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【発明の名称】 車輌の減衰係数制御装置
【発明者】 【氏名】村田 正博

【要約】 【課題】単純な制御にて車輌の走行性能や乗り心地性を車輌の走行状況に応じて適正に向上させる。

【解決手段】車輌の中心112に対し前後方向及び横方向に所定の距離隔置された仮想位置114にヒーブ制御用の仮想のショックアブソーバ122とロール及びピッチ制御用の仮想のショックアブソーバ124とを有する車輌モデルに基づき実際のショックアブソーバ126の目標減衰係数が演算される(S700〜740)減衰係数制御装置。車体の前後加速度及び横加速度に基づき所定の距離L及び車輌横方向に対する車輌の中心より仮想位置への方向の傾斜角θが可変設定され(S20〜510)、車輌の振動状態、ばね上質量、車速、ばね上とばね下との相対運動等に応じて仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が可変設定される(S520〜700)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】各車輪に対応して減衰係数可変の実際のショックアブソーバが設けられた車輌の減衰係数制御装置にして、車輌の走行状態を検出する手段と、前記車輌の走行状態に基づきばね上の基準位置に対しリフトすると推定される側へ前記基準位置より所定の距離車輌横方向及び車輌前後方向に隔置された仮想位置を設定する手段と、前記仮想位置に前記ばね上の仮想の揺動中心を有すると共に前記仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び前記仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する一つの車輌モデルと、少なくとも前記第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数、前記所定の距離、車輌横方向に対する前記基準位置より前記仮想位置への方向の傾斜角に基づき前記実際のショックアブソーバの目標減衰係数を演算する手段と、前記目標減衰係数に基づき前記実際のショックアブソーバの減衰係数を制御する手段とを有することを特徴とする車輌の減衰係数制御装置。
【請求項2】前記実際のショックアブソーバの目標減衰係数を演算する手段は前記車輌の状態量を検出する手段と、前記車輌の状態量に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定する仮想減衰係数設定手段とを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【請求項3】前記車輌の状態量を検出する手段は前記ばね上の振動状態量を検出する手段を含み、前記仮想減衰係数設定手段は少なくとも前記ばね上の振動状態量に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定することを特徴とする請求項2に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【請求項4】前記車輌の状態量を検出する手段は前記ばね上の質量を検出する手段を含み、前記仮想減衰係数設定手段は少なくとも前記ばね上の質量に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定することを特徴とする請求項2に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【請求項5】前記車輌の状態量を検出する手段は前記ばね上とばね下との相対速度を検出し、前記仮想減衰係数設定手段は少なくとも前記相対速度に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定することを特徴とする請求項2に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【請求項6】前記仮想位置を設定する手段は前記車輌の走行状態に基づき前記所定の距離の前後成分及び横成分を演算し、前記前後成分及び横成分に基づき前記所定の距離及び前記傾斜角を設定する手段を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【請求項7】前記車輌の走行状態を検出する手段は前記ばね上の前後加速度を検出する手段と、前記ばね上の横加速度を検出する手段と、前記ばね上のスリップ角を検出する手段とを含み、前記仮想位置を設定する手段は前記ばね上の前後加速度及び横加速度に応じて前記所定の距離を設定すると共に前記ばね上のスリップ角に応じて前記傾斜角を設定することを特徴とする請求項1に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の車輌の減衰係数制御装置に係り、更に詳細には旋回時及び加減速時の車輌の運動性能を向上させるよう改良された減衰係数制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】各車輪に対応して減衰係数可変のショックアブソーバが設けられた自動車等の車輌の減衰係数制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる出願公開前の特願平10−92675号の明細書及び図面には、車輌の旋回情報を検出する手段と、車体ロール量の変化を求める手段と、車体ロール量の増大過程に於いては旋回内側のショックアブソーバの減衰係数を旋回外側のショックアブソーバの減衰係数よりも相対的に高く制御する手段とを有することを特徴とする車輌の減衰係数制御装置が記載されている。
【0003】この先の提案にかかる減衰係数制御装置によれば、車体ロール量の増大過程に於いては、旋回内側のショックアブソーバの減衰係数が旋回外側のショックアブソーバの減衰係数よりも相対的に高く制御され、これにより下向きに作用する旋回内側のショックアブソーバの減衰力が上向きに作用する旋回外側のショックアブソーバの減衰力よりも相対的に高く制御されるので、全体として車体に作用する下向きの力が増大し、これにより車高を低減して車輌の過渡旋回時に於ける運動性能を向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記先の提案にかかる減衰係数制御装置に於いては、車輌の旋回状態に基づき車体の重心に対しリフトすると推定される側へ車体より所定の距離車輌横方向に隔置された仮想位置に車体の仮想の揺動中心を有すると共に仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルに基づき、各車輪に対応して設けられた減衰係数可変の実際のショックアブソーバの減衰係数が制御されるようになっている。
【0005】そのため車輌の加減速走行時に於ける車体のピッチングを抑制して車輌の走行性能や乗り心地性を向上させるためには、前輪及び後輪の二つの車輌モデルを設定しなければならず、減衰係数の制御が複雑になるという問題がある。同様に、本願出願人の出願にかかる出願公開前の特願平11−222075号の明細書及び図面に記載された構成、即ち車輌の加減速状態に基づき車体の重心に対しリフトすると推定される側へ車体より所定の距離車輌前後方向に隔置された仮想位置に車体の仮想の揺動中心を有すると共に仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルを有する減衰係数制御装置に於いて、車輌の旋回時に於ける車体のロールを抑制して車輌の走行性能を向上させるためには、左輪側及び右輪側の二つの車輌モデルを設定しなければならず、この場合にも減衰係数の制御が複雑になる。
【0006】本発明は、車輌の旋回状態又は加減速状態に基づき車体の重心に対しリフトすると推定される側へ車体より所定の距離車輌横方向又は車輌前後方向に隔置された仮想位置に車体の仮想の揺動中心を有すると共に仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルに基づき実際のショックアブソーバの減衰係数を制御するよう構成された先の提案にかかる減衰係数制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、一つの車輌モデルのみを設定することにより、先の提案にかかる減衰係数制御装置に比して単純な制御にて車輌の走行性能や乗り心地性を車輌の走行状況に応じて適正に向上させることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち各車輪に対応して減衰係数可変の実際のショックアブソーバが設けられた車輌の減衰係数制御装置にして、車輌の走行状態を検出する手段と、前記車輌の走行状態に基づきばね上の基準位置に対しリフトすると推定される側へ前記基準位置より所定の距離車輌横方向及び車輌前後方向に隔置された仮想位置を設定する手段と、前記仮想位置に前記ばね上の仮想の揺動中心を有すると共に前記仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び前記仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する一つの車輌モデルと、少なくとも前記第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数、前記所定の距離、車輌横方向に対する前記基準位置より前記仮想位置への方向の傾斜角に基づき前記実際のショックアブソーバの目標減衰係数を演算する手段と、前記目標減衰係数に基づき前記実際のショックアブソーバの減衰係数を制御する手段とを有することを特徴とする車輌の減衰係数制御装置によって達成される。
【0008】上記請求項1の構成によれば、車輌の走行状態に基づきばね上の基準位置に対しリフトすると推定される側へ基準位置より所定の距離車輌横方向及び車輌前後方向に隔置された仮想位置が設定され、仮想位置にばね上の仮想の揺動中心を有すると共に仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する一つの車輌モデルが設定され、少なくとも第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数、所定の距離、車輌横方向に対する基準位置より仮想位置への方向の傾斜角に基づき実際のショックアブソーバの目標減衰係数が演算され、目標減衰係数に基づき実際のショックアブソーバの減衰係数が制御されるので、車輌の過渡的な加減速走行時や過渡旋回時に於けるばね上のリフトが抑制され、これによりばね上のピッチ運動やロール運動が抑制されると共に車輌の重心が低下され、従って過渡的な加減速走行時や過渡旋回時の車輌の走行性能や乗り心地性が向上される。
【0009】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記実際のショックアブソーバの目標減衰係数を演算する手段は前記車輌の状態量を検出する手段と、前記車輌の状態量に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定する仮想減衰係数設定手段とを含むよう構成される(請求項2の構成)。
【0010】上記請求項2の構成によれば、車輌の状態量が検出され、車輌の状態量に応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が可変設定されるので、実際のショックアブソーバの減衰係数が車輌の走行状態に応じて適切に制御され、これにより車輌の状態量の如何に拘わらず第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が一定である場合に比して、車輌の走行性能や乗り心地性が車輌の走行状態に応じて適切に向上する。
【0011】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記車輌の状態量を検出する手段は前記ばね上の振動状態量を検出する手段を含み、前記仮想減衰係数設定手段は少なくとも前記ばね上の振動状態量に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(請求項3の構成)。
【0012】上記請求項3の構成によれば、第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数がばね上の振動状態量に応じて可変設定されるので、第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数がばね上の振動状態量の如何に拘わらず一定である場合に比して、実際のショックアブソーバの減衰係数がばね上の振動状態に応じて適切に制御される。
【0013】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記車輌の状態量を検出する手段は前記ばね上の質量を検出する手段を含み、前記仮想減衰係数設定手段は少なくとも前記ばね上の質量に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(請求項4の構成)。
【0014】上記請求項4の構成によれば、ばね上の質量が検出され、ばね上の質量に応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が可変設定されるので、実際のショックアブソーバの減衰係数がばね上の質量に応じて適切に制御される。
【0015】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記車輌の状態量を検出する手段は前記ばね上とばね下との相対速度を検出し、前記仮想減衰係数設定手段は少なくとも前記相対速度に応じて前記第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(請求項5の構成)。
【0016】上記請求項5の構成によれば、ばね上とばね下との相対速度が検出され、少なくとも前記相対速度に応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が可変設定されるので、ばね上とばね下との相対速度の如何に拘わらず第一及び第二の仮想のショックアブソーバの減衰係数が一定である場合に比して、実際のショックアブソーバの減衰係数が相対速度に応じて適切に制御される。
【0017】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記仮想位置を設定する手段は前記車輌の走行状態に基づき前記所定の距離の前後成分及び横成分を演算し、前記前後成分及び横成分に基づき前記所定の距離及び前記傾斜角を設定する手段を含むよう構成される(請求項6の構成)。
【0018】上記請求項6の構成によれば、車輌の走行状態に基づき所定の距離の前後成分及び横成分が演算され、前後成分及び横成分に基づき所定の距離及び傾斜角が設定されるので、車輌の走行状態に応じて所定の距離及び傾斜角が適切に設定され、これにより実際のショックアブソーバの減衰係数が車輌の走行状態に応じて適切に制御される。
【0019】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記車輌の走行状態を検出する手段は前記ばね上の前後加速度を検出する手段と、前記ばね上の横加速度を検出する手段と、前記ばね上のスリップ角を検出する手段とを含み、前記仮想位置を設定する手段は前記ばね上の前後加速度及び横加速度に応じて前記所定の距離を設定すると共に前記ばね上のスリップ角に応じて前記傾斜角を設定するよう構成される(請求項7の構成)。
【0020】上記請求項7の構成によれば、ばね上の前後加速度及び横加速度に応じて所定の距離が設定されると共にばね上のスリップ角に応じて傾斜角が設定されるので、車輌の旋回挙動の悪化時にはその旋回挙動の悪化に応じて仮想位置が適切に設定され、これにより車輌の旋回挙動の悪化が効果的に抑制される。
【0021】
【課題解決手段の好ましい態様】まず図19乃至図21に示された車輌モデルを想定する。この車輌モデルに於いては、図19に示されている如く車体110が平板状の剛体よりなり、ホイールベース及びトレッドがそれぞれH、Wであり、ばね上の基準位置をホイールベースH及びトレッドWの中心(車輌の中心)112とし、仮想の位置114が中心112より車輌横方向に対し車輌前方へ角度θの方向に位置し且つ中心112より距離Lの位置にあるものとする。
【0022】また図20及び図21に示されている如く、左前輪116FL、右前輪116FR、左後輪116RL、右後輪116RRと車体110との間にはばね定数Kのサスペンションスプリング118FL、118FR、118RL、118RRのみが設けられ、仮想の位置114には車体110と仮想の車輪120との間にて上下方向の減衰力を発生する第二の仮想のショックアブソーバ122と、車体のロール変位及びピッチング変位を抑制する第一の仮想のショックアブソーバ124とが配設されている。
【0023】車輪116FL〜116RRのストロークをそれぞれXfl、Xfr、Xrl、Xrrとすると、左前後輪の平均ストロークXls、右前後輪の平均ストロークXrs、左右前輪の平均ストロークXf、左右後輪の平均ストロークXrはそれぞれ下記の式1乃至式4により表される。
Xls=(Xfl+Xrl)/2 ……(1)
Xrs=(Xfr+Xrr)/2 ……(2)
Xf=(Xfl+Xfr)/2 ……(3)
Xr=(Xrl+Xrr)/2 ……(4)
【0024】第二の仮想のショックアブソーバ122による力をFcとし、車体110は剛体であるのでワープ(捩れ)は0であると仮定する。平均ストロークXls及びXrsの微分値、即ち平均ストローク速度をそれぞれXlsd及びXrsdとすると、車体110の中心112を通る車輌前後方向のx軸周りのロール運動による仮想のショックアブソーバ122のストロークXvr及びストローク速度Xvrdはそれぞれ下記の式5及び6により表される。
Xvr={(Xls−Xrs)/W}Lsinθ ……(5)
Xvrd={(Xlsd−Xrsd)/W}Lsinθ ……(6)
【0025】また車体110の中心112を通る車輌横方向のy軸周りのピッチ運動による仮想のショックアブソーバ122のストロークXvp及びストローク速度Xvpdはそれぞれ下記の式7及び8により表される。
Xvp={(Xf−Xr)/H}Lcosθ ……(7)
Xvpd={(Xfd−Xrd)/H}Lcosθ ……(8)
【0026】また各車輪のストロークXfl〜Xrrの微分値、即ちストローク速度をそれぞれXfld〜Xrrdとすると、車体110のヒーブ運動による仮想のショックアブソーバ122のストロークXvh及びストローク速度Xvhdはそれぞれ下記の式9及び10により表される。
Xvh=(Xfl+Xfr+Xrl+Xrr)/4 ……(9)
Xvhd=(Xfld+Xfrd+Xrld+Xrrd)/4 ……(10)
【0027】上記式5〜10より仮想のショックアブソーバ122のストロークXv及びストローク速度Xvdはそれぞれ下記の式11及び12により表され、仮想のショックアブソーバ122の減衰力はその減衰係数をCgとして下記の式13により表される。
Xv=Xvr+Xvp+Xvh ……(11)
Xvd=Xvrd+Xvpd+Xvhd ……(12)
Fc=CgXvd ……(13)
【0028】また第一の仮想のショックアブソーバ124の減衰係数をCrとすると、車体110のロール運動によって仮想のショックアブソーバ124により発生されるモーメントMrcは下記の式14により表され、また車体のピッチング運動により仮想のショックアブソーバ124によって発生されるモーメントMpcは下記の式15により表される。
Mrc=(W/2)CrXlsd−(W/2)CrXrsd ……(14)
Mpc=(H/2)CrXfd−(H/2)CrXrd ……(15)
【0029】また実際の車輌のモデルは図20及び図21に対応してそれぞれ図22及び図23の如く表される。これらの図に於いて、符号126FL〜126RRはそれぞれ車輪116FL〜116RRに対応して設けられた減衰係数可変のショックアブソーバを示している。
【0030】車体110の上下加速度を車体の上下変位Xbの2階微分値Xbtdとし、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の各ショックアブソーバの減衰係数をそれぞれCfl、Cfr、Crl、Crrとし、サスペンションスプリングによるばね力の合計をFk(x)とすると、上下方向の力の釣合いより下記の式16が成立する。
−MXbtd+CflXfld+CfrXfrd+CrlXrld+CrrXrrd =Fk(x) ……(16)
【0031】またy軸の周りの車体110のピッチ角Ryの2階微分値Rytdを車体のピッチ角速度とし、Mpk(x)をサスペンションスプリングのばね力によるピッチング方向のモーメントとすると、車輌のピッチング運動の力の釣合いより下記の式17が成立する。

【0032】同様にx軸の周りの車体110のロール角Rxの2階微分値Rxtdを車体のロール角速度とし、Mrk(x)をサスペンションスプリングのばね力によるロール方向のモーメントとすると、車輌のロール運動の力の釣合いより下記の式18が成立する。

【0033】同様に図19乃至図21に示された仮想の車輌モデルについての車体の上下運動、ピッチング運動、ロール運動の力の釣合いよりそれぞれ下記の式19乃至式21が成立する。
−MXbtd+Fc=Fk(x) ……(19)
−IpRytd+FcLcosθ+Mpc=Mpk(x) ……(20)
−IrRxtd+FcLsinθ+Mrc=Mrk(x) ……(21)
【0034】また車体110は剛体でありワープが0であると仮定されているので、実際の車輌モデルに於ける荷重ワープも0であり、従って下記の式22が成立する。
【0035】
CflXfld−CfrXfrd−CrlXrld+CrrXrrd=0 ……(22)
実際の車輌モデルに於いて仮想の車輌モデルの制御が達成されるためには、上記式16乃至式18の左辺と上記式19乃至式21の左辺とがそれぞれ等しくなければならず、従って下記の式23乃至式25が成立しなければならない。
【0036】
−MXbtd+CflXfld+CfrXfrd+CrlXrld+CrrXrrd =−MXbtd+Fc ……(23)
−IpRytd+(CflXfld+CfrXfrd)H/2 −(CrlXrld+CrrXrrd)H/2 =−IpRytd+FcLcosθ+Mpc ……(24)
−IrRxtd+(CflXfld+CrlXrld)W/2 −(CfrXfrd+CrrXrrd)W/2 =−IrRxtd+FcLsinθ+Mrc ……(25)
【0037】上記式23乃至式25及び式22より、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の各ショックアブソーバの減衰係数はそれぞれ下記の式26乃至式29により表される。
【0038】
Cfl=(Fc+Fa+Fb)/(4Xfld) ……(26)
Cfr=(Fc+Fa−Fb)/(4Xfrd) ……(27)
Crl=(Fc−Fa+Fb)/(4Xrld) ……(28)
Crr=(Fc−Fa−Fb)/(4Xrrd) ……(29)
ここに、 Fc=(Cg/2){(Xfld−Xfrd+Xrld−Xrrd)(L/W)sinθ +(Xfld+Xfrd−Xrld−Xrrd)(L/W)cosθ +(Xfld+Xfrd+Xrld+Xrrd)/2} ……(30)
Fa=(2/L)FcLcosθ +(Cr/2)(Xfld+Xfrd−Xrld−Xrrd) ……(31)
Fb=(2/W)FcLsinθ +(Cr/2)(Xfld−Xfrd+Xrld−Xrrd) ……(32)
【0039】従って本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の各ショックアブソーバの減衰係数はそれぞれ上記式26乃至式29に従って演算されるよう構成される(好ましい態様1)。
【0040】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3の構成に於いて、ばね上の振動状態量を検出する手段はばね上の上下加速度を検出し、仮想減衰係数設定手段はばね上の共振周波数帯域を通過帯域としてばね上の上下加速度をバンドパスフィルタ処理することにより各車輪毎にばね上のあおり度Daiを演算し、各車輪毎のばね上のあおり度Daiに基づき車輌の基準位置に於けるばね上のあおり度Daを演算し、ばね上のあおり度Daに応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(好ましい態様2)。
【0041】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3の構成に於いて、ばね上の振動状態量を検出する手段はばね上の上下加速度を検出し、仮想減衰係数設定手段はばね上のごつごつ振動周波数帯域を通過帯域としてばね上の上下加速度をバンドパスフィルタ処理することにより各車輪毎にばね上のごつごつ度Dgiを演算し、各車輪毎のばね上のごつごつ度Dgiに基づき車輌の基準位置に於けるばね上のごつごつ度Dgを演算し、ばね上のごつごつ度Dgに応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(好ましい態様3)。
【0042】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段はばね下の振動状態量を検出し、仮想減衰係数設定手段はばね下の振動状態量に応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(好ましい態様4)。
【0043】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段は各車輪のストロークを検出し、仮想減衰係数設定手段は各車輪のストロークの時間微分値としてストローク速度を演算し、ばね下のばたつき振動周波数帯域を通過帯域として各車輪のストローク速度をバンドパスフィルタ処理することにより各車輪毎にばね下のばたつき度Dbiを演算し、各車輪毎のばね下のばたつき度Dbiに基づき車輌全体のばね下のばたつき度Dbを演算し、ばね下のばたつき度Dbに応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(好ましい態様5)。
【0044】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段は車速を検出し、仮想減衰係数設定手段は車速に応じて第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(好ましい態様6)。
【0045】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、仮想減衰係数設定手段はばね上とばね下との相対速度に基づき車輌の基準位置に於けるばね上のヒーブ成分を演算し、ばね上のヒーブ成分に応じて第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(好ましい態様7)。
【0046】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、仮想減衰係数設定手段はばね上とばね下との相対速度に基づき車輌の基準位置に於けるばね上のピッチ成分を演算し、ばね上のピッチ成分に応じて第一の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を可変設定するよう構成される(好ましい態様8)。
【0047】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段は少なくともばね上の前後加速度を検出し、仮想位置を設定する手段はばね上の前後加速度若しくはその変化率に基づき所定の距離の前後成分を演算するよう構成される(好ましい態様9)。
【0048】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段は少なくともばね上の横加速度を検出し、仮想位置を設定する手段はばね上の横加速度若しくはその変化率に基づき所定の距離の横成分を演算するよう構成される(好ましい態様10)。
【0049】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段は各車輪の車輪速度を検出する手段を含み、仮想位置を設定する手段は各車輪の車輪速度に基づき車輌のステア特性を判定し、車輌のステア特性に応じて所定の距離の前後成分を補正するよう構成される(好ましい態様11)。
【0050】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段は車輌のヨーレートを検出する手段と車速を検出する手段と操舵角を検出する手段とを含み、仮想位置を設定する手段は車速及び操舵角に基づき車輌の基準ヨーレートを演算し、検出されたヨーレートと基準ヨーレートとの偏差に応じて所定の距離の前後成分を補正するよう構成される(好ましい態様12)。
【0051】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6の構成に於いて、車輌の状態量を検出する手段は車輌のスリップ角を検出し、仮想位置を設定する手段は車輌のスリップ角に応じて所定の距離の前後成分を補正するよう構成される(好ましい態様13)。
【0052】
【発明の実施の形態】以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0053】第一の実施形態図1は本発明による減衰係数制御装置の第一の好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【0054】図1に於て、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置16によりタイロッド18L及び18Rを介して操舵される。
【0055】ばね下としての各車輪10FL〜10RRとばね上としての車体20との間にはそれぞれ減衰係数可変式のショックアブソーバ22FL〜22RRが配設されており、各ショックアブソーバの減衰係数Ci(i=fl、fr、rl、rr)は後述の如く車輌の旋回時に電気式制御装置24により制御される。
【0056】電気式制御装置24には車高センサ26FL、26FR、26RL、26RRより車輪10FL〜10RRのストロークXi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号、上下加速度センサ28FL、28FR、28RL、28RRより車輪10FL〜10RRに対応する部位に於ける車体20の上下加速度Gbi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号、前後加速度センサ30より車体の前後加速度Gxを示す信号、横加速度センサ32より車体の横加速度Gyを示す信号、車速センサ34より車速Vを示す信号、スロットル開度センサ36よりエンジンのスロットル開度Thを示す信号及び圧力センサ38よりブレーキのマスタシリンダ圧力Pmを示す信号が入力される。
【0057】尚図には詳細に示されていないが、電気式制御装置24は例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを含んでいる。また車高センサ26FL〜26RRは車輪のバウンド方向を正として車輪のストロークXiを検出し、上下加速度センサ28FL〜28RRは上方への加速度を正として車体の上下加速度Gbiを検出し、前後加速度センサ30は車輌の前方を正として車体の前後加速度を検出し、横加速度センサ32は車輌の左旋回方向を正として横加速度を検出する。
【0058】電気式制御装置24は、それぞれ図19乃至図21に示された車輌モデルに基づきショックアブソーバ22FL〜22RRの減衰係数を制御する。特にこの実施形態の電気式制御装置24は、後述の如く図2乃至図4に示されたフローチャートに従って車体の前後加速度及びその変化率に基づき車輌の前方を正として車輌モデルの所定の距離の前後成分Lxを演算し、車体の横加速度の変化率に基づき車輌の左方を正として車輌モデルの所定の距離の横成分Lyを演算し、前後成分Lx及び横成分Lyに基づき所定の距離L及び傾斜角θを演算し、これにより車輌の加減速走行時や旋回時に於いて車輌の中心に対しリフトする側に仮想位置を設定し、加減速走行時に於ける車体のピッチングを低減し旋回走行時に於ける車体のロールを低減すると共に車体の重心を低下させて車高を低下させる。
【0059】また電気式制御装置24は、各車輪位置に於ける車体のあおり度Dai、車体のごつごつ度Dgi、車輪のばたつき度Dbiに基づき車輌の中心に於ける車体のあおり度Da、車体のごつごつ度Dg、車輪のばたつき度Dbを演算し、あおり度が大きいほど大きくなるよう各仮想のショックアブソーバの減衰係数を補正し、ごつごつ度が大きいほど小さくなるよう各仮想のショックアブソーバの減衰係数を補正し、ばたつき度が大きいほど大きくなるよう各仮想のショックアブソーバの減衰係数を補正する。
【0060】また電気式制御装置24は、各車輪位置に於けるのばね上質量Miを演算し、ばね上質量Miに基づき車輌全体のばね上質量Mを演算し、ばね上質量Mが大きいほど大きくなるよう各仮想のショックアブソーバの減衰係数を補正する。
【0061】また電気式制御装置24は、車輌の中心に於けるストローク速度のヒーブ成分Xdh及びピッチ成分Xdpを演算し、ヒーブ成分が大きいほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバ122の減衰係数を補正し、ピッチ成分が大きいほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバ124の減衰係数を補正する。
【0062】次に図2乃至図4に示されたフローチャートを参照して図示の第一の実施形態に於ける減衰係数の制御について説明する。尚図2乃至図4に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0063】まずステップ10に於いては各車輪のストロークXiを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては車輌の前後加速度Gxの時間微分値として車輌の前後加加速度Gxdが演算されると共に、車輌の前後加加速度Gxdに基づき図5に示されたグラフに対応するマップより基本の所定の距離の前後成分Lxsが演算される。
【0064】ステップ30に於いては例えばスロットル開度Thの時間微分値としてスロットル開度速度Vtが演算されると共に、スロットル開度速度Vtの時間微分値としてスロットル開度速度の変化率Vtdが演算され、ステップ40に於いてはスロットル開度速度の変化率Vtdに基づき図6に示されたグラフに対応するマップより基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLvが演算される。
【0065】ステップ50に於いては例えばマスタシリンダ圧力Pmの時間微分値としてマスタシリンダ圧力の変化率Vpが演算され、ステップ60に於いてはマスタシリンダ圧力の変化率Vpに基づき図7に示されたグラフに対応するマップより基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLpが演算される。
【0066】ステップ70に於いてはそれぞれ下記の式33に従って所定の距離の前後成分Lxが演算され、しかる後ステップ500へ進む。
Lx=Lxs+ΔLv+ΔLp ……(33)
【0067】ステップ500に於いては車輌の横加速度Gyの時間微分値ΔGyが演算され、signGyを横加速度Gyの符号としてこれらの積ΔGysignGyが演算され、積ΔGysignGyに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより所定の距離の横成分Lyが演算される。
【0068】ステップ510に於いては下記の式34に従って所定の距離Lが演算されると共に、下記の式35に従って傾斜角θが演算される。
L=(Lx2+Ly21/2 ……(34)
θ=tan-1(Lx/Ly) ……(35)
【0069】ステップ520に於いてはばね上の上下加速度Gbiが例えばばね上の共振周波数帯域を通過帯域としてバンドパスフィルタ処理されることにより、各車輪毎にばね上のあおり度Dai(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
【0070】ステップ530に於いてはばね上の上下加速度Gbiが例えばばね上のごつごつ振動周波数帯域を通過帯域としてバンドパスフィルタ処理されることにより、各車輪毎にばね上のごつごつ度Dgi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
【0071】ステップ540に於いては各車輪のストロークXiの時間微分値としてストローク速度Xidが演算されると共に、ストローク速度Xidが例えばばね下のばたつき振動周波数帯域を通過帯域としてバンドパスフィルタ処理されることにより、各車輪毎にばね下のばたつき度Dbi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
【0072】ステップ550に於いては車輌の中心に於けるあおり度Daがあおり度Daiの和として演算されると共に、あおり度Daに基づき図9に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ122の減衰係数の補正量Cgaaが演算される。
【0073】ステップ560に於いては車輌の中心に於けるごつごつ度Dgがごつごつ度Dgiの和として演算されると共に、ごつごつ度Dgに基づき図10に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ122の減衰係数の補正量Cggaが演算される。
【0074】ステップ570に於いては車輌の中心に於けるばたつき度Dbがばたつき度Dbiの和として演算されると共に、ばたつき度Dbに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ122の減衰係数の補正量Cgbaが演算される。
【0075】ステップ580に於いては車輌の中心に於けるあおり度Daに基づき図12に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ124の減衰係数の補正量Caaが演算される。
【0076】ステップ590に於いては車輌の中心に於けるごつごつ度Dgに基づき図13に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ124の減衰係数の補正量Cgaが演算される。
【0077】ステップ600に於いては車輌の中心に於けるばたつき度Dbに基づき図14に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ124の減衰係数の補正量Cbaが演算される。
【0078】ステップ610に於いてはMAXを( )内の数値の大きい方の値として下記の式36に従って仮想のショックアブソーバ122の減衰係数の補正量Cabgが演算される。
Cabg=MAX(Cgaa,Cgba) ……(36)
【0079】ステップ620に於いてはMINを( )内の数値の小さい方の値として下記の式37に従って仮想のショックアブソーバ122の減衰係数の補正量Cagが演算される。
Cag=MIN(Cabg,Cgga) ……(37)
【0080】同様にステップ630に於いては下記の式38に従って仮想のショックアブソーバ124の減衰係数の補正量Cabが演算される。
Cab=MAX(Caa,Cba) ……(38)
【0081】ステップ640に於いては下記の式39に従って仮想のショックアブソーバ124の減衰係数の補正量Caが演算される。
Ca=MIN(Cab,Cga) ……(39)
【0082】ステップ650に於いては例えばばね上の上下加速度と、ばね下に対するばね上の上下方向の相対速度と、ショックアブソーバの減衰力とに基づき車輌の運動方程式をばね上の質量について解く方法(本願出願人の出願にかかる出願公開前の特願平10−190548号の明細書及び図面参照)や、車輪ストロークXiの積分値に基づくばね上の質量の演算の如く、当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪毎にばね上質量Mi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
【0083】ステップ660に於いては車輌全体のばね上質量MがMiの和として演算されると共に、ばね上質量Mに基づき図15に於いて実線及び破線にて示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ122及び124の減衰係数の補正量Cmg、Cmが演算される。
【0084】ステップ670に於いては車速Vに基づき図16に於いて実線及び破線にて示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ122及び124の減衰係数の補正量Cvg、Cvが演算される。
【0085】ステップ680に於いてはステップ540に於いて演算された各車輪のストローク速度Xidに基づき下記の式40に従って車輌の中心に於けるストローク速度のヒーブ成分Xdhが演算されると共に、ヒーブ成分Xdhに基づき図17に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ122の減衰係数についてのゲインKhが演算される。
Xdh=(Xfld+Xfrd+Xrld+Xrrd)/4 ……(40)
【0086】ステップ690に於いては各車輪のストローク速度Xidに基づきそれぞれ下記の式41に従って車輌の中心に於けるストローク速度のピッチ成分Xdpが演算されると共に、ピッチ成分Xdpに基づき図18に示されたグラフに対応するマップより仮想のショックアブソーバ124の減衰係数についてのゲインKpが演算される。
Xdp=(Xfld+Xfrd−Xrld−Xrrd) ……(41)
【0087】ステップ700に於いてはそれぞれ下記の式42及び43に従って仮想のショックアブソーバ122の減衰係数Cg及び仮想のショックアブソーバ124Rの減衰係数Cが演算される。尚下記の式42及び43に於いて、Cgs、Csはそれぞれ減衰係数Cg、Cの基本値(正の定数)である。
Cg=Kh(Cgs+Cag+Cmg+Cvg) ……(42)
C=Kp(Cs+Ca+Cm+Cv) ……(43)
【0088】ステップ710に於いては例えば減衰係数Cgの前回値と今回値との偏差ΔCgが演算されると共に、偏差ΔCgの絶対値が基準値Cgo(正の定数)を越えているときには偏差の絶対値がCgoになるよう今回値が補正されることにより、減衰係数Cgの変化率が制限される処理が行われる。
【0089】同様にステップ720に於いては例えば減衰係数Cの前回値と今回値との偏差ΔCが演算されると共に、偏差ΔCの絶対値が基準値Co(正の定数)を越えているときには偏差の絶対値がCoになるよう今回値が補正されることにより、減衰係数Cの変化率が制限される処理が行われる。
【0090】ステップ730に於いて各ショックアブソーバの減衰係数Ciが前記式26〜29に従って演算され、テップ740に於いては各ショックアブソーバの減衰係数がステップ730に於いて設定された減衰係数になるよう制御され、しかる後ステップ10へ戻る。
【0091】かくして図示の第一の実施形態によれば、ステップ20に於いて車輌の前後加加速度Gxdに基づき基本の所定の距離の前後成分Lxsが演算され、ステップ30及び40に於いてスロットル開度速度の変化率Vtdに基づき車輌の加加速度が高いほど大きくなるよう基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLvが演算され、ステップ50及び60に於いてマスタシリンダ圧力の変化率Vpに基づき車輌の減速度が高いほど負の小さい値になるよう基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLpが演算され、ステップ70に於いて所定の距離の前後成分Lxが基本の所定の距離の前後成分Lxsと補正量ΔLvと補正量ΔLpとの和として演算される。
【0092】従って図示の第一の実施形態によれば、車輌が過渡的な加減速状態にあるときには、車体がリフトする側(前側又は後側)のショックアブソーバの減衰係数が車体がダイブする側のショックアブソーバの減衰係数よりも高くなるよう各ショックアブソーバの減衰係数が制御されるので、車体のピッチングを抑制し、また車体の重心を低下させて車高を低下させ、これにより過渡的な加減速時に於ける車輌の走行性能や乗り心地性を向上させることができる。
【0093】また図示の第一の実施形態によれば、ステップ500に於いて車輌の横加速度Gyの時間微分値ΔGyが演算されると共にsignGyを横加速度Gyの符号としてこれらの積ΔGysignGyに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより所定の距離の横成分Lyが演算される。
【0094】従って図示の第一の実施形態によれば、車輌が車体のロール量が増大する過渡旋回状態にあるときには仮想位置が旋回内側に設定されることによって旋回内輪側の車体のリフトが低減され、逆に車輌が車体のロール量が減少する過渡旋回状態にあるときには仮想位置が旋回外側に設定されることによって旋回外輪側の車体のリフトが低減されるので、車体の重心を低下させ車高を低下させて過渡旋回時に於ける車輌の走行性能を向上させることができる。
【0095】また図示の第一の実施形態によれば、ステップ510に於いて所定の距離Lが所定の距離の前後成分Lx及び所定の距離の横成分Lyの自乗和の平方根として演算されると共に、前後成分Lx及び横成分Lyに基づき傾斜角θが演算されるので、車輌が加減速を伴って旋回する場合にも車体のピッチング及びロールを確実に低減し、車輌の走行性能を確実に向上させることができる。
【0096】また図示の第一の実施形態によれば、ステップ520及び550に於いて車輌の中心に於けるあおり度Daが演算されると共に、あおり度Daが大きいほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバ122の減衰係数の補正量Cgaaが演算され、ステップ530及び560に於いて車輌の中心に於けるごつごつ度Dgが演算されると共に、ごつごつ度Dgが大きいほど小さくなるよう減衰係数の補正量Cggaが演算され、ステップ540及び570に於いて車輌の中心に於けるばたつき度Dbが演算されると共に、ばたつき度Dbが大きいほど大きくなるよう減衰係数の補正量Cgbaが演算される。
【0097】そしてステップ610に於いて減衰係数の補正量Cgaa、Cgbaの大きい方の値として補正量Cabgが演算され、ステップ620に於いて補正量Cabg、Cggaの小さい方の値として補正量Cagが演算され、ステップ700に於いて仮想のショックアブソーバ122の基本の減衰係数Cgsが補正量Cagにて補正される。
【0098】同様に、ステップ580に於いてあおり度Daが大きいほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバ124の減衰係数の補正量Caaが演算され、ステップ590に於いてごつごつ度Dgが大きいほど小さくなるよう減衰係数の補正量Cgaが演算され、ステップ600に於いてばたつき度Dbが大きいほど大きくなるよう減衰係数の補正量Cbaが演算される。
【0099】そしてステップ630に於いて減衰係数の補正量Caa、Cbaの大きい方の値として補正量Cabが演算され、ステップ640に於いて補正量Cab、Cgaの小さい方の値として補正量Caが演算され、ステップ700に於いて仮想のショックアブソーバ124の基本の減衰係数Csが補正量Caにて補正される。
【0100】従って第一の実施形態によれば、ばね上及びばね下の振動状況に応じて第一及び第二の仮想のショックアブソーバの減衰係数が最適化されることによって実際のショックアブソーバの減衰係数が最適に制御されるので、ばね上及びばね下の振動状況に拘わらず各仮想のショックアブソーバの減衰係数が一定である場合に比して、車体のあおりやごつごつ振動及び車輪のばたばた振動を効果的に低減し、これにより車輌の乗り心地性を向上させることができる。
【0101】また図示の第一の実施形態によれば、ステップ650に於いて各車輪毎にばね上質量Miが演算され、ステップ660に於いて車輌全体のばね上質量Mが演算されると共に、ばね上質量Mが大きいほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバの減衰係数の補正量Cmg、Cmが演算される。
【0102】従って第一の実施形態によれば、ばね上質量に応じて第一及び第二の仮想のショックアブソーバの減衰係数が最適に制御されることによって実際のショックアブソーバの減衰係数がばね上質量に応じて最適に制御されるので、ばね上質量の如何に拘わらず各仮想のショックアブソーバの減衰係数が一定である場合に比して車輌の振動を適切に制御することができる。
【0103】また図示の第一の実施形態によれば、ステップ670に於いて車速Vが高いほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバの減衰係数の補正量Cvg、Cvが演算される。
【0104】従って第一の実施形態によれば、車速Vに応じて第一及び第二の仮想のショックアブソーバの減衰係数が最適に制御されることによって実際のショックアブソーバの減衰係数が車速に応じて最適に制御されるので、車速の如何に拘わらず各仮想のショックアブソーバの減衰係数が一定である場合に比して低車速域の車輌の良好な乗り心地性を確保しつつ高車速域に於ける車輌の振動を効果的に制御することができる。
【0105】また図示の第一の実施形態によれば、ステップ680に於いて四輪平均のストローク速度のヒーブ成分Xdhが演算されると共に、ヒーブ成分Xdhが大きいほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバ122の減衰係数についてのゲインKhが演算され、ステップ690に於いて四輪平均のストローク速度のピッチ成分Xdpが演算されると共に、ピッチ成分Xdpが大きいほど大きくなるよう仮想のショックアブソーバ124の減衰係数についてのゲインKpが演算される。
【0106】従って第一の実施形態によれば、四輪平均のストローク速度のヒーブ成分Xdhの如何に拘わらず仮想のショックアブソーバ122の減衰係数が一定であり、四輪平均のストローク速度のピッチ成分Xdpの如何に拘わらず仮想のショックアブソーバ124の減衰係数が一定である場合に比してばね上とばね下との相対速度の状況に応じて実際のショックアブソーバの減衰係数を適切に制御し、これにより車輌の振動を適切に制御することができる。
【0107】更に図示の第一の実施形態によれば、ステップ710に於いて減衰係数Cgの変化率が制限され、ステップ720に於いて減衰係数Cの変化率が制限されるので、かかる減衰係数の変化率の制限処理が行われない場合に比してショックアブソーバの減衰力の急激な変化及びこれに起因する車輌の乗り心地性の悪化を確実に防止することができる。
【0108】尚図2及び図3に示されたステップ500〜740は第一乃至第五の実施形態に於いて共通であるので、ステップ500以降のステップに関する上述の各作用効果は後述の第二乃至第五の実施形態に於いても同様に得られる。
【0109】また図示の第一の実施形態に於いては、(1)ばね上及びばね下の振動状況に基づく減衰係数の補正量Cag、Ca、(2)ばね上質量に基づく減衰係数の補正量Cmg、Cm、(3)車速Vに基づく減衰係数の補正量Cvg、Cv、(4)車輪ストローク速度のヒーブ成分及びピッチ成分に基づくゲインKh、Kpにより仮想のショックアブソーバの減衰係数が最適化されるようになっているが、上記(1)〜(4)の少なくとも何れか一つの項目が省略されてもよい。
【0110】第二の実施形態図24は本発明による減衰係数制御装置の第二の好ましい実施形態に於ける減衰係数制御ルーチンの第一の部分を示すフローチャートである。
【0111】尚図1には示されていないが、この第二の実施形態の電気式制御装置24には各車輪のストロークXiを示す信号等に加えて車輪速度センサより各車輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力されるようになっている。
【0112】またこの実施形態の電気式制御装置24は、各車輪の車輪速度Vwiに基づき前輪の車輪速度差ΔVwf及び後輪の車輪速度差ΔVwrを演算し、これらの車輪速度差に基づき車輌の旋回挙動(オーバステア傾向又はアンダステア傾向)を示す指標値として車輪速度差の偏差ΔVwを演算し、偏差ΔVwに基づき基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLxを演算する。
【0113】まずステップ110及び120はそれぞれ上述の第一の実施形態に於けるステップ10及び20の場合と同様に実行され、ステップ130に於いては下記の式44に従って左右前輪の車輪速度の差ΔVwfが演算され、ステップ140に於いては下記の式45に従って左右後輪の車輪速度の差ΔVwrが演算される。
ΔVwf=Vwfl−Vwfr ……(44)
ΔVwr=Vwrl−Vwrr ……(45)
【0114】ステップ150に於いては車輌の旋回挙動(オーバステア傾向又はアンダステア傾向)を示す指標値として下記の式46に従って左右後輪の車輪速度の差ΔVwrの絶対値と左右前輪の車輪速度の差ΔVwfの絶対値との偏差ΔVwが演算される。
ΔVw=|ΔVwr|−|ΔVwf| ……(46)
【0115】ステップ160に於いては偏差ΔVwに基づき図25に示されたグラフに対応するマップより基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLxが演算され、ステップ170に於いては下記の式47に従って所定の距離の前後成分Lxが演算され、しかる後ステップ500へ進む。
Lx=Lxs+ΔLx ……(47)
【0116】かくして図示の第二の実施形態によれば、ステップ130に於いて左右前輪の車輪速度の差ΔVwfが演算され、ステップ140に於いて左右後輪の車輪速度の差ΔVwrが演算され、ステップ150に於いて左右後輪の車輪速度の差ΔVwrの絶対値と左右前輪の車輪速度の差ΔVwfの絶対値との偏差ΔVwが演算され、ステップ160に於いて偏差ΔVwに基づき基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLxが演算され、ステップ170に於いて所定の距離の前後成分Lxが基本の所定の距離の前後成分Lxsと補正量ΔLxとの和として演算される。
【0117】従って図示の第二の実施形態によれば、偏差ΔVwが正の値であり車輌にオーバステア傾向があるときにはその程度が高いほど補正量ΔLxが正の大きい値に設定され、これにより前輪側のロール剛性が後輪側に比して相対的に高くされることによって車輌のオーバステア傾向が低減され、逆に偏差ΔVwが負の値であり車輌にアンダステア傾向があるときにはその程度が高いほど補正量ΔLxが負の小さい値に設定され、これにより前輪側のロール剛性が後輪側に比して相対的に低くされることによって車輌のアンダステア傾向が低減されるので、車輌の過渡旋回時に於ける車輌のステア特性の変化を低減し車輌の安定性を向上させることができる。
【0118】第三の実施形態図26は本発明による減衰係数制御装置の第三の好ましい実施形態に於ける減衰係数制御ルーチンの第一の部分を示すフローチャートである。
【0119】尚図1には示されていないが、この第三の実施形態の電気式制御装置24には各車輪のストロークXiを示す信号等に加えてヨーレートセンサより車輌のヨーレートγを示す信号及び操舵角センサより操舵角δを示す信号が入力されるようになっている。
【0120】またこの実施形態の電気式制御装置24は、車速V及び操舵角δに基づき車輌の基準ヨーレートγtを演算し、車輌の実際のヨーレートγと基準ヨーレートγtとの偏差Δγを演算し、偏差Δγの大きさが基準値以上であり車輌がオーバステア状態又はアンダステア状態にあるときには偏差Δγが小さくなるよう所定の距離の前後成分の補正量ΔLxを演算する。
【0121】まずステップ210及び220はそれぞれ上述の第一の実施形態に於けるステップ10及び20の場合と同様に実行され、ステップ230に於いては検出されたヨーレートγよりノイズ成分を除去するためのフィルタ処理が行われることによりフィルタ処理後のヨーレートγfが演算される。
【0122】ステップ240に於いては操舵角δに基づき前輪の実舵角δfが演算され、HをホイールベースとしKhをスタビリティファクタとして下記の式48に従って目標ヨーレートγeが演算されると共に、Tを時定数としsをラプラス演算子として下記の式49に従って車速V及び操舵角δに基づく車輌の基準ヨーレートγtが演算される。尚目標ヨーレートγeは動的なヨーレートを考慮すべく車輌の横加速度Gyを加味して演算されてもよい。
γe=Vδf/(1+KhV2)H ……(48)
γt=γe/(1+Ts) ……(49)
【0123】ステップ250に於いては下記の式50に従ってヨーレート偏差Δγ、即ちフィルタ処理後のヨーレートγfと基準ヨーレートγtとの偏差が演算される。
Δγ=γf−γt ……(50)
【0124】ステップ260に於いてはヨーレートの偏差Δγに基づき図27に示されたグラフに対応するマップより基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLxが演算され、ステップ270に於いては上記式47に従って所定の距離の前後成分Lxが演算され、しかる後ステップ500へ進む。
【0125】かくして図示の第三の実施形態によれば、ステップ230に於いてフィルタ処理後のヨーレートγfが演算され、ステップ240に於いて操舵角δ及び車速Vに基づき車輌の基準ヨーレートγtが演算され、ステップ250に於いてフィルタ処理後のヨーレートγfと基準ヨーレートγtとの偏差としてヨーレート偏差Δγが演算され、ステップ260に於いてヨーレートの偏差Δγに基づき基本の所定の距離の前後成分Lxsの補正量ΔLxが演算され、ステップ270に於いて所定の距離の前後成分Lxが基本の所定の距離の前後成分Lxsと補正量ΔLxとの和として演算される。
【0126】従って図示の第三の実施形態によれば、上述の第二の実施形態の場合と同様、ヨーレート偏差Δγが正の値であり車輌にオーバステア傾向があるときにはその程度が高いほど補正量ΔLxが正の大きい値に設定され、これにより前輪側のロール剛性が後輪側に比して相対的に高くされることによって車輌のオーバステア傾向が低減され、逆にヨーレート偏差Δγが負の値であり車輌にアンダステア傾向があるときにはその程度が高いほど補正量ΔLxが負の小さい値に設定され、これにより前輪側のロール剛性が後輪側に比して相対的に低くされることによって車輌のアンダステア傾向が低減されるので、車輌の過渡旋回時に於ける車輌のステア特性の変化を低減し車輌の安定性を向上させることができる。
【0127】第四の実施形態図28は本発明による減衰係数制御装置の第四の好ましい実施形態に於ける減衰係数制御ルーチンの第一の部分を示すフローチャートである。
【0128】まずステップ310に於いては各車輪のストロークXiを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ320に於いては横加速度Gyと車速V及びヨーレートγの積Vγとの偏差Gy−Vγとして横加速度の偏差、即ち車輌の横すべり加速度Vydが演算され、横すべり加速度Vydが積分されることにより車体の横すべり速度Vyが演算され、車体の前後速度Vx(=車速V)に対する車体の横すべり速度Vyの比Vy/Vxとして車体のスリップ角βが演算される。
【0129】ステップ330に於いては例えば車体のスリップ角βの時間微分値として車体のスリップ角の変化率βdが演算されると共に、車体のスリップ角β及びその変化率βdに基づき図29に示されたグラフに対応するマップより車輌がどの領域にあるかの判定が行われ、ステップ340に於いては基本の所定の距離Lxsに対する補正量ΔLxが0にリセットされる。
【0130】尚図29のグラフに於いて、領域Aは車輌の通常の安定的な走行状態を示し、領域Bは車輌がスピン傾向の状態にある領域を示し、領域Cは車輌がドリフトアウト傾向の状態にある領域を示し、領域Dは車輌の旋回挙動が発散する領域を示している。
【0131】ステップ350に於いては車輌が領域Bにあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ360へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ355に於いて車体のスリップ角βの絶対値に基づき図30に示されたグラフに対応するマップより補正量ΔLxが演算される。
【0132】ステップ360に於いては車輌が領域Cにあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ370へ進み、肯定判別が行われたときはにステップ365に於いて車体のスリップ角βの絶対値に基づき図31に示されたグラフに対応するマップより補正量ΔLxが演算される。
【0133】ステップ370に於いては車輌が領域Dにあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ380へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ375に於いて車体のスリップ角βの絶対値に基づき基づき図32に示されたグラフに対応するマップより補正量ΔLxが演算される。
【0134】ステップ380に於いてはLxsを上述の第一乃至第三の実施形態の場合と同様に演算される基本の所定の距離の前後成分として所定の距離の前後成分Lxが下記の式51に従って演算され、ステップ390に於いては第一の実施形態に於けるステップ710及び720の場合と同一の要領にて所定の距離の前後成分Lxの変化率の制限処理が行われ、しかる後ステップ500へ進む。
Lx=Lxs+ΔLx ……(51)
【0135】かくして図示の第四の実施形態によれば、ステップ320に於いて車体のスリップ角βが演算され、ステップ330に於いて車体のスリップ角の変化率βdが演算されると共に、車体のスリップ角β及びその変化率βdに基づき車輌が旋回挙動のどの領域にあるかの判定が行われ、ステップ350に於いて車輌が領域B、即ちスピン傾向の状態にあると判定されたときには、ステップ355に於いて車体のスリップ角βの絶対値が大きいほど大きくなるよう所定の距離の前後成分の補正量ΔLxが増大され、これにより後輪に比して前輪側の車輌のロール剛性が増大される。
【0136】またステップ360に於いて車輌が領域C、即ちドリフトアウト傾向の状態にあると判定されると、ステップ365に於いて車体のスリップ角βの絶対値が大きいほど小さくなるよう所定の距離Lrの前後成分の補正量ΔLxが負の値にて低減され、これにより前輪側に比して後輪側の車輌のロール剛性が増大される。
【0137】更にステップ370に於いて車輌が領域D、即ち車輌の旋回挙動が発散する領域にあると判定されると、ステップ375に於いて車体のスリップ角βの絶対値が大きいほど僅かに大きくなるよう所定の距離の前後成分の補正量ΔLxが正の大きい値にて漸次増大され、これにより後輪に比して前輪側の車輌のロール剛性が高い状態が維持される。
【0138】従って第四の実施形態によれば、車輌の過渡旋回時に於ける車輌の旋回挙動を判定し、その判定結果に応じて実際のショックアブソーバの減衰係数を適切に制御し、これにより車輌のスピンやドリフトアウトの如き旋回挙動の悪化を効果的に抑制することができる。
【0139】第五の実施形態図33は本発明による減衰係数制御装置の第五の好ましい実施形態に於ける減衰係数制御ルーチンの第一の部分を示すフローチャートである。
【0140】まずステップ410及び420はそれぞれ上述の第四の実施形態のステップ310及び320の場合と同様に実行され、ステップ430に於いてはKx及びKyをそれぞれ正の係数として車体の前後加速度Gx及び車体の横加速度Gyに基づき下記の式52に従って所定の距離Lが演算される。
L=(KxGx2+KyGy21/2 ……(52)
【0141】ステップ440に於いては傾斜角θが車体のスリップ角βに設定され、しかる後ステップ520へ進む。
【0142】かくして図示の第五の実施形態によれば、ステップ420に於いて車体のスリップ角βが演算され、ステップ430に於いて車体の前後加速度Gx及び車体の横加速度Gyに基づき所定の距離Lが演算され、ステップ440に於いて傾斜角θが車体のスリップ角βに設定される。
【0143】従って図示の第五の実施形態によれば、車体の前後加速度Gx若しくは車体の横加速度Gyが大きいほど所定の距離Lが大きい値に設定され、また傾斜角θが車体のスリップ角βに設定されることによって仮想位置が車輌の中心に対し適宜に設定されるので、車輌の過渡旋回時に於ける車輌の旋回挙動の悪化を効果的に抑制することができる。
【0144】以上に於ては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0145】例えば上述の各実施形態に於いては、仮想位置を設定するためのばね上の基準位置は車輌の中心112であるが、ばね上の基準位置は車体(ばね上)の重心に設定されてもよい。
【0146】また上述の各実施形態に於いては、仮想のショックアブソーバの減衰係数Cg、Cの変化率が制限されるようになっているが、これらの変化率制限処理は省略されてもよく、逆に所定の距離Lの変化率が制限されるよう修正されてもよい。
【0147】また上述の各実施形態に於いては、各車輪のストローク速度Xidは車高センサ26FL〜26RRの検出結果に基づき演算されるようになっているが、各車輪のストローク速度は車体に設けられた上下加速度センサ28FL〜28RRにより検出される車体の上下加速度Gbiに基づきオブザーバにより推定され、車高センサが省略されてもよい。
【0148】また上述の第一乃至第四の実施形態に於いては、所定の距離の横成分Lyは車輌の横加速度Gyの時間微分値ΔGyと横加速度Gyの符号signGyとの積ΔGysignGyに基づき演算されるようになっているが、車輌の横加速度Gyに基づき基本の所定の距離の横成分Lysが演算され、積ΔGysignGyに基づき横成分Lysの補正量ΔLyが演算され、所定の距離の横成分LyがLysとΔLyとの和として演算されてもよい。
【0149】また上述の第一の実施形態に於いては、車輪ストローク速度のヒーブ成分及びピッチ成分に基づき減衰係数についてのゲインKh、Kpが演算され、各仮想のショックアブソーバの減衰係数が上記式42及び43に従って演算されるようになっているが、車輪ストローク速度のヒーブ成分及びピッチ成分に基づく減衰係数の補正量が演算され、これらの補正量と他の補正量と基本の減衰係数の和として各仮想のショックアブソーバの減衰係数が演算されてもよい。
【0150】また上述の第一乃至第四の実施形態に於いては、基本の所定の距離の前後成分Lxsは車体の前後加速度Gxに応じて演算されるようになっているが、前後成分Lxsは定数であってもよく、逆に第四の実施形態に於いては、基本の所定の距離の前後成分Lxoは定数であるが、車体の前後加速度Gxに応じて可変設定されるよう修正されてもよい。
【0151】
【発明の効果】以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、車輌の過渡的な加減速走行時や過渡旋回時に於けるばね上のリフトが抑制され、ばね上のピッチ運動やロール運動が抑制されると共に車輌の重心が低下されるので、過渡的な加減速走行時や過渡旋回時の車輌の走行性能や乗り心地性を向上させることができ、また車輌モデルは一つであるので、車輌モデルが複数である場合に比してショックアブソーバの減衰係数の制御を単純化することができる。
【0152】また請求項2の構成によれば、実際のショックアブソーバの減衰係数が車輌の走行状態に応じて適切に制御されるので、車輌の状態量の如何に拘わらず第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が一定である場合に比して、車輌の走行性能や乗り心地性を車輌の走行状態に応じて適切に向上させることができる。
【0153】また請求項3の構成によれば、第一若しくは第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数がばね上の振動状態量に応じて可変設定されるので、第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数がばね上の振動状態量の如何に拘わらず一定である場合に比して、実際のショックアブソーバの減衰係数をばね上の振動状態に応じて適切に制御することができ、請求項4の構成によれば、実際のショックアブソーバの減衰係数をばね上の質量に応じて適切に制御し、これによりばね上の質量の如何に拘わらず第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が一定である場合に比して車輌の過渡的な加減速走行時に於けるばね上のピッチ運動や過渡旋回時に於けるばね上のロール運動をばね上の質量に応じて適切に抑制することができる。
【0154】また請求項5の構成によれば、ばね上とばね下との相対速度の如何に拘わらず第一及び第二の仮想のショックアブソーバの減衰係数が一定である場合に比して、実際のショックアブソーバの減衰係数を相対速度に応じて適切に制御し、これにより車輌の過渡的な加減速走行時に於けるばね上のピッチ運動や過渡旋回時に於けるばね上のロール運動を相対速度に応じて適切に制御することができる。
【0155】また請求項6の構成によれば、車輌の走行状態に基づき所定の距離の前後成分及び横成分が演算され、前後成分及び横成分に基づき所定の距離及び傾斜角が設定されるので、車輌の走行状態に応じて所定の距離及び傾斜角を適切に設定し、これにより実際のショックアブソーバの減衰係数を車輌の走行状態に応じて適切に制御し、車輌の操縦安定性を向上させることができる。
【0156】また請求項7の構成によれば、ばね上の前後加速度及び横加速度に応じて所定の距離が設定されると共にばね上のスリップ角に応じて傾斜角が設定されるので、車輌の旋回挙動の悪化時にはその旋回挙動の悪化に応じて仮想位置を適切に設定し、これにより車輌の旋回挙動の悪化を効果的に抑制することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年8月5日(1999.8.5)
【代理人】 【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
【公開番号】 特開2001−47833(P2001−47833A)
【公開日】 平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願番号】 特願平11−222471