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【発明の名称】 車両用制動力制御装置
【発明者】 【氏名】黒田 浩一

【氏名】村本 逸朗

【氏名】出口 欣高

【要約】 【課題】制動時の制動力を安定に供給する。

【解決手段】降坂路に関する情報を入手するとともに、降坂路における回生可能なエネルギー量を演算し、エネルギー蓄積手段15の蓄積量と降坂路に関する情報とに基づいて、降坂路終点においてエネルギー蓄積手段15の蓄積量が最大となるように降坂路で回収するエネルギー量を決定し、回収エネルギー量に応じて降坂路におけるモーター4の制動力を制御する。また、減速が必要な場所に関する情報を入手し、減速が必要な場所へ到達するまでに車両を減速するのに要する所要制動力を演算するとともに、蓄電手段15の蓄電量に基づいて車両減速時にモーター4から蓄電手段へ回収可能な回生制動力を演算し、減速が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、所要制動力が回生制動力以下の場合はモーター4により所要制動力を発生させ、所要制動力が回生制動力を越える場合はモーター4により回生制動力を発生させるとともに、エンジン2により所要制動力が回生制動力を越えた分の制動力を発生させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】走行駆動源にモーターを用いる車両の制動力制御装置であって、前記モーターとの間で走行エネルギーの授受を行うエネルギー蓄積手段と、車両の現在位置と降坂路に関する情報を入手する情報入手手段と、降坂路における回生可能なエネルギー量を演算する回生可能エネルギー演算手段と、前記エネルギー蓄積手段の蓄積量と前記情報入手手段で入手した降坂路に関する情報とに基づいて、降坂路終点において前記エネルギー蓄積手段の蓄積量が最大となるように降坂路で回収するエネルギー量を決定する回収エネルギー決定手段と、前記回収エネルギー決定手段で決定した回収エネルギー量に応じて降坂路における前記モーターの制動力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項2】請求項1に記載の車両用制動力制御装置において、降坂路の勾配が変化する場合は勾配に応じて降坂路を複数の区間に区分し、前記回収可能エネルギー演算手段が各区間ごとに回収可能なエネルギー量を演算し、前記回収エネルギー決定手段が各区間ごとに回収エネルギーを決定することを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項3】請求項1に記載の車両用制動力制御装置において、降坂路で車速変化が予測される場合は車速予測値に応じて降坂路を複数の区間に区分し、前記回収可能エネルギー演算手段が各区間ごとに回収可能なエネルギー量を演算し、前記回収エネルギー決定手段が各区間ごとに回収エネルギーを決定することを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項4】請求項1に記載の車両用制動力制御装置において、降坂路の途中で車速が変化した場合は、前記回収可能エネルギー演算手段が現在地から降坂路終点までの回収可能なエネルギー量を演算し直すとともに、前記回収エネルギー決定手段が現在地から降坂路終点までの回収エネルギーを決定し直すことを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかの項に記載の車両用制動力制御装置において、前記エネルギー蓄積手段は複数の種類のエネルギー蓄積手段からなり、降坂路における回収エネルギーを前記複数種類のエネルギー蓄積手段に分散して蓄積することを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項6】請求項5に記載の車両用制動力制御装置において、前記複数種類のエネルギー蓄積手段には、回収したエネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する熱エネルギー蓄積手段が含まれることを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項7】エンジンとモーターの両方またはいずれか一方により走行駆動と制動を行う車両の制動力制御装置であって、前記モーターとの間で電力の授受を行う蓄電手段と、車両の現在位置と走行道路上の減速が必要な場所に関する情報を入手する情報入手手段と、前記減速が必要な場所へ到達するまでに車両を減速するのに要する所要制動力を演算する所要制動力演算手段と、前記蓄電手段の蓄電量に基づいて車両減速時に前記モーターから前記蓄電手段へ回収可能な回生制動力を演算する回生制動力演算手段と、前記減速が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、前記所要制動力が前記回生制動力以下の場合は前記モーターにより前記所要制動力を発生させ、前記所要制動力が前記回生制動力を越える場合は前記モーターにより前記回生制動力を発生させるとともに、前記エンジンにより前記所要制動力が前記回生制動力を越えた分の制動力を発生させる制御手段とを備えることを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項8】請求項7に記載の車両用制動力制御装置において、前記減速が必要な場所は曲線路であり、前記所要制動力演算手段は、曲線路の曲率に応じた曲線路の通過車速を求め、その通過車速まで車両を減速するのに要する所要制動力を演算することを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項9】請求項7に記載の車両用制動力制御装置において、前記減速が必要な場所は信号機設置場所であり、前記所要制動力演算手段は、信号機設置場所で停車させるのに要する所要制動力を演算することを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項10】請求項7〜9のいずれかの項に記載の車両用制動力制御装置において、前記エンジンと前記モーターの両方またはいずれか一方による制動中にブレーキペダルが踏み込まれたた時は、フットブレーキ手段によりブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させることを特徴とする車両用制動力制御装置。
【請求項11】走行駆動源にモーターを用いる車両の制動力制御装置であって、ブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生するフットブレーキ手段と、前記モーターとの間で電力の授受を行う蓄電手段と、車両の現在位置と走行道路上の停車が必要な場所に関する情報を入手する情報入手手段と、前記蓄電手段の蓄電量に基づいて車両減速時に前記モーターから前記蓄電手段へ回収可能な回生制動力を演算する回生制動力演算手段と、前記停車が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、前記モーターにより前記蓄電手段へ回収可能な回生制動力を限度とした制動力を発生させるとともに、前記フットブレーキ手段によりブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させる制御手段とを備えることを特徴とする車両用制動力制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用制動力制御装置に関し、特に、制動力の安定性を改善したものである。
【0002】
【従来の技術】走行駆動源にモーターを用いるハイブリッド自動車や電気自動車では、車両制動時にモーターにより回生制動を働かせ、走行エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに回収することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の車両では、制動時にバッテリーが満充電状態になるとそれ以上、回生制動を継続することができなくなり、回生制動力が消失して減速力が急に低下するという問題がある。
【0004】本発明の目的は、制動時の制動力を安定に供給することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明の第1の実施の形態の構成を示す図1および図2に対応づけて請求項1〜4の発明を説明すると、(1) 請求項1の発明は、走行駆動源にモーター4を用いる車両の制動力制御装置であって、モーター4との間で走行エネルギーの授受を行うエネルギー蓄積手段15と、車両の現在位置と降坂路に関する情報を入手する情報入手手段34、35と、降坂路における回生可能なエネルギー量を演算する回生可能エネルギー演算手段16と、エネルギー蓄積手段15の蓄積量と情報入手手段34、35で入手した降坂路に関する情報とに基づいて、降坂路終点においてエネルギー蓄積手段15の蓄積量が最大となるように降坂路で回収するエネルギー量を決定する回収エネルギー決定手段16と、回収エネルギー決定手段16で決定した回収エネルギー量に応じて降坂路におけるモーター4の制動力を制御する制御手段16、12とを備える。
(2) 請求項2の車両用制動力制御装置は、降坂路の勾配が変化する場合は勾配に応じて降坂路を複数の区間に区分し、回収可能エネルギー演算手段16によって各区間ごとに回収可能なエネルギー量を演算し、回収エネルギー決定手段16によって各区間ごとに回収エネルギーを決定するようにしたものである。
(3) 請求項3の車両用制動力制御装置は、降坂路で車速変化が予測される場合は車速予測値に応じて降坂路を複数の区間に区分し、回収可能エネルギー演算手段16によって各区間ごとに回収可能なエネルギー量を演算し、回収エネルギー決定手段16によって各区間ごとに回収エネルギーを決定するようにしたものである。
(4) 請求項4の車両用制動力制御装置は、降坂路の途中で車速が変化した場合は、回収可能エネルギー演算手段16によって現在地から降坂路終点までの回収可能なエネルギー量を演算し直すとともに、回収エネルギー決定手段16によって現在地から降坂路終点までの回収エネルギーを決定し直すようにしたものである。発明の第1の実施の形態の変形例の構成を示す図7に対応づけて請求項5〜6の発明を説明すると、(5) 請求項5の車両用制動力制御装置は、エネルギー蓄積手段が複数の種類のエネルギー蓄積手段15,43からなり、降坂路における回収エネルギーを複数種類のエネルギー蓄積手段15,43に分散して蓄積するようにしたものである。
(6) 請求項6の車両用制動力制御装置は、複数種類のエネルギー蓄積手段には、回収したエネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する熱エネルギー蓄積手段43が含まれる。発明の第2の実施の形態の構成を示す図1および図2に対応づけて請求項7〜10の発明を説明すると、(7) 請求項7の発明は、エンジン2とモーター4の両方またはいずれか一方により走行駆動と制動を行う車両の制動力制御装置であって、モーター4との間で電力の授受を行う蓄電手段15と、車両の現在位置と走行道路上の減速が必要な場所に関する情報を入手する情報入手手段34、35と、減速が必要な場所へ到達するまでに車両を減速するのに要する所要制動力を演算する所要制動力演算手段16と、蓄電手段15の蓄電量に基づいて車両減速時にモーター4から蓄電手段15へ回収可能な回生制動力を演算する回生制動力演算手段16と、減速が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、所要制動力が回生制動力以下の場合はモーター4により所要制動力を発生させ、所要制動力が回生制動力を越える場合はモーター4により回生制動力を発生させるとともに、エンジン2により所要制動力が回生制動力を越えた分の制動力を発生させる制御手段16、12とを備える。
(8) 請求項8の車両用制動力制御装置は、減速が必要な場所は曲線路であり、所要制動力演算手段16は、曲線路の曲率に応じた曲線路の通過車速を求め、その通過車速まで車両を減速するのに要する所要制動力を演算するようにしたものである。
(9) 請求項9の車両用制動力制御装置は、減速が必要な場所は信号機設置場所であり、所要制動力演算手段16は、信号機設置場所で停車させるのに要する所要制動力を演算するようにしたものである。
(10) 請求項10の車両用制動力制御装置は、エンジン2とモーター4の両方またはいずれか一方による制動中にブレーキペダルが踏み込まれたた時は、フットブレーキ手段6によりブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させるようにしたものである。発明の第3の実施の形態の構成を示す図1および図2に対応づけて請求項11の発明を説明すると、(11) 請求項11の発明は、走行駆動源にモーター4を用いる車両の制動力制御装置であって、ブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生するフットブレーキ手段6と、モーター4との間で電力の授受を行う蓄電手段15と、車両の現在位置と走行道路上の停車が必要な場所に関する情報を入手する情報入手手段34、35と、蓄電手段15の蓄電量に基づいて車両減速時にモーター4から蓄電手段15へ回収可能な回生制動力を演算する回生制動力演算手段16と、停車が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、モーター4により蓄電手段15へ回収可能な回生制動力を限度とした制動力を発生させるとともに、フットブレーキ手段6によりブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させる制御手段16、12とを備える。
【0006】上述した課題を解決するための手段の項では、説明を分かりやすくするために一実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が一実施の形態に限定されるものではない。
【0007】
【発明の効果】(1) 請求項1の発明によれば、降坂路に関する情報を入手するとともに、降坂路における回生可能なエネルギー量を演算し、エネルギー蓄積手段の蓄積量と降坂路に関する情報とに基づいて、降坂路終点においてエネルギー蓄積手段の蓄積量が最大となるように降坂路で回収するエネルギー量を決定し、回収エネルギー量に応じて降坂路におけるモーターの制動力を制御するようにしたので、降坂路全範囲において均一な回生制動力を得ることができ、降坂路の途中でエネルギー蓄積手段の蓄積量が最大になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態を避けることができる。
(2) 請求項2の発明によれば、降坂路の勾配が変化する場合は勾配に応じて降坂路を複数の区間に区分し、各区間ごとに回収可能なエネルギー量を演算するとともに、各区間ごとに回収エネルギーを決定するようにしたので、道路勾配に応じた回生制動力を得ることができ、降坂路の途中でエネルギー蓄積手段の蓄積量が最大になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態を避けることができる。
(3) 請求項3の発明によれば、降坂路で車速変化が予測される場合は車速予測値に応じて降坂路を複数の区間に区分し、各区間ごとに回収可能なエネルギー量を演算するとともに、各区間ごとに回収エネルギーを決定するようにしたので、車速に応じた回生制動力を得ることができ、従来のエンジンで走行する車両のエンジンブレーキ力と同等な降坂路の運転感覚を実現できる上に、降坂路の途中でエネルギー蓄積手段の蓄積量が最大になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態を避けることができる。
(4) 請求項4の発明によれば、降坂路の途中で車速が変化した場合は、現在地から降坂路終点までの回収可能なエネルギー量を演算し直すとともに、現在地から降坂路終点までの回収エネルギーを決定し直すようにしたので、降坂路の途中で車速が変化しても、車速に応じた回生制動力を得ることができ、従来のエンジンで走行する車両のエンジンブレーキ力と同等な降坂路の運転感覚を実現できる上に、降坂路の途中でエネルギー蓄積手段の蓄積量が最大になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態を避けることができる。
(5) 請求項5および請求項6の発明によれば、降坂路における回収エネルギーを、回収したエネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する熱エネルギー蓄積手段を含む複数種類のエネルギー蓄積手段に分散して蓄積するようにしたので、降坂路においてより多くの走行エネルギーを回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる上に、回収したエネルギーを車両用空調装置などの補機類で効率よく利用することができる。
(6) 請求項7の発明によれば、減速が必要な場所に関する情報を入手し、減速が必要な場所へ到達するまでに車両を減速するのに要する所要制動力を演算するとともに、蓄電手段の蓄電量に基づいて車両減速時にモーターから蓄電手段へ回収可能な回生制動力を演算し、減速が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、所要制動力が回生制動力以下の場合はモーターにより所要制動力を発生させ、所要制動力が回生制動力を越える場合はモーターにより回生制動力を発生させるとともに、エンジンにより所要制動力が回生制動力を越えた分の制動力を発生させるようにしたので、減速が必要な場所へ到達するまでの間、安定な制動力を供給することができ、減速途中で蓄電手段が満充電状態になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態が避けられる。
(7) 請求項8の発明によれば、曲線路の曲率に応じた曲線路の通過車速を求め、その通過車速まで車両を減速するのに要する所要制動力を演算するようにしたので、請求項7の上記効果に加え、曲線路を安全に通過できる車速まで確実に車両を減速させることができる。
(8) 請求項9の発明によれば、信号機設置場所で停車させるのに要する所要制動力を演算するようにしたので、請求項7の上記効果に加え、信号機設置場所で確実に停車させることができる。
(9) 請求項10の発明によれば、エンジンとモーターの両方またはいずれか一方による制動中にブレーキペダルが踏み込まれたた時は、フットブレーキ手段によりブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させるようにしたので、乗員の制動意志を優先した制動力制御を実現できる。
(10) 請求項11の発明によれば、停車が必要な場所に関する情報を入手し、蓄電手段の蓄電量に基づいて車両減速時にモーターから蓄電手段へ回収可能な回生制動力を演算し、停車が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、モーターにより蓄電手段へ回収可能な回生制動力を限度とした制動力を発生させるとともに、フットブレーキ手段によりブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させるようにしたので、走行エネルギーを回収しながら確実に停車させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明を、エンジンとモーターの両方またはいずれか一方の駆動力により走行するパラレル・ハイブリッド車両に適用した一実施の形態を説明する。なお、本発明はパラレル・ハイブリッド車両に限定されず、シリーズ・ハイブリッド車両や電気自動車にも適用することができる。
【0009】《発明の第1の実施の形態》図1、図2に第1の実施の形態の構成を示す。図1において、太い実線は機械力の伝達経路を示し、細い実線は電力線を示す。また、細い破線は制御線を示す。この車両のパワートレインは、モーター1、エンジン2、電磁クラッチ3、モーター4、無段変速機5、フットブレーキ装置6、および駆動輪7から構成される。なお、減速機、差動装置、および他方のブレーキと駆動輪の図示を省略する。エンジン2とモーター4との間にはクラッチ3が介装されており、モーター1の出力軸と、エンジン2の出力軸と、クラッチ3の入力軸とが互いに連結されるとともに、クラッチ3の出力軸と、モーター4の出力軸と、無段変速機5の入力軸とが互いに連結される。なお、ハイブリッド車両のパワートレインの構成はこの実施の形態に限定されない。
【0010】クラッチ3の締結時にはエンジン2のみ、またはエンジン2とモーター4が車両の推進源となり、クラッチ3の解放時にはモーター4のみが車両の推進源となる。エンジン2とモーター4のいずれか一方または両方の駆動力は動力伝達機構、すなわち無段変速機5、減速装置(不図示)および差動装置(不図示)を介して駆動輪7へ伝達される。無段変速機5には油圧装置9から圧油が供給され、ベルトのクランプと潤滑がなされる。油圧装置9のオイルポンプ(不図示)はモーター10により駆動される。
【0011】モータ1,4,10は三相同期電動機または三相誘導電動機である。通常、モーター1はエンジン2の始動と発電に用いられ、モーター4は車両の推進と発電制動に用いられる。モーター10は油圧装置9のオイルポンプ駆動用である。なお、モーター1,4,10には交流機に限らず直流電動機を用いることもできる。
【0012】クラッチ3はパウダークラッチであり、伝達トルクを調節することができる。なお、このクラッチ3に乾式単板クラッチや湿式多板クラッチを用いることもできる。無段変速機5はベルト式やトロイダル式などの無段変速機であり、変速比を無段階に調節することができる。フットブレーキ装置6はブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生する。
【0013】モーター1,4,10はそれぞれインバーター11,12,13により駆動される。インバーター11〜13は共通のDCリンク14を介してメインバッテリー15に接続されており、メインバッテリー15の直流充電電力を交流電力に変換してモーター1,4,10へ供給するとともに、モーター1,4の交流発電電力を直流電力に変換してメインバッテリー15を充電する。なお、インバーター11〜13は互いにDCリンク14を介して接続されているので、回生運転中のモーターにより発電された電力をメインバッテリー15を介さずに直接、力行運転中のモーターへ供給することができる。メインバッテリー15には、リチウム・イオン電池、ニッケル・水素電池、鉛電池などの各種電池や、電機二重層キャパシターいわゆるパワーキャパシターを用いることができる。
【0014】コントローラー16は、マイクロコンピューターとその周辺部品や各種アクチュエータなどを備え、エンジン2の回転速度や出力トルク、クラッチ3の伝達トルク、モーター1,4,10の回転速度や出力トルク、無段変速機5の変速比、ブレーキ6の制動力などを制御する。
【0015】コントローラー16には、図2に示すように、キースイッチ20、セレクトレバースイッチ21、アクセル開度センサー22、ブレーキスイッチ23、車速センサー24、バッテリー温度センサー25、バッテリーSOC検出装置26、エンジン回転センサー27、スロットル開度センサー28が接続される。
【0016】キースイッチ20は車両のキーがON位置またはSTART位置に設定されるとオン(閉路)する。セレクトレバースイッチ21はパーキングP、ニュートラルN、リバースR、ドライブDの各スイッチを備え、車両のセレクトレバー(不図示)の設定位置に応じたスイッチがオンする。アクセル開度センサー22はアクセルペダル(不図示)の踏み込み量を検出し、ブレーキスイッチ23はブレーキペダル(不図示)の踏み込み状態を検出する。車速センサー24は車両の走行速度を検出し、バッテリー温度センサー25はメインバッテリー15の温度を検出する。また、バッテリーSOC検出装置26はメインバッテリー15の充電状態SOCを検出し、エンジン回転センサー27はエンジン2の回転速度を検出する。さらに、スロットル開度センサー28はエンジン2のスロットルバルブ開度を検出する。
【0017】コントローラー16にはまた、エンジン2の燃料噴射装置30、点火装置31、バルブタイミング調整装置32、スロットルバルブ調整装置33、ナビゲーション装置34、走行履歴記録装置35、補助バッテリー36が接続される。コントローラー16は燃料噴射装置30を制御してエンジン2への燃料の供給と停止および燃料噴射量を調節するとともに、点火装置31を制御してエンジン2の点火を行い、バルブタイミング調整装置32を制御してエンジン2の吸気バルブの閉時期を調節する。コントローラー16はさらに、スロットルバルブ調整装置33を制御してエンジン2のトルクを調節するとともに、インバーター11、12、13を制御してモーター1、4、10のトルクと回転速度を調節する。
【0018】ナビゲーション装置34は、GPS受信機により現在地を検出する衛星航法装置と、ジャイロコンパスなどにより走行経路を検出する自立航法装置と、ビーコン受信機により交通情報や道路情報を受信する路車間通信装置(VICSやFM多重放送など)と、道路地図データベースとを備え、目的地までの経路を探索するとともに、探索経路上の道路状況を検出する。走行履歴記録装置35は、走行経路の道路状況と運転者ごとの走行パターンを記録する。補助バッテリー36はコントローラー16などの制御機器へ電源を供給する。
【0019】図3は、降坂路におけるバッテリーSOCの変化(a)とエネルギー回生量(回生仕事率)(b)を示す。図3を参照して第1の実施の形態の制動力制御を説明する。エンジンのみの駆動力により走行する従来のエンジン車両では、降坂路でアクセルペダルを開放するとエンジンブレーキが作動する。ハイブリッド車両においても、降坂路におけるアクセル解放時に従来のエンジン車両と同様な運転感覚を実現するために、モーターを回生運転して回生制動力を発生させる。ところが、降坂路の途中でバッテリーが満充電状態になると、それ以上、モーターの回生運転を継続することができなくなり、回生制動力が消失して減速力が急に低下し、車速が増加することもある。
【0020】そこで、この第1の実施の形態では、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から降坂路に関する情報を入手し、降坂路の終点でバッテリーが満充電状態となるように、降坂路全範囲における回生制動力を平均化する。降坂路の始点においてすでにバッテリーが満充電に近い状態にある場合には、平均化される降坂路全範囲の回生制動力は小さくなるが、少なくとも降坂路の途中でバッテリーが満充電状態となり、回生制動力が消失して減速力が急に低下し、車速が増加するような事態は避けられる。
【0021】降坂路における回生可能な仕事率w1[kw]は次式で求められる。
【数1】w1=F・vsp,F=μ・M・g+(ρ・Cd・A・vsp2)/2+M・acc+M・g・sinθここで、μは転がり抵抗係数、Mは車重[kg]、gは重力加速度[m/s2]、ρは空気密度[kg/m3]、Cdは空気抵抗係数、Aは前影投影面積[m2]、vspは車速センサー24による車速検出値[m/s2]、accは車両の加速度[m/s2]、θは降坂路の勾配[rad]である。
【0022】また、降坂路の始点または途中における現在のメインバッテリー15の充電可能な仕事量(充電可能容量)wb[kwh]は次式で求められる。
【数2】
wb=Bc・(SOCulim−SOC)/100ここで、Bcはメインバッテリー15の定格容量[kwh]、SOCulimは通常使用時のSOCの上限値[%]、SOCはバッテリーSOC検出器26による検出値である。
【0023】降坂路における回生可能な仕事率w1をすべてモーター4で回生し、メインバッテリー15を充電するものとすると、メインバッテリー15が満充電になるまでの所要時間t1[sec]は次式で得られる。
【数3】t1=wb/w1/3600【0024】ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から得た降坂路の終点までの距離L[km]と車速vsp[km/h]とから、降坂路の通過に要する時間TL[sec]は次式で求められる。
【数4】TL=L/vsp/3600【0025】降坂路の通過時間TLがメインバッテリー15が満充電状態になるまでの時間t1より長いと、図3に示すように降坂路の途中でメインバッテリー15が満充電状態になり、回生制動力が消失して急に減速力が低下する。この第1の実施の形態では、降坂路の終点でメインバッテリー15が満充電状態となるように、降坂路全範囲における回生制動力を平均化する。降坂路通過時間TL[sec]の間にメインバッテリー15の充電可能容量wb[kwh]を充電し、降坂路の終点で満充電状態にするための実際の回生仕事率w1’[kw]は、次式で求められる。
【数5】w1’=Wb/TL/3600【0026】モーター4で降坂路の始点から終点までこの仕事率w1’[kw]の回生運転を行うことによって、降坂路全範囲において均一な回生制動力を得ることができ、降坂路の途中でメインバッテリー15が満充電状態になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態が避けられる。
【0027】図4は、降坂路の途中に道路勾配や走行速度の変化があって回生可能な仕事率w1〜wnが変化する場合の、メインバッテリー15への実際の回生仕事率w1’〜wn’の決定方法を示す。まず、ナビゲーション装置34から得た勾配(b)などの降坂路に関する情報や、走行履歴記録装置35に記録されている走行経路や道路種別ごとの過去の平均的な速度パターンなどに基づいて、降坂路を複数の区間に区分し、各区間の走行速度パターン(a)を予測する。そして、各区間における回生可能な仕事率w1〜wnを上記数式1により求める。
【0028】各区間におけるメインバッテリー15への実際の回生仕事率w1’〜wn’を、各区間の回生可能な仕事率w1〜wnに応じて決定するものとすると、【数6】
w1/w1’=w2/w2’=・・・=wn/wn’また、メインバッテリー15の充電可能な容量wb[kwh]は、各区間における充電可能な容量の総和であるから、【数7】wb=w1’・t1+w2’・t2+・・・+wn’・tnしたがって、各区間におけるメインバッテリー15への実際の回生仕事率wn’(n=1,2,・・)を次式で求めることができる。
【数8】wn’=wn・wb/(w1・t1+w2・t2+・・・+wn・tn)
【0029】このように、降坂路の途中に道路勾配や走行速度の変化があって回生可能な仕事率が変化する場合には、道路勾配や走行速度に応じて降坂路を複数の区間に区分し、降坂路の終点においてメインバッテリー15が満充電状態になるように、各区間ごとの回生可能な仕事率に応じてメインバッテリー15への実際の回生仕事率を決定するようにしたので、道路勾配や走行速度に応じた回生制動力を得ることができ、降坂路の途中でメインバッテリー15が満充電状態になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態が避けられる。
【0030】図5は、降坂路の途中に道路勾配や走行速度の変化があって回生可能な仕事率w1〜wnが変化する場合の、メインバッテリー15への実際の回生仕事率w1’〜wn’の他の決定方法を示す。まず、上述した図4に示す場合と同様に、ナビゲーション装置34から得た勾配などの降坂路に関する情報や、走行履歴記録装置35に記録されている走行経路や道路種別ごとの過去の平均的な速度パターンなどに基づいて、降坂路を複数の区間に区分し、各区間の走行速度パターンを予測する。また、各区間における回生可能な仕事率w1〜wnを上記数式1により求める。さらに、降坂路の回生可能な仕事率の平均値waを次式により求める。
【数9】
wa=wb/(t1+t2+・・・+tn)/3600【0031】次に、区間nのように、回生可能な仕事率wnが平均値wa以下の場合は、回生可能な仕事率wnをそのままメインバッテリー15へ実際に回生するものとする。また、区間1のように回生可能な仕事率w1が平均値waより大きい場合は、区間nの斜線部のような実際の回生仕事率wnと平均値waとの差分を考慮した仕事率wn’をメインバッテリー15へ回生する。すなわち、【数10】wn’=wa+{(wa−wn1)・tn1+・・・+(wa−wnn)・tnn}/(tm1+・・・+tmn)
ここで、n1〜nnは回生可能な仕事率が平均値wa以下の区間の番号を示し、m1〜mnは回生可能な仕事率が平均値waより大きい区間の番号を示す。
【0032】このように、各区間ごとのメインバッテリー15への実際の回生仕事率wn’(n=1,2,・・)を決定することによって、上述した図4に示す場合と同様に、道路勾配や走行速度に応じた回生制動力を得ることができ、降坂路の途中でメインバッテリー15が満充電状態になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態が避けられる。
【0033】図6は、降坂路における制動力制御プログラムを示すフローチャートである。このフローチャートにより、第1の実施の形態の動作を説明する。コントローラー16は、所定時間ごとにこの制動力制御プログラムを実行する。ステップ1において、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から現在地周辺の道路データを読み込み、現在地が降坂路の開始地点であるかどうかを確認する。また、すでに現在地が降坂路の途中にあって、走行速度が所定値、例えば10km/h以上変化したかどうかを確認する。現在地が降坂路の始点にあるか、または降坂路の途中で走行速度が所定値以上変化した場合はステップ2へ進み、いずれにも該当しない場合は処理を終了する。
【0034】ステップ2では、数式1により降坂路における回生可能な仕事率w1[kw]を求め、さらに、数式2により現在のメインバッテリー15の充電可能な仕事量wb[kwh]を求める。そして、降坂路における回生可能な仕事率w1[kw]をすべてモーター4で回生し、メインバッテリー15を充電するものとした場合の、メインバッテリー15が満充電になるまでの所要時間t1[sec]を数式3により求める。
【0035】ステップ3で、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から得た降坂路に関する情報の中から降坂路の終点までの距離L[km]を読み込み、続くステップ4で、車速センサー24により検出した走行速度vsp[km/h]と降坂路終点までの距離L[km]とに基づいて、数式4により降坂路終点までの所用時間TL[sec]を求める。そして、ステップ5において、回生可能な仕事率w1をすべてメインバッテリー15へ回生する場合の満充電になるまでの時間t1[sec]と、降坂路終点までの所要時間TL[sec]とを比較する。満充電までの時間t1が降坂路所要時間TL以上長い場合は、降坂路における回生可能な仕事率w1をすべて回生しても、降坂路途中でメインバッテリー15が満充電状態になることはないので、ステップ9へ進む。ステップ9では、降坂路における回生可能な仕事率w1をすべて回生するようにインバーター12を制御し、モーター4を回生運転する。
【0036】一方、満充電までの時間t1が降坂路所要時間TLより短い場合は、降坂路の途中でメインバッテリー15が満充電になってしまうので、回生可能な仕事率w1をすべて回生せずに、メインバッテリー15へ回生する仕事率を決定するためにステップ6へ進む。ステップ6では、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置25から降坂路に関する情報を読み込み、途中に勾配の変化、あるいは走行速度の変化の要因となる渋滞や、道路の種別、幅員、車線数および曲率などの有無を確認する。勾配変化や走行速度変化の要因がある場合はステップ8へ進み、勾配の変化もなく一定速度で走行できる場合はステップ7へ進む。
【0037】勾配の変化もなく一定速度で走行できる場合は、図3により説明した方法によりメインバッテリー15の実際の回生仕事率w1’を求める。すなわち、ステップ7で、現時点でメインバッテリー15を充電可能な仕事量wb[kwh]と降坂路終点までの所要時間TL[sec]に基づいて、数式5により降坂路の終点で満充電とする実際の回生仕事率w1’を求める。そして、ステップ9ヘ進み、回生仕事率w1’を回生するようにインバーター12を制御し、モーター4を回生運転する。
【0038】一方、勾配変化や走行速度変化の要因がある場合は、降坂路途中での道路勾配や走行速度の変化により回生可能な仕事率が変化するので、図4または図5により説明した方法により区間ごとのメインバッテリー15の実際の回生仕事率wn’(n=1,2,・・)を求める。すなわち、ステップ8で、道路勾配や走行速度に応じて降坂路を複数の区間に区分し、降坂路の終点においてメインバッテリー15が満充電の状態になるように、数式6〜8(図4の方法)または数式9〜10(図5の方法)により、各区間ごとの回生可能な仕事率に応じてメインバッテリー15への実際の回生仕事率wn’(n=1,2,・・)を決定する。そして、ステップ9ヘ進み、回生仕事率w1’を回生するようにインバーター12を制御し、モーター4を回生運転する。
【0039】なお、上述した第1の実施の形態では、降坂路においてモーター4による回生制動力のみにより走行する例を示したが、メインバッテリー15へ実際に回生できる仕事率が少なくても道路勾配や走行速度に応じた制動力を確保するために、車両の加速度が所定の加速度以内、例えば0.06G以内になるように無段変速機5の変速比を制御することによってエンジン2による制動力でアシストするようにしてもよい。
【0040】《発明の第1の実施の形態の変形例》降坂路における回生可能な仕事率をすべて回生できない場合に、余剰分の回生仕事率を熱エネルギーに変換してアキュームレーターに蓄熱し、蓄熱した熱エネルギーを車両用空調装置において利用するようにした変形例を説明する。
【0041】図7は変形例の構成を示す。なお、図1に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。コンプレッサー41はエンジン2の出力軸に連結され、車両用空調装置の圧縮冷凍サイクル(不図示)を循環する冷媒を圧縮または膨張させる。また、熱交換器42は冷媒とアキュームレーター43との間で熱交換を行う。さらに、アキュームレーター43は蓄熱材を備え、冷熱または温熱を蓄積する。
【0042】図6のステップ7またはステップ8において、降坂路における回生可能な仕事率w1と、メインバッテリー15への実際の回生仕事率w1’またはwn’との差分の仕事率(w1−w1’)または(w1−wn’)をコンプレッサー41と熱交換器42により熱エネルギーに変換し、アキュームレーター43へ蓄える。
【0043】このように、降坂路における余剰分の回生可能な仕事率を熱エネルギーに変換してアキュームレーターに蓄積し、車両用空調装置に利用するようにしたので、降坂路における回生可能なエネルギーをより多く回収することができ、燃費を総合的に向上させることができる。
【0044】なお、この変形例では余剰分の回生仕事率を熱エネルギーに変換してアキュームレーターに蓄熱する例を示したが、余剰分の回生仕事率を蓄積するためのエネルギー蓄積手段はこの変形例に限定されない。
【0045】《発明の第2の実施の形態》エンジンのみの駆動力により走行する従来のエンジン車両では、カーブや信号機設置場所などの減速が必要な場所(以下、単に減速場所と呼ぶ)では、アクセルペダルを開放してエンジンブレーキをかけるとともに、必要に応じてブレーキペダルを踏み込んでフットブレーキをかけている。ハイブリッド車両においても、カーブや信号機の手前のアクセル解放時に従来のエンジン車両と同等な運転感覚を実現するため、モーターを回生運転して回生制動力を発生させるとともに、ブレーキペダルが踏み込まれた時にはフットブレーキも作動させる。
【0046】ところがこの時、メインバッテリーの充電可能容量が少なく充分な回生能力がないと、回生制動力が不足したり、制動途中でメインバッテリーが満充電状態になって回生制動力が消失することがある。そこで、カーブや信号機設置場所などの減速場所において、メインバッテリーの充電可能容量に応じたモーターの回生制動力だけでは制動力が不足する場合に、エンジンブレーキにより不足分を補うとともに、ブレーキペダルが踏み込まれたらさらにフットブレーキを作動させるようにした第2の実施の形態を説明する。なお、この第2の実施の形態の構成は図1および図2に示す構成と同様であり、説明を省略する。
【0047】ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から走行道路に関する情報を読み出し、カーブまたは信号機までの距離Lc[m]とカーブの曲率半径Rc[m]を求める。カーブの場合は、例えば図8に示す官能評価実験で得られたカーブ曲率半径Rc[m]に対するカーブ通過車速Vc[km/h]の相関関係に基づいて、曲率半径Rcに対応する通過車速Vcを推定する。なお、カーブの通過車速Vcの推定方法はこの実施の形態に限定されない。一方、走行道路の先に信号機がある場合は、信号機が”赤”の時は停車しなければならないので、通過車速Vcを0とする。
【0048】次に、現在地からカーブまたは信号機まで到達するのに要する時間tc[sec]は、現在地の車速vsp[km/h]とカーブの通過車速Vc[km/h](信号機の場合はVc=0)とに基づいて次式により求められる。
【数11】tc=2・Lc/(vsp+Vc)
【0049】また、通過車速Vc[km/h]と、カーブまたは信号機までの距離Lc[m]および到達所要時間tc[sec]と、現在の車速vsp[km/h]とに基づいて、カーブまたは信号機の通過車速Vcまで車両を減速するのに必要な制動トルクTd[Nm]を求める。この制動トルクTdは車両が受ける抵抗、すなわち転がり抵抗、空気抵抗、加速抵抗および勾配抵抗との釣り合いの式を用いて求める。
【数12】F=μ・M・g+(ρ・Cd・A・vsp2)/2+acc・M+M・g・sinθ,Td=F・r/GR/η,acc=(Vc−vsp)/tcここで、rは駆動輪7の半径[m]、GRは無段変速機5の変速比、減速機(不図示)の減速比および差動装置(不図示)の減速比を合成した合成減速比、ηは無段変速機5、減速機および差動装置の伝達効率である。
【0050】さらに、現時点におけるメインバッテリー15の充電可能な仕事量(充電可能容量)wb[kwh]は数式2により得られるから、現在地から減速場所までの所要時間tcに、メインバッテリー15への電力回生によってモーター4で発生可能な制動トルクRd[Nm]は次式により求められる。
【数13】Rd=60・wb・GR・η/(2π・1000・tc・εin・Na)
ここで、εinはメインバッテリー15の充電効率であり、Naはモーター4の回転速度[rpm]である。
【0051】そして、カーブまたは信号機設置場所などの減速場所までに車両を減速するのに要する制動トルクTd[Nm]と、モーター4により回生可能な制動トルクRd[Nm]とを比較し、回生可能な制動トルクRdが所要制動トルクTd以上の場合はモーター4による回生制動により減速する。一方、回生可能な制動トルクRdが所要制動トルクTdより小さい場合は、モーター4による回生制動で不足する制動力(Td−Rd)を、無段変速機5の変速比を調節してエンジンブレーキにより補う。
【0052】図9は、エンジン2のスロットルバルブ全閉時の回転数Ne[rpm]に対するブレーキトルクTe[Nm]の特性を示す。コントローラー16は、燃料噴射装置30、点火装置31、バルブタイミング調整装置32およびスロットルバルブ調整装置33を制御して、エンジン2から次式を満たすエンジンブレーキトルクTe[Nm]を出力させる。
【数14】(Td−Rd)=Te・GR・η【0053】なお、カーブまたは信号機設置場所などの減速場所でブレーキペダルが踏み込まれた場合は、乗員の制動意志を優先するため、モーター4とエンジン2による制動力に加え、ブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力をフットブレーキ装置6により発生させる。
【0054】このように、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35からカーブや信号機設置場所などの減速が必要な場所の情報を入手し、減速場所へ到達するまでに車両を減速するのに要する所要制動トルクTdを演算するとともに、メインバッテリー15の充電可能容量wbに基づいて車両減速時にモーター4からメインバッテリー15へ回収可能な回生制動力を演算し、減速場所へ到達するまで車両を減速する時に、所要制動トルクTdが回生制動トルクRd以下の場合はモーター4により所要制動トルクTdを発生させ、所要制動トルクTdが回生制動トルクRdを越える場合はモーター4により回生制動力を発生させるとともに、エンジン2により所要制動トルクTdが回生制動トルクRdを越えた分の制動トルク(Td−Rd)を発生させるようにしたので、減速場所へ到達するまでの間、安定な制動力を供給することができ、減速途中でメインバッテリー15が満充電状態になって回生制動力が消失し、減速力が急に低下するような事態が避けられる。
【0055】図10は、カーブや信号機設置場所などの減速場所での制動力制御プログラムを示すフローチャートである。このフローチャートにより、第2の実施の形態の動作を説明する。コントローラー16は、所定時間ごとにこの制動力制御プログラムを実行する。ステップ11において、アクセル開度センサー22によりアクセルペダルが開放されているかどうかを検出し、アクセルペダルが踏み込まれている場合は乗員に加速意志があると判断してこの制動力制御プログラムの実行を終了する。アクセルペダルが開放されている時はステップ12へ進み、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から入手した走行道路に関する情報に基づいて、所定距離、例えば300m前方にカーブまたは信号機などの減速場所があるかどうかを確認する。この実施の形態では、曲率半径Rc[m]が所定値、例えば100m以下のカーブだけをカーブとして扱う。減速場所がない場合はこの制動力制御プログラムの実行を終了する。
【0056】一方、アクセルペダルが開放され、且つ、走行道路の先にカーブまたは信号機などの減速場所がある場合はステップ13へ進み、上述したようにカーブの曲率半径Rc[m]に応じて通過車速Vc[km/h]を推定する。なお、走行道路の先に信号機がある場合は通過車速Vcを0とする。続くステップ14では、通過車速Vc[km/h]と、カーブまたは信号機などの減速場所までの距離Lc[m]と、現在の車速vsp[km/h]とに基づいて、減速場所における通過車速Vcまで車両を減速するのに必要な制動トルクTd[Nm]を数式11および数式12により求める。
【0057】ステップ15では、バッテリーSOC検出器26によりメインバッテリー15のSOCを検出し、続くステップ16で、現在のメインバッテリー15の充電可能な仕事量(充電可能容量)wb[kwh]を数式2により演算する。そしてステップ17で、現在地から減速場所へ到達するまでのtc時間に、メインバッテリー15への電力回生によってモーター4で発生可能な制動トルクRd[Nm]を数式13により求める。
【0058】ステップ18において、減速場所における通過車速Vcまで車両を減速するための所要制動トルクTd[Nm]と、メインバッテリー15の充電可能容量wb[kwh]により決まるモーター4の発生可能な制動トルクRd[Nm]とを比較する。減速するための所要制動トルクTdがモーター4の発生可能な制動トルクRd以下の場合は、モーター4の回生制動トルクRdだけで減速場所の通過車速Vcまで車両を減速することができるので、ステップ20へ進む。ステップ20では、インバーター12を制御してモーター4から所要制動トルクTd[Nm]を発生させる。
【0059】一方、減速するための所要制動トルクTdがモーター4の発生可能な制動トルクRdより大きい場合は、ステップ19へ進む。ステップ19では、所要制動トルクTd[Nm]の内、Rd[Nm]をインバーター12を制御してモーター4の回生制動により発生させ、不足分(Td−Rd)[Nm]を、燃料噴射装置30、点火装置31、バルブタイミング調整装置32およびスロットルバルブ調整装置33を制御してエンジン2から出力させる。なお、不足分(Td−Rd)[Nm]が、無段変速機5の変速比により決まるエンジンブレーキトルクの上限値Telim[Nm]を越える場合は、(Telim−Rd)分だけエンジン2から発生させる。
【0060】ステップ21において、ブレーキスイッチ23によりブレーキペダルが踏み込まれているかどうかを確認し、ブレーキスイッチ23がオンしてブレーキペダルが踏み込まれていればステップ22へ進み、そうでなければこの制動力制御を終了する。ステップ22では、フットブレーキ装置6を制御してブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させる。
【0061】なお、上述した第2の実施の形態では、減速が必要な場所(減速場所)としてカーブ(曲線路)と信号機設置場所を例に上げて説明したが、減速が必要な場所はこの実施の形態に限定されない。
【0062】《発明の第3の実施の形態》上述した第2の実施の形態ではカーブや信号機の手前で減速する場合の制動力制御について説明したが、料金所などの停車が必要な場所(以下、単に停車場所と呼ぶ)では必ずフットブレーキを用いるので、停車場所における制動力を、モーターによる回生制動とフットブレーキによる制動とに配分する第3の実施の形態を説明する。なお、この第3の実施の形態の構成は図1および図2に示す構成と同様であり、説明を省略する。
【0063】図11は、料金所などの停車場所における制動力制御プログラムを示すフローチャートである。このフローチャートにより、第3の実施の形態の動作を説明する。コントローラー16は、所定時間ごとにこの制動力制御プログラムを実行する。ステップ31において、ブレーキスイッチ23によりブレーキペダルの踏み込みを検出し、ブレーキペダルが踏み込まれていればステップ32へ進み、そうでなければこの制御プログラムの実行を終了する。ステップ32で、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から得られた走行道路に関する情報に基づいて、進行方向の所定距離、例えば300m前方までに料金所などの停車場所があるかどうかを確認する。停車場所がある場合はステップ33へ進み、停車場所がなければこの制御プログラムの実行を終了する。
【0064】ブレーキペダルが踏み込まれ、且つ所定距離前方に停車場所がある場合は、ステップ33で、ナビゲーション装置34および走行履歴記録装置35から得られた走行道路に関する情報に基づいて、現在地から料金所などの停車場所までの距離Ls[m]を求める。続くステップ34で、停車場所までに車両を減速するのに必要な制動トルクTd[Nm]を数式11および12により求める。なお、この第3の実施の形態では、数式11および12における通過車速Vcを0に、LcをLsに、tcをtsにそれぞれ置き換える。
【0065】ステップ35では、バッテリーSOC検出器26によりメインバッテリー15のSOCを検出し、続くステップ36で、現在のメインバッテリー15の充電可能な仕事量(充電可能容量)wb[kwh]を数式2により演算する。そしてステップ37で、現在地から停車場所までのts時間に、メインバッテリー15への電力回生によってモーター4で発生可能な制動トルクRd[Nm]を数式13により求める。
【0066】ステップ38において、停車場所までに車両を減速するのに必要な制動トルクTd[Nm]を、インバーター12を制御してモーター4から出力させる。なおこの時、所要制動トルクTdがモーター4の発生可能な制動トルクRdを越えても、モーター4により発生させる制動トルクRdはそのままとする。また、モーター4により回生制動を行うと同時に、ブレーキ液圧制御装置(不図示)を制御してブレーキ6からブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させる。
【0067】このように、第3の実施の形態によれば、停車が必要な場所に関する情報を入手し、メインバッテリー15の充電可能容量に基づいて車両減速時にモーター4からメインバッテリー15へ回収可能な回生制動力を演算し、停車が必要な場所へ到達するまで車両を減速する時に、モーター4によりメインバッテリー15へ回収可能な回生制動力を限度とした制動力を発生させるとともに、フットブレーキ装置6によりブレーキペダルの踏み込み力に応じた制動力を発生させるようにしたので、走行エネルギーを回収しながら確実に停車させることができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年8月5日(1999.8.5)
【代理人】 【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
【公開番号】 特開2001−54202(P2001−54202A)
【公開日】 平成13年2月23日(2001.2.23)
【出願番号】 特願平11−222825