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【発明の名称】 電動車両の制御装置
【発明者】 【氏名】石田 好伸

【要約】 【課題】電動車両の操作性を改善する。

【解決手段】操作力に基づく比例成分、操作力の変動量に基づく微分成分、及び、モータの回転方向への加減速度に基づく加減速成分を、所定の配分係数に従って合算したものを駆動力変化量とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力を検知する手段と、前記操作力の大きさに基づいて増大する駆動力の比例成分を算出する手段と、前記操作力の変動量を算出し、これに基づいて増大する駆動力の変動成分を算出する手段と、前記比例成分と前記変動成分とを所定割合で合算して、これに基づく所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいてモータを駆動する手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力の方向及び大きさを検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の大きさに基づいて増減する駆動力の比例成分を算出する手段と、前記回転方向に対する加減速度を算出し、これに基づいて増減する駆動力の加減速成分を算出する手段と、前記駆動力の方向と前記回転方向とが互いに一致していないとき、前記比例成分と前記加減速成分とを所定割合で合算して、これに基づく所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力を検知する手段と、前記操作力の大きさと所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の比例成分を算出する手段と、前記操作力の変動量を算出し、この変動量と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の変動成分を算出する手段と、前記比例成分と前記変動成分とを所定割合で合算したものを駆動力変化量として、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいてモータを駆動する手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力の方向及び大きさを検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の大きさと所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の比例成分を算出する手段と、前記回転方向に対する加減速度を算出し、この加減速度と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の加減速成分を算出する手段と、前記駆動力の方向と前記回転方向とが互いに一致していないとき、前記比例成分と前記加減速成分とを所定割合で合算したものを駆動力変化量として、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項5】駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力の方向及び大きさを検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の大きさと所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の比例成分を算出する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の変動量を算出し、この変動量と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の変動成分を算出する手段と、前記回転方向に対する加減速度を算出し、この加減速度と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の加減速成分を算出する手段と、前記第比例成分、変動成分及び加減速成分を所定割合で合算したものを駆動力変化量として、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項6】前記合算における前記加減速成分は、前記駆動力の方向と前記回転方向とが互いに一致しないとき有効とされることを特徴とする請求項5記載の電動車両の制御装置。
【請求項7】前記合算における前記変動成分は、前記駆動力の方向と前記回転方向とが互いに一致しないとき無効とされることを特徴とする請求項5記載の電動車両の制御装置。
【請求項8】駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力を検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記操作力の方向及び大きさに基づいて駆動力変化量の第1成分dFapを算出する手段と、前記操作力の変動量に基づいて駆動力変化量の第2成分dFadを算出する手段と、前記モータの速度変動量に基づいて駆動力変化量の第3成分dFavを算出する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度に基づいて前記第1成分、第2成分及び第3成分の配分係数(0も含む値)Kp、Kd及びKvを決定する手段と、駆動力変化量をKp・dFap+Kd・dFad+Kv・dFavの演算により算出し、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電動車両として、例えば、特開平10−99378号公報に記載された電動車椅子は、介護者が車体を押し引きする操作力と、この操作力に基づいてモータで発生させた駆動力とによって推進される。ここで、介護者の操作力の方向及び大きさは、介護者用のハンドルに設けた操作力検知手段により検知され、介護者がこのハンドルに加えた操作力が所定の設定値を超えると、モータにより駆動力が生じる。なお、このような操作力検知手段は、車輪に沿って設けられたハンドリムに内蔵することもできる。
【0003】上記のような電動車椅子では、介護者がハンドルに付与する操作力若しくは搭乗者自身がハンドリムに付与する操作力が操作力検知手段によって検知され、その検知結果に応じた駆動力がモータにより提供される。従って、例えば上り坂においては、操作力に応じた前進方向への駆動力がモータにより提供され、操作者の負担は軽減される。また、下り坂においては、操作者が後退方向への操作をすることにより、モータに逆方向への駆動力を発生させて、電動車椅子の加速を防止する。従って、操作者の負担は軽減される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来の電動車両において、例えば起動時には操作力が設定値を超えないと駆動力が発生しないため、迅速に所望の駆動力を立ち上げるには設定値を必要以上に超える大きな操作力を必要とする。また、下り坂において操作者が、ある程度の速度を維持したい場合には、重力により車輪が進行方向に回転しようとする力と、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力とのバランスをとるのが難しい。その結果、操作力が不安定となって車両の挙動を安定させることができない。
【0005】上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、電動車両における操作性の改善を目的とする。より具体的には、大きな操作力を必要としない電動車両の制御装置を提供することを目的とする。また、操作力を安定させることができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の電動車両の制御装置は、駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力を検知する手段と、前記操作力の大きさに基づいて増大する駆動力の比例成分を算出する手段と、前記操作力の変動量を算出し、これに基づいて増大する駆動力の変動成分を算出する手段と、前記比例成分と前記変動成分とを所定割合で合算して、これに基づく所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいてモータを駆動する手段とを備えたものである(請求項1)。上記のように構成された電動車両の制御装置では、操作力の大きさに基づく比例成分と、操作力の変動量に基づく変動成分とを所定割合で合算したものに基づいて駆動力が発生する。これにより、操作力の変動量が大きい場合には駆動力も大きく変化して、駆動力の応答性が高められる。
【0007】また、本発明の電動車両の制御装置は、駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力の方向及び大きさを検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の大きさに基づいて増減する駆動力の比例成分を算出する手段と、前記回転方向に対する加減速度を算出し、これに基づいて増減する駆動力の加減速成分を算出する手段と、前記駆動力の方向と前記回転方向とが互いに一致していないとき、前記比例成分と前記加減速成分とを所定割合で合算して、これに基づく所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたものであってもよい(請求項2)。上記のように構成された電動車両の制御装置(請求項2)では、駆動力の方向と回転方向とが互いに一致していないとき、すなわち、制動補助を行う場合等には、操作力の大きさに基づく比例成分と、回転速度に基づく加減速成分とを所定割合で合算したものに基づいて駆動力が発生する。従って、例えば下り坂において車両が加速している場合には、増大する加減速成分によってモータの回転方向と逆方向への駆動力が増大され、制動力が増す。また、下り坂において車両が減速している場合には、減少する加減速成分によってモータの回転方向と逆方向への駆動力が減少し、制動力が低下する。このようにして、車両の加速時には加速を抑制し、減速時には減速を抑制する方向に制御が行われる。
【0008】また、本発明の電動車両の制御装置は、駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力を検知する手段と、前記操作力の大きさと所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の比例成分を算出する手段と、前記操作力の変動量を算出し、この変動量と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の変動成分を算出する手段と、前記比例成分と前記変動成分とを所定割合で合算したものを駆動力変化量として、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいてモータを駆動する手段とを備えたものであってもよい(請求項3)。上記のように構成された電動車両の制御装置(請求項3)において、駆動力変化量は、比例成分と変動成分とを所定割合で合算して構成される。比例成分は、操作力と設定値との差に基づいて算出され、変動成分は、操作力の変動量と設定値との差に基づいて算出される。従って、例えば起動時のように操作力が増大している場合には、比例成分に加えて変動成分の存在が駆動力変化量を大きくするため、駆動力の応答性が高められる。また、比例成分に関して操作力が設定値より大きい場合でも、その操作力が減少方向にあれば変動成分によって駆動力変化量が抑制され、駆動力の増大が抑えられる。
【0009】また、本発明の電動車両の制御装置は、駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力の方向及び大きさを検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の大きさと所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の比例成分を算出する手段と、前記回転方向に対する加減速度を算出し、この加減速度と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の加減速成分を算出する手段と、前記駆動力の方向と前記回転方向とが互いに一致していないとき、前記比例成分と前記加減速成分とを所定割合で合算したものを駆動力変化量として、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたものであってもよい(請求項4)。上記のように構成された電動車両の制御装置(請求項4)において、駆動力変化量は、駆動力の方向と回転方向とが互いに一致していないとき、すなわち制動補助を行う場合等に、比例成分と加減速成分とを所定割合で合算して構成される。ここで、比例成分は、操作力と設定値との差に基づいて算出され、加減速成分は、加減速度と設定値との差に基づいて算出される。例えば下り坂において、モータの回転方向と逆方向に駆動力を発生させながら、ある程度の速度を維持した状態で車両を推進させようとした場合、車両がモータの回転方向に加速すると、加減速成分により逆方向の駆動力を増大させる変化量が合算される。一方、車両がモータの回転方向に減速すると、加減速成分により回転方向と逆方向の駆動力を減少させる変化量が合算される。このようにして、加速・減速ともに抑制される。
【0010】また、本発明の電動車両の制御装置は、駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力の方向及び大きさを検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の大きさと所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の比例成分を算出する手段と、前記駆動力の方向に対する前記操作力の変動量を算出し、この変動量と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の変動成分を算出する手段と、前記回転方向に対する加減速度を算出し、この加減速度と所定の設定値との差に基づいて、駆動力を増減させる変化量の加減速成分を算出する手段と、前記第比例成分、変動成分及び加減速成分を所定割合で合算したものを駆動力変化量として、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたものであってもよい(請求項5)。上記のように構成された電動車両の制御装置(請求項5)において、駆動力変化量は、比例成分、変動成分及び加減速成分を所定割合で合算して構成される。ここで、比例成分は、操作力と設定値との差に基づいて算出されるため、操作力を設定値に近づけるように作用する。変動成分は、駆動力の方向に対する操作力の変動量と設定値との差に基づいて算出されるため、操作力の大きさに関わらず、変動量を設定値に近づけるように作用する。例えば起動時においては、比例成分に加えて、この変動成分が大きくなる。また、加減速成分は、回転方向に対する加減速度と設定値との差に基づいて算出されるため、車両の加減速を抑制して設定値に近づけるように作用する。
【0011】上記制御装置(請求項5)において、合算における加減速成分は、駆動力の方向と回転方向とが互いに一致しないとき有効とされるものであってもよい(請求項6)。駆動力の方向と回転方向とが一致しない場合とは、例えば下り坂における制動補助の場合である。このような場合に、加減速成分が有効とされることにより、車両の加減速が抑制される。
【0012】上記制御装置(請求項5)において、合算における変動成分は、駆動力の方向と回転方向とが互いに一致しないとき無効とされるものであってもよい(請求項7)。駆動力の方向と回転方向とが一致しない場合とは、例えば下り坂における制動補助の場合である。このような場合に、変動成分が作用すると駆動力の変化が大きくなって操作性が悪くなる可能性がある。そこで、このような場合には、変動成分を無効とすることにより操作性を維持する。
【0013】また、本発明の電動車両の制御装置は、駆動力を発生するモータを搭載した電動車両に対して操作者が与える操作力を検知する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度を検知する手段と、前記操作力の方向及び大きさに基づいて駆動力変化量の第1成分dFapを算出する手段と、前記操作力の変動量に基づいて駆動力変化量の第2成分dFadを算出する手段と、前記モータの速度変動量に基づいて駆動力変化量の第3成分dFavを算出する手段と、前記モータの回転方向、駆動力の方向及び回転速度に基づいて前記第1成分、第2成分及び第3成分の配分係数(0も含む値)Kp、Kd及びKvを決定する手段と、駆動力変化量をKp・dFap+Kd・dFad+Kv・dFavの演算により算出し、これに基づいて所要の駆動力信号を算出する手段と、前記駆動力信号に基づいて前記モータを駆動する手段とを備えたものであってもよい(請求項8)。上記のように構成された電動車両の制御装置(請求項8)においては、操作力に基づく第1成分の他、操作力の変動量に基づく第2成分、及び、モータの速度変動量(車両の速度変動量と同じ)に基づく第3成分を加味して駆動力変化量が決定される。また、配分係数はモータの運転状態に基づいて決定されるので、「推進補助」、「制動補助」、「停止」、「起動」等、各運転状況に合わせて最適な配分係数(係数を0とすればその成分は無効)を与えることにより、所望の操作性が実現される。また、配分係数を所望の値に設定することにより、制御特性を操作者の好みに合わせたものとすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図10及び図11は、それぞれ、本発明の一実施形態による電動車両の制御装置を搭載した電動車椅子の側面図及び背面図である。図10及び図11において、電動車椅子の車体1は、複数のパイプ部材からなるフレーム2と、モータ及び減速機構等を内蔵した左右一対の駆動部ユニット3とによって構成されている。一対の駆動輪4(図10は輪郭のみを略記)は各駆動部ユニット3に取り付けられ、一対のキャスタ5は車体1の前部に取り付けられている。アームレスト6は、左右のフレーム2の上部に取り付けられている。左右のフレーム2間には、座シートS1及び背シートS2が張設されている。背シートS2の背面側には、バッテリポケットP1及び制御部ポケットP2が設けられている。
【0015】車体1の後方最上部には、略水平に操作部(グリップ)7が設けられ、その下部にブレーキレバー8が取り付けられている。操作部7は内部に操作力検知部としての例えばポテンショメータを有しており、電動車椅子を押し引きする介護者の操作力を検知することができるようになっている。なお、ポテンショメータに代えて、ストレインゲージを含むブリッジ回路を用いてもよい。また、介護者なしでも電動補助ができるタイプの電動車椅子では、駆動輪4のハンドリム(図示せず)に操作力検知部が設けられ、この操作力検知部により、搭乗者がハンドリムに与える操作力が検知される。上記ブレーキレバー8は、他のブレーキレバー9とワイヤ10を介して連係しており、どちらか一方からのブレーキ操作により、機械的に駆動輪4を制動することができる。
【0016】図11において、上記バッテリポケットP1及び制御部ポケットP2にはそれぞれ、バッテリ11及び制御部12が収納されている。バッテリ11と制御部12とは、ケーブルC1により互いに接続されている。また、制御部12と、左右の駆動部ユニット3及び左右の操作部7とは、それぞれ、ケーブルC2、C3及びケーブルC4、C5によって接続されている。
【0017】図9は、制御装置の電気回路接続図である。上記駆動部ユニット3及び操作部7については、車体1の右側に設けられているものには符号にRを付けて表記し、車体1の左側に設けられているものには符号にLを付けて表記している。駆動部ユニット3R及び3L内のモータはそれぞれ、31R及び31L(31で総称する。)とする。また、操作部7R及び7L内の操作力検知部は、それぞれ71R及び71Lとする。図9において、制御部12のケースの表面には、スイッチ13及び表示灯14が設けられている(図11も参照)。なお、図9におけるケーブルC1〜C5はそれぞれ、図11において示したものに相当する。
【0018】上記制御部12内には、制御回路121、電源回路122、駆動回路123R及び123Lが設けられており、相互に接続されている。電源回路122には、バッテリ11から直流電圧が供給される。電源回路122は、供給された直流電圧に基づいて、制御回路121並びに駆動回路123R及び123Lに所定の電源電圧を供給する。制御回路121は、スイッチ13及び表示灯14と接続されており、スイッチ13のオン操作によって作動し、表示灯14を点灯させる。なお、制御部ポケットP2(図11)の上部には透明な柔らかいカバーが設けられており、このカバー越しにスイッチ13の操作や、表示灯14の点灯確認が可能である。
【0019】駆動回路123R及び123Lは、例えば半導体スイッチング素子のブリッジ回路を含んでおり、電源回路122から供給された直流電圧を、制御回路121から供給されたPWM信号に基づいてスイッチングし、直流電圧の平均値を変化させてモータ31R及び31Lを駆動する。制御回路121は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ等を含むものであり、操作力検知部71R及び71Lから入力される操作力に相当する操作力信号をディジタル値に変換した後、所定の処理を施す。操作力検知部71R及び71Lは、介護者が付与した押し引きの操作力をそれぞれ独立に検知して、操作力信号を発生させる。操作力検知部71R及び71Lはそれぞれ、操作部7R及び7Lが操作されていない中立位置を基点としてそこから前方又は後方に操作部7R及び7Lが操作されたとき、その操作力に従って出力値を変化させる。例えば、操作力が付与されていない状態の中立位置では、操作力信号は所定の値(通常、0でない値)である。前進方向への操作力が操作部7R及び7Lに付与されたときは、その操作力に応じて操作力信号の電圧値が上記所定の値から増加する。後退方向への操作力が操作部7R及び7Lに付与されたときは、その操作力に応じて操作力信号の電圧値は上記所定の値から減少する。
【0020】制御回路121は、上記のように変化する操作力信号から上記所定の値を減算したものを「操作力検知信号」として、図3に示すような「操作力」対「操作力検知信号」の特性を得る。すなわち、操作力が付与されていないとき操作力検知信号は0であり、前進方向(押し方向)の操作力が付与されたときは一定勾配で増加する正の値となり、後退方向(引き方向)の操作力が付与されたときは、上記一定勾配で負の方向に増加する値となる。従って、前進又は後退の識別は操作力検知信号の正負をもって、また、操作力の大小は操作力検知信号の絶対値によって検知することができる。こうして、操作力検知部71R及び71Lは、制御回路121と共に、操作力を検知する手段を構成している。上記のようにして得られた操作力検知信号を基に、モータ31R及び31Lの駆動又は制動が行われる。図3において、操作力の「+Fs」及び「−Fs」は、所定の設定値である。なお、操作部7R及び7Lに付与された操作力は、モータ31R及び31Lの発生する駆動力とは別に、それ自体が、それぞれ車体1を介して左右の駆動輪4(図10,図11)に伝達され、人力による駆動力となる。
【0021】上記モータ31R及び31Lの各々は、3相ブラシレスモータであり、ステータ側に3個のホール素子Hが内蔵されている(図9)。ホール素子Hは、ロータの回転に応じてパルスを出力する。このパルスは、対応する駆動回路123R及び123Lを介して、制御回路121に送られる。制御回路121は単位時間あたりのパルス数をカウントすることにより、モータ31R及び31Lの回転速度、すなわち、電動車椅子の速度を検知する。また、制御回路121は、3個のホール素子Hから出力されるパルスの位相に基づいて、モータ31R及び31Lの回転方向、すなわち、対応する左右の駆動輪4の回転方向を検知する。なお、ホール素子Hの出力によらず、モータ31R,31L又は駆動輪4に付帯してタコジェネレータ等の速度センサを設けてもよい。この場合は、タコジェネレータの出力電圧により速度が、出力電圧の極性により回転方向が、それぞれ検出される。
【0022】次に、制御回路121の動作について説明する。制御回路121は、正常時には駆動モード、制動モード、及びオフモードのうち1つのモードを選択的に実行する。駆動モードは、操作力検知部71R及び71Lに与えられた操作力に基づいて電動車椅子を推進させるようにモータ31(31R,31L)を駆動するモードである。制動モードは、操作力が付与されなくなったとき、モータ31を制動するモードである。オフモードは、駆動モードから制動モードに移行する場合、又は逆に、制動モードから駆動モードに移行する場合に、モータ31の出力を停止させるモードである。
【0023】本発明は、上記駆動モードに関するものであるため、以下、駆動モードに関して詳細に説明する。図2は、制御回路121(図9)のCPU(以下、単にCPUという。)によって実行される駆動モードのメインルーチンを示すフローチャートである。このメインルーチンは所定のサンプリング時間ごとに実行される。まず、ステップS1においてCPUは、付与された操作力に対応して操作力検知部71R及び71Lより出力される操作力信号の値から、操作力が付与されていないときの操作力信号の値を減算する処理(入力値変換)を行う。この処理によって、操作力検知部71Rに対する操作力に対応する操作力検知信号FinRと、操作力検知部71Lに対する操作力に対応する操作力検知信号FinLとが得られる。また、CPUは、左右のモータ31R及び31L内のホール素子Hから入力されるパルスをカウントして、右の駆動輪4の速度VelR及び左の駆動輪4の速度VelLを求める。
【0024】次に、CPUは、制御回路121から左右の駆動回路123R及び123Lに供給される駆動力指令信号FoutR及びFoutL(モータ31R及び31Lが発生する駆動力に相当する。)について、FoutR=0又はFoutL=0が成り立つか否かを判断する(ステップS2)。この論理が成り立たないのは、既に左右の駆動力指令信号(0以外の)を出力中である場合であり、その場合は既に駆動力の方向が決まっているため、CPUはステップS4にジャンプする。駆動力指令信号FoutR及びFoutLのいずれか1つでも0であれば、CPUはステップS3に進む。ステップS3においてCPUは、駆動力指令信号が0である方の操作力検知信号FinL又はFinRの符号(正負)を参照して、対応するモータ31R又は31Lを正転させるのか、逆転させるのかを決定する。なお、駆動モードに入った初期の時点では、双方のモータ31R及び31Lについて、正転・逆転の決定が行われる。
【0025】次にCPUは、操作力変動量及び加減速度を算出する(ステップS4)。なお、ステップS4〜S9の処理において、左右の演算は同様であるため、操作力検知信号FinL,FinRについては、Finと表記する。また、速度VelR,VelLについては、Velと表記する。操作力変動量を算出するには、まず、ステップの実行回数をtとして、ステップS1で得られる操作力検知信号の現在値Fin(t)と、前回値Fin(t−1)との差dFin(t)を求める。すなわち、 dFin(t)=Fin(t)−Fin(t−1) ...(1)とする。これを基に、操作力変動量dFint(t)を以下の演算により求める。
dFint(t)={dFin(t)+dFint(t−1)}/2 ...(2)すなわち、操作力変動量の現在値dFint(t)は、その前回値dFint(t−1)と上記差dFin(t)とを平均したものである。さらに、CPUは、速度Velについて、現在値と前回値との差をとり、これを加減速度dVel(t)とする。すなわち、 dVel(t)=Vel(t)−Vel(t−1) ...(3)である。
【0026】CPUは、上記操作力検知信号Fin、操作力変動量dFint及び加減速度dVelに基づいて、以下のステップS5〜S9において駆動力変化量dFaの算出を行う。駆動力変化量dFaとは、モータ31が発生する駆動力の基になる駆動力信号Faの変化量である。駆動力信号Faは、図2のフローチャートの実行回数をtとして、Fa(t)=Fa(t−1)+dFa ...(4)と表される。すなわち、駆動力信号Faは、駆動力変化量dFaの累積値として表される。従って、駆動力信号Faは駆動力変化量dFaが正のとき増加し、負のとき減少する。また、モータ31の駆動方向は、駆動力信号Faが正のとき正転方向であり、負のとき逆転方向である。なお、実際には後のステップ(図2のS10)において後述の補整が行われるため、上記駆動力信号Faは、最終的に出力されるものではないが、基本的な駆動力の指令値として取り扱うことができる。
【0027】本実施形態においては、上記駆動力変化量dFaを、3つの要素に基づいて決定する。3つの要素とは、駆動力変化量の比例成分dFap、駆動力変化量の微分成分(変動成分)dFad及び駆動力変化量の加減速成分dFavである。これら3つの要素に、配分係数(重み)を付加して合算することにより、駆動力変化量dFaが求められる。すなわち、比例成分、微分成分及び加減速成分の配分係数をそれぞれKp、Kd及びKvとすると、 dFa=kp・dFap+Kd・dFad+Kv・dFav ...(5)である。従って、上記式の右辺の各値を求める必要がある。
【0028】そこでまず、CPUはステップS5において、駆動力変化量の比例成分dFapを、図4に示す関数に従って算出する。この関数は、以下のように表される。
Fin>Fsのとき、 dFap=KDFAP_H・(Fin−Fs) ...(6) Fs−Fh≦Fin≦Fsのとき、 dFap=0 ...(7) Fin<Fs−Fhのとき、 dFap=KDFAP_L・(Fin−(Fs−Fh)) ...(8)但し、Fs及びFhは所定の設定値、KDFAP_H及びKDFAP_Lは所定の定数である。
【0029】次に、CPUはステップS6において、駆動力変化量の微分成分dFadを、図5に示す関数に従って算出する。この関数は、以下のように表される。
dFint>DFAD_SETHのとき、 dFad=KDFAD_H・(dFint−DFAD_SETH) ...(9) DFAD_SETL≦dFint≦DFAD_SETHのとき、 dFad=0 ...(10) dFint<DFAD_SETLのとき、 dFad=KDFAD_L・(dFint−DFAD_SETL) ...(11)但し、DFAD_SETL及びDFAD_SETHは所定の設定値、KDFAD_L及びKDFAD_Hは所定の定数である。
【0030】次に、CPUはステップS7において、駆動力変化量の加減速成分dFavを、図6の実線で示す関数に従って算出する。この関数は、以下のように表される。
dVel>DFAV_SETHのとき、 dFav=KDFAV_H・(dVel−DFAV_SETH) ...(12) DFAV_SETL≦dVel≦DFAV_SETHのとき、 dFav=0 ...(13) dVel<DFAV_SETLのとき、 dFav=KDFAV_L・(dVel−DFAV_SETL) ...(14)但し、DFAV_SETL及びDFAV_SETHは所定の設定値、KDFAV_L及びKDFAV_Hは所定の定数である。
【0031】次に、CPUはステップS8において、配分係数Kp、Kd及びKvを決定する。配分係数は電動車椅子の運転状況に従って、以下の表1に示す4種類の値が用意されている。
【0032】
【表1】

【0033】配分係数の決定は、図7に示すサブルーチンに従って実行される。まず、ステップS8−1においてCPUは、モータ31の回転方向(ロータの回転方向)及び駆動方向(駆動力が発生している方向)を確認する。次に、ステップS8−2においてCPUは、モータ31が駆動されているか否かを判断する。モータ31が駆動されていない場合には、「起動」の設定を行い(ステップS8−6)、メインルーチンに戻る。ステップS8―2においてモータ31が駆動されている場合には、CPUはステップS8−3に進み、速度が正の値であるか否かを判断する。ここでCPUは、正の値でない場合は「停止」の設定を行い(ステップS8−7)、メインルーチンに戻る。
【0034】ステップS8−3において速度が正の値であれば、CPUはステップS8−4に進み、モータ31の回転方向と駆動方向とが互いに一致しているか否かを判断する。一致しない場合には、CPUは「制動補助」の設定を行い(S8−8)、メインルーチンに戻る。一致する場合には、CPUは「推進補助」の設定を行い(S8−5)、メインルーチンに戻る。
【0035】次に、CPUは前述の(5)式に基づいて、駆動力変化量の決定を行う(ステップS9)。まず、「推進補助」の場合、dFa=dFap+0.5dFad ...(15)となる。すなわち、駆動力変化量dFaは、操作力の大きさ及び方向(以下単に操作力という。)に基づく比例成分dFapと操作力変動量である微分成分dFadとを1:0.5の割合で合算して求められる。この結果、操作力に基づくdFapの値のみならず、操作力の変動に基づく0.5dFadの値が駆動力変化量dFaに反映され、駆動力の応答性が高められる。また、比例成分dFapに関して操作力検知信号Finが設定値Fsより大きい場合でも、その操作力検知信号Finが減少方向にあれば操作力変動量dFintが負の方向に変化するため、微分成分dFadによって駆動力変化量dFaが抑制され、駆動力の増大が抑えられる。なお、このようにして駆動力の制御が行われることにより操作者の望む運転状態に近づけば、操作力及び操作力の変動は低下するので、操作力検知信号Finは設定値Fs又はFs−Fhに収束し、操作力変動量dFintは設定値DFAD_SETH又はDFAD_SETLに収束する。
【0036】また、「起動」の場合、dFa=dFap+dFad ...(16)となる。すなわち、駆動力変化量dFaは、比例成分dFapと微分成分dFadとを1:1の割合で合算して求められる。従って、「推進補助」より微分成分が駆動力変化量dFaに大きく反映される。これにより、操作力検知信号Finが設定値Fsに達しなくても(すなわち、操作力を大きくしなくても)、充分な駆動力変化量dFaが確保され、モータ31における駆動力が迅速に立ち上がる。
【0037】一方、「制動補助」の場合、dFa=0.5dFap+0.5dFav ...(17)となる。すなわち、比例成分と加減速成分とが0.5:0.5の割合で合算して求められる。「制動補助」に設定されるのは、前述のように、モータ31の回転方向と駆動方向とが相異なる場合である。すなわち、例えば下り坂において、モータ31の回転方向と逆方向に駆動力を発生させながら、ある程度の速度を維持した状態で車両を推進(降坂)させようとした場合、車両がモータ31の回転方向に加速すると、上記(17)式の0.5dFavの値により逆方向の駆動力が増大される。従って、制動力が増大されて、加速が抑制される。一方、車両がモータ31の回転方向に減速すると、0.5dFavの値が負の方向に変化して、回転方向と逆方向の駆動力は減少する。従って、制動力は低下して、減速が抑制される。このようにして、加速・減速ともに抑制される。この結果、操作力が安定して、車両の挙動が安定する。なお、このようにして駆動力の制御が行われることにより操作者の望む運転状態に近づけば、操作力及び加減速度は低下するので、操作力検知信号Finは設定値Fs又はFs−Fhに収束し、加減速度dVelは設定値DFAV_SETH又はDFAV_SETLに収束する。
【0038】なお、「制動補助」の場合に、微分成分dFadを有効にすると、駆動力の変化が大きくなって操作性が悪くなる可能性がある。従って、「制動補助」では、微分成分dFadを無効とする(配分係数Kd=0とする)ことが好ましい。また、「停止」の場合、dFa=0.5dFap+0.1dFad ...(18)となる。すなわち、駆動力変化量dFaは、操作力に基づく比例成分dFapと操作力変動量である微分成分dFadとを0.5:0.1の割合で合算して求められる。
【0039】駆動力変化量dFaは、左右の駆動輪4のそれぞれに対応して求められ、右側の駆動輪4用の駆動力変化量をdFa_r、左側の駆動輪4用の駆動力変化量をdFa_lとする。
【0040】続いて、CPUは、左右協調補整を行う(ステップS10)。左右協調補整とは、直進性を高めるための既知の補整方法である。図8は、左右協調補整の内容と、続くステップS10における駆動力信号の算出との対応関係とを示した図である。図において、ar,bl,br及びalは所定の補整係数(0から1までの正の数)であり、予め制御回路121(図9)に設定されている。これらの補整係数と、右側における駆動力変化量dFa_r及び左側における駆動力変化量dFa_lとに基づいて、右側の補整変化量dFa_rw及び左側の補整変化量dFa_lwが算出される。すなわち、変化量dFa_rに補整係数arを乗じたものと、変化量dFa_lに補整係数brを乗じたものとの和が補整変化量dFa_rwである。また、変化量dFa_lに補整係数alを乗じたものと、変化量dFa_rに補整係数blを乗じたものとの和が補整変化量dFa_lwである。
【0041】ステップS11において、右側での前回の駆動力信号Fa_r(t−1)と補整変化量dFa_rwとの和が次に出力される駆動力信号Fa_r(t)となる。また、左側での前回の駆動力信号Fa_l(t−1)と補整変化量dFa_lwとの和が次に出力される駆動力信号Fa_l(t)となる。最後にCPUは、駆動力指令信号Fa_r(t)及びFa_l(t)をPWM信号に変換し、駆動力信号FoutR及びFoutLとして、それぞれ駆動回路123R及び123L(図9)に供給する(図2のステップS11)。これらの駆動力信号FoutR及びFoutLに基づいて、モータ31R及び31Lが駆動される。
【0042】図1は、制御部12が図2に示すフローチャートによって達成する機能をブロック図で表現したものである。図1において、操作力検知手段12Aは、操作力検知部71R及び71Lと制御回路121とにより構成され、フローチャートのステップS1に相当する。駆動方向決定手段12Bは、制御回路121によって構成され、ステップS2及びS3に相当する。変動量算出手段12D及び加減速度算出手段12Fは、制御回路121によって構成され、ステップS4に相当する。比例成分算出手段12C、微分成分算出手段12E及び加減速成分算出手段12Gは、制御回路121によって構成され、それぞれステップS5、S6及びS7に相当する。配分係数決定手段12H、合算手段12I及び補整手段12Jは、制御回路121によって構成され、それぞれステップS8、S9及びS10に相当する。モータ駆動手段12Kは、制御回路121及び駆動回路123R,123Lによって構成され、ステップS11に相当する。
【0043】図1において、加減速度算出手段12F及び配分係数決定手段12Hは、モータ31のホール素子H(図9)から信号を受けて、回転速度と回転方向とを得る。また、配分係数決定手段12Hは、モータ駆動手段12Kから駆動方向の信号を得る。合算手段12Iは、比例成分、微分成分及び加減速成分を、配分係数決定手段12Hから指示された配分係数で合算する。
【0044】なお、上記実施形態における配分係数は一例に過ぎず、これ以外の値でも良い。配分係数を操作者が所定範囲で変更することができるようにすれば、操作者の好みに合わせて制御特性を調節することも可能になる。また、配分係数のパターンは表1の4種類に限られない。例えば、比例成分dFap及び微分成分dFadのみならず、加減速成分dFavを有効にした「推進補助」も可能である。この場合、(12)及び(14)式において、定数KDFAV_L,KDFAV_Hを負の値とする。従って、加減速成分dFavを決める関数は、dVel>DFAV_SETH又はdVel<DFAV_SETLのとき、図6の点線で示す関数となる。dVel>DFAV_SETHにおいてKDFAV_Hが負の値であることにより、例えば、坂道を上り終えた直後の加速を抑制することができる。また、dVel<DFAV_SETLにおいてKDFAV_Lが負の値であることにより、例えば、駆動力の残存効果が期待できる。これにより、操作力のハンチングを防止することができる。
【0045】さらに、上記実施形態において、図4〜図6のグラフに示す関数はいずれも0又は一定勾配の直線で表されるが、曲線(例えば2次関数)であってもよい。また、各グラフの設定値(Fs,Fs−Fh,DFAD_SETH,DFAD_SETL,DFAV_SETH,DFAV_SETL)も種々の値をとり得る。また、上記実施形態では(5)式に示したように、比例成分、微分成分及び加減速成分を所定の配分係数で合算したものを駆動力変化量dFaとしたが、これに代えて、例えば(5)式の左辺をFaとすることにより、駆動力信号Faを同様の合算により直接求める制御も可能である。
【0046】
【発明の効果】以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。請求項1の電動車両の制御装置によれば、操作力の大きさに基づく比例成分と、操作力変動量に基づく変動成分とを所定割合で合算したものに基づいて駆動力が発生するので、操作力の変動量が大きい場合には駆動力も大きく変化して、駆動力の応答性が高められる。従って、例えば起動時に大きな操作力を必要としない。
【0047】請求項2の電動車両の制御装置によれば、例えば下り坂において車両が加速している場合には、増大する加減速成分によって制動力が増し、車両が減速している場合には、減少する加減速成分によって制動力が低下する。このようにして、車両の加速時には加速を抑制し、減速時には減速を抑制する方向に制御が行われるので、車両の挙動が安定する。これにより、操作力の変動が抑制され、操作性が向上する。
【0048】請求項3の電動車両の制御装置によれば、例えば起動時のように操作力が増大している場合には、比例成分に加えて変動成分の存在が駆動力変化量を大きくするため、駆動力の応答性が高められる。その結果、大きな操作力を必要とせずに、駆動力を迅速に立ち上げることができる。また、比例成分に関して操作力が設定値より大きい場合でも、その操作力が減少方向にあれば変動成分によって駆動力変化量が抑制され、駆動力の増大が抑えられる。従って、操作力が不安定になることを防止できる。こうして、操作性が向上する。
【0049】請求項4の電動車両の制御装置によれば、例えば下り坂において、モータの回転方向と逆方向に駆動力を発生させながら、ある程度の速度を維持した状態で車両を推進させようとした場合、車両がモータの回転方向に加速すると、加減速成分により逆方向の駆動力を増大させる変化量が合算される。一方、車両がモータの回転方向に減速すると、加減速成分により回転方向と逆方向の駆動力を減少させる変化量が合算される。このようにして、加速・減速ともに抑制されることにより、操作力を大きく変化させることなく、車両の挙動を安定させることができる。従って、操作性を向上させることができる。
【0050】請求項5の電動車両の制御装置によれば、例えば起動時においては、比例成分に加えて、変動成分が大きくなるので、大きな操作力を必要とせず、駆動力を迅速に立ち上げることができる。また、加減速成分は、回転方向に対する加減速度と設定値との差に基づいて算出されるため、車両の加減速を抑制して設定値に近づけるように作用する。従って、操作力の変動を抑制することができる。このようにして、操作性を向上させることができる。
【0051】請求項6の電動車両の制御装置によれば、例えば下り坂における制動補助の場合に、加減速成分が有効とされることにより、車両の加減速が抑制されるので、車両の挙動が安定し、操作性が向上する。
【0052】請求項7の電動車両の制御装置によれば、例えば下り坂における制動補助の場合に、変動成分を無効として、操作性を維持することができる。
【0053】請求項8の電動車両の制御装置によれば、操作力に基づく第1成分の他、操作力の変動量に基づく第2成分、及び、モータの速度変動量(車両の速度変動量と同じ)に基づく第3成分を加味して駆動力変化量が決定される。また、配分係数はモータの運転状態に基づいて決定されるので、「推進補助」、「制動補助」、「停止」、「起動」等、運転状況に合わせて最適な配分係数(係数を0とすればその成分は無効)を与えることにより、大きな操作力を必要としたり、操作力が不安定になったりすることのない、操作性に優れた制御を行うことができる。また、配分係数を所望の値に設定することにより、制御特性を操作者の好みに合わせたものとすることができる。
【出願人】 【識別番号】000004019
【氏名又は名称】株式会社ナブコ
【出願日】 平成11年7月6日(1999.7.6)
【代理人】 【識別番号】100092705
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆文
【公開番号】 特開2001−25108(P2001−25108A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−191965