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【発明の名称】 車両の安全装置
【発明者】 【氏名】中村 雅之

【要約】 【課題】短絡要求が生じた場合に、バッテリーの各セルを確実かつ容易に短絡する。

【解決手段】複数のセル4が直列に接続されたバッテリ1を有し、各セル4の電極6,7を短絡させる短絡要求がある場合に、各セル4の電極6,7を短絡させることのできる車両の安全装置において、導電性部材13をセル4の電極6,7に接触しない状態で保持する導電性部材収納容器10および開閉バルブ12と、短絡要求の有無を判断する短絡要求判断装置15と、短絡要求判断装置15により短絡要求があると判断された場合に、開閉バルブ12を動作させて導電性部材収納容器10の開放口11を開放して、導電性部材13をバッテリ収納容器1の内部に放出させることにより、各セル4の電極6,7同士を導電性部材13により短絡させる放出制御回路14とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のセルが直列に接続されたバッテリを有し、前記各セルの電極を短絡させる短絡要求がある場合に、前記各セルの電極を短絡させることのできる車両の安全装置において、導電性部材を前記各セルの電極に接触しない状態で保持する保持装置と、前記短絡要求の有無を判断する短絡要求判断装置と、この短絡要求判断装置により短絡要求があると判断された場合に、前記導電性部材を前記各セルの電極の周囲に放出させることにより、前記各セルの電極を前記導電性部材により短絡させる導電性部材放出装置とを備えていることを特徴とする車両の安全装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、バッテリを構成する各セルの電極を短絡させる要求が生じた場合に、各セルの電極を確実・かつ容易に短絡させることのできる車両の安全装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電動機によって車輪を駆動して走行する電気自動車やハイブリッド車などの車両においては、電動機の電源としてバッテリを搭載している。このような、電気自動車やハイブリッド車等の車両が非常事態に遭遇した際に、バッテリの電流が外部に漏れないようにすることのできる車両の安全装置の一例が、特開平9−284904号公報に記載されている。この公報に記載されたバッテリは、電槽内に設けられた複数の単電池と、電槽の外部に取り付けられた短絡用モータと、短絡用モータにより回転され、かつ、導電性材料により構成された短絡用シャフトと、短絡用シャフトに取り付けられ、かつ、各単電池に対応して設けられたフラップ型接点とを備えている。各単電池は、負極板及び正極板を有し、負極板と正極板とがストラップにより接続されている。また、車両の衝突などの非常事態を検出する検出手段を備えている。
【0003】上記公報に記載された車両の安全装置においては、車両の衝突などの非常事態が検出されると、短絡用モータが駆動されて短絡用シャフトが回転する。その結果、各フラップ型接点が各単電池のストラップにそれぞれ接触して、各単電池を短絡させる。したがって、直列に接続された単電池がバッテリの内部において短絡するため、バッテリの外部に電力が供給されなくなるものとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報においては、各フラップ型接点をスクラップに接触させた状態を維持するためのアクチュエータとして短絡用モータを用いているために、短絡用モータの故障や破損が生じた場合には、各単電池を短絡させることができないとともに、構造が複雑化し、かつ、大型化する問題があった。また、短絡用シャフトを回転させて各フラップ接点を各単電池のストラップに接触させる構成であるために、短絡用シャフトの回転角度を高精度に制御しなけれならず、その制御が面倒であるという問題があった。
【0005】この発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、各セルの電極を確実、かつ容易に短絡させることができるとともに、構造の簡易な車両の安全装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の課題を解決するためこの発明は、複数のセルが直列に接続されたバッテリを有し、前記各セルの電極を短絡させる短絡要求がある場合に、前記各セルの電極を短絡させることのできる車両の安全装置において、導電性部材を前記各セルの電極に接触しない状態で保持する保持装置と、前記短絡要求の有無を判断する短絡要求判断装置と、この短絡要求判断装置により短絡要求があると判断された場合に、前記導電性部材を前記各セルの電極の周囲に放出させることにより、前記各セルの電極を前記導電性部材により短絡させる導電性部材放出装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】この発明によれば、導電性部材の自重により、導電性部材と各セルの電極とが接触して短絡される。したがって、導電性部材を各セルの電極に接触させた状態を維持するためのアクチュエータが不要である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、この発明の車両の安全装置を添付図面に基づいて説明する。図1および図2は、この発明の実施形態を示すもので、車両に搭載されたバッテリ1は、バッテリ格納容器1Aを有している。バッテリ格納容器1Aは、ケース2と、ケース2の開口部を閉塞するカバー3とを備えている。バッテリ格納容器1Aの内部には、複数のセル(言い換えれば単電池)4が収納されている。各セル4は、電槽5と、電槽5の内部に収納された負極板(図示せず)と正極板(図示せず)とセパレータ(図示せず)と電解液(図示せず)とを有する公知のものである。
【0009】この電槽5の上端面には、陽極端子6および陰極端子7が上方に突出して形成されている。そして、隣接するセル4同士の陽極端子6と陰極端子7とが相互に接続されている。つまり、各セル4は直列に接続されており、各セル4は完全充電された状態で、約2.1Vの電圧を生じるとともに、バッテリ1は、各セル4の電圧の総和に相当する電圧を生じる。また、接続方向の両端に位置するセル4の陽極端子6と陰極端子7とが、インバータ8に接続されている。このインバータ8は、バッテリ格納容器1Aの外部に設けられており、このインバータ8には電動機9が接続されている。このように接続されたバッテリ1およびインバータ8ならびに電動機9により、電気回路が形成されている。
【0010】バッテリ格納容器1Aの内部における各セル4の上方には、導電性部材収納容器10が設けられている。この導電性部材収納容器10は、例えばカバー3の内面に固定されている。そして、導電性部材収納容器10は、例えばアルミニウムなどの金属材料を、押し出し成形することにより製造したものを用いることができる。また、導電性部材収納容器10には開放口11が形成されている。
【0011】さらに、バッテリ格納容器1Aの内部には開閉バルブ12が設けられている。この開閉バルブ12は、開放口11を開閉するための開閉機構として機能する。より具体的には、導電性部材収納容器10の内部が、バッテリ格納容器1Aの内部の圧力よりも高圧になるまで加圧された状態で開放口11が閉じられている。この開閉バルブ12としては、例えば、電動弁または電磁弁などのように、その開閉状態を電気的に制御することのできる公知の遠隔制御弁を用いることができる。
【0012】さらに導電性部材収納容器10の内部には、固体からなる導電性部材13が、多数収納されている。この導電性部材13としては、例えば、アルミニウムなどの金属片、もしくは炭素を含有する樹脂片などを用いることができる。具体的には、例えば蛇腹形状の導電性部材13を形成し、この導電性部材13を折り畳んだ状態で導電性部材収納容器10の内部に収納することができる。また、板形状の導電性部材13を形成し、この導電性部材13を巻いた状態で導電性部材収納容器10の内部に収納することもできる。したがって、これらの導電性部材13は、導電性部材収納容器10の外部に放出されることにより、平面積が拡大する。導電性部材13が広がった状態の長さは、各セル4の陽極端子6と陰極端子7との間の距離よりも長く設定されている。
【0013】さらにまた、バッテリ格納容器1Aの外部には、開閉バルブ12を制御するための放出制御回路14が設けられているとともに、放出制御回路14には短絡要求判断装置15が信号通信可能に接続されている。短絡要求判断装置15は、各セル4の陽極端子6と陰極端子7とを短絡させるべき短絡要求の有無を判断する機能を有している。そして、例えば、車両と外部物体とが接触したこと、車両内に水が浸入したことなどが検知された場合に、短絡要求があると判断される。なお、車両と外部物体との接触は、公知のタッチセンサまたは圧電式加速度センサなどにより検知することができる。車両内への水の浸入は、アルミナ基板、感湿膜、電極などを有する公知の水検知センサなどにより検知することができる。
【0014】ここで、この実施形態の構成と、この発明の構成との対応関係について説明すれば、陽極端子6および陰極端子7がこの発明の電極に相当し、導電性部材収納容器10および開閉バルブ12がこの発明の保持装置に相当し、放出制御回路14がこの発明の短絡促進装置に相当し、導電性部材収納容器10および開閉バルブ12ならびに放出制御回路14が、この発明の導電性部材放出装置に相当する。
【0015】つぎに、この実施形態の安全装置の作用について説明する。バッテリ1の電力がインバータ8を介して電動機9に供給されると、電動機9が駆動される。ところで、短絡要求判断装置15により車両の非常事態が検知されていない場合は、開閉バルブ12により開放口11が閉じられている。したがって、導電性部材13は、導電性部材収納容器10の内部に収納されたままに維持される。
【0016】これに対して、短絡要求判断装置15により各セル4の短絡要求があると判断された場合は、放出制御回路14の制御信号に基づいて開閉バルブ12が動作し、開放口11が開放される。すると、導電性部材収納容器10の内部圧力によって、導電性部材13が、開放口11を経由して導電性部材収納容器10の外部、つまり、バッテリ格納容器1Aの内部に放出されて、不規則的に飛散する。すると、折り畳まれていた導電性部材13が広がって、その平面積が拡大するとともに、これらの導電性部材13が、各セル4の陽極端子6および陰極端子7に接触することにより、各セル4ごとに短絡電流が流れ、各セル4の電位を“零”にすることができる。したがって、短絡要求が生じた場合に、バッテリ1の電力が外部に供給されることを防止することができる。また、前述したように各セル4の電圧は約2.1Vであるために、各セル4の短絡による発熱が抑制される。
【0017】さらに、この実施形態においては、導電性部材13と陽極端子6および陰極端子7との接触状態は、導電性部材13の自重により維持される。このため、導電性部材13と陽極端子6および陰極端子7との接触状態を維持するためのアクチュエータが不要であるとともに、導電性部材13と陽極端子6および陰極端子7との接触状態を制御する必要もない。したがって、各セル4の短絡状態を確実、かつ、容易に生じさせることができるとともに、バッテリ格納容器1Aの内部構造の簡略化および小型化を図ることができる。
【0018】さらに、導電性部材収納容器10の内部に対して、導電性部材13が折り畳まれた状態で収納されている。このため、導電性部材13の収納領域を可及的に狭めることができ、導電性部材収納容器10の容量を大型化を抑制することができる。また、導電性部材13が導電性部材収納容器10の外部に放出されるとともに、その平面積が拡大されるために、導電性部材13と陽極端子6および陰極端子7とが効率よく接触することになり、各セル4の短絡を短時間で迅速に生じさせることができる。
【0019】ここで、導電性の液体を用い、この液体により陽極端子と陰極端子とを接続する比較例の構成と、この実施形態とを比較した場合について説明する。比較例の構成を採用すると、バッテリ収納容器が破損した(穴があいた)場合に液体がバッテリ収納容器の外部に漏れるとともに、バッテリの電力が外部に漏れる可能性がある。これに対して、この実施形態で用いる導電性部材13は固体であるため、図2に示すようにバッテリ格納容器1Aが破損して、導電性部材13がバッテリ格納容器1Aの破損部分A1から外部に出たとしても、導電性部材13と各セル4とが電気的に遮断された状態になるために、バッテリ1の電力が外部に漏れることはない。
【0020】なお、特に図示しないが、開放口11を、樹脂膜などの熱溶融部材(図示せず)により閉じておく構成を採用することもできる。この構成を採用した場合は、短絡要求判断装置15により短絡要求があると判断された際に、加熱源(図示せず)の熱により熱溶融部材を溶かして開放口11を開放すれば、上記実施形態と同様の効果を得られる。
【0021】また、図1および図2において、開放口11を各セル4に対向する位置に、下向きに形成することもできる。このように構成すれば、導電性部材13が各セル4に向けて正確に放出されやすくなる。さらに、導電性部材13をばね材料で構成すれば、導電性部材13の平面積の拡大機能が一層向上する。さらにまた、この実施形態は、電動機9を車両の駆動力源として搭載した電気自動車、または、エンジン(図示せず)と電動機9とを車両の駆動力源として搭載したハイブリッド車に適用することができる。
【0022】ここで、上記の具体例に基づいて開示されたこの発明の特徴的な構成を記載すれば以下のとおりである。複数のセルが直列に接続されたバッテリを有し、前記各セルの電極を短絡させる短絡要求がある場合に、前記各セルの電極を短絡させることのできる車両の安全装置において、複数のセルを格納したバッテリ格納容器と、このバッテリ格納容器の内部に設けられており、かつ、導電性部材を前記各セルの電極に接触しない状態で保持する導電部材収納容器と、この導電部材収納容器の開放口を閉じることのできる封鎖装置(開閉バルブ)と、前記短絡要求の有無を判断する短絡要求判断装置と、この短絡要求判断装置により短絡要求があると判断された場合に、前記封鎖装置を動作させて前記開放口を開放することにより、前記導電性部材をバッテリ格納容器の内部に放出させるとともに、前記各セルの電極同士を前記導電性部材により短絡させる導電性部材放出装置とを備えている。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、導電性部材の自重により、導電性部材と各セルとが接触して各セルの短絡が生じる。したがって、各セルの電極と導電性部材との接触状態を維持するためのアクチュエータが不要であるとともに、各セルの電極と導電性部材との接触状態を制御する必要もない。したがって、各セルの短絡状態を確実、かつ、容易に生じさせることができるとともに、安全装置の構造の簡略化および小型化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年11月15日(1999.11.15)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2001−145202(P2001−145202A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−324140