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【発明の名称】 ハイブリッド車両の変速機ユニット
【発明者】 【氏名】菅野 拓

【要約】 【課題】電磁クラッチからモータ及び変速機への入力が1軸で行われるハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、クラッチ室とモータ室をシールする際、シールリップ部分の潤滑構造を必要とせず、かつ、入力軸が三点支持とならないハイブリッド車両の変速機ユニットを提供すること。

【解決手段】電磁クラッチ11からAモータ15及びCVT13への入力が1軸で行われるハイブリッド車両の変速機ユニット1において、クラッチ室47とモータ室44を画成する第1隔壁46に固定されたフロントカバー66と入力軸12との間に第3ベアリング部材53を設け、第3ベアリング部材53とフロントカバー66との間に、入力軸12の振れや偏心を許容する隙間59を介在させ、この隙間59に、クラッチ室47からモータ室44への異物侵入を防ぐOリング57を設けたこととした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ユニットハウジング内を、電磁クラッチを収装する第1ドライ室と、モータを収装する第2ドライ室と、変速機構部を収装する油室であるウエット室とに画成し、前記第1ドライ室と第2ドライ室とウエット室を貫通し、前記電磁クラッチからの回転を前記モータ及び前記変速機へ入力する1軸構造の入力軸を設けると共に、前記ウエット室の両端位置にて軸心の振れや偏心を許容することなく前記入力軸を回転可能に支持する第1ベアリング部材及び第2ベアリング部材とを備えたハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記第1ドライ室と前記第2ドライ室を画成する隔壁と、該隔壁と前記入力軸との間に第3ベアリング部材を設け、前記第3ベアリング部材と前記隔壁との間に、入力軸の振れや偏心を許容する隙間を介在させ、前記隙間に、第1ドライ室から第2ドライ室への異物侵入を防ぐシール部材を設けたことを特徴とするハイブリッド車両の変速機ユニット。
【請求項2】 請求項1に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記隙間により許容される入力軸の振れ幅や偏心幅を、少なくとも組み付け後に累積する公差による前記入力軸の芯ズレ値より大きく設定したことを特徴とするハイブリッド車両の変速機ユニット。
【請求項3】 請求項1または2に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記第3ベアリング部材を、グリース封入ベアリングとし、前記シール部材を、Oリングとしたことを特徴とするハイブリッド車両の変速機ユニット。
【請求項4】 請求項2または3に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記グリース封入ベアリングのアウタレースと前記隔壁との間に、アウタレースの回転を規制する回り止めピンを設け、該アウタレースと隔壁の間にOリングを設けたことを特徴とするハイブリッド車両の変速機ユニット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンと、発電機を兼ねるモータとを有し、これらの出力トルクを変速装置に伝達することにより、エンジンおよびモータのいずれか一方又は双方で走行駆動力を得るようにしたハイブリッド車両に搭載される変速機ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境の保護、及び有限資源の節約の観点から、自動車の燃費向上が求められている。この燃費向上の要求に対する1つの手段としてハイブリッド車両が考えられている。このハイブリッド車両は、エンジンとモータを直列もしくは並列に配置し、エンジン出力のアシストや、減速時には発電機として作用させ、自動車の運動エネルギを電気エネルギに変換することにより、この電気エネルギを用いて再度出力をアシストするよう構成されているものである。
【0003】そのような観点から、例えば、特開2000−9213号公報に記載の装置が知られている。この装置は図6に示すように、第1ハウジング113及び第1隔壁116により形成されるクラッチ室101と、第2ハウジング102,第1隔壁116及び第2隔壁117により形成されるモータ室102と、第3ハウジング115及び第2隔壁117により形成される変速機室103から構成されている。エンジンからの回転は、クラッチ室101の電磁クラッチ110に入力され、電磁クラッチ110からの出力は、モータ室102内のモータ111と変速機室103内の変速機112へ入力軸100により伝達される。
【0004】この入力軸100は、第3ハウジング115に設けられた支持部120と第2隔壁117に設けられた支持部121において、それぞれベアリングにより軸の振れや偏心を許容することなく回転可能に支持されている。また、第1隔壁116と入力軸100の摺動面には、シール部材122が備えられている。これにより、クラッチ室101において電磁クラッチ110への電流供給を行うスリップリング110a部分で発生する電極ブラシ摩耗粉(以下、摩耗粉という)や、エンジンと変速機ユニットAの接合面から侵入する水分等がモータ室102に侵入しないように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来技術においては、シール部材122の具体的構成が明確化されておらず、以下のような問題を有していた。すなわち、クラッチ室101とモータ室102は互いにドライ室(オイルによる潤滑が行われていないことを表す)であり、単にシール部材を設けるとシールリップ部の潤滑を必要とする。そのため、シールリップ部に潤滑構造(特に、摩耗粉対策のため)を構成しなければならないという問題があった。
【0006】また、シール部材として潤滑構造の必要のないベアリングを用い、ベアリング支持とした場合、図5(イ)に示すように、支持部120,121,122による三点支持となる。このとき、変速機112により発生する振動等により入力軸100が振れ回る際、シール部材122がベアリングによる径方向に固定されたリジッド支持であると、各支持部120,121,122への応力集中が発生しやすく、入力軸100及びベアリングの耐久性が低下してしまうという問題があった。(但し、図5(イ)に示す図は、実際に入力軸がうねる訳ではなく、図のように応力がかかった場合、各支持点に応力が集中することを示す。)
また、図5(ハ)に示すように、組み付け時に各部品の累積公差を吸収する部分が無い状態で、支持部120,121,122の順で組み立てると、支持部122が組み付かないと言う問題があった。また、モータ111は十分な性能を発揮させるためにロータ部分とステータ部分のクリアランスが狭く構成されているため、同様に累積公差を吸収してなお所定のクリアランスを保つ必要がある。
【0007】本発明は、上述のような問題点に着目してなされたもので、電磁クラッチからモータ及び変速機への入力が1軸で行われるハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、クラッチ室とモータ室をシールする際、シールリップ部分の潤滑構造を必要とせず、かつ、入力軸が三点支持とならないハイブリッド車両の変速機ユニットを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明においては、ユニットハウジング内を、電磁クラッチを収装する第1ドライ室と、モータを収装する第2ドライ室と、変速機構部を収装する油室であるウエット室とに画成し、前記第1ドライ室と第2ドライ室とウエット室を貫通し、前記電磁クラッチからの回転を前記モータ及び前記変速機へ入力する1軸構造の入力軸を設けると共に、前記ウエット室の両端位置にて軸心の振れや偏心を許容することなく前記入力軸を回転可能に支持する第1ベアリング部材及び第2ベアリング部材とを備えたハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記第1ドライ室と前記第2ドライ室を画成する隔壁と、該隔壁と前記入力軸との間に第3ベアリング部材を設け、前記第3ベアリング部材と前記隔壁との間に、入力軸の振れや偏心を許容する隙間を介在させ、前記隙間に、第1ドライ室から第2ドライ室への異物侵入を防ぐシール部材を設けたことを特徴とする。
【0009】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記隙間により許容される入力軸の振れ幅や偏心幅を、少なくとも組み付け後に累積する公差による前記入力軸の芯ズレ値より大きく設定したことを特徴とする。
【0010】請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記第3ベアリング部材を、グリース封入ベアリングとし、前記シール部材を、Oリングとしたことを特徴とする。
【0011】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいて、前記グリース封入ベアリングのアウタレースと前記隔壁との間に、アウタレースの回転を規制する回り止めピンを設け、該アウタレースと隔壁の間にOリングを設けたことを特徴とする。
【0012】
【発明の作用及び効果】請求項1記載の変速機ユニットにおいては、ユニットハウジング内が、電磁クラッチが収装される第1ドライ室と、モータが収装される第2ドライ室と、変速機が収装されるウエット室とに画成されている。そして、第1ドライ室と第2ドライ室とウエット室を貫通し、電磁クラッチからの回転をモータ及び変速機へ入力する1軸構造の入力軸が設けられると共に、ウエット室の両端位置にて軸心の振れや偏心を許容することなく入力軸を回転可能に支持する第1ベアリングと第2ベアリングが備えられている。このとき、第1ドライ室と第2ドライ室を画成する隔壁と入力軸との間に第3ベアリングが備えられるとともに、この第3ベアリングと隔壁との間に入力軸の振れや偏心を許容する隙間が介在され、この隙間に第1ドライ室から第2ドライ室への異物侵入を防ぐシール部材が設けられている。すなわち、第3ベアリングと隔壁の間に隙間が構成されることで、入力軸が三点リジッド支持とならないように構成され、隔壁がこの第3ベアリングをシール部材を介して入力軸の振れや偏心を許容する範囲で支持している。これにより、図5(ロ)に示すように、例え変速機等により振動が発生し、振れ回りが発生したとしても、支持点における応力集中を回避することができる。よって、モータや変速機に安定した入力回転が得られると共に、入力軸やベアリングの耐久性の向上を図ることができる。
【0013】請求項2に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいては、ベアリングと隔壁の間に構成される隙間により許容される入力軸の振れ幅や偏心幅が、少なくとも組み付け後に累積する公差による入力軸の芯ズレ値より大きく設定されている。よって、図5(ハ)に示すように、累積公差により組み付かないと言った問題を回避することが可能となり、組立をスムーズに行うことができる。
【0014】請求項3に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいては、第3ベアリングが、グリース封入ベアリングとされ、シール部材が、Oリングとされている。すなわち、クラッチ室とモータ室は共にドライ室であるため、第3ベアリング部分への潤滑は期待できない。しかしながら、グリース封入タイプのベアリングとすることで、ドライ室内においても十分ベアリングの性能を発揮することができる。また、シール部材をOリングとしたことでモータ室のシール性を確保しつつ振れ回りや偏心を許容することができる。
【0015】請求項4に記載のハイブリッド車両の変速機ユニットにおいては、グリース封入ベアリングのアウタレースと隔壁との間に、アウタレースの回転を規制する回り止めピンが設けられ、このアウタレースと隔壁の間にOリングが設けられている。すなわち、入力軸はインナレースと一体に回転し、アウタレースは隔壁に固定される。よって、入力軸はグリース封入ベアリングにより回転可能に支持されつつ、隔壁とアウタレースの間に構成されたシール部材は摺動部分が無いため、シール部材の耐久性の向上を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は実施の形態におけるハイブリッド車両の主要ユニットの構成を示す図である。1は変速機ユニット、2はエンジン、3は発電/始動用のBモータ、4はインバータ、5はバッテリ、6は電動式パワーステアリング、7はハイブリッド制御ユニット、8はチェーンである。
【0017】変速機ユニット1内には、電磁クラッチ11と、駆動用モータであるAモータ15と、無段変速機(以下CVTと記す)13が収装され、Aモータ15は減速時と制動時のエネルギ回生用モータとしても機能する。また、電動式油圧ポンプを駆動するためのCモータ9が備えられている。これは、モータのみでの走行域があるハイブリッド車では、エンジンに駆動されるオイルポンプだけではモータのみ走行時の油圧(特にCVT13のプーリ油圧)が得られないからである。また、同様の理由により、パワーステアリング6のアシスト力も電動式とされており、モータによってアシストされる。
【0018】発電/始動用モータであるBモータ3は、エンジンブロックにマウントされ、エンジン2とはチェーン8でつながれており、通常は発電機、始動時はスタータとして機能する。バッテリ5,モータ3,15,エンジン2,クラッチ11,CVT13の各制御ユニット7a,7b,7c,7d,7eはそれぞれ独立され、最終的にハイブリッド制御ユニット7で統合制御されている。
【0019】次に、駆動システムの作用を説明する。本実施の形態のハイブリッド車両はパラレル方式で、Aモータ15が出力よりも燃費を優先させたエンジン2のアシスト役として機能する。またCVT13は、エンジンを最良燃費点で運転させるための調整役も担っている。クラッチ11は電磁クラッチであり、OFFすればAモータ15のみでの走行となる。クラッチ11のON/OFFは、ハイブリッド制御ユニット7から指令を受けるクラッチ制御ユニット7dで自動的かつ最適に制御される。
【0020】(システム起動時)始動時はBモータ3がスタータとして機能し、エンジン2を始動する。
【0021】(発進・低速走行時)エンジン2の燃費消費効率が低い低負荷での発進や低速走行時には、エンジン2は停止してAモータ15のみの走行となる。発進と低速走行でも、負荷が大きい(スロットル開度が大きい)場合は直ちにエンジン2が始動し、クラッチ11がONしてエンジン2+Aモータ15での走行となる。
【0022】(通常走行時)主にエンジン2による走行となる。この場合、CVT13の変速制御によりエンジン回転数を調整することで、最良燃費ライン上での運転が実現されている。
【0023】(高負荷時)エンジン2が最大出力を発生しても駆動力が不足するような高負荷時は、バッテリ5からAモータ15に積極的に電気エネルギが供給され、全体の駆動力が増強される。
【0024】(減速時)減速時、エンジン2は燃料カットされる。同時にAモータ15がジェネレータとして機能し、従来は捨てられていた運動エネルギの一部を電気エネルギに変えてバッテリ5に回収する。
【0025】(後退時)CVT13には、リバースギアは設定されていない。従って、後退時はクラッチ11を開放し、Aモータ15を逆回転させて、Aモータ15のみの走行となる。
【0026】(停止時)車両停止時は、エンジン2は停止する。但し、バッテリ5の充電が必要なときやエアコンコンプレッサの作動が必要なときと暖機中などは、エンジン2は停止しない。
【0027】図2は本発明にベルト式無段変速機(CVT)を備えたハイブリッド車両の変速機ユニットの断面図である。図2において、エンジン出力軸10には回転伝達機構として電磁式のクラッチ11が連結されるとともに、この電磁クラッチ11に電源を供給するスリップリング11aが備えられている。電磁クラッチ11の出力側は変速機入力軸12と連結されており、この入力軸12の端部にはCVT13の駆動プーリ14が設けられると共に、駆動プーリ14と電磁クラッチ11との間に位置するように走行用のAモータ(請求項記載のモータ)15が設けられている。
【0028】Aモータ15は、入力軸12に固定されたロータ16と、ハウジング側に固定されたステータ17とからなり、バッテリ5からの電力の供給を受けて入力軸12を駆動し、または減速時等の入力軸12の回転力に基づいて発電機として機能する。
【0029】CVT13は、上記駆動プーリ14と従動プーリ18と、駆動プーリ14の回転力を従動プーリ18に伝達するベルト19等からなっている。駆動プーリ14は、入力軸12と一体に回転する固定円錐板20と、固定円錐板20に対向配置されてV字状プーリ溝を形成すると共に駆動プーリシリンダ室21に作用する油圧によって入力軸12の軸方向に移動可能である可動円錐板22からなっている。従動プーリ18は、従動軸23上に設けられている。従動プーリ18は、従動軸23と一体に回転する固定円錐板24と、固定円錐板24に対向配置されてV字状プーリ溝を形成すると共に従動プーリシリンダ室32に作用する油圧によって従動軸23の軸方向に移動可能である可動円錐板25とからなっている。
【0030】従動軸23には駆動ギア26が固着されており、この駆動ギア26はアイドラ軸27上のアイドラギア28と噛み合っている。アイドラ軸27に設けられたピニオン29はファイナルギア30と噛み合っている。ファイナルギア30は差動装置31を介して図示しない車輪に至るドライブシャフトを駆動する。
【0031】上記のようなCVT13にエンジン出力軸10から入力された回転力は、電磁クラッチ11及び入力軸12を介してCVT13に伝達される。入力軸12の回転力は駆動プーリ14,ベルト19,従動プーリ18,従動軸23,駆動ギア26,アイドラギア28,アイドラ軸27,ピニオン29,及びファイナルギア30を介して差動装置31に伝達される。
【0032】上記のような動力伝達の際に、駆動プーリ14の可動円錐板22及び従動プーリ18の可動円錐板25を軸方向に移動させてベルト19との接触位置半径を変えることにより、駆動プーリ14と従動プーリ18との間の回転比つまり変速比を変えることができる。このような駆動プーリ14と従動プーリ18のV字状のプーリ溝の幅を変化させる制御は、CVT制御ユニット7eを介して駆動プーリシリンダ室21または従動プーリシリンダ室32への油圧制御により行われる。
【0033】ところで、このような変速機構及びモータ等を収装した変速機ハウジングは、CVT13とAモータ15とを収装した第2ハウジング41と、電磁クラッチ11を収装した第1ハウジング42とに軸方向に分割した構成となっている。第2ハウジング41はCVT13等が組み込まれる変速機室43とAモータ15が組み込まれるモータ室44とに第2隔壁45を介して仕切られている。
【0034】また、第1ハウジング42は前記第2ハウジング41が結合する一方の端面に第1隔壁46が形成されており、各ハウジング41,42を結合したときに前記各隔壁45,46間に前記モータ室44を画成すると共に、第1ハウジング42の他方の端面を図示しないエンジン2に結合したときに第1隔壁46とエンジン2との間にクラッチ室47を画成するように構成されている。
【0035】モータ室44には、Aモータ15のステータ17が焼き嵌めにより組み込まれており、これにより構造の簡素化を図る一方、ステータ17を包囲するように第2ハウジング41に形成した冷却水ジャケット48に冷却水を循環させることによりAモータ15を効率よく冷却できるようにしている。
【0036】次に、本発明を適用した入力軸12の支持構造について説明する。図3は第3ベアリング53部分の拡大断面図である。まず構成を説明すると、モータ室44とクラッチ室47を画成する第1隔壁46にはフロントカバー66が固定されている。このフロントカバー66のモータ室44側には、Aモータ15の回転位置を検出するためのレゾルバステータ62と、Aモータ15の発生する磁場によるレゾルバステータ62とレゾルバロータ61に対する影響を防ぐための磁気遮蔽板63が備えられている。また、フロントカバー66と入力軸12の間には、グリースが封入された第3ベアリング53と入力軸12と共に回転するレゾルバロータ61が備えられている。
【0037】クラッチ室47には、電磁クラッチ11へ電源を供給するための電極11aが設けられている。電極11aの電極端子65は、エンジン出力軸10と共に回転するスリップリング64に押圧接触され、電源を供給している。
【0038】ベアリング53は、入力軸12に固定されたインナレース54と第2隔壁46にピン58により回転を規制されたアウタレース56と、ボール55と、ボール55の位置を保持する保持器60と、封入したグリースを密封するための封入プレート60aにより構成されている。
【0039】アウタレース56は回転方向に固定するためのピン58を保持するためのピン用穴56bと、摩耗粉や水分をシールするためのOリング57を保持するためのOリング用溝56aが構成されている。
【0040】次に作用を説明する。図4は本実施の形態の構成を表すスケルトン図である。エンジンが始動し、電磁クラッチ11がONにされると、入力軸12が回転し、モータ室44,変速機室43へと回転が伝達される。ここで、クラッチ室47及びモータ室44はドライ室、変速機室43はウエット室(オイルによる潤滑が行われていることを表す)である。このとき、変速機室43で発生する振動等により入力軸12が振動する。この振動は第3ベアリング53部分に伝達されるが、第3ベアリング53のアウタレース56と第2隔壁46の間には隙間59が設けられており、この隙間59にOリング57が備えられることで、隙間59程度径方向に偏心可能に設けられているため、振動を許容することができる。
【0041】図5(イ)は入力軸12が三点支持された場合の応力集中の様子を、また図5(ロ)は本実施の形態の隙間59を設けた場合の応力集中回避の様子を示す。図5に示すように、三点支持の場合に比べ本実施の形態は隙間59部分において振動を許容することで、各支持部への応力集中を抑えていることがわかる。
【0042】また、モータ室44とクラッチ室47はドライ室であるため、第3ベアリング53を潤滑する事が出来ないが、アウタレース56は第2隔壁46により固定されており、入力軸12の回転と第2隔壁46の相対回転はボール55を介して行われ、また、第3ベアリング53にはグリースが封入されているため、特に潤滑を必要としない。
【0043】また、Oリング57により電磁クラッチ11の電極端子65とスリップリング64の間で発生する摩耗粉や、エンジンとの接合面から侵入する水分も確実にシールすることができる。
【0044】以上説明したように、本実施の形態の変速機ユニットの構成を取ったことにより、例え変速機等により振動が発生し、振れ回りが発生したとしても、支持点における応力集中を回避することができる。よって、Aモータ15やCVT13に安定した入力回転が得られると共に、入力軸12や各ベアリング51,52,53の耐久性の向上を図ることができる。
【0045】また、隙間59により組み付け後に累積する公差による入力軸12の芯ズレ値を許容することができるため、組付けをスムーズに行うことができる。
【0046】また、第3ベアリング53が、グリースを封入したベアリングとされ、シール部材が、Oリング57とされている。つまり、クラッチ室47とモータ室44は共にドライ室であるため、第3ベアリング53部分への潤滑は期待できない。しかしながら、グリース封入タイプのベアリングとすることで、ドライ室内においても十分ベアリングの性能を発揮することができる。また、シール部材をOリング57としたことでシール性を確保しつつ振れ回りや偏心を許容することができる。
【0047】また、第3ベアリング53のアウタレース56とフロントカバー66との間に、アウタレース56の回転を規制する回り止めピン58が設けられている。すなわち、入力軸12はインナレース54と一体に回転し、アウタレース56は第1隔壁46に固定されたフロントカバー66に固定される。よって、入力軸12は第3ベアリング53により回転可能に支持されつつ、フロントカバー66とアウタレース56の間に構成されたOリング57は摺動部分が無いため、Oリング57の耐久性を向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ・トランステクノロジー株式会社
【出願日】 平成12年3月22日(2000.3.22)
【代理人】 【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟 (外1名)
【公開番号】 特開2001−260670(P2001−260670A)
【公開日】 平成13年9月26日(2001.9.26)
【出願番号】 特願2000−79524(P2000−79524)