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【発明の名称】 超電導磁気浮上式鉄道の地上コイル
【発明者】 【氏名】藤原 俊輔

【氏名】村井 敏昭

【要約】 【課題】地上コイルの上側矩形部分の上辺においてのみ高調波磁界を増大させることにより、集電能力を向上させ、しかも車両側の超電導コイルに対する影響を少なくすることができる超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルを提供する。

【解決手段】超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁に配置する、矩形状コイルを上下2段に配置し8字状に結線する地上コイルにおいて、前記矩形状コイルの上側矩形の最上辺21Aの両肩部に下降部としての斜めの直線部21B,21Cを形成し、前記最上辺21Aの水平部の長さを減じ、前記矩形状コイルの垂直辺21D,21Eの上端部を、超電導磁気浮上車両に搭載される、磁気浮上時に対向する超電導コイルの上側水平辺の高さ付近に配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁に配置する、矩形状コイルを上下2段に配置し8字状に結線する地上コイルにおいて、前記矩形状コイルの上側矩形の上辺の両肩部に下降部を形成し、前記上辺の水平部の長さを減じ、前記矩形状コイルの垂直辺の上端部を、超電導磁気浮上車両に搭載される、磁気浮上時に対向する超電導コイルの上側水平辺の高さ付近に配置することを特徴とする超電導磁気浮上式鉄道の地上コイル。
【請求項2】 請求項1記載の超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルにおいて、前記矩形状コイルの上側矩形の上辺の両肩部に形成される下降部は、前記上辺から下方の垂直辺にわたる斜めの直線部からなることを特徴とする超電導磁気浮上式鉄道の地上コイル。
【請求項3】 請求項1記載の超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルにおいて、前記矩形状コイルの上側矩形の上辺の両肩部に形成される下降部は、該上辺から下方の垂直辺にわたる円弧あるいは楕円形の一部からなることを特徴とする超電導磁気浮上式鉄道の地上コイル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁に配置する浮上用あるいは浮上と案内兼用、浮上と案内と推進兼用の地上コイルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁に配置される、浮上用あるいは浮上と案内兼用、あるいは浮上と案内推進兼用の地上コイルは、これまで矩形のコイルを上下2段に並べてその上下間を8字状に結線するものが開発されてきた(例えば、特開平5−281281号公報)。
【0003】このコイルの長さは、浮上力が大きく、かつ発生する高調波磁界が小さくなるよう、定められた配置ピッチの中で極力長く取るよう設計されている。この高調波磁界は地上コイルの配置ピッチに起因するものであるが、対向する超電導磁石での発熱の原因となるので、その発熱を減らすためには小さくすることが求められる。
【0004】一方、超電導磁気浮上車両側での電源を得るために、誘導集電方式の開発が進められている(例えば、特願平11−61821号)。
【0005】これは地上コイルの発生する高調波磁界を利用して誘導集電方式により車両側で電力を得るものであり、集電能力を大きくするためには、高調波磁界が大きいことが望まれる。
【0006】このように、両者は相矛盾する要求であり、これまでは、超電導磁石の発熱を重視して設計されている。
【0007】図6はかかる従来の地上コイルの巻線形状を示す模式図である。
【0008】この図に示すように、上下2段に矩形状のコイルを配置して、互いに逆向きに、8字状の結線をしている。
【0009】このコイルを敷設したガイドウェイを超電導磁気浮上車両が通過したとき、地上コイルが発生する高調波磁界の横方向成分の振幅の上下方向への分布を計算した例が図7である。ここで、図7の横軸は地上コイルの上下方向位置(m)、縦軸は磁束密度振幅By (mT)を示し、その横軸の0は地上コイルの中心位置を示している。
【0010】図6において、1は地上コイルの上側矩形部分の上辺、2は上側矩形部分の下辺、3は下側矩形部分の上辺、4は下側矩形部分の下辺、5は上側矩形部分の垂直辺、6は下側矩形部分の垂直辺、7は上側矩形部分と下側矩形部分を結線する部分を示している。
【0011】一方、11は対向する車両側の超電導コイルの上辺、12は対向する車両側の超電導コイルの下辺、13は対向する車両側の超電導コイルの垂直辺を示している。
【0012】図7に示すように、従来の構成による地上コイルでは、高調波振幅は超電導コイルの上辺11と下辺12付近で大きくなっている。地上コイルの長さを小さくして高調波磁界を大きくすると、図7に示す横軸の全体にわたって振幅が増加し、超電導磁石への影響が増大する。
【0013】一方、地上コイルの設置数を減らし、建設費を下げるためには地上コイルの配置ピッチを大きくすることが必要である。地上コイルの配置ピッチを拡げると、高調波磁界の周波数が下がって、集電能力の減少につながり、車両上電源の確保に困難がある。
【0014】また、車両は低速では車輪によって支持されており、ある程度の速度から浮上するものであるが、浮上開始速度を低くするために、地上コイルの上側矩形コイルの高さを低くする上下非対称コイルが提案されている(特願平8−214414号公報参照)。
【0015】誘導集電は超電導磁石の上部において、鎖交磁束が多く、集電の能力が高いので、地上コイルの高さを低くすると、集電能力が下がるという問題がある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】誘導集電の集電能力を増すためには、地上コイルが発生する高調波磁界を大きくすることが必要になる。定められた配置ピッチの中で、地上コイルの長さを短くすることによって、高調波磁界を大きくすることができるが、この方法では対向する超電導磁石の全面にわたって、高調波磁界が大きくなり、超電導磁石の発熱に悪影響を及ぼす可能性が高い。
【0017】誘導集電に効果のある地上コイルの上側矩形部分の上辺においてのみ地上コイルの高調波を増すことができれば、集電能力が向上し、しかも車両側の超電導コイルに対する影響を少なくすることができる。
【0018】本発明は、上記状況に鑑みて、地上コイルの上側矩形部分の上辺においてのみ高調波磁界を増大させることにより、集電能力を向上させ、しかも車両側の超電導コイルに対する影響を少なくすることができる超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、〔1〕超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁に配置する、矩形状コイルを上下2段に配置し8字状に結線する地上コイルにおいて、前記矩形状コイルの上側矩形の上辺の両肩部に下降部を形成し、前記上辺の水平部の長さを減じ、前記矩形状コイルの垂直辺の上端部を、超電導磁気浮上車両に搭載される、磁気浮上時に対向する超電導コイルの上側水平辺の高さ付近に配置することを特徴とする。
【0020】〔2〕上記〔1〕記載の超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルにおいて、前記矩形状コイルの上側矩形の上辺の両肩部に形成される下降部は、前記上辺から下方の垂直辺にわたる斜めの直線部からなることを特徴とする。
【0021】〔3〕上記〔1〕記載の超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルにおいて、前記矩形状コイルの上側矩形の上辺の両肩部に形成される下降部は、前記上辺から下方の垂直辺にわたる円弧あるいは楕円形の一部からなることを特徴とする。
【0022】このように構成したので、本発明の請求項1における地上コイルによれば、地上コイルの上側矩形部分の上部だけが、等価的に長さの短いコイルの作用をすることになる。従って、地上コイルの長さが短ければ高調波磁界が増すという特性を利用して、高調波磁界の増大を地上コイルの上部だけに限定することができる。しかも、その等価的な長さが短い位置は、超電導磁石の上部に限定されているので、超電導磁石全体への影響は小さい。
【0023】また、本発明の請求項2及び3における地上コイルによれば、請求項1記載の地上コイルの上側矩形部分の上辺両端付近を斜めにするのに円弧あるいは楕円形の一部とすることを特徴としており、コイル製作に際し、より容易な形状である。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】図1は本発明の第1実施例を示す地上コイルの巻線形状を示す模式図、図2は本発明の第1実施例を示す超電導磁気浮上式鉄道の断面図である。
【0026】図1において、超電導磁気浮上式鉄道の地上コイル20は、超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁に配置され、上側矩形状コイル21と下側矩形状コイル22とを有しており、特に、上側矩形状コイル21は、最上辺21Aと、その上辺の下降部としての斜めの直線部21B,21Cと、垂直辺21D,21Eと、下辺21Fから構成されている。
【0027】また、下側矩形状コイル22、上側矩形状コイル21と下側矩形状コイル22とを結線する部分23は、従来の形状と同様である。
【0028】一方、超電導磁気浮上式車両に搭載される超電導磁コイルの位置を点線で示している。つまり、その超電導磁コイルの上辺位置11、下辺位置12及び垂直辺位置13となっており、地上コイル20に対向する。
【0029】超電導磁気浮上式鉄道の全体は、図2に示すようになっている。つまり、地上コイル(推進・浮上・案内用地上コイル)20は軌道30の両側壁31の凹所32に配置され、上側矩形状コイル21と下側矩形状コイル22とを備えており、超電導磁気浮上可能な車体70の台車72の両側に搭載されるクライオスタット64内の超電導コイル63を有する超電導磁石60に対向する。
【0030】なお、33は軌道路、34は車輪走行路、52は給電線兼ヌルフラックス線、59は誘導集電コイル、65はヘリウムタンク、71は空気バネ、73は台車枠、74は補助案内装置、75は補助支持装置、76は緊急着地装置を示している。
【0031】図3は本発明の第1実施例を示す地上コイルが超電導コイル位置に作る高調波磁界横方向成分の上下方向への分布の計算結果例の説明図、図4は本発明の第1実施例を示す地上コイルが誘導集電コイル位置に作る高調波磁界横方向成分の上下方向への分布の計算結果例の説明図であり、横軸は上下方向位置(m)、縦軸は磁束密度振幅By (mT)を示している。
【0032】図3には地上コイルが超電導コイル位置に作る高調波磁界が示されており、この図において、対向する車両側の超電導コイルの上辺位置11と、超電導コイルの下辺位置12の高調波磁界が示されている。
【0033】また、図4には誘導集電用コイルが存在する位置での高調波磁界が示されており、この図において、超電導コイルの上辺位置11と、超電導コイルの下辺位置12の高調波磁界が示されている。
【0034】更に、対向する車両側の超電導コイルの上辺位置11と、超電導コイルの下辺位置12、対向する車両側の誘導集電コイル59の下側矩形部分の位置15と、誘導集電コイル59の上側矩形部分の位置16の高調波磁界が示されている。
【0035】本発明の請求項2における地上コイルの実施形態について、図1、図3及び図4を用いて説明する。
【0036】その地上コイルは次のように作動する。
【0037】図1に示すように、上側矩形状コイル21は、最上辺21Aと、その上辺の下降部としての斜めの直線部21B,21Cと、垂直辺21D,21Eと、下辺21Fから構成されており、この斜めの直線部21B,21Cのようにコイル上辺の両端を斜めにすることによって、上側矩形状コイル21の最上辺21Aの上辺付近だけが等価的に長さが短くなるために、長さが短くなった部分においてのみ高調波磁界が増す。
【0038】従って、図3に示すように、高調波磁界の振幅分布を高さ方向に取ると、従来のコイルによる高調波磁界の分布である図7と比較して地上コイル上部でのみ高調波磁界の振幅が増加していることが分かる。
【0039】次に、この振幅分布を誘導集電コイルの存在する位置で見た場合、図4に示すように、高調波磁界の増加している領域がさらに限定されていて、しかもそれは誘導集電コイルの存在する位置であることが分かる。
【0040】このように、一方で高調波磁界を増加して誘導集電の電力を増加することができ、他方で超電導磁石全体に対しては、大きな影響を生じないようにすることができる。
【0041】次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0042】図5は本発明の第2実施例を示す地上コイルの巻線形状を示す模式図である。
【0043】本発明の第2実施例の地上コイルの実施形態について図5を用いて説明する。
【0044】図5において、超電導磁気浮上式鉄道の地上コイル40は、超電導磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁に配置され、上側矩形状コイル41と下側矩形状コイル42とを有しており、特に、上側矩形状コイル41は、最上辺41Aと、その上辺の下降部としての円弧あるいは楕円の一部41B,41Cと、垂直辺41D,41Eと、下辺41Fから構成されている。
【0045】また、下側矩形状コイル42、上側矩形状コイル41と下側矩形状コイル42とを結線する部分43は、従来の形状と同様である。
【0046】この実施例においては、地上コイルの上側矩形部分の上辺を短くするために、下降部を円弧あるいは楕円の一部41B,41Cの形状としている。実際の巻線作業において巻線を折り曲げて矩形コイルにするのに、直線のみの形状よりも、円弧、楕円の一部の曲線形状を挟んで成形する方が製造上容易であり利点を有する。
【0047】さらに、本発明の地上コイルは、上側矩形の上部水平辺の長さが短く、垂直辺の高さが、下側矩形の高さよりも小さくなっているので、特願平8−214414号公報参照に示されている地上コイルの上側矩形コイルの高さを低くする上下非対称コイルと同じ効果を有する。
【0048】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0049】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0050】(A)超電導磁気浮上式鉄道の地上コイルにおいて高調波磁界を局部的に増加することによって、超電導磁石に大きな影響を与えることなく、低速における車両浮上の安定性を増大させながら、誘導集電の集電電力を増やすことができる。
【0051】(B)また、このような集電能力の向上を図ることによって、地上コイルの配置個数を減らすための配置ピッチ選択の幅を増大させることができる。
【0052】(C)更に、超電導磁気浮上式車両の低速での浮上安定性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成11年9月10日(1999.9.10)
【代理人】 【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守 (外1名)
【公開番号】 特開2001−86605(P2001−86605A)
【公開日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願番号】 特願平11−256539