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【発明の名称】 磁気浮上制御装置
【発明者】 【氏名】森山 伸一

【氏名】渡辺 和英

【氏名】芳我 尚秀

【要約】 【課題】浮上体の位置を検出する位置検出系に自己同期検波方式を適用し、デジタルコントローラとセルフセンシング制御が有する本質的なデメリット、即ちフィルタが位置変位信号にもたらす遅延と誤った位置推定結果を与えるという問題点を一挙に解決できる磁気浮上制御装置を提供すること。

【解決手段】浮上体1に対向して配置された一対の電磁石2a、2bの自己誘導作用と磁気吸引力を利用して、浮上体1の位置検出と位置制御を同時に行うセルフセンシング制御手段を具備する磁気浮上制御装置において、セルフセンシング制御手段は、一対の電磁石2a、2bの電流信号からその加算信号と減算信号を加算器5c、減算器6cで生成し、位置検出のための高周波電流と位置制御のための制御電流を分離して処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 浮上体に対向して配置された一対の電磁石の自己誘導作用と磁気吸引力を利用して、浮上体の位置検出と位置制御を同時に行うセルフセンシング制御手段を具備する磁気浮上制御装置において、前記セルフセンシング制御手段は、前記一対の電磁石の電流信号からその加算信号と減算信号を生成し、位置検出のための高周波電流と位置制御のための制御電流を分離して処理することを特徴とする磁気浮上制御装置。
【請求項2】 請求項1に記載の磁気浮上制御装置において、前記セルフセンシング制御手段は、デジタルコントローラを具備し、該デジタルコントローラは前記減算信号の入力データをサンプル毎に前サンプルデータと加算平均処理して前記電磁石の制御電流とし、また、前記加算信号の入力データをサンプリング毎に符号反転処理することにより浮上体の位置変位とする自己同期検波方式のセルフセンシング制御機能を有することを特徴とする磁気浮上制御装置。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の磁気浮上制御装置において、前記セルフセンシング制御手段は、セルフセンシング制御において、前記電磁石鉄心内の磁束密度の変動による位置変位の推定誤差を前記制御電流で補正することを特徴とする磁気浮上制御装置。
【請求項4】 請求項1に記載の磁気浮上制御装置において、前記セルフセンシング制御手段は、アナログコントローラを具備し、前記一対の電磁石の電流信号の加算信号を処理して得られた変位信号を、該一対の電磁石の電流信号の減算信号を処理して得られた補正値で補正し、該アナログコントローラに与えられることを特徴とする磁気浮上制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気軸受、磁気浮上搬送装置、或いは磁気浮上除振装置等の磁気浮上制御装置に係わり、特に電磁石の磁気吸引力を制御することにより磁性体を備えた浮上体を非接触で安定に保持する磁気浮上制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の磁気浮上制御装置は、浮上体を非接触で安定に保持するため、一般に、浮上体の位置センサの信号をアナログのコントローラで電磁石電圧に対する制御信号に変換し、振幅可変の電源を介して電磁石の電流、即ち電磁石の吸引力、を制御するようにフィードバック制御系で構成されている。しかしながら、当該分野の最近の技術開発の動向を見ると、現在制御理論の比較的複雑な制御則をハードウエア上で具体化する際の容易性や、制御対象の変動に応じて制御側を変更する際の柔軟性、という観点から、デジタルコントローラを構築する試みが数多く見受けられる。
【0003】また、浮上体を磁気浮上させる電磁石を位置センサの代わりに用いて、そのセンサに係わる装置の構成要素を省くことにより装置全体の小型化を目指すと共に、浮上体の振動に対する制振制御を実現する際に重要となるコロケーション(電磁石吸引力の作用点と位置検出個所の一致)を自動的に達成しようとするセルフセンシング制御の試みも数多く報告されている。以下、磁気軸受のラジアル一方向のフィードバック制御を例にとり、磁気浮上のデジタル制御とセルフセンシング制御を同時に行う場合の制御系の構成方法について述べる。
【0004】図1及び図2はセルフセンシング制御の電磁石駆動系とそのデジタルコントローラの構成例を示す図である。通常、一対の電磁石2a、2bに対して、デジタルコントローラ11のD/A変換器8aより出力された制御信号は、端子T1を介して、加算器5c、加算器5aを通して片方のパワーアンプ3aに対して正極性で与えると共に、もう片方のパワーアンプ3bに対しては減算器6b、加算器5bを通して負極性で与えられる。この二つのパワーアンプ3a、3bには直流電源7により共通のバイアス信号を正極性で与えているから、一対の電磁石2a、2bの電流の間には制御信号に比例したアンバランスが生じ、浮上体(ロータ)1に制御したい方向の吸引力を作用させることができる。
【0005】セルフセンシング制御では、制御電流に高周波電流を重畳させる必要があるから、交流電圧源18により端子T2を介して、加算器5c及び加算器5a、減算器6b及び加算器5bを通してパワーアンプ3a、3bに共通の正弦波キャリア信号を正極性で与える。この場合、各電磁石2a、2bには振幅の大きいバイアス電流と制御電流、及び振幅の小さい高周波電流が流れる。これらの電流は一括して外部抵抗器4a、4bで測定される。それらの電流信号の減算を減算器6aで行えば、バイアス電流はカットされ、かつ制御電流に高周波の差が重畳されたような信号が得られる。高周波電流の差は浮上体1の位置変位の結果生じたものであるから、その減算信号を端子T3を介してバンドパスフィルタ12に送り制御電流をカットした後に計装用アンプ13で増幅し、高周波電流の差信号を抽出する。変位信号はこの差信号を振幅検波することにより得ることができる。
【0006】そこで、交流電源18からのキャリア信号をオールパスフィルタ14に通し、その位相が差信号の位相と一致するように調整した後、乗算器15により差信号との積を取る。更に、この乗算信号をバンドエリミネーションフィルタ16とローパスフィルタ17に通してキャリア周波数成分をカットし、その低周波成分を抽出すれば、振幅検波が達成される。得られた変位信号はデジタルコントローラ11のアナログ/デジタル変換器9bでサンプリングされ、デジタルシグナルプロセッサ10の制御アルゴリズムに従って制御信号に変換される。
【0007】前述のフィードバック制御系の構成には、それぞれ、デジタルコントローラ11とセルフセンシング制御の各々のメリットと共に克服しなければならない下記のような問題点も同時に内包している。
【0008】第一に、デジタルコントローラ11の適用においては、変位信号を離散化して処理するため、サンプル/ホールド要素や無駄時間要素による応答の遅れがフィードバック制御系に不可避的に含まれる。従って、制御系全体の応答遅れを制御側のアルゴリズムで補えるように、位置検出系は極力周波数応答のよい状態で動作させることが望ましい。しかしながら、セルフセンシング制御では電磁石のような誘導負荷に高周波電流を発生させるため、そのキャリア信号の周波数は、通常の自己誘導型位置センサに高周波電圧を発生させるキャリア信号の周波数(数10kHz)に比べて一桁低く設定せざるを得ない。その結果、バンドエリミネーションフィルタ16の中心周波数やローパスフィルタ17の遮断周波数も低下し、これらのフィルタが位置変位信号にもたらす遅延は無視できなくなる。
【0009】第二に、セルフセンシング制御で使用する電磁石には、通常の誘導型位置センサとは異なり、制御電流が流れている。一般に、センサや電磁石の鉄心コイルは磁気飽和に達していなくても鉄心内の磁束密度に応じて自己誘導係数が変化する。即ち、電磁石の鉄心内の磁束密度がその制御電流に応じて変化すると、高周波電流の差信号の振幅も変化し、あたかも浮上体が変位しているような推定結果を与えてしまう。また、キャリア周波数が制御電流の周波数帯域に近づくため、電流測定の際にバンドパスフィルタ12による制御電流のカットが不完全であると、同様に制御電流によって高周波電流の差信号の振幅が変化することになり、誤った推定結果を与える。もちろん、バンドパスフィルタ12の通過帯域を狭くすればこの問題は解決できるが、このような狭帯域のバンドパスフィルタはその差信号の振幅に大きな遅延をもたらすことから、第一の問題をクローズアップさせることになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、浮上体の位置を検出する位置検出系に自己同期検波方式を適用し、デジタルコントローラとセルフセンシング制御が有する本質的なデメリット、即ちフィルタが位置変位信号にもたらす遅延と誤った位置推定結果を与えるという問題点を一挙に解決できる磁気浮上制御装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明はセルフセンシング制御で磁気浮上制御装置のフィードバック制御系を構成する際に、位置検出のための高周波電流と位置制御のための制御電流を効率よく分離して、位置変位の推定精度とその制御性能を向上させようとするものである。この構成方法は自己同期検波方式と併用すればデジタルコントローラのメリットを最大限に生かすことができる有力な手段となり得る。その主な特徴は以下のとおりである。
【0012】第一に、図3及び図4に示すように一対の電磁石2a、2bには制御電流と同様に逆極性で高周波電流を流す。その結果、加算器5cによる各電磁石2a、2bの電流の加算信号には高周波電流の差とバイアス電流が、また、減算器6cによる減算信号には高周波電流の和と制御電流が含まれることになる。従って、高周波電流の差信号の抽出は遅延の少ない広帯域のバンドパスフィルタ12aで十分である。
【0013】第二に、その高周波電流を生成するためのキャリア信号は、自己同期検波方式の通常の方法に従って、デジタルコントローラ11が出力する方形波信号から生成する。その結果、高周波電流はデジタルコントローラ11のサンプリング動作に同期した状態となるから、各電磁石2a、2bの電流の加算信号と減算信号はデジタルコントローラ11に直接取り込める。
【0014】第三に、上記の減算信号に含まれる高周波電流の振幅は位置変位によらず略一定となるとみなせることから、この信号に対してサンプリング毎に前サンプルデータと加算平均処理を行えば高周波電流の寄与はキャンセルされ、制御電流のデータが得られる。このデータは状態フィードバック制御系を構成する際に、位置変位のデータと共に使用する。
【0015】第四に、上記の加算信号に含まれる高周波電流の振幅は位置情報を含んでいるから、自己同期検波方式の方法に従って、サンプリング毎の符号反転処理によりその振幅検波を行えば位置変位のデータが得られる。このデータには制御電流による自己誘導係数の変化がもたらす誤差が含まれているから、上記の制御電流のデータで補正する。
【0016】上述した通り、自己同期検波方式は振幅検波の際にキャリア周波数成分の除去フィルタを必要としないため、原理的にそのフィードバック制御系の応答の遅れは使用するデジタルコントローラが本来有するサンプル/ホールド要素や無駄時間要素で決まる。即ち、位置検出における応答の遅れを無視した離散値制御系の設計が行える。また、キャリア信号の周波数は、市販のデジタルシグナルプロセッサボードの性能を考慮すると、必然的に数kHzに限定されることから、セルフセンシング制御に適している。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図3及び図4は本発明に係る磁気浮上制御装置のセルフセンシング制御の電磁石駆動系とそのデジタルコントローラの構成例を示す図である。
【0018】図3及び図4に示すセルフセンシング制御の電磁石駆動系とそのデジタルコントローラは図1及び図2に示すものと以下の点でその構成が異なる。
【0019】第一に、高周波電流を生成するキャリア信号は、デジタルシグナルプロセッサ10がサンプリング毎の符号反転データをデジタル/アナログ変換器8bで出力する方形波信号を元にして生成される。この方形波信号は狭帯域のバンドパスフィルタ12bとオールパスフィルタ14を通して正弦波信号に変換し、端子T2を介して電磁石駆動系に与えられる。
【0020】第二に、このキャリア信号はパワーアンプ3a、3bに対して逆極性で与えられる。その結果、加算器5cの出力には高周波電流の差がバイアス電流と共に現れる。また、減算器6cの出力には高周波電流の和が制御電流と共に現れる。
【0021】第三に、上記加算器5cからの加算信号に含まれるバイアス電流は広帯域のバンドパスフィルタ12aでカットできることから、計装用アンプ13の出力にはその振幅に対して遅延の極めて少ない高周波電流の差信号が得られる。この差信号はデジタルシグナルプロセッサ10のサンプリング動作に同期しているから、アナログ/デジタル変換器9aに直接取り込むことができる。同様に、上記の減算器6cからの減算信号に含まれる高周波電流の和も同期が取れた状態であるから、その減算信号をアナログ/デジタル変換器9bで直接取り込む。
【0022】自己同期検波方式では、高周波電流の差信号の振幅検波はデジタルシグナルプロセッサ10の簡単なアルゴリズムで実現できる。高周波電流の位相はオールパスフィルタ14で調節できるから、アナログ/デジタル変換器9aはその差信号のピーク値をサンプルすることができる。従って、このサンプルデータの符号をサンプリング毎に反転させればピーク検波のデータ、即ち位置変位のデータが自動的に得られる。
【0023】一方、高周波電流の和信号の振幅は位置変位によらず略一定であるから、変換器9bで取り込まれる電磁石電流の減算信号は制御電流がサンプリング毎に一定の振幅で変動しているような波形でサンプルされる。従って、サンプリング毎にサンプルデータと加算すればその変動分はキャンセルされ、制御電流のデータとすることができる。
【0024】上記の位置変位のデータには制御電流による自己誘導係数の変化がもたらす誤差が含まれているから、上記の制御電流のデータで補正することができる。この補正は単純な減算アルゴリズムでその効果を発揮できる。なお、このような補正はアナログコントローラを使用する場合でも可能である。
【0025】図5は図2で示したようなアナログ検波方式で位置変位を推定する場合の構成例である。加算器5cで得られた電磁石電流の加算信号をバンドパスフィルタ12を通して制御電流をカットし、計装用アンプ13で増幅し、高周波電流の差信号(浮上体1の位置変位の結果を示す)を得る。この差信号とオールパスフィルタ14で位相が一致するように調整した交流電圧源18からの高周波電流の積を乗算器15で得、更にバンドエリミネーションフィルタ16aとローパスフィルタ17aを通して振幅検波し、変位信号を得る。一方、電磁石電流の減算信号は同様のパンドエリミネーションフィルタ16b、ローパスフィルタ17bで高周波電流の成分を除去し、制御電流の補正値として減算器6dに与える。補正後の検波信号は位置変位信号として、アナログコントローラ19に与えられる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、各請求項に記載の発明によれば下記のような優れた効果が得られる。
【0027】一対の電磁石の電流信号からその加算信号と減算信号を生成し、位置検出のための高周波電流と位置制御のための制御電流を分離して処理するので、セルフセンシング制御で問題となる位置変位の推定誤差を大幅に軽減し、その推定精度を自己誘導型位置センサと同程度にすることが可能となる。
【0028】また、デジタルコントローラは、自己同期検波方式のセルフセンシング制御機能を有するので、位置検出系の応答を大幅に改善できることから、デジタルコントローラによる浮上体の制振制御等の高度な磁気浮上制御が可能となる。
【0029】また、アナログコントローラを使用する場合でも、本発明は位置変位の推定精度の点でセルフセンシング制御の技術の向上に貢献する。セルフセンシングは前述の利点の他にセンサに係わる装置を構成する要素を少なくすることで低コストを目指すことができる。このことを主眼にした場合には、アナログローラを使用する本発明の磁気浮上制御装置は有効である。
【出願人】 【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
【出願日】 平成11年12月13日(1999.12.13)
【代理人】 【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆 (外1名)
【公開番号】 特開2001−177919(P2001−177919A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願平11−353694