トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般

【発明の名称】 車輌の減衰係数制御装置
【発明者】 【氏名】村田 正博

【氏名】鈴木 聡

【要約】 【課題】旋回方向が逆転する状況に於ける車輌の運動性能を向上させる。

【解決手段】車輌の旋回内側に配置されたヒーブ制御用の仮想のショックアブソーバ122F、122R及びロール制御用の仮想のショックアブソーバ124F、1241Rの減衰係数に基づき実際のショックアブソーバの目標減衰係数が演算される(S620〜780)。車輌の横加速度Gyの大きさが大きいときには(S60)、現在の操舵角δ(n)とnサイクル前の操舵角δ(0)との積である判定値Vaの符号に基づき車輌の旋回方向の逆転が判定される(S70、80)。旋回方向の逆転が判定されるとδ(n)の絶対値とδ(0)の絶対値との和である判定値Vbが基準値Vbe以上であるか否かにより旋回方向の逆転が急激であるか否かが判定され(S90、100)、旋回方向の逆転が急激であるときにはヒーブ制御用の仮想のショックアブソーバの減衰係数Cgf及びCgrが所定の時間最大値Cgfmax及びCgrmaxに設定される(S40、50、110、120)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】各車輪に対応して減衰係数可変の実際のショックアブソーバが設けられた車輌の減衰係数制御装置にして、車輌の旋回状態を検出する手段と、前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段と、前記車輌の旋回状態に基づきばね上の重心に対しリフトすると推定される側へ前記ばね上より所定の距離車輌横方向に隔置された仮想位置に前記ばね上の仮想の揺動中心を有すると共に前記仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び前記仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルと、前記車輌の旋回方向の逆転が検出されたときには少なくとも前記第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を増大補正する仮想減衰係数補正手段と、少なくとも前記仮想減衰係数に基づき前記実際のショックアブソーバの目標減衰係数を演算する手段と、前記目標減衰係数に基づき前記実際のショックアブソーバの減衰係数を制御する手段とを有することを特徴とする車輌の減衰係数制御装置。
【請求項2】前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は操舵角を検出し、操舵角の符号に基づき前記車輌の旋回方向の逆転を検出することを特徴とする請求項1に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【請求項3】前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は前記車輌の横加速度を推定し、推定された横加速度の符号に基づき前記車輌の旋回方向の逆転を検出することを特徴とする請求項1に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【請求項4】前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は前記ばね上のロール角加速度を求め、ロール角加速度の符号に基づき前記車輌の旋回方向の逆転を検出することを特徴とする請求項1に記載の車輌の減衰係数制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の車輌の減衰係数制御装置に係り、更に詳細には過渡旋回時の車輌の運動性能を向上させるよう改良された減衰係数制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】各車輪に対応して減衰係数可変のショックアブソーバが設けられた自動車等の車輌の減衰係数制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる出願公開前の特願平10−92675号の明細書及び図面には、車輌の旋回情報を検出する手段と、車体ロール量の変化を求める手段と、車体ロール量の増大過程に於いては旋回内側のショックアブソーバの減衰係数を旋回外側のショックアブソーバの減衰係数よりも相対的に高く制御する手段とを有することを特徴とする車輌の減衰係数制御装置が記載されている。
【0003】この先の提案にかかる減衰係数制御装置によれば、車体ロール量の増大過程に於いては、旋回内側のショックアブソーバの減衰係数が旋回外側のショックアブソーバの減衰係数よりも相対的に高く制御され、これにより下向きに作用する旋回内側のショックアブソーバの減衰力が上向きに作用する旋回外側のショックアブソーバの減衰力よりも相対的に高く制御されるので、全体として車体に作用する下向きの力が増大し、これにより車高を低減して車輌の過渡旋回時に於ける運動性能を向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記先の提案にかかる減衰係数制御装置に於いては、車輌の旋回状態に基づき車体の重心に対しリフトすると推定される側へ車体より所定の距離車輌横方向に隔置された仮想位置に車体の仮想の揺動中心を有すると共に仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルに基づき、各車輪に対応して設けられた減衰係数可変の実際のショックアブソーバの減衰係数が制御されるようになっている。
【0005】しかし上記先の提案にかかる減衰係数制御装置に於いては、第一及び第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数は一定であるため、スラローム走行時の如く車輌の旋回方向が逆転されると、旋回方向が逆転した直後にショックアブソーバの減衰力による車高の低減が十分に行われていない状態にて車体に揺り返しの力が作用し、そのため旋回方向が逆転する状況に於ける車輌の運動性能を必ずしも十分に向上させることができないという問題がある。
【0006】本発明は、仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルに基づき実際のショックアブソーバの減衰係数を制御するよう構成された先の提案にかかる減衰係数制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、旋回方向が逆転した直後に於ける車体のロールを効果的に抑制することにより、旋回方向が逆転する状況に於ける車輌の運動性能を向上させることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち各車輪に対応して減衰係数可変の実際のショックアブソーバが設けられた車輌の減衰係数制御装置にして、車輌の旋回状態を検出する手段と、前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段と、前記車輌の旋回状態に基づきばね上の重心に対しリフトすると推定される側へ前記ばね上より所定の距離車輌横方向に隔置された仮想位置に前記ばね上の仮想の揺動中心を有すると共に前記仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び前記仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルと、前記車輌の旋回方向の逆転が検出されたときには少なくとも前記第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を増大補正する仮想減衰係数補正手段と、少なくとも前記仮想減衰係数に基づき前記実際のショックアブソーバの目標減衰係数を演算する手段と、前記目標減衰係数に基づき前記実際のショックアブソーバの減衰係数を制御する手段とを有することを特徴とする車輌の減衰係数制御装置によって達成される。
【0008】上記請求項1の構成によれば、車輌の旋回状態に基づきばね上の重心に対しリフトすると推定される側へばね上より所定の距離車輌横方向に隔置された仮想位置にばね上の仮想の揺動中心を有すると共に仮想の揺動中心の周りに作用する第一の仮想のショックアブソーバ及び仮想位置にて上下方向に作用する第二の仮想のショックアブソーバを有する車輌モデルを有するので、車輌の過渡旋回時に第二の仮想のショックアブソーバによってばね上の旋回外輪側のリフトが抑制され、これによりばね上の重心が低下されると共に、車輌の旋回方向の逆転が検出されたときには少なくとも第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が増大補正されるので、車輌の旋回方向が逆転した直後に於けるばね上のロールが効果的に抑制され、これにより車輌の旋回方向の逆転に拘わらず第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が一定である場合に比して、車輌の旋回方向の逆転時に於ける車輌の姿勢変化が低減される。
【0009】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は操舵角を検出し、操舵角の符号に基づき前記車輌の旋回方向の逆転を検出するよう構成される(請求項2の構成)。
【0010】上記請求項2の構成によれば、操舵角が検出され、操舵角の符号に基づき車輌の旋回方向の逆転が検出されるので、例えば車輌のヨーレートに基づき車輌の旋回方向の逆転が検出される場合に比して早く旋回方向の逆転が検出され、これにより車輌の旋回方向の逆転時に於ける車輌の姿勢変化が応答遅れなく確実に低減される。
【0011】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は前記車輌の横加速度を推定し、推定された横加速度の符号に基づき前記車輌の旋回方向の逆転を検出するよう構成される(請求項3の構成)。
【0012】上記請求項3の構成によれば、車輌の横加速度が推定され、推定された横加速度の符号に基づき車輌の旋回方向の逆転が検出されるので、例えば車輌の実際の横加速度に基づき車輌の旋回方向の逆転が検出される場合に比して早く旋回方向の逆転が検出され、これにより車輌の旋回方向の逆転時に於ける車輌の姿勢変化が応答遅れなく確実に低減される。
【0013】また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は前記ばね上のロール角加速度を求め、ロール角加速度の符号に基づき前記車輌の旋回方向の逆転を検出するよう構成される(請求項4の構成)。
【0014】上記請求項4の構成によれば、ばね上のロール角加速度が求められ、ロール角加速度の符号に基づき車輌の旋回方向の逆転が検出されるので、例えばばね上のロール角に基づき車輌の旋回方向の逆転が検出される場合に比して早く旋回方向の逆転が検出され、これにより車輌の旋回方向の逆転時に於ける車輌の姿勢変化が応答遅れなく確実に低減される。
【0015】
【課題解決手段の好ましい態様】図5に示されている如く、実際の車輌の二輪モデルは車体110が左右の車輪112L及び112Rにより支持され、車体110と車輪112L及び112Rとの間にはサスペンションスプリング114L及び114Rとショックアブソーバ116L及び116Rとが配設されたものとして表わされる。
【0016】図5に示された実際の車輌モデルに於いて、例えば車輌が左旋回し、車体110に右方への慣性力が作用することにより車体に旋回外方へのロールモーメントMrollが作用したとすると、そのロールモーメントは左右のサスペンションスプリング114L及び114Rのばね力Fsl及びFsrと左右のショックアブソーバ116L及び116Rの減衰力Fal及びFarとにより担持され、車体のロール量の増大過程に於いてはこれらの力によるロール抑制方向のモーメントとロールモーメントMrollとが等しくなるまで車体110が旋回外方へロールする。
【0017】この場合サスペンションスプリング114Lのばね力Fslの増大量とサスペンションスプリング114Rのばね力Fsrの減少量は実質的に互いに等しく、また従来の車輌に於いては旋回時の左右のショックアブソーバの減衰係数は互いに等しい値に制御されるので、左右のショックアブソーバの減衰力Fal及びFarも実質的に互いに等しく、従って車輌の重心118の高さは実質的に変化しない。
【0018】これに対し図6に示されている如く、車体110と左右の車輪112L及び112Rとの間にサスペンションスプリング114L及び114Rのみが配設され、車輌に対し旋回内側に配置され車体110と仮想の車輪120との間にて上下方向の減衰力を発生する一つのショックアブソーバ122と、車体のロール変位を抑制する一つのショックアブソーバ124とが配設された仮想モデルを考えると、ロールモーメントMrollはショックアブソーバ122の減衰力Fasと左右のサスペンションスプリング114L及び114Rのばね力Fsl及びFsrとにより担持され、従来の場合に比して旋回内輪側の車高の増大量が低減されることにより、重心118の高さが低下する。
【0019】従って図5に示された実際の車輌の二輪モデルに於いて図6に示されている如き仮想モデルの制御を達成できれば、車体ロール量の増大過程に於いて車輌の重心118の高さを低下させ、これにより車輌の旋回初期に於ける運動性能を向上させることができる。
【0020】いま図6に示されている如く、左右のサスペンションスプリング114L及び114Rのばね定数をKとし、旋回外輪側のショックアブソーバの減衰係数をCout とし、旋回外輪のストロークをXout とし、旋回内輪側のショックアブソーバ114Lの減衰係数をCinとし、旋回内輪のストロークをXinとし、車輌のトレッドをWとし、車輌の重心118とショックアブソーバ122との間の距離をLとし、ショックアブソーバ122及び124の減衰係数をそれぞれCg 及びCとする。
【0021】また車体110の質量をMとし、車体の上下加速度及びロール角速度をそれぞれXbdd 及びθddとし、旋回外輪及び旋回内輪のストローク速度をそれぞれXoutd及びXind とすると、図6に示された仮想モデルに於ける上下方向の力の釣り合い及び重心118の周りの力の釣り合いよりそれぞれ下記の式1及び式2が成立する。
【0022】
【数1】

【0023】車体のロール運動を減衰させるパラメータとしてCn =WC/2とすると、上記式2は下記の式3の如く表わされる。
【0024】
【数2】

【0025】また図5に示された実際の車輌の二輪モデルに於ける上下方向の力の釣り合い及び重心118の周りの力の釣り合いよりそれぞれ下記の式4及び式5が成立する。
【0026】
【数3】

【0027】上記式1及び式4より下記の式6が成立する。
【0028】
【数4】

【0029】またここでCm =Cn /Lとすると、上記式3及び式5より下記の式7が成立する。
【0030】
【数5】

【0031】ここで図6に示された仮想モデルに於いてショックアブソーバ122により発生される上下力を下記の式8に従ってTと置くと、上記式6〜8より下記の式9〜11が成立する。
【0032】
【数6】

【0033】
【数7】

【0034】式9+式11より旋回内輪のショックアブソーバの減衰係数Cinを以下の如く求めることができる。
【0035】
【数8】

【0036】また上記式12を式9に代入して旋回外輪のショックアブソーバの減衰係数Cout を以下の如く求めることができる。
【0037】
【数9】

【0038】更に上記式12及び式13を整理して旋回内輪及び旋回外輪のショックアブソーバの減衰係数Cin及びCout はそれぞれ下記の式14及び式15の如く表わされる。
【0039】
【数10】

【0040】尚旋回内輪側及び旋回外輪側のショックアブソーバにより発生される減衰力はそれぞれ下記の式16及び式17の如く求められる。
【0041】
【数11】

【0042】また同様の考え方に基づき、車体ロール量の減少過程に於いては、車輌の旋回外側に仮想のショックアブソーバ122及び124が配設された仮想モデルに基づき、旋回内輪側及び旋回外輪側のショックアブソーバの減衰係数Cin及びCout をそれぞれ下記の式18及び式19の如く制御することにより、車輌の重心118の高さを低下させ、車輌の旋回終期に於ける運動性能を向上させることができる。
【0043】
【数12】

【0044】従って本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、車体ロール量の増大過程に於いては旋回内側のショックアブソーバの減衰係数Cin及び旋回外側のショックアブソーバの減衰係数Cout はそれぞれ上記式14及び式15に従って演算されるよう構成される(好ましい態様1)。
【0045】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、車体ロール量の減少過程に於いては旋回外側のショックアブソーバの減衰係数が旋回内側のショックアブソーバの減衰係数よりも高く制御されるよう構成される(好ましい態様2)。
【0046】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様2の構成に於いて、車体ロール量の減少過程に於いては旋回内側のショックアブソーバの減衰係数Cin及び旋回外側のショックアブソーバの減衰係数Cout はそれぞれ上記の式18及び式19に従って演算されるよう構成される(好ましい態様3)。
【0047】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、車輌モデルは前輪側の車輌モデルと後輪側の車輌モデルとよりなるよう構成される(好ましい態様4)。
【0048】また図7に示されている如く、前輪側及び後輪側の車輌モデルについてのL、W、T、Cg 、CをそれぞれLf 及びLr 、Wf 及びWr 、Tf 及びTr 、Cgf及びCgr、Cf 及びCr とし、旋回内側前輪及び旋回外側前輪のストローク速度をそれぞれXfind及びXfoutd とし、旋回内側後輪及び旋回外側後輪のストローク速度をそれぞれXrind及びXroutd とし、Tf 及びTr をそれぞれ下記の式20及び式21により表される値として、車体ロール量の増大過程に於いては旋回内側前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfin 及び旋回外側前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfoutはそれぞれ下記の式22及び式23に従って演算され、旋回内側後輪のショックアブソーバの減衰係数Crin 及び旋回外側後輪のショックアブソーバの減衰係数Croutはそれぞれ下記の式24及び式25に従って演算されることが好ましい。
【0049】
【数13】

【0050】
【数14】

【0051】従って本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、車体ロール量の増大過程に於いては旋回内側前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfin 及び旋回外側前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfoutはそれぞれ上記式22及び式23に従って演算され、旋回内側後輪のショックアブソーバの減衰係数Crin 及び旋回外側後輪のショックアブソーバの減衰係数Croutはそれぞれ上記式24及び式25に従って演算されるよう構成される(好ましい態様5)。
【0052】同様に本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、車輌モデルは前輪側の車輌モデルと後輪側の車輌モデルとよりなるよう構成される(好ましい態様6)。
【0053】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様6の構成に於いて、車体ロール量の減少過程に於いては旋回内側前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfin 及び旋回外側前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfoutはそれぞれ下記の式26及び式27に従って演算され、旋回内側後輪のショックアブソーバの減衰係数Crin 及び旋回外側後輪のショックアブソーバの減衰係数Croutはそれぞれ下記の式28及び式29に従って演算されるよう構成される(好ましい態様7)。
【0054】
【数15】

【0055】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は車輌の旋回方向の逆転及びその度合を検出し、仮想減衰係数補正手段は車輌の旋回方向の逆転が検出され且つその逆転の度合が基準値以上であるときに第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を所定の時間増大補正するよう構成される(好ましい態様8)。
【0056】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様8の構成に於いて、仮想減衰係数補正手段は車輌の旋回方向の逆転の度合に応じて第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数を増大補正するよう構成される(好ましい態様9)。
【0057】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様8の構成に於いて、車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は予め設定された基準時間内の車輌の旋回方向を示す状態量の最大値及び最小値を求め、最大値と最小値との積の符号に基づき車輌の旋回方向の逆転を判定するよう構成される(好ましい態様10)。
【0058】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様10の構成に於いて、基準時間は実質的にばね上のロール共振周期の1/2に設定される(好ましい態様11)。
【0059】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様10の構成に於いて、車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は車輌の旋回方向の逆転が判定された場合に最大値の絶対値と最小値の絶対値との和を車輌の旋回方向の逆転の度合として演算するよう構成される(好ましい態様12)。
【0060】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3の構成に於いて、車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は車速及び操舵角に基づき車輌の横加速度を推定するよう構成される(好ましい態様13)。
【0061】また本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4の構成に於いて、車輌の旋回方向の逆転を検出する手段は各車輪に対応する部位に於けるばね上の上下加速度を検出し、左右の各車輪に対応する部位に於けるばね上の上下加速度に基づきばね上のロール角加速度を求めるよう構成される(好ましい態様14)。
【0062】
【発明の実施の形態】以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0063】第一の実施形態図1は本発明による減衰係数制御装置の第一の好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【0064】図1に於て、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置16によりタイロッド18L及び18Rを介して操舵される。
【0065】ばね下としての各車輪10FL〜10RRとばね上としての車体20との間にはそれぞれ減衰係数可変式のショックアブソーバ22FL〜22RRが配設されており、各ショックアブソーバの減衰係数Ci(i=fl、fr、rl、rr)は後述の如く車輌の旋回時に電気式制御装置24により制御される。
【0066】電気式制御装置24には車高センサ26FL、26FR、26RL、26RRより車輪10FL〜10RRのストロークXi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号、操舵角センサ28より操舵角δを示す信号、及び横加速度センサ30より車体の横加速度Gyを示す信号が入力される。
【0067】尚図には詳細に示されていないが、電気式制御装置24は例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを含んでいる。また車高センサ26FL〜26RRは車輪のバウンド方向を正として車輪のストロークXiを検出し、操舵角センサ28及び横加速度センサ30は車輌の左旋回方向を正として横加速度を検出する。
【0068】電気式制御装置24は、それぞれ図7(A)及び(B)に示された前輪側及び後輪側の車輌モデルに基づきショックアブソーバ22FL〜22RRの減衰係数を制御する。特にこの実施形態の電気式制御装置24は、後述の如く図2及び図3に示されたフローチャートに従って横加速度Gyに基づき車輌が過渡旋回状態にあるか否かを判別し、車輌が定常旋回状態にあるときには各車輪のショックアブソーバの減衰係数Ciを予め設定されたハードの減衰係数Chighに制御し、車輌が過渡旋回状態にあっても、車体のロール量が増大する過程に於いては旋回内側のショックアブソーバの減衰係数が旋回外側の減衰係数よりも高くなるよう制御し、逆に車体のロール量が減少する過程に於いては旋回外側のショックアブソーバの減衰係数が旋回内側の減衰係数よりも高くなるよう各ショックアブソーバの減衰係数を制御し、これにより過渡旋回時に於ける車高を低下させ車体の重心を低下させる。
【0069】また電気式制御装置24は、現在の操舵角δ(n)と予め設定された基準時間前の操舵角δ(0)との積の符号に基づき車輌の旋回方向が逆転したか否かを判定し、車輌の旋回方向が逆転した旨の判定が行われたときには現在の操舵角δ(n)の絶対値と基準時間前の操舵角δ(0)の絶対値との和に基づき車輌の旋回方向の逆転の度合を判定し、車輌の旋回方向の逆転の度合が高いときには第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrを所定の時間それらの最大値Cgfmax及びCgrmaxに設定する。
【0070】次に図2及び図3に示されたフローチャートを参照して図示の第一の実施形態に於ける減衰係数の制御について説明する。尚図2及び図3に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。また制御の開始時にはステップ10に先立ちフラグFが0にリセットされる。
【0071】まずステップ10に於いては各車輪のストロークXiを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いてはmを1、2、…、n−1、n(nは正の一定の整数)として、過去のnサイクルに於いて後述のステップ30により演算されRAMに記憶された操舵角δ(m)がそれぞれδ(m-1)に書き換えられ、ステップ30に於いては操舵角センサ28により検出された操舵角δが現在の操舵角δ(n)としてRAMに記憶される。尚mは操舵角δ(0)を求めるための基準時間が実質的に車体のロール共振周期の1/2になるよう設定される。
【0072】ステップ40に於いてはフラグFが1であるか否かの判別、即ち第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrをそれらの最大値Cgfmax及びCgrmaxに設定したショックアブソーバの制御が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ60へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ50へ進む。
【0073】ステップ50に於いては第二の仮想のショックアブソーバの減衰係数をそれらの最大値に制御する所定の時間(正の定数)が経過したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ120へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ60へ進む。
【0074】ステップ60に於いては車輌の横加速度Gyの絶対値が基準値Gye(正の定数)以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ130へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ70に於いて車輌の旋回方向の逆転を判定するための判定値Vaがδ(n)とδ(0)との積として下記の式30に従って演算される。
Va=δ(n)δ(0) ……(30)
【0075】ステップ80に於いては判定値Vaが負であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向が逆転したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ130へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ90に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合を判定するための判定値Vbが下記の式31に従って演算される。
Vb=|δ(n)|+|δ(0)| ……(31)
【0076】ステップ100に於いては判定値Vbが基準値Vbe(正の定数)以上であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向の逆転が急激であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ110に於いてフラグFが1にセットされ、ステップ120に於いて減衰係数Cgf及びCgrがそれぞれ最大値Cgfmax及びCgrmaxに設定され、否定判別が行われたときにはステップ130に於いてフラグFが0にリセットされ、ステップ140に於いて減衰係数Cgf及びCgrがそれぞれ予め設定された標準値Cgfs及びCgrsに設定される。
【0077】ステップ620に於いては横加速度Gy の絶対値が制御のしきい値としての基準値Gyo(正の定数)を越えているか否かの判別、即ち車輪の旋回時に於けるショックアブソーバの減衰係数の制御が必要であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ640へ進み、否定判別が行われたときにはステップ630へ進む。
【0078】ステップ630に於いては各車輪のショックアブソーバの減衰係数が車輌の非旋回時に於ける通常の制御ルーチンに従って設定され、しかる後ステップ780へ進む。尚この場合の減衰係数の制御は当技術分野に於いて公知の任意の要領にて行われてよい。
【0079】ステップ640に於いては横加速度Gy の時間微分値ΔGy が演算されると共に、時間微分値ΔGy の絶対値がその基準値ΔGyo(正の定数)を越えているか否かの判別、即ち車輌が過渡旋回状態にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ660へ進み、否定判別が行われたときはステップ650に於いて各車輪のショックアブソーバの減衰係数Ci が予め設定されたハードの減衰係数Chighに設定された後ステップ780へ進む。
【0080】ステップ660に於いては各車輪のストロークXi の時間微分値(ストローク速度)Xid(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ670に於いては横加速度Gy が正であるか否かの判別、即ち車輌が左旋回状態にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ680へ進み、否定判別が行われたときにはステップ690へ進む。
【0081】ステップ680に於いては旋回内側前輪のストローク速度Xfindが左前輪のストローク速度Xfld に設定され、旋回外側前輪のストローク速度Xfoutd が右前輪のストローク速度Xfrd に設定され、旋回内側後輪のストローク速度Xrindが左後輪のストローク速度Xrld に設定され、旋回外側後輪のストローク速度Xroutd が右後輪のストローク速度Xrrd に設定される。
【0082】同様にステップ690に於いては旋回内側前輪のストローク速度Xfindが右前輪のストローク速度Xfrd に設定され、旋回外側前輪のストローク速度Xfoutdが左前輪のストローク速度Xfld に設定され、旋回内側後輪のストローク速度Xrindが右後輪のストローク速度Xrrd に設定され、旋回外側後輪のストローク速度Xroutd が左後輪のストローク速度Xrld に設定される。
【0083】ステップ700に於いてはsignGy を横加速度Gy の符号として横加速度の時間微分値ΔGy とsignGy との積が正であるか否かの判別、即ち車輌の旋回に起因する横加速度の大きさが増大過程にあり車体のロール量が増大する状況にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときはステップ710に於いて旋回内側前輪、旋回外側前輪、旋回内側後輪、旋回外側後輪のショックアブソーバの減衰係数Cj (j=fin 、fout、rin 、rout)が前記式22〜25に従って演算され、否定判別が行われたときにはステップ720に於いて各ショックアブソーバの減衰係数Cj が前記式26〜29に従って演算される。
【0084】ステップ730に於いては左前輪のショックアブソーバの減衰係数Cflが旋回内側前輪の減衰係数Cfin に設定され、右前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfrが旋回外側前輪の減衰係数Cfoutに設定され左後輪のショックアブソーバの減衰係数Crlが旋回内側後輪の減衰係数Crin に設定され、右後輪のショックアブソーバの減衰係数Crrが旋回外側後輪の減衰係数Croutに設定される。
【0085】同様にステップ740に於いては横加速度の時間微分値ΔGy とsignGy との積が正であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときはステップ750に於いて旋回内側前輪、旋回外側前輪、旋回内側後輪、旋回外側後輪のショックアブソーバの減衰係数Cj が前記式22〜25に従って演算され、否定判別が行われたときにはステップ760に於いて各ショックアブソーバの減衰係数Cj が前記式26〜29に従って演算される。
【0086】ステップ770に於いては左前輪のショックアブソーバの減衰係数Cflが旋回外側前輪の減衰係数Cfoutに設定され、右前輪のショックアブソーバの減衰係数Cfrが旋回内側前輪の減衰係数Cfin に設定され、左後輪のショックアブソーバの減衰係数Crlが旋回外側後輪の減衰係数Croutに設定され、右後輪のショックアブソーバの減衰係数Crrが旋回内側後輪の減衰係数Crin に設定される。
【0087】ステップ780に於いては各ショックアブソーバの減衰係数がステップ630、650、730又は770に於いて設定された減衰係数になるよう制御され、しかる後ステップ10へ戻る。
【0088】かくして図示の第一の実施形態によれば、ステップ620に於いて車輪の旋回時に於けるショックアブソーバの減衰係数の制御が必要であるか否かの判別が行われ、ステップ640に於いて車輌が過渡旋回状態にあるか否かの判別が行われ、ステップ670に於いて車輌の旋回方向が判定され、ステップ660、680及び690に於いて各車輪のストローク速度が求められ、ステップ700及び740に於いて車体のロール量が増大する過程にあるか否かの判別が行われ、車体のロール量が増大する過程にあるときにはステップ710及び750に於いて各ショックアブソーバの減衰係数Cj が式22〜25に従って演算され、車体のロール量が減少する過程にあるときにはステップ720及び760に於いて各ショックアブソーバの減衰係数Cj が式26〜29に従って演算される。
【0089】従って図示の第一の実施形態によれば、車輌が車体のロール量が増大する過渡旋回状態にあるときには、旋回内側のショックアブソーバの減衰係数が旋回外側の減衰係数よりも高くなるよう各ショックアブソーバの減衰係数が制御され、逆に車輌が車体のロール量が減少する過渡旋回状態にあるときには、旋回外側のショックアブソーバの減衰係数が旋回内側の減衰係数よりも高くなるよう各ショックアブソーバの減衰係数が制御されるので、車高を低下させ車体の重心を低下させて過渡旋回時に於ける車輌の運動性能を向上させることができる。
【0090】また図示の第一の実施形態によれば、左右前輪のショックアブソーバの減衰係数及び左右後輪のショックアブソーバの減衰係数は相互に独立して制御されるので、例えば前記式20〜29に於けるCgf及びCgr、Cf 及びCr、Lf 及びLr、Wf 及びWrを適宜に設定することにより、車輌の過渡旋回時に於ける車体の前後方向の姿勢を制御し、例えば旋回初期に於ける車体のノーズダイブを低減したり、旋回終期に於ける車体のノーズリフトを低減したりすることができる。
【0091】また図示の第一の実施形態によれば、車体ロール量が増大過程又は減少過程にあるか否かの判定は車体の横加速度Gy に基づき行われるので、例えば車高センサ26FL〜26RRにより検出される各輪のストロークXi に基づき車体の実際のロール量が演算され、その実際のロール量に基づき車体ロール量が増大過程又は減少過程にあるか否かが判定される場合に比して応答性よく各ショックアブソーバの減衰係数を制御することができる。
【0092】尚図3に示されたステップ620〜780は第一乃至第三の実施形態に於いて共通であるので、以上の各作用効果は後述の第二及び第三の実施形態に於いても同様に得られる。
【0093】特に図示の第一の実施形態によれば、ステップ60に於いて車輌の横加速度Gyの大きさが大きい状況であるか否かの判別が行われ、車輌の横加速度Gyの大きさが大きい状況であるときにはステップ70に於いて現在の操舵角δ(n)とnサイクル前の操舵角δ(0)との積として車輌の旋回方向の逆転を判定するための判定値Vaが演算され、ステップ80に於いて判定値Vaの符号に基づき車輌の旋回方向が逆転したか否かの判別が行われる。
【0094】そして車輌の旋回方向が逆転した旨の判別が行われたときにはステップ90に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合を判定するための判定値Vbが操舵角δ(n)の絶対値と操舵角δ(0)の絶対値との和として演算され、ステップ100に於いて判定値Vbが基準値Vbe以上であるか否かの判別により車輌の旋回方向の逆転が急激であるか否かの判別が行われ、車輌の旋回方向の逆転が急激であるときにはステップ40、50、110、120に於いて第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrが所定の時間それらの最大値Cgfmax及びCgrmaxに設定される。
【0095】従って図示の第一の実施形態によれば、車輌の旋回方向が逆転し車体のロールの揺り返しが生じ易い状況に於いて旋回内輪側の車体の上昇を抑制する仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrが所定の時間増大されるので、車輌の旋回方向が逆転した状況に於いても減衰係数Cgf及びCgrが一定である場合に比して車体のロールを確実に抑制することができる。
【0096】例えば図4に示されている如く、時点t1に於いて運転者により左旋回方向の操舵が開始され、時点t2に於いて車輌の横加速度Gyが上昇し始め、時点t3、t5、t8に於いて操舵方向が反転されることにより、急激な切り返し操舵が繰り返し行われるスラローム走行の場合について考える。
【0097】車輌の旋回方向の逆転に拘わらず第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrが一定である場合には、車輌の横加速度Gyがピーク値になった時点より時点t4までの間に於いてステップ620の判定が否定判別になり車輌の重心の低下が行われないことによる車高の上昇変化及び車体の揺り返しに起因して、図4に於いて破線にて示されている如く時点t4以降に於ける車体のロール角が大きくなる。
【0098】これに対し図示の第一の実施形態によれば、時点t4の前後に於いて第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrがそれぞれ最大値Cgfmax及びCgrmaxに設定されるので、図4に於いて実線にて示されている如くこれらの減衰係数が一定である場合(図4の破線)に比して車輌の旋回方向が逆転された後の車体のロールを確実に低減することができる。
【0099】また図示の第一の実施形態によれば、車輌の旋回方向が逆転した旨の判定が行われた時点より所定の時間が経過するまで第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrがそれぞれ最大値Cgfmax及びCgrmaxに設定された状態に維持されるので、図4に於いて実線にて示されている如く、所定の時間が経過する前に車輌の旋回方向が逆転される場合に於ける二回目の旋回方向の逆転以降(時点t7以降)の第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rによる車高低減作用を高くして車輌の重心高さを効果的に低下させ、これにより急激な切り返し操舵が繰り返し行われる場合に於ける車輌の運動性能を向上させることができる。
【0100】また図示の第一の実施形態によれば、ステップ70及び80に於いて車輌の旋回方向の逆転が判定されるだけでなく、ステップ90及び100に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合が判定されるので、車輌の旋回方向の逆転の度合が判定されない場合に比して、車輌の旋回方向の逆転の度合が小さい状況に於いて減衰係数Cgf及びCgrが不必要に増大されることを確実に防止し、これにより車輌の乗り心地性の悪化を確実に防止することができる。
【0101】更に図示の第一の実施形態によれば、車輌の旋回方向の逆転は操舵角に基づき判定されるので、例えばヨーレートセンサにより検出される車輌のヨーレートや操舵輪の車輪速度に基づき演算される車輌のヨーレートに基づいて車輌の旋回方向の逆転が判定される場合に比して、応答遅れなく確実に車輌の旋回方向逆転時の車体のロールを低減することができる。
【0102】尚図示の第一の実施形態に於いては、減衰係数Cgf及びCgrが増大補正される所定の時間は一定であるが、この時間は例えば判定値Vbが大きいほど長くなるよう判定値Vbに応じて可変設定されてもよい。
【0103】第二の実施形態図8は本発明による減衰係数制御装置の第二の好ましい実施形態に於ける減衰係数制御ルーチンの前半を示すフローチャートである。
【0104】この実施形態のステップ210に於いては各車輪のストロークXiを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ220に於いてはmを1、2、…、n−1、n(nは正の一定の整数)として、過去のnサイクルに於いて後述のステップ230により演算されRAMに記憶された推定横加速度Gyh(m)がそれぞれGyh(m-1)に書き換えられ、ステップ230に於いては操舵角δ及び車速Vに基づき現在の推定横加速度Gyh(n)が演算されると共にRAMに記憶される。
【0105】ステップ240に於いては車輌の横加速度Gyの絶対値が基準値Gye(正の定数)以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ310へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ250へ進む。
【0106】ステップ250に於いてはn個の推定横加速度Gyh(0)〜Gyh(n)のうちの最大値Gyhmax及び最小値Gyhminが決定され、ステップ260に於いては車輌の旋回方向の逆転を判定するための判定値Vaが最大値Gyhmaxと最小値Gyhminとの積として下記の式32に従って演算される。
Va=GyhmaxGyhmin ……(32)
【0107】ステップ270に於いては判定値Vaが負であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向が逆転したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ310へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ280に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合を判定するための判定値Vbが下記の式33に従って演算される。
Vb=|Gyhmax|+|Gyhmin| ……(33)
【0108】ステップ290に於いては判定値Vbが基準値Vbe(正の定数)以上であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向の逆転が急激であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ300に於いてタイマのカウント値Tmが初期値Tmc(正の一定の整数)に設定された後ステップ340へ進み、否定判別が行われたときにはステップ310へ進む。
【0109】ステップ310に於いてはタイマのカウント値Tmが1デクリメントされ、ステップ320に於いてはタイマのカウント値Tmが負の値であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ340へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ330に於いてカウント値Tmが0に設定された後ステップ340へ進む。
【0110】ステップ340に於いてはタイマのカウント値Tmが正の値であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ350に於いて図9に示されたグラフに対応するマップより減衰係数Cgf及びCgrが演算された後ステップ620へ進み、否定判別が行われたときにはステップ360に於いて減衰係数Cgf及びCgrがそれぞれ予め設定された標準値Cgfs及びCgrsに設定された後ステップ620へ進む。
【0111】かくして図示の第二の実施形態によれば、ステップ240に於いて車輌の横加速度Gyの大きさが大きい状況であるか否かの判別が行われ、車輌の横加速度Gyの大きさが大きい状況であるときにはステップ250及び260に於いてnサイクル前より現在までのn個の推定横加速度Gyh(0)〜Gyh(n)のうちの最大値Gyhmaxと最小値Gyhminとの積として車輌の旋回方向の逆転を判定するための判定値Vaが演算され、ステップ270に於いて判定値Vaの符号に基づき車輌の旋回方向が逆転したか否かの判別が行われる。
【0112】そして車輌の旋回方向が逆転した旨の判別が行われたときにはステップ280に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合を判定するための判定値Vbが最大値Gyhmaxの絶対値と最小値Gyhminの絶対値との和として演算され、ステップ290に於いて判定値Vbが基準値Vbe以上であるか否かの判別により車輌の旋回方向の逆転が急激であるか否かの判別が行われ、車輌の旋回方向の逆転が急激であるときにはステップ300〜350に於いて判定値Vbが大きいほど大きくなるよう初期値Tmcに対応する所定の時間に亘り第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrが判定値Vbに応じて可変設定される。
【0113】従って図示の第二の実施形態によれば、車輌の旋回方向が逆転し車体のロールの揺り返しが生じ易い状況に於いて旋回内輪側の車体の上昇を抑制する仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrが車輌の旋回方向の逆転の度合が高いほど高くなるよう制御されるので、車輌の旋回方向が逆転した状況に於いても減衰係数Cgf及びCgrが一定である場合に比して車体のロールを確実に抑制することができると共に、車体のロールの揺り返しの程度に応じて実際のショックアブソーバの減衰係数を最適に制御することができる。
【0114】また図示の第二の実施形態によれば、減衰係数Cgf及びCgrはステップ340に於いて肯定判別が行われる限り増大補正され、またステップ290に於いて肯定判別が行われる限り初期値Tmcに対応する所定の時間が延長更新されるので、減衰係数Cgf及びCgrが一定の時間増大補正される場合に比して時間的にも過不足なく減衰係数Cgf及びCgrを増大補正することができ、また第一の実施形態の場合と同様、急激な切り返し操舵が繰り返し行われる場合に於ける車輌の重心高さを低減することができ、このことによっても車輌の運動性能を向上させることができる。
【0115】また図示の第二の実施形態に於いても、ステップ250〜270に於いて車輌の旋回方向の逆転が判定されるだけでなく、ステップ280及び290に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合が判定されるので、車輌の旋回方向の逆転の度合が判定されない場合に比して、車輌の旋回方向の逆転の度合が小さい状況に於いて減衰係数Cgf及びCgrが不必要に増大されることを確実に防止し、これにより車輌の乗り心地性の悪化を確実に防止することができる。
【0116】また図示の第二の実施形態によれば、車輌の旋回方向の逆転は車輌の推定横加速度に基づき判定されるので、例えば横加速度センサにより検出される車輌の横加速度に基づいて車輌の旋回方向の逆転が判定される場合に比して、応答遅れなく確実に車輌の旋回方向逆転時の車体のロールを低減することができる。
【0117】尚車速及び操舵角に基づき推定される車輌のヨーレートや操舵輪の車輪速度に基づき演算される車輌のヨーレートに基づいて車輌の旋回方向の逆転が判定されてもよい。
【0118】また図示の第二の実施形態に於いては、ステップ300に於いてタイマの初期値Tmcは一定であるが、判定値Vbが大きいほど所定の時間が長くなるよう初期値Tmcは判定値Vbに応じて可変設定されてもよい。
【0119】第三の実施形態図10及び図11はそれぞれ本発明による減衰係数制御装置の第三の好ましい実施形態に於ける減衰係数制御ルーチンの前段部分及び中段部分を示すフローチャートである。
【0120】尚図には示されていないが、この第三の実施形態の電気式制御装置には、横加速度センサ30により検出された車体の横加速度Gyを示す信号に加えて、各車輪に対応して車体に設けられた上下加速度センサより車体の上下加速度Gbi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。
【0121】この実施形態の減衰係数制御ルーチンのステップ410に於いては各車輪のストロークXiを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ415に於いてはmを1、2、…、n−1、n(nは正の一定の整数)として、過去のnサイクルに於いて後述のステップ420により演算されRAMに記憶された前輪側の車体のロール角加速度Grf(m)がそれぞれGrf(m-1)に書き換えられ、ステップ420に於いては上下加速度センサにより検出された左右前輪に対応する位置の車体の上下加速度Gbfr及びGbflに基づき下記の式34に従って現在の前輪側の車体のロール角加速度Grf(n)が演算される。
Grf(n)=Gbfl−Gbfr ……(34)
【0122】ステップ425に於いてはフラグFfが1であるか否かの判別、即ち前輪側の第二の仮想のショックアブソーバ122Fの減衰係数Cgfをその最大値Cgfmaxに設定したショックアブソーバの制御が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ435へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ430へ進む。
【0123】ステップ430に於いては第二の仮想のショックアブソーバ122Fの減衰係数をその最大値に制御する所定の時間(正の定数)が経過したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ470へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ435へ進む。
【0124】ステップ435に於いては車輌の横加速度Gyの絶対値が基準値Gye(正の定数)以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ475へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ440に於いてn個の前輪側の車体のロール角加速度Grf(0)〜Grf(n)のうちの最大値Grfmax及び最小値Grfminが決定され、ステップ445に於いては車輌の旋回方向の逆転を判定するための判定値Vafが最大値Grfmaxと最小値Grfminとの積として下記の式35に従って演算される。
Vaf=GrfmaxGrfmin ……(35)
【0125】ステップ450に於いては判定値Vafが負であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向が逆転したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ475へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ455に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合を判定するための判定値Vbfが下記の式36に従って演算される。
Vbf=|Grfmax|+|Grfmin| ……(36)
【0126】ステップ460に於いては判定値Vbfが基準値Vbfe(正の定数)以上であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向の逆転が急激であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ465に於いてフラグFfが1にセットされ、ステップ470に於いて減衰係数Cgfが最大値Cgfmaxに設定され、否定判別が行われたときにはステップ475に於いてフラグFfが0にリセットされ、ステップ480に於いて減衰係数Cgfが予め設定された標準値Cgfsに設定される。
【0127】同様に、ステップ515に於いてはmを1、2、…、n−1、n(nは正の一定の整数)として、過去のnサイクルに於いて後述のステップ520により演算されRAMに記憶された後輪側の車体のロール角加速度Grr(m)がそれぞれGrr(m-1)に書き換えられ、ステップ520に於いては上下加速度センサにより検出された左右後輪に対応する位置の車体の上下加速度Gbrr及びGbrlに基づき下記の式38に従って現在の後輪側の車体のロール角加速度Grr(n)が演算される。
Grr(n)=Gbrl−Gbrr ……(38)
【0128】ステップ525に於いてはフラグFrが1であるか否かの判別、即ち後輪側の第二の仮想のショックアブソーバ122Rの減衰係数Cgrをその最大値Cgrmaxに設定したショックアブソーバの制御が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ535へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ530へ進む。
【0129】ステップ530に於いては第二の仮想のショックアブソーバ122Rの減衰係数をその最大値に制御する所定の時間(正の定数)が経過したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ570へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ535へ進む。
【0130】ステップ535に於いては車輌の横加速度Gyの絶対値が基準値Gye(正の定数)以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ575へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ540に於いてn個の後輪側の車体のロール角加速度Grr(0)〜Grr(n)のうちの最大値Grrmax及び最小値Grrminが決定され、ステップ545に於いては車輌の旋回方向の逆転を判定するための判定値Varが最大値Grfmaxと最小値Grfminとの積として下記の式39に従って演算される。
Var=GrrmaxGrrmin ……(39)
【0131】ステップ550に於いては判定値Varが負であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向が逆転したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ575へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ555に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合を判定するための判定値Vbrが下記の式40に従って演算される。
Vbr=|Grrmax|+|Grrmin| ……(40)
【0132】ステップ560に於いては判定値Vbrが基準値Vbre(正の定数)以上であるか否かの判別、即ち車輌の旋回方向の逆転が急激であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ565に於いてフラグFrが1にセットされ、ステップ570に於いて減衰係数Cgrが最大値Cgrmaxに設定された後ステップ620へ進み、否定判別が行われたときにはステップ575に於いてフラグFrが0にリセットされ、ステップ580に於いて減衰係数Cgrが予め設定された標準値Cgrsに設定された後ステップ620へ進む。
【0133】かくして図示の第三の実施形態によれば、ステップ435に於いて車輌の横加速度Gyの大きさが大きい状況であるか否かの判別が行われ、車輌の横加速度Gyの大きさが大きい状況であるときにはステップ440及び445に於いてnサイクル前より現在までのn個の前輪側の車体のロール角加速度Grf(0)〜Grf(n)のうちの最大値Grfmaxと最小値Grfminとの積として車輌の旋回方向の逆転を判定するための判定値Vafが演算され、ステップ450に於いて判定値Vafの符号に基づき車輌の旋回方向が逆転したか否かの判別が行われる。
【0134】そして車輌の旋回方向が逆転した旨の判別が行われたときにはステップ455に於いて車輌の旋回方向の逆転の度合を判定するための判定値Vbfが最大値Grfmaxの絶対値と最小値Grfminの絶対値との和として演算され、ステップ460に於いて判定値Vbfが基準値Vbfe以上であるか否かの判別により車輌の旋回方向の逆転が急激であるか否かの判別が行われ、車輌の旋回方向の逆転が急激であるときにはステップ465及び470又はステップ425、430、470に於いて前輪側の第二の仮想のショックアブソーバ122Fの減衰係数Cgfが所定の時間その最大値Cgfmaxに設定される。
【0135】また車輌の旋回方向が逆転しその逆転が急激であるときには、ステップ415〜480にそれぞれ対応するステップ515〜580により、後輪側の第二の仮想のショックアブソーバ122Rの減衰係数Cgrが所定の時間その最大値Cgrmaxに設定される。
【0136】従って図示の第三の実施形態によれば、車輌の旋回方向が逆転し車体のロールの揺り返しが生じ易い状況に於いて旋回内輪側の車体の上昇を抑制する仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrが所定の時間増大されるので、車輌の旋回方向が逆転した状況に於いても減衰係数Cgf及びCgrが一定である場合に比して車体のロールを確実に抑制することができ、また急激な切り返し操舵が繰り返し行われる場合に於ける車輌の重心高さを低減することができ、このことによっても車輌の運動性能を向上させることができる。
【0137】また図示の第三の実施形態によれば、車輌の旋回方向の逆転は各車輪に対応する部位の車体の上下加速度Gbiより演算される車体のロール角加速度に基づき判定されるので、例えば車高センサ26FL〜26RRにより検出される車輪のストロークXiに基づき演算される車体のロール角に基づいて車輌の旋回方向の逆転が判定される場合に比して、応答遅れなく確実に車輌の旋回方向逆転時の車体のロールを低減することができる。
【0138】尚車高センサ26FL〜26RRにより検出される車輪のストロークXiに基づき演算される車体のロール角、ロールレートセンサにより検出される車体のロールレートの微分値に基づき演算される車体のロール角加速度、車体のロールレートの積分値に基づき演算される車体のロール角に基づいて車輌の旋回方向の逆転が判定されてもよい。
【0139】また図示の第三の実施形態に於いては、減衰係数Cgf及びCgrが増大補正される所定の時間は第一の実施形態の場合と同様一定であるが、この時間は例えば判定値Vbが大きいほど長くなるよう判定値Vbに応じて可変設定されてもよい。
【0140】以上に於ては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0141】例えば上述の各実施形態に於いては、車体ロール量の増大過程に於いては旋回内側のショックアブソーバの減衰係数が旋回外側のショックアブソーバの減衰係数よりも相対的に高く制御され、逆に車体ロール量の減少過程に於いては旋回外側のショックアブソーバの減衰係数が旋回内側のショックアブソーバの減衰係数よりも高く制御されるようになっているが、一般に車体ロール量の減少過程(旋回終期)に於いて車輌の挙動が不安定になる虞れは車体ロール量の増大過程(旋回初期)に比して低いので、車体ロール量の減少過程に於いて旋回外側のショックアブソーバの減衰係数を旋回内側のショックアブソーバの減衰係数よりも高くする制御が省略されてもよい。
【0142】具体的にはステップ720及び760に於ける減衰係数Cj の演算が省略され、その代わりに各ショックアブソーバの減衰係数Ci が例えばステップ650の場合と同様ハードの減衰係数Chighに設定され、しかる後ステップ780へ進むよう修正されてもよい。
【0143】また上述の各実施形態に於いては、車輌の旋回方向の判定は車体の横加速度Gyの符号に基づき判定されるようになっているが、例えばKhをスタビリティファクタとし、Rgをステアリングギヤ比とし、Hをホイールベースとして、図1に示された操舵角センサ28により検出される操舵角δ及び図1には示されていない車速センサにより検出される車速Vに基づき、下記の式41に基づき車輌の横加速度Gysが推定され、その推定された横加速度に基づき行われてもよい。
Gys=V2δ/[(1+Kh V2)Rg H] ……(41)
【0144】同様に、車速及び操舵角に基づき車輌のヨーレートγhが推定され、その符号に基づき車輌の旋回方向が判定されてもよい。尚かくして車体の推定横加速度Gys又は推定ヨーレートγhに基づき車輌の旋回方向が判定される場合には、例えばカウンタステアの場合の如く判定される車輌の旋回方向が車輌の実際の旋回方向とは逆になる場合があるので、車体の推定横加速度Gys又は推定ヨーレートγhに基づく旋回方向の判定と車体の実際の横加速度Gy又は左右の操舵輪の車輪速度に基づき推定されるヨーレートγhに基づく旋回方向の判定とが行われ、両者の判定が異なるときには後者の判定が採用されるよう修正されてもよい。
【0145】また上述の各実施形態に於いては、車体の横加速度Gyの時間微分値ΔGyの符号に基づき車体ロール量が増大過程又は減少過程にあるか否かの判定が行われるようになっているが、この判定は例えば上記の式41に従って演算される推定横加速度Gysに基づき行われてもよく、また車高センサ26FL〜26RRにより検出されるストロークXiに基づき演算される車体のロールレートの符号に基づき行われてもよい。またこの場合ロールレートは図1には示されていないロールレートセンサにより検出されてもよい。
【0146】また上述の各実施形態に於いては、各車輪のストローク速度Xidは車高センサ26FL〜26RRの検出結果に基づき演算されるようになっているが、各車輪のストローク速度は車体に設けられた上下加速度センサ(図示せず)により検出される車体の上下加速度Gbiに基づきオブザーバにより推定され、車高センサが省略されてもよい。
【0147】また上述の第二及び第三の実施形態に於いては、各仮想のショックアブソーバの基本の減衰係数Cgfs、Cgrs、Cfs、Crs(標準値)は一定であるが、これらの減衰係数はばね上のロール運動状態量、ばね上のヒーブ運動状態量、ばね上のピッチ運動状態量、ばね上の加減速度、ばね上の質量、ばね上の振動状態量、ばね下の振動状態量の如き車輌の状態量に応じて可変設定されてもよい。
【0148】また上述の第一の実施形態に於いては、現在の操舵角δ(n)及びnサイクル前の操舵角δ(0)に基づき車輌の旋回方向の逆転及びその度合が判定されるようになっているが、第二及び第三の実施形態の場合と同様、nサイクル前より現在までのn個の操舵角δ(0)〜δ(n)のうちの最大値δmax及び最小値δminに基づき車輌の旋回方向の逆転及びその度合が判定されてもよい。
【0149】また上述の第一及び第三の実施形態に於いては、車輌の旋回方向が逆転されその度合が高いときには減衰係数Cgf及びCgrがそれぞれ最大値Cgfmax及びCgrmaxに増大補正されるようになっているが、上述の第二の実施形態の場合と同様、減衰係数Cgf及びCgrは判定値Vbに応じて可変設定されてもよい。
【0150】更に上述の第一乃至第三の実施形態に於いては、車輌の旋回方向の逆転が判定された場合に第二の仮想のショックアブソーバ122F及び122Rの減衰係数Cgf及びCgrのみが増大補正されるようになっているが、第二の仮想のショックアブソーバ124F及び124Rの減衰係数と共に第一の仮想のショックアブソーバ124F及び124Rの減衰係数Cf及びCrも増大補正されるよう修正されてもよい。
【0151】
【発明の効果】以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、車輌の過渡旋回時に第二の仮想のショックアブソーバによってばね上の旋回外輪側のリフトが抑制されるので、ばね上の重心を低下させて車輌の旋回時の運動性能を向上させることができると共に、車輌の旋回方向の逆転が検出されたときには少なくとも第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が増大補正されるので、車輌の旋回方向が逆転した直後に於けるばね上のロールを効果的に抑制し、これにより車輌の旋回方向の逆転に拘わらず第二の仮想のショックアブソーバの仮想減衰係数が一定である場合に比して、車輌の旋回方向の逆転時に於ける車輌の姿勢変化を低減して車輌の運動性能を向上させることができる。
【0152】また請求項2乃至4の構成によれば、それぞれ操舵角、推定された横加速度、ばね上のロール角加速度の符号に基づき車輌の旋回方向の逆転が検出されるので、例えば車輌のヨーレート等に基づき車輌の旋回方向の逆転が検出される場合に比して早く旋回方向の逆転を検出することができ、これにより車輌の旋回方向の逆転時に於ける車輌の姿勢変化を応答遅れなく確実に低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年7月6日(1999.7.6)
【代理人】 【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
【公開番号】 特開2001−18622(P2001−18622A)
【公開日】 平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願番号】 特願平11−192225