| 【発明の名称】 |
ハイブリッド駆動装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】伊藤 雅俊
【氏名】大庭 秀洋
【氏名】星屋 一美
【氏名】遠藤 弘淳
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| 【要約】 |
【課題】モータ走行モードからエンジン走行モードへ移行する際の制御がより適切に行われるようにする。
【解決手段】クラッチC1を係合させてモータジェネレータ16のみを動力源として走行するモータ走行モードから、エンジン14を始動するとともにクラッチC2を係合させ走行するエンジン走行モード(直結モード)へ移行する際に、エンジン回転速度Neがモータ回転速度Nmを上回ったか否かを判断し、Ne>NmになってからクラッチC2の油圧PC2をスイープアップさせてクラッチトルク容量を発生させるようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、該第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、前記エンジンを作動させるとともに少なくとも前記第2クラッチを係合させて車両を前進走行させるエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジンを始動して前記エンジン前進手段による前進走行へ移行する際に、該エンジンの回転速度が前記電動モータの回転速度以上になってから前記第2クラッチを係合させる第2クラッチ制御手段を有する、ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項2】 前記第2クラッチはスリップ係合可能な油圧式摩擦係合装置で、前記第2クラッチ制御手段は、前記エンジンの回転速度が前記電動モータの回転速度以上になった時に、前記第2クラッチを係合させるための油圧のスイープアップを開始するものである、ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。 【請求項3】 前記第2クラッチはスリップ係合可能な摩擦係合式のものである一方、前記エンジンをスタータによりクランキングして始動させるスタータ始動手段と、前記第2クラッチをスリップ係合させて前記エンジンをクランキングして始動させるフリクション始動手段と、前記スタータ始動手段によって前記エンジンを始動させることができない場合には前記第フリクション始動手段によって該エンジンを始動させる始動手段変更手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド駆動装置。 【請求項4】 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、該第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、前記エンジンを作動させるとともに、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを共に係合させて前記遊星歯車装置を一体回転させながら車両を前進走行させるエンジン直結モード、および前記第1クラッチを開放するとともに前記第2クラッチを係合させて、前記エンジンおよび前記電動モータを共に作動させて車両を前進走行させるエンジン・モータ走行モードの2種類の走行モードを有するエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段による前進走行へ移行する際に、前記エンジン直結モードではエンジンストールが生じるか否かを予測し、エンジンストールが生じると予測された場合は前記エンジン・モータ走行モードを選択するモード選択手段を有することを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項5】 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと電動モータとを車両走行用の動力源として備えているハイブリッド駆動装置において、前記電動モータのみを動力源として走行するモータ走行モードから前記エンジンを始動して該エンジンを動力源として走行するエンジン走行モードへ移行する際に、エンジン回転速度が所定値以上の時にはクランキングを行うことなく燃料噴射等のエンジン始動制御のみで該エンジンを始動させるクランキング無し始動手段を備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項6】 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと電動モータとを車両走行用の動力源として備えているとともに、該エンジンと変速機との間の動力伝達経路に摩擦係合式のクラッチが設けられているハイブリッド駆動装置において、前記電動モータのみを動力源として走行するモータ走行モードから前記エンジンを動力源として走行するエンジン走行モードへ移行する際に前記クラッチをスリップ係合させるスリップ制御手段と、前記移行時には、前記スリップ制御手段によってスリップ係合させられる前記クラッチの係合トルクを考慮して前記変速機への入力トルクを推定する移行時入力トルク推定手段と、を有することを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項7】 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、該第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、前記第1クラッチを開放するとともに前記第2クラッチを係合させて、前記エンジンおよび前記電動モータを共に作動させて車両を前進走行させるエンジン・モータ走行モードを有するエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、前記第1クラッチは摩擦係合式のもので、前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段による前記エンジン・モータ走行モードへ移行する際に、前記第1クラッチの開放に先立って該第1クラッチの係合トルクを滑りが生じない範囲で低下させる第1クラッチ開放スタンバイ手段を有する、ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項8】 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、該第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、前記第1クラッチを開放するとともに前記第2クラッチを係合させて、前記エンジンおよび前記電動モータを共に作動させて車両を前進走行させるエンジン・モータ走行モードを有するエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、前記第2クラッチは摩擦係合式のもので、前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段によるエンジン・モータ走行モードへ移行する際に、前記第2クラッチの係合トルクを漸増させるとともに、該第2クラッチの係合トルクが前記電動モータのトルクに対して、該エンジン・モータ走行モード時のトルク比の関係を満足するようになったら前記第1クラッチを開放するクラッチ制御手段を有する、ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はハイブリッド駆動装置に係り、特に、エンジンおよび電動モータを遊星歯車装置により機械的に連結したハイブリッド駆動装置において、モータ走行からエンジン走行へ移行する際の制御に関するものである。 【0002】 【従来の技術】(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、(b) 電動モータと、(c) 前記エンジン、前記電動モータ、および出力部材の間で動力を合成、分配する遊星歯車装置と、(d) それ等の回転要素の内の所定のものを連結、遮断したりケースに連結したりする摩擦係合式のクラッチやブレーキと、を有するハイブリッド駆動装置が知られている。特開平9−37411号公報に記載の装置はその一例であり、クラッチやブレーキの作動状態を切り換えることにより、電動モータを動力源として走行するモータ走行モードやエンジンを動力源として走行するエンジン走行モードなどの各種の走行モードが成立させられるようになっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のハイブリッド駆動装置においては、モータ走行モードからエンジン走行モードへ切り換える際に、エンジン回転速度が低い段階でクラッチを係合させると駆動力が低下する可能性があるなど、移行時の制御が必ずしも十分に満足できるものではなかった。 【0004】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、モータ走行モードからエンジン走行モードへ移行する際の制御がより適切に行われるようにすることにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】第1発明は、(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、その第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、(b) 前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、(c) 前記エンジンを作動させるとともに少なくとも前記第2クラッチを係合させて車両を前進走行させるエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、(d) 前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジンを始動して前記エンジン前進手段による前進走行へ移行する際に、そのエンジンの回転速度が前記電動モータの回転速度以上になってから前記第2クラッチを係合させる第2クラッチ制御手段を有する、ことを特徴とする。 【0006】第2発明は、第1発明のハイブリッド駆動装置において、(a) 前記第2クラッチはスリップ係合可能な油圧式摩擦係合装置で、(b) 前記第2クラッチ制御手段は、前記エンジンの回転速度が前記電動モータの回転速度以上になった時に、前記第2クラッチを係合させるための油圧のスイープアップを開始するものである、ことを特徴とする。 【0007】第3発明は、第1発明または第2発明のハイブリッド駆動装置において、(a)前記第2クラッチはスリップ係合可能な摩擦係合式のものである一方、(b) 前記エンジンをスタータによりクランキングして始動させるスタータ始動手段と、(c) 前記第2クラッチをスリップ係合させて前記エンジンをクランキングして始動させるフリクション始動手段と、(d) 前記スタータ始動手段によって前記エンジンを始動させることができない場合には前記フリクション始動手段によってそのエンジンを始動させる始動手段変更手段と、を有することを特徴とする。 【0008】第4発明は、(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、その第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、(b) 前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、(c) 前記エンジンを作動させるとともに、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを共に係合させて前記遊星歯車装置を一体回転させながら車両を前進走行させるエンジン直結モード、および前記第1クラッチを開放するとともに前記第2クラッチを係合させて、前記エンジンおよび前記電動モータを共に作動させて車両を前進走行させるエンジン・モータ走行モードの2種類の走行モードを有するエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、(d) 前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段による前進走行へ移行する際に、前記エンジン直結モードではエンジンストールが生じるか否かを予測し、エンジンストールが生じると予測された場合は前記エンジン・モータ走行モードを選択するモード選択手段を有することを特徴とする。 【0009】第5発明は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと電動モータとを車両走行用の動力源として備えているハイブリッド駆動装置において、前記電動モータのみを動力源として走行するモータ走行モードから前記エンジンを始動して該エンジンを動力源として走行するエンジン走行モードへ移行する際に、エンジン回転速度が所定値以上の時にはクランキングを行うことなく燃料噴射等のエンジン始動制御のみでそのエンジンを始動させるクランキング無し始動手段を備えていることを特徴とする。 【0010】第6発明は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと電動モータとを車両走行用の動力源として備えているとともに、そのエンジンと変速機との間の動力伝達経路に摩擦係合式のクラッチが設けられているハイブリッド駆動装置において、(a) 前記電動モータのみを動力源として走行するモータ走行モードから前記エンジンを動力源として走行するエンジン走行モードへ移行する際に前記クラッチをスリップ係合させるスリップ制御手段と、(b) 前記移行時には、前記スリップ制御手段によってスリップ係合させられる前記クラッチの係合トルクを考慮して前記変速機への入力トルクを推定する移行時入力トルク推定手段と、を有することを特徴とする。 【0011】第7発明は、(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、その第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、(b) 前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、(c) 前記第1クラッチを開放するとともに前記第2クラッチを係合させて、前記エンジンおよび前記電動モータを共に作動させて車両を前進走行させるエンジン・モータ走行モードを有するエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、(d) 前記第1クラッチは摩擦係合式のもので、(e) 前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段による前記エンジン・モータ走行モードへ移行する際に、前記第1クラッチの開放に先立ってその第1クラッチの係合トルクを滑りが生じない範囲で低下させる第1クラッチ開放スタンバイ手段を有する、ことを特徴とする。 【0012】第8発明は、(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、その第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、(b) 前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、(c) 前記第1クラッチを開放するとともに前記第2クラッチを係合させて、前記エンジンおよび前記電動モータを共に作動させて車両を前進走行させるエンジン・モータ走行モードを有するエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、(d) 前記第2クラッチは摩擦係合式のもので、(e) 前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段によるエンジン・モータ走行モードへ移行する際に、前記第2クラッチの係合トルクを漸増させるとともに、その第2クラッチの係合トルクが前記電動モータのトルクに対して、そのエンジン・モータ走行モード時のトルク比の関係を満足するようになったら前記第1クラッチを開放するクラッチ制御手段を有する、ことを特徴とする。 【0013】 【発明の効果】第1発明、第2発明では、モータ前進手段による前進走行からエンジン前進手段による前進走行へ移行する際に、エンジン回転速度がモータ回転速度以上になってから第2クラッチを係合させるようになっているため、例えばアクセルペダル等のアクセル操作部材が増大操作された場合にエンジン前進手段による前進走行へ移行するようになっている場合などに、駆動力の低下を生じることなくエンジン前進手段による前進走行へ円滑に移行して、駆動力を速やかに増大させることができる。すなわち、エンジン回転速度がモータ回転速度よりも低い状態で第2クラッチを係合させると、エンジン回転速度の引き上げのために動力が費やされて駆動力が低下してしまうのである。 【0014】第3発明では、スタータ始動手段とフリクション始動手段とを備えていて、スタータ始動手段によってエンジンを始動させることができない場合にはフリクション始動手段によってエンジンを始動させるようになっているため、スタータの不良時でもエンジンを始動させることが可能で、エンジンを使用するエンジン前進手段による前進走行等を実行できる。 【0015】第4発明では、モータ前進手段による前進走行からエンジン前進手段による前進走行へ移行する際に、エンジン直結モードではエンジンストールが生じるか否かを予測し、エンジンストールが生じると予測された場合はエンジン・モータ走行モードが選択されるため、エンジン前進手段による前進走行への移行に伴ってエンジンストールを生じる恐れがないとともに、エンジン・モータ走行モードで大きな駆動力を得ることができる。すなわち、エンジンのアイドル回転速度以下の比較的低車速でもエンジンを動力源として走行することが可能である。 【0016】第5発明では、モータ走行モードからエンジン走行モードへ移行する際に、エンジン回転速度が所定値以上の時にはクランキングを行うことなく燃料噴射等のエンジン始動制御のみでエンジンが始動させられるため、例えばエンジン走行モードからモータ走行モードへ移行した直後にアクセル操作部材の増大操作等に従って再びエンジン走行モードへ移行する場合、そのエンジン走行モードへの移行が、クランキングする必要がないため速やかに実施される。すなわち、スタータでエンジンをクランキングする場合は、スタータのピニオンをエンジンのフライホイール等に設けられたリングギヤ等に噛み合わせる必要があるため、エンジン回転速度が所定値以下になるまでピニオンを噛み合わせることができず、それだけエンジンの始動、更にはエンジン走行モードへの移行が遅くなるのである。 【0017】第6発明では、モータ走行モードからエンジン走行モードへ移行する際に、エンジンと変速機との間のクラッチをスリップ係合させるとともに、そのクラッチの係合トルク(伝達トルク容量)を考慮して変速機への入力トルクを推定するようになっているため、モータ走行モードからエンジン走行モードへの移行時においても入力トルクが高い精度で求められ、変速機の油圧制御などが高い精度で行われる。すなわち、一般に変速機の各部の必要油圧を算出する場合、動力源の発生トルク、回転メンバのイナーシャ、トルクコンバータのトルク比等を考慮して計算が行われるが、動力源の切替え時にクラッチがスリップ制御される場合には、その係合トルクを考慮しないと過大入力によって変速機の各部のクラッチやブレーキがスリップしたりベルト式無段変速機の場合にはベルトがスリップしたりする恐れがある。 【0018】第7発明では、モータ前進手段による前進走行からエンジン前進手段による前記エンジン・モータ走行モードへ移行する際に、第1クラッチの開放に先立ってその係合トルクを滑りが生じない範囲で低下させるため、例えば第8発明のように所定の条件下で第1クラッチを開放する場合に優れた応答性が得られるようになり、応答遅れに起因する駆動力変化やエンジンストール等が抑制され、エンジン・モータ走行モードへの移行制御が容易になる。 【0019】第8発明では、モータ前進手段による前進走行からエンジン前進手段によるエンジン・モータ走行モードへ移行する際に、第2クラッチの係合トルクを漸増させるとともに、その第2クラッチの係合トルクが電動モータのトルクに対して、エンジン・モータ走行モード時のトルク比の関係を満足するようになったら第1クラッチを開放するようになっているため、第1クラッチ開放時の駆動力変動が抑制されてエンジン・モータ走行モードへ滑らかに移行する。 【0020】 【発明の実施の形態】本発明は、例えば(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、(b) モータジェネレータと、(c) サンギヤに前記エンジンが連結されるとともにキャリアに前記モータジェネレータが連結されたダブルピニオン型の遊星歯車装置と、(d) そのキャリアを出力部材に連結する第1クラッチと、(e) 前記遊星歯車装置のリングギヤを前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有するハイブリッド駆動装置に好適に適用される。サンギヤは第1回転要素で、キャリアは第2回転要素で、リングギヤは第3回転要素に相当する。また、出力部材は、例えば変速機の入力軸で、変速機としてはベルト式無段変速機が好適に用いられる。なお、遊星歯車装置としてシングルピニオン型のものを採用することもできるし、変速機としてトロイダル型等の他の無段変速機や有段変速機を用いることも可能である。第5発明、第6発明では、遊星歯車装置についても必須でなく、種々のハイブリッド駆動装置に適用され得る。 【0021】上記モータジェネレータは電動モータに相当するものであるが、電動モータおよびジェネレータとして使用できるもので、走行用動力源である電動モータとして使用するとともに回生制動などでジェネレータとして使用することが望ましいが、電動モータとしてのみ使用されるものでも良い。電動モータとジェネレータとを別々に設けることもできるし、2個のモータジェネレータを用いてハイブリッド駆動装置を構成することもできる。 【0022】第1クラッチ、第2クラッチや第6発明のクラッチとしては、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる単板式、多板式等の油圧式摩擦クラッチが好適に用いられるが、電磁クラッチなどを用いることもできる。必要に応じて、他のクラッチやブレーキを追加して設けることも可能である。 【0023】第1発明では、エンジン回転速度がモータ回転速度以上になってから第2クラッチを係合させるようにすれば良く、エンジン回転速度とモータ回転速度とを直接比較するようにしても良いが、遊星歯車装置の任意の2つの回転速度を比較することにより、エンジン回転速度がモータ回転速度以上になったか否かを判断することもできる。例えば、前記第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素が、その第1回転要素の回転速度が第2回転要素の回転速度を越えるのに伴って、第3回転要素の回転速度も第2回転要素の回転速度を越えるように設定されている場合には、エンジン回転速度の上昇により第1回転要素または第3回転要素の回転速度が第2回転要素の回転速度以上になったか否かを判断して第2クラッチの係合制御を行うようにしても良い。 【0024】第3発明ではスタータ始動手段およびフリクション始動手段を備えているが、更に第5発明のクランキング無し始動手段などを設けることも可能である。第1発明の実施に際しては、必ずしもそれ等の始動手段を全て備えている必要はないし、その他の始動手段を採用することもできる。複数の始動手段を備えている場合には、始動手段の種類に拘らず常に第2クラッチ制御手段による制御を実施することが望ましいが、応答性が損なわれるなど場合によっては一部の始動手段によるエンジン始動時にだけ第2クラッチ制御手段の制御を実施するようにしても良い。フリクション始動手段は、モータ回転速度が所定値(例えばエンジンの爆発に必要な回転速度)以上の場合にだけ実施されるようにすることが望ましい。 【0025】第4発明の実施に際しては、エンジン・モータ走行モードにおいて、電動モータの負荷トルクがエンジンより小さくなるとともに、定常状態では出力部材に出力されるトルクがエンジンおよび電動モータの各々のトルクを加算した値になるように、遊星歯車装置との連結関係や遊星歯車装置のギヤ比ρなどを設定することが望ましい。エンジン・モータ走行モードを備えている他の発明についても同様である。 【0026】第4発明のモード選択手段は、例えばエンジン前進手段による前進走行へ移行する際にエンジン回転速度を監視し、第2クラッチの係合に伴ってエンジン回転速度が所定値以下まで低下した場合にエンジンストールが生じると予測したり、第2クラッチの係合過程の所定のタイミング、例えばエンジン回転速度が減少し始めた時などに、その時の入力軸回転速度に基づいてエンジンストールを予測したりするなど、種々の態様を採用できる。 【0027】第5発明、第6発明のエンジン走行モードは、エンジンのみを動力源として走行するものでも良いが、エンジンおよび電動モータの両方を動力源として走行する場合であっても良い。 【0028】第5発明は、例えば(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、該第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、(b) 前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、(c) 前記エンジンを作動させるとともに少なくとも前記第2クラッチを係合させて車両を前進走行させるエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、(d) 前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段による前進走行へ移行する際に、エンジン回転速度が所定値以上の時にはクランキングを行うことなく燃料噴射等のエンジン始動制御のみで前記エンジンを始動させるクランキング無し始動手段を有するように構成される。 【0029】第6発明は、例えば(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、電動モータと、第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記電動モータが連結された遊星歯車装置と、その第2回転要素を出力部材に連結する第1クラッチと、前記遊星歯車装置の第3回転要素を前記出力部材に連結する第2クラッチと、を有する一方、(b) 前記第1クラッチを係合させるとともに前記第2クラッチを開放して、前記エンジンの回転停止を許容しつつ前記電動モータを作動させて車両を前進走行させるモータ前進手段と、(c) 前記エンジンを作動させるとともに少なくとも前記第2クラッチを係合させて車両を前進走行させるエンジン前進手段と、を備えているハイブリッド駆動装置において、(d) 前記第2クラッチはスリップ係合可能な摩擦係合式のもので、前記出力部材は変速機に接続されている一方、(e) 前記モータ前進手段による前進走行から前記エンジン前進手段による前進走行へ移行する際に前記第2クラッチをスリップ係合させるスリップ制御手段と、(f) 前記移行時には、前記スリップ制御手段によってスリップ係合させられる前記第2クラッチの係合トルクを考慮して前記変速機への入力トルクを推定する移行時入力トルク推定手段と、を有するように構成される。 【0030】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用されたハイブリッド駆動装置10を説明する概略構成図で、図2は変速機12を含む骨子図であり、このハイブリッド駆動装置10は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン14、電動モータおよびジェネレータとして用いられるモータジェネレータ16、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置18を備えて構成されている。遊星歯車装置18のサンギヤ18sにはエンジン14が連結され、キャリア18cにはモータジェネレータ16が連結され、リングギヤ18rは第1ブレーキB1を介してケース20に連結されるようになっている。また、キャリア18cは第1クラッチC1を介して変速機12の入力軸22に連結され、リングギヤ18rは第2クラッチC2を介して入力軸22に連結されるようになっている。なお、サンギヤ18sは第1回転要素で、キャリア18cは第2回転要素で、リングギヤ18rは第3回転要素に相当する。また、変速機12の入力軸22は出力部材に相当する。 【0031】上記クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる湿式多板式の油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路24から供給される作動油によって摩擦係合させられるようになっている。図3は、油圧制御回路24の要部を示す図で、電動ポンプを含む電動式油圧発生装置26で発生させられた元圧PCが、マニュアルバルブ28を介してシフトレバー30(図1参照)の操作レンジに応じて各クラッチC1、C2、ブレーキB1へ供給されるようになっている。シフトレバー30は、運転者によって操作されるシフト操作部材で、本実施例では「B」、「D」、「N」、「R」、「P」の5つのレンジに選択操作されるようになっており、マニュアルバルブ28はケーブルやリンク等を介してシフトレバー30に連結され、そのシフトレバー30の操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。 【0032】「B」レンジは、前進走行時に変速機12のダウンシフトなどにより比較的大きな動力源ブレーキが発生させられる操作レンジで、「D」レンジは前進走行する操作レンジであり、これ等の操作レンジでは出力ポート28aからクラッチC1およびC2へ元圧PCが供給される。第1クラッチC1へは、シャトル弁31を介して元圧PCが供給されるようになっている。「N」レンジは動力源からの動力伝達を遮断する操作レンジで、「R」レンジは後進走行する操作レンジで、「P」レンジは動力源からの動力伝達を遮断するとともに図示しないパーキングロック装置により機械的に駆動輪の回転を阻止する操作レンジであり、これ等の操作レンジでは出力ポート28bから第1ブレーキB1へ元圧PCが供給される。出力ポート28bから出力された元圧PCは戻しポート28cへも入力され、上記「R」レンジでは、その戻しポート28cから出力ポート28dを経てシャトル弁31から第1クラッチC1へ元圧PCが供給されるようになっている。 【0033】クラッチC1、C2、およびブレーキB1には、それぞれコントロール弁32、34、36が設けられ、それ等の油圧PC1、PC2、PB1が制御されるようになっている。クラッチC1の油圧PC1についてはON−OFF弁38によって調圧され、クラッチC2およびブレーキB1についてはリニアソレノイド弁40によって調圧されるようになっている。 【0034】そして、上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1の作動状態に応じて、図4に示す各走行モードが成立させられる。すなわち、「B」レンジまたは「D」レンジでは、「ETCモード」、「直結モード」、「モータ走行モード(前進)」の何れかが成立させられ、「ETCモード」では、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1および第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14およびモータジェネレータ16を共に作動させて車両を前進走行させる。「直結モード」では、クラッチC1、C2を係合するとともに第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14を作動させて車両を前進走行させる。また、「モータ走行モード(前進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を作動させて車両を前進走行させる。「ETCモード」は電気トルコンモードでエンジン・モータ走行モードに相当し、「直結モード」はエンジン直結モードに相当する。 【0035】図5は、上記前進モードにおける遊星歯車装置18の作動状態を示す共線図で、「S」はサンギヤ18s、「R」はリングギヤ18r、「C」はキャリア18cを表しているとともに、それ等の間隔はギヤ比ρ(=サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)によって定まる。具体的には、「S」と「C」の間隔を1とすると、「R」と「C」の間隔がρになり、本実施例ではρが0.6程度である。また、(a) のETCモードにおけるトルク比は、エンジントルクTe:CVT入力軸トルクTin:モータトルクTm=ρ:1:1−ρであり、モータトルクTmはエンジントルクTeより小さくて済むとともに、定常状態ではそれ等のモータトルクTmおよびエンジントルクTeを加算したトルクがCVT入力軸トルクTinになる。CVTは無段変速機の意味であり、本実施例では変速機12としてベルト式無段変速機が設けられている。 【0036】図4に戻って、「N」レンジまたは「P」レンジでは、「ニュートラル」または「充電・Eng始動モード」の何れかが成立させられ、「ニュートラル」ではクラッチC1、C2および第1ブレーキB1の何れも開放する。「充電・Eng始動モード」では、クラッチC1、C2を開放するとともに第1ブレーキB1を係合し、モータジェネレータ16を逆回転させてエンジン14を始動したり、エンジン14により遊星歯車装置18を介してモータジェネレータ16を回転駆動するとともにモータジェネレータ16を回生制御して発電し、バッテリ42(図1参照)を充電したりする。 【0037】「R」レンジでは、「モータ走行モード(後進)」または「フリクション走行モード」が成立させられ、「モータ走行モード(後進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆回転方向へ作動させて車両を後進走行させる。「フリクション走行モード」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆回転方向へ作動させて車両を後進走行させる一方、エンジン14を作動させるとともにリングギヤ18rが正方向へ回転させられる状態で第1ブレーキB1をスリップ係合させることにより、キャリア18c更には入力軸22に後進方向のアシスト力を作用させるものである。 【0038】前記変速機12はベルト式無段変速機で、その出力軸44からカウンタ歯車46を経て差動装置48のリングギヤ50に動力が伝達され、その差動装置48により左右の駆動輪52に動力が分配される。 【0039】本実施例のハイブリッド駆動装置10は、図1に示すHVECU60によって制御されるようになっている。HVECU60は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、電子スロットルECU62、エンジンECU64、M/GECU66、T/MECU68、前記油圧制御回路24のON−OFF弁38、リニアソレノイド弁40、エンジン14のスタータ70などを制御する。電子スロットルECU62はエンジン14の電子スロットル弁72を開閉制御するもので、エンジンECU64はエンジン14の燃料噴射量や可変バルブタイミング機構、点火時期などによりエンジン出力を制御するもので、M/GECU66はインバータ74を介してモータジェネレータ16の力行トルクや回生制動トルク等を制御するもので、T/MECU68は変速機12の変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )やベルト張力などを制御するものである。前記油圧制御回路24は、変速機12の変速比γやベルト張力を制御するための回路を備えている。スタータ70は電動モータで、モータ軸に設けられたピニオンをエンジン14のフライホイール等に設けられたリングギヤに噛み合わせてエンジン14をクランキングするものである。 【0040】上記HVECU60には、アクセル操作量センサ76からアクセル操作部材としてのアクセルペダル78の操作量θacを表す信号が供給されるとともに、シフトポジションセンサ80からシフトレバー30の操作レンジ(シフトポジション)を表す信号が供給される。また、エンジン回転速度センサ82、モータ回転速度センサ84、入力軸回転速度センサ86、出力軸回転速度センサ88から、それぞれエンジン回転速度(回転数)Ne、モータ回転速度(回転数)Nm、入力軸回転速度(入力軸22の回転速度)Nin、出力軸回転速度(出力軸44の回転速度)Nout を表す信号がそれぞれ供給される。出力軸回転速度Nout は車速Vに対応する。この他、バッテリ42の蓄電量SOCなど、運転状態を表す種々の信号が供給されるようになっている。蓄電量SOCは単にバッテリ電圧であっても良いが、充放電量を逐次積算して求めるようにしても良い。 【0041】そして、かかるHVECU60は、基本的に図6に示す各機能を備えていて、前記図4の走行モードを実施するようになっている。図6のETCモード制御手段100は「ETCモード」を実施するもので、直結モード制御手段102は「直結モード」を実施するもので、モータ前進手段104は「モータ走行モード(前進)」を実施するもので、充電制御手段106は「充電・Eng始動モード」を実施するもので、モータ後進手段108は「モータ走行モード(後進)」を実施するもので、エンジンアシスト後進手段110は「フリクション走行モード」を実施するものであり、ETCモード制御手段100および直結モード制御手段102はエンジン前進手段112を構成している。また、モード判定手段114は、アクセル操作量θacや車速V(出力軸回転速度Nout )、蓄電量SOC、シフトレバー30のシフトポジション等に基づいて走行モードを判定し、その判定した走行モードで運転が行われるように上記各手段を切り換える。 【0042】また、モータ前進手段104による「モータ走行モード(前進)」からエンジン14を始動して直結モード制御手段102による「直結モード」へ移行する際には、図7のフローチャートに従って信号処理が行われる。図7のフローチャートは、HVECU60によって実行されるもので、シフトレバー30が「D」または「B」レンジへ操作されて「モータ走行モード(前進)」での走行時に所定のサイクルタイムで繰り返し実行される。また、図8は、本制御の実行時におけるタイムチャートの一例である。 【0043】図7のステップS1−1では、前記モード判定手段114により「モータ走行モード(前進)」から「直結モード」へ切り替えるべき判定が為されたか否かを、その判定によって切り替えられる移行フラグによって判断する。「直結モード」へ切り替えるべき判断が為されると、ステップS1−2でスタータ70によりエンジン14を所定のクランキング回転(例えば500rpm程度)でクランキングするとともに、電子スロットル弁72の開制御や燃料噴射制御などによるエンジン始動制御を行う。また、同時に前記リニアソレノイド弁40により第2クラッチC2に対して作動油の供給を開始し、ファーストフィルを行った後に第2クラッチC2がトルク容量を発生する直前の低圧待機に保持する。図8の時間t1 は、「直結モード」への切替え判断に従ってエンジン始動制御や第2クラッチC2に対する作動油の供給が開始された時間である。 【0044】ステップS1−3では、エンジン14が爆発により自力回転が可能(完爆)となり且つエンジン回転速度Neがモータ回転速度Nmを越えたか否かを判断する。完爆か否かは、例えばエンジン回転速度Neが所定の回転速度(例えば650rpm程度)を越えたか否かによって判断できる。ステップS1−3の判断がYES(肯定)の場合にはステップS1−6を実行するが、NO(否定)の場合にはステップS1−4でエンジン始動指令が出力された後の経過時間が所定時間を越えたか否かを判断する。この所定時間は、エンジン14が完爆するとともにエンジン回転速度Neがモータ回転速度Nmを越えるのに十分な予め定められた一定値で、通常はこの所定時間を経過する前にステップS1−3の判断がYESになってステップS1−6を実行するが、スタータ70の故障などで所定時間を過ぎてもエンジン14を始動できない場合には、ステップS1−5で第2クラッチC2をスリップ係合させることによりエンジン14をクランキングする。すなわち、前記リニアソレノイド弁40により油圧PC2を上昇させて第2クラッチC2をスリップ係合させると、その係合トルクでエンジン14が回転駆動されるのであり、その状態で燃料噴射等のエンジン始動制御が行われる。 【0045】ステップS1−6では、リニアソレノイド弁40により第2クラッチC2の油圧PC2をスイープアップ(漸増)させることにより、第2クラッチC2がトルク容量を持つようになってエンジン14の出力が駆動力に反映されるとともに、第2クラッチC2の係合トルクTC2に対応させてモータジェネレータ16のトルクTmを漸減させることにより、運転者の所望する要求パワーPdrv が得られるようにする。油圧PC2の増加率は、例えばアクセル操作量θacおよび車速Vをパラメータとして求めれる要求パワーPdrv に拘らず予め定められた一定時間で走行モードの移行が終了するように、要求パワーPdrv が大きい程大きな増加率に設定される。図8の時間t2 は、ステップS1−3の判断がYESになった時間である。なお、ステップS1−5で第2クラッチC2のスリップ制御によりエンジン14を始動した場合には、そのまま第2クラッチC2の油圧PC2をスイープアップ(漸増)させてステップS1−6へ移行する。 【0046】次のステップS1−7では、第2クラッチC2が完全係合してエンジン回転速度Neがモータ回転速度Nmと一致するまで、エンジン14のトルクダウン制御を行って油圧PC2の勾配に応じてエンジン回転速度Neを制御する。エンジン14のトルクダウン制御は、例えばエンジン回転速度Neとモータ回転速度Nmとの回転速度差(Ne−Nm)やエンジン回転速度Neの変化率ΔNeなどをパラメータとして、駆動力変動を抑制しつつエンジン回転速度Neを滑らかにモータ回転速度Nmと一致させるように行われる。図8の時間t3 は、第2クラッチC2が略完全に係合した時間であり、回転速度差(Ne−Nm)が所定値以下の状態が所定時間継続した時間t4 で移行制御の終了判定が行われる。この終了判定に従って「モータ走行モード(前進)」から「直結モード」へ切り替えるための移行フラグが切り替えられ、以後のサイクルではステップS1−1の判断がNOになる。 【0047】このように本制御では、「モータ走行モード(前進)」からエンジン14を始動して「直結モード」へ移行する際に、ステップS1−3でエンジン回転速度Neがモータ回転速度Nmを上回ったか否かを判断し、Ne>NmになってからステップS1−6で油圧PC2をスイープアップさせて第2クラッチC2を係合させるようになっているため、例えばアクセルペダル78が踏込み操作(増大操作)されて「直結モード」へ移行する場合などに、駆動力の低下を生じることなく「直結モード」へ円滑に移行して、駆動力を速やかに増大させることができる。すなわち、Ne<Nmの状態で第2クラッチC2が係合させられると、エンジン回転速度Neの引き上げのために動力が費やされて駆動力が低下してしまうのである。 【0048】また、ステップS1−2ではスタータ70によりエンジン14をクランキングして始動させるが、所定時間経過してもエンジン回転速度Neがモータ回転速度Nmを超えない場合、言い換えればエンジン14を始動できない場合には、ステップS1−5で第2クラッチC2をスリップ係合させてエンジン14をクランキングするようになっているため、スタータ70の不良時でもエンジン14を始動させて「直結モード」を実行できる。 【0049】また、本実施例ではスタータ70を用いてエンジン14をクランキングするようにしているため、極低車速時にも速やかにエンジン14を始動してエンジントルクTeを駆動力に反映することができる。 【0050】上記図7の制御は第1発明〜第3発明の実施例に相当し、HVECU60による一連の信号処理のうちステップS1−3およびS1−6を実行する部分は第2クラッチ制御手段として機能しており、ステップS1−2を実行する部分はスタータ始動手段として機能しており、ステップS1−5を実行する部分はフリクション始動手段として機能しており、ステップS1−4を実行する部分は始動手段変更手段として機能している。 【0051】図9は、シフトレバー30が「D」または「B」レンジへ操作された状態において、モータ前進手段104による「モータ走行モード(前進)」でアクセルペダル30が踏込み操作されることにより、車両発進と同時にエンジン14を始動して直結モード制御手段102による「直結モード」またはETCモード制御手段100による「ETCモード」へ移行する場合のフローチャートで、同じくHVECU60によって実行される。また、図10は、本制御の実行時におけるタイムチャートの一例である。 【0052】図9のステップS2−1では、前記モード判定手段114により「モータ走行モード(前進)」からエンジン前進手段112による「直結モード」または「ETCモード」へ切り替えるべき判定が為されたか否かを、その判定によって切り替えられる移行フラグによって判断する。「直結モード」または「ETCモード」へ切り替えるべき判断が為されると、前記図7のステップS1−2〜S1−7と同様な制御が行われ、エンジン14が始動させられるとともに第2クラッチC2が係合させられるが、その過程でステップS2−2を実行してエンジン回転速度Neが所定値を超えたか否かを判断する。この判断は、例えばエンジン14が完爆するとともにモータ回転速度Nmを超えたか否かによって行われ、満足する場合にはステップS2−3を実行する。図10の時間t1 は、移行フラグが切り替えられてステップS2−1の判断がYESになった時間である。 【0053】ステップS2−3では、回転速度差(Ne−Nm)が増加から減少に転じたか否かを判断し、第2クラッチC2の係合トルクTC2の増加やエンジン14のトルクダウン制御により回転速度差(Ne−Nm)が減少し始めたらステップS2−4を実行する。図10の時間t2 は、回転速度差(Ne−Nm)が減少し始めてステップS2−3の判断がYESになった時間である。 【0054】ステップS2−4では、その時の入力軸回転速度Ninが予め定められた所定値より小さいか否かを判断し、小さい場合はステップS2−5で「ETCモード」へ移行する一方、所定値より大きい場合はステップS2−6で「直結モード」へ移行する。この場合の所定値は、そのまま第2クラッチC2が係合させられてエンジン回転速度Neが入力軸回転速度Ninと一致させられた場合に、エンジンストールが生じるか否かを予測するためのもので、エンジン14が自力回転できる一定値(例えば1000rpm程度)が設定されても良いが、第2クラッチC2が完全係合するまでの入力軸回転速度Ninの変化を考慮して、例えば図11に示すようにアクセル操作量θacをパラメータとするマップや演算式などから所定値を求めるようにすることが望ましい。すなわち、この時の入力軸回転速度Ninの勾配はアクセル操作量θacに対応し、アクセル操作量θacが大きい程入力軸回転速度Ninの勾配は大きくなるため、所定値としては、アクセル操作量θacが大きくなる程小さい値が設定されるようにするのである。なお、この段階では第1クラッチC1は係合状態に維持されており、入力軸回転速度Ninとモータ回転速度Nmは一致する。 【0055】そして、ステップS2−5では、第1クラッチC1を開放して「ETCモード」へ移行し、エンジン回転速度Neを例えば最適燃費ライン上に維持するようにエンジン14の出力制御を行うとともに、運転者の要求パワーPdrv に応じてモータジェネレータ16のトルク制御を行って車両を前進走行させる。また、ステップS2−6では、第1クラッチC1を係合したまま第2クラッチC2を係合させて「直結モード」へ移行し、モータジェネレータ16の出力を0にして自由回転させながらエンジン14のみで車両を前進走行させる。 【0056】ここで、本制御では、モータ前進手段104による前進走行からエンジン前進手段112による前進走行へ移行する際に、ステップS2−4で「直結モード」ではエンジンストールが生じるか否かを予測し、エンジンストールが生じると予測された場合は「ETCモード」が選択されるため、エンジン前進手段112による前進走行への移行に伴ってエンジンストールを生じる恐れがないとともに、「ETCモード」でエンジン14およびモータジェネレータ16により大きな駆動力を得ることができる。すなわち、急坂路走行時や積載重量が重い場合などで車速Vが上がらない時に、エンジン14のアイドル回転速度以下の比較的低車速でエンジン14を始動して「直結モード」ヘ移行するとエンジンストールが生じるが、本実施例では「ETCモード」へ移行することにより、エンジンストールを回避しつつエンジン14およびモータジェネレータ16を動力源として走行することができるのである。 【0057】また、本実施例では回転速度差(Ne−Nm)が増加から減少に転じた段階で、その時の入力軸回転速度Ninとアクセル操作量θacに応じて設定される所定値とを比較してエンジンストールを予測するため、エンジンストールを高い精度で予測できるとともに、実際にエンジンストールする前に「ETCモード」へ移行して第1クラッチC1を開放することにより、エンジンストールを良好に回避できる。なお、回転速度差(Ne−Nm)を用いる代わりにエンジン回転速度Neの変化率に基づいて、例えば変化率が略0になった時、或いは正から負へ変化した時にステップS2−4の判定を行うようにしても良い。 【0058】上記図9の制御は第4発明の実施例に相当し、HVECU60による一連の信号処理のうちステップS2−4、S2−5、およびS2−6を実行する部分はモード選択手段として機能している。 【0059】なお、前記図7の制御でも、本制御と同様にエンジンストールが生じるか否かを判断し、必要に応じて「ETCモード」へ移行させるようになっている。 【0060】図12は、シフトレバー30が「D」または「B」レンジへ操作されて前進走行している時に、モータ前進手段104による前進走行とエンジン前進手段112による前進走行とを切り替える際のフローチャートで、同じくHVECU60によって実行される。また、図14は、本制御の実行時におけるタイムチャートの一例である。 【0061】図12のステップS3−1では、モータ→エンジン走行移行制御中フラグがONか否かを判断し、ONの場合は直ちにステップS3−5以下のモータ→エンジン走行移行制御を実行するが、OFFの場合はステップS3−2でモータ走行中フラグがONか否かを判断する。モータ走行中フラグがONの場合、すなわち前記モータ前進手段による「モータ走行モード(前進)」で走行中の時には、ステップS3−3で前記モード判定手段114によりエンジン走行が要求されているか否かを判断する。また、モータ走行中フラグがOFFの場合は、ステップS3−11でエンジン→モータ走行移行制御中フラグがONか否かを判断し、ONの場合は直ちにステップS3−14以下のエンジン→モータ走行移行制御を実行するが、OFFの場合はステップS3−12で前記モード判定手段114によりモータ走行が要求されているか否かを判断する。 【0062】モード判定手段114によって行われる走行モードの判定は、前記図7、図9の場合も含めて例えば図13に示すように行われる。すなわち、先ず運転者の要求パワーPdrv が所定値以上か否かを判断し、要求パワーPdrv が所定値以上であればステップS4−2でエンジン前進手段112によるエンジン走行、具体的には「ETCモード」または「直結モード」による走行を要求し、要求パワーPdrv が所定値より小さい場合はステップS4−3でモータ走行が可能か否かを判断する。要求パワーPdrv は、アクセル操作量θacや車速V等をパラメータとして求められ、モータ走行が可能か否かは、蓄電量SOCが所定値以上、エンジン水温が所定値以上、モータ/インバータ温度が所定値以下、高圧系異常無し等に基づいて判断される。そして、モータ走行が不可の場合は、ステップS4−2でエンジン前進手段112によるエンジン走行を要求するが、モータ走行が可能であればステップS4−4でモータジェネレータ16によるモータ走行、具体的には「モータ走行モード(前進)」による走行を要求する。 【0063】前記ステップS3−3でエンジン走行が要求されている場合は、ステップS3−4でモータ→エンジン走行移行制御中フラグをONにして、ステップS3−5以下のモータ→エンジン走行移行制御を実施する。また、ステップS3−12でモータ走行が要求されている場合は、ステップS3−13でエンジン→モータ走行移行制御中フラグをONにして、ステップS3−14以下のエンジン→モータ走行移行制御を実施する。図14は、ドライバ要求パワーPdrv の減少により時間t0 でエンジン走行からモータ走行への切替え要求が為され、その後ドライバ要求パワーPdrv が再び増加して、時間t1 でモータ走行からエンジン走行への切替え要求が為された場合である。 【0064】モータ→エンジン走行移行制御のステップS3−5では、エンジン14の燃料噴射等のエンジン始動制御を行い、ステップS3−6では、エンジン回転速度Neが予め定められた所定値以上か否かを判断する。この場合の所定値は、燃料噴射のみでエンジン14を始動させることができる下限値、例えば500rpm程度の一定値が設定される。そして、エンジン回転速度Neが所定値より小さい場合は、ステップS3−7でスタータ70によりエンジン14をクランキングしてステップS3−8を実行するが、エンジン回転速度Neが所定値以上の場合はスタータ70によるクランキングを行うことなくステップS3−8を実行する。すなわち、「モータ走行モード(前進)」による前進走行では、エンジン14は自身の回転抵抗によって略回転停止させられるが、図14の時間t1 のようにエンジン走行からモータ走行への切替え要求からの経過時間が短い場合は、エンジン回転速度Neがそれ程低下しておらず、スタータ70によるクランキングを行うことなくエンジン14を始動することができるのである。 【0065】ステップS3−8およびステップS3−9では、前記図7や図8のようにエンジン14およびモータジェネレータ16の出力制御、第2クラッチC2の係合制御などを行ってエンジン走行モード、この場合には一般に「直結モード」を成立させる。また、ステップS3−10では、エンジン走行中フラグをONにするとともにモータ→エンジン走行移行制御中フラグをOFFにし、モータ→エンジン走行移行制御を終了する。図14の時間t3 は、モータ→エンジン走行移行制御の終了時間である。 【0066】一方、エンジン→モータ走行移行制御のステップS3−14では、第2クラッチC2を開放するとともにエンジン14の出力低減およびモータジェネレータ16の出力増大制御を行う。また、ステップS3−15では、モータ回転速度Nmとエンジン回転速度Neとの回転速度差(Nm−Ne)が所定値以上になったか否かを判断し、所定値以上になったらステップS3−16でエンジン14の燃料噴射を停止する。ステップS3−17では、モータ走行中フラグをONにするとともにエンジン→モータ走行移行制御中フラグをOFFにし、エンジン→モータ走行移行制御を終了する。 【0067】ここで、本制御では、モータ前進手段104によるモータ走行モードからエンジン前進手段112によるエンジン走行モードへ移行する際に、ステップS3−6でエンジン回転速度Neが所定値以上か否かを判断し、所定値以上の時にはスタータ70によるクランキングを行うことなく燃料噴射等のエンジン始動制御のみでエンジン14が始動させられるため、図14のようにエンジン走行モードからモータ走行モードへ移行した直後にアクセルペダル78の踏込み操作に従って再びエンジン走行モードへ移行する場合、そのエンジン走行モードへの移行が速やかに実施される。すなわち、エンジン回転速度Neが一定値以上である場合はクランキングを行う必要がなくなり、エンジン14の始動、更にはエンジン走行モードへ移行する際の時間的ロスを回避できるのである。スタータ70でエンジン14をクランキングする場合は、スタータ70のピニオンをエンジン14のリングギヤ等に噛み合わせるために、エンジン回転速度Neが極低回転の所定値以下になるまでピニオンを噛み合わせることができないため、時間的ロスが生じる。 【0068】因みに、図14の破線は、エンジン回転速度Neが極低回転になるまで待ってスタータ70によりクランキングしてエンジン14を始動する場合で、時間t2がクランキング開始時間で、時間t4 がモータ→エンジン走行移行制御の終了時間であり、本実施例に比較して時間(t4 −t3 )だけエンジン走行モードへの移行が遅くなる。 【0069】また、このようにエンジン回転速度Neが所定値以上の場合には、スタータ70によるクランキングを行うことなくエンジン14が始動させられるため、例えば前車との車間距離を略一定にコントロールしながら追従走行する場合など、アクセル操作量θacの変化に伴ってエンジン走行とモータ走行とを頻繁に切り替える場合には、スタータ70の作動回数が低減される。 【0070】上記図12の制御は第5発明の実施例に相当し、HVECU60による一連の信号処理のうちステップS3−6を実行する部分はクランキング無し始動手段として機能している。 【0071】図15および図16は、前記図7のフローチャートに従ってモータ→エンジン走行移行制御が行われる際に、変速機12へ入力される入力トルクTinをを推定する際の作動を説明する図で、図15は前記HVECU60の信号処理によって実行されるフローチャートである。前記変速機12の各部の油圧は入力トルクTinに基づいて制御されるようになっている。なお、図16のクラッチ伝達トルク「A」は第2クラッチC2の係合トルクTC2で、エンジントルク指令値「B」はエンジン14のトルクTeに対応し、MGトルク指令値「C」はモータジェネレータ16のトルクTmに対応する。 【0072】ステップS5−1ではモータ走行中か否かを判断し、モータ走行中、具体的には前記モータ前進手段104による「モータ走行モード(前進)」であれば、ステップS5−2でモータトルクTm(=MGトルク指令値C)を入力トルクTinとする。モータ走行中であるか否かは、例えば前記図12のモータ走行中フラグがONか否か等によって判断できる。図16の時間t1 は、図7のステップS1−1の判断がYESになってモータ→エンジン走行移行制御が開始された時間で、その時間t1 よりも前はモータ走行モードであり、ステップS5−2で入力トルクTinが求められる。 【0073】ステップS5−1の判断がNOの場合にはステップS5−3でエンジン走行中か否かを判断し、エンジン走行中、具体的には前記直結モード制御手段102による「直結モード」であれば、ステップS5−4でエンジントルクTe(=エンジントルク指令値B)とモータトルクTm(=MGトルク指令値C)とを加算して入力トルクTinを算出する。エンジン走行中であるか否かは、例えば前記図12のエンジン走行中フラグがONか否か等によって判断できる。図16の時間t3 は、第2クラッチC2が完全係合させられてモータ→エンジン走行移行制御が終了した時間で、その時間t3 よりも後はエンジン走行モードであり、ステップS5−4で入力トルクTinが求められる。エンジントルクTeは、電子スロットル弁72のスロットル弁開度指令値およびエンジン回転速度Ne等をパラメータとして予め定められたマップや演算式などから求められる。 【0074】ステップS5−3の判断がNOの場合にはステップS5−5でモータ→エンジン走行移行制御実施中か否かを判断し、モータ→エンジン走行移行制御実施中であれば、ステップS5−6で油圧PC2をスイープアップ中か否かを判断する。そして、油圧PC2をスイープアップ中の場合は、ステップS5−7でモータトルクTm(=MGトルク指令値C)および第2クラッチC2の係合トルクTc2(=クラッチ伝達トルクA)を考慮して入力トルクTinを推定する。モータ→エンジン走行移行制御実施中か否かは、例えば前記図12のモータ→エンジン走行移行制御中フラグがONか否か等によって判断でき、PC2スイープアップ中か否は、例えばステップS1−6の実行中を表すフラグ等によって判断できる。 【0075】第2クラッチC2のスリップ状態においては、その係合トルクTC2がリングギヤ18rから出力軸22に作用する一方、キャリア18cに接続されたモータジェネレータ16がその反力TC2×(1−ρ)を受けるため、次式(1) に従って入力トルクTinが求められる。係合トルクTC2は、例えば摩擦係数μ、摩擦面の数n、半径R、および押し付け力Fを用いて次式(2) に従って求めることが可能で、押し付け力Fは、油圧シリンダの面積S、油圧PC2、低圧待機圧PC2* から次式(3) に従って求められる。油圧PC2、低圧待機圧PC2* については、例えばリニアソレノイド弁40に対する指令値に基づいて算出できる。図16の時間t2は、前記ステップS1−3の判断がYESになってステップS1−6のPC2スイープアップが開始された時間であり、時間t2 から時間t3 までの間ではステップS5−7で入力トルクTinが求められる。なお、(2) 式、(3) 式は基本式であり、各部のイナーシャなどを考慮して更にきめ細かく高い精度で求めることもできる。
【0076】前記ステップS5−6の判断がNOの場合、すなわちPC2スイープアップ中でない場合は、第2クラッチC2に作動油が供給されるとともに低圧待機に保持されている段階であるため、係合トルクTC2=0であり、ステップS5−8でモータトルクTm(=MGトルク指令値C)を入力トルクTinとする。図16において、モータ→エンジン走行移行制御が開始された時間t1 からPC2スイープアップが開始される時間t2 までの間は、ステップS5−7で入力トルクTinが求められる。 【0077】なお、エンジン回転速度Neがモータ回転速度Nm(=入力軸回転速度Nin)よりも高いか否かによって係合トルクTC2の正負、すなわち入力軸22に対して駆動側(増速側)に作用するか制動側(減速側)に作用するかが異なるため、例えば図17に示すフローチャートに従って判定することが望ましい。図17のステップS6−1、S6−2は、図15のステップS5−6、S5−8に相当するステップで、第2クラッチC2の係合が開始するまでは係合トルクTC2=0とする。ステップS6−3ではNe>Nmか否かを判断し、Ne>NmであればステップS6−4で係合トルクTC2を正とする一方、Ne≦Nmの場合はステップS6−5で係合トルクTC2を負とする。前記図7のフローチャートでは、Ne>Nmになってから第2クラッチC2をスリップ制御するため、通常は係合トルクTC2が正である。 【0078】ここで、本制御では、モータ走行モードからエンジン走行モードへ移行する際に、油圧PC2がスイープアップされて第2クラッチC2がスリップ制御される段階では、第2クラッチC2の係合トルクTC2を考慮して入力トルクTinを推定するようになっているため、モータ走行モードからエンジン走行モードへの移行時においても入力トルクTinが高い精度で求められ、変速機12の油圧制御などが高い精度で行われてベルトのスリップ等が防止される。すなわち、一般に従来のオートマチック車両においては、変速機の各部の必要油圧を算出する場合、動力源の発生トルク、回転メンバのイナーシャ、トルクコンバータのトルク比等を考慮して計算が行われるが、本実施例のように動力源の切替え時に第2クラッチC2がスリップ制御される場合には、その係合トルクTC2を考慮しないと過大入力によって変速機12のベルトがスリップする恐れがあるのである。 【0079】上記図15の制御は第6発明の実施例に相当し、HVECU60による一連の信号処理のうちステップS5−6、S5−7、S5−8を実行する部分は第6発明の移行時入力トルク推定手段として機能している。また、前記図7のフローチャートにおいて、第2クラッチC2の油圧PC2のスイープアップを行うステップS1−6は、第6発明のスリップ制御手段に相当する。 【0080】図18は、シフトレバー30が「D」または「B」レンジへ操作された状態において、モータ前進手段104による「モータ走行モード(前進)」でアクセルペダル30が踏込み操作されることにより、車両発進と同時にエンジン14を始動してETCモード制御手段100による「ETCモード」へ移行する場合のフローチャートで、HVECU60の信号処理によって実行される。また、図19は、本制御の実行時におけるタイムチャートの一例である。 【0081】図18のステップS7−1では、前記モード判定手段114により「モータ走行モード(前進)」からエンジン前進手段112による「ETCモード」へ切り替えるべき判定が為されたか否かを、その判定によって切り替えられる移行フラグによって判断する。通常は「直結モード」への移行判定が為されるが、蓄電量SOCの低下やエアコン等の補機類のONなど、何らかの理由でエンジン14を始動する必要が生じて「ETCモード」へ切り替えるべき判断が為されると、ステップS7−2を実行し、前記ステップS1−2と同様にスタータ70によりエンジン14をクランキングするとともに燃料噴射等のエンジン始動制御を実行するとともに、第2クラッチC2にファーストフィルを行って低圧待機に保持する。次のステップS7−3では、エンジン回転速度Neが所定値を超えたか否かを判断する。この判断は、例えばエンジン14が完爆するとともにモータ回転速度Nmを超えたか否かによって行われ、満足する場合はステップS7−4を実行する。図19の時間t1 は、移行フラグが切り替えられてステップS7−1の判断がYESになった時間で、時間t2 はエンジン回転速度Neが所定値を超えてステップS7−3の判断がYESになった時間である。 【0082】ステップS7−4では、前記ステップS1−6と同様にリニアソレノイド弁40により第2クラッチC2の油圧PC2をスイープアップ(漸増)させることにより、第2クラッチC2がトルク容量を持つようになってエンジン14の出力が駆動力に反映されるとともに、第2クラッチC2の係合トルクTC2に対応させてモータジェネレータ16のトルクTmを漸減させることにより、運転者の所望する要求パワーPdrv が得られるようにする。また、同時に前記ON−OFF弁38により第1クラッチC1の油圧PC1を滑りが生じない必要最低圧に制御する。この油圧PC1の制御はキャリアトルクに基づいて行われ、モータトルクTmの低下に伴って油圧PC1も低下させられる。油圧PC1は、第1クラッチC1の係合トルクTC1に対応し、係合トルクTC1が次式(4) を満足するように油圧PC1を制御すれば良い。(4) 式のαは、所定の余裕値である。 TC1=Tm−TC2×(1−ρ)+α ・・・(4)【0083】ステップS7−5では、エンジントルクダウン制御によりエンジン回転速度Neが目標回転速度Ne* になるようにエンジン14の出力制御を行う。目標回転速度Ne* は、例えば予め定められた最適燃費ライン上を移動するように設定される。 【0084】ステップS7−6では、モータトルクTmと第2クラッチC2の係合トルクTC2とが次式(5) の関係を満足するか否かを判断し、(5) 式を満足するようになったらステップS7−7で第1クラッチC1を開放するとともに、モータ回転速度Nmを所定の目標回転速度Nm* に向かって所定の勾配でスイープダウンさせる。(5) 式は、「ETCモード」におけるトルク比を表しており、第1クラッチC1を開放しても遊星歯車装置18の各部の回転速度やトルクが急激に変化する恐れがない。また、目標回転速度Nm* は、前記目標回転速度Ne* および実際の入力軸回転速度Ninに基づいて、次式(6) に従って求められる。図19の時間t3 は、(5) 式を満足するようになってステップS7−6の判断がYESになった時間である。 Tm/TC2≦1−ρ ・・・(5) Nm* =(Nin−Ne* ×ρ)/(1−ρ) ・・・(6) 【0085】上記ステップS7−6ではまた、エンジン回転速度Neを監視して第1クラッチC1の開放タイミングを判定し、各種のバラツキ(例えばエンジントルク)にリアルタイムに対応する。この判断は、例えばエンジン回転速度Neと目標回転速度Ne* との偏差やエンジン回転速度Neの変化率などを考慮することが望ましい。また、例えばエンジン14がトルクを出していない場合、上記(5) 式が成立するまで待っているとTe<ρ×TC2になってエンジンストールを生じる可能性があるため、エンジン回転速度Neが所定の回転速度以下になったらステップS7−7へ移行して直ちに第1クラッチC1を開放する。 【0086】ステップS7−7でモータ回転速度Nmが目標回転速度Nm* に略到達すると、リングギヤ18rの回転速度が入力軸回転速度Ninと略一致させられ、第2クラッチC2が完全係合させられる。図19の時間t4 は、モータ回転速度Nmが目標回転速度Nm* に略到達して第2クラッチC2が完全係合させられた時間であり、その後、モータ回転速度Nmおよびエンジン回転速度Neから算出したリングギヤ18rの回転速度と入力軸回転速度Ninとの偏差が所定値以下の状態が所定時間継続した時間t5 で移行制御の終了判定が行われる。 【0087】ここで、本制御ではモータ前進手段104による「モータ走行モード(前進)」からエンジン前進手段112による「ETCモード」へ移行する際に、ステップS7−4で第1クラッチC1の油圧PC1を滑りが生じない必要最低圧に制御するようになっているため、所定の条件下でステップS7−7において第1クラッチC1を開放する場合に優れた応答性が得られるようになり、応答遅れに起因する駆動力変化やエンジンストール等が抑制されて、「ETCモード」への移行制御が容易になる。 【0088】また、第2クラッチC2の係合トルクTC2を漸増させるとともに、その係合トルクTC2がモータトルクTmに対して前記(5) 式の関係、すなわち「ETCモード」におけるトルク比の関係を満足するようになったか否かをステップS7−6て判断し、(5) 式の関係を満足するようになったらステップS7−7で第1クラッチC1を開放するようになっているため、第1クラッチC1の開放時の駆動力変動が抑制されて「ETCモード」へ滑らかに移行する。 【0089】上記図18の制御は第7発明、第8発明の実施例に相当し、ハイブリッドECU60による一連の信号処理のうちステップS7−4(特に、油圧PC1を滑りが生じない必要最低圧に制御する部分)を実行する部分は第1クラッチ開放スタンバイ手段として機能しており、ステップS7−4(特に、油圧PC2をスイープアップさせる部分)、S7−6、S7−7(特に、第1クラッチC1を開放する部分)を実行する部分はクラッチ制御手段として機能している。 【0090】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年10月8日(1999.10.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085361 【弁理士】 【氏名又は名称】池田 治幸 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−112118(P2001−112118A) |
| 【公開日】 |
平成13年4月20日(2001.4.20) |
| 【出願番号】 |
特願平11−288034 |
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