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【発明の名称】 ハイブリッド車両の制御装置
【発明者】 【氏名】後藤 健一

【氏名】久保 麻巳

【要約】 【課題】内燃機関による車両走行中にこれを駆動源として発電を行うに際し、走行用出力の落ち込みを抑え、走行安定性を維持する。

【解決手段】発電機(モータジェネレータM/G)に対し発電を指令するとともに、内燃機関(エンジンENG)に対し出力増大を指令する。発電指令(目標発電トルク)には一次遅れ処理を施し、この処理後の発電指令に相当する発電電流を発生するように、発電機を制御する。一方、内燃機関は、出力増大指令に基づき、このときの目標機関トルクに発電指令相当のトルクを増して出力するように、制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】車両走行用の動力源として内燃機関と、バッテリを電力源とする電気モータとを備え、前記内燃機関による車両走行中に前記電気モータを発電機として前記内燃機関により駆動して発電するハイブリッド車両の制御装置であって、前記電気モータによる発電を行わせるに当たり、前記電気モータに向けて発電指令を発するとともに、前記内燃機関に向けて出力増大指令を発する指令発生手段と、前記発電指令に一次遅れの特性を持たせる指令遅れ処理手段と、該指令遅れ処理手段を介した発電指令を受け、これに基づいて前記電気モータを制御するモータ制御手段と、を含んで構成されるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】前記指令発生手段は、前記バッテリを充電すべき条件にて前記発電指令を発することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】前記指令遅れ処理手段は、上限値が経時的に増大する可変リミッタを用いて前記指令発生手段からの発電指令を制限し、一次遅れの特性を持たせることを特徴とする請求項1又は2記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】前記内燃機関が電子制御式のスロットル弁を備えるとともに、前記出力増大指令を受け、これに基づいて前記スロットル弁の開度を増大させて機関出力を増大させるスロットル弁開度増大手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】前記内燃機関が可変動弁装置を備える場合に、前記出力増大指令を受け、これに基づいて吸排気弁のバルブタイミング及びリフト量のうちの少なくとも一方を調整して機関出力を増大させるバルブ制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】前記指令発生手段に対し、前記内燃機関の全開運転時に前記発電指令及び出力増大指令の発生を控えさせるか、又はこれを禁止する全開時指令抑制手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】前記指令発生手段に対し、前記バッテリの満充電時に前記発電指令及び出力増大指令の発生を控えさせるか、又はこれを禁止する満充電時指令抑制手段を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両走行用の動力源として内燃機関と、バッテリを電力源とする電気モータとを備え、前記内燃機関による車両走行中に前記電気モータを発電機として用い、これを前記内燃機関により駆動して発電するハイブリッド車両の制御装置に関する。より詳細には、かかる発電に伴う電気的負荷の増大に併せて機関出力を増大するに際し、車両の走行安定性を維持しうる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両走行用の動力源として内燃機関と、バッテリを電力源とする電気モータとを備えるハイブリッド車両の開発が進められている。かかるハイブリッド車両では、バッテリの充電等に用いられる電力は、内燃機関によって発電機を駆動して発生させるのが一般的である(特開平7−317581号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、現在、本出願人により、車両走行用の動力源を構成する電気モータを発電機としても機能させ、内燃機関による車両走行中にこれによって駆動して発電を行うハイブリッド車両が提案されている。このように発電に際し内燃機関が車両走行用の動力を供給している場合には、電気モータの発電機としての作動に伴い、電気的負荷が増大することによる出力変動(トルク段差)が生じる。これを緩和するには、その分機関出力を増す手当てが必要となる。
【0004】しかしながら、電気モータによる発電と機関出力の増大とを単に並行させただけでは、電気モータと内燃機関との応答性の違いから問題がある。一般的に、電気モータの応答性は機関出力の増大特性と比べ迅速であるため、両者の間に不整合が生じ、これらが釣り合うまでに走行用のトルクに変動を来すのである。
【0005】かかる実情に鑑み、本発明は、内燃機関による車両走行中に、これを駆動源として発電を行うに際し、機関出力を増大させ、これと併せて上記の不整合を解消することにより、出力変動を抑制しうるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このため、本発明は、請求項1記載のように、車両走行用の動力源として内燃機関と、バッテリを電力源とする電気モータとを備え、前記内燃機関による車両走行中に前記電気モータを発電機として前記内燃機関により駆動して発電するハイブリッド車両の制御装置であって、図1に示すように、前記電気モータによる発電を行わせるに当たり、前記電気モータに向けて発電指令を発するとともに、前記内燃機関に向けて出力増大指令を発する指令発生手段と、前記発電指令に一次遅れの特性を持たせる指令遅れ処理手段と、該指令遅れ処理手段を介した発電指令を受け、これに基づいて前記電気モータを制御するモータ制御手段と、を含んで構成される。
【0007】かかる構成によれば、内燃機関による車両走行中に、これを駆動源として電気モータによる発電を行わせるに当たって指令発生手段から出力増大指令が発せられ、内燃機関は、発電に用いられるエネルギー相当の機関出力を余剰に発生するように制御される。そして、内燃機関は、この余剰出力を比較的遅い応答性で発生することになる。
【0008】一方、電気モータは、指令遅れ処理手段を介して一次遅れの特性を有した発電指令を受けるモータ制御手段により、指令発生手段からの発電指令に対応する目標値に向け、その発電量を一次遅れ的に増すように制御される。従って、発電時に電気モータからその駆動源たる内燃機関に付される電気的負荷も、最終的な値に向けて一次遅れ的に増大することになる。
【0009】前記指令発生手段は、請求項2記載のように、前記バッテリを充電すべき条件にて前記発電指令を発するものであってよい。前記指令遅れ処理手段は、請求項3記載のように、上限値が経時的に増大する可変リミッタを用いて前記指令発生手段からの発電指令を制限し、一次遅れの特性を持たせることができる。
【0010】本発明は、請求項4記載のように、前記内燃機関が電子制御式のスロットル弁を備えるとともに、前記出力増大指令を受け、これに基づいて前記スロットル弁の開度を増大させて機関出力を増大させるスロットル弁開度増大手段を備えるのが好ましい。
【0011】前記内燃機関が可変動弁装置を備える場合には、請求項5記載のように、前記出力増大指令を受け、これに基づいて吸排気弁のバルブタイミング及びリフト量のうちの少なくとも一方を調整して機関出力を増大させるバルブ制御手段を設けるのが好ましい。
【0012】本発明は、請求項6記載のように、前記指令発生手段に対し、前記内燃機関の全開運転時に前記発電指令及び出力増大指令の発生を控えさせるか、又はこれを禁止する全開時指令抑制手段を備えるのが好ましい。
【0013】また、請求項7記載のように、前記指令発生手段に対し、前記バッテリの満充電時に前記発電指令及び出力増大指令の発生を控えさせるか、又はこれを禁止する満充電時指令抑制手段を備えるのが好ましい。
【0014】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、内燃機関と電気モータとの応答性の違いを考慮して電気モータによる発電を行わせることで、機関出力の特性と、発電に伴う電気的負荷の特性との間の不整合を緩和し、車両走行用として用いられる機関出力を可及的に一定にすることができる。
【0015】請求項2に係る発明によれば、バッテリを充電する際の車両走行性の安定化を図ることができる。請求項3に係る発明によれば、一次遅れの特性を対応の上限値との比較のみに基づいて持たせることが可能であるため、発電指令の処理をシンプル化し、その迅速化を図ることができる。
【0016】請求項4に係る発明によれば、スロットル弁の動作に基づいて余剰分の機関出力を発生させるようにしたことで、このときに要求される空気量の正確な制御が可能となるため、走行安定性の向上を図ることができる。
【0017】請求項5に係る発明によれば、各バルブの調整により、余剰分の機関出力を簡易に生じさせることができる。請求項6に係る発明によれば、内燃機関の全開運転時に出力増大指令の発生が抑えられるか、或いは禁止されるため、機関出力を優先すべき状態における内燃機関への負担をなくし、運転性の維持を図ることができる。
【0018】請求項7に係る発明によれば、バッテリが満充電状態にある場合に発電指令の発生が抑えられるか、或いは禁止されるため、過充電によるバッテリの劣化を防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の動力供給系の構成を示す概略図である。このように、本ハイブリッド車両では、内燃機関(以下、エンジン)1の出力側に、発電機を兼ねる電気モータ(以下、モータジェネレータ)2を直結する。そして、モータジェネレータ2に変速機3を接続し、この変速機3の出力側の駆動軸4により、ディファレンシャル5を介して駆動輪側の車軸6を駆動できるようにする。
【0020】ここで、モータジェネレータ2は、後述する高電圧バッテリを電力源としており、エンジン1の始動時又は車両の発進時にエンジン1のクランキングを行う始動手段として用いられ、特に、所定のアイドルストップ条件にてエンジン1を自動的に停止させるアイドルストップ装置を備える場合には、アイドルストップ後に、所定のアイドルストップ解除条件にてエンジン1を自動的に再始動する際に用いられる。
【0021】そして、このようにして消耗した高電圧バッテリに充電するに際し、モータジェネレータ2は発電機として用いられ、減速運転時に駆動軸4側からのエネルギーを回生して発電を行い、これ以外の運転条件においても、エンジン1による車両走行中にこれによって駆動されて発電を行う。
【0022】図3は、本実施形態における電力供給系の構成を示す概略図である。高電圧バッテリ11は、定格42[v]程度の、モータジェネレータ2の電力源となる充放電可能な電池電源であって、本実施形態では、鉛酸バッテリ(Leadacid battery;充放電中に組成が変わる酸化鉛を含む鉛の格子を電極とし、希硫酸を電解質とする鉛蓄電池)を用いている。
【0023】高電圧バッテリ11の充電時、すなわち、モータジェネレータ2から発電電力が得られている状態では、モータジェネレータ2により発生する3相交流電力が、インバータ12により直流電力に変換され、ジャンクションボックス13を介して高電圧バッテリ11に供給される。
【0024】一方、高電圧バッテリ11の放電時には、その放電電力が、ジャンクションボックス13及びインバータ12を介して3相交流電力に変換されて、モータジェネレータ2に供給される。
【0025】低電圧バッテリ14は、エンジン補機負荷を含む車載電気負荷の電力源として一般的に用いられている定格14[v]程度の鉛酸電池で、その電気エネルギーは、モータジェネレータ2からインバータ12及びジャンクションボックス13を介した後、DC/DCコンバータ15を介して、蓄えられる。
【0026】電子制御ユニット16は、車両のエンジン回転数Ne、車速VSP、アクセル操作量ACC、吸入空気量Qa及びアイドルスイッチ信号等の各種信号が入力される他、モータジェネレータ2により発生しインバータ12により変換された発電電流IMGを検出するセンサ17からの信号、高電圧バッテリ11への充電(又は放電)電流IHを検出するセンサ18からの信号、及び高電圧バッテリ11の端子電圧VHを検出するセンサ19からの信号が入力され、これらを基に、エンジン1及びモータジェネレータ2を制御する。
【0027】次に、電子制御ユニット16による制御について、図4〜8を参照して説明する。まず、図4,5に示すブロック図に基づいて、モータジェネレータ2の発電量(発電電流)制御について説明する。
【0028】目標充電レベル設定部21は、高電圧バッテリ11の目標充電レベルtSOC[%]を設定する。tSOCは、満充電量(初期状態での満充電量、又は満充電状態にて学習した満充電量)に対する目標充電量の割合として設定され、ここでは、95%としている。
【0029】なお、目標充電レベルtSOCは、実際の充電レベルの検出誤差を考慮し、これが±α[%]であるとすると、100−α[%]に設定する。従って、検出誤差が±5%であるときに、tSOCは、満充電相当レベルのものとして、95%に設定される。このように検出誤差を考慮することにより、高電圧バッテリ11の過充電を防止することができる。
【0030】充電レベル検出部22は、高電圧バッテリ11の実際の充電レベルを、次のようにして検出(推定)する。まず、エンジン1の始動時(大電流放電時)に、放電時特性VH=E0−IH×R(VHはバッテリの端子電圧、E0は開放端電圧(起電力)、IHは放電電流、Rはバッテリの内部抵抗)より、実際に検出した複数点でのVH,VIから、E0,Rを求め、充電量=f(E0)を推定する。その後は、電流センサ18によって検出された高電圧バッテリ11の充放電電流IHを時間積算し、充電量を更新する(充電量=充電量+IH×Δt;Δtは積算の時間隔)。そして、このようにして求められた充電量を満充電量(所定の初期容量、又は学習した満充電量)で除算して、充電レベルSOC[%]を算出する。
【0031】なお、ここでは、目標充電レベルtSOC及び充電レベルSOCを満充電状態に対する割合として設定し及び検出しているが、絶対量である充電量として設定し及び検出するようにしてもよい。
【0032】目標充電電流算出部23は、上記の目標充電レベルtSOCと充電レベルSOCとを比較し、その差分(tSOC−SOC)に比例積分制御に基づくゲインKを乗じるなどして、充電量のフィードバック制御量を算出する。そして、これを電流換算して、高電圧バッテリ11への目標充電電流tIc とする。
【0033】一方、電気負荷電流算出部24は、電流センサ17によって検出されたモータジェネレータ2の実際の発電電流IMGから、電流センサ18によって検出された高電圧バッテリ11への実際の充電電流IHを減算して、エアコン、パワステ等の車載電気負荷に供給されている電気負荷電流IL(=IMG−IH)を算出する。つまり、このようにIMGからIHを減算して低電圧バッテリ14への充電電流を求め、これを電気負荷電流ILと推定するのである。
【0034】バッテリ充電時目標発電電流算出部25は、以上のようにして求められた目標充電電流tIc と電気負荷電流ILとを加算して、モータジェネレータ2の目標発電電流tIg を求める(即ち、tIg =tIc +IL)。
【0035】以下、図5を参照する。目標発電トルク算出部31は、実際のモータ発電電流が目標発電電流tIg と等価となるように、モータジェネレータ(M/G)2への目標発電トルクtTg を設定する。
【0036】この際に、目標発電トルク算出部31は、モータジェネレータ2の発電効率や、エンジン(ENG)1の燃焼効率等の燃費改善因子を考慮する。そして、エンジン1による車両走行中に行われる発電が、これらの因子を良好にできるようなエンジン1の運転条件で行われるようにする。ここでの制御については、後に図6を参照して説明する。
【0037】そして、電子制御ユニット16は、続く一次遅れ処理部32で目標発電トルクtTg が一次遅れ処理された出力発電トルクtTg'に基づいてモータジェネレータ2を制御する一方、これに伴って消費される機械的エネルギー(トルク段差分)を補うべく、エンジン1の出力を増大させる。この結果、エンジン1は、そのときの目標機関トルクtTe に目標発電トルクtTg 分を増した出力を発生するように制御される。ここでの制御については、後に図7,8を参照して説明する。
【0038】なお、一次遅れ処理部32は、モータジェネレータ2の応答性に対するエンジン1の出力変動の遅れを考慮して設けられるものである。出力発電トルクtTg'は、目標発電トルクtTg から、例えば下式(1)を用いて算出することができる。なお、重み付け定数をF(0<F<1)とする。
【0039】
tTg'=tTg'(1−F)+tTg ×F ・・・(1)
または、一次遅れ処理部32に、一次遅れ的な経時変化を示す上限(比較)値を有する可変リミッタを持たせ、これによって目標発電トルクtTg に制限を加えることで、同様の効果を得ることもできる。この可変リミッタによる場合には、上限値を一次遅れ処理部32の入力値の大きさ(即ち、モータジェネレータ2の目標発電電流tIg )に対応させることが可能であるため、要求される発電量への所望の収束性を持たせることもできる。
【0040】このように、モータジェネレータ2による発電を行わせるに際し、その発電量を応答性の劣る機関出力に合わせるように増大させることで、発電に伴う電気的負荷の増大と、エンジン1による実際の出力増大との整合を図ることができる。
【0041】以上のようにして、モータジェネレータ2は、高電圧バッテリ11の充電時には目標発電電流tIg を発生するように制御されるが、一方、放電時には、このときのバッテリの劣化を防止すべく、微量の発電電流(1〜2[A]程度(定数))を発生するように制御される。
【0042】次に、上記の目標発電トルク算出部31による制御について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップ(以下、単にS)1で、充電レベル検出部22によって検出された充電レベルSOCが、目標充電レベル設定部21によって設定された目標充電レベルtSOC以上であるか否かを判定する。
【0043】このステップは、高電圧バッテリ11を充電する必要がない場合における発電を回避するためのものであり、高電圧バッテリ11の充電状態が所定の放電状態に達していない(充電の必要のない)場合には、目標発電トルクtTg が0に設定される(S4)。従って、ここでの処理としては、目標充電レベルtSOCとの比較に代わり、所定の満充電相当値(例えば、95%)と比較してもよい。また、バッテリ端子電圧VHと過充電相当の端子電圧との比較に基づき、同様の目的を達することも可能である。
【0044】このように、モータジェネレータ2の目標発電トルクtTg を設定するに当たり、高電圧バッテリ11が所定の充電状態にある場合にモータジェネレータ2による発電を回避(禁止)しうる構成とすることで、バッテリの劣化を生ずる過充電を未然に防ぐことができる。
【0045】一方、充電レベルSOCが目標充電レベルtSOCより小さい場合には、バッテリを充電すべく、モータジェネレータ2による発電を行わせるため、S2以降に示す制御が実施される。
【0046】電子制御ユニット16は、S2で、読み込まれた各種信号に基づき、エンジン1の運転状態を検出する。そして、検出された運転状態に基づき、続くS3で、上記の発電を行わせるに当たり、エンジン1が好ましい運転条件か否かを判定する。
【0047】この条件として、本実施形態では、エンジン1が、発電機としてのモータジェネレータ2を高効率で作動させることができる高回転領域にあり、かつエンジン1自体の効率が高い高負荷領域にあるか否かを判定する。勿論、これら2つの条件のうちのいずれかのみを採用した判定を行うことも可能である。
【0048】この結果、エンジン1が高回転高負荷領域以外にあると判定された場合には、エンジン1が、モータジェネレータ2による発電に関し、本実施形態に係る好ましい運転条件ではないとしてS4へ進み、目標発電トルクtTg を0に設定する。従って、この場合には、発電は行われない。一方、エンジン1が高回転高負荷領域にあると判定された場合には、S5へ進む。
【0049】S5では、エンジン1の出力領域を判定する。この結果、エンジン1が全負荷領域以外(即ち、全負荷領域を除く高回転高負荷領域)にある場合にはS6へ進み、バッテリ充電時目標発電電流算出部25からの目標発電電流tIg に基づいて目標発電トルクtTg を算出する。一方、エンジン1が全負荷領域(即ち、高回転高負荷領域のうちの全負荷領域)にある場合にはS7へ進み、高電圧バッテリ11の充電状態を点検する。
【0050】そして、充電レベルSOCが所定の充電レベルSOCa より小さい場合にはS8へ進み、所定のトルク値Ta を目標発電トルクtTg とする。ここで、SOCa は、高電圧バッテリ11の過放電相当レベルであるのが好ましい。これにより、バッテリの少なくとも過放電状態における最低限の発電(充電)を保証することができる。一方、SOCがSOCa 以上である場合にはS4へ進み、tTg を0に設定する。
【0051】このようにして、エンジン1が特定の出力領域、特に全負荷領域にある場合(エンジン1が全開運転されている場合)にモータジェネレータ2による発電を行わせないようにすることで、機関出力を優先すべき状態におけるエンジン1への負担をなくし、運転性の維持に寄与することができる。
【0052】次に、機関出力の制御について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。本実施形態では、エンジン1は、電子制御式のスロットル弁(以下、電制スロットル弁)を備え、運転条件に応じて設定される目標機関トルクに基づいて制御される。そして、モータジェネレータ2による発電が行われる際には、この目標機関トルクが増大側に補正されて、機関出力を増大する。
【0053】すなわち、電子制御ユニット16は、まず、S11で各種信号を読み込み、S12で、これらの運転条件に応じた目標機関トルクtTe を設定する。続くS13で、これに目標発電トルク算出部31からの目標発電トルクtTg を加算して、発電時機関トルクtTe'を設定する。そして、この後、発電時機関トルクtTe'を発生するように、エンジン1を制御するのである。
【0054】例えば、S14で、発電時機関トルクtTe'とエンジン回転数Neとに基づくマップ等から目標燃料量を求め、これと目標空燃比とを乗算して目標空気量tQa を設定し、S15で、この空気量が導入されるように、エンジン回転数Neを考慮して(例えばマップを参照して)電制スロットル弁の開度を制御することで、これを達することができる。
【0055】この目的は、吸排気弁のバルブタイミングの調整や、点火時期の補正によっても同様に達することができる。前者による場合には、エンジン1は、可変動弁装置を備える必要がある。これを、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0056】モータジェネレータ2による発電が要求されると、エンジン1に対しては、S21で出力を増大することが要求される。この要求が発せられた場合にはS22へ進み、バルブタイミングが最大出力点に設定されているか否かを判定する。この判定結果が否定的である場合にはS23へ進み、バルブタイミングを変更することで、機関出力の増大を図ることができる。このためには、例えば、吸気弁の作動角を拡大補正する。
【0057】また、機関出力の増大は、バルブタイミングの変更に限らず、各バルブのリフト量の変更によっても可能である。つまり、S22で、上記の判定と併せて、又はこれとは別に、リフト量に余裕があるか(最大リフト位置に設定されているか)否かを判定し、これに余裕がある場合には23へ進み、リフト量の変更による機関出力の増大を図るのである。このためには、例えば、吸気弁のリフト量を大きくする。
【0058】一方、バルブタイミングが最大出力点に設定され、及び/又はリフト量に余裕がない場合にはS24へ進み、これら以外の方法、例えば、点火時期の変更によって機関出力の増大を図ることができる。このためには、例えば、点火時期を進角側に補正する。また、S24では、点火時期の変更に限らず、これと併せて、又はこれとは別に、燃料噴射量を増すことによって出力増大を図ることとしてもよい。
【0059】以上に説明したように、本発明によれば、エンジン1とモータジェネレータ2との応答性の違い、具体的には、発電時におけるモータジェネレータ2の電気的負荷の増大に対するエンジン1の出力増大の遅れを考慮し、この電気的負荷の変化をエンジン1の応答性に合わせて遅らせることで、これらの不整合を緩和し、発電に伴う走行用出力の落ち込みを抑え、ハイブリッド車両の走行安定性の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【代理人】 【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
【公開番号】 特開2001−268710(P2001−268710A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−78465(P2000−78465)