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【発明の名称】 燃料電池を有する車両の制御装置
【発明者】 【氏名】森沢 邦夫

【要約】 【課題】燃料電池が電動機の電気エネルギ源として用いられても、駆動輪のスリップ時の車両の挙動や車両の走行性が損なわれることのない燃料電池を有する車両の制御装置を提供する。

【解決手段】本実施例によれば、所定のトラクション制御開始条件が成立した場合には、車両の牽引力を高めるために駆動輪すなわち前輪66、68が路面をグリップするように、たとえばスリップ率RS 〔=(ΔV/VF )×100%〕が予め設定された目標スリップ率RS1内に入るようにその前輪66、68の回転或いは駆動力を抑制するトラクション制御装置108或いはトラクション制御手段112が設けられているので、燃料電池FCを有する車両でも、たとえば低μ路での発進或いは加速時において、トラクション制御装置108により前輪66、68のスリップ率RS が目標スリップ率RS1内とされて車両の牽引力が高められるとともに、横抗力が高められて車両の安定性が高められる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料電池と、該燃料電池から出力される電気エネルギにより車両の駆動輪を駆動する電動機とを有する車両の制御装置であって、所定のトラクション制御開始条件が成立した場合には、車両の牽引力を確保するために前記駆動輪の出力を抑制するトラクション制御手段を、含むことを特徴とする燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項2】 前記トラクション制御手段によるトラクション制御時に前記燃料電池の出力を制御する燃料電池出力制御手段が設けられたものである請求項1の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項3】 前記燃料電池出力制御手段は、前記トラクション制御手段によるトラクション制御時に前記電動機の出力を低下させるために前記燃料電池の出力を低下させるものであり、その後の電動機出力の増大時には蓄電装置からの電気エネルギを用いて該電動機の出力トルクを増大させる電動機出力制御手段がさらに設けられた請求項2の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項4】 前記車両は、前輪および後輪のうちの一方を原動機が駆動し、他方を電動機が駆動する前後輪駆動車両である請求項1乃至3のいずれかの燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項5】 前記車両は前輪および後輪のうちの一方を第1の電動機が駆動し、他方を第2の電動機が駆動する前後輪駆動車両である請求項1乃至3のいずれかの燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項6】 前記トラクション制御手段は、トラクション制御するために前記一方の車輪を駆動する原動機の出力を低下させるものであり、前記電動機出力制御手段は、蓄電装置および燃料電池からの電気エネルギにより前記電動機を駆動するものである請求項4の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項7】 前記前後輪駆動車両には前記原動機により駆動される発電機が備えられ、前記他方の車輪を駆動する電動機は該発電機から発生される電気エネルギにより駆動され、該発電機の発電が制限される場合には、前記燃料電池からの電気エネルギにより前記電動機が駆動されるものである請求項4の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項8】 前記燃料電池および原動機へ燃料を分配する燃料分配装置が設けられ、トラクション制御手段によるトラクション制御時に該燃料分配装置を制御するものである請求項4の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項9】 前記トラクション制御時に前記燃料電池の出力により電動機を駆動制御する場合、該燃料電池の出力を制限するものである請求項4の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項10】 前記燃料が所定量以下となった場合には前記原動機の作動が制限されるものである請求項6の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項11】 前記トラクション制御手段は、車輪に制動力を付与する車輪ブレーキを作動させることによりトラクション制御を実行するものである請求項1の燃料電池を有する車両の制御装置。
【請求項12】 前記燃料電池の作動状態に基づいて前記トラクション制御手段によるトラクション制御を補正する補正手段をさらに備えたものである請求項1の燃料電池を有する車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池と、その燃料電池から出力された電気エネルギにより作動させられる電動機とを備えた車両の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】燃料電池と、その燃料電池から出力される電気エネルギにより車両の駆動輪を駆動する電動機とを有する車両が知られている(特開昭50−31516号公報)。また、互いに独立した前輪駆動系および後輪駆動系にそれぞれ設けられた複数の原動機の少なくとも1部に、燃料電池から出力される電気エネルギにより車両の駆動輪を駆動する電動機を用いた4輪駆動車両が知られている(特開平9−298803号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の燃料電池を有する車両が記載された公報には、駆動輪にスリップが発生したときにおいて、駆動系や燃料電池などを適切に制御することができる技術が開示されておらず、種々の改良の余地があった。たとえば、燃料電池を電動機の電気エネルギ源として用いた車両は、たとえば4輪駆動実行時に電動機の電気エネルギ源として蓄電装置を有する従来の車両に比較すると、燃料電池が比較的応答性が低い性質を有することに起因して駆動輪のスリップ時の車両の挙動や車両の走行性が損なわれる場合があったのである。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、燃料電池が電動機の電気エネルギ源として用いられても、駆動輪のスリップ時の車両の挙動や車両の走行性が損なわれることのない燃料電池を有する車両の制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための第1の手段】かかる目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、燃料電池と、その燃料電池から出力される電気エネルギにより車両の駆動輪を駆動する電動機とを有する車両の制御装置であって、所定のトラクション制御開始条件が成立した場合には、車両の牽引力を確保または高めるために前記駆動輪の出力を抑制するトラクション制御手段を、含むことにある。
【0006】
【第1発明の効果】このようにすれば、燃料電池を有する車両でも、たとえば低μ路での発進或いは加速時において駆動輪のスリップが発生した場合には、トラクション制御手段によりその駆動輪の出力すなわち駆動輪の回転が抑制されて車両の牽引力が確保されまたは高められるとともに、横抗力も確保されて車両の安定性が高められる。
【0007】
【発明の他の態様】ここで、好適には、前記トラクション制御手段によるトラクション制御時に前記燃料電池の出力を制御する燃料電池出力制御手段が、さらに設けられる。このようにすれば、トラクション制御装置によるトラクション制御時には、燃料電池出力制御手段によって燃料電池の出力が制御されるので、トラクション制御に対応して燃料電池が適切に作動させられる。たとえば、トラクション制御開始直後には、アシストトルクを出力させるために蓄電装置からの電気エネルギにより電動機が直ちに作動させられ、その蓄電装置の充電残量が不足状態となるなどの所定時間後において燃料電池から出力される電気エネルギにより電動機が作動させられるように燃料電池の出力が制御される。これにより、トラクション制御が長引いてもアシスト駆動すなわち4輪駆動が継続的に得られる。
【0008】また、好適には、前記燃料電池出力制御手段は、前記トラクション制御手段によるトラクション制御時に前記電動機の出力を低下させるために前記燃料電池の出力を低下させるものであり、その後の電動機出力の増大時には蓄電装置からの電気エネルギを用いて該電動機の出力トルクを増大させる電動機出力制御手段が設けられたものである。このようにすれば、トラクション制御が開始されると、燃料電池出力制御手段により燃料電池の出力が低下させられるとともに、電動機出力制御手段により、その後の電動機出力の増大時には蓄電装置からの電気エネルギを用いて該電動機の出力トルクを増大させられるので、高い加速応答性が得られる。
【0009】また、好適には、前記車両は、前輪および後輪のうちの一方を原動機が駆動し、他方を電動機が駆動する4輪駆動車両すなわち前後輪駆動車両である。このようにすれば、トラクション制御手段を備えた4輪駆動車両において、燃料電池の出力が好適に制御される。
【0010】また、好適には、前記車両は、前輪および後輪の一方を第1の電動機が駆動し、他方を第2の電動機が駆動する前後輪駆動車両すなわち4輪駆動車両である。このようにすれば、トラクション制御手段を備えた4輪駆動車両において、燃料電池の出力が好適に制御される。
【0011】また、好適には、前記トラクション制御手段は、トラクション制御するために前記一方の車輪を駆動する原動機の出力を低下させるものであり、前記電動機出力制御手段は、蓄電装置および燃料電池からの電気エネルギにより前記他方の車輪を駆動する電動機を駆動するものである。このようにすれば、トラクション制御手段を備えた4輪駆動車両において、他方の車輪を駆動する電動機が蓄電装置および燃料電池からの電気エネルギにより作動させられるため、その電動機の作動の応答性が高められる。
【0012】また、好適には、前記前後輪駆動車両には前記原動機により駆動される発電機が備えられ、前記他方の車輪を駆動する電動機はその発電機から発生される電気エネルギにより駆動され、その発電機の発電がその発熱などにより制限される場合には、前記燃料電池からの電気エネルギにより前記電動機が駆動されるものである。このようにすれば、上記電動機による他方の車輪の駆動期間が制限されず、その電動機の作動が継続的に実行される利点がある。
【0013】また、好適には、前記燃料電池および原動機へ燃料を分配する燃料配分装置が設けられ、トラクション制御手段によるトラクション制御時にその燃料分配装置を制御するものである。このようにすれば、トラクション制御時においては、燃料電池および原動機へ燃料を分配する燃料配分装置が制御されるので、その燃料の分配制御によっても前記トラクション制御および4輪駆動制御が可能となる。
【0014】また、好適には、前記トラクション制御時に前記燃料電池の出力により電動機を駆動制御する場合、その燃料電池の出力を制限するものである。このようにすれば、トラクション制御時において燃料電池の発熱が好適に防止される利点がある。この燃料電池の出力が制限されるトラクション制御期間では、原動機により駆動される発電機から出力される電気エネルギが電動機に供給されるので、燃料電池の出力制限に拘らず電動機によるアシスト作動が制限されず、発電機の駆動により同時に原動機の負荷が増加する分、一方の車輪の駆動力が低下して上記トラクション制御効果が一層高められる。
【0015】また、好適には、前記燃料が所定量以下となった場合には前記原動機の作動が制限されるものである。このようにすれば、燃料の残量が少なくなったときには、相対的に効率の低い原動機の作動が制限され、効率の高い燃料電池で電動機が駆動されるので、燃料効率が一層高められる。
【0016】また、好適には、前記トラクション制御手段は、駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキを作動させてその駆動輪の回転を抑制してトラクション制御を実行するものである。このようにすれば、上記トラクション制御手段によるトラクション制御において高い制御応答が得られる。
【0017】また、好適には、前記燃料電池の作動状態に基づいて前記トラクション制御手段によるトラクション制御を補正するトラクション制御補正手段をさらに備えたものである。このようにすれば、燃料電池の作動状態に基づいてトラクション制御が補正されるので、燃料電池の出力状態に適合したトラクション制御が行われる利点がある。たとえば、燃料電池から電動機へ出力される電気エネルギの大きさすなわち電動機から出力されるアシストトルクが大きくなるほど、トラクション制御による一方の車輪の駆動力(回転)抑制が緩和され、車両が容易に走行できるようになる。
【0018】
【発明の好適な実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】図1は、本発明が適用された4輪駆動車両すなわち前後輪駆動車両の動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。この前後輪駆動車両は、内燃機関および電動機を原動機として備えた所謂ハイブリッド車両であって、前輪駆動系を前輪駆動装置すなわち主駆動装置10にて駆動し、後輪駆動系を後輪駆動装置すなわち副駆動装置12にて駆動する形式の駆動装置である。
【0020】上記主駆動装置10は、空気および燃料の混合気が燃焼させられることにより作動させられる内燃機関であるエンジン14と、第1電動機および発電機として選択的に機能するモータジェネレータMG1(以下、MG1という)と、ダブルピニオン型の遊星歯車装置18と、変速比が連続的に変化させられる無段変速機20とを同心に備えている。上記エンジン14は第1原動機すなわち主原動機として機能している。上記エンジン14は、その吸気配管の吸入空気量を制御するスロットル弁の開度θTHを変化させるためにそのスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ21を備えている。
【0021】上記遊星歯車装置18は、機械的に力を合成し或いは分配する合成分配機構であって、共通の軸心まわりに独立して回転可能に設けられた3つの回転要素、すなわち上記エンジン14にダンパ装置22を介して連結されたサンギヤ24と、第1クラッチC1を介して無段変速機20の入力軸26に連結され且つ上記MG1の出力軸が連結されたキャリヤ28と、第2クラッチC2を介して無段変速機20の入力軸26に連結され且つブレーキB1を介して非回転部材たとえばハウジング30に連結されるリングギヤ32とを備えている。上記キャリヤ28は、サンギヤ24およびリングギヤ32とかみ合い且つ相互にかみ合う1対のピニオン(遊星歯車)34および36を、それらの自転可能に支持している。上記第1クラッチC1、第2クラッチC2、ブレーキB1は、いずれも互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータによって押圧されることにより係合させられたり、その押圧解除により解放されたりする油圧式摩擦係合装置である。
【0022】上記遊星歯車装置18とそのキャリヤ28に連結されたMG1は、第2クラッチC2が係合されてエンジン14の作動(運転)状態すなわちサンギヤ24の回転状態においてMG1の発電量を制御することすなわちMG1の回転駆動トルクであるキャリヤ28の反力を受けつつ回転を制御してMG1に発電させると同時に出力メンバーであるリングギヤ32の回転数を0から滑らかに増加させて車両の滑らかな発進加速を可能とする電気トルコン(ETC)装置を構成している。このとき、遊星歯車装置18のギヤ比ρ(サンギヤ24の歯数/リングギヤ32の歯数)がたとえば一般的な値である0.5とすると、リングギヤ32のトルク:キャリヤ28のトルク:サンギヤ24のトルク=1/ρ:(1−ρ)/ρ:1の関係から、エンジン14のトルクが1/ρ倍たとえば約2倍近くに増幅されて無段変速機20へ伝達されるので、トルク増幅モードと称される。また、第1クラッチC1が係合されることにより、エンジン14が停止状態でMG1のみでの前輪66、68の駆動を行うことも可能である。
【0023】また、上記無段変速機20は、入力軸26および出力軸38にそれぞれ設けられた有効径が可変の1対の可変プーリ40および42と、それ1対の可変プーリ40および42に巻き掛けられた無端環状の伝動ベルト44とを備えている。それら1対の可変プーリ40および42は、入力軸26および出力軸38にそれぞれ固定された固定回転体46および48と、その固定回転体46および48との間にV溝を形成するように入力軸26および出力軸38に対して軸心方向に移動可能且つ軸心まわりに相対回転不能に取付られた可動回転体50および52と、それら可動回転体50および52に推力を付与して可変プーリ40および42の掛かり径すなわち有効径を変化させることにより変速比γ(=入力軸回転速度/出力軸回転速度)を変更する1対の油圧シリンダ54および56とを備えている。
【0024】上記無段変速機20の出力軸38から出力されたトルクは、減速装置58、差動歯車装置60、および1対の車軸62、64を介して1対の前輪66、68へ伝達されるようになっている。なお、本実施例では、前輪66、68の舵角を変更する操舵装置が省略されている。
【0025】前記副駆動装置12は、第2電動機および発電機として機能するリヤモータジェネレータMG2(以下、MG2という)を備え、そのMG2から出力されたトルクは、減速装置72、差動歯車装置74、および1対の車軸76、78を介して1対の後輪80、82へ伝達されるようになっている。
【0026】上記の前後輪駆動車両には、ガソリンなどの液体燃料やLPGなどを貯留するための燃料タンク88、電源として機能する燃料電池FC、液体燃料から燃料電池FCにおいて消費される水素ガスへ改質する改質器90、燃料タンク88内の液体燃料をエンジン14および改質器90へ分配する燃料配分装置92、MG1或いはMG2から回生により発生した電気エネルギ又は燃料電池FCから発生した電気エネルギを貯えるためのキャパシタ或いは蓄電池などの蓄電装置94、その蓄電装置94から供給された電気エネルギを用いて燃料電池FCから発生した水を電気分解して水素を発生し、その水素を燃料電池FC或いは水素貯蔵器96へ供給する水素発生装置98、MG1と蓄電装置94との間で授受される電流を制御する第1インバータ100、MG2と蓄電装置94と燃料電池FCとの間で授受される電流を制御する第2インバータ102が設けられている。
【0027】また、上記前後輪駆動車両には、図示しないエンジン駆動装置、変速制御装置、ハイブリッド制御装置に加えて、トラクション制御装置108および駆動制御装置110などが設けられている。それら制御装置は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々の制御を実行する。また、上記の制御装置は、相互に通信可能に接続されており、所定の制御装置から必要な信号が要求されると、他の制御装置からその所定の制御装置へ適宜送信されるようになっている。
【0028】上記トラクション制御装置すなわちTRC制御装置108は、圧雪路や凍結路などのような路面摩擦係数μの低い低μ路における発進或いは加速走行時の車両の安定性を高めたり或いは牽引力を確保して高めるために、エンジン14或いはMG1の出力と、図示しない油圧ブレーキ制御回路を介して各車輪66、68、80、82に設けられたホイールブレーキ66WB、68WB、80WB、82WBの制動力とを制御し、駆動輪である前輪66、68の出力すなわち回転を抑制する。たとえば、各車輪に設けられた回転センサからの信号に基づいて、車輪車速(車輪回転速度に基づいて換算される車体速度)たとえば右前輪車輪車速VFR、左前輪車輪車速VFL、右後輪車輪車速VRR、左後輪車輪車速VRL、前輪車速〔=(VFR+VFL)/2〕、後輪車速〔=(VRR+VRL)/2〕、および車体車速(VFR、VFL、VRR、VRLのうちの最も遅い速度)を算出する一方で、たとえば主駆動輪である前輪車速と非駆動輪である後輪車速との差であるスリップ速度ΔVが予め設定された制御開始判断基準値ΔV1 を越えると、前輪にスリップ判定をし、且つスリップ率RS 〔=(ΔV/VF )×100%〕が予め設定された目標スリップ率RS1内に入るようにMG1の出力トルクを低下させると同時にホイールブレーキ66WB、68WBを用いて前輪66、68の駆動力を低下させる。また、燃料電池FCからの出力に従ってMG1或いはMG2が作動させられて車両を走行させている場合には、その燃料電池FCへ供給される燃料を制限することにより、駆動輪である前輪66、68或いは後輪80、82の駆動力や回転を抑制してその駆動輪のグリップ力を高め、車両の安定性を高めたり或いは牽引力を高める。すなわち、MG1或いはMG2に対する燃料電池FCの出力を制限することによってもトラクション制御を実行する。
【0029】駆動制御装置110は、2輪駆動状態と4輪駆動状態との間の切換のために前輪66、68および/または後輪80、82の駆動力を制御する。通常走行では、専ら前輪66、68を駆動するためのエンジン14およびMG1を有する主駆動装置10を用いて車両を駆動する。たとえば、シフトレバーの操作位置PSH、スロットル開度θ(スロットル弁開度或いはアクセルペダルの操作量ACC)、車速V、蓄電装置94の蓄電量SOCに基づいて、予め設定された複数の運転モードのうちからいずれか1つの選択を行うとともに、スロットル開度θ、ブレーキペダルの操作量BF に基づいて、MG1或いはMG2の発電に必要なトルクにより制動力を発生させるトルク回生制動モード、或いはエンジン14の回転抵抗トルクにより制動力を発生させるエンジンブレーキモードを選択する。上記複数の運転モードは、たとえば、比較的低負荷の発進或いは定速走行において第1クラッチC1が係合させられ且つ第2クラッチC2およびブレーキB1が共に解放されることによりMG1のみで走行させるモータ走行モード、比較的中負荷走行または高負荷走行において第1クラッチC1および第2クラッチC2が共に係合させられ且つブレーキB1が解放されることによりエンジン14およびMG1で走行させる直結モード、第2クラッチC2が係合させられ且つ第1クラッチC1およびブレーキB1が共に解放された状態でMG1が反力(MG1を回生作動させる駆動トルク)を受けつつ回転が徐々に制御(増加)されることによりエンジン14が所定の回転数に維持された状態で車両が滑らかに零発進させられるETCモードである。しかし、車両の加速性或いは走破性が要求される場合には高μ路アシスト制御が実行され、凍結路、圧雪路のような低摩擦係数路(低μ路)における発進走行時において車両の発進能力を高める場合には低μ路アシスト制御が実行され、専ら後輪80、82を駆動するためのMG2を有する副駆動装置12をさらに用いて、前後輪の荷重配分比に対応する駆動力配分比となるようにMG2を作動させ、MG2のアシストトルクによる4輪駆動状態で車両を一時的に駆動する。
【0030】図2および図3は、上記アシスト制御に際して、MG2或いは後輪から出力されるアシストトルクすなわちMG2へ供給される電気エネルギ(電気量或いは電力)の一例を示し、図2は比較的短いアシスト期間の場合、図3は比較的長いアシスト期間を示している。図2および図3において、A領域はアシスト開始時点t0 以後蓄電装置(キャパシタ)94から速やかに供給される電気量を示し、B領域はアシスト開始時点t0 以後MG1から供給される電気量を示している。このMG1から供給される電気量がアシストトルクに対応する値まで立ち上がった後に蓄電装置94から供給される電気量が所定量以下に低下するので、以後はアシスト終了時点t2 までMG1からの電気量でMG2が駆動される。図2のC領域は蓄電装置94を再充電するためにMG1から供給される電気量を示している。図3のD領域は、燃料電池FCからMG2へ供給される電気量を示している。この燃料電池FCから出力される電気量の立上がりに伴ってMG1から供給される電気量が減少させられる一方で、その燃料電池FCから出力される電気量はそれまでMG1から供給されていた電気量よりも所定値増加させられている。
【0031】また、上記駆動制御装置110は、以下に詳述するように、TRC制御装置108や燃料電池FCの作動状態に関連してMG2の作動などを制御する。
【0032】図4は、トラクション制御装置108や駆動制御装置110などの制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。トラクション制御手段112は、トラクション制御開始条件が成立した場合には、エンジン14或いはMG1の出力と、図示しない油圧ブレーキ制御回路を介して各車輪66、68、80、82に設けられたホイールブレーキ66WB、68WB、80WB、82WBの制動力とを制御し、駆動輪である前輪66、68の駆動力すなわち回転を抑制させ、圧雪路や凍結路などのような路面摩擦抵抗の低い低μ路における発進或いは加速走行時の車両の安定性を高めたり或いは牽引力を高める。また、燃料電池FCからの出力に従ってMG1或いはMG2が作動させられて車両を走行させている場合には、後述の燃料制御手段114によりその燃料電池FCへ供給される燃料を制限することにより、駆動輪である前輪66、68或いは後輪80、82の駆動力や回転を抑制してその駆動輪のグリップ力を高め、車両の安定性を高めたり或いは牽引力を確保する(高める)。すなわち、MG1或いはMG2に対する燃料電池FCの出力を制限することによってもトラクション制御を実行する。
【0033】燃料制御手段114は、燃料配分装置92を制御して、エンジン14や燃料電池FCへ供給される燃料流量を制御する。たとえば、前記トラクション制御装置108によるトラクション制御中には、エンジン14の出力を抑制するためにそのエンジン14へ供給される燃料が減少するように燃料配分装置92を制御する。また、トラクション制御装置108によるトラクション制御中に、アシスト駆動のための電気エネルギを発生させるためにエンジン14によりMG1が駆動される場合には、そのMG1を駆動するために消費されるトルクと同等のトルクを発生させるための補償用燃料を燃料配分装置92からエンジン14へ供給させ、エンジン14によるMG1の駆動が停止された場合にはその補償用燃料の供給を停止させる。さらに、たとえばトラクション制御手段112からの指令に従って燃料電池FCに供給される燃料を制限してその燃料電池FCの出力を抑制する。この意味において、上記燃料制御手段114は、燃料電池出力制限手段としても機能している。
【0034】アシスト制御開始判定手段116は、アシスト制御の開始条件が成立した否か、たとえば、低μ路アシスト制御の場合には、車速Vが所定値VX1以下であり、アクセルペダルによる加速操作が行われ、且つ駆動輪である前輪66、68のスリップが発生したか否かを判定する。アシスト制御手段118は、MG2の出力を制御するための電動機出力制御手段として機能するものであり、上記アシスト制御開始判定手段116によりアシスト制御の開始条件が成立したと判定されると、車両の加速性或いは低μ路における走破性や発進能力を高めるために、専ら後輪80、82を駆動するためのMG2を有する副駆動装置12をさらに用いて、前後輪の荷重配分比に対応する駆動力配分比となるように定められたアシストトルクが基本的に出力されるようにMG2を作動させ、MG2のアシストトルクによる4輪駆動状態で車両を一時的に駆動する。このため、アシスト制御手段118は、アシスト制御の開始条件が成立したと判定されると直ちに、エンジン14により駆動されるMG1、蓄電装置94、燃料電池FCから上記アシストトルクを発生させるための電気エネルギをMG2へ出力させる指令を行い、MG1の駆動に消費されるトルクと同等のトルクを発生させるための補償用燃料を燃料配分装置92からエンジン14へ供給させる。
【0035】また、上記アシスト制御手段118は、車両のアシスト駆動のための蓄電装置94の出力、MG1の発電作動、および燃料電池FCの出力をそれぞれ協調的に制御する協調制御手段120、および燃料電池FCからMG2への出力状態に応じてトラクション制御を補正するトラクション制御補正手段122を備えている。上記協調制御手段120は、アシスト制御開始点以後の蓄電装置94の出力割合および出力時間を設定し、蓄電装置94の充電量SOCが設定値SOCO を下回ると蓄電装置94からの出力を停止するとともにMG1からの出力を継続させ、アシスト制御開始点以後の経過時間tが予め設定されたMG1の許容作動時間tA を越えるか或いはMG1の温度が予め設定された許容温度を越えると、MG1の発電を停止させ、燃料電池FCからの出力に切り換える。運転者の加速要求操作にしたがって後輪80、82の出力の増加要求がある場合には、上記燃料電池FCからMG2へ出力される電気量は、それまでのMG1からの値よりも所定値増量される。前記図3はこのような出力状態を示している。
【0036】また、上記トラクション制御補正手段122は、燃料電池FCの作動状態に基づいて前記トラクション制御装置108により行われているトラクション制御を補正する。すなわち、上記のように燃料電池FCからMG2へ出力される電気量をそれまでのMG1からの値よりも所定値増量する場合には、前輪66、68がトラクション制御によって回転速度上昇すなわち車速上昇が抑制されているため、MG2のアシストトルクの増加に応じて前輪66、68の駆動トルク或いは回転の抑制を緩め、4輪駆動状態の車両が走行し易くされる。
【0037】再スリップ判定手段124は、アシスト制御の終了判定が行われた直後における駆動輪の再スリップが発生したか否かを判定する。供給源切換手段126は、たとえば燃料電池FCからの電気エネルギによりMG2すなわち後輪80、82が駆動される4輪走行状態において上記アシスト制御に燃料電池FCの出力によってMG2のアシスト作動が行われていた場合に上記再スリップ判定手段124により再スリップが発生したと判定されたときには、燃料配分装置92から燃料電池FCへの燃料供給を停止させてその燃料電池FCからのMG2への電気エネルギの供給を停止させると同時に、エンジン14により駆動されるMG1からMG2への電気エネルギの供給を開始させることにより、燃料電池FCの発熱を抑制する。
【0038】燃料不足状態判定手段128は、燃料タンク88内の液体燃料或いは気体燃料などの燃料の残量が予め設定した不足判定基準値以下となったか否かを、図示しないレベルセンサからの信号に基づいて判定する。前記供給源切換手段126は、たとえばエンジン14により駆動されるMG1からMG2へ電気エネルギが供給されることにより後輪80、82が駆動されている後輪走行状態たとえば4輪駆動走行状態において上記燃料不足状態判定手段128により燃料タンク88内の液体燃料或いは気体燃料などの燃料の残量が予め設定した不足判定基準値以下となったと判定された場合には、エンジン14によるMG1の駆動を停止させると同時に、燃料配分装置92から燃料電池FCへの燃料供給を開始させてその燃料電池FCからの電気エネルギをMG2へ供給させることにより後輪駆動走行或いは4輪駆動走行を継続させる。
【0039】充電不可状態判定手段130は、蓄電装置94が充電不可状態であるか否かを、たとえば充電残量SOCが予め設定された値SOCO より多い充電不可状態であるか否かを判定する。電気分解制御手段132は、回生により得られた電気エネルギを用いて燃料電池FCから排出された水または図示しないエヤコンから排出された除湿時の水等を電気分解し、得られた水素を燃料電池制御手段134を経て作動中の燃料電池FCへ供給するか或いは水素貯蔵器96へ供給して貯蔵させる。この水素貯蔵器96において水素の貯蔵が満杯となった場合には、上記その余剰水素を用いて燃料電池FCから得られた電気エネルギを、このとき同時に協調作動している図示しない電気制動装置の電気アクチュエータまたは電気PS、車両駆動システムに供給する。
【0040】図5は、前記駆動制御装置110などの制御作動の要部を説明するフローチャートであって低μ路におけるアシスト制御ルーチンを示し、図6は、図5の協調制御ルーチンを示している。
【0041】図5のステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、車速Vが所定値VX1以下であるか否かが判断される。このSA1の判断が肯定される場合は、SA2において所定以上の加速操作が行われたか否かがアクセル開度θが増加したか否かに基づいて判断される。このSA2の判断が肯定される場合は、SA3において、駆動輪すなわち前輪66、68のスリップが発生したか否かがスリップ速度ΔVが所定値ΔV2 を上まわったか否かに基づいて判断される。上記SA1、SA2、SA3の判断のいずれかが否定される場合は図示しない走行時制御が実行されるが、すべて肯定される場合は、前記トラクション制御手段112に対応するSA4において、上記前輪66、68の回転或いは駆動力を抑制するためのトラクション制御が実行される。すなわち、上記SA1、SA2、SA3がトラクション制御開始条件成立判定手段に対応している。このトラクション制御では、前輪66、68のスリップ率RS 〔=(ΔV/VF )×100%〕が予め設定された目標スリップ率RS1内に入るようにエンジン14或いはMG1の出力トルクが低下させられると同時にホイールブレーキ66WB、68WBにより前輪66、68の駆動力が低下させられる。また、トラクション制御効果を高めるために、燃料配分装置92によりエンジン14へ配分される燃料が減少されることによってエンジン14の出力トルクが低下させられる。
【0042】次いで、SA5においては、上記トラクション制御の効果が十分に発生したか否か、すなわちそのトラクション制御により牽引力が増加して前輪66、68のグリップ力が高められた結果、車速Vが増加したか否かが判断される。このSA5の判断が肯定される場合は、SA6以下のアシスト制御が回避されて他の制御ルーチンが実行される。すなわち、上記SA1、SA2、SA3、SA5は、低μ路アシスト制御の開始条件が成立したか否かを判断する前記アシスト制御開始判定手段116に対応している。
【0043】上記SA5の判断が否定される場合は、SA6において低μ路アシスト制御が開始される。この低μ路アシスト制御は、たとえば数秒程度の比較的短期間内に後輪80、82の駆動力を発生させるためにMG2を駆動するものであり、基本的には前後輪の荷重配分に対応した大きさのトルクを発生させるが、たとえば坂路の傾斜度合いに応じてゲインを変更することにより基本値が変更される。
【0044】次いで、SA7では、エンジン14により駆動されるMG1、蓄電装置94、燃料電池FCから上記アシストトルクを発生させるための電気エネルギをMG2へ出力させる指令が出されるとともに、MG1の駆動に消費されるトルクと同等のトルクを発生させるための補償用燃料が燃料配分装置92からエンジン14へ供給される。したがって、このSA7は燃料制御手段114にも対応している。
【0045】前記協調制御手段120に対応するSA8では、上記MG1、蓄電装置94、燃料電池FCの作動を相互に組み合わせることにより、図3に示されるように電気量が出力され、MG2からアシストトルクが出力される。すなわち、図6の協調制御ルーチンに示すように、アシスト制御開始点以後の蓄電装置94の出力割合および出力時間が設定され(SA81、SA82)、蓄電装置94の充電量SOCが設定値SOCO を下回ると蓄電装置94からの出力が停止されるとともにMG1からの出力が継続され(SA83、SA84)、アシスト制御開始点以後の経過時間tが予め設定されたMG1の許容作動時間tA を越えるか或いはMG1の温度が予め設定された許容温度を越えると、MG1の発電が停止させられて燃料電池FCからの出力に切り換えられる(SA85、SA86)。また、登坂路などにより運転者の加速要求が増加するにしたがって後輪80、82の出力の増加要求がある場合には、上記燃料電池FCからMG2へ出力される電気量は、それまでのMG1からの値よりも所定値増量される(SA87)。
【0046】次いで、前記トラクション制御補正手段122に対応するSA9では、上記のように燃料電池FCからMG2へ出力される電気量をそれまでのMG1からの値よりも所定値増量される場合には、MG2のアシストトルクの増加に応じて前輪66、68の駆動トルク或いは回転の抑制が緩められて4輪駆動状態の車両走行が容易とされる。また、前記燃料制御手段114に対応するSA10では、上記SA8においてMG1の発電が中止された場合には、そのMG1の発電のために必要なトルクを更に発生させるためにエンジン14に供給されていた補償用燃料が燃料配分装置92によって供給停止される。
【0047】次に、アシスト制御終了条件が成立するか否かがSA11、SA12、SA13において判断される。アクセル開度θが全閉状態である場合はSA11の判断が肯定されてアシスト制御が終了させられ、他の制御が実行される。また、SA11においてアクセル開度θが全閉状態でないと判断されてもSA12においてスリップ速度ΔVが所定値ΔV1 を下まわると判断されるかまたはSA13において車速Vがある程度の値VX2より上に確保されていると判断される場合は、SA14においてアシスト制御終了指令が出されれる。しかし、スリップ速度ΔVが所定値ΔV1 (但し、ΔV1 ≦ΔV2 )以上であり(SA12)且つ車速Vがある程度の値VX2より上に確保されていない(SA13)場合は、SA1以下が繰り返し実行されて、低μ路アシスト制御が継続される。
【0048】上記SA14に続くSA15では燃料電池FCからMG2への電気エネルギの供給が逓減され、SA16ではトラクション制御装置108へトラクション補正制御の中止指令が出力され、SA17では前輪ブレーキ66B 、68B が緩められて前輪66、68の駆動トルクが回復させられ、SA18では2輪駆動のために燃料配分が前輪寄りに変更され、燃料電池FCへの燃料供給が停止される。そして、SA19では、駆動輪すなわち前輪66、68のスリップが終了したか否かがスリップ速度ΔVが所定値ΔV2 を下まわったか否かに基づいて判断される。このSA19の判断が否定される場合は前記SA4以下が繰り返し実行されるが、肯定される場合は他の制御たとえば高μ路アシスト制御などが実行される。
【0049】図7は、上記制御と同時に或いは独立に実行される燃料電池出力制御ルーチンを示している。図7のSB1では、燃料電池FCの出力が供給されるMG1或いはMG2により車両が走行させられる状態においてそのMG1或いはMG2により駆動される駆動輪である前輪66、68或いは後輪80、82にたとえば低μ路によりスリップが発生したか否かが判断される。ドライ路などにより当初からスリップが発生しておらずSB1の判断が否定される場合はSB4、SB5の判断が共に否定され且つSB6の判断が肯定されるので、SB8において燃料電池FCの出力が維持される。しかし、低μ路などによりスリップが発生して上記SB1の判断が肯定されると、前記トラクション制御手段112に対応するSB2において、燃料電池FCのMG1或いはMG2に対する電気エネルギの供給量が制限されることにより、前輪66、68或いは後輪80、82のスリップが抑制されて車両の牽引力が確保され車両の安定性が高められる。次いで、前記燃料制御手段114に対応するSB3において、燃料電池FCに対する燃料供給量が制限されてその燃料電池FCの出力が低下させられる。
【0050】以上のサイクルが繰り返し実行されるうちにSB1の判断が否定されると、SB4において、上記SB2によりMG1或いはMG2の出力が低下させられてからの経過時間が予め設定された所定の時間を経過したか否かが判断される。この所定の時間は、SB2によるトラクション制御作動が許容される最大時間である。当初は上記SB4の判断が否定されるので、SB5において車両の出力増大操作が行われたか否かがたとえばスロットル開度θの変化に基づいて判断される。車両の出力増大操作が行われない場合は、このSB5の判断が否定されるとともに、SB6において前回のサイクルで燃料電池FCの出力が低下させられていたと判断されるので、SB8において、燃料電池FCの出力が本来の値すなわちスリップ発生前の通常の出力値に復帰させられる。しかし、車両の出力増大操作が行われた場合は、上記SB5の判断が肯定されるので、前記供給源切換手段126に対応するSB7において蓄電装置(キャパシタ)94からの出力が直ちにMG1或いはMG2に供給されて車両の駆動力が速やかに増量させられる。たとえばMG2の場合には、アシストトルクが速やかに増加させられて加速応答性が高められる。そして、所定時間経過すると、燃料電池FCの出力が本来の値すなわちスリップ発生前の通常の出力値に復帰させられる。
【0051】上述のように、本実施例によれば、所定のトラクション制御開始条件が成立した場合には、車両の牽引力を高めるために駆動輪すなわち前輪66、68が路面をグリップするように、たとえばスリップ率RS 〔=(ΔV/VF )×100%〕が予め設定された目標スリップ率RS1内に入るようにその前輪66、68の回転或いは駆動力を抑制するトラクション制御装置108或いはトラクション制御手段112が設けられているので、燃料電池FCを有する車両でも、たとえば低μ路での発進或いは加速時において、トラクション制御装置108により前輪66、68のスリップ率RS が目標スリップ率RS1内とされて車両の牽引力が確保され(高められ)るとともに、横抗力が高められて車両の安定性が高められる。
【0052】また、本実施例によれば、トラクション制御手段112によるトラクション制御時に燃料電池FCの出力を制御する燃料(電池出力)制御手段114が、さらに設けられる。このようにすれば、トラクション制御手段112によるトラクション制御時には、燃料(電池出力)制御手段114によって燃料電池FCの出力が制御されるので、トラクション制御に対応して燃料電池FCが適切に作動させられる。たとえば、トラクション制御開始直後には、アシストトルクを出力させるために蓄電装置94からの電気エネルギによりMG2が直ちに作動させられ、その蓄電装置94の充電残量SOCが不足状態となるなどの所定時間後において燃料電池FCから出力される電気エネルギによりMG2が作動させられるように燃料電池FCの出力が制御される。これにより、トラクション制御が長引いてもアシスト駆動すなわち4輪駆動が継続的に得られる。
【0053】また、好適には、前記燃料(電池出力)制御手段114は、トラクション制御手段112によるトラクション制御時にMG2の出力を低下させるために燃料電池FCの出力を低下させるものであり、その後のMG2出力の増大時には蓄電装置94からの電気エネルギを用いてMG2の出力トルクを増大させるアシスト制御手段(電動機出力制御手段)118が設けられたものであることから、トラクション制御が開始されると、燃料(電池出力)制御手段114により燃料電池FCの出力が低下させられるとともに、アシスト制御手段(電動機出力制御手段)118により、その後のMG2出力の増大時には蓄電装置94からの電気エネルギを用いてMG2の出力トルクを増大させられるので、高い加速応答性が得られる。
【0054】また、本実施例によれば、車両が、前輪66、68を原動機として機能するエンジン14が駆動し、後輪80、82を電動機として機能するMG2が駆動する形式の4輪駆動車両すなわち前後輪駆動車両であるので、トラクション制御装置108が備えられた4輪駆動車両において、駆動輪である前輪66、68のスリップに好適に対応したトラクション制御やアシスト制御が得られ、車両の安定性が高められる。
【0055】また、本実施例によれば、トラクション制御装置108は、トラクション制御するために前記一方の車輪を駆動する原動機の出力を低下させるものであり、アシスト制御手段(電動機出力制御手段)118は、蓄電装置94および燃料電池FCからの電気エネルギにより後輪80、82を駆動するMG2を駆動するものであるので、トラクション制御装置108を備えた4輪駆動車両において、後輪80、82を駆動するMG2が蓄電装置94および燃料電池FCからの電気エネルギにより作動させられるため、そのMG2の作動の応答性が高められる。
【0056】また、本実施例によれば、前後輪駆動車両にはエンジン14により駆動されるMG1(発電機)が備えられ、後輪80、82を駆動するMG2はそのMG1から発生される電気エネルギにより駆動され、そのMG1の発電がその発熱などにより制限される場合には、燃料電池FCからの電気エネルギによりMG2が駆動されるものであるので、上記MG2による後輪80、82のアシスト駆動期間が制限されず、そのMG2の作動が継続的に実行される利点がある。
【0057】また、本実施例によれば、燃料電池FCおよびエンジン14へ燃料を分配する燃料配分装置92が設けられ、トラクション制御装置108によるトラクション制御時にその燃料配分装置92を制御するものであることから、トラクション制御装置108においては、トラクション制御中やアシスト制御中において燃料電池FCおよびエンジン14へ燃料を分配する燃料配分装置92が制御されるので、その燃料の配分制御によっても前記トラクション制御や4輪駆動のためのアシスト制御が好適に実施される。トラクション制御効果を得るためにエンジン14へ分配する燃料を減少させる場合には、ブレーキ66B 、68B による制動力が軽減されるか或いは解消されるので、ブレーキ66B 、68B に頼る場合に比較して燃料の損失が低減される。
【0058】また、本実施例によれば、トラクション制御装置108は、前輪66、68に制動力を付与する前輪ブレーキ66B 、68B を作動させてその前輪66、68の回転を抑制することによりトラクション制御を実行するものであるので、上記トラクション制御装置108によるトラクション制御において高い制御応答が得られる。
【0059】また、本実施例によれば、燃料電池FCの作動状態に基づいてトラクション制御装置108によるトラクション制御を補正するトラクション制御補正手段122をさらに備えたものであることから、燃料電池FCの作動状態に基づいてトラクション制御が補正されるので、燃料電池FCの出力状態に適合したトラクション制御が行われる利点がある。たとえば、燃料電池FCからMG2へ出力される電気エネルギの大きさすなわちMG2から出力されるアシストトルクが大きくなるほど、トラクション制御による前輪66、68の駆動力(回転)抑制が緩和されるので、車両が一層容易に走行できるようになる。
【0060】また、本実施例によれば、燃料電池FCの出力によりMG1或いはMG2を駆動制御する車両の走行中において、トラクション制御時にはその燃料電池FCからMG1或いはMG2への出力が制限されることにより駆動輪のスリップが抑制され(トラクション制御手段112、SB2)、その後の出力増大時には蓄電装置94からの出力が上記MG1或いはMG2へ供給され(供給源切換手段126、SB7)、その後に立上がりの遅い燃料電池FCの出力が供給される(SB8)ので、好適な発進、加速応答性が得られる。
【0061】次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】図8および図9は、前記図5のアシスト制御ルーチンおよび図6の協調制御ルーチンに代わる制御ルーチンをそれぞれ示す図である。図8のアシスト制御ルーチンは、図5のものに比較して、SA9が除去され、SA15乃至SA19に代えてSA20乃至SA22が設けられている点において相違する。図9の協調制御ルーチンは、図6のものに比較して、SA87に代えてSA88乃至SA90が設けられている点において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0063】図8のトラクション制御手段112に対応するSA4では、燃料配分装置92による燃料配分制御によってエンジン14へ配分される燃料が減少され、エンジン14の出力トルクが低下させられることにより駆動輪すなわちMG1の回転が抑制される。図9に示すSA8の協調制御においては、SA88において、燃料電池FCの実際の温度が予め設定された許容温度以上となったか否かが図示しない温度センサからの信号に基づいて判断される。このSA88の判断が肯定される場合は、SA89において、燃料電池FCおよびMG1の双方の負荷を軽減するために、それまで燃料電池FCからMG2へ専ら供給された電気エネルギのうちの一部がジェネレータとして機能するMG1から供給されて4輪駆動走行が継続される。しかし、上記SA88の判断が否定される場合は、SA90においてMG1からの供給が停止させられるとともに、専ら燃料電池FCからMG2へ電気エネルギが供給される。
【0064】アシスト終了指令が出された後に実行される図8のSA20では、燃料電池FCからMG2への電気エネルギの供給量すなわちMG2のアシストトルク(後輪80、82の駆動力)が徐々に減少されるとともに、その過程で車両全体の駆動力が維持されるようにエンジン14に対する燃料供給が増加させられて前輪66、68の駆動力が高められる。次いで、前記再スリップ判定手段124に対応するSA21では、アシスト制御直後に駆動輪である前輪66、68のスリップが再び発生しているか否かが判断される。このSA21の判断が否定される場合は、SA1以下が繰り返し実行されるが、肯定される場合すなわち再スリップが発生したと判定される場合は、前記供給源切換手段126に対応するSA22において、燃料電池FCからMG2への電気エネルギの出力を中止してその燃料電池FCの発熱を抑制するとともに、MG1からMG2への電気エネルギの供給に切り換えられ、且つそのMG2から出力されるアシストトルクが徐々に減少させられる。
【0065】上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、トラクション制御時に燃料電池FCの出力でMG2が駆動されて4輪駆動走行されるとき、スリップが再発生してそのトラクション制御が行われる場合には燃料電池FCからMG2への供給が制限されるので、燃料電池FCの発熱が好適に防止される利点がある。この燃料電池FCの出力が制限されるトラクション制御期間では、エンジン14により駆動されるMG1から出力される電気エネルギがMG2に供給されるので、燃料電池FCの出力制限に拘らずMG2によるアシスト作動が制限されず、MG1の駆動により同時にエンジン14の負荷が増加する分、前輪66、68の駆動力が低下して上記トラクション制御効果が一層高められる。
【0066】図10は、前記図5のアシスト制御ルーチンに代わる制御ルーチンを示す図である。図10のアシスト制御ルーチンは、走行中の加速操作により前輪66、68がスリップしたときのアシスト制御を考慮したものであって、図5のものに比較して、SA4、SA5、SA7乃至SA10、SA15乃至SA19が除去され、それに代えてSA29乃至SA34が設けられている点において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0067】図10において、SA6において低μ路アシスト制御が開始されると、前記トラクション制御手段112に対応するSA30において、エンジン14によって駆動されるMG1からMG2へ電気エネルギが供給されて後輪80、82からアシストトルクが出力されるので、車両が4輪駆動走行状態とされる。このとき、エンジン14の出力トルクからはMG1を駆動するためのトルクが消費されるので、前輪66、68の駆動トルクがその分だけ低下させられ、スリップ中の前輪66、68の回転が抑制される。すなわち、実質的にトラクション制御が実行される。次いで、SA31では、SA5と同様に車速の増加が生じたか否かが判断される。
【0068】このSA31の判断が否定される場合はSA3以下が繰り返し実行されることにより後輪アシスト走行が継続される。しかし、上記SA31の判断が肯定される場合は、上記トラクション制御の効果が発生して車速増加した状態であるので、SA32において、走行中加速操作によるシフトダウン指令が出力或いは実行されたか否かが判断される。このSA32の判断が否定される場合はSA3以下が繰り返し実行されることによりアシスト制御が継続される。しかし、SA32の判断が肯定される場合すなわちシストダウン指令が出力或いは実行された場合には、SA33において、SA3と同様に駆動輪のスリップが発生したか否かが判断される。このSA33の判断が否定される場合はSA3或いはSA6以下が実行されてアシスト制御が継続される。
【0069】しかし、SA33の判断が肯定される場合は、パワーオンシフトダウンによるスリップが発生した状態であるので、前記トラクション制御手段112に対応するSA34において、MG1からMG2へ供給される電気エネルギによるアシスト(トラクション制御)中に、それが中止され、且つ燃料配分のみによる駆動力配分制御が実行される。すなわち、アクセルが所定以上踏み込まれてシフトダウンが発生し、エンジン14の回転速度が上昇してMG1によるエンジン負荷が低下してスリップが発生した状態であるので、燃料配分装置92によるエンジン14への燃料が抑制されて前輪66、68の回転(スリップ)が抑制されると同時に、燃料配分装置92により燃料電池FCへ燃料が供給され、車両全体の駆動力を維持するためにその燃料電池FCからMG2へ供給される電気エネルギによるアシストが実行される。
【0070】本実施例によれば、燃料電池FCおよびエンジン14へ燃料を分配する燃料配分装置92が設けられ、トラクション制御手段112によるトラクション制御時にその燃料分配装置92を制御するものであることから、その燃料配分装置92による分配制御によってもトラクション制御および4輪駆動制御が可能となる。すなわち、駆動輪スリップ時において、パワーオンシフトダウン時にスリップした場合には、エンジン14の出力が低下させられて前輪66、68の回転が抑制されると同時に、燃料配分装置92により燃料電池FCへ燃料が供給され、車両全体の駆動力を維持するためにその燃料電池FCからMG2へ供給される電気エネルギによるアシストが実行されるので、好適なトラクション制御および4輪駆動走行が得られる。
【0071】図11は、前記図5のアシスト制御ルーチンに代わる制御ルーチンを示す図である。図11のアシスト制御ルーチンは、走行中に燃料が所定量以下となった場合に燃焼効率の良い燃料電池FCを優先的に作動させるものであって、図5のものに比較して、SA9、SA15乃至SA19が除去され、それに代えてSA35乃至SA36がSA5の次に設けられている点において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0072】図11において、前記燃料不足判定手段128に対応するSA35では、燃料タンク88内の液体燃料或いは気体燃料などの燃料の残量が予め設定された不足判定基準値以下となったか否かが判断される。このSA35の判断が否定される場合は前記SA7以下が実行されるが、肯定される場合は、前記供給源切換手段126に対応するSA36において、4輪駆動のためにエンジン14により駆動されるMG1からMG2への電気エネルギの供給(直行)を停止するために、燃料配分装置92によりエンジン14への燃料供給が抑制或いは停止されてエンジン14のアイドル回転或いは停止させられ、且つクラッチC1、C2が解放されてエンジン14から前輪66、68までの動力伝達経路が解放される一方で、その燃料配分装置92により燃料電池FCへ燃料が供給されて、この燃料電池FCからMG2への電気エネルギの供給により、機械的伝達効率の高いMG2を原動機とする後輪駆動系で2輪駆動走行が行われる。また、4輪駆動が必要な状態では第1クラッチC1を係合し、MG1にも燃料電池FCから電気エネルギを供給し、前輪66、68が駆動される。
【0073】本実施例によれば、燃料タンク88内の液体燃料或いは気体燃料などの燃料の残量が所定量以下となった場合には、相対的に効率の低いエンジン14の作動が停止または制限される一方で相対的に効率の高い燃料電池FCが作動させられるとともに、機械的伝達効率の高いMG2を原動機とする後輪駆動系で又はMG1による前輪駆動を加えた4輪駆動系で車両が走行させられるので、燃料効率が一層高められ、残された液体燃料で可及的長距離を走行させられることができる。
【0074】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0075】たとえば、前述の実施例の前後輪駆動車両では、前輪66、68をエンジン14およびMG1を備えた主駆動装置10が駆動し、後輪80、82をMG2を備えた副駆動装置12が駆動する形式であったが、後輪80、82を主駆動装置10が駆動し、前輪66、68を副駆動装置12が駆動する形式であってもよい。また、前輪66、68または後輪80、82を駆動するための1または2個の電動機(モータジェネレータ)を設けた車両や、無段変速機20に代えて、有段変速機が設けられた車両であってもよい。
【0076】また、前述の図5、図7、図8、図10、図11の実施例は、同じ車両の制御装置により同時に実行されてもよい。
【0077】また、前述の車両において所定負荷以下の発進の場合には、発進に必要な燃料をエンジン14へ全量供給せず、一部を燃料電池FCに供給し、効率のよいMG1またはMG2による駆動の割合を高めて効率を高めてもよい。
【0078】また、前述の車両において、発進時或いは加速時において蓄電装置94からの電気エネルギの供給によりアシスト駆動されるが、加速指向或いはパワー指向の運転や積載重量増加などで加速不足状態の場合には、上記蓄電装置94に加えて燃料電池FCの出力がアシスト駆動に用いられてもよい。
【0079】また、前述の車両において、渋滞走行時には、前輪動力伝達経路をニュートラル状態とし、MG1からの電気エネルギでMG2による2輪走行で発進させ、所定アクセル開度では燃料電池FCからの電気エネルギでMG2による2輪走行を行って発進加速感を上昇させてもよい。また、発進後の中高速では、上記MG2の出力不足を補うようにエンジン14の出力を制御して双方で加速するようにしてもよい。
【0080】また、前述の車両において、回生時に蓄電装置94の充電残量SOCが100%であるために充電余地がない場合には、回生により得られた電気エネルギを用いて燃料電池FCから排出された水又はエヤコン除湿時に排出された水等を電気分解し、得られた水素を燃料電池FC或いは水素貯蔵器96へ供給するようにしてもよい。
【0081】また、前述の車両において、低μ路アシスト走行の加速時において高回転によりエンジン14の負荷が低下してトラクション効果が低下した場合には、エンジン14への燃料供給を制限すると同時に燃料電池FCへ燃料を供給してMG2の出力を上昇させるようにしてもよい。
【0082】また、前述の車両において、経済走行のために、MG1および/またはMG2により車両を発進させ、走行後にエンジン14を作動させて発進のタイムラグを防止し、エンジン始動しないときには燃料電池FCからMG1および/またはMG2への供給を継続させるようにしてもよい。
【0083】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成12年1月19日(2000.1.19)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸 (外2名)
【公開番号】 特開2001−204107(P2001−204107A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−10836(P2000−10836)