| 【発明の名称】 |
電動車両の駆動制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】原 延男
【氏名】八木 啓明
|
| 【要約】 |
【課題】加速中の変速時に回転数制御を行うことによって生じる減速感を低減でき、運転フィーリングを向上できる電動車両の駆動制御装置を提供する。
【解決手段】スロットル入力に応じて駆動モータ50により車輪17を駆動するようにした電動車両の駆動制御装置において、上記駆動モータ50と車輪17との間に変速機構43を設けるとともに、該変速機構43を所定の変速段に切り換える変速アクチュエータ88を設け、加速運転時には上記変速アクチュエータ88による変速をモータ回転数の増加に伴って出力トルクが低下する領域で行うように制御する変速制御手段300を備える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スロットル入力に応じて駆動モータにより車輪を駆動するようにした電動車両の駆動制御装置において、上記駆動モータと車輪との間に変速機構を設けるとともに、該変速機構を所定の変速段に切り換える変速アクチュエータを設け、加速運転時には上記変速アクチュエータによる変速をモータ回転数の増加に伴って出力トルクが低下する領域で行うように制御する変速制御手段を備えたことを特徴とする電動車両の駆動制御装置。 【請求項2】 請求項1において、上記変速制御手段は、バッテリ電圧が低い場合における上記変速を行なうモータ回転数領域をバッテリ電圧が高い場合におけるモータ回転数領域より低く制御することを特徴とする電動車両の駆動制御装置。 【請求項3】 請求項1又は2において、上記変速制御手段は、運転者がスロットルを戻したときには上記変速を行うモータ回転数領域よりも低いモータ回転数領域で変速することを特徴とする電動車両の駆動制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、バッテリを電源とする駆動モータにより車輪を駆動するようにした電動車両の駆動制御装置に関し、特に加速状態での変速時の減速感を抑制できるようにしたものに関する。 【0002】 【従来の技術】近年、低公害,低騒音を図る観点から、バッテリを電源とする駆動モータにより車輪を回転駆動するようにした電動二輪車が注目されている。この電動二輪車では、駆動モータと後輪との間に変速機構を設け、スロットル入力に応じて駆動モータの回転を制御するとともに、アクチュエータにより変速機構を運転状態に応じた変速段に切り換えるようにしたものがある。 【0003】上記アクチュエータを用いる変速機構として、中間軸に、ドッグ爪を有するドッグギヤを軸方向移動自在かつ相対回転可能に装着するとともに、ドッグ孔を有するホイールギヤを中間軸と共に回転するように固定し、上記アクチュエータによってドッグギヤのドッグ爪をホイールギヤのドッグ孔に抜き差しすることにより自動変速するようにしたものがある。 【0004】このような自動変速を行うようにした装置として、従来、例えば特開平5−332428号公報に記載されているように、切り換えをスムーズに行って変速ショックを緩和する観点から、変速時に駆動モータの出力を一時的に低減又は停止する等のいわゆるトルクカット、あるいは上記ホイールギヤとドッグギヤとの回転数が一致するようにモータ回転数を制御する回転数制御を行い、この間に変速を行うようにしたものが提案されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の変速制御装置では、上記トルクカットや回転数制御により運転者は減速感を感じ運転フィーリングが悪いという問題がある。特に、加速中にシフトアップするときは運転者は加速を意識して乗車しているため、上記減速感がより一層大きくなる。 【0006】本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、変速時に回転数制御やトルクカットを行うことによって生じる減速感、特に加速中に乗員が感じる減速感を低減でき、運転フィーリングを向上できる電動車両の駆動制御装置を提供することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】図17に示すように、請求項1の発明は、スロットル入力に応じて駆動モータ50により車輪17を駆動するようにした電動車両の駆動制御装置において、上記駆動モータ50と車輪17との間に変速機構43を設けるとともに、該変速機構43を所定の変速段に切り換える変速アクチュエータ88を設け、加速運転時には上記変速アクチュエータ88による変速をモータ回転数の増加に伴って出力トルクが低下する領域で行うように制御する変速制御手段300を備えたことを特徴としている。 【0008】請求項2の発明は、請求項1において、上記変速制御手段300は、バッテリ15の電圧が低い場合における上記変速を行なうモータ回転数領域をバッテリ電圧が高い場合におけるモータ回転数領域より低く制御することを特徴としている。 【0009】請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記変速制御手段300は、運転者がスロットルを戻したときには上記変速を行うモータ回転数領域よりも低いモータ回転数領域で変速することを特徴としている。 【0010】 【発明の作用効果】請求項1の発明に係る電動車両の駆動制御装置によれば、加速運転時には上記変速アクチュエータ88による変速は、モータ回転数の増加に伴って出力トルクがモータ特性上自然に低下する領域で行われるので、この変速動作に伴ってモータ出力を一時的に減少又は停止した場合でも乗員が急激な減速感を感じることを抑制でき、運転フィーリングを向上することができる。 【0011】請求項2の発明によれば、変速を行なうモータ回転数領域をバッテリ電圧が低い場合には低回転数領域側に補正するようにしたので、変速時の減速感に対するバッテリ電圧の影響を減少させることができる。 【0012】請求項3の発明によれば、スロットルを戻したときには上記モータ回転数領域より低速側で変速するようにしたが、運転者はスロットルを戻した場合には減速状態となることをある程度予測していることから、変速時にモータ出力を一時的に減少又は停止しても、減速感を感じることはほとんどなく、従って運転フィーリングが低下することはない。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1ないし図16は、本発明の一実施形態による電動車両の自動変速装置を説明するための図であり、図1,図2はスクータ型電動二輪車の左,右側面図、図3は動力ユニットの断面平面図、図4は動力ユニットのケース蓋を外した状態の左側面図、図5,図6変速切換機構の断面平面図,左側面図、図7は減速大ギヤ及び大中間ギヤの正面図、図8は変速位置検出動作を示す模式図、図9は駆動制御装置の概略構成図、図10はスロットル開度と車速と変速段との関係を示す特性図、図11は車速とモータ駆動力と変速段との関係を示す特性図、図12,13は車速とスロットル開度,出力トルクと変速段との関係を示す特性図、図14はスロットルの戻し量を説明するための特性図、図15はスロットル戻しの検出動作を説明するためのフローチャート図、図16は変速動作を説明するための図である。 【0014】図において、1はスクータ型電動二輪車であり、これの車体フレーム2は、ヘッドパイプ3に車体後方に斜め下方に延びる1本のメインフレーム4を接続し、該メインフレーム4の下端に左, 右一対のサイドフレーム5,5の前端を接続し、該各サイドフレーム5を後方に延長した概略構造のものである。 【0015】上記左, 右のサイドフレーム5,5は、メインフレーム4から車幅方向外方に拡開しつつ下方に延びた後、車体後方に屈曲して略水平に直線状に延びる水平部5aと、該水平部5aの後端から上方に屈曲した後、後方斜め上方に延びる傾斜部5bとから構成されている。そして上記左右のサイドフレーム5,5の前端付近と上記傾斜部5bの前端付近とはブラケット6a,6bを介して補強パイプ6により連結されており、側面から見たとき該補強パイプ6と上記水平部5bとで囲まれた空間内に後述する電池ユニット15が搭載されており、また上記後側のブラケット6bの上端部によりシート16が前ヒンジを介して上下方向に回動可能に支持されている。 【0016】上記ヘッドパイプ3には操向軸7が回転自在に枢支されている。該操向軸7の下端にはフロントフォーク8が、上端には操向ハンドル9がそれぞれ固定されており、該フロントフォーク8の下端には前輪10が軸支されている。 【0017】上記操向ハンドル9はハンドルカバー20で囲まれている。また上記ヘッドパイプ3の前方にはフロントカバー21が、後方にはレッグシールド22がそれぞれ装着され、両者でヘッドパイプ3を囲んでいる。上記レッグシールド22の下端部に続いて後方に延びるフートボード23が上記サイドフレーム5,5の水平部5aに搭載された電池ユニット15の上方を覆うように配設されている。また該フートボード23の左, 右側縁に続いて電池ユニット15及び水平部5a,補強パイプ6の側方及び下方を覆うようにアンダカバー24が配設されている。さらにまた上記傾斜部5bの側方は上記シート16の下方を覆うサイドカバー25によって覆われている。なおシート16下方のサイドカバー25内には該シート16により開閉される収納ボックスが配設されている。 【0018】上記車体フレーム2の左,右の傾斜部5b,5bにより電動式駆動装置14が懸架支持されている。この電動式駆動装置14は、上記電池ユニット15と、該電池ユニット15を電源として後輪17を回転駆動する動力ユニット13と、上記操向ハンドル9の右端部に配設されたアクセルグリップ9aの回動操作(スロットル開度)及び車速に基づいて上記動力ユニット13への給電量を制御するコントロールユニット18と、該コントロールユニット18からの制御信号に応じて駆動モータ50,切り換えモータ88等の回転を制御するパワーモジュール27、及び上記電池ユニット15を充電する充電器26とを備えている。 【0019】上記コントロールユニット18はサイドカバー25内の後端部に起立させて搭載されている。該コントロールユニット18の後側にはキャリア28を支持する左,右一対の脚部28aが立設されており、該キャリア28の前端部はシート16の後端部を支持する門形のステー16aに固定されている。このようにして上記コントロールユニット18はキャリア28,脚部28a,ステー16a及びサイドフレーム5の後端部で囲まれた空間内に位置しており、外力が直接作用することがないようになっている。 【0020】また上記充電器26はシート16の後端部を支持する門形のステー16aの内側に位置するように搭載されている。さらにまた上記パワーモジュール27は後輪17の右側上部を覆うように配置され、その前側上部はサイドカバー25内に位置しており、ガソリンエンジン搭載車の場合の消音器に似た外観を呈している。 【0021】上記電池ユニット15は、充電可能な多数のNi−Cd電池セル15aを直列接続してなるバッテリ15bを4組直列接続してなり、電池ケース32内に配置されている。この電池ケース32は、左, 右のサイドフレーム5,5の水平部5a,5a間に4本のステー33を架け渡して溶接固定し、該ステー33上にボルト締め固定されている。なお、上記各バッテリ15bはフートボード23を取り外し、電池ケース32の蓋体を取り外すことにより外部に取り出し可能となっている。 【0022】上記動力ユニット13は、左, 右の傾斜部5bの下面に固定された左,右の懸架ブラケット11,11間に挿通固定されたピボット軸12により上下揺動自在に枢支されている。またこの動力ユニット13の後端と左側のサイドフレーム5の傾斜部5bの後端との間には1本の緩衝器19が介設されている。 【0023】上記動力ユニット13は、車両左側に配設され、前後方向に延びる側面視略長円箱状のアルミダイキャスト製伝動ケース41と、該伝動ケース41の前端部に車幅方向に向けて配置された駆動モータ50とを一体的に結合して構成されている。 【0024】上記伝動ケース41は、動力伝達装置としての巻き掛け伝動機構42,及び歯車式変速機構43を支持するケース本体44と、該ケース本体44の外周側合面44aに開閉可能に結合されたケース蓋体45とからなり、ケース本体44の前部上面に一体形成されたボス部44bが軸受51aを介して上記ピボット軸12により軸支されている。 【0025】上記伝動ケース41内は、上記ケース本体44とケース蓋体45とで形成された乾式の巻き掛け室46と、ケース本体44の後端部とこれの内周側合面44cに装着された蓋部材47とで形成された湿式のギヤ室48とに区分けされており、上記巻き掛け室46内に上記巻き掛け伝動機構42が、上記ギヤ室48内に上記歯車式変速機構43が配置されている。 【0026】また上記伝動ケース41の右側前端部にはフランジ部44dが外方に拡がるように一体形成されており、該フランジ部44dに上記駆動モータ50が出力軸50aを上記ピボット軸12と平行に向けてボルト締め固定されている。この駆動モータ50の上面に形成されたボス部50bが軸受メタル51bを介して上記ピボット軸12の右側部で軸支されており、また該ピボット軸12の左側部はケース本体44の前部上面に一体形成された上記ボス部44bで軸受51aを介して軸支されている。これにより伝動ケース41と駆動モータ50とが上記ピボット軸12を中心に一体的に上下揺動するようになっている。また駆動モータ50にはモータ回転数,回転位置を検出するエンコーダ52が装着されており、該エンコーダ50からの検出値は上記コントロールユニット18に入力される。 【0027】上記巻き掛け伝動機構42は、回転比が略1:1となるように設定された歯付き駆動プーリ55と、歯付き従動プーリ56とを歯付きベルト57で連結した構成となっている。該歯付きベルト57の弛み側にはベルト張力を調整する歯付き調整プーリ58が噛合している。該調整プーリ58は支持アーム59により揺動可能に支持されており、該支持アーム59はスプリング60によりベルトの緊張方向に付勢されている。 【0028】上記駆動プーリ55の駆動軸55aは上記駆動モータ50の出力軸50aに同軸をなすようにスプライン結合されており、この駆動軸55aはケース本体44に一体形成されたボス部44eに軸受61,61を介して軸支されている。 【0029】上記歯車式変速機構43は、上記ギヤ室48内に上記出力軸50aと平行に従動軸56a,中間軸65,及び上記後輪17が固定された後輪軸66を配置し、各歯車を噛合させた構成となっている。上記各軸56a,65,66はケース本体44及び蓋部材47により軸受67を介して軸支されている。 【0030】上記従動軸56aの左端部は蓋部材47を貫通して巻き掛け室46内に突出しており、該突出部に上記従動プーリ56が装着されている。なお、67aはオイルシールである。上記従動軸56aの右端部には小減速ギヤ56bが一体形成されており、該小減速ギヤ56bには上記中間軸65に固定された大減速ギヤ(ホイールギヤ)68が噛合している。 【0031】上記中間軸65には小中間ギヤ65aが一体形成されており、該小中間ギヤ65aには上記後輪軸66に相対回転可能に装着された大後輪ギヤ69が噛合している。また上記中間軸65には大中間ギヤ(ドッグギヤ)70が該中間軸65に対して相対回転可能にかつ軸方向移動可能に装着されており、該大中間ギヤ70には上記後輪軸66に固定された小後輪ギヤ71が常時噛合している。この大中間ギヤ70にはドッグ爪70aが突出形成されており、該ドッグ爪70aは該大中間ギヤ70を軸方向に上記大減速ギヤ68側(図3上側)に移動させたとき該大減速ギヤ68のドッグ孔68aに係合するようになっている。 【0032】ここで図7に示すように、上記大中間ギヤ70のドッグ爪70aは120°間隔毎に3ヶ所に突設されており、横断面円形の棒状をなしている。一方、上記大減速ギヤ68のドッグ孔68aは60°間隔毎に6ヶ所に貫通形成されており、上記ドッグ爪70aより少し大径でかつ円周方向に長い長円状をなしている。これにより上記ドック爪70aのドッグ孔68a内への挿入が容易かつ円滑に行われるようになっている。 【0033】上記大後輪ギヤ69と後輪軸66と間にはワンウェイクラッチ72が介設されている。このワンウェイクラッチ72は、上記後輪軸66に固定された内輪73と、上記大後輪ギヤ69に固定された外輪74との間に周方向に複数個のラチェット爪75を介在させ、該ラチェット爪75を付勢ばね(不図示)により上記外輪74の内周面に形成された係合歯74aに係合する方向に押し付けるように付勢した構造のものである。これにより中間軸65から後輪軸66への図4反時計回りの回転伝達のみを許容し、後輪軸66から中間軸65への図4反時計回りの回転伝達は遮断するようになっている。 【0034】上記中間軸65の下方にはフォーク軸76,ドラム軸77が該中間軸65と平行に配設されている。上記フォーク軸76には上記大中間ギヤ70に回転方向に摺動自在に係合するシフトフォーク78が軸方向に移動可能に装着されている。また上記ドラム軸77にはシフトドラム79が固定されており、該シフトドラム79の外周には上記シフトフォーク78のガイドピン78aが摺動自在に係合するガイド溝79aが凹設されている。このガイド溝79aは該シフトドラム79の周方向にハイ変速段部a,ロー変速段部bを90°間隔で交互に位置するように波状に形成したものであり(図5の展開図参照)、シフトドラム79を一方向に回転させることにより変速段がローとハイとに交互に切り換わるようになっている。 【0035】上記歯車式変速機構43において、大中間ギヤ70が大減速ギヤ68に係合せず中間軸65に対して空転するロー変速段となっている場合、駆動モータ50の回転は巻き掛け伝動機構42を介して従動軸56aから大減速ギヤ68を介して中間軸65に伝達され、該中間軸65の小中間ギヤ65aから大後輪ギヤ69,ワンウェイクラッチ72を介して後輪軸66に伝達され、該後輪軸66が後輪17を回転させる。 【0036】またシフトドラム79を90°回転させると、ガイドピン78aがガイド溝79aのハイ変速段部a内に位置することからシフトフォーク78が大中間ギヤ70を軸方向に大減速ギヤ68側に移動させ、該大中間ギヤ70のドッグ爪70aが該大減速ギヤ68のドッグ孔68aに係合し、これにより大中間ギヤ70は中間軸65に対して固定され、ロー変速段からハイ変速段に切り換えられる。これにより駆動モータ50の回転は中間軸65の大中間ギヤ70から小後輪ギヤ71を介して後輪軸66に伝達され、後輪17を回転させる。 【0037】ここで上記ハイ変速段では、中間軸65の回転は小中間ギヤ65aから大後輪ギヤ69の経路でも後輪軸66に伝達される。この経路での後輪軸66の回転数より、上記大中間ギヤ70から小後輪ギヤ71の経路で伝達された後輪軸66回転数のほうが大きくなり、両者の間に回転数差が生じるが、この回転数差は上記ワンウェイクラッチ72のラチェット爪75が外輪74の係合歯74aから解放されることにより吸収される。 【0038】上記シフトドラム79には、該ドラム79をロー変速段位置又はハイ変速段位置に保持する節度機構が配設されている。この節度機構は、シフトドラム79の外周部に軸方向に延びる4本のピン80aを90°間隔で配置固定し、このピン80a間に係合するローラ80を設け、該ローラ80をストッパレバー81により軸支するとともに、該ストッパレバー81をケース本体44に揺動可能に支持し、該レバー81をスプリング83によりピン係合方向に回動付勢した構造のものである。 【0039】上記シフトドラム79を上記スプリング83の付勢力に抗して回転させると、該回転に伴って、上記ローラ80はピン80aを乗り上げて該乗り上げたピン80aと隣合うピン80aとの間に上記付勢力でもって係合する。このようにしてシフトドラム79は、ロー変速段,又はハイ変速段の何れかに確実に保持される。 【0040】上記ドラム軸77は蓋部材47を貫通して巻き掛け室46内に突出しており、該突出部には切り換え機構85が接続されている。この切り換え機構85は、複数の減速ギヤ列86が収納されたギヤケース87と、該ギヤケース87に固定され上記減速ギヤ列86を回転駆動する切換モータ(変速アクチュエータ)88と、上記ギヤケース87により軸支され減速ギヤ列86で回転駆動される切り換え軸89とを備えている。 【0041】上記切り換え軸89の両端部はギヤケース87から外方に突出しており、この一方の突出部には切り換えギヤ90が装着されており、該切り換えギヤ90は上記ドラム軸77の突出部に装着されたシフトギヤ91に噛合している。ここで上記両ギヤ90,91には逃げ溝90a,91aが形成されており、該逃げ溝90a,91a内に上記切り換え軸89,ドラム軸77に貫通固着されたピン89a,77aが該両軸89,77の軸回りに所定角度の遊びを以て係合している。この遊びは、後述するように、シフトドラム79が切換モータ88の回転に応じた速度よりも速く回動するのを所定角度範囲で許容するためのものである。 【0042】上記切換モータ88は上記コントロールユニット18により駆動制御される。この切換モータ88が回転すると、減速ギヤ列86を介して切り換え軸89とともシフトドラム79が90°回転し、これによりシフトフォーク78が大中間ギヤ70を軸方向に移動させ、その結果上述の変速段切り換えが行われる。 【0043】上記切換モータ88によりシフトドラム79が回転すると、該回転力によりストッパレバー81がスプリング83の付勢力に抗して押し上げられるとともにローラ80がピン80aに乗り上げ、シフトドラム79が45°回転した時点でローラ80の中心はシフトドラム79とピン80aとの中心を結ぶ線上に位置し、この状態からシフトドラム79が僅かに回動するとローラ80は乗り上げたピン80aと隣合うピン80aとの間に落ち込み、この際に何れかの変速段に切り換えられる。 【0044】ここで、上記ローラ80がピン80aに乗り上げた位置からの回動はスプリング83の付勢力により瞬時に行われ、そのためシフトドラム79が切換モータ88の回転に応じた速度より速く回転することとなり、切り換えを速やかに行うことができ、また切換モータ88の負荷を軽減でき、その分だけバッテリの消耗を低減することができる。なお、この場合シフトドラム79が高速で回転した場合の切換モータ88の回転に応じた回転速度との差は上記逃げ溝91a,90aで吸収される。 【0045】また上記切り換え軸89の他方の突出部には変速位置検出器(変速段検出手段)95が配設されている。この変速位置検出器95は切り換え軸89にこれと共に回転するように固定された円板状の磁石保持板96と、該磁石保持板96と対向するように、かつ30°の角度間隔を開けて配置され、上記ギヤケース87の外壁に固定されたホール素子からなる第1,第2センサ98,99とを備えている(図8参照)。 【0046】上記磁石保持板96には、90°の円弧をなすS極磁石100,N極磁石101,S極磁石100′,N極磁石101′が交互に埋設されている。また上記第1センサ98はS極磁石100又は100′と対向したとき出力がローとなり、第2センサ99はN極磁石101又は101′と対向したとき出力がローとなる。そして上記磁石保持板96は、上記大中間ギヤ70が図5に実線で示すロー変速段位置にあるとき、上記両磁石100,101が上記第1,第2センサ98,99と図8(a)に示す位置関係で対向するように上記切り換え軸89に固定されており、この位置を基準位置(0°)とする。 【0047】本実施形態装置では、ロー変速段(1速)にある場合には、切り換え軸89が上記基準位置にあり、そのため図5に示すように、シフトドラム79のガイド溝79aのロー変速段部bにシフトフォーク78のガイドピン78aが係合しており、これにより大中間ギヤ70が図示実線位置に位置し、該大中間ギヤ70のドッグ爪70aと大減速ギヤ68のドッグ孔68aとの係合が解除されている。 【0048】図16に示すように、上記ロー変速段にある場合に、ハイ変速段(2速)への変速指令信号が入力されると、切り換えモータ88が起動して切り換え軸89を回転させ、該回転が30°を越えると上記第2センサ99の出力がハイとなる。この第2センサ99の信号の立ち上がりにより速度制御が開始される。この速度制御では、駆動モータ50の回転数を、現時点での走行速度とハイ変速段における減速比とに応じた回転数になるように減少させる制御が行われる。 【0049】上記切り換え軸89の回転が61°に達すると上記大中間ギヤ70のドッグ爪70aが大減速ギヤ68のドッグ孔68aに係合開始し、ハイ変速段となり、駆動モータ50の回転は従動軸56a,中間軸65から大中間ギヤ70,小後輪ギヤ71を介して後輪軸66に伝達される。 【0050】上記切り換え軸89の回転が90°を越えると(図8(b)参照)上記第1センサ98の出力がハイとなり、該出力の立ち上がりにより切り換えモータ88が停止し、また上記駆動モータ50の速度制御が停止される。この後駆動モータ50はスロットル開度,車速に応じた回転速度となるように供給電流が制御される。なお、この状態では、上記磁石保持板96と第1,第2センサ98,99とは図8(b)に示す位置関係にあり、また該両センサ98,99の出力は共にハイとなっている。 【0051】そして上記ハイ変速段の状態にある場合に、ロー変速段への変速指令信号が入力されると、切り換えモータ88が起動して切り換え軸89を回転させ、該回転が図8(b)に示角度位置を基準位置(0°)としてここから30°を越えると上記第2センサ99の出力がローとなる。この第2センサ99の出力の立ち下がりによりトルクカット制御が開始される。このトルクカット制御では、駆動モータ50への電流供給を停止し、その後徐々に電流供給量を増加する制御が行われる。 【0052】上記切り換え軸89の回転が上記基準位置から61°を越えると上記大中間ギヤ70のドッグ爪70aの大減速ギヤ68のドッグ孔68aとの係合が解除され、ロー変速段となり、駆動モータ50の回転は従動軸56a,中間軸65から小中間ギヤ65a,大後輪ギヤ69を介して後輪軸66に伝達される。 【0053】上記切り換え軸89の回転が上記基準位置から90°を越えると上記第1センサ98の出力がローとなり、該出力の立ち下がりにより切り換えモータ88が停止し、また上記駆動モータ50のトルクカット制御が停止される。この後駆動モータ50はスロットル開度,車速に応じた回転速度となるように供給電流が制御される。なお、この状態では、上記磁石保持板96と第1,第2センサ98,99とは図8(b)に示す位置関係にあり、また該両センサ98,99の出力は共にローとなっている。 【0054】上記コントロールユニット18は、スロットルセンサ29からのスロットル開度検出値,エンコーダ52からのモータ回転数等の各検出値が入力され、内蔵する電流指令値マップに基づいて駆動モータ50の回転を制御し、また上記変速切換機構85の切り換えモータ88の動作を制御する変速制御手段として機能する。 【0055】次に、上記コントローラ18による変速制御を図10〜図15に基づいて説明する。図10〜図12において、特性線Aはロー変速段でスロットルを所定開度、例えば全開に保持した場合の車速と駆動力との関係を、特性線Bはハイ変速段でスロットルを所定開度、例えば全開に保持した場合の車速と駆動力との関係をそれぞれ示している。なお、特性線A1,B1はバッテリ電圧が低下した場合の特性を示し、また特性線Cは平坦路での走行抵抗を示す。また特性線D1はロー変速段からハイ変速段にシフトアップされる場合のスロットル開度と車速との関係を、特性線D2はハイ変速段からロー変速段にキックダウンされる場合のスロットル開度と車速との関係を示している。従って図10中、斜線内領域では以前の変速段が維持されることとなる。なお、図12では図10の特性線D1,D2を簡略化して表現している。 【0056】上記特性線D1から、上記ロー変速段で走行している場合、スロットル開度が小さいほど低速でハイ変速段にシフトアップされ、スロットル開度が大きいほど高速でシフトアップされ、従ってスロットルを大きく開けるほど高速までロー変速段が保持され、大きな加速が得られることが判る。 【0057】また上記特性線A,Bから、本実施形態の駆動モータ50は、車速(モータ回転数)がある所定の速度vo までは一定の駆動力(トルク)を発生し、大きな加速が得られるが、該所定速度vo を越えると駆動力は減少し、得られる加速は小さくなっていくことが判る。なお、運転者は、モータの駆動力特性が上述のような傾向にある、つまり車速が高くなると駆動トルクが小さくなることを体感的に認識しているのが一般的である。 【0058】上述のように、上記ロー変速段からハイ変速段への変速においては、回転数制御が行われるが、この回転数制御ではモータ出力が低減され、そのため運転者は減速感を感じることとなるが、本実施形態では、上記回転数制御が行われる上記変速動作を、図11,図12に示すようにモータ駆動力がその特性上減少する車速(回転数)領域で行うことにより運転者の感じる減速感を低減している。 【0059】即ち、本実施形態では、車速(モータ回転数)が上記駆動力が減少する車速vo より大きい領域、例えばv1 において上記変速を行うようにしている。従って本実施形態では上記車速v1 において上述の回転数制御を行いつつ自動変速動作が行われることとなる。また、バッテリ電圧が低い場合には、上記変速動作を行う車速領域は、バッテリ電圧に応じた車速領域、例えばv1 ′に補正される。 【0060】このようにモータ特性上、車速増加により自然にモータ駆動力が低下した状態で変速動作が行われるので、運転者は変速動作に伴う減速感をあまり感じなくなり、それだけ運転フィーリングの低下を回避できる。バッテリ電圧が低下した場合にも同様となる。 【0061】また図13〜図15に示すように、本実施形態では、ロー変速段で加速している状態でスロットルを戻した場合には上述の場合より低い車速でハイ変速段に変速するようにしている。即ち、例えばロー変速段でスロットル開度S1に保持して加速している場合、通常は車速v1 に達した時点でハイ変速段に変速するのであるが、スロットルを戻した場合には特性線D3より高速側、この場合は車速v2 より高速であればハイ変速段に変速する。 【0062】上記スロットルを戻したか否かの検出は、図14,図15に示すように、スロットル開度Eとスロットル開度をフィルタリングした開度E′との差をスロットル戻し量として検出し、該検出値が所定のしきい値より大の場合にスロットルが戻されたと判断する。 【0063】このようにスロットルが戻された場合には、図13の特性線D3に従ってロー変速段からハイ変速段に変速される。この場合、出力トルクが大きい時点で上述の回転数制御が行われ、減速感が大きくなる懸念があるが、運転者はスロットルを戻した時点で、減速感が生じることを予測しているので、上記回転数制御による減速感が大きくなることはない。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000010076 【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年6月16日(1999.6.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100087619 【弁理士】 【氏名又は名称】下市 努
|
| 【公開番号】 |
特開2001−8315(P2001−8315A) |
| 【公開日】 |
平成13年1月12日(2001.1.12) |
| 【出願番号】 |
特願平11−169206 |
|