| 【発明の名称】 |
電気ブレーキの制御方法及びその装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】小笠 正道
【氏名】渡邉 朝紀
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| 【要約】 |
【課題】摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで線路上で車両を停止し、かつその停止状態を維持することができる電気ブレーキの制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の電気ブレーキの制御装置は、主に同装置10の各構成部分を制御するための指令パターンを演算しトルク分電流Iqを出力するパターン制御部11と、電圧や電流などをベクトル制御演算して出力すべき電流をベクトル制御する電流制御部14と、電流や減速度の時系列データなどを記憶するメモリ12と、駆動トルク発生装置16にトルク分電流Iqを発生する電流発生回路13と、電流などを測定しメモリ12に出力する電流測定部20と、電動機速度Vや加速度αを測定する速度及び加速度測定部15と、車両を停止させ車両の停止状態を維持するためのトルク分電流の値Iq#offsetを算出する適応同定演算部19とを備えている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法であって; (a)電気入力Iqを電気ブレーキに与え、(b)車両の速度Vと減速度αを測定し、(c)車両速度Vが第1の速度閾値V1以下になったとき、前記電気入力Iqの値を徐々に減少させると供に、当該電気入力Iqの値と前記減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出し、(d)車両速度Vが第2の速度閾値V2以下になったとき前記停止電気入力Iqoffを確定し、当該停止電気入力Iqoffを前記電気入力Iqに重畳して前記電気ブレーキに与え、(e)車両停止時に前記電気入力Iqとして前記停止電気入力Iqoffを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 【請求項2】 前記ステップ(c)は、逐次最小自乗法などの適応同定手法によって車両の停止時に必要な前記停止電気入力Iqoffを算出することを特徴とする請求項1記載の電気ブレーキの制御方法。 【請求項3】 前記ステップ(c)は、前記電気入力Iqの値と前記減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な前記停止電気入力Iqoffを算出することを特徴とする請求項1または2記載の電気ブレーキの制御方法。 【請求項4】 前記ステップ(c)は、1車軸当りの軸質量をM、1車軸当りの車輪軸換算の慣性モーメントをJw、車輪半径をrw、減速度をα、電磁力に換算するための比例定数をk、主電動機磁束φ、ベクトル制御によるブレーキ時のトルク分電流をIq、重力加速度をg、勾配の角度をθとしたとき、Iq={(M十Jw/rw)/(k・φ)}・α+M・g・sinθ/(k・φ) =a・α+b・βで示される数式で決まる物理的意味を持つパラメータa、bの適応同定に逐次最小自乗法などの適応同定手法を適用して車両の停止時に必要な前記停止電気入力Iqoffを算出することを特徴とする請求項1乃至3記載の電気ブレーキの制御方法。 【請求項5】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御装置であって;前記電気ブレーキに与える電気入力Iqを決定する制御手段と、車両の速度Vと減速度αを測定する測定手段と、前記電気入力Iqの値と前記減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出する演算手段と、を備え、前記制御手段は、前記測定手段で測定された前記車両の速度Vが第1の速度閾値V1以下になったとき、前記電気入力Iqの値を徐々に減少させると供に、前記演算手段を稼動させ、前記車両の速度Vが第2の速度閾値V2以下になったとき、前記演算手段を停止すると供に、前記停止電気入力Iqoffを確定し、当該停止電気入力Iqoffを前記電気入力Iqに重畳して前記電気ブレーキに与え、車両停止時に前記電気入力Iqとして前記停止電気入力Iqoffを電気ブレーキに与えることにより線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 【請求項6】 前記演算手段は、逐次最小自乗法などの適応同定手法によって車両の停止時に必要な前記停止電気入力Iqoffを算出することを特徴とする請求項5記載の電気ブレーキの制御装置。 【請求項7】 さらに、車両データを記憶する記憶手段を備え、前記演算手段は、前記記憶手段に記憶されている前記車両データを使用して、前記電気入力Iqの値と前記減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な前記停止電気入力Iqoffを算出することを特徴とする請求項5または6記載の電気ブレーキの制御装置。 【請求項8】 前記演算手段は、1車軸当りの軸質量をM、1車軸当りの車輪軸換算の慣性モーメントをJw、車輪半径をrw、減速度をα、電磁力に換算するための比例定数をk、主電動機磁束φ、ベクトル制御によるブレーキ時のトルク分電流をIq、重力加速度をg、勾配の角度をθとしたとき、Iq={(M十Jw/rw)/(k・φ)}・α+M・g・sinθ/(k・φ) =a・α+b・βで示される数式で決まる物理的意味を持つパラメータa、bの適応同定に逐次最小自乗法などの適応同定手法を適用して車両の停止時に必要な前記停止電気入力Iqoffを算出することを特徴とする請求項5乃至7記載の電気ブレーキの制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、直流モータ等の電気ブレーキを用いて車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。特には、摩擦ブレーキを使用することなく電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を減速及び停止させることのできる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、鉄道車両用のブレーキとして、電気ブレーキ、摩擦ブレーキ、流体ブレーキなどが用いられている。このうち電気ブレーキの代表的なものは、駆動電動機を発電機として電流を発生して車軸に駆動トルク(以下、減速の場合には「制動トルク」ともいう)を与え車両を減速及び停止させるものである。また、摩擦ブレーキは、圧縮空気や油圧などによって機械的に制輪子を車軸やブレーキディスクなどに押し付けて摩擦力を発生させ車両を減速及び停止させるものである。また、流体ブレーキは、油などの流体を回転翼などで攪拌し、その際の抵抗力をブレーキ力として車両を減速及び停止させるものである。 【0003】ここで、電気ブレーキと摩擦ブレーキを併用して走行中の電気車などの鉄道車両を停止させる場合、一般的に、まず電気ブレーキによって徐々に減速し、最後に摩擦ブレーキによって物理的に車軸などを固定して停止させている。また、車両の停止場所が勾配のある線路上の場合には、最終的に摩擦ブレーキを使用して確実に車両の停止及び停止状態の保持を行っている。 【0004】また、電気ブレーキのみで車両の停止及び停止状態の保持を行う勾配推定フィードフォワード・トルクパターン制御においては、平坦区間における減速度α0、車両重量M、線路勾配θなどを特定し、それらの値から車両の停止トルク(勾配均衡トルク)Fuに相当する停止トルク分電流Iqsを算出して電気ブレーキに供給することにより、電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を停止している。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電気ブレーキと摩擦ブレーキを併用して車両を停止する場合、車両を電気ブレーキによって徐々に減速し、所定の速度まで減速したら摩擦ブレーキによる制動力を大にして車両を停止するため、摩擦ブレーキによる停止時の衝撃やブレーキのきしり音が生じていた。また、摩擦ブレーキを使用した場合、摩擦ブレーキの摩耗による摩耗粉塵や摩擦ブレーキの摩擦熱による各部位の熱疲労などが生じ、制輪子やブレーキディスク等の摩耗部品の取り替え作業も必要であった。 【0006】また、勾配のある線路上で電気ブレーキのみで車両を停止してその停止状態を維持する勾配推定フィードフォワード・トルクパターン制御の場合、以下のような問題があった。 (1)まず、平坦区間における減速度α0を予め測定して、この値α0をインバータなどの電力変換装置に記憶させておく必要があった。 (2)減速度α0を測定する平坦区間を特定することが困難であり、実際の鉄道車両では、工場や電車区の構内などで測定する必要があった。 (3)勾配上で減速する際に、実際の減速度αをラッチする時点(速度10[km/h]程度)において、比較的安定した減速度αが要求され、また、実際の車両においては、機械的な振動成分が載ってくるため、減速度αの演算時には数百[msec]程度の時定数を有するローパスディジタルフィルタなどを併用している。このとき、運転手のノッチ操作などによって減速度αが変化中の場合、ラッチで測定した減速度αは、実際の値より遅れた値となるため、減速度αの変化が大きいほど推定される停止トルク(勾配均衡トルク)Fuに誤差が生じた。 (4)停止トルク(勾配均衡トルク)Fuに相当する停止トルク分電流Iqsを算出する際には、車両の車輪の軸質量(車両重量)Mを正確に把握する必要がある。実際は、乗客や積荷などの増減によって車両重量Mが駅停車前後で大きく変動するため、この車両重量Mの変化に伴なう減速度変化分の補正を行う高精度の荷重検出装置が必要であり、コストがかかっていた。 【0007】つまり、従来の車両の停止においては、電気ブレーキのみによって線路上で車両を停止し、その停止状態を維持することが条件によっては困難であった。 【0008】本発明はこのような背景の中でなされたものであって、摩擦ブレーキを使用せずに車両を減速及び停止し、その停止状態を維持することができる電気ブレーキの制御方法及びその装置を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御方法は、 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法であって;(a)電気入力Iqを電気ブレーキに与え、(b)車両の速度Vと減速度αを測定し、(c)車両速度Vが第1の速度閾値V1以下になったとき、電気入力Iqの値を徐々に減少させると供に、当該電気入力Iqの値と減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出し、(d)車両速度Vが第2の速度閾値V2以下になったとき停止電気入力Iqoffを確定し、当該停止電気入力Iqoffを電気入力Iqに重畳して電気ブレーキに与え、(e)車両停止時に電気入力Iqとして停止電気入力Iqoffを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする。 【0010】このとき、ステップ(c)は、逐次最小自乗法などの適応同定手法によって車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出するようにするとよい。また、ステップ(c)は、電気入力Iqの値と減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出するようにする。このとき、記憶する必要のある車両データは、全く不要である。 【0011】また、上述の電気ブレーキの制御方法においては、ステップ(c)で、1車軸当りの軸質量をM、1車軸当りの車輪軸換算の慣性モーメントをJw、車輪半径をrw、減速度をα、電磁力に換算するための比例定数をk、主電動機磁束φ、ベクトル制御によるブレーキ時のトルク分電流をIq、重力加速度をg、勾配の角度をθとしたとき、Iq={(M十Jw/rw)/(k・φ)}・α+M・g・sinθ/(k・φ) =a・α+b・βで示される数式で決まる物理的意味を持つパラメータa、bの適応同定に逐次最小自乗法などの適応同定手法を適用して、車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出することができる。 【0012】また、上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御装置であって; 電気ブレーキに与える電気入力Iqを決定する制御手段と、 車両の速度Vと減速度αを測定する測定手段と、 電気入力Iqの値と減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出する演算手段と、を備え、 制御手段は、測定手段で測定された車両の速度Vが第1の速度閾値V1以下になったとき、電気入力Iqの値を徐々に減少させると供に、演算手段を稼動させ、車両の速度Vが第2の速度閾値V2以下になったとき、演算手段を停止すると供に、停止電気入力Iqoffを確定し、当該停止電気入力Iqoffを電気入力Iqに重畳して電気ブレーキに与え、車両停止時に電気入力Iqとして停止電気入力Iqoffを電気ブレーキに与えることにより線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする。 【0013】ここで、演算手段は、逐次最小自乗法などの適応同定手法によって車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出するようにするとよい。さらに、車両データを記憶する記憶手段を備え、演算手段は、記憶手段に記憶されている車両データを使用して、電気入力Iqの値と減速度αに基づいて、車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出するようにするとよい。 【0014】また、上述の電気ブレーキの制御装置においては、演算手段で、1車軸当りの軸質量をM、1車軸当りの車輪軸換算の慣性モーメントをJw、車輪半径をrw、減速度をα、電磁力に換算するための比例定数をk、主電動機磁束φ、ベクトル制御によるブレーキ時のトルク分電流をIq、重力加速度をg、勾配の角度をθとしたとき、Iq={(M十Jw/rw)/(k・φ)}・α+M・g・sinθ/(k・φ) =a・α+b・βで示される数式で決まる物理的意味を持つパラメータa、bの適応同定に逐次最小自乗法などの適応同定手法を適用して車両の停止時に必要な停止電気入力Iqoffを算出するようにすることができる。 【0015】上述の電気ブレーキの制御方法においては、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクに対応する停止電気入力を算出して電気ブレーキに与えるため、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで平坦または勾配のある線路上で車両を停止し、かつその停止状態を維持することができる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ここで、鉄道車両(以下、単に「車両」とも言う)の車両重量M及び、該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が未知の場合について説明する。なお、車両の重量Mは、不変の車両本体重量と乗客や荷物等の積載重量の和である。 【0017】図1は、本発明のブレーキ制御装置を用いた電気ブレーキ・システムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキ・システムは、運転部にあるマスターコントローラなどの制動装置からの制動信号(ブレーキ信号)を入力するブレーキ入力部18と、ブレーキ入力部18からのブレーキ信号に応じて制動トルクに相当する電流(以下、単に「制動トルク分電流」ともいう)を発生するブレーキ制御装置(以下、単に「制御装置」ともいう)10と、制動トルク分電流に応じた制動トルクを発生する駆動トルク発生装置16と、を備えている。また、駆動トルク発生装置16は、歯車や車軸、車輪などで構成される車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、ブレーキ制御装置10は、ベクトル制御インバータであり、駆動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機とする電動機である。また、駆動トルク発生装置16は、制動トルク分電流に対応する値を出力する電流センサ16aと、駆動部17の車軸の回転数に対応した信号を出力するパルスエンコーダ16bを備えている。 【0018】ここで、制御装置10は、主に同装置10の各構成部分を制御するための指令パターンを演算しトルク分電流Iq0を出力するパターン制御部11と、電圧や電流などをベクトル制御演算して出力すべき電流をベクトル制御する電流制御部14と、電流や減速度の時系列データなどを記憶するメモリ12と、駆動トルク発生装置16にトルク分電流Iqを発生する電流発生回路13と、駆動トルク発生装置16の電流センサ16aから制動トルク分電流に対応する値を受け、電流などを測定しメモリ12に出力する電流測定部20と、駆動トルク発生装置16のパルスエンコーダ16bからパルスエンコード信号を受け、波形整形、A/D(アナログ/デジタル)変換、フィルタリングなどを行って車両の電動機速度Vや加速度αを測定する速度及び加速度測定部(以下、単に「速度測定部」ともいう)15と、メモリ12及び電流制御部14に接続され、車両を停止させ車両の停止状態を維持するためのトルク分電流の値(以下、「停止維持電流」ともいう)Iq#offsetを算出する適応同定演算部(以下、単に「演算部」ともいう)19とを備えている。ここで、電流制御部14には、パターン制御部11から出力される電流値Iq0と適応同定演算部19から出力される電流値Iq#offsetとを加算したトルク分電流Iq0’が入力される(以下において、電流制御部14に入力されるトルク分電流の値は、「Iq0’=Iq0(パターン制御部11からの出力)+Iq#offset(適応同定演算部19からの出力)」の演算後の値とし、「制御トルク分電流値Iq0’」という)。 【0019】図2は、線路の勾配がθ(平坦区間の場合にはθ=0)である区間での車両の減速度の求め方の一例を示す概略図である。一般に、勾配上で停止する制御を特に行わない場合、平坦区間および勾配上では、トルク分電流Iqとその時の車輪減速度αとは略比例の関係がある。以下、本発明のブレーキ制御装置を用いた電気ブレーキ・システムにおいて、車両速度がV0から0になるまでの動作について説明する。なお、車両1の停止区間に勾配がある場合には、減速度ゼロの時点でのトルク分電流の値が、勾配と均衡する力を出力するトルク分電流となる。 【0020】図3は、本発明のブレーキ制御装置を用いた電気ブレーキ・システムのフローチャートである。図1〜図3において、まず、ブレーキ入力部18からのブレーキ信号(制動信号)に応じて、制御装置10のパターン制御部11は、電流制御部14に所定の値の制御信号(トルク分電流指令値Iq0)を送る。このトルク分電流指令値Iq0は、適応同定演算部19からの停止維持電流値Iq#offset(最初は「0」)が加算されて制御トルク分電流値Iq0’として電流制御部14に入力される。電流制御部14は、入力された制御信号の値(制御トルク分電流値Iq0’)に応じたトルク分電流指令値を発生回路13に送る(ステップ301)。電流発生回路13は、電流制御部14からのトルク分電流指令値に応じたトルク分電流Iqを駆動トルク発生装置16に出力する(ステップ302)。駆動トルク発生装置16は、制御装置10の電流発生回路13から入力されたトルク分電流Iqによって、駆動トルクFを駆動部17に伝達する(ステップ303)。この制御は、具体的には、ベクトル制御インバータ(ブレーキ制御装置10)からのトルク分電流Iqに応じて、誘導電動機(駆動トルク発生装置16)がトルクを発生し、このトルクを歯車機構などを介して車両1の車輪2に直結している車軸(駆動部17)に伝え、車輪2の回転運動を制御するものである。 【0021】速度測定部15は、駆動トルク発生装置16のパルスエンコーダ16bから計測した電動機軸の回転数などから車両1の電動機速度Vを測定する(ステップ304)。測定された電動機速度Vは、パターン制御部11及び電流制御部14に送られる。また、速度測定部15は、測定した速度の変化から加速度(停止時の場合には減速度)αを算出し、その値をメモリ12と電流制御部14に送る(ステップ305)。 【0022】パターン制御部11は、速度測定部15から受け取った電動機速度Vを監視しており、電動機速度Vがメモリ12に記憶されている所定の閾値速度V1以下になったときに(ステップ306)、所定の時間で電動機速度Vが0になるように、トルク分電流指令値Iq0を徐々に0に近づけていく(ステップ307)。また、パターン制御部11は、この閾値速度V1の検出をトリガとして、電動機速度Vが所定の閾値速度V2(V2<V1)になるまで電流制御部14を稼動する(ステップ308)。 【0023】一方、制御装置10の電流測定部20は、駆動トルク発生装置16の電流センサ16aからフードバック電流の値Iqを検出しメモリ12に記憶すると供に、電流制御部14に出力する。さらに、制御装置10の適応同定演算部19は、メモリ12に記憶されている電流測定部20からのトルク分電流Iq及び速度測定部15からの減速度αなどを入力値として、勾配オフセットトルク分電流Iq−offsetを算出する(ステップ309)。 【0024】次に、速度測定部15で測定された電動機速度Vが、メモリ12に記憶されている所定の閾値速度V2(V2<V1)になったとき(ステップ309)、電流制御部14は、適応同定演算部19から受け取った勾配オフセットトルク分電流Iq_offsetをパターン制御部11からのトルク分電流Iq0に重畳してトルク分電流指令値Iq0’を算出し、電流発生回路13に出力する(ステップ311)。ここで、電流制御部14は、電動機速度Vが速度閾値V2以下になった場合には、速度測定部15からの電動機速度Vのフィードバックは受けずに、電動機速度Vを論理的に算出し、その値を電動機速度Vの推定速度として使用する。 【0025】電流発生回路13は、勾配オフセットトルク分電流Iq_offsetが重畳されたトルク分電流指令値Iq0’に応じて、トルク分電流Iqを駆動トルク発生装置16に出力する(ステップ312)。駆動トルク発生装置16は、制御装置10の電流発生回路13から入力されたトルク分電流Iqによって、駆動トルクFを駆動部17に伝達し、車両1を停止する(ステップ313)。 【0026】以上のようにして、電動機速度Vを測定しながら制御装置10から駆動トルク発生装置16にトルク分電流Iqを出力して車両1を減速し、また、停止直前の所定の電動機速度(V1〜V2)の間に、勾配の値θに応じた勾配オフセットトルク分電流Iq_offsetを求めて、これをトルク分電流Iqに重畳することにより、車両停止時のトルク分電流Iqが勾配オフセットトルク分電流Iq_offsetになるため、勾配区間においても摩擦ブレーキを使用せずに電気ブレーキのみで正確に車両1を停止し、かつ停止状態を維持することができる。 【0027】以上、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置について説明したが、以下に、制御装置10の適応同定演算部19の演算処理について詳細に説明する。この適応同定演算部19では、勾配θの勾配区間で車両1を停止させ、且つその停止状態を維持するために必要なトルクFuを発生するためのトルク分電流Iq_offsetを算出する。ここで、車両1の重量と停止区間の勾配θが未知数であるため、2つ以上の運動方程式を立て、逐次的な最小自乗法を用いてリアルタイムにこれらの値を求める。一般に、勾配区間(勾配θ)における運動方程式は以下の<式1>のようになる。 【0028】 【数1】
【0029】なお、走行抵抗については、低速時のみのトルク分電流に着目しているため、一定値とみなしている。式1からIqを求めると、以下の<式2>となる。 【0030】 【数2】
【0031】ここで、勾配と荷重を適応同定する。式2は、一般に、y=a・x+bという一次式そのものであり、多点データに対する尤もらしい係数a、bを求めるには、通常最小自乗法を用いる。車両速度などのようにオンラインで時々刻々と状態が推移する場合には、逆行列演算を行わないで逐次的に最小自乗演算を行うRLSアルゴリズム(逐次最小自乗法)を用いることができる。 【0032】図4は、RLSアルゴリズムのスカラブロック図を示す。以下、図4を基に、逐次最小自乗法を本発明のブレーキ制御装置10の適応同定演算部19に適用した場合について説明する。上述の<式2>をサンプル値として得る場合には、i番目のサンプル値に対し、以下の式3で表すことができる。 【0033】 【数3】
【0034】また、i番目の実際値と推定値の誤差は、以下の式4で示すことができる。 【0035】 【数4】
【0036】この式4で示される誤差信号に基づいて、適応信号ゲインを修正する方法は以下の式5及び式6で表される。 【0037】 【数5】
【0038】 【数6】
【0039】上述の図3でも示したように、停止直前の低速度(速度V1〜V2の間)でトルク分電流Iqが絞り込まれる間に、図4で示した逐次最小自乗法を動作させて、勾配オフセットトルクFuに対応する勾配オフセットトルク分電流Iq_offsetを求め、停止直前にその値(Iq_offset)をトルク分電流Iq(Iq0)に重畳する方法を取る。これにより、停止時のトルク分電流Iqは、以下の式7に示す値となる。 【0040】 【数7】
【0041】即ち、勾配区間(勾配θ)上で車両停止時に式7で示したトルク分電流Iqが駆動トルク発生装置16に出力される。したがって、駆動トルク発生装置16では、トルク分電流Iqに対応した静止トルク(勾配オフセットトルクFu)を駆動部17に発生する。この静止トルク(勾配オフセットトルクFu)は、以下の式8で示すことができる。 【0042】 【数8】
【0043】このようにして、勾配区間の停止時にトルク分電流Iq_offsetを出力し、勾配区間での停止時に発生する力(静止トルクFu)により、車両1の勾配上で停止および停止状態の維持が可能となる。 【0044】図5は、本発明の電気ブレーキの制御装置を適用した実際の車両を使用して、電気ブレーキのみで停止させたときの速度V、トルク分電流指令値Iq0及び時刻tの関係を示す図である。図5において、車両速度Vが駆動トルク発生装置16である誘導電動機の回転子電気角周波数5Hz(車輪速度V1=5.35[km/h])時点で、トルク分電流Iqの絞り込みを開始すると同時に、適応同定演算部19でゲイン行列γの値を初期設定し、図4に示した逐次最小自乗法による勾配θと荷重Mの推定を開始する。車両速度が駆動トルク発生装置16である誘導電動機の回転子電気角周波数2Hz(車輪速度2.14[km/h])時点で、推定中の勾配オフセットトルク分電流(以下、「停止トルク分電流」ともいう)Iq_offsetをラッチする。そして、その時点のトルク分電流Iqから一定の電流増加勾配(125[A/sec])で停止トルク分電流Iq_offsetまで増減する。 【0045】ここで、ゲイン行列Γ(i)の初期化においては、Γ(0)=(0.2、0.0、0.2、0.2)などとし、同定動作開始時点ではこの行列の逆行列を持つように設定することで、その後の同定を可能とした。 【0046】図5に示すように、本発明の電気ブレーキ制御方法及び電気ブレーキ制御装置によれば、上り勾配や下り勾配においても電気ブレーキのみで正確かつ安全に車両を停止することができ、また、車両の停止状態を維持することができる。 【0047】以上、本発明の電気ブレーキ制御方法及び電気ブレーキ制御装置の形態例を示たが、制御装置10のメモリ12には、適応同定演算部19の起動トリガとなる電動機速度の閾値V1、V2などを予め記憶しておくとよい。 【0048】 【発明の効果】以上述べた通り、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、車両の停止直前に線路の勾配と釣り合う停止トルク分電流を算出して発生するため、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を停止し、かつその停止状態を維持することができるようになった。また、このため、摩擦ブレーキの使用による停止時の衝撃やきしみ音も発生せず、快適な乗り心地を提供できるようになった。 【0049】また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、車両の減速や停止状態を維持するときに摩擦ブレーキを使用しないため、摩擦ブレーキの摩耗による摩耗粉塵の発生や摩擦ブレーキの摩擦熱による各部位の熱疲労等の発生を防ぐことができ、また、制輪子やブレーキディスク等の摩耗部品の取り替え作業も必要なくなった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000173784 【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
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| 【出願日】 |
平成12年2月4日(2000.2.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100100413 【弁理士】 【氏名又は名称】渡部 温 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−218302(P2001−218302A) |
| 【公開日】 |
平成13年8月10日(2001.8.10) |
| 【出願番号】 |
特願2000−27493(P2000−27493) |
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