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【発明の名称】 ハイブリッド車両
【発明者】 【氏名】穐場 亨

【氏名】橋本 隆志

【要約】 【課題】電動機において常時必要最小限の連続運転能力を確保すると共に、電動機の原価低減を図る。

【解決手段】前後輪の車輪速差ΔNがしきい値ΔNαよりも大きいときには、この車輪速差ΔNに基づき目標トルクTFBを算出し、車輪速差ΔN≦しきい値ΔNαのときには、アクセルペダル踏込量PSに基づき目標トルクTFFを算出する。次に車速に応じたトルク制限値を決定し、目標トルクTFB又はTFFをトルク制限値LTで制限しこれを駆動トルクT* として電動機9を駆動する。このとき、目標トルクTFBのトルク制限値は電動機9の瞬間最大出力に基づいて設定し、目標トルクTFFのトルク制限値は電動機9の連続定格出力に応じて設定し、ΔN≦しきい値ΔNαのときには、電動機9の瞬間最大出力で対応させて駆動力を発生させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前後輪の一方を機械エネルギを発生する駆動源で駆動すると共に他方を電動機で駆動するようにし、前後輪の車輪速差又はアクセルペダルの踏込量に基づいて前記電動機の目標トルクを決定し、決定した目標トルクを車速に応じた上限値に制限してこの目標トルクを前記電動機で発生させるようにしたハイブリッド車両であって、前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値は、同一車速における前記車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さな値であることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】 機械エネルギを発生し前後輪のうちの一方を駆動する駆動源と、前後輪のうちの他方を駆動する電動機と、前記前後輪の車輪速差を検出する車輪速差検出手段と、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルペダル踏込量検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記前後輪の車輪速差又は前記アクセルペダル踏込量検出手段で検出したアクセルペダルの踏込量に基づいて前記電動機の目標トルクを決定する目標トルク決定手段と、前記車速検出手段で検出した車速に応じて、前記車輪速差に基づく目標トルク又は前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値を設定する上限値設定手段と、前記目標トルク決定手段で検出した前記車輪速差に基づく目標トルク又は前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクを、前記上限値設定手段で設定した上限値に制限する制限手段と、当該制限手段で制限した目標トルクを発生するように前記電動機を駆動制御する駆動制御手段と、を備え、前記上限値設定手段は、前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値を、同一車速における前記車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さな値に設定することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】 前記上限値設定手段は、前記電動機の温度を検出する電動機温度検出手段を備え、前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値を、前記車速検出手段で検出した車速及び前記電動機温度検出手段で検出した電動機温度に応じて設定するようになっていることを特徴とする請求項2記載のハイブリッド車両。
【請求項4】 前記車輪速差に基づく目標トルクの上限値は、前記電動機の瞬間最大出力に基づいて設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】 前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値は、前記電動機の連続定格出力に基づいて設定されることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、前後輪の一方をエンジンや電動機といった駆動源で駆動すると共に、他方を電動機で駆動するようにしたハイブリッド車両に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のハイブリッド車両としては、例えば特開平8−175210号公報に記載されているように、エンジンに加え、発進時のアシストのみを目的とした電動モータを設けることにより前後輪駆動車両を実現し、発進確認時のみ電動モータを駆動して駆動アシストを得るようにしたものが知られている。
【0003】この公報に記載の車両においては、電動モータの作動時間を制限するタイマーが設けられ、発進時に電動モータの駆動開始と共にタイマーを起動し、電動モータによる駆動アシスト開始からの経過時間が所定時間経過したときに、タイマーが作動して自動的に電動モータを停止させるようになっている。また、電動モータの負荷を検出する負荷検出手段を設け、発進時に電動モータを起動し、電動モータの負荷が一旦増加してから減少した時に車両が発進し動き始めたものと判定して、電動モータを停止させて電動モータによるアシストを解除するようになっている。
【0004】このように、電動モータによるアシストを、車速が低く短時間のみ生じる発進アシスト領域に限定することによって、セルモータに使用されている安価でインバータ制御の必要のないDCブラシモータを用いることが可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報に記載の車両においては、例えば発進後電動モータによるアシストが行われない車速域にある状態から上りの急勾配にさしかかった時には、車速の低下に伴って車両発進時と誤認識されて電動モータが駆動され、これによって、二輪駆動車両の状態から四輪駆動車両として機能することになり、ドライバに不連続感を与える場合がある。
【0006】また、決して大トルクは必要ではないが、数分間の駆動アシストが要求されるような降雪時の急勾配(20%レベル)での連続登坂シーンや、徐行の多い渋滞シーン等においては、タイマーで規定される時間のみしか電動モータを駆動することができないため、十分な駆動力を確保することができないという問題がある。
【0007】そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、常時必要最小限の連続運転能力を確保し、且つ原価低減を図ることの可能なハイブリッド車両を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るハイブリッド車両は、前後輪の一方を機械エネルギを発生する駆動源で駆動すると共に他方を電動機で駆動するようにし、前後輪の車輪速差又はアクセルペダルの踏込量に基づいて前記電動機の目標トルクを決定し、決定した目標トルクを車速に応じた上限値に制限してこの目標トルクを前記電動機で発生させるようにしたハイブリッド車両であって、前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値は、同一車速における前記車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さな値であることを特徴としている。
【0009】この請求項1に係る発明では、前後輪の一方は機械エネルギを発生するエンジンや電動機といった駆動源で駆動され、他方は電動機で駆動される。前記駆動源と共に駆動力を発生する電動機の目標トルクは、前後輪の車輪速差又はアクセルペダルの踏込量に基づいて決定され、さらに、この決定された目標トルクは、この時点における車速に応じた上限値によって制限され、制限された後の目標トルクを発生するように電動機が駆動される。
【0010】このとき、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値は、同一車速における前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さな値に設定される。つまり、電動機の発生トルクは、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクに応じて電動機を制御するときには、最大でも前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値となり、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクに応じて電動機を制御するときには、最大でも、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さい、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値となる。
【0011】よって、例えば、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクについては電動機の瞬間最大出力(短時間定格出力)によって対応させ、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクについては電動機の連続定格出力によって対応させるようにすれば、電動機を最適化することが可能となる。また、請求項2に係るハイブリッド車両は、機械エネルギを発生し前後輪のうちの一方を駆動する駆動源と、前後輪のうちの他方を駆動する電動機と、前記前後輪の車輪速差を検出する車輪速差検出手段と、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルペダル踏込量検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記前後輪の車輪速差又は前記アクセルペダル踏込量検出手段で検出したアクセルペダルの踏込量に基づいて前記電動機の目標トルクを決定する目標トルク決定手段と、前記車速検出手段で検出した車速に応じて、前記車輪速差に基づく目標トルク又は前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値を設定する上限値設定手段と、前記目標トルク決定手段で検出した前記車輪速差に基づく目標トルク又は前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクを、前記上限値設定手段で設定した上限値に制限する制限手段と、当該制限手段で制限した目標トルクを発生するように前記電動機を駆動制御する駆動制御手段と、を備え、前記上限値設定手段は、前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値を、同一車速における前記車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さな値に設定することを特徴としている。
【0012】また、請求項3に係るハイブリッド車両は、前記上限値設定手段は、前記電動機の温度を検出する電動機温度検出手段を備え、前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値を、前記車速検出手段で検出した車速及び前記電動機温度検出手段で検出した電動機温度に応じて設定するようになっていることを特徴としている。
【0013】また、請求項4に係るハイブリッド車両は、前記車輪速差に基づく目標トルクの上限値は、前記電動機の瞬間最大出力に基づいて設定されることを特徴としている。さらに、請求項5に係るハイブリッド車両は、前記アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値は、前記電動機の連続定格出力に基づいて設定されることを特徴としている。
【0014】この請求項2から請求項5に係る発明では、前後輪の一方は駆動源により駆動され、他方は電動機によって駆動される。このとき、目標トルク決定手段によって、前後輪の車輪速差又はアクセルペダルの踏込量に基づいて、電動機で発生すべき目標トルクが決定される。そして、この目標トルクはさらに制限手段によってその上限が、上限値設定手段で設定した上限値に制限される。ここで、上限値設定手段では、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値が、同一車速における前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さな値となるように上限値を設定する。
【0015】よって、電動機の発生トルクは、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクに応じて電動機を制御するときには、最大でも前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値となり、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクに応じて電動機を制御するときには、最大でも、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さい、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値となる。
【0016】したがって、例えば、車両がスリップしている場合等その継続時間が短時間のときに前後輪の車輪速差に基づいて電動機を駆動制御し、通常走行時等継続時間が長い場合には、アクセルペダルの踏込量に基づいて電動機を駆動制御するようにし、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクについては電動機の瞬間最大出力(短時間定格出力)によって対応させ、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクについては電動機の連続定格出力によって対応させるようにすることによって、電動機を最適化することが可能となる。
【0017】特に請求項3に係る発明では、アクセルペダル踏込量に基づく目標トルクの上限値は、電動機温度検出手段で検出した電動機の温度と、車速検出手段で検出した車速とに応じて設定される。よって、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクを電動機の瞬間最大出力によって対応させた場合、電動機温度が上昇するにつれて電動機の負荷が上昇しこれに起因して所定の瞬間最大出力を発生させることができない場合があるが、電動機温度の上昇に伴って、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値をより小さく設定し、電動機の連続定格出力で対応させて電動機を駆動しているときに電動機温度上昇を抑制することによって、電動機の連続定格出力で対応させて電動機を駆動している状態から、電動機の瞬間最大出力で対応させて電動機を駆動する状態に移行した場合でも、確実に所定の瞬間最大出力を発生させることが可能となる。
【0018】
【発明の効果】本発明の請求項1に係るハイブリッド車両によれば、前後輪の車輪速差又はアクセルペダルの踏込量に基づいて、電動機の目標トルクを決定し、さらに、この目標トルクの上限値を制限し、このとき、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値は、同一車速における前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さな値に設定するようにしたから、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクについては電動機の瞬間最大出力によって対応させ、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクについては電動機の連続定格出力によって対応させることによって、電動機を最適化することができ、常時連続運転能力を確保することができる。
【0019】また、請求項2から請求項5に係るハイブリッド車両によれば、前後輪の車輪速差又はアクセルペダルの踏込量に基づいて目標トルクを決定し、さらにこの上限値を制限し、このとき、上限値設定手段では、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクの上限値が、同一車速における前後輪の車輪速差に基づく目標トルクの上限値よりも小さくなるように上限値を設定するから、前後輪の車輪速差に基づく目標トルクについては電動機の瞬間最大出力によって対応させ、アクセルペダルの踏込量に基づく目標トルクについては電動機の連続定格出力によって対応させることによって、電動機を最適化することができ、かつ常時連続運転能力を確保することができる。
【0020】特に、請求項3に係るハイブリッド車両によれば、アクセルペダル踏込量に基づく目標トルクの上限値を、電動機温度検出手段で検出した電動機の温度と、車速検出手段で検出した車速とに応じて設定するようにしたから、電動機の温度上昇に起因して、電動機が所定の瞬間最大出力を発生できなくなることを回避し、確実に所定の瞬間最大出力を発生させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態を示す概略構成図であって、図中、1FL,1FRはそれぞれ左右の前輪、1RL,1RRはそれぞれ左右の後輪である。また図中、5は、前輪1FL,1FRを回転駆動させるための機械エネルギを発生する駆動源としてのエンジンであって、前輪1FL,1FRは、前輪側の車輪駆動軸3を介してエンジン5に連結され、このエンジン5が発生する駆動力が車輪駆動軸3を介して前輪1FL,1FRに伝達され、これによって前輪1FL,1FRが駆動されるようになっている。前記エンジン5には、このエンジン5によって駆動されて発電する発電機6が設けられ、この発電機6で得られた電気エネルギは後述の電動機9に供給されるようになっている。
【0022】一方、後輪1RL,1RRは、後輪側の車輪駆動軸7、終減速装置8を介して電動機9に連結されている。この電動機9は、例えばDCブラシモータで構成され、前記発電機6で得られた電気エネルギを受けて制御装置10によって駆動制御され、電動機9の動力が、終減速装置8、車輪駆動軸7を介して後輪1RL,1RRに伝達され、これによって後輪1RL,1RRが駆動されるようになっている。
【0023】また、車両の適所には、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ11FL,11FR,11RL,11RRが設けられ、さらに、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルペダルセンサ12、電動機9の温度を検出する温度センサ9aが設けられている。そして、これら各センサの検出信号は、制御装置10に出力されるようになっている。
【0024】この制御装置10は、例えばマイクロコンピュータ等を含んで構成され、前記車輪速センサ11FL〜11RRの検出信号に基づいて、前後輪の車輪速差ΔNを算出し、この車輪速差ΔNをもとに前輪1FL,1FRがスリップしていると判定されるときには、前後輪速差制御モードで電動機9を制御し、車輪速差ΔNに基づいて制御トルクを決定する。一方、前輪がスリップしていないと判定されるときには、アクセル開度制御モードで電動機9を制御し、アクセルペダル踏込量PSに基づいて制御トルクを決定する。また、このとき、前記制御トルクを車速及び温度センサ9aで検出した電動機温度に応じた上限値に制限し、現在の車速で必要とする制御トルクに制限するようになっている。
【0025】図2は、前記制御装置10における、電動機9を制御するための、電動機制御処理の処理手順を示したものである。すなわち、制御装置10では、まず、ステップS1で、各車輪速センサ11FL〜11RRの検出信号を読み込む。次いで、ステップS2に移行し、各車輪速センサ11FL〜11RRの検出信号をもとに、前輪及び後輪の車輪速を算出し、これらの差から前後輪の車輪速差ΔNを算出する。
【0026】次いで、ステップS3に移行し、ステップS2で算出した車輪速差ΔNがしきい値ΔNαよりも大きいか否か(ΔN>ΔNα)を判定する。このしきい値ΔNαは、予め実験等によって設定されたものであって、前輪がスリップしていると判定することの可能な値に設定される。そして、ステップS3で、前後輪の車輪速差ΔN>しきい値ΔNαでないときにはステップS11に移行してアクセル開度制御モードで電動機9を制御し、車輪速差ΔN>しきい値ΔNαであるときにはステップS21に移行して前後輪速差制御モードで電動機9を制御する。
【0027】つまり、前記ステップS11では、アクセルペダルセンサ12のアクセルペダル踏込量PS及び温度センサ9aで検出した電動機温度を読み込む。次いでステップS12に移行して、所定の記憶領域に格納している図3の制御マップに基づいて、アクセルペダル踏込量PSに応じた目標トルクTFFを決定する。前記図3に示す制御マップは、予め設定されて所定の記憶領域に格納されたものであって、例えば、アクセルペダル踏込量PSが零からしきい値PS0 までの間はアクセルペダル踏込量PSの増加に比例して目標トルクTFFが増加し、アクセルペダル踏込量PSがしきい値PS0 を越えると、目標トルクTFFは所定値となるように設定されている。
【0028】そして、ステップS12で目標トルクTFFが決定されると、ステップS13に移行し、図4に示すトルク制限マップと、ステップS11で決定した目標トルクTFFと、温度センサ9aからの電動機温度と、例えば各車輪速センサ11FL〜11RRの検出信号をもとに算出した車速とをもとに、トルク制限値LTを決定する。
【0029】前記図4に示すトルク制限マップは、電動機9の温度が常温であるときの、車速とこのときに必要とするトルクの最大値を表すトルク制限値との対応を表したものである。図中、LFは、アクセルペダル踏込量PSに基づいて設定した目標トルクTFFを制限する制限ラインであって、LBは、前後輪の車輪速差ΔNに基づいて設定した目標トルクTFBを制限する制限ラインである。
【0030】前記目標トルクTFFの制限ラインLFは、電動機9の連続定格出力特性に応じて設定され且つこの時点の車速で必要とする最小トルクに応じて設定され、前記目標トルクTFBの制限ラインLBは、電動機9の瞬間最大出力特性(短時間出力特性)に基づいて設定されている。そして、前記制限ラインLFは、車速がV1 となるまでは、制限値LT3 を維持し、車速がV1 からV3 までの間は、車速の増加に応じて制限値は二次元的にLT1 まで低下し、車速がV3 を越えると制限値は零になるようになっている。また、制限ラインLBは、車速が前記V1 よりも大きいV2 となるまでは、前記制限値LT3 よりも大きい制限値LT4 を維持し、車速がV2 から前記車速V3よりも大きいV4 となるまでの間は、車速の増加に応じて制限値は二次元的に前記制限値LT1 よりも大きいLT2 まで低下し、車速がV4 を越えると制限値は零になるようになっている。
【0031】さらに、前記制限ラインLFは、電動機9の温度上昇に伴う熱的負荷を考慮して設定され、図5に示すように、電動機9の温度が高温になるに応じて、トルク制限値が減少するように設定され、温度上昇が生じた場合でも電動機9が所定の瞬間最大出力を発生することの可能な値に設定される。このようにしてステップS13でトルク制限値LTが決定されると、ステップS14に移行し、ステップS12で決定したアクセルペダル踏込量PSに基づく目標トルクTFFとステップS13で検出したトルク制限値LTとを比較する。そして、目標トルクTFFがトルク制限値LTよりも大きいときには、ステップS15に移行して、トルク制限値LTを駆動トルクT* として設定する。一方、目標トルクTFFがトルク制限値LT以下であるときにはステップS16に移行し、目標トルクTFFを駆動トルクT* として設定する。
【0032】そして、ステップS15又はS16で駆動トルクT* が設定されると、ステップS30に移行し、駆動トルクT* に基づいて電動機9を駆動制御する。一方、前記ステップS21では、所定の記憶領域に格納している図6の制御マップに基づいて、前後輪の車輪速差ΔNに応じた目標トルクTFBを決定する。前記図6に示す制御マップは、予め設定されて所定の記憶領域に格納されたものであって、例えば、前後輪の車輪速差ΔNが増加するにつれて目標トルクTFBが二次元的に増加し且つ、前後輪の車輪速差ΔNが小さいほどその増加割合が大きく、車輪速差ΔNが大きくなるにつれてその増加割合が減少するように設定されている。
【0033】次いで、ステップS22に移行し、前記図4に示すトルク制限マップと、ステップS21で決定した目標トルクTFBと、例えば各車輪速センサ11FL〜11RRの検出信号をもとに算出した車速とをもとに、トルク制限値LTを決定する。なお、制限ラインLBは、電動機9の温度に関わらず一定に設定されている。
【0034】次いで、ステップS23に移行し、ステップS21で決定した前後輪の車輪速差ΔNに基づく目標トルクTFBとステップS22で検出したトルク制限値LTとを比較する。そして、目標トルクTFBがトルク制限値LTよりも大きいときには、ステップS24に移行して、トルク制限値LTを駆動トルクT* として設定する。一方、目標トルクTFBがトルク制限値LT以下であるときにはステップS25に移行し、目標トルクTFBを駆動トルクT* として設定する。
【0035】そして、ステップS24又はS25で駆動トルクT* が設定されると、ステップS30に移行し、駆動トルクT* に基づいて電動機9を駆動制御する。ここで、エンジン5が駆動源に対応し、図2のステップS2の処理が車輪速差検出手段に対応し、アクセルペダルセンサ12がアクセルペダル踏込量検出手段に対応し、図2のステップS12及びステップS22で車輪速センサの検出信号等をもとに車速を検出する処理が車速検出手段に対応し、ステップS12及びS21の処理が目標トルク決定手段に対応し、ステップS13及びS22の処理が上限値設定手段に対応し、ステップS15及びS24の処理が制限手段に対応し、ステップS30の処理が駆動制御手段に対応し、温度センサ9aが電動機温度検出手段に対応している。
【0036】次に、上記実施の形態の動作を説明する。今、車両が停車している状態から発進すると、制御装置10において電動機制御処理が実行され、まず、各車輪速センサの検出値をもとに、前後の車輪速差ΔNが算出される(ステップS1,S2)。そして、このとき、例えば高μ路に停車している状態等であって車輪速差ΔNがしきい値ΔNαよりも小さいときには、前輪がスリップしていないことから、ステップS3からS11に移行し、アクセルペダル踏込量PSに基づいて制御トルクを決定するアクセル開度制御モードで電動機9が制御される。
【0037】つまり、制御装置10では、まずステップS11で、アクセルペダル踏込量PSをアクセルペダルセンサ12から読み込むと共に、温度センサ9aから電動機温度を読み込む。そして、アクセルペダル踏込量PSに基づいて図3の制御マップから目標トルクTFFを決定する(ステップS12)。さらに、各車輪速センサの検出値をもとに車速を算出し、この車速及び電動機温度と、前記図4及び図5の制御マップから、トルク制限値LTを決定する。
【0038】ここで、電動機温度が常温であるとすると、図5の制御マップの目標トルクTFFの制限ラインLFから、車速が小さい間はトルク制限値LTは比較的大きな値に設定される。よって、アクセルペダル踏込量PSに応じた目標トルクTFFが駆動トルクT* として設定され、これに基づいて電動機9が駆動制御されて、発進時に十分な駆動トルクが発生される。
【0039】そして、車速が増加しV1 を越えると、制限ラインLFに示すように、車速の増加に伴って目標トルクTFFのトルク制限値LTは小さくなり、アクセルペダル踏込量PSに基づく目標トルクTFFがトルク制限値LTを越えると、駆動トルクT* はトルク制限値LTに制限される。ここで、制限ラインLFは、この時点における車速で必要とする最小トルクに基づいて設定されているから、アクセルペダル踏込量PSを踏み込んでも、駆動トルクT* は、この時点の車速における必要最小トルクに制限されることになり、よって、必要以上のトルクが発生されることが回避される。
【0040】そして、この状態から、車両が上りの急勾配にさしかかったときには、アクセルペダル踏込量PSが増加するから、これに伴って、目標トルクTFFが増加し、アクセルペダル踏込量PSに基づく目標トルクTFFがトルク制限値LTを越えたときにはトルク制限値LTに制限されて電動機9の駆動制御が行われ、十分な駆動力を得ることができる。
【0041】この状態から、電動機9の駆動に伴って、電動機温度が上昇してくると、図5の制御マップに示すように、トルク制限値は、常温における同一車速でのトルク制限値よりも小さくなるように設定されているから、電動機温度が上昇するにつれて電動機9での最大出力トルクは、より小さく制限されることになる。つまり、電動機温度の上昇に伴って電動機9の熱的環境が低下するにつれて、電動機9の負荷が軽減されて電動機9の温度上昇が抑制される。このとき、前記目標トルクTFFの制限ラインLFは、電動機9の連続定格出力に応じて設定されているから、電動機9は、温度上昇による影響をうけない状態に維持されることになる。
【0042】したがって、この状態から、車両が低μ路に進入し、前輪にスリップが生じた場合には、前後輪の車輪速差ΔNがしきい値ΔNαを越えることから、ステップS21に移行し、前後輪速差ΔNに応じて図6の制御マップから目標トルクTFBが決定され、この時点における車速に基づいて図4の制御マップの制限ラインLBからトルク制限値LTが決定され、駆動トルクT* はトルク制限値LTに制限される。
【0043】そして、駆動トルクT* としてトルク制限値LTが設定された場合、電動機9はその瞬間最大出力を発生するように駆動制御される。ここで、電動機9の温度上昇等が生じている場合等には、瞬間最大出力を発生するように電動機9を駆動制御したとしても、所定の瞬間最大出力を発生させることができない場合があるが、アクセル開度制御モードにおいては、電動機9が瞬間最大出力を発生することができるように、その上限値を制限ラインLFで制限するようにしているから、連続定格出力以内で電動機9を駆動制御している状態から瞬間最大出力を発生させるように駆動したとしても、確実に所定のトルクを発生させることができる。
【0044】一方、降雪時等、車両が低μ路に停車している状態から発進し、前輪がスリップしたときには、前後の車輪速差ΔNが算出され(ステップS1,S2)、これがしきい値ΔNαを越えると、ステップS3からステップS21に移行し、車輪速差ΔNに基づいて制御トルクを決定する前後輪速差制御モードで電動機9が制御される。つまり、制御装置10では、ステップS21で、前後の車輪速差ΔNに基づいて図6の制御マップから目標トルクTFBを決定する。
【0045】そして、各車輪速センサの検出値をもとに車速を算出し、この車速と前記図4の制御マップから、目標トルクTFBのトルク制限値LTを決定する(ステップS22)。そして、車速が小さい間は、トルク制限値LTは、図4の制御マップの目標トルクTFBの制限ラインLBから比較的大きな値に設定されるため、目標トルクTFBがトルク制限値LTを越えない間は、目標トルクTFBが駆動トルクT*として設定されこの駆動トルクT* に基づいて電動機9が駆動制御され比較的大きな駆動トルクが発生されて、前後の車輪速差ΔNに応じた十分な駆動トルクが発生されることになる。
【0046】そして、車速が増加しV2 を越えると、目標トルクTFBの制限ラインLBにおいてトルク制限値が小さく抑制され、前後輪の車輪速差ΔNに基づく目標トルクTFBがトルク制限値LTを越えると、駆動トルクT* はトルク制限値LTに抑制される。つまり、前記目標トルクTFBの制限ラインLBは、電動機9の瞬間最大出力に基づいて設定されているから、前後輪速差制御モードでは、電動機9は、その出力が最大でも、瞬間最大出力となるように駆動制御される。
【0047】このとき、トルク制限値LTは、電動機9の瞬間最大出力に応じて設定された制限ラインLBに基づいて設定されることになるため、最大でも電動機9の瞬間最大出力を発生するように駆動されることになる。しかしながら、このように、前輪にスリップが生じる状態はそれほど長い時間生じるわけではないから、瞬間最大出力で対応させることが十分可能である。また、この状態から車両が急勾配を登り始めた場合でも、前後輪速差制御モード又はアクセル開度制御モードで引き続いて電動機9が駆動されるから、急勾配の登坂シーンや、徐行の多い渋滞シーン等であっても、十分な駆動力を継続して確保することができる。
【0048】また、低μ路での発進時等、低μ路面で大きなトルクが要求される場面は、その継続時間が比較的短く、且つ、その発生頻度が少ない。よって、瞬間最大出力を発生するように電動機9を駆動制御したとしても、電動機9に影響を及ぼすことはない。また、アクセル開度制御モードにおいては、その駆動トルクT* を、この時点で瞬間最大出力を発生させた場合でも電動機9に影響を与えないようなトルクに制限するようにしているから、アクセル開度制御モードから前後輪速差制御モードに移行した場合であっても、確実に所定の駆動トルクT* を発生させることができる。
【0049】また、アクセル開度制御モードにおいては、アクセルペダルを踏み込んでも、この時点における車速で必要とする最小トルクを発生するように駆動トルクT*が設定されるから、必要以上のトルクが発生されることはない。よって、電動機9を駆動させるための電気エネルギが低減され、燃費向上が図られることになる。
【0050】また、このとき、アクセル開度制御モードにおいては、電動機9の電動機温度が上昇するにつれてトルク制限値LTを減少させ、電動機9の温度上昇を押さえるようにしたから、電動機温度が上昇した場合であっても、電動機9に影響を与えることなく、確実に瞬間最大出力を発生させることができ、電動機9によるアシストの信頼性向上を図ることができる。
【0051】したがって、このように、比較的大きなトルクを必要とするが頻度が少なくまたその継続時間の短いスリップ時には前後輪速度差制御モードで制御を行い、且つこのときには電動機9の瞬間最大出力で対応させ、非スリップ時にはアクセル開度制御モードで制御を行い、このときには、電動機9の連続定格出力で対応させるようにしたから、電動機9を選定する際には、各車速における必要最小トルクを発生し得る連続定格出力を有し、且つその瞬間最大出力が前後輪の車輪速差に基づく目標トルクTFBに相当する電動機を選定すればよい。よって、電動機9を最適化することができ、原価低減を図ることができると共に、常時電動機9によるアシストを行うことができる。
【0052】なお、上記実施の形態においては、力行機能のみを有する電動機9を用いた場合について説明したが、例えば図7に示すように、回生機能と力行機能とを有する電動機9を用い、発電機6と電動機9との間に蓄電装置13を設け、制動時には、回生機能によって発電させこの電気エネルギを蓄電装置13に蓄えるようにし、電動機9を駆動するときには、電動機9に蓄電装置13から電気エネルギを供給するようにしてもよい。このようにすることによって、発電機6の負荷を低減させることが可能となり燃費向上を図ることができる。
【0053】前記蓄電装置13としては、リチウムイオン電池のような二次電池や、充放電特性に優れる電解コンデンサや、電解コンデンサよりも電機エネルギの貯蔵能力に優れる電気二重層キャパシタ等を適用することができる。また、上記実施の形態においては、前輪側をエンジン、後輪側を電動機で駆動するようにした場合について説明したが、これに限らず、前輪側を電動機によって駆動し、後輪側をエンジンによって駆動するようにしてもよい。
【0054】また、上記実施の形態においては、図3、図4、図5及び図6に示す制御マップを用いて、目標トルクTFB,TFF,トルク制限値を設定するようにした場合について説明したが、これに限らず、例えば関数式等の対応情報として記憶しておき、これに基づき設定するようにしてもよい。また、上記実施の形態においては、車輪速センサ11FL〜11RRの検出信号に基づいて車速を検出するようにした場合について説明したが、これに限らず例えば車速センサを設けるようにしてもよく、要は、車速を検出することのできる車速検出手段であればよい。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年12月16日(1999.12.16)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外2名)
【公開番号】 特開2001−177909(P2001−177909A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願平11−357116