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【発明の名称】 車両の回生制動装置
【発明者】 【氏名】遠藤 弘淳

【氏名】大庭 秀洋

【氏名】星屋 一美

【要約】 【課題】エンジンの再始動性の悪化を招くことなくエンジンを切り離して効率良くバッテリを充電できるとともに、ベルト式無段変速機の変速時に必要油圧が過大になることを防止する。

【解決手段】クラッチC1、C2を係合した直結モードでの走行中にアクセルOFFでモータジェネレータ16を回生制御する際に、エンジン水温が所定値以上など所定のエンジン切離し条件を満足する場合にクラッチC2を開放し、エンジン14を動力伝達経路から切り離す。また、ベルト式無段変速機12の必要油圧を考慮し、その必要油圧が過大にならないように設定されたマップに従ってモータジェネレータ16の回生制御時の運転点(回転速度)を求め、その運転点で回転駆動されるようにベルト式無段変速機12を変速制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行用の動力源として燃料の燃焼で作動するエンジンを有するとともに、車両の運動エネルギーでジェネレータが回転駆動される際に、該ジェネレータの回生制御によって車両に回生制動力を作用させるとともにバッテリを充電する、車両の回生制動装置において、前記回生制御時に車両の状態が所定のエンジン切離し条件を満足するか否かを判断し、該エンジン切離し条件を満足する場合には前記エンジンを動力伝達経路から切り離すエンジン切離し手段を有する、ことを特徴とする車両の回生制動装置。
【請求項2】 前記ジェネレータは変速機を介して車輪に接続されており、前記エンジン切離し手段により前記エンジンが切り離されたか否かによって、前記回生制御時における前記ジェネレータの運転点を別々に設定する運転点設定手段と、該運転点で前記ジェネレータが回転駆動されるように前記変速機を変速制御する変速制御手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の車両の回生制動装置。
【請求項3】 前記変速機は油圧式無段変速機で、前記運転点設定手段は、前記油圧式無段変速機の必要油圧を考慮して前記ジェネレータの運転点を設定するようになっている、ことを特徴とする請求項2に記載の車両の回生制動装置。
【請求項4】 車両の運動エネルギーにより油圧式無段変速機を介してジェネレータが回転駆動される際に、該ジェネレータの回生制御によって車両に回生制動力を作用させるとともにバッテリを充電する車両の回生制動装置おいて、前記回生制御時に、前記油圧式無段変速機の必要油圧を考慮して前記ジェネレータの運転点を設定する運転点設定手段と、該運転点で前記ジェネレータが回転駆動されるように前記油圧式無段変速機を変速制御する変速制御手段と、を有することを特徴とする車両の回生制動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の運動エネルギーでジェネレータが回転駆動されることによりバッテリを充電するとともに車両に制動力を作用させる回生制動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、(b) モータジェネレータと、(c) 前記エンジン、前記電動モータ、および出力部材の間で動力を合成、分配する歯車式の合成分配装置と、(d) それ等の回転要素の内の所定のものを連結、遮断したりケースに連結したりする摩擦係合式のクラッチやブレーキと、を有するハイブリッド駆動装置が知られている。特開平9−37411号公報に記載の装置はその一例であり、クラッチやブレーキの作動状態を切り換えることにより、車両の運動エネルギーでモータジェネレータが回転駆動されることによりバッテリを充電するとともに車両に制動力を作用させる回生制動モードが成立させられるようになっている。また、この回生制動モードとして、エンジンを切り離してモータジェネレータのみで制動力を作用させる場合と、エンジンを連れ回しすることによりエンジンブレーキを併用する場合との、2種類の場合について記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる従来の回生制動装置は、エンジンの切離し条件について何ら記載されておらず、例えばエンジン水温や変速機の油温が低い場合にエンジンを切り離して停止させると、エンジンの再始動性の悪化により動力性能やエミッションが損なわれる可能性があった。
【0004】また、ベルト式無段変速機を有する場合、変速比によって必要油圧が異なり、例えば変速比が大きい低車速で必要油圧が高い場合に、その低車速の状態でジェネレータが所定の運転点で回転駆動されるように大きな変速速度で変速が行われると、変速のために必要な変速油圧が過大になり、ポンプ負荷増加によって燃費が悪化したり、油圧不足でベルト滑りが発生したりする可能性があった。
【0005】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、エンジンの再始動性の悪化を招くことなくエンジンを切り離して効率良くバッテリを充電できるようにするとともに、ベルト式無段変速機を有する場合に変速に伴って必要油圧が過大になることを防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 走行用の動力源として燃料の燃焼で作動するエンジンを有するとともに、(b) 車両の運動エネルギーでジェネレータが回転駆動される際に、そのジェネレータの回生制御によって車両に回生制動力を作用させるとともにバッテリを充電する、車両の回生制動装置において、(c) 前記回生制御時に車両の状態が所定のエンジン切離し条件を満足するか否かを判断し、そのエンジン切離し条件を満足する場合には前記エンジンを動力伝達経路から切り離すエンジン切離し手段を有する、ことを特徴とする。
【0007】第2発明は、第1発明の車両の回生制動装置において、(a) 前記ジェネレータは変速機を介して車輪に接続されており、(b) 前記エンジン切離し手段により前記エンジンが切り離されたか否かによって、前記回生制御時における前記ジェネレータの運転点を別々に設定する運転点設定手段と、(c) その運転点で前記ジェネレータが回転駆動されるように前記変速機を変速制御する変速制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】第3発明は、第2発明の車両の回生制動装置において、(a) 前記変速機は油圧式無段変速機で、(b) 前記運転点設定手段は、前記油圧式無段変速機の必要油圧を考慮して前記ジェネレータの運転点を設定するようになっている、ことを特徴とする。
【0009】第4発明は、車両の運動エネルギーにより油圧式無段変速機を介してジェネレータが回転駆動される際に、そのジェネレータの回生制御によって車両に回生制動力を作用させるとともにバッテリを充電する車両の回生制動装置おいて、(a)前記回生制御時に、前記油圧式無段変速機の必要油圧を考慮して前記ジェネレータの運転点を設定する運転点設定手段と、(b) その運転点で前記ジェネレータが回転駆動されるように前記油圧式無段変速機を変速制御する変速制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
【発明の効果】第1発明の車両の回生制動装置においては、回生制御時に車両の状態が所定のエンジン切離し条件を満足するか否かを判断し、そのエンジン切離し条件を満足する場合にエンジンを動力伝達経路から切り離すようになっているため、例えばエンジンの再始動性が悪化する場合にはエンジンの切離しが行われないようにエンジン切離し条件を設定することにより、エンジン再始動性の悪化による動力性能やエミッションの低下を回避しつつエンジンを切り離して効率良くバッテリを充電することが可能で、エンジンの再始動性と回生効率の両立を図ることができる。
【0011】第2発明では、エンジン切離し手段によりエンジンが切り離されたか否かによってジェネレータの運転点が別々に設定され、その運転点でジェネレータが回転駆動されるように変速機が変速制御されるため、エンジンの有無に応じて適切な充電制御を行うことができる。例えばエンジン切離し時にはジェネレータの運転点を高回転側に設定することにより、エンジンのイナーシャによる変速時の油圧増加等を回避しつつ、ジェネレータを高効率の高回転側で回転駆動してバッテリを効率良く充電することができる。
【0012】第3発明では、油圧式無段変速機の必要油圧を考慮してジェネレータの運転点が設定されるため、ジェネレータを運転点で回転駆動するための変速時に、必要油圧が過大になってポンプ負荷増加により燃費が悪化したり、油圧不足になったりすることを防止できる。例えば変速比が大きい程必要油圧が増加する場合には、必要油圧が小さい変速比が小さな高車速側では比較的変速速度が大きくても差し支えないことから、ジェネレータの効率に応じて運転点を任意に設定することが可能で、効率良く充電を行うことができる一方、必要油圧が大きい変速比が大きな低車速側では変速速度が小さくなるように運転点を設定することにより、必要油圧が過大になることを回避できる。第4発明についても、同様である。
【0013】
【発明の実施の形態】第1発明のエンジン切離し条件は、例えばエンジン水温が所定値以上であること、変速機の油温が所定値以上であることなど、エンジンを停止してもエンジンの再始動性が損なわれることがないように予め定められるが、他の車両状態を用いてエンジン切離し条件を設定することもできる。
【0014】第2発明の変速機としては、第3発明、第4発明のようにベルト式やトロイダル型等の油圧式無段変速機が好適に用いられるが、遊星歯車装置等を用いた有段の変速機を用いることも可能である。
【0015】ジェネレータとしては、電動モータおよびジェネレータの両方の機能が得られるモータジェネレータが好適に用いられるが、電動モータの機能がないものでも良い。ジェネレータとは別に電動モータやモータジェネレータが設けられても良い。
【0016】第3発明、第4発明の運転点設定手段は、例えばモータジェネレータの最適効率ライン上で運転点を設定するように構成され、その最適効率ライン上においても一般に高回転側程効率が良いため、油圧式無段変速機の必要油圧が許容範囲を越えない範囲でできるだけ高回転側に運転点を設定するように構成される。
【0017】一方、油圧シリンダによって変速比γ(=入力軸回転速度/出力軸回転速度)やベルト張力が制御されるベルト式無段変速機は、変速比γによって必要油圧が異なるとともに、ジェネレータの運転点(ジェネレータの回転速度で変速機の入力軸回転速度に対応))に応じて定まる目標変速比γ* と現在の変速比γとの差が大きい程、また車速が小さい程変速速度が大きく、変速のために必要な変速油圧が大きくなる。したがって、元々の必要油圧が小さい変速比γが小さな高車速側では、大きな変速速度で変速比γを大きく変化させることが可能で、ジェネレータの運転点を高効率の高回転に設定して変速比γを増大側へ大きくダウンシフトさせることができる一方、必要油圧が大きい変速比γが大きな低車速側では、変速比γの変化幅、言い換えれば変速速度が小さくなるようにジェネレータの運転点を比較的低回転に設定し、変速(ダウンシフト)に伴う必要油圧の増加を小さくすることが望ましい。すなわち、前記運転点設定手段は、無段変速機の必要油圧が過大にならないように、例えば低車速側程ジェネレータの運転点(回転速度)が低回転になるように予め定められた演算式やマップなどの設定データに従って、車速に応じて運転点を設定するように構成することができる。運転点設定手段は、油圧式無段変速機の油圧特性などに応じて適宜定められる。
【0018】本発明は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンおよびモータジェネレータを走行用の動力源として備えているシリーズ型、パラレル型等の種々のハイブリッド型の車両に好適に適用される。例えば、(a) 燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと、(b) モータジェネレータと、(c) 第1回転要素に前記エンジンが連結されるとともに第2回転要素に前記モータジェネレータが連結された遊星歯車装置等の歯車式の合成分配装置と、(d) その合成分配装置から出力された動力を変速して駆動輪側へ伝達する変速機と、(e) 前記エンジンを動力伝達経路から切り離す摩擦係合装置と、を有するハイブリッド型の車両にも適用され得る。なお、第1発明〜第3発明は、少なくともエンジンを走行用の動力源として備えておれば良く、第4発明は、エンジンを備えていない電気自動車などでも良い。
【0019】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用されたハイブリッド駆動装置10を説明する概略構成図で、図2は変速機12を含む骨子図であり、このハイブリッド駆動装置10は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン14、電動モータおよびジェネレータとして用いられるモータジェネレータ16、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置18を備えて構成されている。遊星歯車装置18のサンギヤ18sにはエンジン14が連結され、キャリア18cにはモータジェネレータ16が連結され、リングギヤ18rは第1ブレーキB1を介してケース20に連結されるようになっている。また、キャリア18cは第1クラッチC1を介して変速機12の入力軸22に連結され、リングギヤ18rは第2クラッチC2を介して入力軸22に連結されるようになっている。遊星歯車装置18は合成分配装置で、サンギヤ18sは第1回転要素で、キャリア18cは第2回転要素で、リングギヤ18rは第3回転要素に相当する。また、変速機12の入力軸22は出力部材に相当する。
【0020】上記クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる湿式多板式の油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路24から供給される作動油によって摩擦係合させられるようになっている。図3は、油圧制御回路24の要部を示す図で、電動ポンプを含む電動式油圧発生装置26で発生させられた元圧PCが、マニュアルバルブ28を介してシフトレバー30(図1参照)の操作レンジに応じて各クラッチC1、C2、ブレーキB1へ供給されるようになっている。シフトレバー30は、運転者によって操作されるシフト操作部材で、本実施例では「B」、「D」、「N」、「R」、「P」の5つのレンジに選択操作されるようになっており、マニュアルバルブ28はケーブルやリンク等を介してシフトレバー30に連結され、そのシフトレバー30の操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。
【0021】「B」レンジは、前進走行時に変速機12のダウンシフトなどにより比較的大きな動力源ブレーキが発生させられる操作レンジで、「D」レンジは前進走行する操作レンジであり、これ等の操作レンジでは出力ポート28aからクラッチC1およびC2へ元圧PCが供給される。第1クラッチC1へは、シャトル弁31を介して元圧PCが供給されるようになっている。「N」レンジは動力源からの動力伝達を遮断する操作レンジで、「R」レンジは後進走行する操作レンジで、「P」レンジは動力源からの動力伝達を遮断するとともに図示しないパーキングロック装置により機械的に駆動輪の回転を阻止する操作レンジであり、これ等の操作レンジでは出力ポート28bから第1ブレーキB1へ元圧PCが供給される。出力ポート28bから出力された元圧PCは戻しポート28cへも入力され、上記「R」レンジでは、その戻しポート28cから出力ポート28dを経てシャトル弁31から第1クラッチC1へ元圧PCが供給されるようになっている。
【0022】クラッチC1、C2、およびブレーキB1には、それぞれコントロール弁32、34、36が設けられ、それ等の油圧PC1、PC2、PB1が制御されるようになっている。クラッチC1の油圧PC1についてはON−OFF弁38によって調圧され、クラッチC2およびブレーキB1の油圧PC2、PB1についてはリニアソレノイド弁40によって調圧されるようになっている。
【0023】そして、上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1の作動状態に応じて、図4に示す各走行モードが成立させられる。すなわち、「B」レンジまたは「D」レンジでは、「ETCモード」、「直結モード」、「モータ走行モード(前進)」の何れかが成立させられ、「ETCモード」では、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1および第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14およびモータジェネレータ16を共に作動させて車両を前進走行させる。「直結モード」では、クラッチC1、C2を係合するとともに第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14を作動させて車両を前進走行させる。また、「モータ走行モード(前進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を作動させて車両を前進走行させる。「ETCモード」は電気トルコンモードでエンジン・モータ走行モードに相当し、「直結モード」はエンジン直結モードに相当する。
【0024】図5は、上記前進モードにおける遊星歯車装置18の作動状態を示す共線図で、「S」はサンギヤ18s、「R」はリングギヤ18r、「C」はキャリア18cを表しているとともに、それ等の間隔はギヤ比ρ(=サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)によって定まる。具体的には、「S」と「C」の間隔を1とすると、「R」と「C」の間隔がρになり、本実施例ではρが0.6程度である。また、(a) のETCモードにおけるトルク比は、エンジントルクTe:CVT入力軸トルクTin:モータトルクTm=ρ:1:1−ρであり、モータトルクTmはエンジントルクTeより小さくて済むとともに、定常状態ではそれ等のモータトルクTmおよびエンジントルクTeを加算したトルクがCVT入力軸トルクTinになる。CVTは無段変速機の意味であり、本実施例では変速機12としてベルト式無段変速機が設けられている。
【0025】図4に戻って、「N」レンジまたは「P」レンジでは、「ニュートラル」または「充電・Eng始動モード」の何れかが成立させられ、「ニュートラル」ではクラッチC1、C2および第1ブレーキB1の何れも開放する。「充電・Eng始動モード」では、クラッチC1、C2を開放するとともに第1ブレーキB1を係合し、モータジェネレータ16を逆回転させてエンジン14を始動したり、エンジン14により遊星歯車装置18を介してモータジェネレータ16を回転駆動するとともにモータジェネレータ16を回生制御して発電し、バッテリ42(図1参照)を充電したりする。
【0026】「R」レンジでは、「モータ走行モード(後進)」または「フリクション走行モード」が成立させられ、「モータ走行モード(後進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆回転方向へ作動させて車両を後進走行させる。「フリクション走行モード」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆回転方向へ作動させて車両を後進走行させる一方、エンジン14を作動させるとともにリングギヤ18rが正方向へ回転させられる状態で第1ブレーキB1をスリップ係合させることにより、キャリア18c更には入力軸22に後進方向のアシスト力を作用させるものである。
【0027】前記変速機12はベルト式無段変速機で、その出力軸44からカウンタ歯車46を経て差動装置48のリングギヤ50に動力が伝達され、その差動装置48により左右の駆動輪52に動力が分配される。
【0028】本実施例のハイブリッド駆動装置10は、図1に示すHVECU60によって制御されるようになっている。HVECU60は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、電子スロットルECU62、エンジンECU64、M/GECU66、T/MECU68、前記油圧制御回路24のON−OFF弁38、リニアソレノイド弁40、エンジン14のスタータ70などを制御する。電子スロットルECU62はエンジン14の電子スロットル弁72を開閉制御するもので、エンジンECU64はエンジン14の燃料噴射量や可変バルブタイミング機構、点火時期などによりエンジン出力を制御するもので、M/GECU66はインバータ74を介してモータジェネレータ16の力行トルクや回生制動トルク等を制御するもので、T/MECU68は変速機12の変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )やベルト張力などを制御するものである。前記油圧制御回路24は、変速機12の変速比γやベルト張力を制御するための回路を備えており、前記電動式油圧発生装置26によって必要な油圧が発生させられるようになっている。スタータ70は電動モータで、モータ軸に設けられたピニオンをエンジン14のフライホイール等に設けられたリングギヤに噛み合わせてエンジン14をクランキングするものである。
【0029】上記HVECU60には、アクセル操作量センサ76からアクセル操作部材としてのアクセルペダル78の操作量θacを表す信号やアクセルOFF時にONとなるアイドル接点信号が供給されるとともに、シフトポジションセンサ80からシフトレバー30の操作レンジ(シフトポジション)を表す信号が供給される。ブレーキECU90からは、ブレーキペダルが踏込み操作されているか否かを表すブレーキON、OFF信号や、ブレーキ力を表すブレーキ油圧或いはペダル踏力などが供給されるようになっている。また、エンジン回転速度センサ82、モータ回転速度センサ84、入力軸回転速度センサ86、出力軸回転速度センサ88から、それぞれエンジン回転速度(回転数)Ne、モータ回転速度(回転数)Nm、入力軸回転速度(入力軸22の回転速度)Nin、出力軸回転速度(出力軸44の回転速度)Nout を表す信号がそれぞれ供給される。出力軸回転速度Nout は車速Vに対応する。この他、バッテリ42の蓄電量SOCなど、運転状態を表す種々の信号が供給されるようになっている。蓄電量SOCは単にバッテリ電圧であっても良いが、充放電量を逐次積算して求めるようにしても良い。
【0030】そして、かかるHVECU60は、基本的に図6に示す各機能を備えていて、前記図4の走行モードを実施するようになっている。図6のETCモード制御手段100は「ETCモード」を実施するもので、直結モード制御手段102は「直結モード」を実施するもので、モータ前進手段104は「モータ走行モード(前進)」を実施するもので、充電制御手段106は「充電・Eng始動モード」を実施するもので、モータ後進手段108は「モータ走行モード(後進)」を実施するもので、エンジンアシスト後進手段110は「フリクション走行モード」を実施するものであり、ETCモード制御手段100および直結モード制御手段102はエンジン前進手段112を構成している。また、モード判定手段114は、アクセル操作量θacや車速V(出力軸回転速度Nout )、蓄電量SOC、シフトレバー30のシフトポジション等に基づいて走行モードを判定し、その判定した走行モードで運転が行われるように上記各手段を切り換える。
【0031】上記直結モード制御手段102による「直結モード」では、シフトレバー30が「B」レンジへ操作されている場合であって所定車速以上の走行中にアクセル操作が解除(アクセルOFF)されたりブレーキペダルが踏込み操作(ON操作)されたりした時に、車両の運動エネルギーで回転駆動されるモータジェネレータ16を回生制御することにより、車両に回生制動力を作用させるとともにバッテリ42を充電するようになっている。すなわち、本実施例では直結モード制御手段102を中心として回生制動装置が構成されている。なお、シフトレバー30が「D」レンジの場合にも、必要に応じて同様の回生制御が行われる。
【0032】図7は、アイドル接点信号がONになったり、ブレーキペダルがON操作されたりした場合に、上記直結モード制御手段102によって実行される回生制御の作動を説明するフローチャートで、所定のサイクルタイムで繰り返し実行される。なお、この回生制御時には、エンジン14に対する燃料噴射が停止される。
【0033】図7のステップS1では、モータジェネレータ16のみによる走行が可能か否か、言い換えればエンジン14を切り離して回転停止させても良いエンジン切離し条件を満足するか否かを判断する。エンジン切離し条件は、例えばエンジン14の冷却水温が所定値以上であること、変速機12の油温が所定値以上であることなど、エンジン14を停止してもエンジン14の再始動性が損なわれることがないように予め定められている。エンジン14の冷却水温や変速機12の油温は、それぞれ温度センサにより検出され、エンジンECU64、T/MECU68を介してHVECU60に供給されるようになっている。
【0034】そして、エンジン切離し条件を満足する場合は、ステップS3で前記リニアソレノイド弁40により第2クラッチC2を開放することにより、エンジン14を動力伝達経路から切り離す。これにより、エンジン14はポンプ作用や摩擦などの自身の回転抵抗によって回転が停止する。また、ステップS4では、回生要求トルクTrqに応じてモータジェネレータ16の運転点(目標回転速度Nm* )を求め、その運転点でモータジェネレータ16が回転駆動されるようにベルト式無段変速機12の変速制御を行う。エンジン14の切離しを行わず、そのままエンジン14を連れ回ししながら回生制御を行うステップS2でも、同様に回生要求トルクTrqに応じてモータジェネレータ16の運転点(目標回転速度Nm* )を求め、その運転点でモータジェネレータ16が回転駆動されるようにベルト式無段変速機12の変速制御を行う。
【0035】図8は、上記ステップS2、S4の制御内容を具体的に説明するフローチャートで、ステップR1では、車速Vに応じて回生要求トルクTrqを算出する。運転者の回生要求トルクTrqは、一般に車速Vが高い程大きく、例えば図9に示すように予め定められたデータマップから求められる。図9は、アクセルOFF且つブレーキOFFの場合のもので、ベルト式無段変速機12の出力軸44側で見たトルクであり、ここから変速比γを考慮して入力軸22側(モータジェネレータ16側)に変換して回生制御を行う。この際、ベルト式無段変速機12の効率マップを用いて効率変換することにより、より高い精度で減速度の制御を行うこともできる。
【0036】ステップR2では、上記回生要求トルクTrqからモータジェネレータ16の運転点、すなわち目標回転速度Nm* を算出する。この運転点の算出は、例えば図10に示すように予め定められたデータマップを用いて行われ、実線で示すエンジン14を切り離した場合(ステップS4)と、一点鎖線で示すエンジン14を連れ回しする場合(ステップS2)とで別々に設定されている。エンジン14を切り離した場合は、エンジン14のイナーシャトルクが無くなるため、ベルト式無段変速機12の変速比γが大きくなるようにダウンシフトさせて入力軸回転速度Ninを増大させる際に必要な変速油圧が低くなり、それだけ運転点を高い値に設定できるのである。
【0037】上記運転点の設定に際しては、基本的には図11に示すモータジェネレータ16の効率マップに基づいて、最適効率ラインL1上で運転するように定められ、その最適効率ラインL1上においても高回転側程効率が良いため、ベルト式無段変速機12の必要油圧が許容範囲を越えない範囲で、できるだけ高回転側に運転点を設定することが望ましい。
【0038】一方、本実施例のベルト式無段変速機12は、油圧シリンダによって変速比γやベルト張力が制御されるもので、従動側油圧シリンダの油圧によってベルト張力を制御するバンドーネ型のものであり、その必要油圧は、図12に示すように変速比γが大きい程大きくなり、変速比γが大きい低車速程必要油圧が大きい。また、モータジェネレータ16の運転点すなわち入力軸回転速度Ninに応じて定まる目標変速比γ* と現在の変速比γとの差が大きい程変速速度が大きくなり、変速のための必要油圧が大きくなる。したがって、元々の必要油圧が小さい変速比γが小さな高車速側では、大きな変速速度で変速比γを大きく変化させることが可能で、モータジェネレータ16の運転点を高効率の高回転に設定して変速比γを増大側へ大きく変化させることができる一方、必要油圧が大きい変速比γが大きな低車速側では、変速比γの変化幅すなわち変速速度が小さくなるようにモータジェネレータ16の運転点を比較的低回転に設定し、変速に伴う必要油圧の増加を小さくする必要がある。
【0039】前記図10のマップは、このような観点から、ベルト式無段変速機16の必要油圧が過大にならないように設定されたもので、回生要求トルクTrqが小さい低車速側程モータジェネレータ16の運転点が低回転になるように定められている。また、この図10のマップは、ブレーキペダルの踏込み操作の有無に拘らず同じで、同じ運転点(目標回転速度Nm* )が維持され、モータジェネレータ16の回生トルクのみがブレーキ力の増減に応じて増減させられる。
【0040】図8に戻って、ステップR3ではモータジェネレータ16が運転点(目標回転速度Nm* )で回転駆動されるように、ベルト式無段変速機12の目標変速比γ* を算出する。具体的には、目標回転速度Nm* を実際の出力軸回転速度Noutで割り算することによって求められる。そして、ステップR4では、ベルト式無段変速機12の変速比γが目標変速比γ* になるように変速する変速指令がT/MECU68へ出力され、それに従って変速制御が行われる。
【0041】図13の実線は、図8のフローチャートに従ってモータジェネレータ16の運転点が求められ、ベルト式無段変速機12の変速制御が行われた場合のベルト式無段変速機12の変速速度、および回転速度Nin(=モータ回転速度Nm)、Nout の変化を示すタイムチャートの一例である。図13の一点鎖線は従来例で、車速Vの低下(出力軸回転速度Nout の低下)に伴って変速速度が増加しており、元々必要油圧が大きい変速比γが大きな低車速で、変速のために更に大きな油圧が必要になり、ポンプ負荷が許容範囲を超えたりベルト滑りが生じたりする可能性がある。
【0042】図7に戻って、ステップS5では、ベルト式無段変速機12に必要な油圧を発生する前記電動式油圧発生装置26の許容最大発生油圧、およびベルト式無段変速機12の実変速速度を算出する。許容最大発生油圧は、例えば図14に示すようにオイルポンプモータのトルク特性や、オイルポンプの容積効率およびフリクション(油温の関数)から算出され、具体的には、個々の単体性能(実機データ)をもとに、マップを持って制御する。また、ステップS6では、それ等の許容最大発生油圧および実変速速度に基づいて、ベルト式無段変速機12のベルト滑りを回避しつつ回生制御を行うことができるモータジェネレータ16の回生トルク制限値(最大値)Trgを算出する。そして、ステップS7では、回生要求トルクTrqと回生トルク制限値Trgとを比較し、Trq>Trgの場合はステップS8で、回生トルク制限値Trgでモータジェネレータ16の回生制御を実行し、Trq≦Trgの場合はステップS9で、回生要求トルクTrqでモータジェネレータ16の回生制御を実行する。これにより、ベルト式無段変速機12のベルトの滑りを確実に防止しつつ、モータジェネレータ16の回生制御が行われる。
【0043】ここで、本実施例ではエンジン14の再始動性が損なわれることがないように予め定められたエンジン切離し条件を満足するか否かを判断し、エンジン切離し条件を満足する場合に第2クラッチC2を開放して、エンジン14を動力伝達経路から切り離すようになっているため、エンジン14の再始動性の悪化による動力性能やエミッションの低下を回避しつつエンジン14を切り離して効率良くバッテリ42を充電することが可能で、エンジン14の再始動性と回生効率の両立を図ることができる。
【0044】また、モータジェネレータ16の回生制御時の運転点が、図10に示すように予め設定された2種類のマップを用いてエンジン14が切り離されたか否かによって別々に求められ、その運転点でモータジェネレータ16が回転駆動されるようにベルト式無段変速機12が変速制御されるため、エンジン14の有無に応じて適切な充電制御を行うことができる。すなわち、エンジン切離し時にはモータジェネレータ16の運転点が高回転側に設定され、エンジン14のイナーシャによる変速時の油圧増加等を回避しつつ、モータジェネレータ16を高効率の高回転側で回転駆動してバッテリ42を効率良く充電することができる。
【0045】また、上記図10の運転点を求めるマップは、ベルト式無段変速機12の必要油圧を考慮し、その必要油圧が過大にならないように設定されているため、モータジェネレータ16を運転点で回転駆動するための変速時に、必要油圧が過大になってポンプ負荷増加により燃費が悪化したり、油圧不足になってベルト滑りを生じたりすることが防止される。また、必要油圧が小さい変速比γが小さな高車速側、すなわち回生要求トルクTrqが大きい側では、モータジェネレータ16の運転点が高回転側に設定され、その高回転で回転駆動されるようにベルト式無段変速機12が変速制御されるため、効率良くバッテリ42の充電を行うことができる。
【0046】また、図10の運転点を求めるマップは、ブレーキペダルの踏込み操作の有無に拘らず同じで、同じ運転点(目標回転速度Nm* )が維持され、モータジェネレータ16の回生トルクがブレーキ力の増減に応じて増減されるだけであるため、ブレーキペダルの踏込み変化に伴う目標回転速度Nm* の変化、更にはベルト式無段変速機12の変速が防止され、制動力が安定する。
【0047】直結モード制御手段102によって行われる一連の信号処理のうち、図7のステップS1およびS3を実行する部分は、前記第2クラッチC2、リニアソレノイド弁40と共にエンジン切離し手段を構成しており、ステップS2およびS4の実行内容のうち図8のステップR1およびR2を実行する部分は運転点設定手段として機能しており、ステップR3およびR4を実行する部分はT/MECU68と共に変速制御手段を構成している。
【0048】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも本発明の一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月8日(1999.10.8)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸 (外2名)
【公開番号】 特開2001−112117(P2001−112117A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−288033