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【発明の名称】 リニアシステムの停止位置修正装置
【発明者】 【氏名】古賀 俊作

【氏名】北野 淳一

【要約】 【課題】LSM式車両の停止位置修正を高精度に実行する。

【解決手段】速度制御器13は、インチング指令が出力された場合には(S101でYES)、停止位置修正を行う必要があるため、位置偏差△Xを比例・積分・微分演算した値を加算してフィードバック補償値とし(S103)、更にこれに勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗をフィードフォワード補償した補償値を合算して仮電流指令値とする(S104)。そして、リニアシステムの3系統の電力供給系のうち3系統とも健全であれば、仮電流指令値をそのまま電流指令値I*とし(S106)、この電流指令値I*を外部へ出力する(S111)。このように、停止位置修正に影響を及ぼす外乱(勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗)のフィードフォワードを適用しているため、外乱補償が行われ、停止位置修正が微小距離であっても、走行条件によらない高精度の停止位置修正が実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 推進コイルが地上側の軌道に沿って配置され、界磁コイルが前記推進コイルに対向するように車両側に搭載され、速度制御器が電流指令値を出力し、電力変換器がこの電流指令値に応じた電流を前記推進コイルへ供給して前記推進コイルに磁界を発生させることにより前記界磁コイルを搭載した車両を推進させるリニアシステムに用いられ、前記速度制御器の一部を成す停止位置修正装置において、停止位置修正を指示する停止位置修正指示手段と、前記停止位置修正指示手段によって停止位置修正が指示されたならば、速度指令値と実速度との速度偏差をフィードバック補償演算した値と停止位置修正に影響を及ぼす外乱をフィードフォワード補償演算した値とを加算した値に基づいて、前記電流指令値を求める電流指令値演算手段とを備えたことを特徴とするリニアシステムの停止位置修正装置。
【請求項2】 推進コイルが地上側の軌道に沿って配置され、界磁コイルが前記推進コイルに対向するように車両側に搭載され、速度制御器が電流指令値を出力し、電力変換器がこの電流指令値に応じた電流を前記推進コイルへ供給して前記推進コイルに磁界を発生させることにより前記界磁コイルを搭載した車両を推進させるリニアシステムに用いられ、前記速度制御器の一部を成す停止位置修正装置において、停止位置修正を指示する停止位置修正指示手段と、前記停止位置修正指示手段によって停止位置修正が指示されたならば、位置指令値と実位置との位置偏差をフィードバック補償演算した値と停止位置修正に影響を及ぼす外乱をフィードフォワード補償演算した値とを加算した値に基づいて、前記電流指令値を求める電流指令値演算手段とを備えたことを特徴とするリニアシステムの停止位置修正装置。
【請求項3】 前記停止位置修正に影響を及ぼす外乱には、勾配抵抗が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【請求項4】 前記勾配抵抗の補償電流値は、下記式(1)で表されることを特徴とする請求項3記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【数1】

【請求項5】 前記停止位置修正に影響を及ぼす外乱には、前記勾配抵抗に加えて出発抵抗も含まれることを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【請求項6】 前記出発抵抗の補償電流値は、下記式(2)で表されることを特徴とする請求項5記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【数2】

【請求項7】 前記停止位置修正に影響を及ぼす外乱には、前記勾配抵抗、前記出発抵抗に加えて走行抵抗も含まれることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【請求項8】 前記走行抵抗の補償電流値は、下記式(3)で表されることを特徴とする請求項7記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【数3】

【請求項9】 前記電流指令値演算手段は、PID制御によってフィードバック補償演算を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【請求項10】 前記リニアシステムは、前記電力変換器を3台有し、各電力変換器に対応する推進コイルを地上側の軌道両側に順次千鳥掛け状に配することにより、前記電力変換器から前記推進コイルまで3系統の電力供給系を備え、前記停止位置修正装置は、前記電力供給系のうち1系統が停止して2系統によって電力供給を行う事態が生じたか否かを判断する系統判定手段と、前記系統判定手段により肯定判定されたならば、前記軌道両側の推進コイルのうち片側の推進コイルにのみ電力供給がなされている区間に車両が位置しているか否かを判定する車両位置判定手段と、前記車両位置判定手段により肯定判定されたならば、前記電流指令値演算手段によって求められた電流指令値を大きくする電流指令値変更手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のリニアシステムの停止位置修正装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リニアシステムの停止位置修正装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、超電導磁気浮上式鉄道車両に代表されるリニアシンクロナスモータ(以下LSMともいう)式車両の制御装置として、図12に示すように、地上側の軌道に沿って配置された推進コイル101と、この推進コイル101に対向するように車両側に搭載された界磁コイル102と、速度指令値V*と実速度Vとの偏差即ち速度偏差△Vを補償演算した値に基づいて電流指令値I*を出力する速度制御部103と、この電流指令値I*と位相基準信号とから正弦波状の電流パターンを出力する乗算器104と、この乗算器104から出力された電流パターンに応じた3相交流電流を推進コイル101へ供給する電力変換器105と、推進コイル101と界磁コイル102との相対位置を検出して位置位相信号θを出力する位置検出器106と、この位置位相信号θを安定化させると共に電力変換器105に指令する位相基準信号や速度制御のための実速度Vを演算して出力する位相同期制御部107とを備えたものが知られている。
【0003】LSM式車両は、超電導コイルである界磁コイル102によって発生する磁界と、電力変換器105から供給される3相交流電流によって推進コイル101に発生する磁界との相互作用により、推進力を得て駆動される。なお、速度制御部103は速度偏差△Vがゼロになるように電流指令値I*を出力する。
【0004】このようなLSM式車両の駆動制御においては、高速走行から停止まで高精度の制御が行われており、特に停止制御では停止誤差が数cm以内という高精度を実現している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のようにLSM式車両の駆動制御においては高精度の停止制御を実現しているが、それでも万一停止時に何らかの原因で許容できない停止誤差が発生した場合には、迅速且つ正確に停止位置の修正を行う必要がある。
【0006】特に、乗降客がホームからLSM式車両へ乗降する際には、乗降口における超電導磁石の漏れ磁界を許容値以下に磁気遮蔽する乗降装置が用いられるが、その乗降装置の可動範囲は10数cmであるため、それに対応するためにも停止位置を高精度に修正できる制御を行う必要がある。
【0007】本発明は上記必要性に応えることを課題とするものであり、LSM式車両の停止位置修正を高精度に実行可能なリニアシステムの停止位置修正装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記課題を解決するため、本発明は、推進コイルが地上側の軌道に沿って配置され、界磁コイルが前記推進コイルに対向するように車両側に搭載され、速度制御器が電流指令値を出力し、電力変換器がこの電流指令値に応じた電流を前記推進コイルへ供給して前記推進コイルに磁界を発生させることにより前記界磁コイルを搭載した車両を推進させるリニアシステムに用いられ、前記速度制御器の一部を成す停止位置修正装置において、停止位置修正を指示する停止位置修正指示手段と、前記停止位置修正指示手段により停止位置修正が指示されたならば、速度指令値と実速度との速度偏差をフィードバック補償演算した値と停止位置修正に影響を及ぼす外乱をフィードフォワード補償演算した値とを加算した値に基づいて、前記電流指令値を求める電流指令値演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】本発明のリニアシステムの停止位置修正装置は、速度制御器の一部として構成され、停止位置修正指示手段と、電流指令値演算手段とを備えている。そして、停止位置修正指示手段は、何らかの原因で許容できない停止誤差が発生した場合に停止位置修正の指示を出力するものであり、電流指令値演算手段は、この停止位置修正手段によって停止位置修正が指示されたならば、速度指令値と実速度との速度偏差をフィードバック補償演算した値と停止位置修正に影響を及ぼす外乱をフィードフォワード補償演算した値とを加算した値に基づいて、電流指令値を求める。
【0010】このように、本発明では停止位置修正に影響を及ぼす外乱のフィードフォワードを適用しているため、外乱補償が行われ、走行条件によらない高精度の停止位置修正が実現できる。なお、速度指令値は、例えば、停止位置修正指示距離、予め定められている起動加速度、同じく予め定められている停止減速度という3つの定数により作成された停止位置修正制御パターンに基づいて出力される。
【0011】本発明において、電流指令値演算手段は、速度偏差をフィードバック補償演算する代わりに、位置指令値と実位置との位置偏差をフィードバック補償演算し、この演算値と停止位置修正に影響を及ぼす外乱をフィードフォワード補償演算した値とを加算した値に基づいて、電流指令値を求めることが好ましい。これは、一般に停止位置を修正する場合には、速度制御系よりも位置制御系の方が制御量を直接制御できるため、電流指令値を出力する際に速度偏差をフィードバック補償演算するよりも位置偏差をフィードバック補償演算した方が制御特性上有利になるからである。
【0012】なお、位置指令値は、例えば、停止位置修正指示距離、予め定められている起動加速度、同じく予め定められている停止減速度という3つの定数により作成された停止位置修正制御パターンに基づいて出力される。本発明における外乱は、停止位置修正に影響を及ぼすものであれば特に限定されないが、例えば勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗の3つを挙げることができる。勾配抵抗の補償値は、車両位置及び進行方向から求められるものであり、出発抵抗の補償値は、機械的な静止摩擦を考慮して走行実績を考慮して求められるものであり、走行抵抗の補償値は、空気抵抗・磁気抵抗等を考慮して走行実績により求められるものである。
【0013】停止位置修正時の後退や転動を防止するには勾配抵抗の補償演算を行うことが最も効果的であり、より高精度に停止位置を修正するには勾配抵抗に加えて出発抵抗の補償演算を併せて行うことが好ましく、更なる精度が要求される場合には勾配抵抗、出発抵抗及び走行抵抗の3つにつき補償演算を行うことが好ましい。
【0014】ここで、勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗の各補償電流値Ig、Is、Idは、例えば下記式(1)、(2)、(3)で表すことができる。
【0015】
【数4】

【0016】本発明における電流指令値演算手段は、PID制御によってフィードバック補償演算を行うことが好ましい。もちろんPI制御を採用した場合であっても停止位置修正を精度よく行うことはできるが、PID制御を採用した場合には微分項の存在により速応性が改善されるため好ましいのである。なお、上述したとおり、速度制御系よりも位置制御系の方が制御特性上好ましいことから、PID位置制御系を採用することが特に好ましい。
【0017】ところで、リニアシステムが電力変換器から推進コイルまで3系統の電力供給系を備えている場合、つまり、リニアシステムが電力変換器を3台有し、各電力変換器に対応する推進コイルが地上側の軌道両側に順次千鳥掛け状に配設されている場合、この3系統によって電力供給を行いながら車両を走行させることを3系走行と称し、3系統のうち何らかの原因により1系統が停止して2系統によって電力供給を行いながら車両を走行させることを2系走行と称している。
【0018】3系走行時には、車両は絶えず両側推進区間(軌道両側の推進コイルに電力供給がなされている区間)に位置することになるが、2系走行時には、両側推進区間と片側推進区間(軌道両側の推進コイルのうち片側の推進コイルにのみ電力供給がなされている区間)とが混在するため、車両は片側推進区間に位置することもある。このような2系走行時において、車両が両側推進区間に停止している場合には、3系走行時と同様の停止位置修正を行えばよいが、車両が片側推進区間に停止している場合には、推力が約半分となるため、3系走行時と同様の停止位置修正を行ったのでは停止位置修正の誤差が大きくなるおそれがある。
【0019】そこで、このようなおそれを解消するために、停止位置修正装置は、電力供給系のうち1系統が停止して2系統によって電力供給を行う事態が生じたか否かを判断する系統判定手段と、この系統判定手段により肯定判定されたならば、車両が片側推進区間に位置しているか否かを判定する車両位置判定手段と、この車両位置判定手段により肯定判定されたならば、電流指令値演算手段によって求められた電流指令値を大きくする(例えば2倍にする)電流指令値変更手段とを備えていることが好ましい。この場合、2系走行時において車両が片側推進区間に停止している場合には、停止制御パターンへの追従性が3系走行時と同等となるように電流指令値を3系走行時よりも大きくするため、3系走行時と同様、走行条件によらない高精度の停止位置修正が実現できる。
【0020】
【発明の実施の形態】[第1実施形態]図1は、本実施形態のリニアシステムの構成を表す概略ブロック図である。このリニアシステムは、地上側の軌道に沿って配置された推進コイル11と、この推進コイル11に対向するようにLSM式車両側に搭載された界磁コイル12と、電流指令値I*を出力する速度制御器13と、この電流指令値I*と位相基準信号とから正弦波状の電流パターンを出力する乗算器14と、この乗算器14から出力された電流パターンに応じた3相交流電流を推進コイル11へ供給する電力変換器15と、推進コイル11と界磁コイル12との相対位置を検出して位置位相信号θを出力する位置検出器16と、この位置位相信号θを安定化させると共に電力変換器15に指令する位相基準信号や位置制御のための実位置Xや速度制御のための実速度Vを演算して出力する位相同期制御部17とを備えている。なお、LSM式車両は、超電導コイルである界磁コイル12によって発生する磁界と、電力変換器15から供給される3相交流電流によって推進コイル11に発生する磁界との相互作用により、推進力を得て駆動される。
【0021】電力変換器15は、図2に示すように、3つの電力変換部(インバータA系15A、インバータB系15B、インバータC系15C)から構成され、各インバータに対応してき電線(A系き電線18A、B系き電線18B、C系き電線18C)、き電区分開閉器(A系き電区分開閉器19A、B系き電区分開閉器19B、C系き電区分開閉器19C)、推進コイル(A系推進コイル11A、B系推進コイル11B、C系推進コイル11C)が設けられている。ここで各推進コイル11A〜Cは、地上側の軌道両側に順次千鳥掛け状に配設されている。このように、A系、B系、C系の3系統の電力供給系が構成されている。なお、図2中、19A〜C及び11A〜Cに付した添え字(下付文字)は、説明の便宜上付したものである。
【0022】各電力供給系は、LSM式車両の位置に同期して制御される。例えば、図2に示すように、LSM式車両の位置がA系推進コイル11A2とC系推進コイル11C1との間からA系推進コイル11A2とB系推進コイル11B2との間にまたがって位置している場合には、A系〜C系き電区分開閉器19A2、19B2、19C1が投入され、これら3者に対応する推進コイル11A2、11B2、11C1に電力が供給される。また、LSM式車両がA系推進コイル11A2とB系推進コイル11B2との間に位置している場合には、A系き電区分開閉器19A2とB系き電区分開閉器19B2とが投入され、これらに対応する推進コイル11A2、11B2に電力が供給される。
【0023】なお、LSM式車両の実位置Xは、前述の通り、位置検出器16から出力される位置位相信号を用いて位相同期制御部17により演算されるが、このときの位置位相信号は、交差誘導線(図2参照)から得られる信号を1周期が推進コイル長に合致するように位置検出器16において整流・演算した正弦波状の信号のことをいう。
【0024】次に、速度制御器13の機能について図1に基づいて詳説する。速度制御器13は、PI速度制御系補償器30とPID位置制御系補償器40の2つの制御系を有し、更に、停止位置修正に影響を及ぼす外乱についてフィードフォワード補償演算するフィードフォワード補償器50と、PID位置制御系補償器40からの出力値とフィードフォワード補償器50からの出力値とを加算する加算器60と、この加算器60の出力値(仮電流指令値ともいう)をそのまま電流指令値I*として出力するか、これを2倍にした値を電流指令値I*として出力するかを切り替える第1スイッチ61と、PI速度制御系補償器30を経由した出力値を選択するか、PID位置制御系補償器40を経由した出力値を選択するかを切り替える第2スイッチ62とを備えている。
【0025】PI速度制御系補償器30は、第1比較器31にて速度指令値V*と実速度Vとの速度偏差△Vを求め、速度補償器32にてこの速度偏差△Vを比例・積分によりフィードバック補償演算し、その出力を第1加算器33に入力する。つまり、第1加算器33にて、速度偏差△Vの比例項と積分項とが加算される。なお、図1中、K0、K2は速度制御系の比例ゲイン、積分ゲインである。
【0026】PID位置制御系補償器40は、積分器41にて速度指令値V*を積分して位置指令値X*に変換し、第2比較器42にて位置指令値X*と実位置Xとの位置偏差△Xを求め、位置補償器43にてこの位置偏差△Xを比例・積分・微分によりフィードバック補償演算し、その出力を第2加算器44に入力する。つまり、第2加算器44にて、位置偏差△Xの比例項と積分項と微分項が加算され、フィードバック補償値となる。なお、図1中、H0、H1、H2は位置制御系の比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインである。
【0027】フィードフォワード補償器50は、勾配抵抗補償器51、出発抵抗補償器52、走行抵抗補償器53から構成され、各補償器51〜53の出力値を第3加算器54にて加算し、その加算値を外部即ち加算器60へ出力する。このうち、勾配抵抗補償器51は、位相同期制御部17から実位置Xを入力し、その実位置Xに対応する勾配ψを予め内部に記憶されたマップ、テーブル等から求め、下記式(1)に基づいて勾配抵抗補償電流値Igをフィードフォワード補償演算し、その演算値を第3加算器54へ出力する。
【0028】また、出発抵抗補償器52は、位相同期制御部17から実位置X及び実速度Vを入力し、実位置Xに対応する出発抵抗係数Rsを予め内部に記憶されたマップ、テーブル等から求め、下記式(2)に基づいて出発抵抗補償電流値Isをフィードフォワード補償演算し、演算値を第3加算器54へ出力する。なお、式(2)中、出発抵抗切替速度Vrとは出発抵抗がゼロとなる近似速度であり、走行実績から経験的に得られた値である。
【0029】更に、走行抵抗補償器53は、位相同期制御部17から実位置X及び実速度Vを入力して、その実位置X及び実速度Vに対応する走行抵抗Dvを走行実績から経験的に求められた走行抵抗演算式より求め、下記式(3)に基づいて走行抵抗補償電流値Idをフィードフォワード補償演算し、その演算値を第3加算器54へ出力する。
【0030】なお、勾配抵抗補償電流値Igは、車両位置及び進行方向から求められるものであり、出発抵抗補償電流値Isは、機械的な静止摩擦等を考慮して走行実績に基づいて求められるものであり、走行抵抗補償電流値Idは、空気抵抗・磁気抵抗等を考慮して走行実績に基づいて求められるものである。また、LSM式車両がある特定位置に存在しているときの車両速度と各抵抗との関係を表すグラフを図3に示す。
【0031】
【数5】

【0032】第1スイッチ61は、LSM式車両が両側推進区間に位置しているか片側推進区間に位置しているかによって切り替えられるスイッチであり、LSM式車両が両側推進区間に位置している時には加算器60の出力値をそのまま出力し、LSM式車両が片側推進区間に位置している時には加算器60の出力値を2倍にして出力する。
【0033】第2スイッチ62は、通常走行時か停止位置修正指令時(インチング指令時ともいう)かによって切り替えられるスイッチであり、通常走行時にはPI速度制御系補償器30を経由した出力値を電流指令値I*として外部へ出力し、インチング指令時にはPID位置制御系補償器40を経由した出力値を電流指令値I*として外部へ出力する。
【0034】この速度制御器13は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されており、その機能は既に述べたとおりであるが、具体的な動作について図4の電流指令値出力処理のフローチャートに基づいて説明する。この電流指令値出力処理のプログラムは速度制御器13のROMに記憶されており、所定サンプリング時間おきに速度制御器13のCPUがROMから読み出して実行するものである。
【0035】速度制御器13は、この電流指令値出力処理が開始されると、まず、停止位置修正の実行命令であるインチング指令が車上の乗務員より指令されたか否かを判断する(S101)。このインチング指令は、車上乗務員が、LSM式車両が予め決められた停止位置の許容範囲を外れて停止したと判断したときに指令する。
【0036】S101においてインチング指令が出力されていなければ(S101でNO)、通常走行時であると判断し、第2スイッチ62をPI速度制御系補償器30側にセットし(S107)、速度指令値V*と実速度Vから速度偏差△Vを求め、この速度偏差△Vを比例・積分演算することによりフィードバック補償値を求め、これを電流指令値I*とし(S108)、この電流指令値I*を外部即ち乗算器14へ出力する(S111)。
【0037】一方、インチング指令が出力されたならば(S101でYES)、停止位置修正を行う必要があるため、第2スイッチ62をPID位置制御系補償器40側に切り替え(S102)、速度指令値V*を積分して求めた位置指令値X*と実位置Xとから位置偏差△Xを求め、この位置偏差△Xを比例・積分・微分演算した値を加算してフィードバック補償値とし(S103)、更にこれにフィードフォワード補償器50の出力値(フィードフォワード補償値:勾配抵抗補償電流値Igと出発抵抗補償電流値Isと走行抵抗補償電流値Idの和)を加算して仮電流指令値とする(S104)。
【0038】続くS105において、3系統の電流供給系のうち1系統が何らかの原因で停止しているか否かつまり2系走行か否かを判定し、S105で否定判定されたならば(S105でNO)、3系統とも健全な3系走行であると判断し、S106で求めた仮電流指令値をそのまま電流指令値I*とし(S106)、この電流指令値I*を外部へ出力する(S111)。
【0039】一方、S105で肯定判定されたならば(S105でYES)、2系走行であると判断し、続くS109にてLSM式車両が片側推進区間に位置しているか否かを判定する。このS109で否定判定されたならば(S109でNO)、仮電流指令値をそのまま電流指令値I*としてもLSM式車両の推力が不足することはないため、S106に進んで仮電流指令値をそのまま電流指令値I*とし(S106)、これを外部へ出力する(S111)。一方、S109で肯定判定されたならば(S109でYES)、仮電流指令値をそのまま電流指令値I*としたのではLSM式車両の推力が不足するため、この仮電流指令値を2倍した値を電流指令値I*とし(S110)、これを外部へ出力する(S111)。
【0040】なお、インチング指令時における速度指令値V*は、図5に示すように、インチング指示距離Yと、予め定められている起動加速度αと、同じく予め定められている停止減速度βという3つの定数により作成された停止位置修正制御パターン(インチング制御パターンともいう)に基づいて出力される。また、位置指令値X*は、速度指令値V*を積分して求められるため、やはり停止位置修正制御パターンに基づいて出力されるといえる。
【0041】次に、具体的な走行例を説明する。まず、3系走行時にインチング指令が出力された場合について、上述の電流指令値出力処理の処理手順を説明する。この場合、インチング指令が出力されているため、S101で肯定判定され、位置偏差△Xに基づきPID制御にて求めたフィードバック補償値と各外乱のフィードフォワード補償値とを加算して仮電流指令値とし(S102〜S104)、3系走行時のためこの仮電流指令値をそのまま電流指令値I*として出力する(S105、S106、S111)。このときの車両移動距離、A系〜C系推進コイルに流れる電流、車両速度の各時間変化を図6に示す。なお、図6はインチング指示距離を10cmとしたときのデータである。
【0042】この図6からわかるように、比較的短時間のうちにLSM式車両の実速度がゼロに収束し、また、インチング指示距離とほぼ一致した移動距離が実現できている。即ち、停止位置修正に影響を及ぼす外乱(勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗)のフィードフォワードを適用しているため、外乱補償が行われ、停止位置修正が10cmという微小距離であっても、走行条件によらない高精度の停止位置修正が実現できていることがわかる。
【0043】なお、このような外乱のフィードフォワードを適用しない場合には、PID位置制御系であれ、PI速度制御系であれ、微小距離移動を実行しようとすれば著しく後退する等の不具合が発生するため、到底精度よく微小距離移動を実行することはできない。
【0044】次に、図7のように、2系走行になった時であってLSM式車両が片側推進区間に位置しているときにインチング指令が出力された場合について、上述の電流指令値出力処理の処理手順を説明する。なお、ここでは、C系の電力供給系が何らかの原因で停止したことにより2系走行に移行したものとし、A系推進コイル11A2のみによって電力供給されているものとする。
【0045】この場合、インチング指令が出力されているため、S101で肯定判定され、位置偏差△Xに基づきPID制御にて求めたフィードバック補償値と各外乱のフィードフォワード補償値とを加算して仮電流指令値とし(S102〜S104)、2系走行時であってLSM式車両が片側推進区間に位置しているため、この仮電流指令値を2倍した値を電流指令値I*として出力する(S105、S109〜S111)。このときの車両移動距離、A系〜C系推進コイルに流れる電流、車両速度の各時間変化を図8に示す。なお、図8も図6と同様、インチング指示距離を10cmとしたときのデータである。
【0046】この図8からわかるように、LSM式車両が片側推進区間に位置している場合であっても、3系走行時とほぼ同等の結果が得られている。即ち、比較的短時間のうちにLSM式車両の実速度がゼロに収束し、また、インチング指示距離とほぼ一致した移動距離が実現できている。このように、LSM式車両が片側推進区間に位置している場合には、仮電流指令値を2倍にして推力の不足分を補うことにより、停止位置修正が10cmという微小距離であっても、走行条件によらない高精度の停止位置修正が実現できていることがわかる。
【0047】ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係を明らかにする。本実施形態の速度制御器13が本発明の停止位置修正装置に相当し、速度制御器13を構成するPID位置制御系補償器40、フィードフォワード補償器50、加算器60が電流指令値演算手段に相当し、速度制御器13を構成するCPUが停止位置修正指示手段、系統判定手段、車両位置判定手段に相当し、第1スイッチ61が電流指令値変更手段に相当する。また、図6のS101が停止位置修正指示手段の処理に、S103及びS104が電流指令値演算手段の処理に、S105が系統判定手段の処理に、S109が車両位置判定手段の処理に、S110が電流指令値変更手段の処理に相当する。
【0048】[第2実施形態]第2実施形態は、第1実施形態と比べて速度制御器の構成以外は同じ構成である。このため、ここでは速度制御器23のみについて説明する。速度制御器23の機能について図9に基づいて説明する。速度制御器23は、PI速度制御系補償器30と、停止位置修正に影響を及ぼす外乱についてフィードフォワード補償演算するフィードフォワード補償器50と、PI速度制御系補償器30からの出力値とフィードフォワード補償器50からの出力値とを加算する加算器70と、フィードフォワード補償器50からの出力値を加算器70に出力するか否かを切り替えるスイッチ71とを備えている。
【0049】PI速度制御系補償器30及びフィードフォワード補償器50は第1実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。スイッチ71は、通常走行時かインチング指令時かによって切り替えられるスイッチであり、通常走行時にはオフされていてフィードフォワード補償器50からの出力値を加算器70へ出力させないが、インチング指令時にはオンされてフィードフォワード補償器50からの出力値を加算器70へ出力させる。
【0050】この速度制御器23は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されているが、具体的な動作について図10の電流指令値出力処理のフローチャートに基づいて説明する。この電流指令値出力処理のプログラムは速度制御器23のROMに記憶されており、所定サンプリング時間おきに速度制御器23のCPUがROMから読み出して実行するものである。
【0051】速度制御器23は、この電流指令値出力処理が開始されると、まず、インチング指令が出力されたか否かを判断する(S201)。このステップは第1実施形態のS101と同じである。そして、S201においてインチング指令が出力されていなければ(S201でNO)、通常走行時であると判断し、スイッチ71をオフにし、PI速度制御系補償器30にて速度指令値V*と実速度Vから速度偏差△Vを求め、この速度偏差△Vを比例・積分演算することによりフィードバック補償値を求め、これを電流指令値I*とし(S205)、これを外部へ出力する(S204)。
【0052】一方、インチング指令が出力されたならば(S201でYES)、停止位置修正を行う必要があるため、スイッチ71をオンにし、PI速度制御系補償器30にて速度指令値V*と実速度Vから速度偏差△Vを求めてフィードバック補償値とし(S202)、更にこれにフィードフォワード補償器の出力値(フィードフォワード補償値)を加算して電流指令値I*とし(S203)、これを外部へ出力する(S204)。
【0053】次に、具体的な走行例について説明する。ここでは、3系走行時にインチング指令が出力された場合について、上述の電流指令値出力処理の処理手順を説明する。この場合、インチング指令が出力されているためS201で肯定判定され、速度偏差△Vに基づきPI制御にて求めたフィードバック補償値と各外乱のフィードフォワード補償値とを加算して電流指令値I*とし、これを外部へ出力する(S202〜S204)。このときの車両移動距離、A系〜C系推進コイルに流れる電流、車両速度の各時間変化を図11に示す。なお、図11はインチング指示距離を10cmとしたときのデータである。
【0054】この図11からわかるように、本実施形態においても、比較的短時間のうちにLSM式車両の実速度がゼロに収束し、また、インチング指示距離とほぼ一致した移動距離が実現できている。即ち、停止位置修正に影響を及ぼす外乱(勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗)のフィードフォワードを適用しているため、外乱補償が行われ、停止位置修正が10cmという微小距離であっても、走行条件によらない高精度の停止位置修正が実現できていることがわかる。但し、インチング指令時にPID位置制御系補償器40を用いる第1実施形態の方が速応性等の面で有利である。
【0055】尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。例えば、上記実施形態のフィードフォワード補償器50は、勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗の3つについてフィードフォワード補償演算を行うものとしたが、勾配抵抗のフィードフォワード補償演算を行えば、停止位置修正時の後退や転動をある程度防止できるため、勾配抵抗のみについてフィードフォワード補償演算を行ってもよい。あるいは、勾配抵抗と出発抵抗の2つについてフィードフォワード補償演算を行ってもよい。
【0056】また、勾配抵抗、出発抵抗、走行抵抗の補償電流値Ig、Is、Idの算出式(1)〜(3)は例示であって、これ以外の算出式を排除するものではなく、例えば経験則に応じて随時好ましい算出式に変更してもよい。更に、第2実施形態についても、加算器70の下流側に第1実施形態と同様のスイッチ61を設けて、2系走行時であってLSM式車両が片側推進区間に位置している場合にはフィードバック補償値とフィードフォワード補償値とを加算した仮電流指令値の2倍を電流指令値として出力してもよい。
【出願人】 【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成12年3月24日(2000.3.24)
【代理人】 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉 (外1名)
【公開番号】 特開2001−275210(P2001−275210A)
【公開日】 平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願番号】 特願2000−84149(P2000−84149)