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【発明の名称】 産業車両の揺動規制装置
【発明者】 【氏名】鈴木 康隆

【要約】 【課題】揺動可能な車軸の上方スペースが小さい場合であっても,容易に配設することができる揺動規制装置を提供すること。

【解決手段】産業車両8の車体80に対して上下方向に揺動可能に支持された車軸の揺動を規制するための装置であって,伸縮可能状態と伸縮不能状態とを切替可能なダンパ10と,ダンパ10と車軸81とを連結するリンク機構2とよりなる。ダンパ10は,車体80と車軸81との間において,その伸縮方向を略水平方向に向けて配置されていると共に,その一端11が車体80に,他端12がリンク機構2を介して車軸81に連結されている。リンク機構2は,車軸81の上下方向の揺動を略水平方向の変位に変換してダンパ10に伝達するよう構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 産業車両の車体に対して上下方向に揺動可能に支持された車軸の揺動を規制するための装置であって,伸縮可能状態と伸縮不能状態とを切替可能なダンパと,該ダンパと上記車軸とを連結するリンク機構とよりなり,上記ダンパは,上記車体と上記車軸との間において,その伸縮方向を略水平方向に向けて配置されていると共に,その一端が上記車体に,他端が上記リンク機構を介して上記車軸に連結されており,上記リンク機構は,上記車軸の上下方向の揺動を略水平方向の変位に変換して上記ダンパに伝達するよう構成されていることを特徴とする産業車両の揺動規制装置。
【請求項2】 請求項1において,上記リンク機構は,第1〜第3のリンク点を互いに三角形の頂点となる位置に設けてなる第1リンク部材と,2つのリンク点を有する第2リンク部材とよりなり,上記第1リンク部材は,第1リンク点を上記ダンパの上記他端に,第2リンク点を上記車体に,第3リンク点を上記第2リンク部材の一方のリンク点にそれぞれ接続してなり,上記第2リンク部材の他方のリンク点は上記車軸に接続してあることを特徴とする産業車両の揺動規制装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【技術分野】本発明は,産業車両に搭載される揺動規制装置に関する。
【0002】
【従来技術】例えばフォークリフト等の産業車両では,走行時の車両安定性を向上させるため,後輪を支持する車軸が車体に対して揺動可能に取り付けられている。しかし,車体の旋回時において,上記車軸の揺動を自由に行わせた場合には,車体が傾きすぎて却って走行安定性が低下する場合がある。
【0003】そこで,特開平10−287116号公報等に示されているごとく,車軸の揺動を適正な範囲に制御する揺動制御装置が提案されている。この揺動制御装置は,上下方向に揺動可能な車軸の揺動を規制する(ロックする)揺動規制機構を備え,これを,横加速度(横G)及び前輪の空転状態によって制御するよう構成したものである。上記揺動規制機構(揺動規制装置)は,通常は,車軸と車体との間にダンパを介在させておき,そのダンパの伸縮をロックあるいは解除するように構成される。
【0004】この揺動制御装置を用いれば,横Gが所定値以上になった場合に車軸の揺動をロックして車体の傾きを抑制し,かつ,その場合でも,前輪が空転した場合には車軸の揺動ロックを解除して前輪の空転状態から脱することができる。そのため,車軸の揺動規制を最適なタイミングで行うことができ,走行安定性を大幅に向上させることができる。
【0005】
【解決しようとする課題】ところで,揺動可能な車軸を有する産業車両には,種々の種類があり,それぞれ異なった形態が存在する。例えば,後輪車軸の上方スペース,つまり車軸の上方における車体のフレーム又はバッテリー等との間のスペースが小さい場合がある。この場合には,揺動規制機構(揺動規制装置)を構成する上記ダンパを車体と車軸との間に直接介在させることができない。そのため,後輪車軸の上方スペースが小さい産業車両に対しては,上記揺動規制装置を配設することが困難であった。
【0006】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,揺動可能な車軸の上方スペースが小さい場合であっても,容易に配設することができる揺動規制装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,産業車両の車体に対して上下方向に揺動可能に支持された車軸の揺動を規制するための装置であって,伸縮可能状態と伸縮不能状態とを切替可能なダンパと,該ダンパと上記車軸とを連結するリンク機構とよりなり,上記ダンパは,上記車体と上記車軸との間において,その伸縮方向を略水平方向に向けて配置されていると共に,その一端が上記車体に,他端が上記リンク機構を介して上記車軸に連結されており,上記リンク機構は,上記車軸の上下方向の揺動を略水平方向の変位に変換して上記ダンパに伝達するよう構成されていることを特徴とする産業車両の揺動規制装置にある。
【0008】本発明において最も注目すべきことは,上記ダンパを略水平方向に向けて配置してあると共に,上記車軸の上下方向の揺動を略水平方向の変位に変換する上記リンク機構を有していることである。ここで言うところの「略水平方向」とは,厳密な水平方向のみならず,リンク機構を介在させる必要のある程度にダンパが斜めに配置される場合のその伸縮方向も含むものである。
【0009】上記ダンパとしては,例えば復動式の油圧シリンダ等を用いることができる。これにより,上記伸縮可能状態と伸縮不能状態との切替を容易に行うことができる。上記リンク機構は,その一端に作用する上下方向の変位を他端において略水平方向の変位に変換するように構成する。このリンク機構の具体的な構成は,例えば後述するような構成の他,種々の構成が考えられる。
【0010】次に,本発明の作用につき説明する。本発明においては,上記特定の機能を有するリンク機構を介することによって,上記ダンパを略水平方向に配設する。そのため,揺動可能な車軸の上方において,上記ダンパを縦置きできないような小さいスペースしかない場合であっても,上記ダンパを横置き状態で配置することができる。
【0011】また,上記ダンパを横置き状態で配置した場合であっても,上記リンク機構を介在させることにより,従来と同様の揺動規制能力を発揮させることができる。即ち,上記車軸の上下方向の揺動による変位又は応力は,まず上記リンク機構によって受け止められ,その内部において略水平方向の変位又は応力に変換される。そして,略水平方向の変位又は応力は,略水平方向に伸縮方向を向けて配置された上記ダンパに伝達される。
【0012】そのため,上記ダンパの伸縮可能状態と伸縮不能状態とを切り替えることによって,上記リンク機構の動きを抑制することができ,これにより,車軸の上下方向の揺動を制御することができる。つまり,ダンパを伸縮可能状態とすることにより,車軸の揺動を自由な状態に保持することができ,一方,ダンパを伸縮不能状態とすることにより,車軸の揺動を抑制することができる。また,上記ダンパを,従来と同様の横加速度の値や前輪の空転状態等を制御要素として用いて制御することにより,車軸の揺動制御を精度の高いものにすることができる。
【0013】このように,本発明によれば,揺動可能な車軸の上方スペースが小さい場合であっても,容易に配設することができる揺動規制装置を提供することができる。
【0014】次に,請求項2の発明のように,上記リンク機構は,第1〜第3のリンク点を互いに三角形の頂点となる位置に設けてなる第1リンク部材と,2つのリンク点を有する第2リンク部材とよりなり,上記第1リンク部材は,第1リンク点を上記ダンパの上記他端に,第2リンク点を上記車体に,第3リンク点を上記第2リンク部材の一方のリンク点にそれぞれ接続してなり,上記第2リンク部材の他方のリンク点は上記車軸に接続してあることが好ましい。
【0015】この場合には,上記第1リンク部材と第2リンク部材という2つの部品で上記リンク機構を構成することができる。そのため,上記揺動規制装置全体の構造をシンプルかつコンパクトにすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】実施形態例1本発明の実施形態例にかかる産業車両の揺動規制装置につき,図1〜図3を用いて説明する。本例の揺動規制装置1は,図1,図2に示すごとく,産業車両8の車体80に対して上下方向に揺動可能に支持された車軸81の揺動を規制するための装置である。
【0017】図1に示すごとく,伸縮可能状態と伸縮不能状態とを切替可能なダンパ10と,該ダンパ10と上記車軸81とを連結するリンク機構2とよりなる。上記ダンパ10は,上記車体80と上記車軸81との間において,その伸縮方向を略水平方向に向けて配置されていると共に,その一端11が上記車体80に,他端12が上記リンク機構2を介して上記車軸81に連結されている。上記リンク機構2は,上記車軸81の上下方向の揺動を略水平方向の変位に変換して上記ダンパ10に伝達するよう構成されている。
【0018】以下,これを詳説する。本例の産業車両8は,図2に示すごとく,バッテリー駆動式のフォークリフトである。この産業車両8においては,図2,図3に示すごとく,駆動電源であるバッテリー89が,後輪88の車軸81としてのリアアクスルの上方に配設されている。
【0019】上記車軸81としてのリアアクスルは,図1,図3に示すごとく,その中央部に揺動中心810を有しており,これを中心として,その左右端部を上下方向に揺動可能となるように車体80に固定されている。そして,これにより,車軸81の左右端に配設された後輪88は,上下方向に揺動可能に構成されている。
【0020】ところで,図3に示すごとく,本例の産業車両8においては,上記のごとく,車軸81の上方にバッテリー89が配設されており,車軸81の上方スペースが非常に小さい。そのため,図3に示すごとく,車軸81に対して,揺動規制のためのダンパ10を縦置きにして直接配設する従来の方法を採ることはできない。
【0021】そこで,本例では,図1に示すごとく,上記ダンパ10を,上記車体80と上記車軸81との間において,その伸縮方向を略水平方向に向けて配置した。そして,そのダンパ10のシリンダ端部(一端)11を上記車体80のフレーム801に,ロッド112の先端(他端)12を上記リンク機構2を介して上記車軸81に連結した。
【0022】上記ダンパ10(ロックシリンダとも呼ぶ)は,図1に示すごとく,復動式の油圧シリンダより構成した。このダンパ10は,図示しない制御部により制御される油圧回路に接続されており,上記伸縮可能状態と伸縮不能状態を随時切り替えられるよう構成されている。ここで,上記伸縮可能状態とは,ダンパ10内の作動油の出入りを自由にすることにより,ロッド112の伸縮に規制を与えないフリー状態をいう。また,上記伸縮不能状態とは,ダンパ10内に所定の油圧をかけることにより,ロッド112が所定位置に保持されるようにロックした状態をいう。
【0023】上記リンク機構2は,図1に示すごとく,第1〜第3のリンク点211〜213を互いに三角形の頂点となる位置に設けてなる略三角形状の第1リンク部材21と,2つのリンク点221,222を有する棒状の第2リンク部材22とよりなる。
【0024】上記第1リンク部材21は,第1リンク点211をダンパ10の上記他端12に,第2リンク点212を車体80のフレーム802に,第3リンク点213を第2リンク部材22の一方のリンク点221にそれぞれ接続してなる。また,第2リンク部材22は,他方のリンク点222を上記車軸81の揺動伝達部815に接続してある。
【0025】ここで注目すべきことは,図1に示すごとく,上記第1リンクの第1リンク点211と第2リンク点212とを結んだ線Lを,略鉛直な方向に配置してあることである。これにより,第2リンク点212を中心として第1リンク部材21を微小に回動させた場合,第1リンク点211は,ほぼ水平方向に変位するようになる。
【0026】このような構成のリンク機構2を上記ロッド10と車軸81との間に介在させることにより,上記車軸81の揺動を,上記ロッド10によって適宜規制することができる。即ち,図1に示すごとく,車軸81の上下方向の揺動は,車軸81の揺動伝達点815から第2リンク22を介して第1リンク部材21に伝達される。この伝達により,第1リンク部材21においては,車軸81の揺動が第2リンク点212を中心とした回動動作に変化する。そして,第1リンク部材21の回動動作は,上記のごとく,第1リンク点211においては略水平方向の変位としてダンパ10に伝達される。
【0027】そして,ダンパ10が伸縮不能状態である場合には,ダンパ10によって第1リンク部材21の回動が規制され,これにより,第2リンク部材22を介して車軸81の揺動に規制が加えられる。一方,ダンパ10が伸縮可能状態にある場合には,第2リンク部材22の回動が規制されず,車軸81の揺動の自由状態が維持される。
【0028】このように,本例においては,上記リンク機構2を介することによって,ダンパ10を略水平方向に配設する。そのため,揺動可能な車軸81の上方スペースが小さい場合であっても,上記のごとく,ダンパ10を横置き状態で配置することができると共に,上記のごとく,従来と同様の揺動規制能力を発揮させることができる。
【0029】なお,上記ダンパ10は,従来と同様の横加速度(横G)の値や前輪の空転状態等を制御要素を用いて制御することができる。具体的には,上記ダンパ10に連結された油圧回路を制御する上記制御装置を,車体の横Gと前輪空転状態とを制御要素として加えたものとする。この場合には,車軸81の揺動制御を精度の高いものにすることができる。
【0030】実施形態例2本例は,図4に示すごとく,実施形態例1におけるリンク機構2とダンパ10との連結関係を変更した例である。即ち,図4に示すごとく,上記第1リンク部材21は,第1リンク点211を車体のフレーム804に,第2リンク点212をダンパ10の上記他端12に,第3リンク点213を第2リンク部材22の一方のリンク点221にそれぞれ接続してなる。また,第2リンク部材22は,他方のリンク点22を上記車軸81の揺動伝達点815に接続してある。また,ダンパ10の一端11は車体80のフレーム803に接続してある。その他は実施形態例1と同様である。この場合にも実施形態例1と同様の作用効果が得られる。
【0031】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,揺動可能な車軸の上方スペースが小さい場合であっても,容易に配設することができる揺動規制装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成11年8月5日(1999.8.5)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰 (外1名)
【公開番号】 特開2001−47829(P2001−47829A)
【公開日】 平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願番号】 特願平11−222783