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【発明の名称】 電気自動車およびハイブリッド電気自動車の制御装置
【発明者】 【氏名】井上 知之

【氏名】池田 英俊

【氏名】安西 清治

【要約】 【課題】応答無駄時間や応答遅れが大きい機械ブレーキ力の制御を電動機制御と併用して要求ブレーキ力を応答性よく発生させ、駆動系振動を抑制してドラバビリティを向上させた電気自動車の制御装置を得る。

【解決手段】要求ブレーキ力Tb*に応じて電動機回生ブレーキ力と機械ブレーキ力とを第1、第2の目標値Tm*、Th*に制御するブレーキ力制御手段を備え、ブレーキ力制御手段は、要求ブレーキ力から第1の目標値を減算して第2の目標値を設定する手段56と、要求ブレーキ力および速度情報Vmに基づいてモデル車速Vmmを演算する手段53と、モデル車速と速度情報との差に応じて、第1のブレーキ力目標値Tm**を補正する第1のブレーキ力目標値補正手段54、57、58とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両を駆動するための電動機と、前記車両または前記電動機の速度情報を検出する速度情報検出手段と、前記車両を制動するための機械ブレーキ手段と、要求ブレーキ力に応じて、前記電動機による回生ブレーキ力と前記機械ブレーキ手段による機械ブレーキ力とを、それぞれ第1および第2のブレーキ力目標値に制御するブレーキ力制御手段とを備えた電気自動車の制御装置において、前記ブレーキ力制御手段は、前記要求ブレーキ力から前記第1のブレーキ力目標値を減算して前記第2のブレーキ力目標値を設定する第2のブレーキ力目標値設定手段と、前記要求ブレーキ力および前記速度情報に基づいて、車両モデルの速度をモデル車速として演算する車両モデル演算手段と、前記モデル車速と前記速度情報との差に応じて、前記第1のブレーキ力目標値を補正する第1のブレーキ力目標値補正手段とを含むことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項2】 前記ブレーキ力制御手段は、前記モデル車速と前記速度情報との差に応じて、前記第2のブレーキ力目標値を補正する第2のブレーキ力目標値補正手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項3】 前記第2のブレーキ力目標値補正手段は、前記モデル車速と前記速度情報との差に応じたローパスフィルタ演算によりトルク定常誤差補償値を生成するトルク定常誤差補償手段を含み、前記トルク定常誤差補償値により、前記第2のブレーキ力目標値を補正することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項4】 前記速度情報検出手段は、前記電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段により構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の電気自動車の制御装置。
【請求項5】 前記速度情報検出手段は、前記車両の速度を車速として検出する車速検出手段により構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の電気自動車の制御装置。
【請求項6】 車両を駆動するための電動機および内燃機関と、前記車両または前記電動機の速度情報を検出する速度情報検出手段と、要求駆動力に応じて、前記電動機および前記内燃機関による駆動力をそれぞれ第1および第2の駆動力目標値に制御する駆動力制御手段とを備えたハイブリッド電気自動車の制御装置において、前記駆動力制御手段は、前記要求駆動力および前記速度情報に基づいて、車両モデルの速度をモデル車速として演算する車両モデル演算手段と、前記モデル車速と前記速度情報との差に応じて前記第1の駆動力目標値を補正する第1の駆動力目標値補正手段とを含むことを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項7】 前記車両を制動するための機械ブレーキ手段と、要求ブレーキ力に応じて、前記電動機による回生ブレーキ力と前記機械ブレーキ手段による機械ブレーキ力とを、それぞれ第1および第2のブレーキ力目標値に制御するブレーキ力制御手段とを備え、前記ブレーキ力制御手段は、前記要求ブレーキ力から前記第1のブレーキ力目標値を減じて前記第2のブレーキ力目標値を設定する第2のブレーキ力目標値設定手段と、前記要求ブレーキ力および前記速度情報に基づいて第2のモデル車速を演算する第2のモデル車速演算手段と、前記第2のモデル車速と前記速度情報との差に応じて前記第1および第2のブレーキ力目標値のうちの少なくとも前記第1のブレーキ力目標値を補正するブレーキ力目標値補正手段とを含むことを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項8】 前記駆動力制御手段は、前記モデル車速と前記速度情報との差に応じて前記第2の駆動力目標値を補正する第2の駆動力目標値補正手段を含むことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項9】 前記第2の駆動力目標値補正手段は、前記モデル車速と前記速度情報との差に応じたローパスフィルタ演算によりトルク定常誤差補償値を生成するトルク定常誤差補償手段を含み、前記トルク定常誤差補償値により、前記第2の駆動力目標値を補正することを特徴とする請求項8に記載の電気自動車の制御装置。
【請求項10】 前記速度情報検出手段は、前記電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段により構成されたことを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれかに記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項11】 前記速度情報検出手段は、前記車両の速度を車速として検出する車速検出手段により構成されたことを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれかに記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電動機を備えた車両のブレーキ力制御または電動機および内燃機関を備えた車両の駆動力制御を行う電気自動車およびハイブリッド電気自動車の制御装置に関し、特に応答無駄時間や応答遅れが大きい機械ブレーキ力の制御または内燃機関による駆動力の制御を電動機制御と併用して、要求ブレーキ力または要求駆動力を応答性よく発生させることにより、駆動系の振動を抑制してドラバビリティを向上させた電気自動車およびハイブリッド電気自動車の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電気自動車においては、エネルギー効率を向上させるために、制動時に回生ブレーキ制御が行われている。このような回生ブレーキ制御においては、電動機が発電機として機能し、回収されたブレーキエネルギーは電池に充電される。
【0003】しかし、車載電池が鉛電池やニッケル水素電池などの場合には、もし過充電されると、電解液の電気分解によりガスが発生して電池寿命が短くなってしまう。そこで、回生ブレーキ時の過充電を避けるために、回生ブレーキ力を上限値以下に抑制しなければならない。
【0004】また、電動機の定格出力などによっても、回生ブレーキ力の上限値は制限を受ける。このように、回生ブレーキ力が制限されることから、車両操縦者の要求ブレーキ力が回生ブレーキ力の上限値を越えた場合には、要求ブレーキ力に対する不足分を油圧ブレーキによる機械ブレーキ力によって補う必要がある。
【0005】したがって、たとえば電気自動車のブレーキ力制御においては、電動機による回生ブレーキ力と油圧ブレーキによる機械ブレーキ力とを協調制御して所望の要求ブレーキ力を発生させる制御装置が提案されている。
【0006】図11はたとえば特開平9−74605号公報に記載された従来の電気自動車の回生ブレーキ力制御装置の概略構成を示すブロック図であり、電動機制御装置に含まれるブレーキ力目標値演算部および電流制御演算部の機能構成を示している。
【0007】なお、図11には示されていないが、電気自動車の制御装置として、車両を駆動するための電動機と、車両を制動するための機械ブレーキ手段(たとえば、油圧ブレーキ)とが設けられている。
【0008】1はアクセルペダルの操作量すなわちアクセル開度Acを検出するアクセル開度検出器、2はブレーキペダルの操作量すなわちブレーキ開度Brを検出するブレーキ開度検出器、6は電動機(図示せず)の回転速度Vmを検出する回転速度検出器である。
【0009】12は機械ブレーキ力制御装置であり、たとえば油圧ブレーキからなる機械ブレーキ(図示せず)による機械ブレーキ力を制御する。41は電動機制御装置を構成する電流制御演算部であり、電動機を駆動する電力変換器(図示せず)に対するPWM(パルス幅変調)信号を生成する。
【0010】50は電動機制御装置を構成するブレーキ力目標値演算部であり、要求ブレーキ力(総合目標値)Tb*を演算する要求ブレーキ力演算部51と、回生ブレーキ力の目標値Tm*を演算する回生ブレーキ力目標値演算部52と、要求ブレーキ力と回生ブレーキ力目標値との差をとる減算手段56とを備えている。
【0011】ブレーキ力目標値演算部50は、アクセル開度Ac、ブレーキ開度Brおよび回転速度Vmに基づく演算処理により、機械ブレーキ力制御装置12に対する機械ブレーキ力目標値Th*と、電流制御演算部41に対する回生ブレーキ力目標値Tm*とを生成する。
【0012】要求ブレーキ力演算部51は、車両操縦者によるアクセル踏み込み量を示すアクセル開度Acと、ブレーキ踏み込み量を示すブレーキ開度Brと、電動機の回転速度Vmを入力情報として、あらかじめ設定されたマップを読み込むことにより、車両操縦者の要求に応じた総合目標値となる要求ブレーキ力Tb*を演算する。
【0013】回生ブレーキ力目標値演算部52は、回生ブレーキ力の上限値を設定する上限値設定部52aと、要求ブレーキ力Tb*と上限値とのうちの最小値を回生ブレーキ力目標値Tm*として選択出力する最小値選択部52bとを含む。
【0014】回生ブレーキ力目標値演算部52内の上限値設定部52aは、電池状態により過充電されない充電電力上限値と、電動機の定格出力による回生トルク上限値とから、回生ブレーキ力の制御目標を制限する上限値を決定する。これにより、回生ブレーキ力目標値演算部52は、上限値以下の回生ブレーキ力目標値Tm*を初期値として出力する。
【0015】これと同時に、ブレーキ力目標値演算部50内の減算手段56は、要求ブレーキ力Tb*から初期の回生ブレーキ力目標値Tm*を減算した値を、機械ブレーキ力目標値Th*として、機械ブレーキ力制御装置12に出力する。
【0016】ブレーキ力目標値演算部50は、機械ブレーキ力制御装置12および電流制御演算部41と関連してブレーキ制御手段を構成しており、要求ブレーキ力Tb*に応じて、電動機による回生ブレーキ力と機械ブレーキ手段による機械ブレーキ力とを、各ブレーキ力目標値Th*およびTm*に振り分けて制御する。
【0017】このとき、電動機による回生ブレーキ力は、電池状態などから制限された値となる。また、要求ブレーキ力Tb*のうち、回生ブレーキ力の制御目標の上限値を上回る分は、機械ブレーキ力によって補われる。
【0018】したがって、回生ブレーキ力と機械ブレーキ力との合計ブレーキ力は、回生ブレーキ力を制限しているにもかかわらず、要求ブレーキ力Tb*を目標として制御されることになる。
【0019】このように、要求ブレーキ力Tb*を電動機回生ブレーキ力と機械ブレーキ力とに配分することができるが、たとえば油圧ブレーキで実現される機械ブレーキ力の制御は、電動機による回生ブレーキ力の制御に比べて、応答無駄時間や応答遅れ時間が大きい。
【0020】したがって、回生ブレーキ力の目標値Th*と機械ブレーキ力の目標値Tm*との和が要求ブレーキ力Tb*となるように構成しても、実際に発生する総合ブレーキ力が要求ブレーキ力Tb*と一致しないので、ドライバビリティを損なう欠点がある。
【0021】特に、要求ブレーキ力Tb*が回生ブレーキ力の上限値を超えて機械ブレーキ力が発生し始める場合には、回生ブレーキ力の制限によって一旦ブレーキ力の上昇が止まった後、機械ブレーキ力が急激に発生することにより、振動などのショックを生じる欠点がある。
【0022】また、電気自動車の駆動系は、等価的に、柔らかいドライブシャフトの両端に電動機慣性と車両慣性を接続した「ねじり共振系」と考えることができるので、急激なブレーキ力の変化は、ダンピングの小さな「ねじり共振系」を加振することになり、一旦発生した振動がなかなか減衰しないという欠点がある。
【0023】図12および図13は各ブレーキ力および車両運動の時間変化を示す説明図であり、図12はゆっくりとブレーキを踏み込んだ場合の動作例、図13は速くブレーキを踏み込んだ場合の動作例をそれぞれ示している。
【0024】図12および図13において、それぞれ上から順に、要求ブレーキ力Tb*、電動機による回生ブレーキ力、油圧ブレーキによる機械ブレーキ力、車両加速度、電動機回転速度Vm(車速Vr)の時間変化が示されており、各ブレーキ力を負方向のトルクとして示している。
【0025】図12においては、ブレーキペダルの遅い踏み込み操作により、ブレーキペダルを踏み込んだ時刻(0秒)から1秒後までの間に、10[N・m]のブレーキ力Tb*が要求されている。
【0026】この要求ブレーキ力Tb*に応じて、電動機による回生ブレーキ力が増加するが、回生ブレーキ力の上限値(=5[N・m])で制限されるので、回生ブレーキ力の発生開始時刻(0秒)から0.5秒後に、上限値で一定となる。
【0027】なお、電動機による回生ブレーキ力は、応答性が十分に速く、回生ブレーキ力の目標値と実際の回生ブレーキ力とがほぼ一致するので、図12において、実線のように重なって見える。
【0028】上記のように、0.5秒経過後に回生ブレーキ力が上限値で制限されるので、油圧ブレーキによる機械ブレーキ力の目標値(破線参照)は、0.5秒経過後の時刻から増加を開始する。
【0029】しかし、油圧ブレーキは応答が遅いので、実際の機械ブレーキ力(実線)は、目標値(破線)よりもわずかに遅れて立ち上がり始める。したがって、車両操縦者の要求通りにブレーキ力が発生しないので、車両加速度は、0.5秒経過後の時点から、車両減速度(負方向への加速度)の増加が滞ってしまう。
【0030】この結果、機械ブレーキ力の遅れに起因して、図12のように、車両減速度の遅れ時間τが発生し、ドライバビリティが低下する。
【0031】一方、図13においては、ブレーキペダルの速い踏み込み操作により、ブレーキペダルを踏み込んだ時刻(0秒)から0.2秒後に、10[N・m]のブレーキ力Tb*が要求されている。
【0032】この要求ブレーキ力Tb*に応じて、電動機による回生ブレーキ力が増加するが、回生ブレーキ力の上限値(=5[N・m])で制限されるので、回生ブレーキ力の発生開始時刻(0秒)から0.1秒後に、上限値で一定となる。
【0033】また、電動機の回生ブレーキ力が制限された時点(0.1秒後)から、油圧ブレーキによる機械ブレーキ力の目標値(破線)が増加するが、応答遅れにより、実際の機械ブレーキ力(実線)は、立ち上がりが遅れるとともに、急な立ち上がりにより振動的になっている。
【0034】また、速いブレーキ操作時のブレーキ力の速い立ち上がりにより、電気自動車の駆動系(ねじり共振系)が加振され、車両加速度および電動機回転速度Vmにおいて、約4Hzの共振周波数のねじり振動が見られる。この振動は、ねじり共振系のダンピングが小さいので、なかなか減衰せずに、ドライバビリティが悪化を招くことになる。
【0035】なお、ここでは電気自動車の制動制御を例にとって、回生ブレーキ力と機械ブレーキ力との協調制御について説明したが、ハイブリッド電気自動車の駆動制御において、電動機による駆動力と内燃機関(エンジン)による駆動力とを協調制御する場合にも同様の問題が生じる。
【0036】すなわち、内燃機関による駆動力制御は、電動機による駆動力制御に比べて、応答無駄時間や応答遅れ時間が大きく、電動機による駆動力の目標と内燃機関による駆動力の目標の和が要求駆動力となるように構成しても、実際に発生するトータルの駆動力が要求駆動力と一致しないので、ドライバビリティを損なう欠点がある。
【0037】また、内燃機関による駆動力は、点火行程毎の間欠燃焼によってトルクを発生させているので、トルク変動が発生する。このような駆動力の変動は、前述と同様に、ダンピングの小さな「ねじり共振系」を加振することになり、一旦発生した振動がなかなか減衰しないという欠点がある。
【0038】
【発明が解決しようとする課題】従来の電気自動車およびハイブリッド電気自動車の制御装置は以上のように、制動制御においては、機械ブレーキ力制御が回生ブレーキ力制御に比べて応答無駄時間や応答遅れ時間が大きいことから、回生ブレーキ力目標値Th*と機械ブレーキ力目標値Tm*との和が要求ブレーキ力Tb*となるように構成しても、実際に発生する総合ブレーキ力が要求ブレーキ力Tb*と一致しないので、振動ショックなどが生じてドライバビリティを損なうという問題点があった。
【0039】また、電気自動車の駆動系が「ねじり共振系」により構成されているので、急激なブレーキ力の変化がダンピングの小さな「ねじり共振系」を加振することになり、一旦発生した振動がなかなか減衰しないという問題点があった。
【0040】また、ハイブリッド電気自動車の駆動制御においても、内燃機関による駆動力制御が電動機による駆動力制御に比べて応答無駄時間や応答遅れ時間が大きいことから、電動機による駆動力目標値と内燃機関による駆動力目標値との和が要求駆動力となるように構成しても、実際に発生する総合駆動力が要求駆動力と一致せず、ドライバビリティを損なううえ、一旦発生した振動がなかなか減衰しないという問題点があった。
【0041】この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、応答無駄時間や応答遅れが大きい機械ブレーキ力の制御または内燃機関の駆動力制御を電動機制御と併用して、要求ブレーキ力および要求駆動力を応答性よく発生させることにより、駆動系振動を抑制してドラバビリティを向上させた電気自動車およびハイブリッド電気自動車の制御装置を得ることを目的とする。
【0042】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係る電気自動車の制御装置は、車両を駆動するための電動機と、車両または電動機の速度情報を検出する速度情報検出手段と、車両を制動するための機械ブレーキ手段と、要求ブレーキ力に応じて、電動機による回生ブレーキ力と機械ブレーキ手段による機械ブレーキ力とを、それぞれ第1および第2のブレーキ力目標値に制御するブレーキ力制御手段とを備えた電気自動車の制御装置において、ブレーキ力制御手段は、要求ブレーキ力から第1のブレーキ力目標値を減算して第2のブレーキ力目標値を設定する第2のブレーキ力目標値設定手段と、要求ブレーキ力および速度情報に基づいて、車両モデルの速度をモデル車速として演算する車両モデル演算手段と、モデル車速と速度情報との差に応じて、第1のブレーキ力目標値を補正する第1のブレーキ力目標値補正手段とを含むものである。
【0043】また、この発明の請求項2に係る電気自動車の制御装置は、請求項1において、ブレーキ力制御手段は、モデル車速と速度情報との差に応じて、第2のブレーキ力目標値を補正する第2のブレーキ力目標値補正手段を含むものである。
【0044】また、この発明の請求項3に係る電気自動車の制御装置は、請求項2において、第2のブレーキ力目標値補正手段は、モデル車速と速度情報との差に応じたローパスフィルタ演算によりトルク定常誤差補償値を生成するトルク定常誤差補償手段を含み、トルク定常誤差補償値により、第2のブレーキ力目標値を補正するものである。
【0045】また、この発明の請求項4に係る電気自動車の制御装置は、請求項1から請求項3までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段により構成されたものである。
【0046】また、この発明の請求項5に係る電気自動車の制御装置は、請求項1から請求項3までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、車両の速度を車速として検出する車速検出手段により構成されたものである。
【0047】また、この発明の請求項6に係るハイブリッド電気自動車の制御装置は、車両を駆動するための電動機および内燃機関と、車両または電動機の速度情報を検出する速度情報検出手段と、要求駆動力に応じて、電動機および内燃機関による駆動力をそれぞれ第1および第2の駆動力目標値に制御する駆動力制御手段とを備えたハイブリッド電気自動車の制御装置において、駆動力制御手段は、要求駆動力および速度情報に基づいて、車両モデルの速度をモデル車速として演算する車両モデル演算手段と、モデル車速と速度情報との差に応じて第1の駆動力目標値を補正する第1の駆動力目標値補正手段とを含むものである。
【0048】また、この発明の請求項7に係るハイブリッド電気自動車の制御装置は、請求項6において、車両を制動するための機械ブレーキ手段と、要求ブレーキ力に応じて、電動機による回生ブレーキ力と機械ブレーキ手段による機械ブレーキ力とを、それぞれ第1および第2のブレーキ力目標値に制御するブレーキ力制御手段とを備え、ブレーキ力制御手段は、要求ブレーキ力から第1のブレーキ力目標値を減じて第2のブレーキ力目標値を設定する第2のブレーキ力目標値設定手段と、要求ブレーキ力および速度情報に基づいて第2のモデル車速を演算する第2のモデル車速演算手段と、第2のモデル車速と速度情報との差に応じて第1および第2のブレーキ力目標値のうちの少なくとも第1のブレーキ力目標値を補正するブレーキ力目標値補正手段とを含むものである。
【0049】また、この発明の請求項8に係るハイブリッド電気自動車の制御装置は、請求項6または請求項7において、駆動力制御手段は、モデル車速と速度情報との差に応じて第2の駆動力目標値を補正する第2の駆動力目標値補正手段を含むものである。
【0050】また、この発明の請求項9に係るハイブリッド電気自動車の制御装置は、請求項8において、第2の駆動力目標値補正手段は、モデル車速と速度情報との差に応じたローパスフィルタ演算によりトルク定常誤差補償値を生成するトルク定常誤差補償手段を含み、トルク定常誤差補償値により、第2の駆動力目標値を補正するものである。
【0051】また、この発明の請求項10に係るハイブリッド電気自動車の制御装置は、請求項6から請求項9までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段により構成されたものである。
【0052】また、この発明の請求項11に係るハイブリッド電気自動車の制御装置は、請求項6から請求項9までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、車両の速度を車速として検出する車速検出手段により構成されたものである。
【0053】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、この発明の実施の形態1を図について説明する。図1はこの発明の実施の形態1による電気自動車のシステム全体を概略的に示すブロック構成図であり、図2は図1内の電動機制御装置3の具体的構成を示す機能ブロック図である。
【0054】図3は図2内のブレーキ力目標値演算部50Aの具体的構成を示す機能ブロック図であり、前述の図11に対応している。また、図4および図5はこの発明の実施の形態1の作用効果を示す説明図であり、前述の図12および図13にそれぞれ対応している。
【0055】各図において、前述(図11参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付し、また、前述と対応する構成要素については、各符号の後に「A」を付して、それぞれ詳述を省略する。
【0056】図1において、3はブレーキ力目標値演算部(後述する)を含む電動機制御装置、4は電動機制御装置3からのPWM信号PWにより制御される電力変換器、5は電力変換器4からの三相出力U、V、Wにより駆動される電動機である。
【0057】電力変換器4は、PWM信号PWによりバッテリ10の出力電圧を三相出力U、V、Wに変換する。電動機制御装置3は、電力変換器4および機械ブレーキ力制御装置12Aなどと関連して、ブレーキ力制御手段を構成している。
【0058】7は電動機5の出力軸に接続されたディファレンシャル(差動)ギア(以下、「デフギア」と記す)、8はデフギア7を介して回転駆動される車両のドライブシャフト、9はドライブシャフト8の両端に設けられた車輪、10は車載のバッテリ、11はバッテリ10に接続された電池制御装置である。
【0059】電池制御装置11は、機械ブレーキ力制御装置12Aとともに、電動機制御装置3に関連している。
【0060】20は機械(油圧)ブレーキ力を発生するための油圧源となるマスタシリンダ、21はマスタシリンダ20に連結された増圧バルブ、22は増圧バルブ21を介した給油により車輪9に機械ブレーキ力を印加するためのホイールシリンダである。
【0061】23はホイールシリンダ圧Phを検出する圧力検出器、24は増圧バルブ21の下流側に連結された減圧バルブ、25は減圧バルブ24を介してブレーキ液を回収するリザーバタンクである。
【0062】26はリザーバタンク25からブレーキ液をマスタシリンダ20側に戻すための油圧ポンプ、27は油圧ポンプ26の下流側に設けられた逆流防止用のチェックバルブ、28はチェックバルブ27の下流側および増圧バルブ21の上流側に設けられた切り替え弁、29は切り替え弁28の下流に配置されたマスタシリンダ20用のフルードタンクである。
【0063】マスタシリンダ20〜フルードタンク29は、機械(油圧)ブレーキ装置を構成しており、増圧バルブ21、減圧バルブ24、油圧ポンプ26および切り替え弁28は、機械ブレーキ力制御装置12Aにより制御される。
【0064】次に、図1を参照しながら、この発明の実施の形態1の電動機5による駆動制御および制動制御の概略動作について説明する。
【0065】まず、アクセル開度検出器1は、車両操縦者によるアクセル開度Ac(アクセルペダル踏み込み量)を検出し、ブレーキ開度検出器2は、ブレーキ開度Br(ブレーキペダル踏み込み量)を検出する。また、回転速度検出器6は、車速Vrに対応した電動機5の回転速度Vmを検出し、電池制御装置11は、バッテリ10の状態を検出する。
【0066】電動機制御装置3は、これらの検出情報(アクセル開度Ac、ブレーキ開度Br、電動機回転速度Vm、バッテリ状態)に基づいて、電動機5の駆動力(または、回生ブレーキ力)の目標値および機械ブレーキ力(ブレーキ油圧)の目標値を演算決定する。
【0067】たとえば、電動機5による駆動力制御を行う場合、電動機制御装置3は、バッテリ10の充電状態などに応じて電動機5の駆動力目標値を補正し、補正後の駆動力目標値に基づいて、電力変換器4に対するPWM信号PWを生成する。
【0068】PWM信号PWは、電力変換器4内の各スイッチング素子(図示せず)をオンオフして、バッテリ10からの直流電力を三相出力(交流電力)U、V、Wに変換し、電動機5を回転駆動する。電動機5の駆動力は、デフギア7およびドライブシャフト8を介して車輪9に伝達され、車輪9を回転させて車両を走行させる。
【0069】一方、機械ブレーキによる制動制御を行う場合、電動機制御装置3は、アクセル開度Acおよびブレーキ開度Brに基づいて、機械ブレーキ力制御装置12Aに対する機械ブレーキ力目標値Th*を出力する。
【0070】機械ブレーキ力制御装置12Aは、機械ブレーキ力目標値Th*に基づいて、ホイールシリンダ22に関連する増減バルブ21および24を開閉操作し、ホイールシリンダ圧Phを制御することによって機械ブレーキ力を制御する。
【0071】ここで、図1内の機械ブレーキ力制御装置12Aの具体的動作について、さらに詳細に説明する。図1のように、マスタシリンダ20からの油圧配管は、増圧バルブ21を介してホイールシリンダ22に接続され、さらに減圧バルブ24を介してリザーバタンク25に接続されている。
【0072】リザーバタンク25からの配管は、油圧ポンプ26、チェックバルブ27および切り替え弁28を介して、フルードタンク29またはマスタシリンダ20に接続されている。
【0073】まず、マスタシリンダ20は、車両操縦者によるブレーキペダルの踏み込み量(ブレーキ開度Br)に応じた油圧を発生する。
【0074】同時に、油圧配管に設けられた増圧バルブ21および減圧バルブ24は、機械ブレーキ力制御装置12Aからの操作によりオンオフ制御され、減圧バルブ24を閉じた状態で増圧バルブ21をオン制御すると、マスタシリンダ20での増圧に応じてホイールシリンダ22も増圧する。
【0075】逆に、増圧バルブ21を閉じた状態で減圧バルブ24をオン制御すると、マスタシリンダ20の状態にかかわらず、ホイールシリンダ22は減圧する。また、減圧バルブ24および増圧バルブ21を同時にオフ制御すると、マスタシリンダ20での増減圧にかかわらず、ホイールシリンダ圧は保持される。
【0076】油圧ポンプ26は、機械ブレーキ力制御装置12Aからの操作により必要に応じて駆動制御され、リザーバタンク25に貯まっているブレーキ液を切り替え弁28側に供給する。
【0077】切り替え弁28は、機械ブレーキ力制御装置12Aからの操作により切り替え駆動され、油圧ポンプ26から供給されるブレーキ液をフルードタンク29側に戻すか、またはマスタシリンダ20側に戻すかを選択する。
【0078】このとき、チェックバルブ27は、切り替え弁28側から油圧ポンプ26側にブレーキ液が逆流するのを防止している。
【0079】機械ブレーキ力制御装置12Aは、電動機制御装置3から入力される機械ブレーキ力目標値Th*に基づいてブレーキ油圧の目標値を決定し、このブレーキ油圧の目標値に基づいて増圧バルブ21および減圧バルブ24を操作し、ブレーキ油圧を制御する。
【0080】また、機械ブレーキ力制御装置12Aは、油圧ポンプ26および切り替え弁28を操作して、マスタシリンダ20内のブレーキ液が不足状態となるのを防止する。
【0081】次に、図2を参照しながら、この発明の実施の形態1による電動機5の制御系について説明する。図2において、電動機制御装置3は、機械ブレーキ力目標値Th*を生成するブレーキ力目標値演算部50Aと、PWM信号PWを生成する電流制御演算部41Aとを備えている。
【0082】また、電流制御演算部41Aは、ベクトル制御法に基づく構成要素として、磁束指令値φを生成する磁束指令計算部42と、トルク電流値Iqを生成するトルク電流計算部43と、励磁電流値Idを生成する励磁電流計算部44と、PWM信号PWを生成するPWM発生部45とを備えている。
【0083】次に、図2に示した電動機制御装置3の動作について説明する。まず、電動機制御装置3内のブレーキ力目標値演算部50Aは、アクセル開度Ac、ブレーキ開度Brおよび電動機回転速度Vmに基づいて、機械ブレーキ目標値Th*および回生ブレーキ目標値Tm**を演算する。
【0084】機械ブレーキ目標値Th*は、電動機制御装置3から出力されて、機械ブレーキ力制御装置12Aに入力され、回生ブレーキ目標値Tm**は、電動機制御装置3内の電流制御演算部41Aに入力される。
【0085】電流制御演算部41A内の磁束指令計算部42は、電動機回転速度Vmに基づいて、電動機5に対する磁束指令値φを計算する。磁束指令値φは、トルク電流計算部43および励磁電流計算部44にそれぞれ供給され、また、回生ブレーキ目標値Tm**は、トルク電流計算部43に供給される。
【0086】トルク電流計算部43は、トルク電流係数kq、回生ブレーキ目標値Tm**および磁束指令値φを用いて、以下の(1)式により、トルク電流指令値Iqを計算する。
【0087】Iq=kq×Tm**/φ ・・・(1)
【0088】また、励磁電流計算部44は、励磁電流係数kdおよび磁束指令値φを用いて、以下の(2)式により、励磁電流指令値Idを計算する。
【0089】Id=kd×φ ・・・(2)
(1)式、(2)式から得られる電流指令値のうち、トルク電流指令値Iqは、電動機5の駆動力(出力トルク)に対応しており、励磁電流指令値Idは、電動機5の励磁電流を示している。
【0090】すなわち、PWM発生部45は、トルク電流指令値Iqおよび励磁電流指令値Idに基づいて、PWM信号PWを生成して電力変換器4を制御する。これにより、電動機5に流れる電流をベクトル制御して、電動機5の出力トルクを制御することができる。
【0091】以上に述べたように、電動機制御装置3は車両操縦者によるアクセル開度およびブレーキ開度に基づいて、機械ブレーキ力の目標値および電動機による回生ブレーキまたは駆動力の目標値を設定し、それぞれの目標値に基づいて、機械ブレーキ力制御装置12Aは油圧ブレーキを制御して、電動機制御装置3は電動機5を制御して、車両の要求ブレーキ力または駆動力を制御することができる。
【0092】次に、図3を参照しながら、この発明の実施の形態1の要部となる車両モデルを用いた速度差補償機能について説明する。図3において、電動機制御装置3内のブレーキ力目標値演算部50Aは、従来例(図11)と比べて、車両モデルによる速度差補償機能が付加されている。
【0093】図3において、51、52および56は前述(図11参照)と同様のものである。減算手段56は、要求ブレーキ力演算部51および回生ブレーキ力目標値演算部52と関連して、要求ブレーキ力Tb*から回生ブレーキ力目標値(第1のブレーキ力目標値)Tm*を減算して、機械ブレーキ力目標値(第2のブレーキ力目標値)Th*を設定する第2のブレーキ力目標値設定手段を構成している。
【0094】53は車両モデル演算部であり、要求ブレーキ力Tb*および回転速度Vmに基づいて、車両モデルの速度をモデル車速Vmmとして演算する。
【0095】54は速度差補償演算部であり、減算手段57(後述する)の出力信号に基づく補償演算を実行し、速度差補償値ΔTmを生成する。速度差補償演算部54は、比例ゲインを乗じる構成でもよいが、比例、積分、微分演算を組み合わせたものでもよい。
【0096】57はモデル車速Vmmと回転速度Vmとの速度差をとる減算手段であり、速度差を示す出力信号を速度差補償演算部54に入力する。58は補償後の回生ブレーキ力目標値Tm**を生成する加算手段であり、回生ブレーキ力目標値Tm*と速度差補償値ΔTmとを加算した値を、回生ブレーキ力目標値Tm**として出力する。
【0097】減算手段57および加算手段58は、車両モデル演算部53および速度差補償演算部54と関連して回生ブレーキ力目標値補正手段(第1のブレーキ力目標値補正手段)を構成しており、モデル車速Vmmと回転速度Vmとの速度差に応じて、補正した回生(第1の)ブレーキ力目標値Tm**を出力する。
【0098】図3においては、ブレーキ力および駆動力(トルク)が混在するものとし、電動機軸におけるトルクに等価変換して、実際の演算を実行するものとする。また、回転速度Vmについても、電動機軸における回転速度に等価変換して、実際の演算を実行するものとする。
【0099】まず、ブレーキ力目標値演算部50A内の要求ブレーキ力演算部51は、前述と同様に、アクセル開度Ac、ブレーキ開度Brおよび電動機回転速度Vmを入力としてマップを読み込み、要求ブレーキ力(総合目標値)Tb*を決定する。
【0100】また、回生ブレーキ力目標値演算部52は、要求ブレーキ力Tb*と回生ブレーキ力の上限値とを比べて小さい値を回生ブレーキ力目標値Tm*の初期値として出力する。
【0101】減算手段56は、要求ブレーキ力Tb*から回生ブレーキ力目標値Tm*の初期値を減算した値を機械ブレーキ力目標値Th*として、機械ブレーキ力制御装置12Aに出力する。
【0102】これにより、要求ブレーキ力Tb*は回生ブレーキ力および機械ブレーキ力に配分されるが、このままでは、機械ブレーキ力の制御の応答無駄時間や応答遅れ時間により、実際の総合ブレーキ力が要求ブレーキ力Tb*と一致せずに、ドライバビリティを損なうことになる。
【0103】そこで、図3のように、ブレーキ力目標値演算部50A内に車両モデル演算部53を導入することにより、車両モデルの速度(モデル車速)Vmmと電動機回転速度Vmとの速度差を用いて、回生トルク力目標値Tm**を補正する。
【0104】これにより、要求ブレーキ力Tb*と実際に発生する総合ブレーキ力とを一致させることができる。以下、車両モデル演算部53を含む回生ブレーキ力目標値の補償動作について具体的に説明する。
【0105】まず、車両モデル演算部53は、要求ブレーキ力Tb*と電動機回転速度Vmとを用いて、以下の(3)式により、電動機軸換算されたモデル車速Vmmを演算する。
【0106】
Vmm=∫{−(Tm*)−sign(ωm)・μ・M・g−sign(ωm)・Kv・ωm2}/(Jm+Jv)dt ・・・(3)
【0107】(3)式において、Jmは電動機5の慣性、Jvは電動機軸換算した車両の慣性、Kvは空気抵抗係数、ωmは電動機5の角速度である。また、sign(ωm)は、電動機角速度ωmが正のときには「1」を示し、負のときには「−1」を示し、0のときには「0」を示す関数である。
【0108】さらに、(3)式において、右辺の第2項(μ・M・g)は、ころがり抵抗を示し、右辺の第3項(Kv・ωm2)は空気抵抗を示す。したがって、(3)式は、要求ブレーキ力Tb*と、ころがり抵抗と、空気抵抗との和によって、電動機慣性および車両慣性を含む車両が制動(または、駆動)されて、モデル車速Vmm(車速Vr)が発生することを示している。
【0109】つまり、車両モデル演算部53における車両モデルは、車両が1慣性と見なされており、したがって、前述の2慣性共振系のように、モデル車速Vmmが振動することはない。
【0110】続いて、減算手段57は、モデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとの速度差を算出する。また、速度差補償演算部54は、速度差に応じた補償演算を実行し、速度差補償値ΔTmを出力する。
【0111】最後に、加算手段58は、回生ブレーキ力目標値Tm*の初期値と速度差補償値ΔTmとを加算し、これを回生ブレーキ力目標値Tm**として、電流制御演算部41Aに入力する。
【0112】以下、前述と同様に、電流制御演算部41Aは、回生ブレーキ力目標値Tm**に基づいてPWM信号PWを出力し、電力変換器4(図1参照)を制御することにより、電動機5の回生ブレーキ力を目標値Tm**に制御する。
【0113】図4および図5はこの発明の実施の形態1による電動機制御装置3の作用効果を示す説明図であり、それぞれ前述の図12および図13に対応している。図4はゆっくりとブレーキを踏み込んだ場合、図5は速くブレーキを踏んだ場合の動作例を示す。
【0114】図4においては、車両モデルによるモデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとが一致するように、モデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとの速度差に基づいて回生ブレーキ力を補正しているので、油圧ブレーキ力の応答遅れを回生ブレーキ力が補償している。
【0115】したがって、要求ブレーキ力Tb*の発生時刻(0秒)から0.5秒経過後において、車両加速度の停滞は発生せず、従来例のような車両減速度の遅れ時間τ(図12参照)が発生することはない。
【0116】また、図5においては、モデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとが一致するように、速度差に基づいて回生ブレーキ力目標値Tm**を補正しているので、振動成分のないモデル車速Vmmと共振中の電動機回転速度Vmとの速度差が共振成分となり、この共振成分を打ち消すように回生ブレーキ力が補正される。
【0117】したがって、要求ブレーキ力Tb*の発生時刻(0秒)から0.5秒経過後において、共振成分は速やかに減衰しており、長時間にわたって振動が継続することはない。
【0118】このように、電動機5による回生ブレーキ力と油圧ブレーキによる機械ブレーキ力とを協調させて各目標値に制御するために、要求ブレーキ力Tb*と電動機回転速度Vmとを用いてモデル車速Vmmを演算する車両モデル演算部53と、回生ブレーキ力目標値Tm**をモデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとの速度差を用いて補正する補正手段54、57、58とを設けることにより、以下の作用効果を奏する。
【0119】すなわち、回生ブレーキ力目標値Tm**は、要求ブレーキ力Tb*から期待される車両減速度を反映したモデル車速Vmmと実際の車速Vrを反映した電動機回転速度Vmとの速度差を用いて補正されるので、モデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとが一致するように制御される。
【0120】したがって、機械ブレーキ力の応答性が遅れる場合であっても、電動機5による回生ブレーキ力制御によって、応答性よく要求ブレーキ力Tb*を発生させることができる。
【0121】また、機械ブレーキ力の絶対値が過大または過小であった場合でも、電動機5による回生ブレーキ力制御によって、モデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとが一致するように制御されるので、機械ブレーキ力および回生ブレーキ力の合計として、高い精度で要求ブレーキ力Tb*を発生させることができる。
【0122】また、路面勾配の影響を受けないモデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとが一致するように制御されるので、路面勾配にかかわらず、車両操縦者による要求ブレーキ力Tb*に応じた車両走行を達成することができる。
【0123】また、機械ブレーキ力の変動によって駆動系にねじり共振が発生しても、ねじり共振による振動がモデル車速Vmmと電動機回転速度Vmとの速度差として検出され、この速度差を打ち消すように回生ブレーキ力が制御されるので、ねじり共振を直ちに収束させることができる。
【0124】ただし、このとき、速度差補償値ΔTmにより増大補正された場合は、増大補正された回生ブレーキ力目標値Tm**により、バッテリ10が過充電されることになるが、わずかな過充電期間でバッテリ10が破損されることはないので、特に重大な支障が生じることもない。
【0125】なお、ここでは、機械ブレーキ力制御装置12Aとして、油圧ブレーキ力のみを制御する場合を例にとって説明したが、油圧ブレーキに加えて、内燃機関によるブレーキ力(エンジンブレーキ)を用いてもよい。また、電動機5が交流電動機により構成された場合を示したが、電動機5は交流電動機に制約されるものではない。
【0126】実施の形態2.なお、上記実施の形態1では、電気自動車の制動制御に適用し、回生ブレーキ力と機械ブレーキ力とを協調させて要求通りのブレーキ力を発生させる場合について説明図したが、ハイブリッド電気自動車の駆動制御に適用し、電動機5による駆動力と内燃機関による駆動力とを協調させて要求通りの駆動力を発生させてもよい。
【0127】以下、ハイブリッド電気自動車の駆動制御に適用したこの発明の実施の形態2を図について説明する。図6は、この発明の実施の形態2によるハイブリッド電気自動車のシステム全体を示すブロック構成図であり、前述の図1に対応している。
【0128】また、図7は図6内の電動機制御装置3Bに含まれる駆動力目標値演算部60の具体的構成を示す機能ブロック図であり、前述の図3に対応している。図6および図7において、前述(図1、図3、図11参照)と同様のものについては、同一符号を付し、また、前述と対応する構成要素については、符号の後に「B」を付して、それぞれ詳述を省略する。
【0129】図6において、機械ブレーキ力制御装置12Aおよび油圧ブレーキ手段20〜29が省略されているが、前述(図1)に示した通りのブレーキ力制御手段およびブレーキ力目標値補正手段を含んでいてもよい。
【0130】この場合、電動機5とともにドライブシャフト8を駆動する内燃機関13と、電動機制御装置3Bと関連して内燃機関13を制御する内燃機関制御装置14とが付加されている。
【0131】また、内燃機関制御装置14の制御下で内燃機関13を制御するために、スロットルバルブを駆動する吸入空気量制御装置15と、インジェクタを駆動する燃料噴射制御装置16と、イグナイタを駆動する点火時期制御装置17とが設けられている。
【0132】電動機制御装置3Bおよび内燃機関制御装置14は、制動時における回生ブレーキ力と機械ブレーキ力との協調制御のみならず、車両の駆動時における電動機5と内燃機関13との各駆動力の協調制御を行う。
【0133】電動機5に直結された内燃機関13は、電動機5と同様に車両駆動手段を構成しており、デフギア7およびドライブシャフト8を介して車輪9を駆動する。電動機制御装置3Bは、内燃機関13による駆動力の目標値を内燃機関制御装置14に入力する。
【0134】内燃機関制御装置14は、内燃機関による駆動力の目標値に基づいて、あらかじめ設定されたマップを読み込むことにより、目標吸入空気量、目標空燃比および目標点火時期などの制御パラメータを決定する。
【0135】以下、内燃機関制御装置14により決定された制御パラメータに基づいて、吸入空気量制御装置15は内燃機関13の吸入空気量を制御し、燃料噴射量制御装置16は内燃機関13の燃料噴射量を制御し、点火時期制御装置17は内燃機関13の点火時期を制御し、これにより、内燃機関13から発生する駆動力は目標値に制御される。
【0136】図7において、前述(図3)と異なる点は、ブレーキ力を駆動力に置き換え、機械ブレーキを内燃機関13に置き換えたことのみにある。すなわち、電動機制御装置3B内の駆動力目標値演算部60は、各種検出情報から要求駆動力Td*を演算する要求駆動力演算部61と、要求駆動力Td*から電動機駆動力目標値Dm*を演算する電動機駆動力目標値演算部62とを備えている。
【0137】また、駆動力目標値演算部60は、車両モデル演算部53B、速度差補償演算部54B、減算手段56B、57B、および加算手段58Bを備えている。減算手段56Bは、要求駆動力Td*から電動機駆動力目標値Dm*の初期値を減算した値を内燃機関駆動力目標値Te*として、内燃機関制御装置14に出力する。
【0138】車両モデル演算部53Bは、要求駆動力Td*および回転速度Vmに基づいてモデル車速Vmdを演算し、減算手段57Bは、モデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとの速度差を演算する。
【0139】また、速度差補償演算部54Bは、速度差に応じた補償演算により速度差補償値ΔDmを出力し、加算手段58Bは、駆動力目標値Dm*に速度差補償値ΔDmを加算して、速度差補正された電動機5の駆動力目標値Dm**を出力する。
【0140】車両モデル演算部53B、速度差補償演算部54B、減算手段57Bおよび加算手段58Bは、速度差に応じた補償演算により電動機5の駆動力目標値Dm*を補正する第1の駆動力目標値補正手段を構成している。
【0141】また、電動機制御装置3Bおよび内燃機関制御装置14は、要求駆動力Td*に応じて、電動機5および内燃機関13による駆動力をそれぞれの駆動力目標値Dm**およびTe*に制御する駆動力制御手段を構成している。
【0142】次に、図6および図7を参照しながら、この発明の実施の形態2による駆動力目標値演算部60の動作について説明する。まず、要求駆動力演算部61は、アクセル開度Ac、ブレーキ開度Brおよび電動機回転速度Vmを入力として、マップを読み込むことにより、車両操縦者の要求に応じた要求駆動力(目標値)Td*を決定する。
【0143】続いて、電動機駆動力目標値演算部62は、要求駆動力Td*および電池状態に基づいて、あらかじめ設定されたマップを読み込むことにより、電動機駆動力目標値Dm*の初期値を出力する。
【0144】減算手段56Bは、要求駆動力Td*から電動機駆動力目標値Dm*の初期値を減算した値を内燃機関駆動力目標値Te*として、内燃機関制御装置14に出力する。これにより、要求駆動力Td*は、電動機駆動力目標値Dm*と内燃機関駆動力目標値Te*とに配分される。
【0145】一方、車両モデル演算部53Bは、要求駆動力Td*および電動機回転速度Vmに基づいてモデル車速Vmdを演算し、速度差補償演算部54Bは、モデル車速Vmdと回転速度Vmとの速度差に応じた補償演算を実行する。また、加算手段58Bは、電動機駆動力目標値Dm*に速度差補償値ΔDmを加算し、補正された電動機駆動力目標値Dmm*を出力する。
【0146】これにより、電動機5と内燃機関13(電動機5による駆動力制御に比べて応答無駄時間や応答遅れ時間が大きい)とを用いて駆動力を分担制御する場合においても、車両モデル演算部53Bから出力されるモデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとが一致するように、モデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとの速度差に応じて補正された電動機駆動力目標値Dm**が生成される。
【0147】したがって、実際に発生する総合駆動力を要求駆動力目標値Td*と一致させることができ、良好なドライバビリティが得られる。また、内燃機関13の間欠燃焼により発生するトルク変動により、ダンピングの小さなねじり共振系を加振して減衰しにくい問題があったが、上記構成により解決することができる。
【0148】すなわち、モデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとが一致するように電動機駆動力目標値Dm*が補正されているので、振動成分のないモデル車速Vmdと共振中の電動機回転速度Vmとの速度差が共振成分となり、この共振成分を打ち消すように電動機駆動力目標値Dm*が補正されることから、共振を速やかに減衰させることができる。
【0149】したがって、内燃機関13のフライホイールを小さくして車両重量を低減することができるので、燃費を向上することができる。また、振動抑制のために、内燃機関13の出力軸に通常取り付けられているねじりダンパを小さくする(または、無くす)ことができる。
【0150】以上のように、電動機5および内燃機関13とを有するハイブリッド電気自動車の駆動力制御において、要求駆動力Td*に応じて電動機駆動力目標値Dm**と内燃機関駆動力目標値Te*とを協調制御するために、モデル車速Vmdを演算する車両モデル演算部53Bと、モデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとの速度差に応じて電動機駆動力目標値Dm*を補正する手段(54B、57B、58B)とを備えたので、以下の作用効果を奏する。
【0151】すなわち、電動機駆動力目標値Dm**は、モデル車速Vmd(要求駆動力Td*から期待される車両加速度を反映している)と電動機回転速度Vm(実際の車速Vrを反映している)との速度差を用いて補正されるので、モデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとが一致するように制御される。
【0152】したがって、機械的な内燃機関13による駆動力の応答性が遅い場合であっても、電動機5による駆動力制御によって、応答性よく要求駆動力Td*を実現することができる。
【0153】また、内燃機関13による駆動力の絶対値が過大または過小であった場合でも、電動機5による駆動力制御によって、モデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとが一致するように制御されるので、内燃機関駆動力と電動機駆動力との合計として、高い精度で要求駆動力Td*を発生させることができる。
【0154】また、電動機回転速度Vmは、路面勾配の影響を受けないモデル車速Vmdに一致するように制御されるので、路面勾配にかかわらず車両操縦者による要求駆動力Td*に応じた車両走行性が得られる。
【0155】また、内燃機関13による駆動力変動によって駆動系のねじり共振が発生しても、ねじり共振による振動がモデル車速Vmdと電動機回転速度Vmとの速度差として検出され、この速度差を打ち消すように電動機駆動力が制御されるので、ねじり共振を直ちに収束させることができる。
【0156】実施の形態3.なお、上記実施の形態1では、速度差補償値ΔTmに応じて回生ブレーキ力目標値Tm*のみを補正したが、回生エネルギーの増大補正によるバッテリ10(図1参照)の過充電を抑制するために、速度差補償値ΔTmに応じて機械ブレーキ力目標値Th*を補正してもよい。
【0157】以下、速度差補償値ΔTmに応じて機械ブレーキ力目標値Th*も補正したこの発明の実施の形態3を図について説明する。図8はこの発明の実施の形態3による電気自動車の制御装置のブレーキ力目標値演算部50Cの具体的構成を示す機能ブロック図であり、前述の図3に対応している。
【0158】図8において、前述(図3参照)と同様のものについては、同一符号を付し、また、前述と対応する構成要素については、符号の後に「C」を付して、それぞれ詳述を省略する。また、全体のシステム構成は図1に示した通りである。
【0159】図8において、前述(図3)との相違点は、ブレーキ力目標値演算部50C内に、速度差補償値ΔTmに基づいてトルク定常誤差補償値Gを生成するトルク定常誤差補償演算部55と、トルク定常誤差補償値Gを加算して機械ブレーキ力目標値Th*を補正する加算手段59とを付加したことにある。
【0160】トルク定常誤差補償演算部55および加算手段59は、モデル車速Vmmと回転速度Vmとの速度差に応じて、機械ブレーキ力目標値Th*を補正する第2のブレーキ力目標値補正手段を構成している。
【0161】次に、図8を参照しながら、この発明の実施の形態3によるブレーキ力目標値演算部50Cの動作について説明する。ブレーキ力目標値演算部50C内のトルク定常誤差補償演算部55は、速度差補償値ΔTmに基づいて、以下の(4)式のローパスフィルタ演算により、トルク定常誤差補償値G(s)を求める。
【0162】G(s)=ω/(s+ω) ・・・(4)
【0163】ただし、(4)式において、sはラプラス演算子であり、トルク定常誤差補償値G(s)はローパスゲインに相当する。また、ωはローパスフィルタの極[rad/s]である。
【0164】ローパスフィルタの極ωは、ねじり共振系の共振周波数の1/3以下に設定されており、トルク定常誤差成分のみを通過させて、ねじり共振の周波数成分を通過させないように設定されている。なお、トルク定常誤差補償演算部55は、一次のローパスフィルタにより構成されているが、二次以上のローパスフィルタで構成されてもよい。
【0165】上記(4)式のように、トルク定常誤差補償演算55により演算されたトルク定常誤差補償値Gは、加算手段59により機械ブレーキ力目標値Th*に加算されて、補正後の機械ブレーキ力目標値Th**となって機械ブレーキ力制御装置12Cに入力される。
【0166】以下、機械ブレーキ力制御装置12Cは、補正後の機械ブレーキ力目標値Th**と一致するように機械ブレーキ力を制御する。このように、増大補正された機械ブレーキ力目標値Th**で機械ブレーキ力を制御することにより、回生ブレーキ力目標値Tm**の増大補正量が低減されるので、バッテリ10の過充電状態を抑制することができる。
【0167】すなわち、機械ブレーキ力が定常的に不足する場合、速度差補償値ΔTmが加算補正された回生ブレーキ力目標値Tm**は、定常的に初期目標値(Tm*)をオーバーし、バッテリ10の過充電状態を長時間にわたって継続させることになる。
【0168】そこで、トルク定常誤差補償演算部55(ローパスフィルタ)を介して、速度差補償値ΔTmの定常成分のみを通過させ、このトルク定常誤差補償値Gを機械ブレーキ力目標値Th*に加算すれば、機械ブレーキ力目標値Th**が増加して回生ブレーキ力目標値Tm**のオーバー成分は減少し、バッテリ10の過大な充電を防止することができる。
【0169】すなわち、ブレーキ力目標値演算部50Cは、回生ブレーキ力目標値Tm**の補正量(速度差補償値ΔTm)から、機械ブレーキ力が過小で回生ブレーキ力が過大状態であることを検出し、速度差補償値ΔTmに基づいて機械ブレーキ力目標値Th**を増大補正することにより、回生ブレーキ力の過大状態を抑制側に修正することができる。
【0170】このように、機械ブレーキ力目標値Th**を増加補正して、回生ブレーキ力のオーバー成分を減少させることにより、回生ブレーキ時におけるバッテリ10の過大充電を防止することがでるとともに、電動機5および電力変換器4(図1参照)に過大な負荷が印加されることを防止することができる。
【0171】実施の形態4.なお、上記実施の形態3では、電動機5による回生ブレーキ力と油圧ブレーキによる機械ブレーキ力と協調させる電気自動車の制御装置に対して、トルク定常誤差補償演算部55を適用したが、前述(実施の形態2、図6および図7参照)のように、電動機5および内燃機関13の駆動力を協調させるハイブリッド電気自動車の制御装置に適用してもよい。
【0172】この場合、特に図示しないが、図7の駆動力目標値演算部60内に、図8内のトルク定常誤差補償手段(ローパスフィルタ)55と加算手段59と同様の構成を追加し、モデル車速Vmmと回転速度Vmとの速度差に応じて内燃機関駆動力目標値Te*を補正する第2の駆動力目標値補正手段を含むことになる。
【0173】これにより、内燃機関駆動力目標値Te*が増大補正されるので、電動機駆動力目標値Dm**の増大補正量が抑制され、上記実施の形態3の作用効果と同様に、電動機5の定格出力(上限値)を越える駆動状態を抑制することができる。
【0174】実施の形態5.なお、上記実施の形態1(図1〜図3参照)では、電動機制御装置3内のブレーキ力目標値演算部50Aが、車両または電動機5の速度情報として電動機5の回転速度Vmを用いて各目標値を演算したが、電動機回転速度Vmの代わりに、車速Vrを用いて各目標値を演算してもよい。
【0175】以下、速度情報として車速Vrを用いて各目標値を演算したこの発明の実施の形態5を図について説明する。
【0176】図9はこの発明の実施の形態5による電動機制御装置3Dの具体的構成を示す機能ブロック図であり、前述の図2に対応している。また、図10は電動機制御装置3D内のブレーキ力目標値演算部50Dの具体的構成を示す機能ブロック図であり、前述の図3に対応している。
【0177】図9および図10において、前述(図2)と同様のものについては、同一符号を付し、また、前述と対応する構成要素については、符号の後に「D」を付して、それぞれ詳述を省略する。
【0178】70は車両の速度(車速)Vrを検出する車速検出器であり、電動機回転速度Vmを検出する回転速度検出器6に加えて並設されている。車速検出器70からの車速Vrは、電動機制御装置3D内のブレーキ力目標値演算部50Dに入力され、回転速度検出器6からの電動機回転速度Vmは、電動機制御装置3D内の電流制御演算部41Aに入力される。
【0179】この場合、ブレーキ力目標値演算部50D内の要求ブレーキ力演算部51Dは、電動機回転速度Vmの代わりに、車速Vrを用いて、要求ブレーキ力Tb*を演算する。
【0180】また、ブレーキ力目標値演算部50D内の車両モデル演算部53Dは、要求ブレーキ力Tb*および車速Vrを用いてモデル車速Vmmを演算し、減算手段57Dは、モデル車速Vmmと車速Vrとの速度差を演算する。
【0181】さらに、速度差補償演算部54は、実際の車速Vrとモデル車速Vmmとの差に基づいて速度差補償値ΔTmを演算し、加算手段58は、速度差補償値ΔTmを加算した回生ブレーキ力目標値Tm**を出力する。
【0182】したがって、電動機5による回生ブレーキ力は、実際の車速Vrとモデル車速Vmmとが一致するように制御される。この結果、最終的な制御目標である車速Vrを車両操縦者の要求通りに制御することができる。
【0183】実施の形態6.なお、上記実施の形態5では、回生ブレーキ力と機械ブレーキ力と協調させる電気自動車の制御装置に対して、車速Vrを用いた速度差補償演算を施したが、電動機駆動力および内燃機関駆動力を協調させるハイブリッド電気自動車の制御装置(図7参照)に対して、車速Vrを用いた速度差補償演算を適用してもよい。
【0184】この場合、電動機駆動力目標値Dm*は、要求駆動力Td*から期待される車両加速度を反映したモデル車速Vmdと、実際の車速Vrとの速度差を用いて補正されるので、モデル車速Vmdと車速Vrとが一致するように制御される。
【0185】したがって、内燃機関13による駆動力の応答性が遅い場合でも、電動機5による駆動力制御によって、応答性よく要求駆動力Td*を発生させることができる。
【0186】また、内燃機関駆動力目標値Te*の絶対値が過大または過小であった場合でも、電動機5による駆動力制御によって、モデル車速Vmdと車速Vrとが一致するように制御されるので、内燃機関13による駆動力と電動機5による駆動力との合計として、高い精度で要求駆動力Td*を実現することができる。
【0187】
【発明の効果】以上のようにこの発明の請求項1によれば、車両を駆動するための電動機と、車両または電動機の速度情報を検出する速度情報検出手段と、車両を制動するための機械ブレーキ手段と、要求ブレーキ力に応じて、電動機による回生ブレーキ力と機械ブレーキ手段による機械ブレーキ力とを、それぞれ第1および第2のブレーキ力目標値に制御するブレーキ力制御手段とを備えた電気自動車の制御装置において、ブレーキ力制御手段は、要求ブレーキ力から第1のブレーキ力目標値を減算して第2のブレーキ力目標値を設定する第2のブレーキ力目標値設定手段と、要求ブレーキ力および速度情報に基づいて、車両モデルの速度をモデル車速として演算する車両モデル演算手段と、モデル車速と速度情報との差に応じて、第1のブレーキ力目標値を補正する第1のブレーキ力目標値補正手段とを含むように構成したので、応答無駄時間や応答遅れが大きい機械ブレーキ力の制御を電動機制御と併用して、要求ブレーキ力を応答性よく発生させることにより、駆動系振動を抑制してドラバビリティを向上させた電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0188】また、この発明の請求項2によれば、請求項1において、ブレーキ力制御手段は、モデル車速と速度情報との差に応じて、第2のブレーキ力目標値を補正する第2のブレーキ力目標値補正手段を含むように構成したので、要求ブレーキ力を応答性よく発生させるとともに、バッテリの過充電状態を抑制した電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0189】また、この発明の請求項3によれば、請求項2において、第2のブレーキ力目標値補正手段は、モデル車速と速度情報との差に応じたローパスフィルタ演算によりトルク定常誤差補償値を生成するトルク定常誤差補償手段を含み、トルク定常誤差補償値により、第2のブレーキ力目標値を補正するように構成したので、要求ブレーキ力を応答性よく発生させるとともに、定常誤差成分を第2のブレーキ力目標値に反映させることができ、バッテリの過充電状態を抑制した電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0190】また、この発明の請求項4によれば、請求項1から請求項3までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段により構成されたので、要求ブレーキ力を応答性よく発生させてドラバビリティを向上させた電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0191】また、この発明の請求項5によれば、請求項1から請求項3までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、車両の速度を車速として検出する車速検出手段により構成されたので、要求ブレーキ力を応答性よく発生させてドラバビリティを向上させた電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0192】また、この発明の請求項6によれば、車両を駆動するための電動機および内燃機関と、車両または電動機の速度情報を検出する速度情報検出手段と、要求駆動力に応じて、電動機および内燃機関による駆動力をそれぞれ第1および第2の駆動力目標値に制御する駆動力制御手段とを備えたハイブリッド電気自動車の制御装置において、駆動力制御手段は、要求駆動力および速度情報に基づいて、車両モデルの速度をモデル車速として演算する車両モデル演算手段と、モデル車速と速度情報との差に応じて第1の駆動力目標値を補正する第1の駆動力目標値補正手段とを含むように構成したので、応答無駄時間や応答遅れが大きい内燃機関の駆動力制御を電動機制御と併用して、要求駆動力を応答性よく発生させることにより、駆動系振動を抑制してドラバビリティを向上させたハイブリッド電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0193】また、この発明の請求項7によれば、請求項6において、車両を制動するための機械ブレーキ手段と、要求ブレーキ力に応じて、電動機による回生ブレーキ力と機械ブレーキ手段による機械ブレーキ力とを、それぞれ第1および第2のブレーキ力目標値に制御するブレーキ力制御手段とを備え、ブレーキ力制御手段は、要求ブレーキ力から第1のブレーキ力目標値を減じて第2のブレーキ力目標値を設定する第2のブレーキ力目標値設定手段と、要求ブレーキ力および速度情報に基づいて第2のモデル車速を演算する第2のモデル車速演算手段と、第2のモデル車速と速度情報との差に応じて第1および第2のブレーキ力目標値のうちの少なくとも第1のブレーキ力目標値を補正するブレーキ力目標値補正手段とを含むように構成したので、応答無駄時間や応答遅れが大きい機械ブレーキ力の制御および内燃機関の駆動力制御を電動機制御と併用して、要求ブレーキ力および要求駆動力を応答性よく発生させることにより、駆動系振動を抑制してドラバビリティを向上させたハイブリッド電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0194】また、この発明の請求項8によれば、請求項6または請求項7において、駆動力制御手段は、モデル車速と速度情報との差に応じて第2の駆動力目標値を補正する第2の駆動力目標値補正手段を含むように構成したので、要求駆動力を応答性よく発生させるとともに、電動機の定格出力を越える駆動状態を抑制したハイブリッド電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0195】また、この発明の請求項9によれば、請求項8において、第2の駆動力目標値補正手段は、モデル車速と速度情報との差に応じたローパスフィルタ演算によりトルク定常誤差補償値を生成するトルク定常誤差補償手段を含み、トルク定常誤差補償値により、第2の駆動力目標値を補正するように構成したので、要求駆動力を応答性よく発生させるとともに、電動機の定格出力を越える駆動状態を抑制したハイブリッド電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0196】また、この発明の請求項10によれば、請求項6から請求項9までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段により構成されたので、要求駆動力を応答性よく発生させることにより、駆動系振動を抑制してドラバビリティを向上させたハイブリッド電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【0197】また、この発明の請求項11によれば、請求項6から請求項9までのいずれかにおいて、速度情報検出手段は、車両の速度を車速として検出する車速検出手段により構成されたので、要求駆動力を応答性よく発生させるとともに、電動機の定格出力を越える駆動状態を抑制したハイブリッド電気自動車の制御装置が得られる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成11年6月23日(1999.6.23)
【代理人】 【識別番号】100057874
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開2001−16703(P2001−16703A)
【公開日】 平成13年1月19日(2001.1.19)
【出願番号】 特願平11−176966