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サスペンション制御装置 - 特開2001−47831 | j-tokkyo
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【発明の名称】 サスペンション制御装置
【発明者】 【氏名】五味 淳

【氏名】川添 寛

【要約】 【課題】急制動時に後輪から車両に作用する制動力の減少を抑制防止するようにした車両において、前輪がバンパーラバーに当接するような急制動時の輪荷重の変化をなめらかにして制動力を確保する。

【解決手段】例えば車体前後加速度の時間微分値から前輪がバンパーラバーに当接するような急制動を検出したら、後輪と車体との間に介装された流体圧シリンダに発生する上下速度成分に対する減衰係数cを、後輪側の平均上下加速度の大きさに応じて次第に大きくすることでピッチ剛性を大きくし、輪荷重変動をなめらかに連結して、特に後輪の制動力が急激に抜けないようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 急制動時に車輪から車両に作用する制動力の減少を抑制防止するようにした車両において、上下方向入力に対する各車輪の減衰力を可変とし、少なくとも前輪がフルバウンドしてバンパーラバーに当接するような急制動時に各車輪の減衰力を段階的に大きくすることを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項2】 急制動時に車輪から車両に作用する制動力の減少を抑制防止するようにした車両において、各車輪と車体との間に介装されて指令値に応じた減衰力を発生するアクチュエータと、前輪がフルバウンドしてバンパーラバーに当接するような車両の急制動を検出するバンパーラバータッチ急制動検出手段と、少なくともこのバンパーラバータッチ急制動検出手段で前輪がバンパーラバーに当接するような車両の急制動が検出されたときに、各車輪の減衰力を段階的に大きくする制御手段とを備えたことを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項3】 前記制御手段は、制動に伴って発生する車両の減速度が大きいほど、各車輪の減衰力を大きくすることを特徴とする請求項2に記載のサスペンション制御装置。
【請求項4】 前記制御手段は、前記急制動検出手段によって車両の急制動が検出された後、それが解除されたときにも各車輪の減衰力を一時的に大きくする揺り返し制御手段を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載のサスペンション制御装置。
【請求項5】 前記アクチュエータが流体圧シリンダを含んで構成され、前記減衰力の設定は、前記流体圧シリンダに発生する上下方向速度入力に対する減衰係数の設定で行われることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のサスペンション制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば各車輪と車体との間に介装された流体圧シリンダ等のアクチュエータによって上下方向への速度入力,即ちピッチ速度入力に対する減衰力を可変調整することで、例えば前後輪間のピッチ剛性を制御できるようにしたサスペンション制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】前後輪間のピッチ剛性を制御可能とするサスペンション制御装置では、例えば車両の制動時の車体姿勢変化を抑制しようとするものが考えられている。一般的には、例えば制動時には,後輪は伸側、前輪は圧側に変化しようとするので、両者の減衰力を大きくすることでピッチ剛性を高め、これにより車体が前方への沈み込み,即ちノーズダイブやテールリフトを抑制できるようにする。
【0003】ところで、このような制動時には前輪の輪荷重は大きくなり、後輪のそれは小さくなる。前述のようにして制動時にピッチ剛性を高めると、その傾向は更に顕著になる。しかしながら、後輪の輪荷重が小さくなることは制動中の路面反力トルクが小さくなることであるから車両に作用する制動力そのものも小さくなることになる。従って、例えば前輪に作用する制動力が最大限に作用しているような場合には、全体として車両に作用する制動力は小さくなる。また、例えばホイールシリンダによる車輪に作用する制動力が路面反力トルクより大きくなると、後輪がロック傾向となり、例えばアンチロックブレーキ制御装置によって後輪のホイールシリンダ圧が減圧され、その結果、強制的に後輪に作用する制動力が小さくなった場合にも、僅かではあるが制動距離が長じる可能性がある。
【0004】このような諸問題を解決するため、本出願人は先に特開平11−78464号公報に記載されるサスペンション制御装置を提案した。このサスペンション制御装置は、車両に発生する急制動を検出し、この急制動検出時には、後輪の減衰力を小さくして、後輪の輪荷重が大幅に減少するのを抑制し、これにより制動距離を確保できるようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来のサスペンション制御装置のように、単に急制動時に後輪の減衰力を小さくするだけでは、前輪のバウンド量や後輪のリバウンド量が大きくなり、それが大き過ぎる場合には、前輪がフルバウンド若しくは後輪がフルリバウンドして、所謂バンパーラバーやリバウンドストッパに当接してしまうことがある。バンパーラバーやリバウンドストッパに当たるのは、通常ストラットやサスペンションリンクの一部であるが、バンパーラバーやリバウンドストッパはサスペンションの動きを規制して、それ以上バウンド若しくはリバウンドしないようにするためのものであるため、バンパーラバーに前輪が当接してからは、急激に輪荷重が変化し、前輪荷重過大により前輪の制動力が低下してしまう。
【0006】本発明は、これらの諸問題を解決すべく開発されたものであり、特に前輪がバンパーラバーに当接するような急制動時には各車輪の減衰力を大きくすることにより、バンパーラバーに前輪が当接し、後輪から前輪へ急激に荷重移動するのを抑制し、これにより制動距離を確保したり、急制動が解除されたときには後二輪の減衰力を大きくすることにより揺り返しによるテールスカットを抑制防止したりすることのできるサスペンション制御装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に係るサスペンション制御装置は、急制動時に車輪から車両に作用する制動力の減少を抑制防止するようにした車両において、上下方向入力に対する各車輪の減衰力を可変とし、少なくとも前輪がフルバウンドしてバンパーラバーに当接するような急制動時に各車輪の減衰力を段階的に大きくすることを特徴とするものである。
【0008】また、本発明のうち請求項2に係るサスペンション制御装置は、急制動時に車輪から車両に作用する制動力の減少を抑制防止するようにした車両において、各車輪と車体との間に介装されて指令値に応じた減衰力を発生するアクチュエータと、前輪がフルバウンドしてバンパーラバーに当接するような車両の急制動を検出するバンパーラバータッチ急制動検出手段と、少なくともこのバンパーラバータッチ急制動検出手段で前輪がバンパーラバーに当接するような車両の急制動が検出されたときに、各車輪の減衰力を段階的に大きくする制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】なお、前述のように前輪のサスペンションの動きを規制するバンパーラバーには当該前輪が直接当接するわけではなく、一般にストラットやサスペンションリンク、若しくはショックアブソーバ機構内の一部が当たるのであるが、ここでは前輪がバンパーラバーに当接するという表現を用いる。また、本発明のうち請求項3に係るサスペンション制御装置は、前記請求項2の発明において、前記制御手段は、制動に伴って発生する車両の減速度が大きいほど、各車輪の減衰力を大きくすることを特徴とするものである。
【0010】また、本発明のうち請求項4に係るサスペンション制御装置は、前記請求項2又は3の発明において、前記制御手段は、前記急制動検出手段によって車両の急制動が検出された後、それが解除されたときにも各車輪の減衰力を一時的に大きくする揺り返し制御手段を備えたことを特徴とするものである。また、本発明のうち請求項5に係るサスペンション制御装置は、前記請求項2乃至4の発明において、前記アクチュエータが流体圧シリンダを含んで構成され、前記減衰力の設定は、前記流体圧シリンダに発生する上下方向速度入力に対する減衰係数の設定で行われることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の効果】而して、本発明のうち請求項1に係るサスペンション制御装置によれば、前輪がバンパーラバーに当接するような急制動時に各車輪の減衰力を段階的に大きくすることにより、前輪がバンパーラバーに当接してからの後輪から前輪への輪荷重の急激な移動を抑制することができ、その結果、前輪の輪荷重が急激に大きくなることを防止し、当該前輪からの車両に作用する制動力を確保して制動距離を確保することができる。
【0012】また、本発明のうち請求項2に係るサスペンション制御装置によれば、前輪がバンパーラバーに当接するような急制動時に各車輪と車体との間に介装されているアクチュエータの減衰力を段階的に大きくすることにより、前輪がバンパーラバーに当接してからの後輪から前輪への輪荷重の急激な移動を抑制することができ、その結果、前輪の輪荷重が急激に大きくなることを防止し、当該前輪からの車両に作用する制動力を確保して制動距離を確保することができる。
【0013】また、本発明のうち請求項3に係るサスペンション制御装置によれば、前記前輪がバンパーラバーに当接するような急制動時に、制動に伴って発生する車両の減速度が大きいほど、各車輪の減衰力を大きくすることにより、前輪がバンパーラバーに当接するまでの前輪の輪荷重の変化がなめらかなものとなり、その分だけ前輪から車両に作用する制動力を安定させることができる。
【0014】また、本発明のうち請求項4に係るサスペンション制御装置によれば、急制動が解除されたときに後二輪の減衰力を一時的に大きくすることにより、揺り返しによるテールスカットを抑制防止することができる。また、本発明のうち請求項5に係るサスペンション制御装置によれば、流体圧シリンダに発生する上下方向速度入力に対する減衰係数を設定することにより、アクチュエータの減衰力を容易に設定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1は、本発明のサスペンション制御装置を能動型サスペンションに展開した第1実施形態を示す車両の概略構成図であり、図中、符号10は車体側部材を、11FL〜11RRは前左〜後右の各車輪を、12は能動型サスペンションを夫々示す。なお、この車両は例えば特開平10−315952号公報に記載されるような、図示されないアンチロックブレーキ制御装置を搭載していて、例えば制動中に或る車輪がロック傾向に陥ると、当該車輪のホイールシリンダへの作動流体圧を減圧して制動力を弱め、これによりその車輪速が回復したら、再び当該ホイールシリンダへの作動流体圧を緩増圧し、これを繰り返して各車輪がロックしない用にしながら車輪速を確実に減速するようにしている。
【0016】前記能動型サスペンション12は、車体側部材10と車輪11FL〜11RRの各車輪側部材14との間に各々介装されたアクチュエータとしての流体圧シリンダ18FL〜18RRと、これらの流体圧シリンダ18FL〜18RRの作動流体圧を個別に調整する圧力制御弁20FL〜20RRと、これら圧力制御弁20FL〜20RRに所定圧力の作動流体を供給側配管21Sを介して供給すると共に、圧力制御弁20FL〜20RRからの戻り流体を戻り側配管21Rを通じて回収する流体圧源22と、この流体圧源22及び圧力制御弁20FL〜20RR間の供給圧側配管21Sに介挿されたアキュムレータ24Rと、車体側部材10の各車輪11FL〜11RR側に配設されて、夫々対応する位置における車体の上下方向加速度を夫々個別に検出する上下方向加速度センサ28FL〜28RRと、車速VSPを検出する車速センサ27と、車両の重心位置又はその近傍に作用する前後加速度GX を検出する前後加速度センサ26と、ブレーキペダルの踏込みによってON状態となるブレーキスイッチ信号SBRK を出力するブレーキスイッチ25と、前記各上下方向加速度センサ28FL〜28RRの上下方向加速度GFL〜GRR及び車速センサ27からの車速VSP及び前後加速度センサ26からの前後加速度GX 及びブレーキスイッチ25からのブレーキスイッチ信号SBRKに基づき、各圧力制御弁20FL〜20RRの出力圧を個別に制御するコントロールユニット30とを備えている。
【0017】前記流体圧シリンダ18FL〜18RRの夫々は、シリンダチューブ18aを有し、このシリンダチューブ18aには、軸方向に貫通孔を有するピストン18cにより隔設された下側の圧力室Lが形成され、ピストン18cの上下面の受圧面積差と内圧とに応じた推力を発生する。そして、シリンダチューブ18aの下端が車輪側部材14に取付けられ、ピストンロッド18bの上端が車体側部材10に取付けられている。また、圧力室Lの各々は、流体圧配管38を介して圧力制御弁20FL〜20RRの出力ポートに接続されている。また、流体圧シリンダ18FL〜18RRの圧力室Lの各々は、絞り弁32を介してバネ下振動吸収用のアキュムレータ34に接続されている。また、流体圧シリンダ18FL〜18RRの各々のバネ上,バネ下相当間には、比較的低いバネ定数であって車体の静荷重を支持するコイルスプリング36が配設されている。
【0018】前記各圧力制御弁20FL〜20RRの夫々は、スプールを摺動自在に内装したハウジングとこれに一体的に設けられた比例ソレノイドとを有する,従来周知の3ポート比例電磁減圧弁(例えば特開昭64−74111号参照)で構成されている。そして、比例ソレノイドの励磁コイルに供給する指令電流i(指令値)を調整することにより、流体圧源22と流体圧シリンダ18FL〜18RRとの間で流通する作動流体を制御できるようになっている。なお、車体を中庸状態に維持するための中立制御圧をPCNとする。
【0019】前記上下方向加速度センサ28FL〜28RRの夫々は、上方向の加速度GFL〜GRRでは正値の、下方向の加速度GFL〜GRRでは負値で表される検出信号を出力する。また、前記車速センサ27は、車両の前後方向速度の大きさに応じ且つ前進で正値、後退で負値でいの表される検出信号を車速VSPとして出力する。また、前記前後加速度センサ26は、車両重心点又はその近傍に作用する前後加速度の大きさに応じ且つ前向きで正値、後向きで負値で表される検出信号を前後加速度GX として出力する。また、前記ブレーキスイッチ25は、ブレーキペダルの踏込みでON状態,例えば論理値“1”となり、OFF状態では例えば論理値“0”となるディジタル信号をブレーキスイッチ信号SBRK として出力する。
【0020】前記コントロールユニット30は、図2に示すように、前記上下方向加速度センサ28FL〜28RRから出力される上下方向加速度GFL〜GRRなどが入力されるマイクロコンピュータ44と、このマイクロコンピュータ44からD/A変換されて出力される圧力指令値SFL〜SRRが供給されて、これらを前記圧力制御弁20FL〜20RRに対する駆動電流iFL〜iRRに変換する駆動回路46FL〜46RRとを備えている。
【0021】ここで、マイクロコンピュータ44は、少なくとも入力側インタフェース回路44aと、出力側インタフェース回路44bと、マイクロプロセスユニット等からなる演算処理装置44cと、RAM,ROM等を備えた記憶装置44dとを有する。そして、前記入力インタフェース回路44aには、前記上下方向加速度センサ28FL〜28RRからの検出値GFL〜GRR及び車速センサ27からの車速VSP及び前後加速度センサ26からの前後加速度GX 及びブレーキスイッチ25からのブレーキスイッチ信号SBRK が入力され、出力側インタフェース回路44bからは各圧力制御弁20FL〜20RRに対する制御指令値SFL〜SRRが出力される。
【0022】次に、前記コントロールユニット30のマイクロコンピュータ44で実行される能動サスペンションの統括制御のための演算処理を、図3のフローチャートに基づいて説明する。この演算処理は、所定サンプリング時間ΔT(例えば10msec.)毎のタイマ割込処理として実行される。また、この演算処理では特に通信のためのステップを設けていないが、前記記憶装置44dに記憶されているプログラムやマップ或いは各種のデータ等は常時演算処理装置44cのバッファ等に伝送され、また演算処理装置44cで算出された各算出結果も随時記憶装置44dに記憶される。また、前記各センサやスイッチからの検出信号も随時読込み可能となっている。
【0023】この演算処理では、まず、ステップS01で、個別の演算処理を行うことで、前記能動型サスペンションの各流体圧シリンダ18FL〜18RRに与える流体圧制御量のうち、車体のバウンスを制御するためのバウンス制御量FBi(i=FL〜RR)を算出設定する。具体的には、例えば前記四つの上下方向加速度センサ28FL〜28RRの上下方向加速度GFL〜GRRのうち、車体をバウンスさせる成分を抽出し、必要に応じてそれを積分して速度成分としたり、更にそれを積分して変位成分としたりすると共に、例えば車速VSPの増加と共に大きくなるバウンス運動抑制ゲイン(加速度成分,速度成分,変位成分の夫々に該当するもの)を設定し、これを各加速度成分,速度成分,変位成分に乗じたのち、例えばそれらの重み付け平均和等からバウンス制御量FBiを算出設定する。ちなみに、前記バウンス運動抑制ゲインを車速の増加と共に大きく設定することにより、高速走行時のしっかり感とか安定感と、低速走行時の乗心地とを両立させることができるようになる。
【0024】次にステップS02に移行して、個別の演算処理を行うことで、前記能動型サスペンションの各流体圧シリンダ18FL〜18RRに与える流体圧制御量のうち、車体のロールを制御するためのロール制御量FRiを算出設定する。具体的には、例えば前記四つの上下方向加速度センサ28FL〜28RRの上下方向加速度GFL〜GRRから、車体に作用するロールモーメント(ロール角加速度)を求め、必要に応じてそれを積分して速度(又は角速度)成分としたり、更にそれを積分して変位(又は位相)成分としたりすると共に、例えば車速VSRの増加と共に大きくなるロール運動抑制ゲインを各成分毎に設定し、これを夫々の成分に乗じたのち、例えばそれらの重み付け平均和等からロール制御量FRiを算出設定する。ちなみに、前記ロール運動抑制ゲインも車速の増加と共に大きく設定することにより、高速走行時のしっかり感とか安定感と、低速走行時の乗心地とを両立させることができるようになる。
【0025】次にステップS03に移行して、後述する図4乃至図6の個別の演算処理に従って、前記能動型サスペンションの各流体圧シリンダ18FL〜18RRに与える流体圧制御量のうち、車体のピッチを制御するためのピッチ制御量FPiを算出設定する。次にステップS04に移行して、個別の演算処理を行うことで、前記ステップS01乃至ステップS03で算出されたバウンス制御量FBi,ロール制御量FRi,ピッチ制御量FPiから、各アクチュエータ,つまり各流体圧シリンダ18FL〜18RRへの総合制御量Fi を算出設定する。具体的には、例えば夫々の制御量に該当する重みKB ,KR ,KP を設定し、それらを用いた重み付け平均和に、前記中立姿勢を達成するためのニュートラルポジション制御量FN を和して総合制御量Fi を算出設定する。なお、この総合制御量Fi が各アクチュエータへの上限値を越えるような場合には、例えば前記重みKB ,KR ,KP を,各制御量FBi,FRi,FPiの大きさの比率に合わせて変更設定するなどの処理を施してもよい。
【0026】次にステップS05に移行して、個別の演算処理を行うことで、前記総合制御量Fi を達成するための制御信号Si を創成出力してから、メインプログラムに復帰する。具体的には、前記各流体圧シリンダ18FL〜18RRのシリンダ内径が一定であれば、各制御量(制御力)は供給流体圧に比例し、また前記各圧力制御弁20FL〜20RRの出力圧は供給電流値に比例するから、これらの相関に従って前記総合制御量Fi を達成するための制御信号Si は或る比例定数によってリニアに決まる。なお、この制御信号Si による駆動回路46FL〜46RRからの指令電流iRL〜iRR発生方法は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)によるデューティ比制御でもよいし、対応する直流成分を増幅するフローティング型増幅器でもよい。
【0027】次に、前記図3の演算処理のステップS03で実行されるマイナプログラムについて図4のフローチャートを用いながら説明する。この演算処理では、まずステップS1で、個別の演算処理を行うことで、ピッチ抑制制御量FGRi を算出設定する。具体的には、例えば前記四つの上下方向加速度センサ28FL〜28RRの上下方向加速度GFL〜GRRから、車体に作用するピッチモーメント(ピッチ角加速度)を求めると共に、例えば車速VSPの増加と共に大きくなるピッチ運動抑制ゲインを設定し、両者の積値等からピッチ抑制制御量FGPi を算出設定する。ちなみに、前記ピッチ運動抑制ゲインを車速の増加と共に大きく設定することにより、高速走行時のしっかり感とか安定感と、低速走行時の乗心地とを両立させることができるようになる。
【0028】次にステップS2に移行して、後述する図5及び図6の個別の演算処理に従って、ピッチ減衰制御量FVPi を設定する。次にステップS3に移行して、個別の演算処理を行うことで、前記ステップS1乃びステップS2で算出されたピッチ抑制制御量FGPi ,ピッチ減衰制御量FVPi から、各アクチュエータ,つまり各流体圧シリンダ18FL〜18RRへのピッチ制御量FPiを算出設定してから、前記図3の演算処理のステップS04に移行する。具体的には、例えば夫々の制御量に該当する重みK1 ,K2 を設定し、それらを用いた重み付け平均和からピッチ制御量FPiを算出設定する。なお、このピッチ制御量FPiが予め設定された上限値を越えるような場合には、例えば前記重みK1 ,K2 を,各制御量FGPi ,FVPi の大きさの比率に合わせて変更設定するなどの処理を施してもよい。
【0029】次に、前記図4の演算処理のステップS2で実行されるマイナプログラムについて図5のフローチャートを用いながら説明する。この演算処理では、まずステップS21でピッチ速度VP を算出する。具体的には、例えば前記前左右輪部位に配設された上下方向加速度センサ28FL,28FRからの上下方向加速度GFL,GFRの平均値と、前記後左右輪部位に配設された上下方向加速度センサ28RL,28RRからの上下方向加速度GRL,GRRの平均値との差分値の絶対値を時間積分することで、車両に作用するピッチ速度VP を得ることができる。
【0030】次にステップS22に移行して、例えば後述するバンパーラバータッチ急制動制御フラグFBRT が論理値“1”のセット状態であるか否かなどを用いて、バンパーラバタッチ急制動が継続中であるか否かを判定し、バンパーラバータッチ急制動が継続中である場合にはステップS23に移行し、そうでない場合にはステップS24に移行する。
【0031】前記ステップS24では、例えば後述する通常急制動制御フラグFNOR が論理値“1”のセット状態であるか否かなどを用いて、通常の急制動が継続中であるか否かを判定し、通常の急制動が継続中である場合にはステップS25に移行し、そうでない場合にはステップS26に移行する。前記ステップS26では、前記前後加速度センサ26からの前後加速度GX の時間微分値dGX /dtが、予め設定された比較的絶対値の大きな負の所定値、即ちバンパーラバータッチ急制動所定値G' XBRT以下であるか否かを判定し、当該前後加速度時間微分値dGX /dtがバンパーラバータッチ急制動所定値G'XBRT以下である場合には前記ステップS23に移行し、そうでない場合にはステップS27に移行する。
【0032】前記ステップS27では、前記前後加速度センサ26からの前後加速度GX の時間微分値dGX /dtが、予め設定された比較的絶対値の小さな負の所定値、即ち通常急制動所定値G' XNOR以下であるか否かを判定し、当該前後加速度時間微分値dGX /dtが通常急制動所定値G' XNOR以下である場合には前記ステップS25に移行し、そうでない場合にはステップS28に移行する。
【0033】前記ステップS23では、後述する図6の演算処理を行い、バンパーラバータッチ急制動時の減衰係数cを設定してからステップS29に移行する。また、前記ステップS25では、後述する図9の演算処理を行い、バンパーラバータッチ急制動時の減衰係数cを設定してから前記ステップS29に移行する。
【0034】また、前記ステップS28では、後左右輪の減衰係数cを定常モード所定値c0 に設定してから前記ステップS29に移行する。前記ステップS29では、前記設定された各減衰係数cに前記ピッチ速度VPを乗じた値を、後左右輪用ピッチ減衰制御量FVPRL,FVPRRに設定してから前記図4の演算処理のステップS3に移行する。なお、本実施形態では、前左右輪用ピッチ減衰制御量FVPFL,FVPFRは共に“0”である。
【0035】次に、前記図5の演算処理のステップS23で実施される図6の演算処理について説明する。この演算処理では、まずステップS231で前記バンパーラバータッチ急制動制御フラグFBRT を“1”にセットし、同時に通常急制動制御フラグFNOR を“0”にリセットする。次いでステップS232に移行して、前記後左右輪部位に配設された上下方向加速度センサ28RL,28RRからの上下方向加速度GRL,GRRの平均値が“0”以上であるか否かを判定し、当該上下方向加速度GRL,GRRの平均値が“0”以上である場合にはステップS234に移行し、そうでない場合にはステップS233に移行する。
【0036】前記ステップS234では、後述する図7のバンパーラバータッチ急制動時テールリフトモード制御マップに従って減衰係数cを設定してから、前記図5の演算処理のステップ29に移行する。一方、前記ステップS233では、テールスカットモード解除カウンタCNTをインクリメントしてからステップS235に移行する。
【0037】前記ステップS235では、テールスカットモード解除カウンタCNTが予め設定された比較的短時間に相当する所定値CNT0 (例えば“2”乃至“4”)以上であるか否かを判定し、当該テールスカットモード解除カウンタCNTが所定値CNT0 以上である場合にはステップS236に移行し、そうでない場合には前記ステップS237に移行する。
【0038】前記ステップS237では、後述する図8のテールスカットモード制御マップに従って減衰係数cを設定してから、前記図5の演算処理のステップ29に移行する。また、前記ステップS236では、テールスカットモード解除カウンタCNTを“0”にクリアしてからステップS238に移行し、ここでバンパーラバータッチ急制動制御フラグFBRT を“0”にリセットしてからステップS239に移行し、ここで減衰係数cを定常モード所定値c0 に設定してから前記図5の演算処理のステップ29に移行する。
【0039】次に、前記図6の演算処理のステップS234で使用される制御マップについて図7bを用いて説明する。この図7bは前記バンパーラバータッチ急制動時のテールリフト期(モード)用の減衰係数設定制御マップである。同図から明らかなように、後左右輪の上下方向加速度GRL,GRRの平均値の絶対値,つまり車体後方に作用するピッチモーメント(厳密には車体前方に作用するピッチ入力の偶力成分であり、車両重心点−後車軸間距離で除せばピッチ角加速度になる)の大きさに応じて減衰係数cを変化させる。ここでは、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が所定値GR1より小さいときには比較的小さな所定値c1 一定とし、逆にピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が所定値GR3より大きいときには比較的大きな所定値c10一定とし、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が前記所定値GR1と所定値GR3との間にあるときには、両者の中間の所定値c5一定とする。なお、この中間所定値c5 が前記定常モード所定値c0 相当である。また、減衰係数cが前記比較的小さな所定値c1 一定であると、前輪の減衰力が小さいため、やがて前輪がバンパーラバーに当接する(これをバンパーラバータッチと表現している)が、そのときのピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|を所定値GR2としたとき、前記ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の所定値GR1は当該所定値GR2より小さく、前記所定値GR3は当該所定値GR2より大きな値に設定してある。
【0040】次に、前記図6の演算処理のステップS237で使用される制御マップについて図8を用いて説明する。この図8は前記バンパーラバータッチ急制動時のテールスカット期(モード)用の減衰係数設定制御マップである。同図から明らかなように、後左右輪の上下方向加速度GRL,GRRの平均値の絶対値からなるピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が“0”の状態での切片が前記定常モード所定値c0 であり、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に減衰係数cもリニアに増加する。
【0041】次に、前記図5の演算処理のステップS25で実施される図9の演算処理について説明する。なお、この演算処理は、前述した特開平11−78464号公報に記載されるロジックを本実施形態に合わせて変更したものである。この演算処理では、まずステップS251で前記バンパーラバータッチ急制動制御フラグFBRT を“0”にリセットし、同時に通常急制動制御フラグFNOR を“1”にセットする。
【0042】次いでステップS252に移行して、前記後左右輪部位に配設された上下方向加速度センサ28RL,28RRからの上下方向加速度GRL,GRRの平均値が“0”以上であるか否かを判定し、当該上下方向加速度GRL,GRRの平均値が“0”以上である場合にはステップS254に移行し、そうでない場合にはステップS253に移行する。
【0043】前記ステップS254では、後述する図10の通常急制動時テールリフトモード制御マップに従って減衰係数cを設定してから、前記図5の演算処理のステップ29に移行する。一方、前記ステップS253では、テールスカットモード解除カウンタCNTをインクリメントしてからステップS255に移行する。
【0044】前記ステップS255では、テールスカットモード解除カウンタCNTが予め設定された比較的短時間に相当する所定値CNT1 (例えば“2”乃至“4”)以上であるか否かを判定し、当該テールスカットモード解除カウンタCNTが所定値CNT0 以上である場合にはステップS256に移行し、そうでない場合には前記ステップS257に移行する。
【0045】前記ステップS257では、前記図8のテールスカットモード制御マップに従って減衰係数cを設定してから、前記図5の演算処理のステップ29に移行する。また、前記ステップS256では、テールスカットモード解除カウンタCNTを“0”にクリアしてからステップS258に移行し、ここで通常急制動制御フラグFNOR を“0”にリセットしてからステップS259に移行し、ここで減衰係数cを定常モード所定値c0 に設定してから前記図5の演算処理のステップ29に移行する。
【0046】次に、前記図9の演算処理のステップS254で使用される制御マップについて図10を用いて説明する。この図10は前記通常急制動時テールリフト期(モード)用の減衰係数設定制御マップである。同図から明らかなように、後左右輪の上下方向加速度GRL,GRRの平均値の絶対値,つまり車体後方に作用するピッチモーメントの大きさに応じて減衰係数cを変化させる。ここでは、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が“0”の状態での切片が前記定常モード所定値c0 であり、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に減衰係数cもリニアに減少する。
【0047】次に、前記図5の演算処理の作用について、まず図11,図12を用いて説明する。制動中に車輪に制動力が作用すると、慣性によって車体は前方に進行し続けようとする。実際に、車輪と車体とが分離するわけではないから、これによって前述のようなピッチモーメントが発生する。このとき、例えば車体後部に作用する上向きの加速度が図11に示すように(1−ΔG)〔G〕(Gravity:重力加速度)である(前記説明の上下方向加速度とは若干異なる)とすると、減少する後輪荷重の変化量ΔWは、下記1式で与えられる。
【0048】
ΔW=mΔG+c∫ΔG+k∬ΔG ……… (1)なお、∫は時間積分記号,mは質量,cは減衰係数,kは弾性係数である。また、この輪荷重変動を伴う後輪制動力fは下記2式で表される。
f=μ(W−ΔW) ……… (2)なお、μは路面摩擦係数,Wは中立状態にあるときの後輪荷重である。
【0049】従って、前述した減少側への後輪荷重変化量ΔWが大きければ大きいほど、後輪制動力fは小さくなる。図12のうち、線形領域と記載された部分が、これに相当する。同図から明らかなように、この線形領域では、凡そ、輪荷重が大きいほど制動力も大きい。また、輪荷重が大きくなり過ぎると、例えばタイヤの変形に伴う粘弾性の低下等から、輪荷重がそれ以上大きくなっても、制動力は逆に小さくなってしまう。この領域を非線形領域と呼び、前記線形領域との輪荷重の閾値を線形領域上限閾値WLNR と表す。また、本来なら、輪荷重が小さくなれば制動力もリニアにどこまでも小さくなるはずであるが、前述のように輪荷重が小さくなると路面反力トルクが小さくなるために、ホイールシリンダから車輪に作用する制動力が相対的に大きくなって、当該車輪がロック傾向となり、これに対して前述したアンチロックブレーキ制御装置が当該ホイールシリンダへの作動流体圧を減圧するために制動力は著しく減少してしまう。この領域をアンチロックブレーキ(図ではABS)作動領域とし、線形領域との輪荷重の閾値を線形領域下限閾値WABS と表す。
【0050】そこで、前記1式における減衰係数cが前述した定常モード所定値c0 であり、或る急制動時の上下方向加速度ΔGによって輪荷重変化量ΔWORG が発生するとすると、この輪荷重変化量ΔWORG により、到達する輪荷重WORG が前記線形領域下限閾値WABS より小さくなってアンチロックブレーキ作動領域に入ってしまうため、そのときの制動力fは図12にfORG で示すような極めて小さな値になってしまう。従って、例えば前輪の制動力が線形領域の最大値まで到達しているような場合には、車両に作用するトータルな制動力が小さくなり、その結果、制動距離が長じる恐れがある。
【0051】一方、前記ピッチモーメントは力であるから、車両に作用する制動力、つまり減速度が大きいほど、ピッチ変位も大きくなる。これを時間の経過と共にみてみると、図13に示すように、通常の制動に対して、急制動であるほど、減速度、つまり前記前後加速度GX の負の方向への立ち上がりが早いことが分かる。そして、通常の急制動に対して、更にピッチ変位の大きいバンパーラバータッチ急制動時には、更に前後加速度GX の負の方向への立ち上がりが早い。そこで、図5の演算処理では、ステップS24で、この前後加速度GX の変化の様子、つまり前後加速度時間微分値dGX /dtを観察し、それが予め設定された比較的絶対値の大きな負のバンパーラバータッチ急制動所定値G' XBRT以下である場合には、同図のステップS23に移行して、後述のようにバンパーラバータッチ急制動時の減衰係数cを設定する。また、前記前後加速度時間微分値dGX /dtがバンパーラバータッチ急制動所定値G' XBRT以下でなくとも、同図のステップS27では、当該前後加速度時間微分値dGX /dtが、予め設定された比較的絶対値の小さな負の通常急制動所定値G' XNOR以下であるか否かを判定し、当該前後加速度時間微分値dGX /dtが通常急制動所定値G' XNOR以下である場合にはステップS25に移行して通常急制動時の減衰係数cを設定する。
【0052】前記図5の演算処理のステップS25で実行される、前記図9の演算処理は、前述のように特開平11−78464号公報に記載されるロジックを本実施形態に合わせて変更しただけのものであるから、ここではその作用について簡潔に説明する。この演算処理において、未だ制動中の後左右輪の上下方向加速度の平均値((GRL+GRR)/2)は上方向である正値であるからステップS254に移行し、ここで前記ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|に応じて前記定常用所定値c0 より小さい通常急制動時テールリフトモード用の減衰係数cが設定される。この小さな減衰係数cによれば、図12に示すように、同じ上下方向加速度ΔGでも発生する輪荷重変化量ΔWCRT-R1は前記定常用減衰係数c0 時の輪荷重変化量ΔWORG より小さくなり、この輪荷重変化量ΔWCRT-R1により、到達する輪荷重WCRT-R1が前記線形領域下限閾値WABS より大きな線形領域に止まれば、そのときの後輪からの車体に作用する制動力fCRT-R1より大幅に大きくなり、この後輪からの車体に作用する制動力fCRT-R1が有効に作用して、その結果、制動距離を確保することができるようになる。
【0053】また、この急制動が解除されると、例えば前記ピッチモーメントに対して蓄えられている前輪側の反力によって車体は後方に押し返される,所謂テールスカットを伴う揺り返しが発生する。このとき、車体後部に発生する加速度,即ち前記後左右輪の上下方向加速度の平均値((GRL+GRR)/2)は下向きを示す負値になるから、図9の演算処理ではステップS253からステップS255を経てステップS257に移行し、ここでピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|に応じて前記定常用所定値c0 より大きなテールスカットモード用の減衰係数cが設定される。即ち、急制動が解除されてテールスカットを発生させるようなピッチモーメントが生じると、後輪の減衰力を速やかに大きくし、これにより揺り返しによる実際のテールスカットを抑制防止することができる。また、この揺り返しは前記大きな後輪減衰力によって比較的短時間で収束するから、前記ステップS253でインクリメントされる前記テールスカットモード解除カウンタCNTが前記比較的短時間に相当する所定値CNT0 でカウントアップすると、図9の演算処理のステップS253からステップS256以降に移行し、通常急制動時制御ルーチンから外れ、次のステップS259で減衰係数cを定常用所定値c0 に設定する。
【0054】一方、バンパーラバータッチ急制動時には、前記図6の演算処理によって、減衰係数cが設定される。この演算処理において、未だ制動中の後左右輪の上下方向加速度の平均値((GRL+GRR)/2)は上方向である正値であるからステップS234に移行し、ここで図7bに示すように、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|に応じてバンパーラバータッチ急制動時テールリフトモード用の減衰係数cが設定される。前述のように、バンパーラバータッチ急制動時には、車両減速度が急速に且つ大幅に増大するので、前記ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|も急速に且つ大幅に増大し、結果的には前記比較的大きな所定値GR3をも超える。従って、このテールリフト期(モード)に、この実施形態では、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に、減衰係数cが、前記所定値c1 、c5 、c10の順に次第に大きくなるように設定されることになる。この減衰係数cによる輪荷重変化量(厳密にはその絶対値)ΔWは、図7aに実線で示すように表れ、それは前記図13の制動中前後加速度と同等に変化するピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|と共に変化する、つまり一旦増加して、減少することになる。この図7aに二点鎖線で示すのが通常のサスペンション特性の輪荷重変化量であり、破線で示すのが、前記減衰係数cを前記比較的小さな所定値GR1に固定したときの輪荷重変化量である。前述のように減衰係数cを前記比較的小さな所定値GR1に固定したときには、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が前記所定値GR2となったときにバンパーラバーに当接し、それ以後、急速に輪荷重変化量ΔWが増大する。これに対して、本実施形態では、減衰係数cが、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に所定値c1 、c5 、c10の順に次第に大きくなるように設定したため、前記破線で示す低減衰力のものより輪荷重変化量ΔWがなめらかに変化し、その分だけ後輪から前輪への荷重移動を抑制し、前輪の輪荷重が急激に大きくなることによる制動力の低下を防止し、前輪からの車両に作用する制動力を確保して制動距離を確保することができる。
【0055】また、この急制動が解除され、テールスカットを伴う揺り返しが発生すると、前記図9の演算処理と同様に、前記後左右輪の上下方向加速度の平均値((GRL+GRR)/2)は下向きを示す負値になるから、図6の演算処理ではステップS237でピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|に応じて前記定常用所定値c0より大きなテールスカットモード用の減衰係数cが設定され、後輪の減衰力を速やかに大きくし、これにより揺り返しによる実際のテールスカットを抑制防止することができる。また、この揺り返しは前記大きな後輪減衰力によって比較的短時間で収束するから、前記ステップS233でインクリメントされる前記テールスカットモード解除カウンタCNTが前記比較的短時間に相当する所定値CNT1 でカウントアップすると、図6の演算処理のステップS233からステップS236以降に移行し、バンパーラバータッチ制動時制御ルーチンから外れ、次のステップS239で減衰係数cを定常用所定値c0 に設定する。
【0056】以上より、前記ブレーキスイッチ25及び前後加速度センサ26及び図5の演算処理のステップS26が本発明のバンパーラバータッチ急制動検出手段を構成し、以下同様に、前記図6の演算処理を含む図5の演算処理全体が制御手段を構成し、図6の演算処理のステップS233及びステップS237が揺り返し制御手段を構成している。
【0057】次に本発明のサスペンション制御装置の第2実施形態について説明する。この実施形態における車両の主要構成は前記第1実施形態の図1及び図2のものと同様である。また、能動型サスペンションの主要制御は、前記第1実施形態の図3及び図4に示す内容と同様である。一方、前記図4の演算処理のマイナプログラムとしての演算処理が前記図5のものから図14のものに変更されている。但し、図14の演算処理は前記図5の演算処理に類似しており、中には同等のステップもある。そこで、同等のステップには同等の符号を附してそれらの詳細な説明は省略する。そして、図5の演算処理と図14の演算処理の相違は、前記ステップS23がステップS23’に、前記ステップS26がステップS26’に、前記ステップS27がステップS27’に夫々変更されている。
【0058】具体的に、前記ステップS23’は、そこで実行されるマイナプログラムが変更されているので、後述するとして、前記ステップS26’では、前述した後輪単位回転当たりのアンチロックブレーキ制御の減圧時間がバンパーラバータッチ急制動所定値以上であるか否かを判定し、当該減圧時間がバンパーラバータッチ急制動所定値以上である場合には前記ステップS23’に移行し、そうでない場合にはステップ27’に移行する。
【0059】また、前記ステップS27’では、同じく後輪単位回転当たりのアンチロックブレーキ制御の減圧時間が通常急制動所定値以上であるか否かを判定し、当該減圧時間が通常急制動所定値以上である場合には前記ステップS25に移行し、そうでない場合には前記ステップS28に移行する。また、前記ステップ23’で実行されるマイナプログラムとしての演算処理は、前記第1実施形態の図6のものから図15のものに変更されている。但し、図15の演算処理は前記図6の演算処理に類似しており、中には同等のステップもある。そこで、同等のステップには同等の符号を附してそれらの詳細な説明は省略する。そして、図6の演算処理と図15の演算処理の相違は、前記ステップS234がステップS234’に変更されている。このステップS234’では、前記ピッチモーメント|(GFL+GFR)/2|に応じて設定されるバンパーラバータッチ急制動時テールリフトモード減衰係数cの制御マップが図16bに示すものに変更されている。ここでは、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が所定値GR1より小さいときには比較的小さな前記所定値c1 一定とし、逆にピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が所定値GR3より大きいときには比較的大きな前記所定値c10一定とする。また、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が前記所定値GR1と前記バンパーラバータッチ所定値GR2との間にあるときには、前記定常モード所定値c0 よりやや小さい所定値c4 一定とし、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が前記バンパーラバータッチ所定値GR2と前記所定値GR3との間にあるときには、前記定常モード所定値c0 よりやや大きい所定値c7 一定とする。
【0060】次に、本実施形態の作用について説明する。前述のように、急制動時に後輪荷重が減少すると、タイヤの路面反力トルクよりも制動力(トルク)が大きくなって、後輪がロック傾向に陥る。すると、アンチロックブレーキ制御装置によって後輪のホイールシリンダ圧が減圧され、後輪制動力が強制的に減少されて車輪速が回復する。この傾向は、急制動であるほど、後輪荷重の減少量が大きくなるので、例えば前記特開平10−315952号公報に記載されるように、アンチロックブレーキ制御装置は、より後輪の制動力を小さくすべく、後輪ホイールシリンダ圧を減圧する時間が長くなる。例えば、前輪がバンパーラバータッチするような場合は、最も急制動の度合いが大きいので、アンチロックブレーキ制御装置による後輪単位回転当たりのホイールシリンダ圧減圧時間は長い。また、この前輪バンパーラバータッチ急制動ほどではなくとも、通常制動に比べると、急制動時には後輪単位回転当たりのホイールシリンダ圧減圧時間は長い。そこで、後輪単位回転当たりのアンチロックブレーキ制御装置による減圧時間に二つの閾値、つまりバンパーラバータッチ急制動の所定値と、通常の急制動の所定値とを設定し、当該減圧時間がバンパーラバータッチ急制動所定値以上である場合には、図14の演算処理のステップS26’からステップS23’に移行してバンパーラバータッチ急制動時の減衰係数cを設定し、減圧時間がそれ未満で且つ通常急制動所定値以上である場合には、図14のステップS27’からステップS25に移行して通常急制動時の減衰係数cを設定する。なお、アンチロックブレーキ制御装置の減圧時間は、通常、その制御装置内で監視されているので、必要に応じて読込めばよい。
【0061】一方、前記バンパーラバータッチ急制動時には、前記図15の演算処理によって、減衰係数cが設定されるが、特にそのテールリフト期(モード)には図16bの制御マップに従って減衰係数cが設定される。この実施形態では、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に、減衰係数cが、前記所定値c1、c4 、c7 、c10の順に三段階に次第に大きくなるように設定されることになる。このような減衰係数cによる輪荷重変化量(厳密にはその絶対値)ΔWは、図16aに実線で示すように表れ、それは前記図13の制動中前後加速度と同等に変化するピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|と共に、一旦増加して、減少する。この図16aにも通常のサスペンション特性の輪荷重変化量を二点鎖線で、減衰係数cを比較的小さな所定値GR1に固定したときの輪荷重変化量を破線で示すが、本実施形態では、減衰係数cが、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に所定値c1 、c4 、c7 、c10の順に三段階に次第に大きくなるように設定したため、前記破線で示す低減衰力のものより輪荷重変化量ΔWが更になめらかに変化し、その分だけ後輪から前輪への荷重移動を抑制し、前輪の輪荷重が急激に大きくなることによる制動力の低下を防止し、前輪からの車両に作用する制動力を確保して制動距離を確保することができる。
【0062】以上より、前記ブレーキスイッチ25及び前後加速度センサ26及び図14の演算処理のステップS26’が本発明のバンパーラバータッチ急制動検出手段を構成し、以下同様に、前記図15の演算処理を含む図14の演算処理全体が制御手段を構成し、図15の演算処理のステップS233及びステップS237が揺り返し制御手段を構成している。
【0063】次に本発明のサスペンション制御装置の第3実施形態について説明する。この実施形態における車両の主要構成は前記第1実施形態の図1及び図2のものと同様である。また、能動型サスペンションの主要制御は、前記第1実施形態の図3及び図4に示す内容と同様である。一方、前記図4の演算処理のマイナプログラムとしての演算処理が前記図5のものから図17のものに変更されている。但し、図17の演算処理は前記図5の演算処理に類似しており、中には同等のステップもある。そこで、同等のステップには同等の符号を附してそれらの詳細な説明は省略する。そして、図5の演算処理と図17の演算処理の相違は、前記ステップS23がステップS23”に、前記ステップS26がステップS26”に、前記ステップS27がステップS27”に夫々変更されている。
【0064】具体的に、前記ステップS23”は、そこで実行されるマイナプログラムが変更されているので、後述するとして、前記ステップS26”では、前述したアンチロックブレーキ制御の減圧制御間の緩増圧回数がバンパーラバータッチ急制動所定値以下であるか否かを判定し、当該緩増圧回数がバンパーラバータッチ急制動所定値以下である場合には前記ステップS23”に移行し、そうでない場合にはステップ27”に移行する。
【0065】また、前記ステップS27”では、同じくアンチロックブレーキ制御の減圧制御間の緩増圧回数が通常急制動所定値以下であるか否かを判定し、当該緩増圧回数が通常急制動所定値以下である場合には前記ステップS25に移行し、そうでない場合には前記ステップS28に移行する。また、前記ステップ23”で実行されるマイナプログラムとしての演算処理は、前記第1実施形態の図6のものから図18のものに変更されている。但し、図18の演算処理は前記図6の演算処理に類似しており、中には同等のステップもある。そこで、同等のステップには同等の符号を附してそれらの詳細な説明は省略する。そして、図6の演算処理と図18の演算処理の相違は、前記ステップS234がステップS234”に変更されている。このステップS234”では、前記ピッチモーメント|(GFL+GFR)/2|に応じて設定されるバンパーラバータッチ急制動時テールリフトモード減衰係数cの制御マップが図19bに示すものに変更されている。ここでは、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が所定値GR3より大きいときには比較的大きな前記所定値c10一定とする。また、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が前記所定値GR1より小さいときには、前記定常モード所定値c0 を切片とし且つピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が所定値GR1のときに前記比較的小さな所定値c1 になるようにリニアに減少し、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|が当該所定値GR1と前記比較的大きな所定値GR3との間にあるときには、前記所定値c1 から前記所定値c10までリニアに増加するようにしてある。
【0066】次に、本実施形態の作用について説明する。例えば前記特開平10−315952号公報に記載されるアンチロックブレーキ装置などでは、前述のように例えば急制動時の後輪荷重減少に伴って後輪がロック傾向に陥り、その減速の状態から後輪ホイールシリンダ圧を減圧して車輪速が回復したら、再びホイールシリンダ圧を増圧して車輪速を減速しなければならない。このとき、ホイールシリンダ圧を減圧してロック傾向に陥った車輪速を回復するような状態で、再びホイールシリンダ圧を急速に増圧したのでは、即座にロック傾向が繰り返される恐れがあるため、一般的にはホイールシリンダ圧を緩やかに増圧させる。この減圧後の緩増圧は、一般にホイールシリンダ圧を短い周期で少しずつ増圧することによって行われる。一方、前述のように急制動時には後輪荷重は減少しているので、アンチロックブレーキ制御装置は、全般的に後輪ホイールシリンダ圧を減少傾向にして制動力を小さくしている。従って、急制動であるほど、アンチロックブレーキ制御装置による後輪ホイールシリンダ圧の減圧時間が長く、相対的に増圧時間は短いことになるから、前述のような減圧制御間の緩増圧の増圧ステップ回数(以下、単に緩増圧回数と記す)も少ない。例えば、前輪がバンパーラバータッチするような場合は、最も急制動の度合いが大きいので、アンチロックブレーキ制御装置による減圧制御間の緩増圧回数は少ない。また、この前輪バンパーラバータッチ急制動ほどではなくとも、通常制動に比べると、急制動時には減圧制御間の緩増圧回数は少ない。そこで、アンチロックブレーキ制御装置による減圧制御間の緩増圧回数に二つの閾値、つまりバンパーラバータッチ急制動の所定値と、通常の急制動の所定値とを設定し、当該減圧制御間の緩増圧回数がバンパーラバータッチ急制動所定値以下である場合には、図17の演算処理のステップS26”からステップS23”に移行してバンパーラバータッチ急制動時の減衰係数cを設定し、減圧時間がそれ未満で且つ通常急制動所定値以下である場合には、図17のステップS27”からステップS25に移行して通常急制動時の減衰係数cを設定する。なお、アンチロックブレーキ制御装置の減圧制御間の緩増圧回数(ステップ数)は、通常、その制御装置内で監視されているので、必要に応じて読込めばよい。
【0067】一方、前記バンパーラバータッチ急制動時には、前記図18の演算処理によって、減衰係数cが設定されるが、特にそのテールリフト期(モード)には図19bの制御マップに従って減衰係数cが設定される。この実施形態では、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に、減衰係数cが、前記定常モード所定値c0 から所定値c1 まで一旦無段階に小さくなった後、所定値c10まで無段階に大きくなるように設定されることになる。このような減衰係数cによる輪荷重変化量(厳密にはその絶対値)ΔWは、図19aに実線で示すように表れ、それは前記図13の制動中前後加速度と同等に変化するピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|と共に、一旦増加して、減少する。この図19aにも通常のサスペンション特性の輪荷重変化量を二点鎖線で、減衰係数cを比較的小さな所定値GR1に固定したときの輪荷重変化量を破線で示すが、本実施形態では、減衰係数cが、ピッチモーメント|(GRL+GRR)/2|の増加と共に、無段階に一旦小さくなった後に、無段階に大きくなるように設定したため、前記破線で示す低減衰力のものより輪荷重変化量ΔWがより一層なめらかに変化し、その分だけ後輪から前輪への荷重移動を抑制し、前輪の輪荷重が急激に大きくなることによる制動力の低下を防止し、前輪からの車両に作用する制動力を確保して制動距離を確保することができる。
【0068】以上より、前記ブレーキスイッチ25及び前後加速度センサ26及び図17の演算処理のステップS26”が本発明のバンパーラバータッチ急制動検出手段を構成し、以下同様に、前記図18の演算処理を含む図17の演算処理全体が制御手段を構成し、図18の演算処理のステップS233及びステップS237が揺り返し制御手段を構成している。
【0069】なお、前記各実施形態では、減衰係数を調整することで減衰力を制御したが、減衰力に作用するバネ定数を調整することで減衰力を制御するようにしてもよい。また、急制動時に発生する後輪側の減衰力は伸側、その解除時,即ち揺り返し時に発生する後輪の減衰力は圧側であるから、前記減衰係数及びその減衰力の設定は該当する側だけでもよい。
【0070】また、前記実施形態はコントロールユニット30としてマイクロコンピュータを適用した場合について説明したが、これに代えてカウンタ,比較器等の電子回路を組み合わせて構成することもできる。また、前記実施形態は、前輪がバンパーラバーに当接する場合について説明したが、後輪が伸時にリバウンドストッパに当接する場合に適用してもよい。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年8月3日(1999.8.3)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外2名)
【公開番号】 特開2001−47831(P2001−47831A)
【公開日】 平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願番号】 特願平11−220057