トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 ハイブリッド自動車の制御装置
【発明者】 【氏名】山口 和行

【氏名】道岡 力

【氏名】吉田 稔

【氏名】炭谷 俊弘

【氏名】栗本 隆志

【要約】 【課題】バッテリ温度の低いときでも、すぐにバッテリを直ぐに多くの電流を取り出せる状態にする。

【解決手段】温度センサ13の出力信号からバッテリ4の検出温度が予め定められた設定温度(例えば、0℃)よりも低いかどうかの判断をVCU20により行い、設定温度よりも低いと判断すれば、VCU20によりTMU12を制御して発電機制御部を制御し、発電機5のベクトル制御におけるd軸のみに発電機5の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流し、バッテリ4の暖機運転を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 動力源として内燃機関及び走行モータを搭載し、バッテリの直流出力をインバータにより交流に変換して前記走行モータに給電し、前記内燃機関及び前記走行モータを併用して走行するハイブリッド自動車の制御装置において、前記バッテリの温度を検出する温度センサと、前記温度センサによる前記バッテリの検出温度が予め定められた設定温度よりも低いかどうかを判断する判断部と、前記判断部により前記検出温度が前記設定温度よりも低いと判断されるときに前記バッテリから前記走行モータに回転しない程度の電流を通流して前記バッテリの暖機運転を行う制御部とを備えていることを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項2】 動力源として内燃機関及び走行モータを搭載し、バッテリの直流出力をインバータにより交流に変換して前記走行モータに給電し、前記内燃機関及び前記走行モータを併用して走行するハイブリッド自動車の制御装置において、前記内燃機関の出力により駆動されて前記バッテリを充電する発電機と、前記バッテリの温度を検出する温度センサと、前記温度センサによる前記バッテリの検出温度が予め定められた設定温度よりも低いかどうかを判断する判断部と、前記判断部により前記検出温度が前記設定温度よりも低いと判断されるときに前記バッテリからの前記発電機に回転しない程度の電流を通流して前記バッテリの暖機運転を行う制御部とを備えていることを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項3】 前記制御部は、前記走行モータのベクトル制御におけるd軸のみに前記走行モータの回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項4】 前記制御部は、前記発電機のベクトル制御におけるd軸のみに前記発電機の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項5】 前記制御部は、前記判断部により前記検出温度が前記設定温度よりも高いと判断されるまで前記バッテリの暖機運転を継続することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、動力源として内燃機関及び走行モータを搭載し、バッテリの直流出力をインバータにより交流に変換して走行モータに給電し、内燃機関及び走行モータを併用して走行するハイブリッド自動車の制御装置に関し、特にバッテリの暖気運転を行うものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ガソリンエンジン及びモータを組み合わせた低公害車の実用車としてハイブリッド自動車が提案され、具体的には、例えば特開平9−117010号公報や特開平10−238381号公報等に記載のようなものが提案されている。
【0003】この種のハイブリッド自動車は大きく分けると、ガソリンエンジンを駆動することにより発生された回転を発電機伝達してこれを駆動し、この発電機により得られる電力をバッテリに供給して充電し、更にこのバッテリの電力により駆動モータを駆動するようにしたシリーズ(直列)方式のものと、ガソリンエンジン及びモータの両方で車両を駆動するパラレル(並列)方式のものとがある。
【0004】そして、パラレル方式のハイブリッド自動車の場合、走行モータとガソリンエンジンとを切り換えて動力源としているが、このときの走行モータとガソリンエンジンの切り換えは、従来、例えば車速センサによる自車速やドライバによるアクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルのオン、オフ等に基づいて行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、気温の低い夜間や寒冷地でハイブリッド自動車を使用する場合には、バッテリの温度が例えば0℃以下のような低温になっていると、始動の際において、バッテリは走行モータ等のハイブリッドユニットに電流を多く流すことができない状態にあるため、十分な車両の駆動力を得ることができず、しかもバッテリの温度が上昇して多くの電流を取り出すことができるようになるまで、長時間を要するという問題があった。
【0006】更に、従来のハイブリッド自動車では、始動時にバッテリの温度を素早く上昇させる工夫は成されていなかった。
【0007】そこで、本発明は、バッテリ温度の低いときでも、すぐにバッテリを直ぐに多くの電流を取り出せる状態にすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明は、動力源として内燃機関及び走行モータを搭載し、バッテリの直流出力をインバータにより交流に変換して前記走行モータに給電し、前記内燃機関及び前記走行モータを併用して走行するハイブリッド自動車の制御装置において、前記バッテリの温度を検出する温度センサと、前記温度センサによる前記バッテリの検出温度が予め定められた設定温度よりも低いかどうかを判断する判断部と、前記判断部により前記検出温度が前記設定温度よりも低いと判断されるときに前記バッテリから前記走行モータに回転しない程度の電流を通流して前記バッテリの暖機運転を行う制御部とを備えていることを特徴としている。
【0009】このような構成によれば、バッテリの温度が設定温度よりも低いときに、バッテリから走行モータに回転しない程度の電流が通流されてバッテリの暖機運転が行われる。
【0010】そのため、暖機運転によってバッテリの温度が上昇し、バッテリから多くの電流を取り出せる状態になって十分な駆動力を得ることが可能になる。
【0011】また、本発明は、前記内燃機関の出力により駆動されて前記バッテリを充電する発電機と、前記バッテリの温度を検出する温度センサと、前記温度センサによる前記バッテリの検出温度が予め定められた設定温度よりも低いかどうかを判断する判断部と、前記判断部により前記検出温度が前記設定温度よりも低いと判断されるときに前記バッテリからの前記発電機に回転しない程度の電流を通流して前記バッテリの暖機運転を行う制御部とを備えていることを特徴としている。
【0012】このように、バッテリの温度が設定温度よりも低いときに、バッテリから発電機に回転しない程度の電流を通流してバッテリの暖機運転を行ってもよい。
【0013】また、前記走行モータに回転しない程度の電流を通流するには、前記制御部により、前記走行モータのベクトル制御におけるd軸のみに前記走行モータの回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流すればよい。
【0014】更に、前記発電機に回転しない程度の電流を通流するには、前記制御部により、前記発電機のベクトル制御におけるd軸のみに前記発電機の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流するのが望ましい。
【0015】このようにすれば、走行モータ或いは発電機が回転することがなく、バッテリから走行モータ或いは発電機に暖機運転のための電流を通流することができる。
【0016】また、本発明は、前記制御部は、前記判断部により前記検出温度が前記設定温度よりも高いと判断されるまで前記バッテリの暖機運転を継続することを特徴としている。
【0017】このような構成によれば、暖機運転によりバッテリの温度が上昇してバッテリから直ぐに多くの電流を取り出せる状態になった後は、バッテリの暖機運転のための無駄な電流が消費されることを防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】この発明の一実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。但し、図1は全体の概略構成図、図2及び図3はそれぞれ異なる一部の概略図である。
【0019】図1に示すように、動力源としての内燃機関であるガソリンエンジン1及び走行モータ2が遊星ギヤユニット3を介して結合されると共に、走行モータ2の駆動用バッテリ4に充電電流を供給する発電機5が、図2に示すように、遊星ギヤユニット3を介してガソリンエンジン1に結合されている。
【0020】このとき、図2に示すように、遊星ギヤユニット3は、リングギヤ31と、このリングギヤ31の内側に配置されたサンギヤ32と、リングギヤ31及びサンギヤ32の双方に噛合してサンギヤ32の外周をリングギヤ31の内周に沿って回る複数個のプラネタリギヤ33とにより構成されている。
【0021】そして、図2に示すように、各プラネタリギヤ33とガソリンエンジン1の出力軸とがキャリアを介し一体的に回転するように連結され、サンギヤ32と発電機5の回転軸とが同軸に連結され、この発電機5はガソリンエンジン1の出力により駆動されてバッテリ4の充電を行う。更に、リングギヤ31と一体的に回転する伝達ギヤ35の回転がこれに噛合したカウンタギヤ36に伝達され、カウンタギヤ36の回転がデフギヤ37を介して車輪W(前輪)に伝えられる。また、走行モータ2の回転軸の回転もカウンタギヤ36に伝達され、カウンタギヤ36及びデフギヤ37を介して走行モータ2の回転が車輪Wに伝えられるようになっている。
【0022】尚、これとは逆に、リングギヤ31に発電機5が連結され、サンギヤ32に走行モータ2が連結されていてもよい。
【0023】更に、図1に示すように、バッテリ4の直流出力は、インバータ等から成るモータ制御部8により交流に変換されて走行モータ2に供給され、発電機5による交流発電出力は、ダイオード等の整流回路から成る発電機制御部9により直流に変換され、バッテリ4に充電電流が供給されて充電が行われる。このとき、発電機制御部9により発電機5の回転数が可変制御されて充電電流の調整が行われる。尚、バッテリ4の出力電圧である288V程度の高電圧が、DC−DCコンバータ10により12Vの低電圧に変換されて各部に供給される。
【0024】また、図3に示すように、発電機制御部9には発電機5の回転数を検出する発電機回転検出部としての発電機レゾルバが設けられ、モータ制御部8には走行モータ2の回転数を検出するモータ回転数検出部としてのモータレゾルバが設けられ、これら発電機レゾルバ及びモータレゾルバからの信号がトランスアクスルマネージメントユニット(TMU:Trans-axle Management Unit)12に入力されて回転数が算出される。
【0025】ところで、図1に示すように、バッテリ4の温度を検知する温度センサ13が設けられ、この温度センサ13による検知温度に基づきバッテリ4を制御するバッテリECU14が設けられると共に、バッテリ電流及びバッテリ電圧がそれぞれ検出する電流検出器及び電圧検出器(いずれも図示せず)が設けられ、これらバッテリECU14、電流検出器及び電圧検出器の出力信号が後述する車両統括制御装置に入力されるようになっている。
【0026】このとき、温度センサ13による検知温度が予め定められた設定温度(例えば0℃)よりも低いかどうかが、バッテリECU14及び後述する車両統括制御装置により判断され、低いと判断されると、始動の際にバッテリ4から直ぐに多くの電流を取り出すことができないため、車両統括制御装置によりTMU12が制御されて発電機制御部9が制御され、発電機5が回転しない程度の電流がバッテリ4から発電機5に通流されるようになっている。
【0027】更に、図1に示すように、電子スロットル15の制御を行うエンジンECU16が設けられると共に、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込みにより作動する油圧ブレーキから成るブレーキユニット17を制御するブレーキECU18が設けられている。
【0028】そして、図1に示すように、車両統括制御装置(以下、VCUと称する)20が設けられ、このVCU20には上記した各部からの信号のほか、シフトレバーの位置に応じた信号を出力するシフトポジションスイッチやアクセルペダルの踏み込みに応じた信号を出力するアクセルセンサからの信号が入力され、VCU20により、TMU12、エンジンECU16、ブレーキECU18を始め、各部の制御が行われる。
【0029】例えば、アクセルペダルの操作時には、VCU20により、アクセルセンサからの信号に基づくアクセルペダルの踏み込み量及び車速に基づき、ガソリンエンジン1に要求される要求出力値が算出され、算出された要求出力値に基づいて定められる要求回転数を目標回転数として、実際のエンジン回転数が目標回転数となるようにスロットル開度が調節されてガソリンエンジン1の回転数制御が行われる。このとき、発電機レゾルバによる発電機5の回転数とモータレゾルバによる走行モータ2の回転数から、TMU12によりガソリンエンジン1の実際の回転数が算出され、算出された実際の回転数が目標回転数になるように制御されるのである。
【0030】ところで、夜間や寒冷地等、気温が零下のように低いときには、特に始動の際にバッテリ4が冷えすぎて多くの電流を取り出すことができない状況にあるので、上記したように、VCU20により、温度センサ13の出力信号からバッテリ4の検出温度が予め定められた設定温度(ここでは、0℃)よりも低いかどうかの判断が行われる。そして、検出温度が設定温度よりも低いと判断されると、図3に示すように、VCU20によりTMU12が制御されて発電機制御部9が制御され、発電機5のベクトル制御におけるd軸のみに発電機5の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流が通流され、バッテリ4の暖機運転が行われる。このとき、発電機5の回転子が回転することはない。
【0031】このように、VCU20によるバッテリ4の検出温度と設定温度との比較判断処理が判断部に相当し、VCU20によるバッテリ4の暖機運転処理が制御部に相当する。
【0032】尚、上記したようなVCU20によるバッテリ4の暖機運転は、温度センサ13によるバッテリ4の検出温度が設定温度よりも高いと判断されるまで継続される。
【0033】従って、上記した実施形態によれば、温度センサ13によるバッテリ4の検出温度が設定温度よりも低いときに、バッテリ4から発電機5に対して、発電機5のベクトル制御におけるd軸のみに発電機5の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流が通流されて、バッテリ4の暖機運転が行われるため、暖機運転によってバッテリ4の温度を直ちに上昇させることができ、バッテリ4から直ぐに多くの電流を取り出すことが可能な状態になり、十分な駆動力を直ちに得ることが可能になる。
【0034】また、発電機5の回転子を構成する鉄心に複数個の溝が形成され、これらの各溝に永久磁石が埋め込まれていることから、鉄心に残留磁気があることもあるが、発電機5のベクトル制御におけるd軸のみに発電機5の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流することにより、磁束を弱める方向に作用するこのような鉄心の残留磁気をリセットすることができて、トルクの低下を未然に防止することができる。
【0035】なお、上記した実施形態では、バッテリ4の暖機運転のために、発電機5のベクトル制御におけるd軸のみに発電機5の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流するようにした場合について説明したが、走行モータ2のベクトル制御におけるd軸のみに走行モータ2の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流するようにしても構わないのは勿論である。この場合、上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0036】また、上記した実施形態では、バッテリ4の検出温度が設定温度である0℃よりも低いときにバッテリ4の暖機運転を行うようにしているが、このときの設定温度は0℃に限るものでないのはいうまでもない。
【0037】更に、上記した実施形態では、内燃機関をガソリンエンジン1とした場合について説明しているが、内燃機関は、特にガソリンエンジンに限定されるものでないのはいうまでもない。
【0038】また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0039】
【発明の効果】以上のように、請求項1、2に記載の発明によれば、バッテリの温度が設定温度よりも低いときに、バッテリの暖機運転が行われるため、暖機運転によりバッテリの温度を上昇させてバッテリから始動後直ぐに多くの電流を取り出せる状態にすることが可能になり、十分な駆動力を直ちに得ることができ、始動特性の良好なハイブリッド自動車を提供することが可能になる。
【0040】また、請求項3、4に記載の発明によれば、走行モータ或いは発電機のベクトル制御におけるd軸のみに永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流することにより、走行モータ或いは発電機を回転させることなく、バッテリから走行モータ或いは発電機に暖機運転のための電流を通流することが可能になる。
【0041】更に、走行モータ或いは発電機のベクトル制御におけるd軸のみに走行モータ或いは発電機の回転子の永久磁石の磁束を強める方向に電流を通流することによって、走行モータ或いは発電機の回転子の永久磁石が埋め込まれた鉄心に残留磁気があった場合でも、その残留磁気をリセットすることができてトルクの低下を未然に防止することができる。
【0042】また、請求項5に記載の発明によれば、暖機運転によりバッテリの温度が上昇してバッテリから直ぐに多くの電流を取り出せる状態になった後は、バッテリの暖機運転のための無駄な電流消費を防止できるため、バッテリの消耗を軽減できると同時に省エネルギにも寄与できる。
【出願人】 【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
【出願日】 平成12年1月14日(2000.1.14)
【代理人】 【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司 (外1名)
【公開番号】 特開2001−197607(P2001−197607A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−5131(P2000−5131)