| 【発明の名称】 |
ホイール式建設機械の走行駆動装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】吉松 英昭
|
| 【要約】 |
【課題】ハイブリッド方式のホイール式建設機械において、動力回生の効率を高める。
【解決手段】常時駆動される駆動アクスルと、通常は非駆動アクスルで切換時に駆動アクスルとなる兼用アクスルを備えたホイール式建設機械において、動力回生が行われる一定の条件下、たとえばブレーキペダルが操作されたとき、またはリターダスイッチのオン状態でアクセルペダルの操作が解除されたときに、兼用アクスルを駆動アクスルに切換えて動力回生に荷担させるようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 発電装置、及びこの発電装置で作られた電力を蓄えるバッテリを備えた電源と、この電源から供給される電力により駆動される走行用電動機と、複数の走行用アクスルとを具備し、この走行用アクスルは、常時トランスミッションを介して上記電動機に連結される駆動アクスルと、アクスル切換手段により非駆動アクスルと駆動アクスルとの間で切換えられる兼用アクスルを備え、制御手段により、動力回生が行われる一定の条件下で上記アクスル切換手段を作動させて兼用アクスルを駆動アクスルに切換えるように構成されたことを特徴とするホイール式建設機械の走行駆動装置。 【請求項2】 走行用電動機による電気的駆動力のみがトランスミッションに入力されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のホイール式建設機械の走行駆動装置。 【請求項3】 発電装置の駆動源としての原動機による駆動力と、走行用電動機による駆動力がトランスミッションに並行して入力されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のホイール式建設機械の走行駆動装置。 【請求項4】 各車輪に装備されたメカニカルブレーキを制御するブレーキペダルが操作されたことを条件として兼用アクスルを駆動アクスルに切換えるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のホイール式建設機械の走行駆動装置。 【請求項5】 リターダスイッチが設けられ、このリターダスイッチがオンの状態でアクセルペダルの操作が解除されたことを条件として兼用アクスルを駆動アクスルに切換えるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のホイール式建設機械の走行駆動装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は車輪によって走行するホイールクレーン、ホイールショベル、ホイールローダ等のホイール式建設機械の走行駆動装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来のホイール式建設機械は、原動機としてのエンジンの回転力をトルクコンバータ,トランスミッション、プロペラシャフトを介して駆動アクスルに伝えることによって走行する構成となっている。 【0003】また、エンジンでポンプを駆動し、このポンプからの吐出油により油圧アクチュエータを駆動して旋回、ブーム起伏等のクレーン動作や掘削動作等の作業動作を行わせるようになっている。 【0004】しかし、このようにエンジン動力のみで走行動作及び作業動作を行わせる従来のホイール式建設機械によると、基本的に動力の無駄が大きいという問題があった。 【0005】そこで、実開平5−48501号公報に示されているように、エンジン動力を発電機で電気動力に変換して電動機を回転させ、この電動機の回転力によって走行動作及び作業動作を行わせる所謂ハイブリッド方式のものが提案されている。 【0006】この場合、走行駆動方式として、電気動力のみで駆動するシリーズ方式と、電気動力と機械動力を併用するパラレル方式とがある。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】このハイブリッド方式の走行駆動装置によると、制動時や降坂時等の動力を電気エネルギーに変換してバッテリに回収し再利用すること(動力回生)ができるためエネルギー効率を高めることができる。 【0008】ところが、ハイブリッド方式の公知のホイール式建設機械によると、駆動アクスル、すなわち、常時電動機の動力を伝達され動力回生を行い得るアクスルが全走行アクスルの一部のみとなっている。たとえば二軸式のラフテレーンクレーンの場合、前側アクスルが駆動アクスル、後側アクスルが兼用アクスルとして構成され、通常走行時は効率の面から前側駆動で、不整地走行時に前後両側駆動に切換えるようになっている。 【0009】従って、通常走行時には駆動アクスルである前側アクスルからしか動力回生できないため、動力回生の効率が悪く、ハイブリッド車の有利性を活かし切れない。 【0010】そこで本発明は、ハイブリッド方式のホイール式建設機械において、動力回生の効率を高めることができる走行駆動装置を提供するものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、発電装置、及びこの発電装置で作られた電力を蓄えるバッテリを備えた電源と、この電源から供給される電力により駆動される走行用電動機と、複数の走行用アクスルとを具備し、この走行用アクスルは、常時トランスミッションを介して上記電動機に連結される駆動アクスルと、アクスル切換手段により非駆動アクスルと駆動アクスルとの間で切換えられる兼用アクスルを備え、制御手段により、動力回生が行われる一定の条件下で上記アクスル切換手段を作動させて兼用アクスルを駆動アクスルに切換えるように構成されたものである。 【0012】請求項2の発明は、請求項1の構成において、走行用電動機による電気的駆動力のみがトランスミッションに入力されるように構成されたものである。 【0013】請求項3の発明は、請求項1の構成において、発電装置の駆動源としての原動機による駆動力と、走行用電動機による駆動力がトランスミッションに並行して入力されるように構成されたものである。 【0014】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、各車輪に装備されたメカニカルブレーキを制御するブレーキペダルが操作されたことを条件として兼用アクスルを駆動アクスルに切換えるように構成されたものである。 【0015】請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの構成において、リターダスイッチが設けられ、このリターダスイッチがオンの状態でアクセルペダルの操作が解除されたことを条件として兼用アクスルを駆動アクスルに切換えるように構成されたものである。 【0016】上記構成によると、請求項2ではシリーズ方式のホイール式建設機械において、請求項3ではパラレル方式のホイール式建設機械において、動力回生が行われる一定の条件下で兼用アクスルを駆動アクスルに切換えて動力回生に荷担させるため、動力回生効率を向上させることができる。 【0017】これにより、省エネルギー化が可能となるだけでなく、制動力も高まるため、メカニカルブレーキの負担を軽減することができる。 【0018】ところで、ホイールクレーンにおいて、運動エネルギーをオイルで吸収する流体式のリターダ装置をプロペラシャフトに設け、降坂時や高速走行時のような速度エネルギーが高いときに、一定の条件下でこのリターダ装置を作動させてメカニカルブレーキの負担を軽減するようにしたものが公知である(たとえば特公昭63−12827号、特公平2−19023号、特開平8−26093号各公報参照)が、このリターダ装置による動力吸収分を熱として捨てているため、エネルギーの無駄となっていた。 【0019】この点、請求項5の構成によると、リターダスイッチのオンかつアクセルペダルのオフというリターダ機能による動力回生が行われる条件下で兼用アクスルが駆動アクスルに切換えられて動力回生作用が行われ、リターダ機能を動力回生に活用することができる。 【0020】 【発明の実施の形態】本発明の実施形態を図によって説明する。 【0021】ここではラフテレーンクレーン、すなわち、下部走行体1上に上部旋回体2が縦軸まわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に起伏自在でかつ伸縮自在なブーム3と、走行時とクレーン作業時に兼用されるキャビン4が設けられたホイールクレーンを適用対象として例にとっている。 【0022】図1はこのラフテレーンクレーン全体とその機器配置、図2はこれら各機器のブロック構成、図3は走行駆動系のブロック構成をそれぞれ示している。 【0023】図1,2に示すように、下部走行体1には走行用電動機5が設置され、この電動機5により走行駆動装置のトランスミッション6が駆動される。 【0024】走行アクスルとして前側及び後側アクスル7,8が設けられ、図2,3に示すように、このうち前側アクスル7が常時トランスミッション6に連結されて駆動される駆動アクスルとして構成されている。 【0025】一方、後側アクスル8は、クラッチ9を介してトランスミッション6に連結され、クラッチオフでは非駆動アクスル、クラッチオンでトランスミッションに連結されて駆動アクスルとなる兼用アクスルとして構成されている。 【0026】10は前輪、11は後輪である。 【0027】上部旋回体2には、発電装置を構成するエンジン12及びこのエンジン12によって駆動される発電機13と、この発電機13から供給される電力を蓄えるバッテリ14が設置されている。 【0028】また、ブーム3を起伏させるブーム起伏装置としてのブーム起伏シリンダ15と、ブーム3を伸縮させるブーム伸縮シリンダ16と、このブーム起伏、伸縮両シリンダ15,16の駆動源となるブーム用電動機17及び同電動機17によって駆動されるブーム用油圧ポンプ18と、図示しない旋回装置(旋回歯車)を駆動する旋回用電動機19及び同電動機19の回転力を減速して旋回装置に伝える旋回用減速機20と、巻上装置としての図示しない主巻、補巻両ウィンチそれぞれの駆動源である主巻用、補巻用両電動機21,22及び同電動機21,22の回転力を減速してウィンチに伝える巻上用減速機23,24がそれぞれ設置されている。 【0029】図2において、実線矢印は電気駆動系、点線矢印は電気回生系、一点鎖線矢印は油圧駆動系をそれぞれ示す。また、図3において、二重実線矢印は電気駆動系、二重点線矢印は電気回生系、実線矢印は信号系をそれぞれ示す。 【0030】発電機13と各電動機5,17,19,21,22及びバッテリ14との間にインバータを兼ねるコントローラ25が設けられ、このコントローラ25のインバータ作用により、■ 発電機13で作られた交流電力が直流に変換されてバッテリ14に蓄えられ(通常充電作用)、■ バッテリ14の蓄電力が交流に変換されて各電動機5,17,19,21,22に供給される(放電作用)。 【0031】なお、図示しないが電動機ごとにレバー操作される操作部(たとえばポテンショメータ)が図1のキャビン4内に設けられ、この操作部からの操作信号がコントローラ25に送られ、この操作信号に基づいて各電動機5,17,19,21,22の回転方向と速度またはトルクが制御される。 【0032】また、コントローラ25には、ブレーキペダルの操作量に対応する信号(ブレーキペダル信号)と、アクセルペダルの操作量に対応する信号(アクセルペダル信号)と、車速センサからの車速信号と、オペレータによって操作されるリターダスイッチの信号(リターダスイッチ信号)が入力される。 【0033】コントローラ25は、上記■■のインバータ作用に加えて、■ ブレーキペダル信号があった(ブレーキペダルが操作された)とき、■ オペレータがリターダスイッチをオン操作した(リターダスイッチ信号が入力された)こと、及びアクセルペダルの操作量が0になった(アクセルペダル信号が入力されない)ことの二つの条件(リターダ条件)がそろったときの二つのケースでクラッチ9にクラッチオン信号を送り、クラッチ9をオンとしてトランスミッション6と後側アクスル8とを連結し、後側アクスル8を駆動アクスルに切換えるアクスル切換作用を行う。 【0034】このコントローラ25の作用を含めたこの走行駆動装置全体の作用を次に説明する。 【0035】エンジン12が運転されると、発電機13が駆動されて発電作用を行い、発生した交流電力がコントローラ25で直流に変換されてバッテリ14に蓄えられ、このバッテリ14の蓄電力によって各電動機5,17,19,21,22が駆動される。 【0036】これにより、下部走行体1については、走行用電動機5の回転力がトランスミッション6経由で前側アクスル7に伝えられて前輪10が駆動される。 【0037】この場合、通常走行時はクラッチ9はオフとなるため、後側アクスル8には駆動力は伝わらず、後輪11は非駆動輪として回転する。 【0038】走行用電動機5は、たとえばブラシレスDC電動機の場合、回転数とトルクの関係が図4のようになり、電流制御によってトルクを、電圧制御によって回転数をそれぞれ制御することができる。 【0039】また、走行中、(イ)坂道の降坂時等にブレーキペダルが操作されて制動作用が開始されたとき(ブレーキペダルオン時)、(ロ)オペレータがリターダスイッチをオン操作した状態で、アクセルペダルの操作が解除されたとき(アクセルペダルオフ時)、の二つのケースで、これらの信号に基づくコントローラ25からの信号によってクラッチ9がオンとなり、後側アクスル8がそれまでの非駆動アクスルから駆動アクスルに切換えられて後輪11も駆動輪となる。 【0040】これにより、前後のアクスル7,8がともに走行用電動機5に連結され、同電動機5の回生作用によって発生した回生電力がコントローラ25経由でバッテリ14に蓄えられる。 【0041】このため、常時、前側アクスル7のみで動力回生を行う場合と比較して動力回生効率が大幅に向上する。 【0042】また、動力回生に伴う制動力も大きくなるため、前後輪10,11のメカニカルブレーキにかかる負担がより軽減され、メカニカルブレーキのベーパーロックやフェード現象の発生が防止される。 【0043】このときのメカニカルブレーキと回生ブレーキの協調関係は、電動機の回転数−トルク特性、車速、ブレーキペダルの操作量、バッテリの充電量等に応じて制御される。制御の例として、図5に車速に対するメカニカル、回生両ブレーキトルクの協調関係、図6にブレーキペダル操作量に対する両ブレーキトルクの協調関係を示している。 【0044】他の実施形態(1)上記実施形態では、前後のアクスル7,8を電動機5のみによって駆動する所謂シリーズ方式を採用したが、本発明は所謂パラレル方式、すなわち、図7に示すように、前後のアクスル7,8を、バッテリ14−コントローラ25−走行用電動機5−トランスミッション6の主経路で駆動するのと並行して、エンジン12−トルクコンバータ26−トランスミッション6の副経路で駆動する方式を採用してもよい。 【0045】(2)上記実施形態では走行用電動機5をバッテリ電力のみで駆動する方式を例にとったが、同電動機5をバッテリ電力と発電機13で発生した電力の双方(電源電力)で駆動する方式を採用してもよい。こうすれば、走行時、とくに加速や登坂時のように大きな動力を要する場合に有利となる。 【0046】(3)上記実施形態では、前側が駆動アクスル、後側が兼用アクスルとして構成された場合を例にとったが、本発明は、前側が兼用アクスル、後側が駆動アクスルとして構成されたホイールクレーンにも適用可能である。 【0047】また、前側、中間(1乃至複数)、後側の三種類のアクスルを備えたホイールクレーンにおいて、■ これらの一つが駆動アクスル、一つが兼用アクスル、残りが非駆動アクスルとして構成されたもの、■ 一つが駆動アクスルで他の二つが兼用アクスルとして構成されたもの、■ 二つが駆動アクスルで残りが兼用アクスルとして構成されものにもそれぞれ適用することができる。 【0048】(4)上記実施形態では、ブレーキペダルオンのときと、リターダスイッチオンかつアクセルペダルオフのときという二つのケースで兼用アクスルを駆動アクスルに切換えるようにしたが、この二ケースの一方のみでアクスル切換を行うようにしてもよい。 【0049】(5)上記実施形態では、エンジン12と発電機13で発電装置を構成したが、この発電装置として燃料電池を用いてもよい。 【0050】(6)上記実施形態ではホイールクレーンの場合で説明したが、本発明はホイール式ショベルやホイールローダにも同様に適用することができる。 【0051】 【発明の効果】上記のように本発明によるときは、シリーズ方式のホイール式建設機械(請求項2)またはパラレル方式のホイール式建設機械(請求項3)において、動力回生が行われる一定の条件下(請求項4ではブレーキペダルのオン操作、請求項5ではリターダスイッチのオンかつアクセルペダルのオフ操作)で兼用アクスルを駆動アクスルに切換えて動力回生に荷担させるようにしたから、このような動力回生のための切換えを行わない場合と比較して、動力回生効率を大幅に向上させることができる。 【0052】これにより、省エネルギー化が可能となるだけでなく、制動力も高まるため、メカニカルブレーキの負担を軽減し、ベーパーロックやフェード現象の発生を防止することができる。 【0053】また、請求項5の発明によると、リターダスイッチのオンかつアクセルペダルのオフというリターダ機能による動力回生が行われる条件下で兼用アクスルが駆動アクスルに切換えられて動力回生作用が行われ、リターダ機能を動力回生に活用することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000001199 【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所 【識別番号】000246273 【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年6月21日(1999.6.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067828 【弁理士】 【氏名又は名称】小谷 悦司 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−8310(P2001−8310A) |
| 【公開日】 |
平成13年1月12日(2001.1.12) |
| 【出願番号】 |
特願平11−173667 |
|