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【発明の名称】 能動型サスペンション
【発明者】 【氏名】木村 健

【氏名】佐藤 茂樹

【要約】 【課題】いわゆる予見制御を実行するようになっている能動型サスペンションの性能をさらに向上したい。

【解決手段】能動型サスペンションを制御するコントローラ30を、A/D変換器41と、パルス変換器42と、路面起伏演算部43と、路面高さhL 、hR 及び上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を記憶する記憶部44と、路面高さhL、hR 及び上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR に基づいて適応制御を実行して制御指令信号PFL〜PRRを演算する指令信号演算部45と、制御指令信号PFL、PFR、PRL、PRR及び上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR との間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタC^を記憶した伝達関数フィルタ記憶部46と、制御指令信号PFL、PFR、PRL、PRRを指令電流iFL〜iRRに変換し出力する駆動回路47と、を備えた構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 制御対象車輪と車体との間に介装されたアクチュエータと、制御指令信号に応じて前記アクチュエータを駆動制御する駆動手段と、前記制御対象車輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定し路面起伏信号を生成する路面起伏検出手段と、前記車体の所定位置における振動を検出し車体振動信号を生成する車体振動検出手段と、前記路面起伏信号及び前記車体振動信号に基づき前記車体の振動が低減するように前記制御指令信号を生成し出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は適応制御を実行するようになっていることを特徴とする能動型サスペンション。
【請求項2】 前記制御対象車輪は、車両の右前輪、左前輪、右後輪及び左後輪であり、前記路面起伏検出手段は、前記右前輪及び左前輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定するようになっている請求項1記載の能動型サスペンション。
【請求項3】 前記制御対象車輪は、車両の右後輪及び左後輪であり、前記路面起伏検出手段は、前輪位置における振動情報に基づいて前記路面起伏信号を生成するようになっている請求項1記載の能動型サスペンション。
【請求項4】 前記振動情報は、前記前輪位置におけるバネ下振動である請求項3記載の能動型サスペンション。
【請求項5】 前記路面起伏検出手段は、前記前輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度から、前記前輪位置におけるバネ上上下方向加速度の積分値を減じることにより、前記バネ下振動を求めるようになっている請求項4記載の能動型サスペンション。
【請求項6】 前記車体振動検出手段は、前記制御対象車輪位置におけるバネ上の上下方向振動を検出するようになっている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の能動型サスペンション。
【請求項7】 前記車体振動検出手段は、車両乗員位置における車体の上下方向振動を検出するようになっている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の能動型サスペンション。
【請求項8】 前記制御手段は、前記制御指令信号及び前記振動検出手段間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタと、前記路面起伏信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理することにより更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記路面起伏信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理することにより前記制御指令信号を生成する制御指令信号生成手段と、前記更新用基準信号及び前記車体振動信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段と、を備えている請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の能動型サスペンション。
【請求項9】 前記適応ディジタルフィルタを、前記制御対象車輪毎に備えている請求項8記載の能動型サスペンション。
【請求項10】 前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成する、制御特性可変の第2の制御手段を備え、前記第2の制御手段の制御特性に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようになっている請求項8又は請求項9記載の能動型サスペンション。
【請求項11】 前記第2の制御手段は、車体振動をフィードバックして前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成するようになっている請求項10記載の能動型サスペンション。
【請求項12】 前記第2の制御手段はフィードバックのゲイン特性及び位相特性の少なくとも一方が可変であり、前記ゲイン特性及び位相特性の少なくとも一方に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようになっている請求項11記載の能動型サスペンション。
【請求項13】 前記車体振動は、前記制御対象車輪位置におけるバネ上の上下方向加速度、前記制御対象車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度、前記制御対象車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対変位のうちの少なくとも一つである請求項11又は請求項12記載の能動型サスペンション。
【請求項14】 前記第2の制御手段は、車両運動に基づいて前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成するようになっている請求項10記載の能動型サスペンション。
【請求項15】 前記車両運動は車体の前後方向加速度であり、前記第2の制御手段は、前記前後方向加速度に基づいて車体のピッチング運動が抑制されるような前記第2の制御指令信号を生成するようになっている請求項14記載の能動型サスペンション。
【請求項16】 前記車両運動は車体の横方向加速度であり、前記第2の制御手段は、前記横方向加速度に基づいて車体のロール運動が抑制されるような前記第2の制御指令信号を生成するようになっている請求項14記載の能動型サスペンション。
【請求項17】 前記第2の制御手段は、目標車高可変の車高制御手段であり、前記目標車高に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようになっている請求項10記載の能動型サスペンション。
【請求項18】 前記アクチュエータは流体圧アクチュエータであり、前記第2の制御手段は、前記流体圧アクチュエータの作動中立圧を調整する中立圧力調整手段を備え、前記作動中立圧に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようになっている請求項10記載の能動型サスペンション。
【請求項19】 前記アクチュエータは流体圧アクチュエータであり、作動流体の温度を検出する作動流体温度検出手段を備え、前記作動流体の温度に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようになっている請求項8乃至請求項18のいずれかに記載の能動型サスペンション。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、能動型サスペンションに関し、特に、走行中の車両前方等から車両振動に影響を与える情報を検出し、その検出された情報に基づいて能動的な制御力を発生することにより車両の振動を低減する制御(いわゆる予見制御)を実行するようになっている能動型サスペンションにおいて、その性能向上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】走行中の車両前方の路面情報を検出し、その情報に基づいてサスペンション特性を変更する従来の技術として、特開平1−90811号公報に開示されたものがある。この従来の技術は、路面起伏状態を検出するセンサと、各輪サスペンション毎に対応してバネ上・バネ下間に介在する油圧アクチュエータと、を備え、センサが検出した路面起伏状態に応じた制御信号を、そのセンサ検出位置と各車輪との間の距離及びそのときの車速に応じた時間だけ遅延させて各油圧アクチュエータに供給することにより、路面起伏に起因する車体振動を低減させる、というものである。
【0003】また、前輪位置における車体振動を検出することにより走行中の路面起伏状態を検出し、その路面起伏状態に応じて後輪のサスペンション特性を変更する技術として、特公昭49−2046号公報に開示されたものがある。この従来の技術は、前輪位置での車体振動を検出するセンサと、後輪サスペンション毎に対応してバネ上・バネ下間に介在するアクチュエータと、を備え、センサが検出した路面起伏状態に応じた制御信号を、ホイールベース及びそのときの車速に応じた時間だけ遅延させて後輪のアクチュエータに供給することにより、路面起伏に起因する車体振動を低減させる、というものである。なお、この従来の技術では、演算に要する時間やアクチュエータの応答遅れ等(τ)を考慮するようになっている。つまり、車速V、ホイールベースLから演算される遅延時間は(L/V)であるが、これから上記τを減じた(L/V−τ)を遅延時間とすることにより、最適なタイミングでアクチュエータを制御できる、というものであった。
【0004】しかしながら、実際には、路面入力の性質や温度等の環境条件によってもサスペンションの特性が変化し、最適なタイミングも変化することがある。そこで、本出願人は、流体圧シリンダの作動流体の温度に応じて遅延時間を補正するようにした能動型サスペンション(特開平5−319054号公報参照)、流体圧シリンダの作動流体の圧力に応じて遅延時間を補正するようにした能動型サスペンション(特開平5−319064号公報参照)、路面入力の周波数特性に応じて遅延時間を補正するようにした能動型サスペンション(特開平7−81364号公報参照)等を既に提案している。なお、これら本出願人の先願に係る公開公報には、遅延時間と共に又は遅延時間に代えて、流体圧シリンダ制御用の圧力制御弁に対する圧力指令値を補正することも開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上記のように本出願人が先に提案した遅延時間を補正する技術を適用すれば、能動型サスペンションにおける予見制御のタイミングをより的確に設定することができた。しかし、上記遅延時間や圧力指令値を補正する上で考慮すべき要因は、上記のような作動流体の温度、流体圧シリンダの圧力、路面入力の周波数特性以外にも多数あることが判ってきているが、考慮すべき全ての要因を制御に取り込むために多数のセンサを設けて演算処理を行うのは極めて困難であり、従って、常に最適な制御状態を維持することが困難であった。
【0006】本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、より的確なタイミングで予見制御を実行することができる能動型サスペンションを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、制御対象車輪と車体との間に介装されたアクチュエータと、制御指令信号に応じて前記アクチュエータを駆動制御する駆動手段と、前記制御対象車輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定し路面起伏信号を生成する路面起伏検出手段と、前記車体の所定位置における振動を検出し車体振動信号を生成する車体振動検出手段と、前記路面起伏信号及び前記車体振動信号に基づき前記車体の振動が低減するように前記制御指令信号を生成し出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は適応制御を実行するようにした。
【0008】請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記制御対象車輪は、車両の右前輪、左前輪、右後輪及び左後輪であり、前記路面起伏検出手段は、前記右前輪及び左前輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定するようにした。請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記制御対象車輪は、車両の右後輪及び左後輪であり、前記路面起伏検出手段は、前輪位置における振動情報に基づいて前記路面起伏信号を生成するようにした。
【0009】請求項4に係る発明は、上記請求項3に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記振動情報は、前記前輪位置におけるバネ下振動とした。また、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記路面起伏検出手段は、前記前輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度から、前記前輪位置におけるバネ上上下方向加速度の積分値を減じることにより、前記バネ下振動を求めるようにした。
【0010】そして、請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記車体振動検出手段は、前記制御対象車輪位置におけるバネ上の上下方向振動を検出するようにした。これに対し、請求項7に係る発明は、上記請求項1〜5に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記車体振動検出手段は、車両乗員位置における車体の上下方向振動を検出するようにした。
【0011】一方、請求項8に係る発明は、上記請求項1〜7に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記制御手段は、前記制御指令信号及び前記振動検出手段間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタと、前記路面起伏信号を前記伝達関数フィルタでフィルタ処理することにより更新用基準信号を生成する更新用基準信号生成手段と、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記路面起伏信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理することにより前記制御指令信号を生成する制御指令信号生成手段と、前記更新用基準信号及び前記車体振動信号に基づき適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段と、を備えた。
【0012】また、請求項9に係る発明は、上記請求項8に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記適応ディジタルフィルタを、前記制御対象車輪毎に備えることとした。そして、請求項10に係る発明は、上記請求項8、9に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成する、制御特性可変の第2の制御手段を備え、前記第2の制御手段の制御特性に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようにした。
【0013】請求項11に係る発明は、上記請求項10に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記第2の制御手段は、車体振動をフィードバックして前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成する手段である。請求項12に係る発明は、上記請求項11に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記第2の制御手段はフィードバックのゲイン特性及び位相特性の少なくとも一方が可変であり、前記ゲイン特性及び位相特性の少なくとも一方に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようにした。
【0014】請求項13に係る発明は、上記請求項11、12に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記車体振動は、前記制御対象車輪位置におけるバネ上の上下方向加速度、前記制御対象車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度、前記制御対象車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対変位のうちの少なくとも一つとした。
【0015】また、請求項14に係る発明は、上記請求項10に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記第2の制御手段は、車両運動に基づいて前記駆動手段に対する第2の制御指令信号を生成するようにした。請求項15に係る発明は、上記請求項14に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記車両運動は車体の前後方向加速度であり、前記第2の制御手段は、前記前後方向加速度に基づいて車体のピッチング運動が抑制されるような前記第2の制御指令信号を生成するようにした。
【0016】これに対し、請求項16に係る発明は、上記請求項14に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記車両運動は車体の横方向加速度であり、前記第2の制御手段は、前記横方向加速度に基づいて車体のロール運動が抑制されるような前記第2の制御指令信号を生成するようにした。請求項17に係る発明は、上記請求項10に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記第2の制御手段は、目標車高可変の車高制御手段であり、前記目標車高に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようにした。
【0017】そして、請求項18に係る発明は、上記請求項10に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記アクチュエータは流体圧アクチュエータであり、前記第2の制御手段は、前記流体圧アクチュエータの作動中立圧を調整する中立圧力調整手段を備え、前記作動中立圧に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようにした。
【0018】さらに、請求項19に係る発明は、上記請求項8〜18に係る発明である能動型サスペンションにおいて、前記アクチュエータは流体圧アクチュエータであり、作動流体の温度を検出する作動流体温度検出手段を備え、前記作動流体の温度に応じて前記伝達関数フィルタの特性を変更するようにした。ここで、請求項1に係る発明にあっては、路面起伏検出手段が検出又は推定した路面起伏状態を表す路面起伏信号と、車体振動検出手段が検出した車体(バネ上)所定位置の振動を表す車体振動信号とに基づき、車体(バネ上)の振動が低減するように、制御手段が適応制御を実行し駆動手段に対する制御指令信号を生成し出力する。このため、車体振動に影響を与える要因を直接検出しそれを考慮して制御指令信号を補正する構成でなくても、車体の振動を良好に低減し得る制御指令信号が生成されて駆動手段に供給される。
【0019】そして、請求項2に係る発明にあっては、車両の四輪全てに対応してアクチュエータが設けられ、路面起伏検出手段は、前輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定するから、前輪より前方の路面起伏情報が四輪全てのアクチュエータの制御に用いられる。つまり、前輪より前方の路面起伏情報と、これから前輪位置で発生する振動との間には、高い相関関係があり、また、走行中の車両は多くの場合前輪と後輪との通過位置は略一致するため、前輪より前方の路面起伏情報と、これから後輪位置で発生する振動との間にも、高い相関関係がある。よって、路面起伏信号が前輪より前方の路面起伏情報を表していれば、制御手段において良好な適応制御が実行可能である。
【0020】なお、この請求項2に係る発明における路面起伏検出手段としては、車体の左右前端部に下向きに配設されて車体及び路面間の距離を測定する超音波センサ等を含んで構成することができる。なお、かかる超音波センサ等の距離測定手段の出力信号には、路面の起伏情報の他に、車体(バネ上)の上下方向振動情報も含まれているため、正確な路面起伏信号を生成するためには、超音波センサ等の出力信号から、バネ上の上下方向振動分を差し引くことが望ましい。
【0021】また、請求項3に係る発明にあっては、左右の後輪に対応してアクチュエータが設けられ、路面起伏検出手段は、前輪位置における振動情報に基づいて路面起伏信号を生成するから、前輪位置における振動情報が、後輪のアクチュエータの制御に用いられる。つまり、走行中の車両は多くの場合前輪と後輪との通過位置は略一致するため、前輪位置で観測された振動と、これから後輪位置で発生する振動との間には、高い相関関係があるといえる。よって、路面起伏信号が前輪位置における振動情報に基づいて生成されれば、制御手段において良好な適応制御が実行可能である。
【0022】そして、請求項3に係る発明における前輪位置における振動情報としては、例えば請求項4に係る発明のように、前輪位置におけるバネ下振動が適用可能である。かかるバネ下振動は、例えば請求項5に係る発明のように、バネ上及びバネ下間の上下方向相対速度(例えば、バネ上及びバネ下間のストローク変化速度)から、バネ上上下方向加速度の積分値(つまり、バネ上の上下方向速度)を減じることにより求めることができる。
【0023】一方、請求項6に係る発明にあっては、車体振動検出手段は、制御対象車輪位置におけるバネ上の上下方向振動を検出するため、その制御対象車輪位置におけるバネ上の上下方向振動を低減するように、制御手段における制御内容が適応していく。これに対し、請求項7に係る発明にあっては、車体振動検出手段は、車両乗員位置における車体(例えば、乗員足元位置のフロア部材)の上下方向振動を検出するため、その車両乗員位置における上下方向振動を低減するように、制御手段の制御内容が適応していく。
【0024】そして、請求項8に係る発明は、制御手段の構成をより具体的にしたものであって、この場合の制御系全体をブロック線図で表すと図1のようになる。なお、図1中の各記号の意味は、下記の通りである。
x………路面起伏信号
W………適応ディジタルフィルタP………制御指令信号(路面起伏信号xを適応ディジタルフィルタWでフィルタ処理した結果)
C………制御指令信号から車体振動検出手段に至る間(駆動手段やアクチュエータを含む)伝達関数C^……伝達関数Cをモデル化した伝達関数フィルタR………更新用基準信号(路面起伏信号xを伝達関数フィルタC^でフィルタ処理した結果)
e………車体振動信号(車体振動検出手段の出力)
G………車両の振動伝達経路(路面起伏が、車輪やサスペンション等を介して車体振動検出手段に至るまでの経路)の伝達関数なお、路面起伏検出手段としては、請求項2に係る発明のように、前輪より前方の路面起伏状態を検出又は推定する手段であってもよいし、請求項3に係る発明のように、前輪位置における振動情報に基づいて路面起伏信号を生成する手段であってもよく、いずれを採用しても発明の本質的な部分は変わらないので、特に必要がある場合を除き両者は区別しない。
【0025】そして、車体振動検出手段の出力である車体振動信号eは、二つの経路(G、WC)それぞれを通じた振動を合わせたものであるから、e=(G+WC)xと表される。なお、車体振動信号eは“0”が望ましいのであるから、この車体振動信号eは、誤差信号(エラー信号)とも称す。
【0026】そして、適応アルゴリズムとして例えばLMSアルゴリズムを考えた場合、そのLMSアルゴリズムによれば、車体振動信号eを最小にする適応ディジタルフィルタWは、評価関数Jとして、J=e2を定義し、その評価関数Jを適応ディジタルフィルタWで微分した値が“0”、つまり、
として求めることができる。
【0027】かかる理論に基づき、評価関数Jを減少させる方向、即ち、 W(更新後)=W(更新前)−αeCx ……(1)
という式に更新式に従って、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数を逐次更新していけば、適応ディジタルフィルタWを最適値(車体振動信号eを“0”にできる値)に近づける又は収束させることが可能となる。
【0028】なお、伝達関数Cは、制御出力系の伝達特性であるから、実際に計測しなければその正確な値は判らない。このため、実際の制御では、予め計測しておいた伝達関数Cをモデル化した伝達関数フィルタC^を、上記(1)式に用いるのが一般的となる。つまり、 W(更新後)=W(更新前)−αeC^x ……(2)
とする。
【0029】このように、適応ディジタルフィルタWの更新演算は、伝達関数フィルタC^で路面起伏信号xをフィルタ処理してなる更新用基準信号R(=C^x)と、車体振動検出手段によって検出された車体振動信号eと、所定の収束係数αとから更新量αeC^xを算出し、その更新量を、現在の適応ディジタルフィルタWから減じる、という演算になる。
【0030】そして、この請求項8に係る発明にあっては、車体振動信号eに応じて適応ディジタルフィルタWがその車体振動を低減させる方向に変化するため、様々な状態変化があったとしても、車体振動を効果的に低減している状態を維持することが可能となる。なお、適応ディジタルフィルタは、請求項9に係る発明のように、制御対象車輪毎に個別に備えることが望ましい。これは、各制御対象車輪毎に伝達関数Cや伝達関数Gが異なり適応ディジタルフィルタWの最適値が異なる、というのが通常だからである。
【0031】一方、請求項10に係る発明は、上記した制御手段における適応制御(予見制御)の他に、駆動手段に対する別の制御指令信号(第2の制御指令信号)を生成する制御を実行するようになっている発明であって、その別の制御指令信号によって伝達関数Cが変化しても、適応制御に用いられる伝達関数フィルタC^の精度ができるだけ劣化しないようにしたものである。
【0032】つまり、伝達関数Cは、駆動手段やアクチュエータの特性を含んでいるため、例えばアクチュエータが油圧アクチュエータであればその減衰係数やバネ定数が第2の制御指令信号を生成する第2の制御手段の制御特性に応じて変化することがあり、伝達関数Cが変化すれば、伝達関数フィルタC^が固定であるとその伝達関数フィルタC^の精度がそれだけ劣化したことと同じである。そして、伝達関数フィルタC^の精度が劣化すれば、それだけ適応制御の性能が低下することになる。
【0033】そこで、この請求項10に係る発明のように、第2の制御手段の制御特性に応じて伝達関数フィルタC^の特性(ゲイン特性や位相特性)が変更されれば、伝達関数フィルタC^の精度劣化を抑制でき、制御手段における適応制御の性能低下を抑制できるのである。請求項11乃至請求項13に係る発明は、請求項10に係る発明における第2の制御手段を具体的にした例であって、車体(バネ上)振動をフィードバックして第2の制御指令信号を生成する、いわゆるスカイフック制御を実行する第2の制御手段を備えている。
【0034】スカイフック制御を実行すると、バネ上振動が低減されるように、そのバネ上振動に応じて例えばサスペンションの減衰定数やバネ定数等が適宜制御されるから、スカイフック制御を実行する第2の制御手段の制御特性に応じて、アクチュエータの伝達関数が変化し、伝達関数Cが変化する。例えば、第2の制御手段が、車体振動として、制御対象車輪位置のバネ上上下方向加速度を取り込み、その上下方向加速度をフィードバックして第2の制御指令信号を生成する、いわゆるスカイフックダンパ制御を実行するようになっているものとする。フィードバック制御としては、例えば積分制御等が適用可能である。一方、制御手段においては、上述した適応ディジタルフィルタWを用いた予見制御が実行される。
【0035】そして、上記スカイフックダンパ制御が作用していない状態での能動型サスペンションの運動方程式は、mz''+c(z' −r' )+k(z−r)=fm:車体質量z:車体の上下変位c:減衰定数r:路面変位k:バネ定数f:制御力「' 」は一次微分、「''」は二次微分を表す。
と考えることができ、この場合の伝達関数Cは、ラプラス演算子sを用いて、C=z/f=1/(ms2 +cs+k)
となる(但し、路面入力が加わらない場合を想定している。)。
【0036】一方、上記のようなスカイフックダンパ制御も作用している場合には、サスペンションの運動方程式は、mz''+c(z' −r' )+k(z−r)=f+fS但し、fS =−cs z' ,cs はフィードバック定数である。となり、伝達関数Cは、C=z/f=1/(ms2 +(c+cs )s+k)
となる。
【0037】よって、上記のような伝達関数Cの変化を考慮し、第2の制御手段の制御特性(上記説明の場合は、スカイフックダンパ制御の特性)に応じて伝達関数フィルタC^を変更すれば、それだけ適応制御の性能低下を抑制できるのである。請求項12に係る発明は、請求項11に係る発明をより具体的にしたものであって、第2の制御手段におけるフィードバックのゲイン特性及び位相特性の少なくとも一方が可変になっている場合である。ゲイン特性等は、例えば、車速、前後加速度、横加速度、バネ上上下加速度等に応じて可変にすることができる。また、請求項13に係る発明は、スカイフック制御においてフィードバックする車体振動を具体的に特定したものである。
【0038】そして、請求項14乃至請求項16に係る発明は、請求項10に係る発明における第2の制御手段を具体的にした他の例であって、例えば車体の前後方向加速度(請求項15)や車体の横方向加速度(請求項16)のような車両運動に基づいて、車体姿勢の変化を抑制するような制御を実行する第2の制御手段を備えている。つまり、前後方向加速度や横方向加速度に応じて車体姿勢変化を抑制するための制御を第2の制御手段が実行するようになっていて、しかも、その第2の制御手段の例えば制御ゲインが運転者の選択や車高等に応じて可変になっている場合には、その制御ゲインが変化することにより伝達関数Cも変化するため、それを考慮して伝達関数フィルタC^の特性を変更すれば、それだけ適応制御の性能低下を抑制できるのである。
【0039】請求項17に係る発明は、請求項10に係る発明における第2の制御手段を具体的にした他の例であって、目標車高となるように車高制御を行う車高制御手段を備え、その車高制御における目標車高が可変になっている。つまり、目標車高が例えば運転者の選択や車速等に応じて変化した場合、それに応じてアクチュエータの中立位置も変化するため、伝達関数Cが変化する。よって、目標車高に応じて伝達関数フィルタC^の特性を変更すれば、それだけ適応制御の性能低下を抑制できるのである。
【0040】請求項18に係る発明は、制御対象車輪に設けられたアクチュエータが油圧アクチュエータ等の流体圧アクチュエータであり、その流体圧アクチュエータの中立圧力を調整する中立圧力調整手段を備えている。そして、流体圧アクチュエータの中立圧力が変化すれば、伝達関数Cも変化するため、それを考慮して伝達関数フィルタC^の特性を変更すれば、それだけ適応制御の性能低下を抑制できるのである。
【0041】そして、請求項19に係る発明も、請求項18に係る発明と同様に、制御対象車輪に設けられたアクチュエータが油圧アクチュエータ等の流体圧アクチュエータである場合を前提としている。そして、作動流体の温度が変化すると、その粘性等が変化して伝達関数Cも変化することに着目しており、作動流体の温度に応じて伝達関数フィルタC^の特性を変更するから、それだけ適応制御の性能低下を抑制できるのである。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、制御手段において適応制御を実行するようにしたため、車体の振動を良好に低減し得る制御指令信号を適切なタイミングで駆動手段に供給することができるから、高性能の予見制御を実行することができるという効果がある。
【0043】特に、請求項10〜19に係る発明にあっては、伝達関数フィルタの特性を適宜変更するようにしたため、制御指令信号及び振動検出手段間の伝達関数が変化しても、適応制御の性能低下を抑制できるから、さらに良好な予見制御を実行することができるという効果がある。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態を示す概略構成図であり、図中、10は車体側部材を、11FL〜11RRは前左〜後右車輪を、12は能動型サスペンションをそれぞれ示す。
【0045】能動型サスペンション12は、車体側部材10と車輪11FL〜11RRの各車輪側部材14との間に各々介装されたアクチュエータとしての油圧シリンダ18FL〜18RRと、これら油圧シリンダ18FL〜18RRの作動圧を個別に調整する圧力制御弁20FL〜20RRと、これら圧力制御弁20FL〜20RRに所定圧力の作動油を供給側配管21Sを介して供給すると共に、圧力制御弁20FL〜20RRからの戻り油を戻り側配管21Rを通じて回収する油圧源22と、この油圧源22及び圧力制御弁20FL〜20RR間の供給圧側配管21Sに介挿された蓄圧用のアキュムレータ24F,24Rと、車速を検出してこれに応じたパルス信号を出力する車速センサ26と、各車輪11FL〜11RRにそれぞれ対応する位置における車体の上下方向加速度をそれぞれ個別に検出する上下方向加速度センサ28FL〜28RRと、左右前輪の前方に位置するように車体側部材10の車両前端部左右にそれぞれ固定され、車体及び路面間の距離を検出する路面センサ27L及び27Rと、各センサ26,27L,27R及び28FL〜28FRの検出値に基づき各圧力制御弁20FL〜20RRに対する予見制御を行うコントローラ30と、を備えている。
【0046】油圧シリンダ18FL〜18RRのそれぞれは、シリンダチューブ18aを有し、このシリンダチューブ18aには、軸方向に貫通孔を有するピストン18cにより隔設された下側の圧力室Lが形成され、ピストン18cの上下面の受圧面積差と内圧とに応じた推力を発生する。そして、シリンダチューブ18aの下端が車輪側部材14に取付けられ、ピストンロッド18bの上端が車体側部材10に取付けられている。また、圧力室Lの各々は、油圧配管38を介して圧力制御弁20FL〜20RRの出力ポートに接続されている。また、油圧シリンダ18FL〜18RRの圧力室Lの各々は、絞り弁32を介してバネ下振動吸収用のアキュムレータ34に接続されている。また、油圧シリンダ18FL〜18RRの各々のバネ上,バネ下相当間には、比較的低いバネ定数であって車体の静荷重を支持するコイルスプリング36が配設されている。
【0047】圧力制御弁20FL〜20RRのそれぞれは、スプールを摺動自在に内装した円筒状の弁ハウジングとこれに一体的に設けられた比例ソレノイドとを有する、従来周知の3ポート比例電磁減圧弁(例えば、特開昭64−74111号公報参照)で構成されている。そして、比例ソレノイドの励磁コイルに供給する指令電流i(指令値)を調整することにより、弁ハウジング内に収容されたポペットの移動距離、即ちスプールの位置を制御し、供給ポート及び出力ポート又は出力ポート及び戻りポートを介して油圧源22と油圧シリンダ18FL〜18RRとの間で流通する作動油を制御できるようになっている。
【0048】ここで、励磁コイルに加えられる指令電流i(:iFL〜iRR)と圧力制御弁20FL(〜20RR)の出力ポートから出力される制御圧Pとの関係は、図3に示すように、ノイズを考慮した最小電流値iMIN のときには最低制御圧PMIN となり、この状態から電流値iを増加させると、電流値iに比例して直線的に制御圧Pが増加し、最大電流値iMAX のときには油圧源22の設定ライン圧に相当する最高制御圧PMAX となる。この図3で、iN は中立指令電流,PN は中立制御圧である。
【0049】前記上下方向加速度センサ28FL〜28RLのそれぞれは、図4に示すように、上下方向加速度GFL〜GRRが零であるときに零の電圧、上方向の加速度GFL〜GRRを検出したときにその加速度値に応じた正のアナログ電圧、下方向の加速度GFL〜GRRを検出したときに、その加速度値に応じた負のアナログ電圧でなる車体上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を出力するようになっている。ここでは、上下方向加速度GFL〜GRRに対して上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR は何らの係数も介さない(即ち係数が“1”である)リニアな関数であるとして,この上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を上下方向加速度GFL〜GRRと同等のものとしている。
【0050】また、前記路面センサ27L及び27Rのそれぞれは、図5に示すように、車体側部材10の車両前端部左右位置と路面との間の上下方向の相対距離を検出するために、これら路面センサ27L及び27Rからは、前記相対距離が予め設定された目標車高に相当する所定距離に一致するときに零の中立電圧、相対距離が前記所定距離よりも小さくなるとその偏差に応じた正の電圧、相対距離が前記所定距離よりも大きくなるとその偏差に応じた負の電圧でなる距離検出値dL 及びdR を出力するようになっている。ここでは、前記相対距離に対して距離検出値dL 及びdR は何らの係数も介さない(即ち係数が“1”である)リニアな関数であるとして,この距離検出値dL 及びdR を前記相対距離と同等のものとしている。なお、路面センサ27L及び27Rとしては、超音波を利用したもの、レーザーを利用したもの等が適用可能である。
【0051】そして、コントローラ30は、実際にはマイクロコンピュータや必要なインタフェース回路等から構成されていて、各種演算処理はソフトウェアによって実現されているが、その構成を機能ブロック図で表すと図6のようになる。即ち、コントローラ30は、上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR 及び距離検出値dL ,dR をディジタル値に変換するA/D変換器41と、車速センサ26から供給されるパルス信号を速度値(車速)Vに変換するパルス変換器42と、を備えていて、これらを通じて外部の信号が供給されるようになっている。
【0052】A/D変換器41でディジタル値に変換された上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR 及び距離検出値dL ,dR は、路面起伏演算部43に供給されるようになっている。路面高さ演算部43は、入力される各検出値に基づき、路面センサ27L及び27Rの配設位置における路面高さhL 、hR を、順次演算するようになっている。路面高さ演算部43における具体的な演算内容については、後述する。
【0053】そして、路面高さ演算部43が演算した路面高さhL 、hR と、A/D変換器41でディジタル値に変換された上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR とは、記憶部44に供給されそこに記憶されるようになっている。記憶部44は、後述の適応処理に必要な個数の路面高さhL 、hR 及び上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を記憶するのに充分な容量を有したメモリであり、それら記憶した路面高さhL 、hR 及び上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を、適応処理に必要なタイミングで制御指令信号演算部45に供給するようになっている。
【0054】制御指令信号演算部45には、路面高さhL 、hR 及び上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR の他に、パルス変換器42から車速信号Vも供給されるようになっている。また、コントローラ30内には、予め実験やシミュレーション等を行うことにより求められた伝達関数CFL、CFR、CRL、CRRをモデル化してなる伝達関数フィルタCFL^、CFR^、CRL^、CRR^を記憶した伝達関数フィルタ記憶部46が設けられていて、制御指令信号演算部45は、その伝達関数フィルタ記憶部46から伝達関数フィルタCFL^〜CRR^を適宜読み込めるようになっている。
【0055】なお、上記伝達関数CFL、CFR、CRL、CRRのそれぞれは、制御指令信号演算部45で生成され出力された制御指令信号PFL、PFR、PRL、PRRと、上下方向加速度センサ28FL〜28RLの出力との間の伝達関数であり、制御指令信号PFL、PFR、PRL、PRRを指令電流iFL〜iRRに変換し出力する駆動回路47、その指令電流iFL〜iRRに応じて作動する圧力制御弁20FL〜20RR、並びに油圧シリンダ18FL〜18RR等の特性を含んでいる。
【0056】ここで、路面高さ演算部43における具体的な演算内容について説明する。即ち、路面センサ27F、27Rの出力である距離検出値dL ,dR は、路面の高さ情報だけではなく、その路面センサ27F、27R配設位置における車体側部材10の上下方向の振動情報も含んでいる。そこで、路面高さ演算部43においては、下記式に従って路面高さhL 、hR を演算するようになっている。
【0057】
L =zSL+dL ' ……(3)
R =zSR+dR ' ……(4)
但し、dL ' 、dR ' は、それぞれ距離検出値dL ,dR の微分値(速度値)であり、また、zSL、zSRは、路面センサ27F、27R配設位置における車体側部材10の上下方向速度であって、下記式に従って演算される路面センサ27F、27R配設位置における車体側部材10の上下方向加速度zGL、zGRを、積分することにより求められる。なお、下記式中、LS は路面センサ27F、27R配設位置と前輪側車軸(厳密には、前側の加速度センサ28FL,28FR)との間の車両前後方向距離、Lはホイールベース(厳密には、前側の加速度センサ28FL,28FRと後側の加速度センサ28RL,28RRとの間の車両前後方向距離)である。
【0058】
GL=ZGFL +(ZGFL −ZGRL )×LS /LzGR=ZGFR +(ZGFR −ZGRR )×LS /L次に、制御指令信号演算部45における演算内容について説明する。即ち、制御指令信号演算部45では、先ず、車速検出値Vに基づき、制御指令信号PFL〜PRRを演算する処理を実行するか、実行しないかを決定する。ここでは、車速検出値Vが、下限値V0 と上限値V1 との間にある場合にのみ、制御指令信号PFL〜PRRを演算する処理を実行し、その範囲外にある場合には、適応ディジタルフィルタWをクリアして制御指令信号PFL〜PRRを生成せず、指令電流iFL〜iRRを中立指令電流iN に固定するようになっている。
【0059】車速検出値Vが下限値V0 未満の場合に制御指令信号PFL〜PRRを生成しない理由は、車両が低速で走行している場合には、路面センサ27F、27R配設位置における路面起伏情報の検出してから、その路面起伏情報に応じた振動が車輪及びサスペンションを通じて車体側部材に入力されるまでの間の時間差が非常に大きく、そのような大きな時間差を模擬するような適応ディジタルフィルタWを適応演算によって求めることが困難になるためである。
【0060】また、車速検出値Vが上限値V1 を越える場合に制御指令信号PFL〜PRRを生成しない理由は、車両が高速で走行している場合には、逆に上記時間差が非常に小さく、制御演算が間に合わなくなり、制御指令信号PFL〜PRRを生成することにより却って車体側振動が悪化する可能性があるからである。そして、制御指令信号演算部45は、車速検出値Vが上記範囲(V0 〜V1 )内にある場合に制御指令信号PFL〜PRRを生成するのであるが、かかる制御指令信号PFL〜PRRを生成するための処理は、大きく別けて、適応ディジタルフィルタWを用いて制御指令信号PFL〜PRRを生成する処理と、その適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi を適応アルゴリズムとしてのLMSアルゴリズムに従って更新する処理とから構成されている。
【0061】適応ディジタルフィルタWは複数J個のフィルタ係数Wj (j=0、1、2、…、J−1)を構成要素としたディジタルフィルタである。なお、適応ディジタルフィルタWは、油圧シリンダ18FL〜18RR毎に(適応ディジタルフィルタWFL、WFR、WRL、WRRという具合に)個別に備えられているが、特に区別する必要がない場合には、適応ディジタルフィルタWとして説明する。また、伝達関数フィルタC^FL〜C^RRについても、特に区別する必要がない場合には、伝達関数フィルタC^として説明する。
【0062】そして、低減したい振動(この実施の形態では、各車輪位置におけるバネ上振動)に相関の高い信号(基準信号)を、適応ディジタルフィルタWでフィルタ処理することにより制御指令信号PFL〜PRRを生成するのであるが、ここでは、上記基準信号として、制御指令信号PFL、PRLの生成には路面高さhL を、制御指令信号PFR、PRRの生成には路面高さhR を、それぞれ用いる。
【0063】つまり、記憶部44には、路面高さhL 、hR のそれぞれが、現在から過去の所定時点に至る間の所定個数分記憶されているから、その路面高さhL 、hR の最新の値を基準信号としての路面起伏信号xの最後の要素x(I−1)とし、その一つ前の路面高さhL 、hR を路面起伏信号xの最後から二番目の要素x(I−2)とし、という具合に定めていて、最新の値から(I−1)個前の路面高さhL 、hR を路面起伏信号xの一番目の要素x(0)とするようになっている。従って、路面起伏信号xは、図7(2)に示すように時間関数として表される信号となる。なお、Iは、伝達関数フィルタC^のタップ数であり、伝達関数Cを測定する場合のインパルス応答の残響時間をサンプリング・クロックの間隔Δtで割ることにより求められる。
【0064】上記のような適応ディジタルフィルタWで、上記のような路面起伏信号xをフィルタ処理するということは、畳み込み演算をするということであるから、そのフィルタ処理の結果である信号yは、下記のようになる。

このようにして求められた信号y(yFL、yFR、yRL、yRR)が、制御指令信号PFL〜PRRとして駆動回路47に出力される。
【0065】これに対し、LMSアルゴリズムに従った適応ディジタルフィルタWの更新処理は、先ず、更新用基準信号Rの演算が必要であり、更新用基準信号Rは、上記(2)式及びその説明からも明らかなように、路面起伏信号xを、伝達関数フィルタC^でフィルタ処理した値であり、伝達関数フィルタC^は、伝達関数Cをモデル化したものであり、ここでは時間領域の演算であるから、図7(1)に示すように時間関数としてのインパルス応答で伝達関数Cをモデル化して、伝達関数フィルタC^としている。よって、路面起伏信号xを伝達関数フィルタC^でフィルタ処理するということは、畳み込み演算をするということであるから、更新用基準信号Rは下記式に従って演算される。なお、C^(i)は、伝達関数フィルタC^のフィルタ係数であり、i=0、1、2、…、I−1である。
【0066】

そして、適応ディジタルフィルタWの更新演算には、上記(2)式からも判るように、上記更新用基準信号Rの他に、車体振動信号(エラー信号)eと、収束係数αとが必要であるが、収束係数αは、制御の発散を招かない範囲で且つ最適値への収束速度がある程度確保される値をシミュレーション等の結果に基づいて予め決定しておく。また、車体振動信号eには、上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を適用する。ただし、左前輪11FL用の適応ディジタルフィルタWFLの更新演算には、車体振動信号eとして上下方向加速度検出値ZGFL を用い、右前輪11FR用の適応ディジタルフィルタWFRの更新演算には、車体振動信号eとして上下方向加速度検出値ZGFR を用い、左後輪11RL用の適応ディジタルフィルタWRLの更新演算には、車体振動信号eとして上下方向加速度検出値ZGRLを用い、右後輪11RR用の適応ディジタルフィルタWRRの更新演算には、車体振動信号eとして上下方向加速度検出値ZGRR を用いる。
【0067】よって、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wj の更新式は、下記のようになる。なお、下記式の右辺のWj (n)は、更新前のj番目のフィルタ係数であり、下記式の左辺のWj (n+1)は、更新後のj番目のフィルタ係数である。
j (n+1)=Wj (n)−α・e・R(J−I−j) ……(7)
つまり、制御指令信号演算部45では、上記(7)式に従って適応ディジタルフィルタWを逐次更新する一方で、その適応ディジタルフィルタWと路面起伏信号xとを上記(5)式に従って畳み込むことにより信号yFL、yFR、yRL、yRRを演算し、それらを制御指令信号PFL〜PRRとして駆動回路47に出力するようになっている。
【0068】次に、本実施の形態の動作を、コントローラ30内における処理の概要を示すフローチャートである図8に従って説明する。先ず、ステップ101において、各センサから供給される上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR 、距離検出値dL 、dR 、車速検出値Vのそれぞれを、A/D変換器41或いはパルス変換器42を介して読み込む。
【0069】次いで、ステップ102に移行し、上記(3)式、(4)式に従って、路面高さhL 、hR を演算し、演算された路面高さhL 、hR は、過去に演算された値とともに、所定の記憶領域に記憶される。なお、ステップ101で読み込んだ上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR も、過去に読み込まれた検出値とともに、所定の記憶領域に記憶される。
【0070】そして、ステップ103に移行し、ステップ101で読み込んだ車速検出値Vが、所定範囲V0 〜V1 内にあるか否かを判定する。この判定が「NO」の場合には、上述した理由から制御指令信号PFL〜PRRの出力を行わないこととし、ステップ104に移行して適応ディジタルフィルタWをクリア(フィルタ係数Wjを0にする)とともに、ステップ105に移行して各制御指令信号PFL〜PRRを0にする。ステップ104で適応ディジタルフィルタWをクリアするのは、次にステップ103の判定が「YES」となって予見制御が実行される状況になった場合、適応ディジタルフィルタWが残っていても、却ってバネ上振動を悪化させる制御力が発生する可能性が高いからである。
【0071】一方、ステップ103の判定が「YES」の場合には、ステップ106に移行し、上記(6)式に従って更新用基準信号Rを演算し、次いでステップ107に移行し、上記(7)式に従って適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wj を更新する。なお、このステップ107では、全ての適応ディジタルフィルタWFL〜WRRの全てのフィルタ係数Wj を更新することが望ましいが、演算時間が間に合わないような場合には、今回のステップ107の処理では適応ディジタルフィルタWFL、WFRのフィルタ係数を更新し、次回ステップ107の処理では適応ディジタルフィルタWRL、WRRのフィルタ係数を更新する、といった具合に複数回に分けて全フィルタ係数を更新するようにしてもよい。
【0072】ステップ107の処理を終えたら、ステップ108に移行し、上記(5)式に従って信号yFL〜yRRを演算し、次いでステップ109に移行して、それら信号yFL〜yRRを制御指令信号PFL〜PRRとする。そして、ステップ105又はステップ109から、ステップ110に移行し、制御指令信号PFL〜PRRを出力する。ステップ110の処理を終えたら、今回の図8の処理を終了し、次のサンプリング・クロックのタイミングで再びステップ101以降の処理を実行する。
【0073】この図8の処理が繰り返し実行されると、コントローラ30からは、指令電流iFL〜iRRが所定のサンプリング・クロックの間隔で次々と各圧力制御弁20FL〜20RRの励磁コイルに供給されるが、制御が開始された直後は、適応ディジタルフィルタWFL〜WRRのフィルタ係数Wj は最適値に収束しているとは限らないので、バネ上振動が低減されない場合もある。
【0074】しかし、制御が開始されてからある程度時間が経過すると、適応ディジタルフィルタWFL〜WRRのフィルタ係数Wj が上記(7)式に従って更新される結果、最適値に収束又は近づくため、制御指令信号PFL〜PRRはバネ上振動を低減するのに適切な制御信号となる。この結果、バネ上振動が低減し、車両乗り心地がさらに良好になる。
【0075】つまり、能動型サスペンションにおける従来の予見制御では、路面起伏情報に基づいて制御指令信号PFL〜PRRを演算する一方で、その路面起伏情報の検出位置と制御力の発生位置との間の距離や、車速検出値V等に応じた遅延時間に基づいて制御指令信号PFL〜PRRの適切な出力タイミングをも演算し、その制御指令信号PFL〜PRRを出力する必要があるのに対し、本実施の形態の上記のような予見制御であれば、適応ディジタルフィルタWFL〜WRRが自動的に更新されて適切なタイミングで適切な大きさの制御指令信号PFL〜PRRを出力することができるのである。
【0076】図9は、本実施の形態における予見制御を実行することによりバネ上振動が低減される様子を示す波形図であり、図9(1)は、時速30kmで走行した場合に取り込まれた路面起伏を示している。そして、横軸の時刻が0の時点で、適応制御による予見制御を開始していて、制御力の波形である図9(2)に示すように、徐々に制御力が大きくなっていることが判る。これは、制御開始直後は適応ディジタルフィルタWがさほど成長していないため制御力が小さいが、ある程度の時間が経過して適応ディジタルフィルタWが成長した後には適切な大きさの制御力が発生するからである。そして、図9(3)は、バネ上振動(変位)を示しており、細実線は予見制御を実行しなかった非制御時を、太実線は本実施の形態と同様の適応制御による予見制御を実行した制御時を、それぞれ示している。この図9からも、本実施の形態のような適応制御による予見制御が極めて有効であることが判る。
【0077】ここで、本実施の形態では、駆動回路47が駆動手段に対応し、路面センサ27L,27R及び路面起伏演算部43が路面起伏検出手段に対応し、上下方向加速度センサ28FL〜28RRが車体振動検出手段に対応し、制御指令信号演算部45が制御手段に対応し、車輪11FL〜11RRのそれぞれが制御対象車輪であり、ステップ106における処理が更新用基準信号生成手段に対応し、ステップ108の処理が制御指令信号生成手段に対応し、ステップ107における処理がフィルタ係数更新手段に対応する。
【0078】図10は本発明の第2の実施の形態を示す図であって、上記第1の実施の形態における図8と同様にコントローラ30内における処理の概要を示すフローチャートであり、その図8における処理と同様の処理には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。また、全体的な構成等は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0079】即ち、上記第1の実施の形態では、車速検出値Vが、所定範囲V0 〜V1 内にある場合のみ予見制御を実行し、その範囲外にある場合には予見制御を実行しない、という具合に、下限値V0 及び上限値V1 を境として制御のオン・オフを切り換えるようにしているが、本実施の形態では、その制御のオン・オフの切り換えを滑らかにしている。
【0080】具体的には、図10に示すように、ステップ101、102の処理を終えたらステップ201に移行し、車速検出値Vに対して図11に示すような関係を有する係数βを算出する。係数βは、車速検出値Vが所定範囲V0 〜V1 外にある場合には“1”をとる一方、車速検出値Vが下限値V1 を越えると同時に比較的急峻に低下して“0”になり、また、上限値V1 の少し手前で“0”から立ち上がって急峻に増加し上限値V1 に達した時点で“1”になる、という係数である。
【0081】そして、ステップ106を経てステップ107に移行し、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wj を更新するのであるが、ここでは、上記(7)式に代えて、下記の(8)式に従って更新演算を行う。
j (n+1)=Wj (n)−α・e・R(J−I−j)−βy ……(8)
上記(8)式は、上記(7)式と比較して、右辺第3項が追加されている点が相違しているが、その右辺第3項は、係数βと、上記(5)式で演算された信号y(つまり、制御指令信号PFL〜PRR)とを掛け合わせたものを減じる、という項であるから、係数βが“0”であれば、上記(8)式は上記(7)式と同じである。
【0082】しかし、係数βが0より大きければ、上記(8)式の右辺第3項は、係数β及び信号yの大きさに応じた強さで、フィルタ係数Wj を原点(0)に近づける作用を発揮する補正項となる。よって、係数βを図11に示すように車速検出値Vに応じて決定すれば、車速検出値Vが所定範囲V0 〜V1 外にある場合には、フィルタ係数Wj は極短い時間で原点付近に張り付くから、制御指令信号PFL〜PRRは殆ど出力されない。これに対し、車速検出値Vが低速側から増加して下限値V0 を越えるか、又は、車速検出値Vが高速側から減少して上限値V1 を下回ると、フィルタ係数Wj が徐々に成長するから、制御指令信号PFL〜PRRは段々と出力されるようになり、係数βが“0”になる範囲では上記第1の実施の形態の場合と同様に充分に大きい制御指令信号PFL〜PRRが出力されるようになる。
【0083】なお、路面センサ27F、27R及び前輪11FL、11FR間の距離と、路面センサ27F、27R及び後輪11RL、11RR間の距離とを比較すると、前者<後者であるから、低速走行時の制御は、後輪側に比べて前輪側の余裕は大きいし、逆に、高速走行時の制御は、前輪側に比べて後輪側の余裕は大きい。そこで、係数βを、前輪側の係数βf 、後輪側の係数βr として別々に用意し、これら係数βf 、係数βr を、図12に示すように車速検出値Vに応じて決定してもよい。即ち、図12に示す例では、前輪側の下限値V0fを後輪側の下限値V0rよりも小さく、もって前輪側の予見制御は後輪側に比べてより低速側でも働くようにし、また、後輪側の上限値V1rを前輪側の上限値V1fよりも大きくし、もって後輪側の予見制御は前輪側に比べてより高速側でも働くようにしている。
【0084】その他の作用効果は、上記第1の実施の形態と同様である。図13は、本発明の第3の実施の形態を示す図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。また、コントローラ30の構成及び処理の概要は、基本的に上記第1の実施の形態と同様であるため、相違する点のみ詳細に説明する。
【0085】即ち、上記第1の実施の形態では、前輪11FL、11FRよりもさらに前方の車体側部材10に路面センサ27F、27Rを設け、その路面センサ27F、27Rの距離検出値dL 、dR と上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR とに基づいて路面高さhL 、hR を演算し、その路面高さhL 、hR に基づき、前輪側及び後輪側の能動型サスペンション12において予見制御を実行するようにしていたが、本実施の形態では、路面センサ27F、27Rに代えて、左右の前輪11FL、11FR位置に対応してバネ上及びバネ下間の上下方向距離を測定するストロークセンサ50FL、50FRを設けていて、それらストロークセンサ50FL、50FRのストローク検出値SFL、SFRと上下方向加速度検出値ZGFL 、ZGFR とに基づいて前輪11FL、11FRの振動情報を検出するようになっている。
【0086】ストロークセンサ50FL、50FRは、図5に示した路面センサ27L及び27Rの出力特性と同様に、バネ上及びバネ下間の相対距離が予め設定された目標車高に相当する所定距離に一致するときに零の中立電圧、相対距離が前記所定距離よりも小さくなる(縮む)とその偏差に応じた正の電圧、相対距離が前記所定距離よりも大きくなる(伸びる)とその偏差に応じた負の電圧でなるストローク検出値SFL及びSFRを出力するようになっている。
【0087】そして、コントローラ30の制御指令信号演算部45は、路面起伏信号xF 、xR として前輪11FL、11FRの振動情報を用いることにより、適応処理を実行し、後輪側の能動型サスペンション12における予見制御を実行するようになっている。具体的には、本実施の形態では、図14に示すように、コントローラ30は路面高さ演算部43の代わりに、路面起伏検出手段として、前輪振動演算部48を有していて、かかる前輪振動演算部48では、上記前輪11FL、11FRの振動情報として、前輪11FL、11FR位置におけるバネ下振動を演算するようになっている。
【0088】さらに具体的には、前輪振動演算部48は、前輪11FL、11FR位置におけるバネ下振動として、ストロークセンサ50FL、50FRが検出したストローク検出値SFL、SFRと、前輪側の上下方向加速度センサ28FL、28FRが検出した上下方向加速度検出値ZGFL 、ZGFR とに基づいて、下記式に従って、バネ下の上下方向速度zUFL ' 、zUFR ' を演算するようになっている。
【0089】zUFL ' =SFL' +zSFLUFR ' =SFR' +zSFRただし、SFL' 、SFR' は、ストローク検出値SFL、SFRの微分値(つまり、前輪11FL、11FR位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対速度)である。また、zSFL 、zSFR は前輪11FL、11FR位置におけるバネ上の上下方向速度であり、上下方向加速度検出値ZGFL 、ZGFR を積分することにより求められる。なお、本実施の形態では、ストロークセンサ50FL、50FRの出力を、伸び側(バネ上が持ち上がる側)で負とし、上下方向加速度センサ28FL、28FRの出力値が上向きを正としていることと逆になっているため、上記上下方向速度zUFL ' 、zUFR ' の演算式は、形は加算となっているが、実質的には減算である。
【0090】なお、本実施の形態では、上下方向速度zUFL ' 、zUFR ' の演算式は上記のようになっているため、前輪振動演算部48には、上下方向加速度検出値ZGFL〜ZGRR のうち前輪側の上下方向加速度検出値ZGFL 、ZGFR のみが供給されるようになっており、また、後輪側についてのみ予見制御を実行することから、記憶部44には上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR のうち後輪側の上下方向加速度検出値ZGRL 、ZGRR のみが供給されるようになっている。
【0091】本実施の形態の構成であれば、後輪側の能動型サスペンション12に対して、上記第1の実施の形態と同様の予見制御を実行できるから、後輪側のバネ上振動を良好に低減することができる。しかも、路面センサ27L、27Rのようなストロークセンサ50FL、50FRに比べて特殊なセンサが不要であるという利点があり、かかる構成は、特にタクシーやハイヤー等のように後部座席にお客が乗車する場合が多い車両に適用されると好適である。
【0092】なお、前輪側のバネ下に上下加速度センサを設け、その上下加速度センサの出力値の積分値に基づいてバネ下の上下方向速度zUFL ' 、zUFR ' を求めるようにしても構わない。図15は、本発明の第4の実施の形態を示す図であって、コントローラ30の機能構成を示すブロック線図である。なお、上記各実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。また、全体的な構成等は上記第3の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0093】即ち、本実施の形態のコントローラ30は、いわゆるスカイフックダンパ制御を実行する第2の制御指令信号演算部60を備えていて、この第2の制御指令信号演算部60には、上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR 及び車速検出値Vが供給されるようになっている。そして、第2の制御指令信号演算部60の機能構成は、図16に示すように、各上下方向加速度検出値ZGFL 〜ZGRR を積分して上下方向速度ZSFL 〜ZSRRを演算する積分器61と、その上下方向速度ZSFL 〜ZSRR を制御ゲインcS 倍して第2の制御指令信号PSFL 、PSFR 、PSRL 、PSRR を演算する乗算器62と、車速検出値Vに応じて乗算器62の制御ゲインcS を演算し変更するゲイン演算部63と、を備えている。
【0094】ゲイン演算部63における車速検出値Vに応じた制御ゲインcS の演算は、図17に示すように、制御ゲインcS が、車速検出値Vが上昇するに従って徐々に大きくなり、車速検出値Vがある程度の高速になった後は最大値を維持するようになっている。これは、スカイフックダンパの特性を、低速走行時には比較的軟らかく、高速走行時には比較的硬くになる傾向で、車速に応じて連続的に変化させることを意図しているからである。
【0095】そして、第2の制御指令信号PSFL 〜PSRR は、加算器64において、制御指令信号演算部45から出力された制御指令信号PRL、PRRと加算されて、その加算結果が、制御指令信号PFL〜PRRとして駆動回路47に供給されるようになっている。なお、本実施の形態の場合、後輪側についてのみ予見制御を実行するようになっているから、制御指令信号演算部45から出力されるのは制御指令信号PRL、PRRであり、制御指令信号演算部45から出力される制御指令信号PFL、PFRは、いずれも0である。
【0096】一方、コントローラ30の伝達関数フィルタ記憶部46には、上記制御ゲインcS の大中小三段階に対応して、伝達関数フィルタC^(CRL^、CRR^)として、伝達関数フィルタCL ^(CL.RL^、CL.RR^)、伝達関数フィルタCM ^(CM.RL^、CM.RR^)、伝達関数フィルタCH ^(CH.RL^、CH.RR^)という具合に、後輪側の能動型サスペンション12のそれぞれについて三種類ずつ記憶している。これは、制御ゲインcS が変更されると能動型サスペンション12の減衰特性も変化して伝達関数Cも変化するから、それをモデル化した伝達関数フィルタC^も変更しないと、制御指令信号演算部45における適応処理の精度が低下してしまうからである。
【0097】そこで、コントローラ30は、伝達関数フィルタ選択部49を有していて、この伝達関数フィルタ選択部49には、第2の制御指令信号演算部60からゲイン情報GC が供給されるようになっていて、伝達関数フィルタ選択部49は、供給されるゲイン情報GC に応じてそのときの伝達関数Cのモデルとして最適な伝達関数フィルタCL ^、CM ^、CH ^を選択し、選択されたものを伝達関数フィルタC^として制御指令信号演算部45に供給するようになっている。なお、ゲイン情報GC は、制御ゲインcS そのものでもよいし、或いは、制御ゲインcSが大中小のいずれであるかを表す情報のみであってもよい。
【0098】本実施の形態であれば、制御指令信号演算部45及び第2の制御指令信号演算部60を備え、両者で演算された制御指令信号を合算したものを駆動回路47に出力するようにしているため、後輪側の能動型サスペンション12に対する予見制御と、前輪側及び後輪側の能動型サスペンション12に対するスカイフックダンパ制御とを、同時に実行することができる。
【0099】このため、予見制御としては上記第3の実施の形態と同様の作用効果が発揮される。また、スカイフックダンパ制御により、バネ上を、バネ下(路面)にではなく絶対空間に対して支持させたような作用効果を得ることができる。しかも、そのスカイフックダンパ制御における制御ゲインcS を車速検出値Vに応じて可変としているため、低速走行から高速走行に渡って適宜減衰力を可変とすることができるから、低速・中速走行時の車両乗り心地や、高速走行時の走行安定性を適宜両立することができる。
【0100】そして、本実施の形態では、制御ゲインcS に応じて伝達関数フィルタC^を変更するようにしているから、伝達関数Cが変化してもそれに対応するように伝達関数フィルタC^を変更することができる。このため、伝達関数フィルタC^の精度が大きく低下することを防止できるから、制御指令信号演算部45における適応処理の精度を良好に保つことが可能になる、という利点がある。
【0101】なお、この第4の実施の形態では、制御ゲインcS に応じて伝達関数フィルタC^を三段階に変更するようにしているが、その種類は、伝達関数フィルタ記憶部46のメモリ容量は必要な制御精度等に応じて適宜選定されるものである。また、この第4の実施の形態では、スカイフックダンパ制御を実行する第2の制御指令信号演算部60の制御ゲインcS (フィードバックゲイン)を、車速検出値Vに応じて可変としているが、これに限定されるものではなく、バネ上の上下方向加速度、前後方向加速度、横方向加速度等、他の情報に応じて可変としても構わない。さらに、各能動型サスペンション12に対するスカイフック制御の制御ゲインcS を、それら能動型サスペンション12毎に個別に可変とする構成であっても構わないが、かかる場合には、伝達関数フィルタC^の選択も各能動型サスペンション12毎に個別に行う必要がある。
【0102】図18は、本発明の第5の実施の形態を示す図であって、コントローラ30の機能構成を示すブロック線図である。なお、上記各実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。また、全体的な構成等は、各輪毎にストロークセンサ50FL、50FR、50RL、50RRを備えていて、各輪毎のストローク検出値SFL、SFR、SRL、SRRがコントローラ30に供給されるようになっていることを除いては上記第3の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0103】即ち、本実施の形態のコントローラ30は、いわゆるストロークフィードバック制御を実行する第2の制御指令信号演算部60を備えていて、この第2の制御指令信号演算部60には、ストローク検出値SFL、SFR、SRL、SRR及び車速検出値Vが供給されるようになっている。そして、第2の制御指令信号演算部60の機能構成は、図19に示すように、ストローク検出値SFL〜SRRを微分して各車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対変位速度SFL' 〜SRR' を演算する微分器65と、その上下方向相対変位速度SFL' 〜SRR' を速度ゲインc1 倍する乗算器66と、ストローク検出値SFL〜SRRを変位ゲインc2 倍する乗算器67と、乗算器66及び67の出力を加算して第2の制御指令信号PSFL 〜PSRR を演算する加算器68と、車速検出値Vに応じて速度ゲインc1 及び変位ゲインc2 を演算し変更するゲイン演算部69と、を備えている。なお、車速検出値Vと、速度ゲインc1 及び変位ゲインc2 との関係は、上記第4の実施の形態におけるゲイン演算部63の場合と同様に、車速検出値Vが上昇するに従って速度ゲインc1 及び変位ゲインc2が大きくなる傾向となっている。
【0104】そして、コントローラ30の伝達関数フィルタ記憶部46には、上記第4の実施の形態と同様に、後輪側の能動型サスペンション12のそれぞれについて三種類ずつの伝達関数フィルタCL ^、CM ^、CH ^が記憶されていて、伝達関数フィルタ選択部49は、ゲイン情報GC に含まれる速度ゲインc1 及び変位ゲインc2 の大中小の関係に基づき、例えば、
という関係で、伝達関数フィルタCL ^、CM ^、CH ^を選択し、伝達関数フィルタC^を設定するようになっている。
【0105】本実施の形態であれば、制御指令信号演算部45及び第2の制御指令信号演算部60を備え、両者で演算された制御指令信号を合算したものを駆動回路47に出力するようにしているため、後輪側の能動型サスペンション12に対する予見制御と、前輪側及び後輪側の能動型サスペンション12に対するストロークフィードバック制御とを、同時に実行することができる。
【0106】このため、予見制御としては上記第3の実施の形態と同様の作用効果が発揮される。また、ストロークフィードバック制御によって、バネ上及びバネ下間の上下方向相対変位を所定値近傍に整定することができる。そして、本実施の形態では、速度ゲインc1 及び変位ゲインc2 に応じて伝達関数フィルタC^を変更するようにしているから、上記第4の実施の形態と同様に、伝達関数Cが変化してもそれに対応するように伝達関数フィルタC^を変更することができ、伝達関数フィルタC^の精度が大きく低下することを防止できて制御指令信号演算部45における適応処理の精度を良好に保つことが可能になる、という利点がある。
【0107】なお、この第5の実施の形態では、速度ゲインc1 及び変位ゲインc2 に応じて上記マトリックスに示すような関係で伝達関数フィルタC^を変更するようにしているが、伝達関数フィルタC^の設定の方法は任意である。また、この第5の実施の形態では、速度ゲインc1 及び変位ゲインc2 (フィードバックゲイン)を車速検出値Vに応じて可変としているが、これに限定されるものではなく、バネ上の上下方向加速度、前後方向加速度、横方向加速度等、他の情報に応じて可変としても構わない。さらに、速度ゲインc1 及び変位ゲイン2 を、能動型サスペンション12毎に個別に可変とする構成であっても構わないが、かかる場合には、伝達関数フィルタC^の選択も各能動型サスペンション12毎に個別に行う必要がある。
【0108】図20は、本発明の第6の実施の形態を示す図であって、コントローラ30の機能構成を示すブロック線図である。なお、上記各実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。また、全体的な構成等は、車体に発生する前後方向加速度を検出して前後方向加速度検出値Xg をコントローラ30に供給する前後加速度センサと、車体に発生する横方向加速度を検出して横方向加速度検出値Yg をコントローラ30に供給する横加速度センサと、運転者が手動により設定車高H0 を設定することができその設定車高H0 をコントローラ30に供給する車高設定装置と、を備えたことを除いては上記第3の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0109】即ち、本実施の形態のコントローラ30は、ストローク検出値SFL〜SRRに基づいた車高調整制御と、前後方向加速度検出値Xg 及び横方向加速度検出値Ygに基づいた姿勢変化抑制制御とを実行する第2の制御指令信号演算部60を備えていて、この第2の制御指令信号演算部60には、設定車高H0 と、ストローク検出値SFL〜SRRと、車速検出値Vと、前後方向加速度検出値Xg と、横方向加速度検出値Yg とが供給されるようになっている。
【0110】そして、第2の制御指令信号演算部60の機能構成は、図21に示すように、設定車高H0 と車速検出値Vとに基づいて、各車輪位置におけるバネ上及びバネ下間の上下方向相対変位に換算した目標車高S0FL 、S0FR 、S0RL 、S0RR を演算する目標車高設定部71と、その目標車高S0FL 〜S0RR と実車高に相当するストローク検出値SFL〜SRRとの偏差ΔSFL(=S0FL −SFL)、ΔSFR(=S0FR −SFR)、ΔSRL(=S0RL −SRL)、ΔSRR(=S0RR −SRR)を演算する減算器72と、その偏差ΔSFL〜ΔSRRに基づき実車高が目標車高S0FL 〜S0RR に近づくような車高制御指令信号PhFL 〜PhRR を演算する車高制御指令信号演算部73と、前後方向加速度検出値Xg に制御ゲインcx を乗じることにより車体のピッチング運動を抑制するための指令信号成分を演算するピッチング運動抑制指令信号成分演算部74と、横方向加速度検出値Yg に制御ゲインcyを乗じることにより車体のロール運動を抑制するための指令信号成分を演算するロール運動抑制指令信号成分演算部75と、それらピッチング運動抑制指令信号成分演算部74及びロール運動抑制指令信号成分演算部75の出力を加算して姿勢変化抑制制御指令信号PgFL 〜PgRR を演算する加算器76と、車高制御指令信号PhFL 〜PhRR 及び姿勢変化抑制制御指令信号PgFL 〜PgRR を加算して第2の制御指令信号PSFL 〜PSRR を演算する加算器77と、を備えている。
【0111】目標車高設定部71は、設定車高H0 を基準とし、低速走行時にはその設定車高H0 に一致するような目標車高S0FL 〜S0RR を演算する一方、高速走行時には、低車高に自動的に変更されて走行安定性が増加するように、低めの目標車高S0FL 〜S0RR を演算するようになっている。また、目標車高設定部71は、設定された目標車高S0FL 〜S0RR を表す目標車高情報HC を出力するようになっていて、その目標車高情報HC は、図20に示すように、伝達関数フィルタ選択部49に供給されるようになっている。目標車高情報HC は、目標車高S0FL 〜S0RR そのものでもよいし、或いは、高、中、低等のように目標車高を段階的に表した情報であってもよく、要は、伝達関数フィルタ選択部49における伝達関数フィルタC^の選択に必要な情報が含まれていればよい。
【0112】そして、減算器72から出力される偏差ΔSFL〜ΔSRRは、目標車高S0FL 〜S0RR に対する実車高の偏差であるが、ストロークセンサ50FL〜50RRの出力を伸び側(バネ上が持ち上がる側)で負としていることから、車高制御指令信号演算部73は、偏差ΔSFL〜ΔSRRが正方向に大きい場合には、車高を下げる方向(油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力を下げる方向)の車高制御指令信号PhFL 〜PhRR を出力し、偏差ΔSFL〜ΔSRRが負方向に大きい場合には、車高を上げる方向(油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力を上げる方向)の車高制御指令信号PhFL 〜PhRR を出力し、偏差ΔSFL〜ΔSRRの絶対値が小さい場合には車高を維持する(油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力を維持する)車高制御指令信号PhFL 〜PhRR を出力するようになっている。
【0113】一方、ピッチング運動抑制指令信号成分演算部74及びロール運動抑制指令信号成分演算部75は、前後方向加速度や横方向加速度によって車体が沈む側の油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力は増大し、前後方向加速度や横方向加速度によって車体が浮き上がる側の油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力は減少するように、各指令信号成分を演算するようになっている。
【0114】よって、加算器77で演算された第2の制御指令信号PSFL 〜PSRR は、車速をも考慮した目標車高に一致する車高が得られると共に、前後方向加速度や横方向加速度による姿勢変化を抑制できる油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力が得られるような信号となる。そして、伝達関数フィルタ記憶部46には、車高に対応して複数種類の伝達関数フィルタC^が記憶されていて、伝達関数フィルタ選択部49は、目標車高情報HC に基づいて、伝達関数フィルタ記憶部46に記憶されている伝達関数フィルタC^のうち、目標車高に最も適当な伝達関数フィルタC^を選択する。
【0115】このため、車高が変化したことに起因して伝達関数Cが変化しても、それに対応するように伝達関数フィルタC^が変更されるから、伝達関数フィルタC^の精度が大きく低下することを防止できて制御指令信号演算部45における適応処理の精度を良好に保つことが可能になる、という利点がある。なお、本実施の形態では、第2の制御指令信号演算部60において、車高調整制御と姿勢変化抑制制御とを実行するようになっているが、それら制御のうち、制御特性が可変なのは車高調整制御(具体的には、目標車高)だけであり、姿勢変化抑制制御における制御ゲインcx 、cy は固定である。このため、伝達関数フィルタ選択部49においては、目標車高情報HC にのみ基づいて伝達関数フィルタC^を選択するようにしているが、仮に制御ゲインcx 、cy をも例えば車速検出値V等に応じて可変とした場合には、伝達関数フィルタ選択部49では、その制御ゲインcx 、cy の値をも考慮して伝達関数フィルタC^を選択することが望ましい。そして、伝達関数フィルタ選択部49に、目標車高情報HC や制御ゲインcx 、cy を別々に供給し、それら供給された値に組合せで伝達関数フィルタC^を選択してもよいが、実際には油圧シリンダ18FL〜18RRの中立圧力が伝達関数Cに影響を与えるのであり、その中立圧力は第2の制御指令信号PSFL 〜PSRR から知ることができるから、中立圧力の演算部(中立圧力検出手段)を設け、その演算部が求めた中立圧力に関する情報を伝達関数フィルタ選択部49に供給し、その中立圧力に関する情報のみに基づいて伝達関数フィルタC^を選択するようにしてもよい。
【0116】図22は、本発明の第7の実施の形態を示す図であって、コントローラ30の機能構成を示すブロック線図である。なお、上記各実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。また、全体的な構成等は、油圧シリンダ18FL〜18RRの作動油の温度を検出しその温度検出信号Tをコントローラ30に供給する作動油温度センサ(作動流体温度検出手段)を備えたことを除いては上記第3の実施の形態と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0117】即ち、本実施の形態のコントローラ30も、伝達関数フィルタ選択部49を備えていて、この伝達関数フィルタ選択部49に、温度検出信号Tが供給されるようになっていて、伝達関数フィルタ選択部49は、その温度検出信号Tに基づいて、伝達関数フィルタ記憶部46に記憶されている伝達関数フィルタC^を選択するようになっている。
【0118】ここで、作動油の温度が低い状況における伝達関数Cのゲイン特性及び位相特性は、図23に破線で示すように、常温時におけるゲイン特性(実線)に比較して低下し、常温時における位相特性(実線)に比較して遅れが大きくなる。このため、有限インパルス応答型フィルタとして伝達関数フィルタC^を表すと、低温時の伝達関数フィルタC^は、図24に破線で示すように、常温時の伝達関数フィルタC^(実線)とは異なった波形になり、この差は、良好な適応制御を実行する上では無視できない場合が多い。
【0119】そこで、伝達関数フィルタ記憶部46に、例えば、低温時、常温時、高温時という具合に、作動油の温度に対応して複数種類の伝達関数フィルタC^を記憶しておき、温度検出信号Tに応じて伝達関数フィルタ選択部49が伝達関数フィルタC^を選択するようにすれば、伝達関数フィルタC^の精度が大きく低下することを防止できて制御指令信号演算部45における適応処理の精度を良好に保つことが可能になる。
【0120】なお、上記各実施の形態にあっては、制御対象車輪位置におけるバネ上の振動を上下方向加速度センサ28FL〜28RRによって検出し、その検出信号を車体振動信号(エラー信号)eとして制御指令信号演算部45における適応制御を実行するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、車両乗員位置(乗員足元位置や座席位置)の上下加速度を検出する加速度センサを設け、その加速度センサの出力信号を、車体振動信号(エラー信号)eとすることも可能であるし、場合によっては、各上下方向加速度センサ28FL〜28RRの出力に基づいて車両乗員位置の上下加速度を演算し、その演算された車両乗員位置の上下加速度を車体振動信号(エラー信号)eとすることも可能である。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年8月11日(1999.8.11)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外2名)
【公開番号】 特開2001−47835(P2001−47835A)
【公開日】 平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願番号】 特願平11−227620