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【発明の名称】 鉄道車両用の主幹制御器
【発明者】 【氏名】高橋 徹

【氏名】草野 直樹

【氏名】堀江 哲

【要約】 【課題】従来と同様の故障検知機能を有しつつ主幹制御器を小形化し、運転士に対して良好な居住性を提供すること。

【解決手段】2個の回転角センサを設ける代わりに、1個の回転角センサおよびハンドルが特定の位置たとえば「N」においてその位置を検知できるセンサを設ける。この構成によれば、特定位置すなわち1点のみ検知できるセンサは回転角を検知できるセンサより小形であるため、2個の回転角センサを設けるより1個の回転角センサおよび1個の特定位置検出センサを設ける方が占有体積が小さく、その結果として主幹制御器が小形化でき、運転士に対して良好な居住性を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 力行およびブレーキ指令を出すためのハンドルと、前記ハンドルの回転角を第1の範囲に亘り検知する第1のセンサと、前記ハンドルの回転角が前記第1の範囲より狭い所定の位置にある時のみ前記ハンドルの回転角を検知する前記第1のセンサとは別の第2のセンサと、前記第1および第2のセンサの出力に基づいて、前記各センサの動作上の異常の有無を判別する機能とを備えたことを特徴とする鉄道車両用の主幹制御器。
【請求項2】 力行およびブレーキ指令を出すためのハンドルと、前記ハンドルの第1の所定位置に配置され前記ハンドルの回転角を第1の範囲に亘って検知する第1のセンサと、前記ハンドルの第2の所定位置に配置され、前記ハンドルの回転角が前記第1の範囲より狭い所定の位置にある時のみ前記ハンドルの回転角を検知する前記第1のセンサとは別の第2のセンサと、前記第1および第2のセンサの出力に基づいて、前記各センサの動作上の異常の有無を判別する機能とを備えたことを特徴とする鉄道車両用の主幹制御器。
【請求項3】 力行およびブレーキ指令を出すためのハンドルと、前記ハンドルの回転角を全範囲に亘って検知する第1のセンサと、前記ハンドルの回転角が中立の位置にある時のみ前記ハンドルの回転角を検知する前記第1のセンサとは別の第2のセンサと、前記第1および第2のセンサ出力に基づいて、前記各センサの動作上の異常の有無を判別する機能とを備えたことを特徴とする鉄道車両用の主幹制御器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鉄道車両用の主幹制御器、特にハンドル回転角センサの故障を検知する機能を有しつつ小形化を図って、運転台における占有体積を減少させ、操作者に対して良好な居住性を提供するのに好適な鉄道車両用の主幹制御器に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄道車両においては、モータあるいはエンジンなどの原動機を走行用の原動力とし、この原動機を制御するための制御装置を備えている。一般的に制御装置は運転台から遠く離れたところに配置されると共に、1列車編成の中に複数の制御装置を設けることが多いため、制御装置に制御指令信号を与えるための装置、すなわち、主幹制御器を運転台に設置し、操作者、すなわち運転士がこれを操作するようにしている。
【0003】運転士は、前面にある操作卓から上方に突出したハンドルの上部を握りつつ前後させることによりハンドルの回転角を変化させる。この回転角を検出装置で検出し、検出された回転角に応じてノッチ指令が出力され、これにしたがって制御装置が作動することにより原動機が制御される。
【0004】なお、運転士が操作・指令できるノッチの一例を示すと、「ブレーキ4ノッチ」(以下「B4」と略す)…「ブレーキ1ノッチ」(以下「B1」と略す)、「中立」(以下「N」と略す)、「力行1ノッチ」(以下「P1」と略す)…「力行4ノッチ」(以下「P4」と略す)などである。
【0005】上記した様に制御装置は複数あることが多いが、この場合でも運転士が操作する主幹制御器は1台しかない。したがって、主幹制御器に故障が発生した場合にそのことを検知して制御装置・原動機を停止させる等の安全策を講じることが重要となる。
【0006】この具体例として、ハンドル回転角を全範囲に亘って検知するセンサを2個設け、両者の出力を比較・判定する方法がある。すなわち、一方の回転角センサが「P1」を出力しているにもかかわらず、他方の回転角センサが「P3」を出力していた場合には、「いずれかあるいは両方の回転角センサに異常が発生し、主幹制御器が故障した」と判断し、この故障信号により制御装置・原動機を停止させるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記従来技術においては、主幹制御器の故障検知機能に関してしか言及しておらず、ハンドルの全範囲に亘って検出する回転角センサを2個設けることにより大形化してしまうことに対する配慮が欠けていた。したがって、さらに居住性の向上をするために主幹制御器の小形化を図ろうとしても、この回転角センサを2個使用するために小形化をはばまれていた。
【0008】本発明の目的は、上記従来技術と同様の故障検知機能を有しつつ主幹制御器を小形化し、それに伴い、運転士に対して良好な居住性を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、2個の回転角センサを設ける代わりに、全範囲に亘り検出する1個の回転角センサおよびハンドルが特定の位置、たとえば、中立位置「N」においてその位置を検知できるセンサを設けることにより達成される。
【0010】上記した手段によれば、特定位置、すなわち、「N」のみ検知できるセンサは、回転角センサより小形であるため、ハンドルの全範囲に亘って検出する2個の回転角センサを設けるより1個の回転角センサおよび1個の特定位置検出センサを設ける方が占有体積が小さく、その結果として主幹制御器が小形化でき、運転士に対して良好な居住性を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を述べる。図1は、主幹制御器を前方すなわち運転士側から見た断面図である。フレーム1には軸受21,22を介して回転自由に軸3が取り付けられており、運転士が操作するハンドル4により回転動作する。
【0012】ハンドル4の取り得る位置は、本実施例においては「ブレーキ4ノッチ」(以下「B4」と略す)…「ブレーキ1ノッチ」(以下「B1」と略す)、「中立」(以下「N」と略す)、「力行1ノッチ」(以下「P1」と略す)…「力行4ノッチ」(以下「P4」と略す)の計9か所である。
【0013】ノッチ数は必ずしも本実施例通りである必要はない。また「B4」…「B1」「N」のみ操作可能なブレーキハンドルと「N」「P1」…「P4」のみ操作可能な力行ハンドルで構成された主幹制御器であってもよい。
【0014】軸3には回転角センサ5が取り付けられており、その検知角度に応じて上記「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」の各ノッチを割り振っている。回転角センサ5は、たとえば、良く知られたレゾルバが用いられる。
【0015】この原理はシンクロの原理と同様であり一次巻線P1、P2、二次巻線S1,S2の誘導結合を利用している。構造は回転子と固定子があり、それぞれ直交する2相巻線を有する。1次側に交流電圧を加えると2次側には、回転子の回転角をθとすれば、sinとcosに比例する電圧が得られる。これらのsin、cosの電圧を利用して回転角の検出が可能である。なお、本実施例においては回転角センサ5としてはレゾルバを使用したが、その他にロータリエンコーダなどが適用可能である。
【0016】一方、軸3にはピン6が打ち込まれており、このピン6を近接センサ7で検知することにより、特定ノッチ位置を検知できる。本実施例において特定ノッチ位置は中立「N」である。
【0017】さらに、ハンドルのすべての範囲で位置を検出可能なセンサ5は、レゾルバ、エンコーダ、ポテンショメータが用いられるが、これらの検出器は汎用性がある標準化されたものを特別な加工を施すことなく使用するのが価格的に有利である。この実施例によればハンドルのすべての範囲で位置を検出可能なセンサ5は上記の汎用のレゾルバ、エンコーダ、ポテンショメータを使用し、ハンドルの限られた範囲で位置を検出するセンサは、単に主幹制御器の回転軸にピン6を設け、そこに検出用センサを設置するので経済的である。
【0018】図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。ハンドル4は同図に記したように「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」の全範囲で操作可能であり、これに伴い軸3および回転角センサ5、ピン6が回転する。ハンドルの位置は「N」を基準すなわちθ=0°としてあり、各ノッチ間10°としてある。
【0019】したがって、「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」の具体的位置は下記のようになる。ただし、現実には機械製作誤差、回転角センサの検知誤差などの理由により、また操作途上においては常にハンドル4の角度θは各ノッチ間となるので、( )内に記したように各ノッチ位置±5°の範囲にある場合はそのノッチであると認識するように構成する。
【0020】
「B4」:θ=−40°(−45°≦θ<−35°)
「B3」:θ=−30°(−35°≦θ<−25°)
「B2」:θ=−20°(−25°≦θ<−15°)
「B1」:θ=−10°(−15°≦θ< −5°)
「N」 :θ= 0°( −5°≦θ< 5°)
「P1」:θ= 10°( 5°≦θ< 15°)
「P2」:θ= 20°( 15°≦θ< 25°)
「P3」:θ= 30°( 25°≦θ< 35°)
「P4」:θ= 40°( 35°≦θ< 45°)
図3は、主幹制御器の制御ブロック図である。ハンドル4の真の角度θに対し、回転角センサ5により検知された角度をθRとする。このθRはノッチ判別部8に入力され、上記の通り規定角度±5°の範囲で「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」の各ノッチを判別・出力する。このノッチ出力に基づき、編成中の制御器・原動機は動作する。
【0021】一方、近接センサ7は「N」に対してθ=0°±3°すなわち−3°≦θ<3°においてONするように設定されており、ONした時のみ回転角センサ5の出力θRは異常判別部9にも入力される。異常判定部9においては「−5°≦θR<5°」であるか否かの判別を行ない、θRがこの範囲内にある場合は「正常」、はずれた場合には「異常」の判定をする。
【0022】異常判別部9出力はラッチ10を介して異常処理部11に入力される。この異常処理部11は、異常判別部9出力が「正常」の場合はノッチ判別部8出力「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」をそのまま編成中の制御器に送るが、いったん「異常」となりラッチ10により保持されると、それ以降はノッチ判別部8出力が「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」いずれであっても強制的に「B4」にするという機能を有する。なお、ラッチ10のリセットはリセットスイッチ12にて行なう。
【0023】次に、図4および図5により、動作を説明する。
【0024】図4は「正常」時の動作である。回転角センサ5はハンドル4の真の角度θと一致したθRを出力している。近接センサ7は「N」(θ=0°)に対して±3°の範囲でONする。
【0025】したがって、この範囲で「−5°≦θR<5°」であるか否かの判別が異常判別部9で実行されるが、近接センサ7がONしている範囲では−3°≦θR<3°であり、−5°≦θR<5°を満たしている。よって異常判別部9の出力は「正常」であり、ノッチ判別部8出力「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」はそのまま編成中の制御器に送られる。したがって、当該列車はこの指令に基づき走行することになる。
【0026】図5は「異常」時の動作である。この図においては、ハンドル4の真の角度θに対して回転角センサ5の検知角度θRが4°ずれてしまった(θR=θ−4°)例を示している。近接センサ7は「正常」時(図4)と同様、「N」(θ=0°)に対して±3°の範囲でONするが、これに対応するθRは−7°≦θR<−1°であり−3°≦θ<−1°(−7°≦θR<−5°)においては「−5°≦θR<5°」を満たしていない。
【0027】したがって、ハンドル4が−3°≦θ<−1°の範囲にあると異常判別部9は「異常」を出力する。この状態はラッチ10で保持されるため、ノッチ判別部8出力「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」に関係なく異常処理部11の出力は「B4」となり、当該列車は運転士のハンドル4操作と関係なく停止する。
【0028】なお、本実施例においては異常判別部9の「異常」出力によりノッチ判別部8出力が強制的に「B4」になるようにしてあるが、ノッチ指令「B4」…「B1」「N」「P1」…「P4」とは独立して「異常」信号を編成中の制御装置に送り、制御装置側がブレーキ指令に読み替えるようにしてもよい。また、本実施例においてはθRがθより小さくなってしまった場合を記したが、逆にθRがθより大きくなった場合でも同様の動作をする。
【0029】以上のように、回転角センサ5の出力θRがハンドル4の真の角度θに対して2°(=5°−3°)以上ずれると「異常」が出力される。近接センサ7のON出力範囲を±4°とすると、回転角センサ5の出力θRがハンドル4の真の角度θに対して1°(=5°−4°)ずれただけでも「異常」を検知するようになる。
【0030】なお、本実施例においてはハンドル4の真の角度θに対して回転角センサ5の出力θRがずれた場合を説明したが、近接センサ7のON範囲の方が0°±3°から−4°±3°にずれてしまった場合でも同様に「異常」検知できる。
【0031】次に、なぜ「異常」検知範囲が「N」近辺だけでよいのか(なぜ「P4」「B4」などで「異常」検知させないのか)に関して説明する。
【0032】ある駅に停車している列車が次の停車駅まで走行する場合、運転士の主幹制御器操作および列車の状態は次のようになる。なお、「B」は「B4」…「B1」のいずれか、「P」は「P1」…「P4」のいずれかを意味する。
【0033】
ある駅停車中:「B」 (停止)
ある駅発車時:「B」⇒「N」⇒「P」(起動・加速)
両駅間 :「P」⇒「N」 (惰行)
両駅間 :「N」⇒「P」⇒「N」(再力行)
両駅間 :「N」⇒「B」⇒「N」(速度制限)
次の駅接近時:「N」⇒「B」 (減速・停止)
次の駅停車中:「B」 (停止)
上記説明のように、ある駅に停車している列車が次の停車駅まで走行する場合には「N」を中心としてハンドル4は操作されることになる。したがって、その度に主幹制御器に異常がないか否かを自己診断することができるわけである。
【0034】ところが仮に「P4」に前述の「異常」検知機能を持たせると、ある駅から次の停車駅にかけて下り勾配であった場合には必ずしも「異常」検知はできない。すなわち、下記のように力行ノッチに入れないで走行することがありうるからである。また、仮に力行ノッチに入れたとしても「P3」までしか操作しなかった場合も同様である。
【0035】
ある駅停車中:「B」 (停止)
ある駅発車時:「B」⇒「N」 (下り勾配で起動・加速)
両駅間 :「N」 (下り勾配で加速)
両駅間 :「N」⇒「B」⇒「N」(速度制限状態)
次の駅接近時:「N」⇒「B」 (減速・停止状態)
次の駅停車中:「B」 (停止状態)
今度は「B4」に「異常」検知機能を持たせると「B1」…「B3」のブレーキ操作のみで停止させた場合に「異常」検知できない。
【0036】以上のような理由により、「N」で「異常」検知することになる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、主幹制御器の異常を自己診断するために2個の回転角センサを設ける必要がなくなり、1個の回転角センサおよび1個の特定位置検知センサを設けるだけで同等の機能を持たせることができる。一般的に回転角センサより特定位置検知センサ(本実施例においてはピン6および近接センサ7)の方が占有体積が小さいため、その結果として主幹制御器を小形化でき、運転士に対して良好な居住性を提供することができる。
【0038】さらに、ハンドルのすべての範囲で位置を検出可能なセンサは、レゾルバ、エンコーダ、ポテンショメータがあるが、これらの検出器は汎用性がある標準化されたものを特別な加工を施すことなく使用するのが価格的に有利である。本発明によれば単に主幹制御器の回転軸にピンを設け、そこに検出用センサを設置すれば良いので経済的である。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成11年6月22日(1999.6.22)
【代理人】 【識別番号】100061893
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 明夫 (外1名)
【公開番号】 特開2001−8313(P2001−8313A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−175805