| 【発明の名称】 |
電気自動車のモータ制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】伊藤 健
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| 【要約】 |
【課題】クリープ走行時のハンチング現象を抑制し、滑らかな走行特性を実現する。
【解決手段】第1のトルク目標値設定手段2′により、回転数センサ1の検出するモータ回転数に基づいてモータ5の通常の第1のトルク目標値T1* を設定し、さらに第2のトルク目標値設定手段6により、第1のトルク目標値に対して、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を除去又は低減するフィルタリング処理を行い、第2のトルク目標値T2* を出力する。そして、電流目標値設定手段がこの第2のトルク目標値に対応する電流目標値を設定し、モータ電流制御手段4がモータに通電される電流をこの電流目標値に一致するように制御する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 モータの回転数、車輪速又はそれらに相当する量を検出する回転数センサと、前記回転数センサの検出値に基づいて前記モータのトルク目標値(第1のトルク目標値)を設定する第1のトルク目標値設定手段と前記第1のトルク目標値設定手段が設定した前記第1のトルク目標値に対して、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を除去又は低減するフィルタリング処理を行い、修正されたトルク目標値(第2のトルク目標値)を出力する第2のトルク目標値設定手段と、前記第2のトルク目標値設定手段の出力する前記第2のトルク目標値を入力し、前記モータの出力トルクとして当該第2のトルク目標値を得るための電流目標値を設定する電流目標値設定手段と、前記モータに通電される電流を前記電流目標値設定手段の設定する前記電流目標値に一致し、又は追従するように制御するモータ電流制御手段とを備えて成る電気自動車のモータ制御装置。 【請求項2】 前記第2のトルク目標値設定手段は、前記トルク伝達系に対するトルク入力に対する駆動軸トルクの伝達特性の逆特性を含む伝達関数で表わされる特性を有することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のモータ制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車のモータ制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、電気自動車におけるクリープ走行の制御方式としては、図7に示す構成のものが知られている。この従来の電気自動車のモータ制御装置は、モータ回転数センサ1と、トルク目標値設定部2と、電流目標値設定部3と、電流制御部4を構成するPi制御部4−1、非干渉制御部4−2、3相変換部4−3、3相インバータ4−4、電気角センサ4−5及び電流センサ4−6と、三相同期モータ5とから構成されている。 【0003】回転数センサ1はモータ5の回転数を検出する。トルク目標値設定部2は、図中Aに示すモータ回転数−トルク特性マップを内蔵し、回転数センサ1の検出信号に対してこの特性マップAを参照してトルク目標値T* を設定出力する。電流目標値設定部3は、トルク目標値T* を得るのに必要なq軸、d軸の各電流目標値Iq* ,Id* を設定する。 【0004】電流制御部4は、モータ電流、電気角を監視し、3相インバータ4−4からモータ5に供給されるモータ電流が電流目標値Iq* ,Id* に一致するようにフィードバック制御する。 【0005】なお、電流目標値設定部3、Pi制御部4−1、非干渉制御部4−2、3相変換部4−3、3相インバータ4−4、電気角センサ4−5、電流センサ4−6及びモータ5で構成されるモータ制御系は、例えば、総合電子出版社発行、杉本英彦氏編著、「ACサーボシステムの理論と設計の実際」に示されている一般的なものである。またトルク目標値設定部2、電流目標値設定部3、Pi制御部4−1、非干渉制御部4−2及び3相変換部4−3は組込みマイコンのソフトウェアとして実現されるものである。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】このような従来の電気自動車のモータ制御装置では、アクセルオフ状態で発進(つまり、回転数=0)後、回転数の上昇に伴いトルク目標値を下げ、ある程度の回転数まで上昇したところで走行抵抗とつり合うように制御するものであるため、図7のトルク特性マップAにおける特性曲線の負の傾きが大きい場合、トルク目標値→モータ制御系→モータ回転数→トルク目標値の閉ループが不安定領域に入り、図8に示したようにハンチング現象が発生する問題点があった。 【0007】図9は車両におけるトルク目標値→モータ制御系→モータ回転数→トルク目標値の各要素を線形で近似し、一巡伝達関数を解析的に求めたものである。ある特定の周波数ωnのところで大きなピークを持ち、位相が180度回る周波数ωoでゲインが0dB以上あり、不安定であることが分かる。この周波数ωnのピークは、ドライブシャフト等のトルク伝達系のねじり振動によるものである。 【0008】本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、モータ回転数から決められるトルク目標値に対してハンチングの原因となるねじり振動の周波数成分を除去すべくフィルタリング処理を施し、修正を加えたトルク目標値に基づいてモータのトルク制御を行うことにより、上記のハンチング現象の発生を抑制することができる電気自動車のモータ制御装置を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明の電気自動車のモータ制御装置は、モータの回転数、車輪速又はそれらに相当する量を検出する回転数センサと、前記回転数センサの検出値に基づいて前記モータのトルク目標値(第1のトルク目標値)を設定する第1のトルク目標値設定手段と、前記第1のトルク目標値設定手段が設定した前記第1のトルク目標値に対して、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を除去又は低減するフィルタリング処理を行い、修正されたトルク目標値(第2のトルク目標値)を出力する第2のトルク目標値設定手段と、前記第2のトルク目標値設定手段の出力する前記第2のトルク目標値を入力し、前記モータの出力トルクとして当該第2のトルク目標値を得るための電流目標値を設定する電流目標値設定手段と、前記モータに通電される電流を前記電流目標値設定手段の設定する前記電流目標値に一致し、又は追従するように制御するモータ電流制御手段とを備えたものである。 【0010】請求項2の発明の電気自動車のモータ制御装置は、請求項1において、前記第2のトルク目標値設定手段が、前記トルク伝達系に対するトルク入力に対する駆動軸トルクの伝達特性の逆特性を含む伝達関数で表わされる特性を有するものである。 【0011】 【発明の効果】請求項1の発明の電気自動車のモータ制御装置では、第1のトルク目標値設定手段により、回転数センサの検出するモータ回転数に基づいてモータの通常のトルク目標値(第1のトルク目標値)を設定し、さらに第2のトルク目標値設定手段により、第1のトルク目標値設定手段が設定した第1のトルク目標値に対して、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を除去又は低減するフィルタリング処理を行い、修正されたトルク目標値(第2のトルク目標値)を出力する。そして、電流目標値設定手段がこの第2のトルク目標値設定手段の出力する第2のトルク目標値に対応する電流目標値を設定し、モータ電流制御手段がモータに通電される電流をこの電流目標値に一致し、又は追従するように制御する。 【0012】このようにして、モータ回転数から決められる通常のトルク目標値に対して、ハンチングの原因となるトルク伝達系のねじり振動の周波数成分を除去すべくフィルタリング処理を施し、この修正を加えたトルク目標値に基づいてモータのトルク制御を行うことにより、クリープ走行時に発生するハンチング現象を効果的に抑制し、滑らかなクリープ走行ができるようになる。また、ドライバがアクセルを踏み込んで加速するときにも同様に滑らかな加速が可能となる。 【0013】請求項2の発明の電気自動車のモータ制御装置では、請求項1において、第2のトルク目標値設定手段に、トルク伝達系に対するトルク入力に対する駆動軸トルクの伝達特性の逆特性を含む伝達関数で表わされる特性を持たせることにより、第1のトルク目標値設定手段が設定した通常のトルク目標値(第1のトルク目標値)を第2のトルク目標値設定手段に入力すれば、この第2のトルク目標値設定手段が車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を除去又は低減させたトルク目標値(第2のトルク目標値)を出力するようになる。したがって、この第2のトルク目標値設定手段の出力する第2のトルク目標値に対応する電流目標値を設定し、モータに通電される電流をこの電流目標値に一致し、又は追従するように制御することにより、クリープ走行時に発生するハンチング現象を効果的に抑制し、滑らかなクリープ走行ができるようになる。また、ドライバがアクセルを踏み込んで加速するときにも同様に滑らかな加速が可能となる。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の第1の実施の形態の構成を示している。この実施の形態の電気自動車のモータ制御装置は、モータ回転数センサ1と、第1のトルク目標値設定部2′と、第2のトルク目標値設定部6と、電流目標値設定部3と、電流制御部4を構成するPi制御部4−1、非干渉制御部4−2、3相変換部4−3、3相インバータ4−4、電気角センサ4−5及び電流センサ4−6と、三相同期モータ5とから構成されている。 【0015】回転数センサ1はモータ5の回転数を検出する。第1のトルク目標値設定部2′は、図7に示した従来例におけるトルク目標値設定部2と同様に、図中Aに示すモータ回転数−トルク特性マップを内蔵し、回転数センサ1の検出信号に対してこの特性マップAを参照して第1のトルク目標値T1* を設定出力する。 【0016】第2のトルク目標値設定部6は、この実施の形態の特徴をなす部分で、第1のトルク目標値設定部2′の出力する第1のトルク目標値T1* に対して、車両のトルク伝達系のねじり振動成分を除去するフィルタリング処理を施し、修正された第2のトルク目標値T2* を出力する。 【0017】電流目標値設定部3は、第2のトルク目標値設定部6から入力される第2のトルク目標値T2* を得るのに必要なq軸、d軸の各電流目標値Iq* ,Id* を設定する。 【0018】電流制御部4は図7に示した従来例と同様に、モータ電流、電気角を監視し、3相インバータ4−4からモータ5に供給されるモータ電流が電流目標値Iq* ,Id* に一致するようにフィードバック制御する。 【0019】なお、電流目標値設定部3、Pi制御部4−1、非干渉制御部4−2、3相変換部4−3、3相インバータ4−4、電気角センサ4−5、電流センサ4−6及びモータ5で構成されるモータ制御系は従来例と同様のものである。 【0020】本実施の形態の特徴部分をなす第2のトルク目標値設定部6について、詳細に説明する。モータ回転数センサ1からのモータ回転数のフィードバックパスを切り、電流目標値設定部3にオープンループでステップ状のトルク目標値T* を与えると、車輪の駆動軸トルク及び車両の前後加速度は、図2(a)に示すように応答する。駆動軸トルク又は車両前後加速度を出力yとして、近似的にトルク目標値T* に対する出力yの伝達関数を求めると、次の数1式のように表わされる。 【0021】 【数1】
ここで、ωnはトルク伝達系の固有振動数であって、本実施の形態の場合には、例えばωn=40[rad/s]とする。ξpは減衰率で一般に0.1〜0.3程度の値をとる。 【0022】これに対して、トルク目標値T* に対して、図2(b)に示すように、振動的でない望ましい出力y* を想定し、トルク目標値T* に対するy* の応答を次の数2式で与える。 【0023】 【数2】
そこで、数1式の実特性を持つ制御対象に対して、トルク目標値T* と電流目標値設定部3との間に、以下の数3式に示す特性のフィルタを挿入することにより、数2式の特性をそのフィルタの出力として得ることができる。なお、数3式では、トルク目標値T* をT1* とし、フィルタの出力y* をT2* としている。 【0024】 【数3】
この数3式こそ、図1に示した本実施の形態のモータ制御装置において、第1のトルク目標値設定部2′と電流目標値設定部3との間に挿入した第2のトルク目標値設定部6が有すべき特性を示している。 【0025】したがって、図1に示した第1の実施の形態の電気自動車のモータ制御装置においては、図3に示すようなクリープ走行制御系の一巡伝達関数(第1のトルク目標値→第2のトルク目標値→モータ制御系3〜5→モータ回転数→第1のトルク目標値)を実現することができる。 【0026】この図3のグラフから明らかなように、本実施の形態にあっては、従来の周波数ωn付近にあったピークがなくなり、位相−180度の周波数ωoでのゲインがマイナスになり、十分なゲイン余裕が得られていることが分かる。 【0027】また図4には、本実施の形態によるクリープ走行制御の実験結果を示している。図8に示した従来例の制御特性とは異なり、クリープ走行時にハンチング現象が見られず、第1のトルク目標値、前後加速度、モータ回転数のいずれも非常にスムーズな応答となった。 【0028】なお、本発明のモータ制御装置は主にクリープ走行制御時のハンチング現象を抑制することを目的としているが、クリープ走行以外のドライバによるアクセル操作時にもスムーズな加速ができる波及効果がある。図5(a)には、従来例でのアクセル操作による加速に対する前後加速度、モータ回転数の挙動を示しているが、応答初期に振動が起きていた。ところが、同図(b)に示したように、本実施の形態の場合、アクセル操作による加速に対する前後加速度、モータ回転数の挙動は滑らかなものであった。これは次の理由による。 【0029】ドライバによるアクセル操作時には、ドライバの加速意図に合うようにトルク目標値が定められるため、モータ回転数によるフィードバックループがなくなる。そのため、従来例の場合、図8に示したようなクリープ走行時のハンチング現象には至らないまでも、トルク目標値に対する車両挙動には、図5(a)に示したようにかなりの振動が見られる。これは、トルク伝達系のねじり振動によるもので、乗り心地を著しく損なう。これに対して、本実施の形態では、図5(b)に示したようにねじり振動は大幅に低減し、滑らかな加速が得られている。 【0030】なお、このような振動は理論上は0にすることができるが、現実の車両ではフィルタ設計時の近似誤差、がたつき、フリクションなどの実機特有の非線形性があるため若干の振動が残ることがある。しかしながら、本実施の形態による制御を適用する場合としない場合とでは上述したように加速の滑らかさにおいても著しい改善が見られ、有効な技術である。 【0031】次に、本発明の電気自動車のモータ制御装置の第2の実施の形態について、説明する。第1の実施の形態では第1の目標値設定部2′が出力する第1のトルク目標値T1* に対して、所定のフィルタリング特性を有する独立した回路としての第2のトルク目標値設定部6によりフィルタリング処理を施す構成としたが、従来例と同様に、第1のトルク目標値設定部2′〜3相変換部4−3までの部分(図1において鎖線で囲んだ部分)をマイコンによるソフトウェア処理とすることができる。そしてその場合には、第2のトルク目標値設定部6はデジタルフィルタで実現することになる。 【0032】そして第2のトルク目標値設定部6をデジタルフィルタで実現する場合には、例えば、【数4】
ただし、Tはサンプリング周期を数3式に代入して、パルス伝達関数を求める機能を持たせる。 【0033】上記の数3式に数4式のsを代入して整理することにより、【数5】
となる。ただし、g1,g2,h0,h1,h2はサンプリング周期Tとξp,ωn,ξmで表わされる定数である。 【0034】この第2の実施の形態の電気自動車のモータ制御装置によっても、第1の実施の形態と同様、クリープ走行特性を改善し、またアクセル操作による加速を滑らかにすることができる。 【0035】次に、本発明の電気自動車のモータ制御装置の第3の実施の形態を、図6に基づいて説明する。第3の実施の形態の特徴は、第2の実施の形態と同様に第1のトルク目標値設定部2′〜3相変換部4−3までの部分(図1において鎖線で囲んだ部分)をサンプリングタイミングT毎に繰返し演算処理を繰り返すデジタル制御を行うマイコンで置き換え、かつ第2のトルク目標値設定部6をプログラム化した点にある。 【0036】この場合、第2のトルク目標値設定部6では、フィルタリング処理としてサンプリングタイミングT毎に図6のフローチャートに示す演算処理を繰返し、第2のトルク目標値T2* を出力する。この演算について説明する。 【0037】サンプリングタイミングT毎に第1のトルク目標値設定部2′から第1のトルク目標値T1* を入力する(ステップS1)。そして前回、前々回の入力データT1*(K-1),T1*(K)と演算データT2*(K-1),T2*(K)それぞれをシフトさせてT1*(K-2),T1*(K-1),T2*(K-2),T2*(K-1)にし、新たに入力された第1のトルク目標値T1* を新たにT1*(K)とする(ステップS2)。 【0038】このシフト処理の後、数5式を利用した演算処理によってT2*(K)を求める(ステップS3)。そして、得られたT2*(K)を今回新たに第2のトルク目標値T2* として出力する(ステップS4,S5)。 【0039】これにより、第3の実施の形態の電気自動車のモータ制御装置でも、第1、第2の実施の形態と同様に、クリープ走行特性を改善し、またアクセル操作による加速を滑らかにすることができる。 【0040】なお、上記の各実施の形態において採用した数値はすべて例示的なものであり、電気自動車の実機の特性に応じて適切な値に決定される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年7月29日(1999.7.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083806 【弁理士】 【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−45613(P2001−45613A) |
| 【公開日】 |
平成13年2月16日(2001.2.16) |
| 【出願番号】 |
特願平11−215532 |
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