容変動幅を小さくしている。
【0062】また、バッテリ温度TMPBATによって許容変動幅を可変としているのは、バッテリ温度が低いときはバッテリ9の許容出力が低下するからである。そのため、バッテリ温度が低いほど許容変動幅を小さく設定することで、バッテリ温度が低い場合にバッテリに過負荷がかからないようにしている。
【0063】なお、ここでは車速VSP、バッテリ温度TMPBATの両方を考慮して許容変動幅BPLIMを設定するようにしているが、バッテリの出力特性に影響を与える他の因子(例えば、劣化度合い、充電率等)を考慮して許容変動幅BPLIMを設定するようにしてもよい。また、ここでは発電出力推定値を中心として大小両側に均等に許容変動幅を設けているが、大側と小側とで異なる許容変動幅を設定することも可能である。
【0064】図5はエンジントルク推定部B24の制御内容を示したブロック図である。エンジントルク推定部B24は応答時定数算出部B51と、トルク推定値算出部B52とから構成される。
【0065】これについて説明すると、その応答時定数算出部B51では、図6に示すように、まず目標エンジントルクtTeと入力軸回転速度Ni(=エンジン回転速度)に基づきエンジン1の体積効率が演算される(B61)。体積効率は、一般に、目標エンジントルクtTeとエンジン回転速度Niとから目標とするスロットル開度を求め、このスロットル開度から開口面積を求め、この開口面積とエンジン回転速度及び排気量から求められるが、ここでは所定の体積効率算出マップを参照して求めるようにしている。そして、算出された体積効率と入力軸回転速度Niとから所定のマップを参照してシリンダ内の新気割合ηnが求められ(B62)、エンジン1の吸気系モデルに基づく次式(7)、【0066】
【数7】

Vm:吸気系容積Ve:排気量ηn:新気割合Ni:入力軸回転速度(=エンジン回転速度)[rpm]によりエンジン1の応答時定数T_engが求められる(B63)。
【0067】また、応答時定数算出部B51の後段に位置するトルク推定値算出部B52では、図7に示すように、エンジントルクの推定を「むだ時間+1次遅れ」モデルで行う。むだ時間処理では、電制スロットル14の応答むだ時間及び燃料噴射の応答むだ時間等を考慮して定められる定数がむだ時間として用いられる(B71)。また、一点鎖線で囲んだ1次遅れ処理では、前記応答時定数算出部B51で算出された応答時定数T_engが用いられる(B72)。
【0068】次に、上記制御を行うことによる作用について説明する。ここでは、特に運転者がアクセル操作量をステップ状に急に踏み込んだときの作用について説明する。
【0069】まず、図8を参照しながら本発明を適用しない場合について説明すると、本発明を適用しない場合、定常的には発電機の発電出力と電動機の駆動出力(≒消費電力)と一致させることができるものの、エンジン及び発電機の回転上昇に用いられるエネルギーを考慮していないため、回転速度上昇中等の過渡状態では発電出力はエンジン出力よりも小さくなり(図8(g))、それに応じて発電電力が駆動出力よりも小さくなってしまう(図8(h))。発電電力が不足するとその分をバッテリから補う必要が生じ、それだけ大きなバッテリ容量が必要とされることになる。
【0070】これに対し、図9に示す本発明を適用した場合では、過渡状態においてもエンジンと発電機の運動エネルギー変化による発電機の出力増減(図9(g))に合わせて電動機の駆動出力(図9(d))が増減されるので、すなわち、エンジンと発電機の回転エネルギーの上昇に用いられるエネルギーが大きい場合は、それにあわせて駆動出力が制限されるので、駆動出力と発電出力とを一致させ、バッテリにかかる負担を最小限に抑えることができる(図9(h))。
【0071】以上本発明の実施の形態について説明したが、上記構成は本発明を適用した場合の一例を示したものであり、本発明の範囲を上記構成に限定するものではない。特に、図2以降に示したブロック図に関しては様々な変更が可能であり、例えば、目標発電出力に対して制限をかけているが、以下に説明するように目標発電出力ではなく目標出力軸トルクを制限しても同じ作用効果が得られる。
【0072】図10はその場合の統合コントロールユニット10の制御内容を示したブロック図である。目標発電出力制限部B4に変えて目標出力軸トルク制限部B4’を備えている点で相違するが、この場合も制限処理後の値が直ちに反映されるよう目標出力軸トルク制限部B4’はフィルタB3の後段に設けられる。
【0073】図11はその目標出力軸トルク制限部B4’の処理内容を示したものである。目標出力軸トルク基本値tTo0を推定された発電出力に基づき制限するために、先の実施例と同様にして演算された目標発電出力の許容変動幅を、電動機効率EFFm、出力軸回転速度Noの逆数を乗じて目標出力軸トルクの許容変動幅に変換している(図11のB33、B34)。
【0074】このように目標発電出力ではなく目標出力軸トルクを制限するようにしてもその内容は実質同一であり、上記実施形態と同一の作用効果が奏される。この他、等価な構成が無限に導き出されるが、本発明の作用効果を奏する限りそれらは全て本発明の範囲に属するものである。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成12年4月6日(2000.4.6)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2001−292501(P2001−292501A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−104497(P2000−104497)